博 士 ( 農 学 ) 小 川 秀 雄
学 位 論 文 題 名
園芸用ハウスおよび畜舎の強度に関する研究 学位論文内容の要旨
本論文は、図
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、表62、180ぺージからなる和文で、別に7編の参考論 文が添えられている。現在、全国的に園芸用ハウスの普及は著しい。しかし、園芸用パイプハ ウスは小規模な建築物のため、「園芸用施設安全構造基準」の適用外で強 度に関する基準もなく、研究もなされていなかった。また最近、ガラスハ ウスは大規模化してきたが、ガラスハウス全体の強度や耐震性の基準はな く、研究もなされていなかった。一方、畜舎は一般建築物と同様に「建築 基準法」の適用を受け、使用年限が短いにもかかわらず、過剰な設計条件 が要求されていた。そのため、園芸用ハウスや畜舎について、実状に合致 した安全構造基準に関する研究を行った。
第1章「序論」では、園芸用ハウスや畜舎について、現状における施設 の面積や戸数の推移等を検討した。すなわち、園芸用ハウスでは安価なハ ウスの設置面積が増加していることを、また、畜舎では多頭化の傾向が見 られることを示している。また、それぞれが異なった基準を適用されるこ とになった経緯と、現状の構造基準の概要を述べ、本研究の目的と構成を 示している。
第2章は「地中押し込み式パイプハウスの強度」で、地中押し込み式パ イプハウス(以下、「パイプハウス」という)について、実物大強度実験、
スエッジ継手部強度実験、定着杭引抜実験等を行い、強度の確認および理 論解析の検討を行っている。
実物大強度実験では、3種の間口サイズ、2種の棟部接合方法(外ジョイ ントタイプ、スエッジタイプ)、ブレースの有無による鉛直荷重に対する 強度の相違などを検討した。その結果、パイプハウスの強度は、ブレース を有する場合は肩部の局部座屈によって、ブレースの無い場合は肩部から 棟部範囲のフレーム面外方向への倒れで決定されることを明らかにした。
また、ブレースの無い場合は強度が約20%低下することを示した。さらに、
棟部接合方法がスエッジタイプのハウスは、接合部が強度決定要因とはな らないが、外ジョイントタイプに比べて約30%も強度が低くなることを明 らかにした。これらの実験結果と理論計算の比較をもとに、パイプ脚部が 地中先端部で固定支持されると仮定した強度計算が、可能であることを明 らかにした。
スエッジ接合部実験では、パイプ差し込み長さを変化させた実験を行い、
接合部の変形性状や歪分布値をもとに、応力状態を仮定して理論計算式を 提示した。これより、曲げ強度を保持するのに必要な差し込み長さは、パ イ プ 外 径 の
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倍 以 上 の 長 さ が 適 当 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。第
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章は「鉄骨補強パイプハウスの強度」で、柱にはりが水平に接合さ れて上部にアーチパイプが乗る「水平ばり型」と、はりもパイプと同様に アーチ型をした「アーチばり型」のハウスについて実験を行った。実験は、アーチパイプ部分強度実験、柱はり接合部強度実験、実物大ハウスの鉛直 荷重と水平荷重の強度実験を行い、強度の確認および理論解析の検討を行 った。
鉛直荷重実験では、水平ばり型の強度はアーチパイプの面外倒壊で決定 され、アーチパイプの部分実験強度に比べて約30%も低い値となることを 明らかにした。また、アーチばり型の強度は母屋パイプの変形で決定され ることを明らかにした。
水平荷重実験では、柱はルフレームの変形性状、基礎の剛性、サイドパ イプの影響について検討し、鉄骨補強パイプハウスのフレーム強度は、柱 はり接合部の強度で決定されることを明らかにした。また、接合ポルトの 特殊な応力伝達方法を期待した柱はり接合部の強度については、接合部実 験状況をもとにした許容強度の計算方法を示し、鉄骨補強パイプハウス全 体の強度計算方法を示した。
第
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章は「園芸用ガラスハウスの強度」で、長く続く桁行き方向へ地震 波が伝搬した場合の弾塑性地震応答解析を行った。また、屋根面を面内変 形させた場合や壁面を面外変形させた場合の強度実験を行い、地震時のハ ウス変形に対する現状のガラス被覆方法にっいて支障の有無を検討した。さらに、ガラス留め金具(以下、 「クリップ」という)を含むガラス被覆 材の強度を調べるために、屋根ガラス面に積雪や風荷重を想定した面外方 向荷重を載荷した等分布荷重強度実験を行い、それぞれの強度を検討した。
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種の地震波を用い、地震波の大きさを最大速度25 cm/secで統一し、S波 を地表面波とした弾塑性応答解析の最大応答値は、柱頭間たわみ角は1/44、柱頭と柱脚間たわみ角は1/33となるこ
内変形 させ た場合 に、 ガラス に損傷 とを明らかにした。また、屋根面を面
(亀裂発生)が発生するたわみ角は、
最大応答値以上の1/30程度であり、また、壁面を面外変形させた場合は、た わ み 角1/17程 度 まで 変 形 し て も ガ ラス に 支 障 の 無 い こと を 確 認 し た 。 等 分布 荷重実 験で は、積 雪荷 重に相 当する正圧実験の強度はクリップに よる 影響 が無く 、ガ ラス自 身の 曲げに よって決定されることを、また、風 荷重 に相 当する 負圧 実験の 強度 はクリ ップの数で決定されることを明らか にし た。 さらに 、園 芸用施 設安 全構造 基準で定められている理論強度と実 験結 果の 強度に っい て、各 地の 新積雪 重量と設計風速の数値を比較し、強 度が不適合となる当該地域を列記している。
第5章 は「畜 舎の 建設コ スト 低減に 関す る検討 」で 、畜舎 の建 設コス ト を低 減化 するた めに 、特に 影響 が大き い構造部材数量を減じさせる検討を 行っ た。 このた め、 畜舎の 建築 基準法 での取り扱われ方や地方条例に関す るアンケート調査を行い、積雪荷重等の現状の指導状況を確認した。また、
畜舎 の使 用期間 の短 さを考 慮し て荷重 を決定する畜舎設計用の荷重計算方 法を導いた。
そ の結果、畜舎設計による積雪荷重は、荷重の再現期間を20年〜 30年程 度とした場合と現行設計との比較で、
程度低減出来ることを明らかにした。
多雪区域で40〜50%、一般区域で10% また 、風の 速度 圧に対 する 同様の 低 減比率 は、 多くの 区域 で30〜50% 程度の低減となるが、特に強風の区域で は反対 に10%程度 増加 するこ とを 明らかにした。構造部材数量の低減比率 は、多 雪区 域で25〜30%程度 、一 般区域では10%程度と、既成品部材を使 用す る た め に 荷 重 の低 減 比 率 よ り小 さな値 とな ること を明 らかに した 。 第6章「結 論」 では、 本研 究で得 られ た結果 を要 約して 述べ 、園芸 用ハ ウ ス と 畜 舎 の 今 後 に 残 さ れ た 問 題 点 に つ い て 触 れ て い る 。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
園芸用/ ヽウスおよび畜舎の強度に関する研究
本 論 文 は 、 図68、 表62、180ぺ ー ジ か ら な る 和 文 で 、 別 に7編 の 参 考 論 文 が 添 え られ て い る。
現 在 、 全 国 的 に 園 芸 用 ハ ウ ス の 普 及 は 著 し い 。 し か し 、 園 芸 用 パイ プ ハ ウス は 小 規 模 な 建 築 物 の た め 、 「 園 芸 用 施 設 安 全 構 造 基 準 」 の 適 用 外 で 強 度に 関 する 基 準 も な く 、 研 究 も な さ れ て い な か っ た 。 ま た 最 近 、 ガ ラ ス ハ ウ ス は 大規 模 化し て き た が、 ガ ラ スノ 、 ウス 全 体 の強 度 や 耐震 性 の基 準 は なく 、 研究 も な され て いな か っ た 。 一 方 、 畜 舎 は 一 般 建 築 物 と 同 様 に 「 建 築 基 準 法 」 の 適 用 を 受 け、 使 用年 限 が 短 い に も か か わ ら ず 、 過 剰 な 設 計 条 件 が 要 求 さ れ て い た 。 そ の た め、 本 論文 は 園 芸 用 ハ ウ ス や 畜 舎 に っ い て 、 実 状 に 合 致 し た 安 全 構 造 基 準 に 関 す る研 究 を行 っ た も ので あ る 。
第1章 「 序 論 」 で は 、 園 芸 用 ハ ウ ス や 畜 舎 に っ い て 、 現 状 に お け る 施 設 の 面 積 や 戸 数 の 推 移 な ど を 検 討 し 、 そ れ ぞ れ が 異 な っ た 基 準 を 適 用 さ れ る こと に なっ た 経 緯 と、 現 状 の構 造 基準 の 概 要を 述 ベ 、さ ら に本 研 究 の目 的 と構 成 を 示し て いる 。 第2章 は 「 地 中 押 し 込 み 式 パ イ プ ハ ウ ス の 強 度 」 で 、 パ イ プ ハ ウ ス の 強 度 は 、 ブ レ ー ス を 有 す る 場 合 は 肩 部 の 局 部 座 屈 に よ っ て 、 ブ レ ー ス の 無 い 場合 は 肩部 か ら 棟 部 範 囲 の フ レ ー ム 面 外 方 向 へ の 倒 れ で 、 決 定 さ れ る こ と を 明 ら かに し た。 ま た 、 ブ レ ー ス の 無 い 場 合 は 強 度 が 約20% 低 下 す る こ と を 示 し た 。 さら に 、 棟部 接 合 方 法 が ス エ ッ ジ タ イ プ の ハ ウ ス は 、 接 合 部 が 強 度 決 定 要 因 と は な らな い が、 外 ジ ョ イ ン ト タ イ プ に 比 べ て 約30% も 強 度 が 低 く な る こ と を 明 ら か にし た 。 スエ ツ ジ 接 合部 実 験 で、 曲 げ 強度 を 保持 す る のに 必 要な 差 し 込み 長さ は、ノくイ プ外径の3 倍 以 上の 長 さ が適 ゛ 当 であ る こと を 明 らか に した 。
第3章 は 「 鉄 骨 補 強 パ イ プ ハ ウ ス の 強 度 」 で 、 鉛 直 荷 重 実 験 に よ っ て 、 柱 に は り が 水 平 に 接 合 さ れ て 上 部 に ア ー チ パ イ プ が 乗 る 「 水 平 ば り 型 」 の 強度 は 、ア ー
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チパイ プの面外倒 壊で決定さ れ、アーチ パイプの部分実験強度に比べて約30%も 低い値 となること を明らかに した。また 、はりもパイプと同様にアーチ型をした
「アー チばり型」 の強度は母 屋パイプの 変形で決定されることを明らかにした。
水平荷重 実験で、鉄 骨補強パイ プハウスの フレーム強度は、柱はり接合部の強 度で決 定されるこ とを明らか にした。ま た、接合部実験状況をもとにした許容強 度 の 計 算 方 法 を 示 し、 鉄 骨補 強 パイ プ ハ ウス 全 体の 強 度計 算 方法 を 示し た 。 第4章は「園芸 用ガラスハ ウスの強度 」で、長く 続く桁行き 方向へ地震 波が伝 搬した 場合の弾塑 性地震応答 解析を行い 、最大応答値は柱頭間たわみ角で1/44、 柱頭と 柱脚間たわ み角で1/33となる ことを明ら かにした。また、地震時のハウス 変形に 対する現状 のガラス被 覆方法につ いて検討し、屋根面ガラスに亀裂が発生 するたわみ角は1/30程度であり、壁面ではたわみ角1/17程度まで変形してもガラス に支障 の無いこと を確認した 。さらに、 ガラス留め金具を含むガラス被覆材の強 度を調 べて、積雪 荷重に相当 する正圧実 験の強度はクリップによる影響が無く、
ガラス 自身の曲げ によって決 定されるこ とを示した。また、風荷重に相当する負 圧実験 の強度はク リップの数 で決定され ることを明らかにした。さらに、園芸用 施設安 全構造基準 で定められ ている理論 強度と実験結果の強度について、各地の 新積雪 重量と設計 風速の数値 を比較し、 強度が不適合となる当該地域を列記して いる。
第5章は「畜舎 の建設コス ト低減に関 する検討」 で、畜舎の 建設コスト を低減 化するために、特に影響が大きい構造部材数量を減じる検討を行った。このため、
畜舎の 建築基準法 での取り扱 われ方や地 方条例に関するアンケート調査を行い、
積雪荷 重等の現状 の指導状況 を確認した 。また、畜舎の使用期間の短さを考慮し て荷重 を決定する 畜舎設計用 の荷重計算 方法を導いた。その結果、畜舎設計によ る積雪 荷重は、荷 重の再現期間を20年〜 30年程度とした場合と現行設計との比較 で、多雪区域で40t 50%、一般区域で10%程度低減出来る、ことを明らかにした。
また、 風の速度圧 に対する同 様の低減比 率は、多くの区域で30‑ 50%程度の低減 となる が、特に強 風の区域で は反対に10%程 度増加することを明らかにした。構 造部材 数量の低減 比率は、多 雪区域で25〜30% 程度、一般区域では10%程度と、
既成品 部材を使用 するために 荷重の低減 比率より小さた値となることを明らかに した。
第6章「結諭」 では、本研 究で得られ た結果を要 約して述べ 、園芸用ハ ウスと 畜舎の今後に残された問題点について触れている。
以上のように,本論文は園芸用ハウスおよび畜舎の強度の安全構造基準に関した研 究である。この成果は学術的・実用的に高く評価される。よって審査員一同は,小川 秀 雄 が 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を う け る に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。 ―214―