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日本佛教學會年報 第73号 007道元 徹心「院政期天台文献における智慧について ―源信仮託書を中心として―」

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Academic year: 2021

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全文

(1)

源 信 仮 託 書 を 中 心 と し て

龍 谷 大 学 一 天 台 大 師 智 の 教 説 が 中 国 天 台 お よ び 日 本 天 台 の 思 想 の 根 幹 を 貫 く こ と は 言 う ま で も な い が 、 日 本 天 台 に お け る 特 徴 は 円 教 を 中 心 と し た 円 密 禅 戒 の 四 宗 融 合 仏 教 の 展 開 に あ る 。 こ の 日 本 天 台 の 思 想 史 上 、 院 政 期 の 時 代 は 特 に 天 台 本 覚 思 想 が 高 調 す る 頃 と さ れ 、 こ の 時 期 に 成 立 し た と え ら れ る 文 献 で は 、 智 の 所 説 に お い て 天 台 本 覚 思 想 か ら の 少 な か ら ぬ 影 響 が あ る の で は な い か と 思 わ れ る 。 拙 稿 で は 、 智 の 説 き 方 に お い て 智 に か か る 文 献 と 院 政 期 の 天 台 文 献 と を 比 較 検 討 し て 、 院 政 期 文 献 に お け る 智 の 所 説 に つ い て 特 徴 の 一 端 を 探 る こ と と し た い 。 院 政 期 の 期 間 は 一 般 に 後 三 条 天 皇 即 位 の 治 歴 四 年 ︵ 一 〇 六 八 ︶ か ら 後 鳥 羽 上 皇 の 退 位 し た 承 久 三 年 ︵ 一 二 二 一 ︶ 頃 の お よ そ 百 五 十 年 間 と み ら れ る 。 近 年 、 こ の 院 政 期 思 想 史 の 明 確 化 が 問 わ れ 、 院 政 期 頃 の 成 立 と え ら れ る 諸 文 献 の 間 で そ の 成 立 順 の 再 検 討 が な さ れ て い る 。 ま た 平 安 中 期 以 降 の 仏 教 の 展 開 と し て 二 つ の 方 向 が あ る と さ れ る 。 一 つ は 安 然 の 現 実 肯 定 思 想 を 継 承 し て 、 よ り 発 展 す る 方 向 で あ る 。 こ れ は 院 政 期 以 後 展 開 す る い わ ゆ る 本 覚 思 想 に お い て 推 九 三 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

(2)

し 進 め ら れ る 。 も う 一 つ の 対 応 は そ の よ う な 動 向 に 歯 止 め を か け よ う と す る 動 き で あ り 、 文 献 主 義 の 傾 向 を 示 す 。 ま た 、 本 覚 思 想 の 一 元 論 に 対 し て 、 二 元 論 的 な 傾 向 を 示 す と 言 わ れ て 1 い る 。 こ の 時 期 に 活 躍 し た と み ら れ る 天 台 の 人 物 と し て 、 忠 尋 ︵ 一 〇 六 五 ∼ 一 一 三 八 ︶ ・ 真 源 ︵ 一 〇 六 四 ∼ 一 一 三 六 ︶ ・ 安 居 院 澄 憲 ︵ 一 一 二 六 ∼ 一 二 〇 三 ︶ ・ 皇 覚 さ ら に 証 真 ︵ 凡 一 一 二 九 ∼ 凡 一 二 2 一 四 ︶ な ど の 人 物 が 挙 げ ら れ る 。 ま た 恵 心 僧 都 源 信 ︵ 九 四 二 ∼ 一 〇 一 七 ︶ に 仮 託 さ れ た 書 物 に こ の 時 期 の 成 立 と え ら れ る も の が あ る 。 院 政 期 成 立 と 思 わ れ る 総 て の 文 献 を 調 査 す る こ と は 困 難 で あ る の で 、 今 回 は 源 信 仮 託 書 で 院 政 期 頃 の 成 立 と み ら れ る 文 献 を 中 心 に 察 し て い き た い 。 二 院 政 期 の 文 献 に つ い て 察 す る 前 に 、 天 台 教 学 の 根 本 典 籍 で あ る 法 華 経 お よ び 智 の 著 作 に み ら れ る 智 に つ い て 確 認 し て お き た い 。 先 ず 法 華 経 所 説 の 智 に つ い て は 方 便 品 第 二 の 冒 頭 に 次 の よ う に 説 か れ る 。 諸 佛 智 甚 深 無 量 。 其 智 門 難 解 難 入 。 一 切 聲 聞 辟 支 佛 所 不 能 知 。 所 以 者 何 。 佛 曾 親 近 百 千 萬 億 無 諸 佛 盡 行 諸 佛 無 量 道 法 勇 猛 精 進 名 普 聞 。 成 就 甚 深 未 曾 有 法 隨 宜 所 説 意 趣 難 解 。 利 弗 。 吾 成 佛 已 來 。 種 種 因 縁 。 種 種 譬 喩 。 廣 演 言 教 無 方 便 引 導 衆 生 令 離 諸 著 所 以 者 何 。 如 來 方 便 知 見 波 羅 蜜 。 皆 已 具 足 。 利 弗 。 如 來 知 見 。 廣 大 深 遠 。 無 量 無 礙 力 無 所 畏 定 解 脱 三 昧 。 深 入 無 際 成 就 一 切 未 曾 有 法 利 弗 。 如 來 能 種 種 分 別 巧 説 諸 法 言 辭 柔 軟 。 可 衆 心 利 弗 。 取 要 言 之 。 無 量 無 邊 未 曾 有 法 。 佛 悉 成 就 。 止 利 弗 。 不 須 復 説 所 以 者 何 。 佛 所 成 就 第 一 希 有 難 解 之 法 。 ︵ 大 正 九 ・ 五 頁 中 ∼ 下 ︶ 迹 門 で は 方 便 品 を 中 心 と し て 開 三 顕 一 の 一 乗 思 想 が 説 か れ る 。 二 乗 や 三 乗 を 開 会 し 、 い か に 一 乗 に 帰 入 さ せ る か で あ 九 四 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

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り 、 こ こ で は 一 切 の 声 聞 や 縁 覚 に と っ て は 諸 仏 の 智 が 甚 深 無 量 で あ り 難 解 難 入 で あ る と 説 く 。 長 劫 の 修 行 に よ っ て 得 た 仏 の 智 は 如 来 こ そ が 方 便 と 知 見 と に よ っ て 説 く こ と を 示 す 。 如 来 の み が 説 く 智 を 仏 知 見 と し て 衆 生 た ち に 示 さ ん が ︵ 開 示 悟 入 ︶ 為 に 世 に 出 現 し た こ と を 一 大 事 の 因 縁 と し て 次 に 説 く 。 諸 佛 世 尊 。 唯 以 一 大 事 因 縁 故 出 現 於 世 利 弗 。 云 何 名 諸 佛 世 尊 唯 以 一 大 事 因 縁 故 出 現 於 世 諸 佛 世 尊 。 欲 令 衆 生 開 佛 知 見 使 得 清 故 出 現 於 世 欲 示 衆 生 佛 之 知 見 故 出 現 於 世 欲 令 衆 生 悟 佛 知 見 故 出 現 於 世 欲 令 衆 生 入 佛 知 見 道 故 出 現 於 世 利 弗 。 是 為 諸 佛 以 一 大 事 因 縁 故 出 現 於 世 佛 告 利 弗 諸 佛 如 來 。 但 教 化 菩 諸 有 所 作 常 為 一 事 唯 以 佛 之 知 見 示 悟 衆 生 ⋮ ⋮ 中 略 ⋮ ⋮ 是 諸 衆 生 諸 佛 聞 法 。 究 竟 皆 得 一 切 種 智 利 弗 。 未 來 諸 佛 當 出 於 世 亦 以 無 量 無 方 便 種 種 因 譬 言 辭 而 為 衆 生 演 説 諸 法 是 法 皆 為 一 佛 乘 故 。 是 諸 衆 生 佛 聞 法 。 究 竟 皆 得 一 切 種 智 ︵ 大 正 九 ・ 七 頁 上 ∼ 中 ︶ こ こ で 衆 生 の 為 に 諸 法 を 演 説 し た も う 。 是 の 法 皆 一 佛 乘 の 為 の 故 。 是 の 諸 の 衆 生 の 諸 仏 に よ り 法 を 聞 き 、 究 竟 じ て 皆 一 切 種 智 を 得 た り 。 と あ る 。 こ の 中 の 一 切 種 智 は 天 台 の 三 智 の 一 つ で 、 空 観 を 用 い て 一 切 智 を 成 じ る よ う に 空 観 ・ 仮 観 ・ 中 観 の 三 観 を 一 切 智 ・ 道 種 智 ・ 一 切 種 智 の 三 智 に 配 当 3 す る 。 町 田 是 正 氏 は 法 華 経 に は 智 を 示 す 表 現 が 多 様 で 、 特 に 仏 智 を 表 現 す る と き は 、 最 上 級 の 形 容 詞 ︵ 深 甚 無 量 ・ 難 解 難 入 ・ 不 度 量 な ど ︶ を 冠 し て お り 、 人 知 の 能 力 を 超 越 し て い る こ と 、 限 り な く 深 遠 で あ る こ と を 示 し て い る 。 仏 智 は 悟 り の 境 界 で あ る 事 、 悟 り は 智 を 本 質 と し 成 立 す る こ と 、 悟 り は 久 遠 本 仏 の 永 遠 の 生 命 ︵ 真 理 無 上 正 等 覚 ・ 阿 多 羅 三 三 菩 提 ︶ で あ る こ と を 教 示 4 す る 。 と 論 じ る 。 こ の 仏 智 に つ い て 仏 智 は 分 別 智 や 無 分 別 智 を 含 む も の で 、 無 分 別 智 は 単 に 分 別 を 超 え た 智 と い う も の で は な く 、 そ の 勝 進 分 は 下 化 衆 生 と い う 菩 行 の 根 拠 と な 九 五 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

(4)

り 、 さ ら に 進 ん で は 仏 智 と な る も の で あ る 。 天 台 で 主 張 す る 一 心 三 観 と は 、 空 仮 中 が 個 別 に 成 立 す る の で は な く 、 即 空 即 仮 即 中 と な っ て 円 融 す る こ と を 了 解 す る こ と で あ っ て 、 無 分 別 智 で あ る と 末 綱 恕 一 氏 は 指 摘 5 す る 。 こ の 難 解 難 入 の 仏 智 を 衆 生 に い か に 示 し 智 を 得 て 仏 智 海 に 悟 入 さ せ る か が 究 竟 の 目 標 と 言 え よ う 。 次 に 法 華 経 を 所 依 と し た 智 の 著 述 中 に み ら れ る 智 に つ い て 察 を 進 め た い 。 法 華 玄 義 に は 法 華 経 所 説 の 仏 智 を 理 解 す る た め に 五 重 玄 義 ︵ 釈 名 ・ 辨 体 ・ 明 宗 ・ 論 用 ・ 判 教 ︶ が 説 か れ る 。 法 華 玄 義 に は 、 於 力 用 中 更 分 別 自 行 二 智 。 照 理 理 周 名 為 力 。 二 種 化 他 二 智 機 。 機 遍 名 為 用 。 自 行 二 智 。 即 是 化 他 二 智 。 化 他 二 智 。 即 是 自 行 二 智 。 照 理 即 機 機 即 照 理 。 ︵ 大 正 三 三 ・ 六 八 三 頁 上 ︶ と あ り 、 こ こ で 七 番 共 解 の 標 章 に 権 実 二 智 を 三 種 の 自 行 と 化 他 と 自 行 化 他 と 示 し て い る 。 法 華 経 の 断 疑 生 信 と い う 力 用 は 権 実 二 智 に 基 づ い て い る 。 こ の 真 理 を 観 察 す る 実 智 と 衆 生 救 済 に は た ら く 権 智 の 権 実 二 智 は 、 次 の よ う に 示 さ れ る 。 又 衆 經 咸 云 。 道 樹 師 實 智 始 。 起 道 樹 始 施 權 智 。 今 經 明 師 之 權 實 在 道 樹 前 久 久 已 諸 經 明 二 乘 弟 子 不 得 入 實 智 亦 不 能 施 權 智 ︵ 大 正 三 三 ・ 六 八 四 頁 上 ︶ 諸 経 典 に は 、 菩 提 樹 下 で 正 覚 を 成 じ て 真 実 智 が 満 足 さ れ 権 智 が 施 さ れ た 。 一 方 、 法 華 経 所 説 の 真 実 と 権 の 二 智 に お い て は 、 菩 提 樹 下 の 成 道 の 遙 か 以 前 に 二 智 が 満 足 し て い る 。 諸 経 典 で は 二 乗 の 者 に と っ て 権 智 は 施 さ れ ず 、 実 智 に 入 る こ と が で き な い 。 ま た 四 悉 檀 に つ い て 問 何 不 次 第 。 答 悉 檀 是 佛 智 。 對 利 鈍 縁 則 成 四 種 利 人 聞 世 界 解 第 一 義 此 對 釋 名 辨 體 即 足 。 若 鈍 人 未 悟 。 更 須 為 人 生 善 對 治 破 乃 入 第 一 義 則 具 用 四 也 。 五 重 玄 義 意 兼 利 鈍 四 悉 檀 法 為 鈍 者 對 義 九 六 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

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是 同 次 第 則 異 。 ︵ 大 正 三 三 ・ 六 八 六 頁 中 ︶ 悉 檀 は 仏 智 で あ り 衆 生 の 利 鈍 に よ っ て 四 種 の 悉 檀 を な し て い る 。 五 重 玄 義 は 機 根 の 利 鈍 を 兼 ね て 次 第 し て 名 体 宗 用 教 と 次 第 す る 。 こ の 四 悉 檀 は 専 ら 愚 鈍 の 機 に 対 し て 開 か れ て い る と 説 く 。 ま た 次 の よ う に 、 五 起 教 幽 微 之 理 非 不 明 。 契 理 之 非 悉 檀 不 起 。 脩 入 空 時 。 先 正 因 法 此 法 外 親 疎 隔 別 。 ⋮ ⋮ 中 略 ⋮ ⋮ 於 七 覺 中 隨 依 一 覺 然 如 失 。 即 依 此 覺 分 研 修 。 能 發 真 明 見 第 一 義 是 為 用 四 悉 檀 起 入 空 成 一 切 智 發 眼 也 。 若 空 入 。 巧 用 四 悉 檀 取 道 種 智 法 眼 亦 如 是 。 若 修 中 道 第 一 義 巧 用 四 悉 檀 取 一 切 種 智 佛 眼 亦 如 是 。 若 一 心 三 巧 用 亦 如 是 。 ︵ 大 正 三 三 ・ 六 八 七 頁 下 ∼ 六 八 八 頁 上 ︶ 一 切 智 を 空 観 ・ 道 種 智 を 仮 観 ・ 一 切 種 智 を 中 観 に よ っ て 得 る 。 そ れ ぞ れ 智 眼 ・ 法 眼 ・ 仏 眼 に 対 応 し て い る 。 別 教 に お い て は 三 観 を 各 々 次 第 し て 観 じ て 三 智 を そ れ ぞ れ で 得 る が 、 円 教 に お い て は 一 心 同 時 に 三 智 を 得 る 法 を 説 い て い る 。 次 に 摩 止 観 所 説 の 智 に つ い て 察 を 進 め た い 。 摩 止 観 は 三 種 止 観 ︵ 漸 次 ・ 不 定 ・ 円 ︶ の 中 で も 円 止 観 を 説 き 、 こ の 書 に は 一 心 三 観 と 三 惑 三 智 三 諦 が 説 か れ る 。 智 と 禅 定 を 止 観 と し て 示 す 法 華 経 の 実 践 書 と も 受 け と め ら れ る こ の 書 に は 、 円 に つ い て 次 の よ う に 説 い て い る 。 圓 者 。 初 縁 實 相 造 境 即 中 無 不 真 實 繫 縁 法 界 一 念 法 界 一 色 一 香 無 非 中 道 己 界 及 佛 界 衆 生 界 亦 然 。 陰 入 皆 如 無 苦 可 捨 。 無 明 塵 即 是 菩 提 無 集 可 。 邊 邪 皆 中 正 無 道 可 修 。 生 死 即 涅 槃 無 滅 可 證 。 無 苦 無 集 故 無 世 間 無 道 無 滅 故 無 出 世 間 純 一 實 相 。 ︵ 大 正 四 六 ・ 一 頁 下 ︶ 円 止 観 は 初 め か ら 実 相 に 関 わ る 。 無 明 煩 悩 も 悟 の 菩 提 ︵ 智 ︶ と 異 な ら な い の で 、 そ こ に は 断 ず べ き 煩 悩 も な い 。 生 死 即 涅 槃 で あ る 。 凡 夫 を 行 に よ っ て 悟 に 導 か ん が た め 円 止 観 が 説 か 6 れ る 。 そ し て 、 九 七 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

(6)

所 謂 無 量 劫 來 癡 惑 所 覆 。 不 知 無 明 即 是 明 今 開 覺 之 故 言 大 意 既 知 無 明 即 明 不 復 流 動 故 名 為 止 。 朗 然 大 呼 之 為 。 ︵ 大 正 四 六 ・ 三 頁 中 ︶ と 記 さ れ る 。 衆 生 は 無 量 劫 よ り 煩 悩 に 覆 わ れ て 、 無 明 が そ の ま ま 悟 で あ る こ と を 気 付 か ず に い た 。 無 明 即 悟 で あ る こ と を 覚 知 さ せ る こ と を 大 意 と す る 一 段 で あ る 。 ま た 円 教 の 階 位 で あ る 六 即 と 菩 提 心 と を 関 係 づ け て 次 の よ う に 説 く 。 理 即 者 。 一 念 心 即 如 來 藏 理 。 如 故 即 空 。 藏 故 即 。 理 故 即 中 。 三 智 一 心 中 具 不 可 思 議 。 如 上 説 三 諦 一 諦 非 三 非 一 。 一 色 一 香 一 切 法 。 一 切 心 亦 復 如 是 。 是 名 理 即 是 菩 提 心 亦 是 理 即 止 。 ⋮ ⋮ 中 略 ⋮ ⋮ 究 竟 即 菩 提 者 。 等 覺 一 轉 入 於 妙 覺 智 光 圓 不 復 可 。 名 菩 提 果 大 涅 槃 更 無 可 。 名 果 果 等 覺 不 通 唯 佛 能 通 。 過 茶 無 道 可 説 。 故 名 究 竟 菩 提 亦 名 究 竟 止 ︵ 大 正 四 六 ・ 一 〇 頁 中 ∼ 下 ︶ こ こ で は 六 即 ご と の 菩 提 心 の 深 ま り と 智 お よ び 止 観 を 明 ら か に し て い る 。 別 教 は 次 第 三 観 を 説 き 三 智 を 順 次 得 る が 、 こ の 円 教 に お い て は 三 智 を 一 心 中 に 同 時 に 具 足 す る 。 理 即 菩 提 心 お よ び 理 即 止 観 と 示 し 、 究 竟 即 に お い て 煩 悩 が 断 じ 尽 く さ れ 智 光 圓 と し 大 涅 槃 に 入 り そ れ を 究 竟 菩 提 お よ び 究 竟 止 観 と 名 づ け る 。 ま た 五 略 十 広 と し て 説 く 五 略 の 第 四 裂 大 網 に は 、 衆 生 の 煩 悩 を 止 観 に よ っ て 裂 破 す る 旨 を 簡 潔 に 次 の よ う に 表 現 す る 。 第 四 為 通 裂 大 網 諸 經 論 故 。 説 是 止 者 。 若 人 善 用 止 心 。 則 内 明 了 。 通 達 漸 諸 教 如 破 微 塵 出 大 千 經 恒 沙 佛 法 一 心 中 。 ︵ 大 正 四 六 ・ 二 〇 頁 中 ︶ 止 観 に よ っ て 心 を 観 ず れ ば 智 が 益 々 明 瞭 と な り 仏 の 漸 の 諸 教 に 通 じ る よ う に な る こ と を 示 す 。 次 に 、 智 の 著 述 か ら 不 定 止 観 を 説 く 六 妙 法 門 所 説 の 智 に つ い て ふ れ て お き た い 。 秋 田 光 兆 氏 は 智 に お け る 智 の 解 釈 と 智 の 実 践 と し て 六 妙 法 門 を 中 心 資 料 に 論 じ て 7 い る 。 本 稿 に お い て は 六 妙 法 門 所 説 の 智 に 九 八 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

(7)

つ い て 、 五 点 の 出 拠 か ら 察 を 深 め た い 。 ま ず 六 妙 法 門 第 二 次 第 相 生 妙 門 に お い て 次 の よ う に 、 證 還 相 者 。 心 開 發 。 不 加 功 力 任 運 自 能 破 折 。 反 本 還 源 。 是 名 證 還 行 者 當 知 。 若 離 境 智 欲 無 境 智 不 離 境 智 縛 以 隨 二 邊 故 。 爾 時 當 捨 還 門 安 心 道 ︵ 大 正 四 六 ・ 五 五 〇 頁 中 ︶ 心 の 中 の 智 の 開 発 を 説 い て い る 。 そ れ に は 空 を 認 識 す る こ と が 不 可 欠 で 、 空 の 認 識 が 対 象 ︵ 境 ︶ に こ だ わ ら な い 心 を 開 発 す る 。 観 ら れ る 対 象 ︵ 境 ︶ と み る 分 別 智 ︵ 智 ︶ の 境 智 の 束 縛 を 離 れ る こ と が 出 来 な け れ ば 還 門 か ら 浄 門 へ う つ る よ う に 8 説 く 。 同 じ く 六 妙 法 門 第 二 次 第 相 生 妙 門 に は 次 の よ う に 示 す 。 復 次 一 切 外 名 為 。 一 切 内 名 為 還 。 一 切 非 内 非 外 名 為 。 故 先 尼 梵 志 言 。 非 内 故 。 得 是 智 非 外 故 。 得 是 智 非 内 外 故 。 得 是 智 亦 不 無 故 。 得 是 智 也 。 ︵ 大 正 四 六 ・ 五 五 〇 頁 中 ︶ 智 が 先 尼 梵 志 の 言 を 引 用 し て 説 く 。 内 観 ・ 外 観 な ど 原 始 仏 教 以 来 の 仏 道 修 行 法 は 二 乗 人 に 留 ま る が 、 そ れ を 超 え て 数 息 ・ 随 息 ・ 止 ・ 観 ・ 還 ・ 浄 の 六 妙 門 に よ れ ば 、 菩 智 ・ 仏 の 智 を 得 る こ と が で き る と 説 き 、 衆 生 に 六 妙 門 に よ っ て 仏 の 智 を 得 る こ と を 9 説 く 。 同 書 の 第 三 随 便 宜 六 妙 門 に お い て 、 若 不 進 。 當 更 善 巧 修 及 還 等 三 法 既 進 。 進 已 若 謝 。 轉 入 深 定 解 開 發 。 唯 覺 自 心 所 有 法 相 ︵ 大 正 四 六 | 五 五 〇 頁 下 ︶ と あ り 、 も し 観 門 に よ る 禅 定 が 進 ま な け れ ば 、 巧 み な 修 行 法 に よ る 観 お よ び 還 と 浄 の 三 種 の 修 行 法 の 実 践 が あ る と 説 く 。 観 門 の 修 行 法 に よ っ て 深 い 禅 定 と な り 真 実 の 智 に 照 ら さ れ た 悟 り を 引 き 出 し 、 自 己 の 清 浄 な す が た を 悟 る こ と を 説 く 。 六 妙 法 門 に は 人 は 煩 悩 と し て の 自 我 と 直 面 し て い く 自 浄 能 力 を 潜 在 的 に 秘 め て い る と 説 く 。 そ の 自 浄 能 力 を 分 析 し た の が 数 息 ・ 随 息 ・ 止 ・ 観 ・ 還 ・ 浄 の 六 つ の 法 門 と さ れ て い る 。 智 は 後 に 摩 止 観 に お い て 一 念 三 九 九 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

(8)

千 を 説 く が 、 ひ と お も い の 心 の 働 き を 一 念 と し て 、 一 切 の す が た を 三 千 で 捉 え 、 人 が 本 来 具 え た 清 ら か な 自 性 清 浄 心 を 引 き 出 し 本 来 の 自 己 、 本 来 悟 っ た 仏 と し て の 自 己 に 還 る こ と を 説 い て 10 い る 。 六 妙 法 門 第 六 通 別 六 妙 門 に は 次 の よ う に 説 く 。 復 次 云 何 名 為 菩 息 相 行 者 為 求 一 切 智 佛 智 自 然 智 無 師 智 。 如 來 知 見 力 無 所 畏 愍 念 安 無 量 衆 生 故 修 息 欲 因 此 法 門 入 一 切 種 智 ︵ 大 正 四 六 ・ 五 五 二 頁 中 ∼ 下 ︶ 菩 乗 の 行 者 は 一 切 智 ・ 仏 智 ・ 自 然 智 ・ 無 師 智 な ど を 求 め 、 如 来 の 教 え を 求 め 、 そ こ に と ど ま る こ と な く 、 衆 生 を 救 い と ろ う と 念 じ て 数 息 門 の 修 行 を す る 。 そ の 実 践 に よ っ て 一 切 種 智 を 具 足 し よ う と 欲 11 す る 。 本 書 の 第 六 章 ま で は 従 仮 入 空 の 立 場 で 説 き 第 七 章 は 従 空 入 仮 の 立 場 よ り 説 き 第 八 章 は 中 道 第 一 義 で 説 い て 空 と 仮 の 相 即 の 立 場 よ り 12 説 く 。 そ の 第 八 観 心 六 妙 門 で は 復 次 行 者 。 當 心 時 覺 了 心 性 猶 如 虚 空 無 名 無 相 一 切 語 言 道 開 無 明 藏 見 真 實 性 於 一 切 諸 法 得 無 著 當 知 心 者 即 是 門 。 ︵ 大 正 四 六 ・ 五 五 四 頁 上 ︶ と あ り 、 行 者 は 観 心 の 時 、 言 葉 な ど の 相 対 自 我 の 概 念 を 超 え 無 明 の 蔵 を 開 き 、 一 切 に 執 着 す る こ と の な い 智 を 得 て い く 。 こ れ が 自 己 の 心 を 智 で 観 察 す る 観 門 と 説 い て 13 い る 。 以 上 の よ う に 法 華 経 お よ び 智 の 著 述 に お い て 智 に 関 す る 記 述 を 簡 略 な が ら 確 認 し た 。 総 論 と し て 智 は 仏 陀 が 成 道 に 際 し て 縁 起 の 理 を 悟 っ た と き の 知 の あ り 方 を 指 し 、 そ れ に 準 じ て 修 行 者 が 悟 り を 得 る た め に 要 求 さ れ る 知 ︵ 無 漏 ︶ を 智 と す 14 る が 、 法 華 経 等 に お い て は 、 そ の 仏 の 智 は 修 行 者 に と っ て は 難 解 難 入 で あ り 遙 か 崇 高 で あ る が 故 に 仏 の 智 を 求 め 菩 行 と し て の 意 義 が 説 か れ る 。 次 項 で は 院 政 期 の 文 献 に は 如 何 に 智 が 説 か れ る か を 検 一 〇 〇 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

(9)

証 し た い 。 三 は じ め に あ げ る 枕 雙 紙 は 天 台 本 覚 思 想 を 顕 著 に 示 す 文 献 で あ り 、 金 沢 文 庫 蔵 の 写 本 三 十 四 箇 事 書 の 版 本 に あ た る も の で 、 源 信 仮 託 の 文 献 と み ら 15 れ る 。 ま た 次 に あ げ る 自 行 念 仏 問 答 は 天 台 の 成 仏 論 を 展 開 し た 書 で あ り 、 引 用 文 献 や 思 想 面 で 往 生 要 集 や 観 心 略 要 集 に 軌 を 一 に す る 著 作 で も あ る 。 い わ ゆ る 恵 心 学 派 の 浄 土 教 文 献 の う ち で も 極 め て 重 要 な 位 置 づ け で あ る 源 信 仮 託 の 文 献 で あ る 。 そ の 成 立 は 十 二 世 紀 初 頭 、 作 者 は 今 の と こ ろ 真 源 と す る 説 が 有 力 で 16 あ る 。 ま た 同 じ く 源 信 仮 託 書 で あ る 妙 行 心 要 集 は 天 台 の 妙 行 で あ る 止 観 を 中 心 に 説 き 、 観 心 略 要 集 の 系 統 に 位 置 す る 文 献 で 成 立 を 十 一 世 紀 後 半 と す る 説 が 17 あ る 。 ま た 真 如 観 も 成 立 時 期 に つ い て は 諸 説 で 多 少 の 違 い を 有 す る も の の 院 政 期 成 立 の 文 献 と み て 差 し 支 え な い と え ら れ る 。 こ れ は 真 如 の 思 想 を 中 心 と し て 法 華 経 と の 関 連 で 述 作 さ れ た 源 信 仮 託 の 書 で あ る 。 ま た 漢 光 類 聚 も 本 覚 法 門 の 文 献 で あ り 、 天 台 三 大 部 を 尊 重 し 上 智 上 根 の 理 解 す る 高 尚 な 止 観 よ り も 更 に 一 歩 進 め て 、 最 上 の 悟 を 最 下 の 鈍 根 が 成 就 す る 道 を 究 し よ う と し た 文 献 と み ら 18 れ る 。 成 立 は 院 政 期 か ら 少 し 外 れ る 十 三 世 紀 後 半 頃 の 成 立 と み ら れ て お り 、 静 明 と 関 係 が 深 い と 言 わ れ て 19 い る 。 と こ ろ で 本 覚 と い う 用 語 は 大 乗 起 信 論 に 初 出 す る が 、 智 の 用 い る 語 に は な く 、 し か も 日 本 中 古 天 台 に お い て 独 特 の 展 開 を な し て い る 。 そ れ が 天 台 本 覚 思 想 で 切 紙 相 承 や 口 伝 法 門 の 形 で 受 け 継 が れ て き た 。 こ の 思 想 の 定 義 は 一 定 せ ず 確 立 し て い な い 。 こ の 思 想 研 究 は 島 地 大 等 氏 か ら 始 ま る と 言 20 わ れ 、 近 年 で は 末 木 文 美 士 氏 が 本 覚 思 想 に つ い て 論 ず る 際 の 概 念 の 曖 昧 さ を 指 摘 し 、 日 本 中 世 天 台 で 展 開 し た 天 台 本 覚 思 想 と 本 覚 と い う 語 を キ ー ワ ー ド と し 一 〇 一 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

(10)

て 展 開 す る 広 い 思 想 の 二 方 向 を 指 摘 す る 。 花 野 充 道 氏 は 本 覚 思 想 を 空 思 想 の 展 開 と と ら え る 田 村 芳 朗 氏 の 見 解 と 如 来 蔵 思 想 ︵ 基 体 説 ︶ と と ら え る 袴 谷 憲 昭 氏 の 見 解 の 相 違 、 つ ま り 空 思 想 の 天 台 教 学 に 基 づ く 煩 悩 即 菩 提 の 本 覚 思 想 と 、 如 来 蔵 思 想 の 起 信 論 に 基 づ く 真 如 随 縁 の 本 覚 思 想 の 思 想 構 造 の 差 異 を 峻 別 す る 必 要 性 を 強 調 し て 21 い る 。 初 め に あ げ る 枕 雙 紙 第 二 十 四 元 品 無 明 之 事 に は 次 の よ う に 説 く 。 又 還 同 本 覺 最 後 品 無 明 時 也 。 非 前 後 其 故 。 究 竟 智 只 今 開 時 。 此 無 明 只 今 證 得 智 體 全 無 別 證 知 。 還 落 付 理 即 位 住 平 等 法 界 凝 然 常 住 寂 光 土 也 。 ︵ 恵 全 三 ・ 四 九 八 頁 ︶ 天 台 円 教 で 菩 の 行 位 五 十 二 位 に お い て は 、 初 住 以 上 で 無 明 が 断 じ ら れ て い く 。 初 住 以 上 の 四 十 二 位 に 応 じ て 四 十 二 品 の 無 明 を 立 て 、 最 後 品 の 無 明 は 妙 覚 智 に よ っ て 断 じ ら れ る と さ 22 れ る 。 こ こ で は 元 品 無 明 つ ま り 最 後 品 の 無 明 と 究 竟 の 智 と を 体 同 一 と し て 、 六 即 の 初 め の 理 即 の 位 に お い て 本 来 的 に 仏 に 帰 一 し て 、 真 実 世 界 に 住 す 。 こ れ は 還 同 本 覚 と い う 本 来 の さ と り の 世 界 に 帰 し て い る 時 で も あ る と 説 く 。 ま た 枕 雙 紙 第 二 十 五 正 了 縁 因 事 に は 次 の よ う に 説 く 。 正 了 縁 三 因 者 。 此 有 深 意 但 云 性 云 修 只 是 一 也 。 差 性 云 修 。 差 修 云 性 。 故 修 時 無 別 法 只 是 性 體 也 。 故 我 等 衆 生 念 念 相 續 妄 念 。 全 是 般 若 相 應 智 也 。 ︵ 恵 全 三 ・ 四 九 九 頁 ︶ と 示 し て 、 凡 夫 の 相 続 す る 妄 念 を 般 若 の 智 そ の も の と 捉 え て 23 い る 。 同 書 で は さ ら に 明 暦 二 年 版 本 に お い て 次 の よ う に も 説 い て い る 。 龍 女 最 上 利 根 故 。 文 殊 入 龍 宮 説 諸 法 實 相 言 下 悟 一 念 法 界 遍 照 於 十 方 此 則 一 念 坐 道 場 成 佛 不 虚 也 。 以 己 懈 怠 勿 疑 教 。 以 一 例 諸 。 龍 女 是 。 問 。 一 念 三 千 。 一 心 三 。 自 受 用 心 地 其 智 門 難 解 難 入 。 如 予 頑 一 〇 二 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

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愚 者 。 敢 入 乎 。 是 故 丁 寧 示 之 。 答 。 一 宗 大 事 。 唯 在 此 法 ⋮ ⋮ 中 略 ⋮ ⋮ 口 決 曰 。 一 言 一 心 三 者 。 師 資 相 承 一 旨 也 。 所 謂 天 獨 朗 一 言 也 。 抑 。 天 獨 朗 者 。 本 體 不 生 。 本 體 不 生 者 。 本 不 生 。 本 不 生 者 。 尋 一 心 一 念 不 自 生 不 他 生 不 共 生 不 無 因 生 宛 如 大 虚 故 本 體 不 生 。 本 體 不 生 故 無 相 。 無 相 故 虚 空 。 虚 空 故 法 界 。 法 界 故 三 千 。 三 千 故 三 諦 。 道 理 法 爾 法 然 。 如 斯 悟 已 。 能 離 因 果 離 因 果 者 生 死 絶 。 苦 因 苦 果 。 猶 如 作 夢 若 離 因 果 即 身 成 佛 。 ⋮ ⋮ 中 略 ⋮ ⋮ 我 等 是 本 覺 如 來 。 無 作 三 身 也 。 三 界 本 無 生 死 ︵ 恵 全 三 ・ 五 一 六 ∼ 五 一 九 頁 ︶ こ こ で は 如 予 頑 愚 者 と 私 の よ う な 愚 か な 者 は 一 念 三 千 ・ 一 心 三 観 の 実 践 に よ り 如 何 に 難 解 難 入 で あ る 真 実 智 門 に 入 る こ と が 出 来 る の か と の 問 い に 対 し て 、 は じ め て 衆 生 本 来 成 仏 と 知 れ ば 、 生 死 涅 槃 は 昨 日 の 夢 の よ う な も の ︵ 中 略 部 分 ︶ と 説 い て い る 。 ま た 、 我 等 是 本 覺 如 來 。 無 作 三 身 也 と 表 現 し て お り 、 難 解 難 入 の 智 も 衆 生 本 来 的 に 備 わ っ て い る と 示 さ れ て い る 。 次 に 自 行 念 仏 問 答 を 察 す る と 、 そ こ に は 問 。 法 華 即 阿 弥 陀 佛 者 。 法 華 経 阿 弥 陀 佛 。 依 正 二 報 。 委 細 可 説 。 何 心 不 説 之 如 何 。 答 。 此 有 三 義 一 別 不 説 。 二 全 説 。 三 略 説 也 。 一 別 不 説 者 。 法 華 即 阿 弥 陀 仏 。 故 讃 法 華 即 讃 弥 陀 佛 也 。 謂 釈 佛 也 。 我 所 得 智 。 微 妙 最 第 一 。 又 諸 佛 智 。 甚 深 無 量 。 其 智 門 難 解 難 入 。 ⋮ ⋮ 中 略 ⋮ ⋮ 問 。 我 尚 未 悟 。 依 因 縁 感 見 己 心 佛 唯 願 為 我 以 譬 示 給 。 為 後 世 為 資 粮 答 。 順 汝 願 演 一 喩 譬 水 中 本 来 有 月 性 。 雖 然 十 五 夜 月 不 縁 已 前 。 不 見 其 月 然 彼 空 中 月 縁 時 見 水 月 此 月 不 思 議 月 観 。 何 以 故 。 水 中 本 月 在 。 空 中 本 有 故 也 。 ︵ 恵 全 一 ・ 五 六 九 ∼ 五 七 一 頁 ︶ 一 〇 三 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

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と あ る 。 我 が 得 る と こ ろ の 智 は 微 妙 に し て 最 も 優 れ て い る 。 問 い と し て 、 我 は 未 だ 悟 を 開 い て い な い が 仏 を い か な る 因 縁 に よ っ て み る か 。 問 い と し て 、 す で に 方 便 智 で は な く 真 実 智 が 備 わ っ て い る 。 そ の こ と を 十 五 夜 の 月 と し て 水 月 の 譬 え を 用 い て 説 い て い る 。 さ ら に 同 書 で は 然 今 大 乘 經 論 。 己 心 外 不 可 求 阿 彌 陀 佛 故 己 心 即 阿 彌 陀 佛 也 。 聞 我 身 即 阿 彌 陀 也 開 覺 。 始 覺 智 。 初 生 來 也 。 此 始 覺 智 。 非 初 成 阿 彌 陀 佛 達 有 無 始 無 終 阿 彌 陀 佛 是 言 始 覺 還 迎 本 覺 也 。 ︵ 恵 全 一 ・ 五 五 一 頁 ︶ 他 方 世 界 と し て の 弥 陀 で は な く 、 己 心 の 弥 陀 と 聞 い て 悟 る 始 覚 の 智 を 本 来 的 に 本 覚 に 帰 す る も の と 説 い て い る 。 ま た 次 の 文 献 と し て 妙 行 心 要 集 所 説 の 智 に つ い て 論 し た い 。 こ の 書 の 自 受 用 身 の 項 に お い て 、 是 能 観 智 。 精 進 無 正 證 得 無 生 法 身 妙 境 故 所 顕 理 。 能 冥 極 智 。 冥 合 不 二 。 等 同 無 別 。 境 智 體 一 。 妄 謂 是 二 冥 合 體 ⋮ ⋮ 中 略 ⋮ ⋮ 如 本 有 無 明 所 覆 。 反 迷 見 實 得 此 妙 理 法 身 非 常 非 無 常 而 無 始 無 終 報 智 之 境 也 。 智 有 事 理 事 即 始 覺 。 智 用 而 明 。 亦 無 明 究 竟 之 始 。 故 云 有 始 也 。 無 明 復 不 發 。 生 滅 此 永 止 。 智 存 不 可 盡 。 故 云 無 終 也 。 理 則 本 覺 。 智 體 究 竟 顯 之 極 也 。 以 本 有 故 無 始 。 以 常 住 故 無 終 也 。 理 是 智 體 。 無 常 住 。 故 云 報 智 境 合 亦 非 常 非 無 常 也 。 等 同 法 身 無 始 無 終 。 故 云 亦 也 。 ︵ 恵 全 二 ・ 二 八 六 ∼ 二 八 七 頁 ︶ と あ り 、 能 観 の 智 と 法 身 の 妙 境 と を 挙 げ て 境 智 不 二 と 導 く 。 そ し て 境 智 の 體 は 一 で あ る と す る 。 そ れ を 後 に 智 體 と 表 現 し て い る が 、 智 に 事 理 が あ る と 説 く 。 智 に お い て 事 の 面 を 始 覚 と し て 理 の 面 を 本 覚 と 規 定 し て い る 。 智 体 は 究 竟 じ て 本 来 的 に 具 わ っ て お り 無 始 無 終 で あ っ て 常 住 の 法 と も 言 う 。 理 は 智 體 で 無 為 常 住 と 示 し て い る 。 よ っ て こ こ で は 法 身 を 観 じ る 能 観 の 智 ︵ 智 ︶ を 無 為 常 住 で あ り 本 覚 で あ る と し て い る 。 こ の よ う に 智 の 理 解 を 展 開 さ せ て い る こ と が 一 〇 四 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

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理 解 さ れ る 。 ま た こ の 項 目 に 続 き 次 の 智 體 智 用 に お い て 、 故 此 妙 智 有 始 無 終 。 浄 悟 為 縁 。 縁 生 佛 果 。 雖 是 縁 生 修 行 事 智 只 是 相 如 妙 智 。 故 云 始 覺 即 同 本 覺 ︵ 恵 全 二 ・ 二 八 九 頁 ︶ と あ る よ う に 縁 生 の 佛 果 は 如 に か な い 妙 智 で あ り 、 始 覺 は す な わ ち 本 覺 に 同 じ と 示 さ れ る 。 妙 智 は 菩 修 行 の 結 果 の 智 で 真 如 に か な い 妙 智 で 本 覚 と さ れ る 。 こ れ は 先 の 自 受 用 身 の 項 目 で 語 ら れ た よ う に 妙 智 は 本 覚 で あ る 。 要 す る に 仏 智 を 本 覚 と 説 き 示 し て い る こ と に 注 目 さ れ る 。 次 に 真 如 観 に つ い て 察 を 進 め た い 。 有 人 問 テ 云 ク 。 ⋮ ⋮ 中 略 ⋮ ⋮ 有 人 何 ゾ 一 切 衆 生 ハ 本 ヨ リ 皆 佛 ナ リ ト 云 フ 。 又 世 ノ 人 ノ 思 ヒ ナ ラ ハ セ ル ヤ ウ モ 。 佛 ト 申 ス 事 ハ 。 三 十 二 相 八 十 種 好 ヲ 具 シ 。 神 通 智 。 一 切 ノ 者 ニ 勝 レ テ 自 在 ナ ル ヲ 佛 ト 申 ス 。 ⋮ ⋮ 中 略 ⋮ ⋮ 今 答 テ 云 ク 。 我 モ 人 モ 。 本 ハ コ レ 一 實 如 ノ 理 ニ シ テ 。 ︵ 恵 全 一 ・ 四 七 一 ∼ 四 七 二 頁 ︶ こ こ に は 端 的 に 一 切 衆 生 は 本 よ り 皆 仏 と 説 か れ る 。 そ し て 衆 生 は 仏 の 神 通 智 を 具 足 し て お り 真 如 の 理 と も 表 現 し て い る 。 最 後 に 漢 光 類 聚 を み る と 次 の よ う に 、 隨 心 起 念 止 具 足 。 一 切 衆 生 自 本 止 具 足 。 心 隨 境 界 起 念 當 體 止 具 足 也 。 止 外 全 無 餘 相 。 權 宗 權 門 意 不 知 自 身 佛 知 見 故 心 外 求 覺 體 止 心 一 切 衆 生 無 不 起 念 念 若 起 皆 是 止 現 前 正 行 也 。 此 道 理 値 知 識 堅 固 解 了 是 初 隨 喜 品 也 。 此 道 理 信 解 是 衆 生 開 佛 知 見 也 。 華 經 説 得 佛 知 見 名 經 説 證 佛 知 見 開 佛 知 見 語 無 之 。 法 華 開 佛 知 見 云 甚 有 深 意 得 云 證 云 衆 生 外 有 覺 體 得 意 。 於 衆 生 妄 心 得 覺 體 云 也 。 今 開 佛 知 見 云 。 心 性 自 性 自 本 本 覺 佛 知 佛 見 止 也 。 不 知 之 名 凡 夫 値 知 識 汝 所 起 起 念 當 體 止 妙 行 被 示 説 開 自 心 迷 相 成 佛 一 〇 五 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

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知 見 知 見 始 不 來 。 自 本 具 足 故 云 開 佛 知 見 也 。 決 附 云 。 能 開 自 心 三 諦 本 理 名 開 佛 知 見 。 此 意 也 云 云 如 此 此 隨 喜 品 也 。 ︵ 大 正 七 四 ・ 四 一 一 頁 下 ︶ 一 切 衆 生 は 本 よ り 止 が 具 足 さ れ て い る と 説 い て い る 。 そ し て 方 便 門 の 所 説 で は 自 ら の 仏 智 見 を 知 ら な い が 、 華 厳 は 得 仏 知 見 で あ る と し 、 浄 名 経 は 證 仏 知 見 と し て 、 法 華 に 関 し て は 開 仏 知 見 と 言 う の は 甚 だ 意 義 深 い こ と と 解 し て い る 。 得 る と か 證 と い う の は 衆 生 が 外 に 覚 体 有 る と 心 得 て い く か ら で 、 法 華 の 開 仏 知 見 と は 、 衆 生 に お い て 心 性 の 自 性 本 よ り 本 覚 に し て 仏 知 ・ 仏 見 の 止 観 な り と 説 い て い る 。 以 上 の よ う に 院 政 期 の 文 献 を 検 討 す る と 、 真 実 智 が 本 覚 と 体 を 一 に し て 説 か れ て い る こ と が 明 ら か に な っ て き た 。 こ の 天 台 本 覚 思 想 に 最 初 に 批 判 を 加 え た 人 物 が 宝 地 房 24 証 真 ︵ 凡 一 一 二 九 ー 凡 一 二 一 四 ︶ と さ れ る 。 証 真 は 院 政 期 の 天 台 教 学 の 大 成 者 と 言 わ れ 法 華 玄 義 私 記 第 七 に お い て 次 の よ う に 批 判 す る 。 若 是 本 覺 非 因 非 果 豈 論 十 妙 ⋮ ⋮ 中 略 ⋮ ⋮ 若 云 釋 是 本 來 自 覺 佛 者 則 違 諸 文 如 向 所 引 。 又 本 覺 者 則 。 是 性 徳 。 豈 指 衆 生 理 性 為 佛 本 壽 耶 。 ⋮ ⋮ 中 略 ⋮ ⋮ 若 有 本 來 自 覺 佛 者 則 無 因 有 果 同 外 道 説 。 ⋮ ⋮ 中 略 ⋮ ⋮ 若 以 性 徳 名 本 覺 者 別 教 尚 明 本 有 佛 性 況 諸 經 圓 及 迹 門 中 無 此 理 耶 。 ︵ 天 台 大 師 全 集 四 ・ 四 七 二 ∼ 四 七 三 頁 ︶ 本 覚 は 因 果 に 非 ず 本 来 自 覚 仏 は 因 果 の 道 理 か ら 外 れ 外 道 の 教 え に な る こ と と 批 判 す る 。 大 久 保 良 峻 氏 は 証 真 の こ の 批 判 に つ い て 、 本 覚 を 本 来 自 覚 仏 と す る 説 を 破 し て い る の で あ る 。 要 す る に 、 本 覚 の 語 自 体 を 否 定 す る の で は な く 、 証 真 は そ れ を 性 徳 ・ 理 性 と 理 解 す る こ と に よ っ て 、 特 に 密 教 の 立 場 か ら な さ れ る 本 来 自 覚 仏 と い う 定 義 を 破 し て い る の で あ る 。 ⋮ ⋮ 中 略 ⋮ ⋮ 証 真 が 批 判 し た 本 覚 の 概 念 は 、 確 か に 当 時 の 日 本 天 台 宗 の 教 学 の 性 格 を 伝 え る も の と え ら れ る が 、 密 教 と の 関 わ り が 中 心 と な っ て い る の で あ り 、 中 古 天 台 に お け る い わ ゆ る 本 覚 思 想 文 献 一 〇 六 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

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に 見 ら れ る よ う な 教 義 全 般 を 批 判 し た も の で は な い 。 と 指 摘 25 す る 。 そ し て 天 台 本 覚 思 想 は 現 実 肯 定 が 悪 用 さ れ て 中 世 末 に 愛 欲 ・ 財 欲 の 達 成 を 祈 る 玄 旨 帰 命 壇 な る も の が 発 生 し 、 霊 空 光 謙 ︵ 一 六 五 二 ∼ 一 七 三 九 ︶ 著 述 の 闢 邪 編 で 批 判 を 加 え ら れ た こ と に よ り 本 覚 思 想 は そ の 思 想 の 現 象 面 に お い て 終 わ り を 告 げ た と さ 26 れ る 。 何 れ に し て も 小 論 で 察 し た 院 政 期 の 文 献 は 日 本 天 台 史 の 上 で 天 台 本 覚 思 想 の 影 響 を 多 分 に 受 け た 著 述 と 言 え よ う 。 以 上 検 討 し た こ と よ り 、 院 政 期 天 台 文 献 に み ら れ る 智 の 所 説 は 法 華 経 や 智 の 著 述 に み ら れ る そ れ と は 顕 著 に 異 な る 部 分 が 認 め ら れ た 。 四 法 華 経 や 智 の 法 華 玄 義 摩 止 観 六 妙 法 門 の 所 説 か ら 天 台 教 学 に お け る 智 の 説 き 方 を 察 し 、 次 い で 院 政 期 の 成 立 と み ら れ る 天 台 文 献 所 説 の 智 に つ い て 検 証 し た 。 法 華 経 や 智 の 所 説 と 院 政 期 の 文 献 に つ い て 、 智 の 説 き 方 と い う 観 点 か ら 比 較 す る と 、 両 者 は 異 な る 点 が 顕 著 に な っ た 。 本 来 は 甚 深 無 量 で あ り 難 解 難 入 の 仏 の 智 に つ い て 、 院 政 期 の 著 述 は 凡 夫 の 相 続 す る 妄 念 を 般 若 の 智 と し て 位 置 づ け る 。 円 教 で 説 く 一 念 三 千 や 一 心 三 観 に よ っ て 得 る は ず の 難 解 難 入 の 智 門 は 我 ら は 本 覚 如 来 で あ り 無 作 の 三 身 と 示 さ れ る 。 未 だ 悟 を 開 い て い な い 衆 生 が 如 何 な る 因 縁 に よ っ て 仏 と 成 る か の 問 題 に つ い て は 、 方 便 智 で は な い 真 実 智 が 既 に 衆 生 に 備 わ っ て い る も の と 説 く 。 ま た 能 観 の 智 ︵ 智 ︶ は 無 為 常 住 の 妙 智 ︵ 仏 智 ︶ で あ り 本 覚 で あ る と す る 。 そ し て 端 的 に 一 切 衆 生 は 本 よ り 皆 仏 な り と 説 い て 、 衆 生 は 仏 の 神 通 智 を 具 足 し て お り 、 法 華 の 開 仏 知 見 と は 心 性 の 自 性 本 よ り 本 覚 に し て 仏 知 ・ 仏 見 の 止 観 な り と 説 い て い る 。 凡 夫 の 妄 念 を 智 と し て 衆 生 は 本 覚 な る 故 に 、 そ こ に は 止 観 等 の 修 行 に よ る 智 の 開 発 を 特 に 明 示 す る 必 要 も 生 じ な か っ た と え ら れ る 。 そ れ が 要 因 と な り 、 後 世 に お け る 修 行 不 要 論 に 繫 が っ て い っ た の で は な い 一 〇 七 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

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か と 思 わ れ る 。 大 久 保 良 峻 氏 は 、 修 行 の 階 梯 の 六 即 義 で 天 台 学 で は あ ら ゆ る 段 階 に あ っ て も 実 は 仏 と 等 し い と い う 平 等 面 即 の 面 と 仏 に な る ま で の 漸 進 的 な 修 行 の 段 階 で あ る 六 の 面 の 両 方 を 同 時 に 説 い て い る が 、 天 台 本 覚 思 想 は 即 の 面 を 一 方 的 に 強 調 す る 傾 向 に 陥 っ た と 指 27 摘 す る 。 花 野 充 道 氏 は 円 教 の 断 惑 を 不 断 の 断 と し 、 す な わ ち 理 論 と し て は 不 断 煩 悩 で あ る け れ ど も 、 現 実 に は 断 煩 悩 の 実 践 が 要 請 さ れ る 。 と こ ろ が 日 本 の 天 台 本 覚 思 想 は 、 そ の 円 教 理 論 ︵ 不 断 煩 悩 ︶ だ け を 徹 底 し 、 そ れ を 現 実 に ま で も ち こ ん で 、 三 毒 の 当 体 即 ち 仏 体 な り と い う 思 想 を 鼓 吹 し た の で あ る と 指 摘 28 す る 。 両 者 の こ の よ う な 指 摘 は 智 の 所 説 と い う 観 点 か ら 言 っ て も 院 政 期 天 台 文 献 に そ の ま ま 該 当 す る も の と 察 さ れ る 。 少 数 な が ら 院 政 期 の 天 台 文 献 の 検 討 を 通 し て 智 の 所 説 の 一 端 を 探 る こ と を 小 論 の 目 的 と し た 。 院 政 期 の 文 献 は 一 乗 思 想 と し て は 従 来 の 天 台 文 献 と 思 想 的 な 相 違 は な い も の の 、 法 華 経 や 智 の 言 葉 に 見 ら れ な か っ た 天 台 本 覚 思 想 を 前 面 に 出 し た 説 き 方 で 智 を 説 い て い る こ と が 明 ら か と な っ た と 言 え よ う 。 1 末 木 文 美 士 鎌 倉 仏 教 の 形 成 を め ぐ っ て ︵ 速 水 侑 編 院 政 期 の 仏 教 吉 川 弘 文 館 、 一 九 九 八 ︶ 五 三 ∼ 五 四 頁 を 参 照 。 2 佐 藤 哲 英 ・ 小 寺 文 穎 ・ 源 弘 之 ・ 福 原 隆 善 宝 地 房 証 真 の 共 同 研 究 ︵ 二 ︶ ︵ 印 度 学 仏 教 学 研 究 三 八 ︵ 一 九 ー 二 、 一 九 七 一 ︶ 一 六 九 頁 。 3 法 華 経 諸 品 に 出 る 一 切 種 智 に つ い て 、 町 田 是 正 氏 は 一 切 事 象 の 全 体 像 ︵ 平 等 ︶ と 個 別 像 ︵ 差 別 ︶ を 合 わ せ る 仏 智 ︵ 総 体 相 と し て 知 る 智 ︶ に 当 て て い る と 解 し て い る 。 町 田 是 正 法 華 経 に み る 実 践 と し て の 智 ︵ 浅 井 円 道 一 〇 八 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

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先 生 古 稀 記 念 論 文 集 ・ 日 教 学 の 諸 問 題 平 楽 寺 書 店 、 一 九 九 七 ︶ 七 一 六 頁 。 ま た 川 崎 信 定 氏 は 摩 止 観 の 出 典 か ら 、 蔵 通 二 教 の 果 人 は 一 切 智 を 、 別 円 二 教 の 果 人 は 一 切 種 智 を 得 る と し 、 一 切 智 と 一 切 種 智 の 質 的 展 開 が あ る こ と を 指 摘 す る 。 川 崎 信 定 一 切 智 と 一 切 智 智 ︵ 密 教 大 系 法 蔵 館 、 一 九 九 四 ︶ 五 四 頁 。 4 町 田 是 正 前 掲 論 文 七 二 四 頁 。 5 末 綱 恕 一 分 別 智 と 無 分 別 智 ︵ 印 度 学 仏 教 学 研 究 一 六 ・ 一 、 一 九 六 七 ︶ 。 6 法 華 玄 義 の 意 味 解 釈 は 多 田 孝 正 著 法 華 玄 義 ︵ 大 蔵 出 版 、 一 九 八 五 ︶ を 参 照 し 、 摩 止 観 に つ い て は 新 田 雅 章 著 摩 止 観 ︵ 大 蔵 出 版 、 一 九 八 九 ︶ 一 二 九 頁 他 を 参 照 。 7 秋 田 光 兆 天 台 教 学 に お け る 行 の 意 義 智 の 実 践 と い う 観 点 か ら ︵ 山 家 学 会 紀 要 三 、 二 〇 〇 〇 ︶ を 参 照 。 8 意 訳 に つ い て は 、 大 野 栄 人 ・ 伊 藤 光 壽 著 天 台 六 妙 門 の 研 究 ︵ 山 喜 房 佛 書 林 、 二 〇 〇 四 ︶ 四 三 ∼ 四 四 頁 を 参 照 。 9 意 訳 に つ い て は 、 大 野 栄 人 ・ 伊 藤 光 壽 著 前 掲 書 四 七 頁 を 参 照 。 10 大 野 栄 人 ・ 伊 藤 光 壽 著 前 掲 書 六 九 頁 ・ 七 九 頁 を 参 照 。 11 大 野 栄 人 ・ 伊 藤 光 壽 著 前 掲 書 一 六 九 頁 ・ 一 八 三 頁 を 参 照 。 12 大 野 栄 人 ・ 伊 藤 光 壽 著 前 掲 書 二 五 七 頁 を 参 照 。 13 大 野 栄 人 ・ 伊 藤 光 壽 著 前 掲 書 二 五 七 頁 ・ 二 八 一 頁 を 参 照 。 14 高 崎 直 道 他 編 仏 教 ・ イ ン ド 思 想 辞 典 ︵ 春 秋 社 、 一 九 八 七 ︶ 二 九 四 頁 ︵ 津 田 真 一 稿 ︶ を 参 照 。 15 花 野 充 道 氏 は 三 十 四 箇 事 書 を 平 安 末 期 ま で の 成 立 と し て 皇 覚 の 書 と み て い る 。 花 野 充 道 ︵ 三 十 四 箇 事 書 の 研 究 ︵ 下 ︶ 道 心 二 〇 、 二 〇 〇 〇 ︶ を 参 照 。 16 佐 藤 哲 英 著 叡 山 浄 土 教 の 研 究 ︵ 百 華 苑 、 一 九 七 九 ︶ 二 八 二 頁 を 参 照 。 私 も 自 行 念 仏 問 答 の 成 立 時 期 を 一 二 世 紀 前 半 頃 と え て い る 。 拙 稿 自 行 念 仏 問 答 の 成 立 背 景 に つ い て 妙 行 心 要 集 と の 比 較 を 通 し て 龍 谷 教 学 四 一 、 平 成 一 八 ︶ 。 17 佐 藤 哲 英 著 前 掲 書 二 五 九 ∼ 二 六 八 頁 を 参 照 。 私 は 妙 行 心 要 集 の 成 立 時 期 に つ い て は 、 源 信 入 寂 後 か ら 三 十 四 箇 事 書 の 成 立 よ り 少 し 先 行 す る 時 期 と え て い る 。 拙 稿 妙 行 心 要 集 の 思 想 的 特 色 に つ い て ︵ 龍 谷 大 学 論 集 一 〇 九 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

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四 六 五 、 二 〇 〇 五 ︶ 。 18 天 台 本 覚 論 日 本 思 想 大 系 九 、 五 七 九 ∼ 五 八 三 頁 ︵ 大 久 保 良 順 稿 漢 光 類 聚 ︶ を 参 照 。 19 末 木 文 美 士 前 掲 論 文 、 七 四 ∼ 七 五 頁 を 参 照 。 20 田 村 芳 朗 氏 は 天 台 本 覚 論 に お い て 日 本 の 天 台 本 覚 思 想 で は 、 本 覚 を 真 如 に ま で 高 め 、 万 象 は 本 覚 真 如 の 顕 現 と 肯 定 し 、 そ う い う こ と で 理 顕 本 を 主 張 し た の で あ り 、 進 ん で は 、 煩 悩 は 煩 悩 な が ら 、 万 象 そ の ま ま 、 あ る い は 現 実 の 事 象 こ そ 、 本 覚 真 如 の 生 き た す が た で あ る と 肯 定 し 、 そ う い う こ と で 事 常 住 を 主 張 し た の で あ っ て 、 し た が っ て 、 徹 底 し た 顕 現 的 相 即 論 な い し 顕 在 的 相 即 論 は 、 日 本 の 天 台 本 覚 思 想 に い た っ て 達 成 さ れ た と 見 ね ば な ら な い と 思 想 解 説 を し て い る 。 田 村 芳 朗 天 台 本 覚 思 想 概 説 、 多 田 厚 隆 ・ 大 久 保 良 順 ・ 田 村 芳 朗 ・ 浅 井 円 道 の 四 氏 に よ る 天 台 本 覚 論 五 〇 三 頁 を 参 照 。 末 木 文 美 士 氏 の 解 説 に は 本 覚 思 想 に つ い て 論 ず る 際 、 常 に 問 題 と な る の は 本 覚 思 想 と い う 概 念 の 曖 昧 さ で あ る 。 そ の 意 味 す る と こ ろ は 、 大 き く 分 け て 二 つ の 方 向 が え ら れ る 。 第 一 に 、 日 本 中 世 天 台 で 展 開 し た 教 学 で あ り 、 恵 心 流 ・ 檀 流 の 口 伝 法 門 を 中 心 に 展 開 し た 思 想 動 向 を 意 味 す る 。 天 台 本 覚 思 想 と 限 定 さ れ て 呼 ば れ る と こ ろ の も の で あ る 。 そ の 特 徴 は 、 凡 夫 の あ り 方 を 含 め て 、 現 象 世 界 を そ の ま ま 絶 対 と 認 め る と こ ろ に 求 め ら れ る 。 と こ ろ が 、 こ の 意 味 で の 本 覚 思 想 は 必 ず し も 本 覚 の 概 念 を 中 心 的 に 含 ま な い 場 合 が あ る 。 た と え ば 、 天 台 本 覚 思 想 の 代 表 的 な 文 献 と さ れ る 三 十 四 箇 事 書 で は 、 還 同 本 覚 の よ う な 表 現 は 見 え る も の の 、 ほ と ん ど 本 覚 と い う 述 語 は 重 要 な 役 割 を 果 た し て い な い 。 し た が っ て 、 そ れ を 本 覚 思 想 と 呼 ぶ の は 適 当 か ど う か 、 な お 議 論 の 余 地 が あ る が 、 今 日 、 そ の 用 語 が 定 着 し て い る 。 ま た 、 類 似 の 思 想 は 天 台 の み な ら ず 、 他 の 宗 に も 見 ら れ 、 し た が っ て 、 あ る 程 度 曖 昧 に な る が 、 そ れ ら に も 類 比 的 に 本 覚 思 想 と い う 概 念 を 拡 大 す る こ と が 必 要 と な る 。 こ れ を 本 覚 思 想 A と 呼 ぶ こ と に す る 。 第 二 に 本 覚 と い う 語 を キ ー ワ ー ド と し て 展 開 す る 思 想 を 広 く 本 覚 思 想 と 呼 ぶ こ と が あ る 。 た と え ば 、 空 海 は 本 覚 と い う 用 語 を 重 視 し て お り 、 こ こ か ら 、 し ば し ば 空 海 の 本 覚 思 想 と い う こ と が テ ー マ と し て 論 ぜ ら れ る 。 こ の 場 合 は 、 本 覚 と い う 術 語 の 変 遷 を 追 う こ と に よ っ て 、 仏 教 思 想 史 の 一 面 を 明 ら か に す る こ と が で き る 。 こ れ を 本 覚 思 想 B と 呼 ぶ こ と に す る 。 と あ る 。 末 木 文 美 士 本 覚 思 想 と 密 教 ︵ 日 本 密 教 シ リ ー ズ 密 教 4 春 秋 社 、 二 〇 〇 〇 ︶ を 参 照 。 本 覚 思 想 の 研 究 書 に 田 村 芳 朗 氏 の 本 覚 思 想 論 ︵ 春 秋 社 、 一 九 九 〇 ︶ や 浅 井 圓 道 氏 編 の 本 覚 思 想 の 源 流 と 展 開 ︵ 平 楽 寺 書 店 、 一 九 九 一 ︶ 。 ま た 近 年 で は 大 久 保 良 峻 氏 の 天 台 教 学 と 本 覚 思 想 ︵ 法 蔵 館 、 一 九 九 八 ︶ や 花 野 充 一 一 〇 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

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道 氏 に よ る 研 究 ︷ 本 覚 思 想 と 本 迹 思 想 本 覚 思 想 批 判 に 応 え て ︵ 駒 沢 短 期 大 学 仏 教 論 集 九 号 二 〇 〇 三 年 一 〇 月 ︶ な ど 本 覚 思 想 に 関 す る 多 数 の 論 文 ︸ 等 が あ る 。 21 花 野 充 道 本 覚 思 想 の 定 義 を め ぐ っ て ︵ 印 度 学 仏 教 学 研 究 五 二 ー 二 、 二 〇 〇 四 ︶ を 参 照 。 22 天 台 本 覚 論 ︵ 日 本 思 想 大 系 九 ︶ 田 村 芳 朗 校 注 四 五 七 頁 を 参 照 。 23 天 台 本 覚 論 田 村 芳 朗 校 注 一 六 九 頁 に は 三 因 仏 性 を 正 因 仏 性 本 来 、 理 と し て 備 わ る 仏 性 。 了 因 仏 性 理 を 照 ら す 智 。 縁 因 仏 性 | 智 を お こ す 縁 と な る 善 行 ︶ と 示 す 。 24 佐 藤 哲 英 / 小 寺 文 穎 / 源 弘 之 / 福 原 隆 善 宝 地 房 証 真 の 共 同 研 究 ︵ 二 ︶ ︵ 印 度 学 仏 教 学 研 究 三 八 ︵ 一 九 ・ 二 ︶ 一 九 七 一 ︶ 。 25 大 久 保 良 峻 著 天 台 教 学 と 本 覚 思 想 ︵ 法 蔵 館 、 一 九 九 八 ︶ 七 六 ∼ 七 七 頁 を 参 照 。 26 田 村 芳 朗 本 覚 思 想 に 対 す る 批 判 証 真 ・ 道 元 仏 教 思 想 史 5 ︵ 平 楽 寺 書 店 、 一 九 八 二 ︶ 一 二 五 頁 。 27 大 久 保 良 峻 著 前 掲 書 七 九 ∼ 八 〇 頁 。 28 花 野 充 道 智 の 円 教 理 論 ︵ 印 度 哲 学 仏 教 学 一 五 、 二 〇 〇 〇 ︶ を 参 照 。 一 一 一 院 政 期 天 台 文 献 に お け る 智 慧 に つ い て ︵ 道 元 徹 心 ︶

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参照

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