NII-Electronic Library Service 駒 澤 大 學 佛 教 學 部 研 究 紀 要 第 四 十 七 號 卒 成 元 年 三 月
社
会
主
義
中
国
の
宗
教
政
策
抄
訳
『中
国
社
会
主
義
時
期
の宗
教
問
題
』 N氷
井
一 九 〇政
之
N工 工一Eleotronlo Llbrary Servloe
は じ め に こ の 小 論 は 、 標 題 に も 掲
げ
た よ う に 、 一 九 八 四 年 四 月 、L
海 社 会 科 学 院 よ り刊
行 さ れ た 『 中 国 社 会 主 義 時 期 的 宗 教 問 題 』 の 部 分 訳 で あ る 。 当 該 の 書 に つ い て は、 本文
中 に お い て ふ れ る こ と も あ ろ う し 、 ま た 別 の機
会 に お い て述
べ る 予 定 も あ る の で、詳
し く は 述 べ な い が 、 全 体 の 内 容 を推
測 す る 便 を 考 え て、 と り あ え ず そ の 目 次 を 記 し て お こ う 。 這 本 書 的 由 来1
〈 中 国 社 会 主 義 時 期 的 宗 教 問 題V
前 言 羅 竹 風 第 一 章 緒 論 第 二 章 我 国 宗 教 的 歴 史 概 況 与 特 点 第 一 節 各 大 宗 教 的 歴 史 源 流 第 二 節 宗 教 対 我 国 文 化 的 影 響 第 三 節 我 国 宗 教 的 歴 史 特 点 第 四 節 解 放 前 夕 宗 教 的 状 況 第 三 章 建 国 以 後 宗 教 状 況 的 根 本 変 化 第 一 節 各 宗 教 組 織 的 政 治 状 況 的 変 化 第 二 節 宗 教 界 人 士 思 想 面 貌 的 変 化 第 三 節 宗 教 思 想 方 面 的 変 化 第 四 節 根 本 変 化 的 深 遠 意 義 第 四 章 宗 教 長 期 存 在 的 原 因 第 「 節 宗 教 伝 統 的 影 響 第 二 節 社 会 原 因 第 三 節 心 理 因 素 第 四 節 宗 教 存 在 的 長 期 性 是 多 種 原 因 互 相 作 用 的 結 果 第 五 章 宗 教 和 社 会 主 義 社 会 相 協 調 的 問 題 第 一 節 協 調 的 根 拠 和 含 義 第 二 節 協 調 的 条 件 和 表 現 第 三 節 不 断 克 服 不 協 調 現 象 第 六 章 宗 教 信 仰 自 由 政 策 第 一 節 宗 教 政 策 的 理 論 根 拠 和 基 本 内 容第 二 節 宗 教 政 策 貫 徹 執 行 情 況 的 回 顧 第 七 章 結 束 語 附 録 鄰 県 去 来 関 于 福 建 省 仏 教 寺 廟 開 展 生 産 労 働 情 況 的 調 査 部 分 仏 教 青 年 的 信 教 原 因 初 析 四 川 青 城 山 道 教 現 状 上 海 某 街 道 退 休 職 工 信 仰 基 督 教 情 況 的 調 査 長 白 山 下 的 教 会 青 浦 県 漁 民 教 徒 宗 教 信 仰 状 況 初 探 新 彊 伊 斯 蘭 教 与 我 国 社 会 主 義 実 践 相 適 応 的 問 題 従 某 地 基 督 教 的 発 展 看 宗 教 生 長 的 土 壌 後 記 本 論 で 抄 訳 の
対
象 と し た の は 、 羅 竹 風 氏 の前
言 と第
一章
の 緒 論 、付
録 と し て 付 さ れ た 九編
の 調 査 結 果 の う ち 、仏
教
等 に 関 係 す る 三 編 で あ る 。 前 言 を 認 め た 主 編 者 の羅
竹 風 氏 は 、 現 在 七 八歳
、 北 平大
学 の 中 文 系 を 卒 業 の の ち、 一 九 四 九年
に 上 海 市 の宗
教 局 局 長 、 一 九 五 九年
に 上 海 社 会 科 学 聯 合会
主 席 を 務 め ら れ 現 在 に 至 っ て い る と 聞 く 。 と こ ろ で 一 九 六 五年
一 一 月 に 始 ま る 所 謂 の文
化 大革
命
は 一 九 七 六年
の 周 恩 来 、朱
徳 、 毛 沢 東 と い う 、 い わ ば 新 生 中 国 の 柱 の 死 、 さ ら に 一 九 七 七 年 七 月 の 四 人 組 ( 江 青 ・ 王 洪 文 ・ 張 春 橋 . 姚 文 元 ) の党
籍
剥
奪 と党
内 外 の 職 か ら の 解 任 に よ っ て そ 社 会 主 義 中 国 の 宗 教 政 策 ( 永 井 ) の 終 焉 を 迎 え た。 そ の 歴 史 的 評 価 に つ い て の 結論
も 一 応 は 出 た 。 以 後 の 全 国 人 民 代 表 大 会、 あ る い は 中 国 共産
党
の 活 動 は 、 お お ま か に 言 う な ら 、 一方
に 四 人 組 批 判 、 い ま 一方
に 立 ち 遅 れ た 経 済 な ど い か に 回 復 発 展 さ せ る か に 、 そ の 努 力 を 払 っ て き た も の と み て よ い 。 い わ ゆ る農
業 ・ 工 業 ・ 国 防 ・ 科 学技
術 の 面 の 四 つ の 現 代 化 は 、 後 者 の 目 ざ す と こ ろ を 端 的 に 表 現 し た も の で あ る 。 し か も 現 代 化 が は か ら れ る の は 、 右 の 四 つ に 限 ら な い 。今
、 宗 教 や 哲 学 な ど 、 文 化 の面
で の 全 人 代 第 五 期 第 一 回 会 議 ( 七 八 ・ 二 ・ 二 六 ) の報
告 を み て お こ う 。 全 国 に お け る 哲 学 ・ 社 会 科 学 発 展 計 画 の 作 成 に と り く み、 哲 学、 経 済 学 、 政 治 学 、 軍 事 学、 法 学 、 歴 史 学 、 教 育 学 、 文 学 ・ 芸 術 理 論、 言 語 学、 民 族 学 、 宗 教 学 な ど の 研 究 を 大 い に 発 展 さ せ る べ き で あ る 。 思 想 理 論 戦 線 の 同 志 た ち は、 マ ル ク ス 主 義 の 哲 学、 社 会 科 学 の 普 及 と 発 展 に 寄 与 す る よ う 努 力 す べ き で あ る 。 ( 〔 新 中 国 年 鑑 〕 一 九 七 九 年 版、 覃 」 。。 卜⊃ ) 本書
が し ば し ば 言 及 す る 第 一 一期
三 中 全 会 の 公報
( 七 八 ・ 一 二 ・ 二 二 ) は 、 主 と し て 経 済 面 で の現
代 化 建 設 を 強 調 す る 点 で 、新
中 国 の 歴 史 の 中 で も 特 に大
き な 意 味 を持
つ 。 そ の 中 で も 会 議 は、 全 党 の 同 志 と 全 人 民 が マ ル ク ス ・ レ ー ニ ン 主 義、 毛 沢 東 思 想 の 導 き の も と に、 思 想 を 解 放 し、 新 し い 状 況、 新 し い 事 物 、 新 し い 問 題 の 研 究 に つ と め 、 実 事 求 是、 す べ て を 実 際 か ら 出 発 さ せ る 。 理 論 と 実 際 の 結 合 と い う 原 則 を 堅 持 し て の み、 わ 一 九 一NII-Electronic Library Service 社 会 主 義 中 国 の 宗 教 政 策 ( 永 井 ) が 党 は 活 動 の 中 心 の 転 換 を 順 調 に 実 現 で き る の で あ り、 四 つ の 現 代 化 実 現 の 具 体 的 な 過 程、 方 針、 方 法、 措 置 を 正 し く 解 決 し、 生 産 力 の 急 速 な 発 展 に 照 応 し な い 生 産 関 係 と 上 部 構 造 を 正 し く 改 革 す る こ と が で ぎ ろ の で あ る。 〔 同 書、 歹 曽 ) と し て い る の は、 本 書 刊 行 の
背
景 の 一 端 を 示 し た も の と 言 え よ う 。 ち な み に 〔 新 中 国 年 鑑 〕 一 九 ヒ 九年
版 は 、 総 会 の コ ミ ュ ニ ケ に よ れ ば、 中 央 工 作 会 議 と 三 中 総 と の 全 過 程 に お い て、 参 加 者 は マ ル ク ス ・ レ ー ニ ン 主 義、 毛 沢 東 思 想 を 踏 ま え 、 思 想 を 解 放 し て 思 う ま ま に 発 言 し 、 党 内 民 主 主 義 と く 実 事 求 是V
、 大 衆 路 線、 批 判 と 自 己 批 判 と い う 党 の す ぐ れ た 作 風 と を 十 分 に 回 復 し、 発 揚 し た。 ( 同 書 、 O. ◎。 ) と し て い る 。 当 時 の 主 席 は 華 国 鋒 で あ り 、 郡 小 平 路 線 が 定 着 す る に は 、 ま だ し ぼ ら く の 時 間 が 必 要 . で あ る が、 い ず れ に せ よ 、 三 中 全 会 が 自 由 化 へ の転
機 と な っ た こ と は 理 解 で き る 。 も ち ろ ん そ の 転 機 は 、 三 中 全 会 の 時 に 突 然 訪 れ た も の で は決
し て な く 、 す で に 文革
後
期
の 七 七 年 五 月 の 中 国 科 学 院 か ら の 哲 学 社 会 科 学 部 の 独 立 、 中 躙 冖 社 会 科 学 院 の 成 立 は そ の証
左 と な る で あ ろ う. 当 面 の 課、 題 か ら す れ ば 、L
海 社 会 科 学 院 の 再 開 は 七 八年
一 〇 月 で あ る か ら、 こ れ も 三 中 全 会 そ の も の よ り は早
い こ と と な る 。 と こ ろ で 羅 氏 の 前 言 は 、 す べ て の 研 究 は 「 実 事 求 是 」 か ら 一 九 二 出発
し な く て は な ら ぬ こ と を 強 調 し て い る が 、 付 録 の 部 分 は 、 ま さ に そ の よ う な 研 究 方 法 論 を裏
付 け た も の と い え る 。 フ ィ ー ル ド ワ ー ク を 基 礎 と す る宗
教 関 係 の 論 文 は 、 今 日 の 日 本 で は 、 特 に 日 新 し い も の で は な い 。 し か し 中 国 の 場 合 、特
に宗
教 の 研 究 に あ た っ て、 こ の よ う な 方 法 が と ら れ た 例 は た ぶ ん す く な い も の に 思 わ れ る し 、 な に よ り そ れ が 、 上海
市 の 社会
科
学 院 就 中 、 宗 教 研 究 所 の メ ン バ ー を 中 心 にと い う 公 的 な 機 関 に よ っ て な さ れ た と こ ろ に 大 き な 意 味 を 見 出 だ す 必 要 が あ ろ う 。 そ れ は
解
放 以 後 の 中 国 に お い て 宗 教 が 論 じ ら れ る 時、 多 く の 場 合 は 、 宗教
と 迷 信 を 一 し ょ く た に し た う え で 、 宗 教 の 存 在 を 全 く 認 め な い か、 あ る い は 認 め た と し て も少
数 民 族 に よ る 極 め て 限 定 的 な も の と す る 傾 向 の み が強
か っ た か ら で あ る 。 そ こ に は 当然
、 中 国 の 現 在 の 政 治 体制
を 歴 史 の流
れ の 中 で ど う 評 価 す る か と い う 問 題 と が か か わ っ て く る 。 解 放 闘 争 、 文 化 大 革 命、 開放
政 策 と い う 政 治 の 流 れ は 、 一 般 の 国 民 の 宗 教 に た い す る意
識 に も 大 き な 影 響 を与
え て き た で あ ろ う こ と は 、 容 易 に 想像
が で き る 。 そ れ ら の複
雑
な 流 れ は、 外 国 の 研 究 者 に と っ て は な か な か直
接 に 把 握 し づ ら い面
を 持 つ 。 そ の 意味
で 本 書 の 刊 行 は、 常 に 背 景 に あ る中
国 の 学 問 研 究 の も つ 政 治 性 を 無視
し え な い も の の、 解 放 後 の 中 国 の 、 宗 教 研究
書
が 固 有 に 持 っ て い た、有
神
論
と 無神
論 と の 比 較検
討 結 論 は す で に 明 ら か で あ るー
あ る い は原
典
N工 工一Eleotronlo Llbraryの 主 旨 を ま っ た く
無
視
L
た 牽 強 附 会 的 な 解 釈 な ど の研
究 態 度 が転
回 し つ つ あ る こ と を 示 す も の と し て、 画 期 的 な成
果 と 評 価 し て よ い の で は あ る ま い か。 ち な み に、 本 書 の 翻 訳 は 、 駒 沢 大 学 に よ る 昭 和 六 三 年 度、 在 外研
究 員 と し て 半 年 間 上 海 社 会 科 学 院 に 滞 在 し た時
点 よ り は じ め た も の で 、未
だ す べ て 完 了 し て い る わ け で は な い 。 ま た 筆 者 の 拙 訳 を 叱 正 下 さ れ た 学 芸 大 学 大 学 院 何 平華
女
史 、 内 山書
店 三 浦 勝 利 氏 に 謝 意 を捧
げ た い 。 〈 本 文V
本
書
の由
来
1
『 中 国 社 会 主 義 時期
の 宗 教 問 題 』 ま え が き 羅竹
風 あ る 一 つ の 物 事 に 対 す る と き、 事 実 に 基 づ い て 出
発
せ ず 、概
念 か ら 概 念 に わ た り 、曖
昧
か つ 抽 象 的 に 論 断 す る と 、 結 局 の と こ ろ 誰 で も 「 隔 離掻
痒 」 の嫌
い を免
れ が た い も の と な っ て し ま う 。 宗 教 に つ い て も 同 じ こ と で あ る 。 マ ル ク ス は 、 人 類 社会
に 階 級 の存
在
と 階級
間 の 闘争
の あ る こ と を 発 見 し た の が、彼
の功
績 で な く て 、 階 級 間 の闘
争 が 、 必 然 的 に 無産
階 級 を 導 き だ す と 論 証 し た こ と が 、 彼 の 新 し い 貢献
で あ る と い っ て い る。 宗 教 に つ い て の 論 述 で は 、 当 時 キ リ ス ト 教 が 、 支配
的 地 位 を占
め て い た ド イ ッ や ヨ ー ロ ッ パ の 情 況 か ら 出 発 し た が 、 主要
な こ と は 、 マ ル ク ス が 無産
階 級 が 緊密
に 団 結 し て 、 現 世 に お い て 、 自 ら の 生 活 を 改 善 す る こ と を 勝 ち取
る べ き で あ る と 特 に強
調 し た 点 で あ り 、 宗 教 信仰
へ の 意 見 の わ か れ は 二 の 次 だ っ た こ と で あ る 。 レ ー ニ ン が 提案
し た の は 、宗
教 信 仰 を 公 民 の 私 事 に 変 え た こ と 、 つ ま り 政権
と 宗 教 の 分離
、 宗 教 を 信 ず る か 信 じ な い か を 、 す べ て 個 人 の自
由 な 選 択 に よ る と 指 摘 し た こ と で あ る 。彼
も ま た ロ シ ア の 情 況 に も と つ い て 述 べ た の で あ る 。 い か な る 事物
も 、 す べ て そ の 本来
の 姿 に 立 ち か え ら な く て は な ら な い が 、 宗 教 に つ い て も ま た 例 外 で は な い 。 人 々 の 科 学 文 化 の 水 準 を 高 め れ ば 、宗
教 信 仰 を消
し さ る こ と が でき
る と 考 え る 「 文 化 論 」 が 、 宗教
信仰
と い う こ の 複 雑 な 現 象 を 完 全 に 解 釈 で き て は い な い し 、階
級
が な く な れ ば 、 宗 教 も 自 ず と 消 え る は ず だ と 主 張 す る 「 階級
論 」 が 、 す べ て を ひ っ く く る こ と も で き な い 。 な ぜ な ら 、 搾 取 階級
が 基 本的
に は 消 滅 し た はず
の 社 会 主義
社 会 に お い て 、 な お 宗 教 を 信 じ て い る 人 が い る か ら で あ る 。 人 類 は す で に 宇 宙 時代
に 入 っ た 。 し か し ア メ リ カ の あ る 宇 宙 飛 行 士 は 、 宇 宙 に い た とき
に、 逆 に神
の 創 造 の 偉 大 な 不 思議
さ 社 会 主 義 申 国 の 宗 教 政 策 ( 永 井 ) 一 九 三NII-Electronic Library Service 社 会 主 義 中 国 の 宗 教 政 策 ( 永 井 ) 一 九 四 に 感 動 し、 そ の た め よ り 篤 く 神 を 信 じ て 疑 わ な く な っ た 。
神
が 世 界 を 創 っ た と い う 神 話 は 、 す で に 科 学 に 否 定 さ れ る と こ ろ で は あ る が、 ど う し て 、科
学 者 の 一 部 が 、 人 と 万 物 は 神 の創
造
と 信 じ る の で あ ろ う か 。人
は貧
困 や 危 難 に あ る と き 、 容 易 に 宗 教 に接
近 す る と い う が 、 太 っ 腹 の 大 金 持 ち も 念 経 拝 仏 し て 、現
世 に 福 を 亨 け る だ け で は な く 、 死 後 に 西 方 極 楽 世界
へ 行 っ て も引
き続
き 享 受 で き る よ う 願 っ て い る の で は な い か 。宗
教 は 一 種 の 極 め て 複 雑 な 歴 史 的 社 会 的 な 現 象 で あ り 、 必 ず そ の実
体 お よ び 関 連 す る 多 く の 具 体 的 な 条 件 か ら 考 察 し な け れ ぽ な ら な い 。 た と え ば 人 々 の 価値
観 、 思 惟 方 式 、 心 理 特徴
、 社 会 関 係 等 の 面 か ら 着 眼 す る こ と で 、 比 較 的 明 晰 な論
証 と 結 論 を 出 す こ と が で き よ う 。 も し う わ べ だ け 論 じ て 、 特 定 な る 時間
、 場 所 、 条 件 を 無 視 す る な ら 、 ま に あ わ せ の 薬 の 処 方 を 求 め る よ う な も の で 、 そ れ は 何 の 役 に も 立 た な い 。階
級 社 会 に あ っ て は 、 階 級 抑 圧 が 宗 教 の 存 在 と 発 展 の 土 壌 で あ り 、 レ ー ニ ン が か つ て、 階 級 抑 圧 に よ っ て 造 ら れ る 災 難 を 「 地 震 」 に 例 え た の は 、 ま さ に こ の 道 理 を 説 明 し た の で あ る 。 し か し 現 在 、 私 た ち が 直 面 し て い る の は 、 歴 史 に お い て 前 例 の な い 、 新 し い 情勢
と 新 し い 問 題 で あ る 。 つ ま り 、 搾 取 階 級 が 基 本 的 に 消 滅 し た 社 会 主義
社 会 に あ っ て 、 ど う し て宗
教 が 依 然 と し て存
在 す る か と い う こ と で あ る 。 原 因 は 当 然 な が ら 複 雑 で あ る。 我 国 で は 、 生 産 力 の発
展 の 水 準 は と く に 低 く 、貧
困 、落
後
、 病 気等
の 災 難 が 、 宗 教 を 信 仰 す る 人 々 の 主 要 な 原因
と な っ て い る 。 こ の ほ か 、 生 老病
死 に 直 面 し た と き の 問 題 は 、 あ る 人 々 に つ い て 言 え ぽ 、 そ れ は 長 期 の 困 惑 と な っ て お り 、彼
ら は 、 合 理 的 な 理 解 を 得 ら れ な い 時 、希
望 と 期 待 を 「来
生 」 に 寄 せ る の で あ る. 、 こ の よ う に み て く る と 、 社 会 主 義 時 期 に お け る 宗 教 閙題
は 、 す で に宗
教 学 に お い て 、 ま さ に 探 求 す べ き 重 要 な課
題 と な っ て い る の で あ る 。 上海
社 会 科 学 院 宗 教 研 究 所 は、 党 の 十 一期
三 中 全 会 で 確 定 し た 思 想 路 線 に も と ず き 、 マ ル ク ス 主 義 の 立 場 、 観点
、 方 法 を 導 き と し 、 当 面 の 我 国 の 宗 教 の 現 実 と 密 接 に 結 合 さ せ 、 実 地 の 調 査 を 通 し て 、 大 最 の 生 き た 資 料 を 把 握 す る よ う に つ と め 、 そ う し て 帰 納 分 析 し 、 く り か え し 考 え、 何 度 も稿
を か え 、 よ う や く こ の 『 中 国 社 会 室 義 時期
の 宗 教 問 題 』 を 書 き あ げ た の で あ る 。 こ れ は す で に 全 国 哲 学 社 会 科 学 の 「 第 六 期 五 ケ年
計 画 」 の 重 点 科 学研
究 の 項 目 に 入 っ て い る 。 本 書 は す べ て 七章
で 、 調 査 報 告 書 九 編 を 付 し 、 約 二 十 万字
で あ る 。 編 集 の 中 心 と な っ た の ぱ、 元 仁 沢 と 蕭志
恬 の 二 人 の 同 志 で 、 特 に 蕭 志 恬 に よ る と こ ろ が N工 工一Eleotronlo Llbrary最 も 大 き い 。 編 集 の 過 程 で 、 私 た ち は 、 動
態
調 査 と 、 静態
研 究 を 結 び つ け る方
法 を と り 、 十 二 の 省、 市 、 自 治 区 の い く つ か の都
市 と 農 村 に 入 っ て、 信 仰 を持
つ 人 々、 宗 教 界 の 人 々 、末
端 の党
と 政 治 組 織 の 幹 部 か ら 、 信 仰 を 持 た な い 人 々 ま で 、 広 く 接 触 し 、 各 宗 教 の 歴 史 、 現 状 と変
化 、 お よ び 大 衆 が宗
教 を信
仰
す る原
因 、 宗 教 と社
会 生 活 の 関 係 等 を 理 解 す る こ と に 重 点 を お い た 。 同 時 に ま た 各 宗 教 の 歴史
と 現 状 に つ い て の 文 字 資料
四 〇 万字
を 収 集 し 整 理 し て 、建
国 以来
の 各 宗 教 の 大 事 記 を 収 め 、 ま た社
会 科 学 研 究 系 統 、 高 等 院校
、 文 化 部 門 、 党 政機
関 、 お よ び 学 術 研 究 に 従 事 し て い る 宗 教 界 の 人 々 の 意 見 を 求 め て 、 定稿
づ く り の と き の 参 考 に し た 。 こ の 書 は 専 ら 、 以 下 の 問 題 に つ い て 探索
研 究 し 、 理論
の 上 で 突 破 す る と こ ろ が え ら2
/ る よ う に 試 み た も の で あ る 。 一 、 宗 教 と 我 が 国 の 文 化 と の 関 係 。 儒家
の 思想
、 特 に そ の 倫 理道
徳 中 の 「 入 世 」 の 観 念 は 、数
千 年 来 、 人 々 の 意識
の 巾 に 深 く根
を お ろ し て い る 。 別 の面
で は 神 権 は 、 か な ら ず 皇権
に 服 従 す べ き で あ り 、 し か も 皇 権 は 至高
無 上 の も の で あ る か ら 、 漢 族 の 地 区 に あ っ て は 、 い わ ゆ る 国 教 を 形 成 す る こ と は な か っ た し 、 ま た 西 洋 の よ う な 宗 教 戦 争 を起
こ す こ と も な か っ た 。 民 間 で 正統
宗 教 を 信 仰 す る 人 は 、 絶 対 少 数 で あ り 、 逆 に 鬼 神観
念 や そ れ を 崇 拝 す る轡
俗 は 、 か な り 普 遍 的 で あ っ た 。 二 、 建 国 以 来 の 各 宗 教 の現
状 の 分 析 。社
会 主義
建 設 が 、 各 方 面 で 起 こ し た 、 深 刻 な 変 化 は 、 ま た 必 然 的 に 宗 教 そ れ 自 身 に も 影 響 を 与 え た 。特
に キ リ ス ト 教、 天 主 教 、 仏 教 、 道 教 、 イ ス ラ ム 教 は 、 帝 国 主 義 、 封建
統 治 階 級 の 支 配 か ら 脱 け で た あ と 、 各 宗 教 と も、 政 治 、 経 済、 教 団 内 の 制 度 、義
義 の 方 面 の す べ て に わ た っ て 、 新 た な る 変 化 が あ っ て 、 宗 教 は す で に 中 国 の教
徒 の自
前
の 宗 教 事 業 と な り、 宗 教 信 仰 は 、 ま さ し く 公 民 の 私 事 と な っ て 、 そ の 性質
も 、 数 千 年 続 い た 階 級 社 会 に お け る情
況 と は 同 じ も の で は な く な っ た の で あ る 。 社 会 主 義 時 期 の 宗 教 の存
在 の根
源 、 社 会 的 地位
、 社 会 的 作 用 、 お よ び規
律
の 演 変 な ど は 、 す べ て 我 々 の 再 認 識 を 必 要 と す る も の と な っ た 。 三 、宗
教 と い う 、 こ の 種 の歴
史
的 、 社 会 的 現 象 は 、階
級
根 源 の消
失 に と も な っ て 、 た だ ち に消
滅 す る も の で は な く 、 宗 教 そ れ 自身
に 内 在 す る 独 特 の 規 律 が作
用L
て い る 。 こ の 点 に つ い て 十分
に 認 識 せ ず に 、行
政 手 段 を も っ て 人為
的 に 宗 教 を 消滅
さ せ よ う と 試 み た が、 こ れ は 一貫
し て行
わ れ た 宗 教 政 策 の 「 左 」 の 認 識 の 根 源 で あ り 、 そ の 結 果、事
実 と 願 望 の く い ち が い と な っ た の で あ る。 建 国 し て 四 十年
近 く の 事 実 も 、 こ の 点 を証
明 し て お り 、 そ の 中 の多
く の 経 験 と 教 訓 は、 記憶
に と ど め る の に 価 す る も の で あ る。 宗 教 に は、 大衆
性 、 長 期 性 、 複 雑 性 、 民 族 性、 国 際 性 が あ り 、我
々 は 、 真 剣 、厳
粛 か つ 正 確 に 対 応 し て い く べ 社 会 主 義 中 国 の 宗 教 政 策 ( 永 井 ) 一 九 五NII-Electronic Library Service 社 会 主 義 中 国 の 宗 教 政 策 ( 永 井 ) 一 九 六 き で あ り 、 主 観 的 に 勝 手 に 、 や る べ き で な い こ と を や る こ と は 、 決 し て で き な い の で あ る 。 四、 宗 教 が
客
観
的 存 在 で あ る こ と を論
証 し た な ら ぽ 、 社会
主 義 の新
中 国 に お い て は 、 宗 教 徒 は 、 愛 国 主 義 の 基 礎 の も と に 、 同 じ も の を 求 め る が、 異 た る も の の 存 在 も 認 め 、 広 汎 な 非教
徒 と 団結
し て 、 祖 国 の 四 つ の 現 代 化 の 建 設 の た め に 、 夫 々 の 仕 事 の 場 で 心 を 一 つ に し て協
力L
、 現 世 の幸
福 の た め に と も に奮
闘 す る こ と が で き る 。宗
教
の 規 律 と 道 徳 は 、 教徒
に つ い て 言 え ば 、 す べ て 悪 を避
け 善 に 従 う は た ら き を 持 っ て い る。 ど ん な 人 で も 国家
と 人 々 の た め に、 よ い こ と をL
な く て は な ら な い 。 そ の 出 発 点 や 動機
が 何 で あ2
/、落
ち着
く さ き は 社 会 主 義 現代
化 の 建 設 に 有 利 て な く て は な ら な い 。 こ の 角 度 か ら 言 え ば 、 宗 教 は 社 会 主 義 社 会 と 協 調 す る こ と が 可能
な の で あ る。 五 、 協 調 は 双方
が と も に な す べ き も の で あ り 、 政府
は 宗 教 信仰
の 自 由 と い う 政 策 を、 し っ か り と 貫 徹 し実
行
し 、 ど の よ う な 宗 教 を 信 じ て い て も 平 等 に視
な し 、 信 じ て い よ う と い ま い と、 平 等 に 視 な し て い か な く て は な ら な い 。 時 に応
じ て、 宗 教 信仰
者 に 声 を か け て 、 警 戒 の 心 を強
め さ せ 、 全 国 人 民 に よ る 易 り な き 安 定 団 結 の、好
ま し い 形 成 を 大 切 な も の と し 、 宗 教 徒 が 公 共 と法
律 に 従 い 、 国 を 愛 し 教 え を愛
し 、 社 会 公 益 の 事業
に 熱 心 に 従 事 し 、 い か な る 外 国 の 勢 力 も我
国 の 宗 教事
務 に 干 渉 し た り 、 あ る い は 手 を 出 し た り し な い よ う に し な く て は な ら な い 。 中 国 の 社 会 主 義 時 期 に お け る宗
教 問 題 と い う こ の 課 題 は、 国 内 で は い ま だ 比較
的 系 統 立 っ た 研 究 が 進 め ら れ た こ と が な い . 私 た ち が 今 刊 行 し よ う と し て い る こ の書
も 、 微 微 た る 探 索 の 研 究 成 果 で あ る , お う お う に し て 主 観 的 な 意 志 は 、 客 観 の実
際 と 距離
を 生 じ る も の で 、 錯 り も 免 れ が た い 。 切 に 願 う の は 、 宗 教 学 を 研究
す る 専門
の 人 々 の 多 く の 御 教 示 で あ る 。 一 九 八 レ ] 年 一 月 一 五 日 夜 第 .章
緒
塾 ロ旧 宗 教 は 一 種 の イ デ ォ ロ ギ ー で あ り 、 複 雑 な る 社 会 的、 歴 史 的 現象
で あ る 。 宗 教 研 究 の 領 域 は と て も ひ ろ い 。我
国 に お い て は 、 宗 教 学 は開
拓
発 展 し つ つ あ る 新 し い 学 科 で あ り 、 し か も 社 会 主義
時
期 の 宗 教 問 題 に つ い て の 研 究 は 、 さ ら に ま っ た く 新 し い 課 題 で あ る 。 現 実 の 生 活 は 、 人 々 に 数 多 く の 問 題 を 投 げ か け て い る 。 階 級 の根
源
が 基 本 的 に 消 失 し た 社会
主 義 中 国 に お い て 、 宗 教 は 、 ど N工 工一Eleotronlo Llbraryう し て 長
期
に 存 在 し う る の で あ ろ う か 。 こ の 数 年 来、 あ る 地 区 で、 あ る 宗 教 の 信 者 は、 ど う し て 増 加 し て い る の か 。 宗 教 は、 社 会 生 活 や 、 四 化 の 建 設 に ど ん な 影 響 が あ る の か 。 宗 教 は、 ど の よ う に し た ら 、 社 会 主義
社 会 と 充 分 に 協 調 し う る の か 。 ま た ど ん な 働 き を な す べ き な の か 。 党 と 政 府、 お よ び 社 会 の 各 方 面 は 、 ど の よ う に し て 宗 教 問 題 に 正 し く 対 処 す べ き な の か、 な ど な ど 。 こ れ ら は す べ て 、 宗 教 理 論 の 研 究 に 従 事 す る 人 々 、 党 と 政府
の 幹 部 、 宗 教 界 、 さ ら に 多 く の 人 々 が 関 心 を 寄 せ る 問題
で あ る 。 「 中 華 人 民 共 和 国 国 民 経 済 と 社会
発
展 の第
六 期 五 力年
計 画 」 の 哲 学 社会
科 学 の 分 野 は 、 「特
に 推 進 す べ き 我 国 の 社 会 主義
現 代 化 建 設 に お い て 緊 急 に 解 決 を 必要
と す る 重 大 な 理 論 問 題 と実
際 の 問 題 の 研 究 」 を提
出 し た 。 ま た宗
教 問 題 の 研 究 を、 十 二 の 重 点 項 目 の う ち の 一 つ に 列 し た 。 本 書 は 、 そ の 呼 び か け に 対 す る答
え で あ り 、 我 国 の 社 会 主義
時 期 の 宗 教 問 題 に 対L
て、 現実
的 意 義 を も つ 課 題 と し て 、 初 歩 的 な 探索
を 進 め た も の で あ る . 一 宗 教 は 一 種 の イ デ ォ ロ ギ ー で あ り 、 そ の超
自 然 の神
霊 を 信 じ 、 か つ 崇 拝 す る の は 、 自 然 力 と 社会
の カ が 、 人 々 の 意 識 の 巾 で 虚 幻 に 反 映 し た も の と さ れ る 。 宗教
は、 社会
が 一 定 の 段 階 に ま で 発 展 し た と き に 産 ま れ る も の で あ る 。 宗 教 の 最 初 の 発 生 は 、 生 産 力 の 水 準 が 極 め て 低 い 情 況 の も と で 、原
始 人 が 抵抗
す る す べ を 知 ら な い 自 然 の 力 に 対 す る 恐怖
の 感 情 を 反 映 し た も の で あ る 。 階 級社
会 と な っ て 後 、 宗 教 が存
在 し 発展
で き た最
も 深 い根
源 は 、 人 々 が 己 れ に ま さ る 力 の 支配
を 受 け て 、 そ れ か ら 逃 れ る す べ の な い と こ ろ に あ り 、 労 働 者 が 搾 取 制度
の 造 り だ す 巨 大 な 苦 難 に た い す る 恐 怖 と 絶 望 に あ る 。 宗 教 の 中 で の 苦 難 は 、 現実
の 苦 難 の表
現 で あ る と 同 時 に、 ま た 現 実 の苦
難
に た い す る 哀嘆
と 抗 議 な の で あ る 。 マ ル ク ス は 言 う 「 宗 教 と い う も の は、 自 己 を ま だ か ち え て い な い か 、 あ る い は か ち え な が ら も ま た 喪 失 し て し ま っ た 人 間 の 自 己 意 識 で あ り 自 己 感 情 で あ る 。 し か し 人 間 と い っ て も、 そ れ は 世 界 の 外 に う ず く ま っ て い る 抽象
的 な 存 在 で は な い 。 人 聞 、 そ れ は 人 間 の 世 界 の こ と で あ り 、国
家 社会
の こ と で あ る 」 〈 へ ー ゲ ル 法 哲 学 批 判 . 序 説11
訳 は 大 内 兵 衛 等 監 訳 『 マ ル ク ス . エ ン ゲ ル ス 全 集 』 に よ る 。 以 下 同 じ 〉 。 エ ン ゲ ル ス は 言 う 「 い っ さ い の 宗 教 は 、 人 間 の 日 常 生 活 を 支配
す
る 外 的 な 諸 力 が、 人 間 の 頭 の中
に 空 想 的 な 反 映 さ れ た も の に ほ か な ら な い の で あ っ て、 こ の 反 映 の 中 で は 、 地 上 の 諸 力 が 天 上 の諸
力
の 形 態 を と る の で あ る 」 社 会 主 義 中 国 の 宗 教 政 策 ( 永 井 ) 一 九 七NII-Electronic Library Service 社 会 主 義 中 国 の 宗 教 政 策 ( 永 井 ) 一 九 八 〈 反 デ ュ ー リ ン グ 論 〉 。 以 上 の 論 述 は、 客 観 と 主 観 の 両
方
面 か ら、 一 種 の イ デ ォ ロ ギ ー と し て の 宗 教 の 本質
を 深 く暴
い た も の で あ る 。 一 九 世 紀 の 中 頃 、 ド イ ツ の 哲 学 界 で は 、 宗 教 の 本質
の 問 題 に つ い て し ば し ば 議 論 が な さ れ た 。 青 年 へ ー ゲ ル 派 は 宗 教 を 人 類 の精
神 の 創 造 に よ る も の と し た 。 フ ォ イ エ ル パ ッ ハ は 彼 ら の唯
心 主 義 的 た 本質
を暴
き だ し た 。 彼 は 『 キ リ ス ト 教 の 本質
』 と い う 本 の 中 で 「 神 が 自 分 の形
に に せ て 人 を 造 っ た の で は な く 、 人 が 自分
の 形 に に せ て 神 を 造 っ た の で あ り 、 神 の 意 識 は 人 の 自我
意
識 に 他 な ら ず 、 神 へ の認
識 は 、 人 の 自 我 へ の 認 識 で あ る 」 と 指摘
し た 、 た だ し フ ォ イ エ ル バ ッ ハ が 、 こ こ で 言 う 人 は 、実
際
の 生 活 の 外 に遊
離
し た 抽象
的 な 人 で あ る 。 マ ル ク ス は フ ォ イ エ ル バ ッ ハ の 唯 物 主 義 的 な 基礎
を 批 判 的 に 継 承 し 、 さ ら に 一 歩 を 進 め て 「 人 の 住 む の は 人 の 世 界 で あ り 、 そ れ は 国 家社
会 で あ る 」 と 指摘
し た 。 宗 教 は 、 人 の 自 我 意 識 と 自 我 感 覚 で あ り 、 こ の 自 我 意 識 と 自 我感
覚
と は 、 社 会 と ま っ た く 無 縁 な も の で は な い 。 し か も そ れ は、 す べ て の 社会
関
係 を 内 容 と し て お り 、 こ れ は 一 定 の 自 然 条 件 、 社 会 条件
の 下 に 生 活 し 、 そ し て 自分
の 運命
を つ か め な い と 感 じ た 人 の 、 自 我意
識 と 、 自 我 感 覚 で あ る 。 エ ン ゲ ル ス の 説 は 宗 教 的 幻 想 の内
容
と 根 拠 、 つ ま り 自 然 の 力 と 社 会 の 力 を 含 め た 「 人 々 の 日 常 生 活 を支
配 し て い る 外 部 の 力 」 を暴
い た 。 マ ル ク ス 、 エ ソ ゲ ル ス の 論 述 は 、 宗 教 の存
在 の 客 観 的根
源 に つ い て 指 摘 す る と と も に 、 さ ら に ど う し て あ る 人 々 が 宗 教 を 信 仰 す る こ と が で き る の か と い う 主観
的 な 原 因 に つ い て も分
析 し て 、 一 種 の イ デ オ ロ ギ ー と さ れ る宗
教 の 、 異 な る 社 会 に お け る 共 通 の 本 質 を 暴 い た も の で あ る 。L
た が っ て こ れ ら 一 連 の 論 述 は 、 私 た ち が 中 国 の 実 際 の 問 題 と結
び つ け る こ と を 教 え、 社会
卞 義 時期
の 宗 教 問 題 を 研 究 す る 上 で の 指 南 と も な る の で あ る 。 ”、 ル ク ス は い う 「 宗 教 は 、 こ の 世 界 の 一般
理 論 で あ り 、 そ の 百 科 辞 典 的 な 綱 要 で あ り 、 そ の 通 俗 的 な 形 の 論 理学
で あ り 、 そ の精
神 主義
的 な 名誉
問 題 、 そ れ の熱
狂 、 そ の道
徳 的 是 認 、 そ れ の お ご そ か な 補 完 で あ り 、 そ の 慰籍
と 弁 明 と存
在
と の 一 般的
根
拠 で あ る 」 〈 へ ー ゲ ル 法 哲 学 批 判V
。 こ れ は 一 九 世 紀 の ヨ ー ロ ッ パ の 情 況 に つ い て の 指 摘 で あ る が 、 こ こ か ら 宗 教 が 世 界 観 の 問 題 だ け で は な く 、 人 生 観 、 価 値 観 、 道 徳 観 な ど 、 多 く の方
面 の 思 想 と 、 理 論 の 問 題 を も 包 括 す る も の と み て と る こ と は 難 し い こ と で は な い 。 こ う し て 、 現 実 の 宗 教 を 研 究 す る こ と は 、 哲 学 ・ 思 想 の 方面
に 限 ら れ る も の で は な く 、 ま さ に マ ル ク ス の 言 う よ う に 「 も し も た だ 宗 教 哲 学 等 々 の み が 、 私 に と っ て 宗 教 の真
の あ り 方 で あ る な ら ば 、 私 は ま た た だ 宗 教 哲 学 者 と し て の み 、本
当 に 宗教
的 N工 工一Eleotronlo Llbraryな の で あ り 、 だ か ら 私 は 現 実 的 な
宗
教 性 と 、現
実
的 に 宗教
的 な 人 間 を否
認
す る わ け で あ る 」 〈 一 八 四 四 年 の 経 済 哲 学 手 稿 〉 。 現 実 の 宗 教 は 、 複 雑 な 内 容 を 持 っ て い る 。 一 般 的 に 言 え ば 、 宗 教 は す べ て 一 つ の 具 体 的 、 総 合的
な 体 系 を も っ て お り 、少
な く と も い く つ か の方
面 の 要 素 で 形 成 さ れ て い る 。 た と え ば 、 宗 教 哲 学 と 教 義 か ら 宗 教 的 戒 律 と 道徳
観 念 な ど の意
識 方 面 で の要
素 、 教 職 の 人員
( つ ま り 宗 教 を 職 業 と す る 人 々 、 以 下 同 じ ) と 、 信 徒 大 衆 を 含 む 宗 教 徒 の 要素
、 宗 教 信 仰 と 関連
す る 、 心 理 と感
情 分 野 の 要素
、 宗 教 生 活 の 主 要 な る 部 分 を 構 成 す る 儀 式 の 要 素 、 宗 教 団 体 や機
構 な ど の 組 織 の 要 素 な ど な ど で あ る 。 こ れ ら の 要 素 は ま た 有機
的 に連
係 し て 一 つ の も の と な っ て い る の で あ る 。 こ う し て 宗 教 は 複 雑 な 社 会 現 象 で あ り 、 そ れ は 一 種 の イ デ オ ロ ギ ー で あ る ば か り で は な く 、 一 つ の 社 会的
実
態
で あ り 、 社 会 生活
の 巾 の 無 視 で き な い 構 成 の 一部
分 で あ る と い う こ と が わ か る 。 社 会 の イ デ オ ロ ギ ー の 一 つ と さ れ る 宗 教 は 、 経 済 的基
礎
と 連 係 を 生 じ る ば か り で な く 、 経済
的 基 礎 の 制 約 を 受 け る と と も に 、 そ れ に 対 す る 反 作 用 を も 生 み 、 さ ら に社
会
そ の他
の イ デ オ ロ ギ ー と 、 す べ て の連
係 も 生 じ る 。 社 会 に お け る 政 治 観念
、 法 律 、 哲 学 、 道 徳 、芸
術 な ど は 、 す べ て さ ま ざ ま に 宗 教 に 対 し て 作 用 し て い る 。 そ し て 宗 教 が こ れ ら の 領 域 で 、 展 開 す る中
で 起 す 作 用 と 影 響 も ま た 少 な く な い 。 特 に 全員
が 信 教 し て い る 地 区 、 ま た 宗 教 の 影響
が 比較
的 大 き な 地 区 で は 、 宗 教 を 無 視 し て は、社
会
の 思 想 や 、道
徳 規 範 、 民 間 の 習 俗 、 文 学 芸 術 な ど に た い し て 的 確 な説
明 を な す す べ が な い の であ
る 。 宗 教 の イ デ オ ロ ギ ー の 部 分 が 、 社 会 に対
し て起
こ す 作 用 の ほ か に も 、 宗 教 徒、 宗 教 組織
と 宗 教活
動 な ど な ど 、 そ の 存 在 、発
展 、 変 化 と 、 社 会 の 政 治 、 経 済 な ど の 諸 要 素 は 、 ま た 密 接 な 関 係 が あ る 。 宗 教 は け っ し て 静 止 不変
な も の で は な く 、 発 展変
化 の 過 程 の 中 に 存 在 す る も の で あ る 。 し た が っ て 宗 教 に つ い て の 研 究 は 、 単 に 哲 学 的 思 弁 と 論 理 に よ る 推 理 だ け で は 不 十 分 で あ る 。 哲 学 家 は 、 抽 象 的 な 高 い 空 よ り 地 上 に お り て ぎ て 、 研 究 対 象 に 触 れ 、 宗 教 徒 の 思 想 、 感 情、行
為
の 特 点 を 理 解 し 、 宗教
が 社 会 で ど の よ う な 地 位 と働
き を な し て い る か を 理 解 し な く て は な ら な い 。 マ ル ク ス が 一 九 世 紀 ド イ ツ の 宗 教 を考
察
し た と き も 、 エ γ ゲ ル ス が 初 期 キ リ ス ト教
運
動
と 新 興 資 産 階 級 に よ る宗
教 革命
を 考 察 し た と き も 、 レ ー ニ ソ が ロ シ ア の 宗 教 を 考 察 し た と き も 、 す ぺ て 宗 教 と 社 会 の 関 係 の統
一 に 密 接 な注
意 を 払 い 、 あ わ せ て 社 会 的 角度
か ら 宗 教 の 存 在 、 演 化、 お よ び 社 会 へ の作
用 に つ い て 論 述 し た 。 し か も こ れ ら は、 異 っ た 時 期 、 異 っ た 社 会 の 宗教
に た い し て 、 同 じ よ う な あ つ か い を し た の で は な い 社 会 主 義 中 国 の 宗 教 政 策 ( 永 井 ) 一 九 九NII-Electronic Library Service 社 会 主 義 中 国 の 宗 教 政 策 ( 永 井 ) し 、 概
念
か ら 出発
し て 推 論 を 進 め た も の で も な い の で あ る 。 二 〇 〇 我 国 の 社 会 重 義 時 期 の 宗 教 問題
を 研 究 す る と き、 必 ず 宗 教 を 社 会 主義
社 会 の 一 定 の 段 階 に お い て 分 析 を 進 め な く て は な ら な い 。 社会
主 義 社 会 は 人 類 の 歴 史 の 上 で 巨 大 な る 変 革 を 実 現 し た が 、 こ の 変革
は 必 然 的 に 旧 社 会 か ら の 宗 教 に 影響
を与
え る こ と に な り 、 宗 教 と そ の 系 列 に 内 在 す る 要 素 に 対 し て 、 な ん ら か の 変 化 を 生 ず る こ と を 促 し た 。 そ の た め 宗 教 の 社会
に お け る 作 用 も ま た変
化 し た の で あ る。 当 然 、 宗 教 の さ ま ざ ま な 要 素 の変
化 は、 相 互 に 関 連 し 、 互 い に 影 響 し あ っ て い る う え に 、 さ ら に そ れ は 平 衡 的 な も の で も な い の で あ る 。 変 化 の 条 件 、 趨 勢 、 規 則 と、 そ の 社 会 へ の 影響
を 研 究 す る に は 、 多 方 面 か ら着
手 し な け れ ば な ら ず、 実際
的 、 総 合 的 に宗
教
を 把 握 し 、 宗 教 と 社会
の 複 雑 な 関 係 を 把 握L
て 、 は じ め て 社 会 セ 義 時 期 の宗
教
が、 ど の よ う な 特 性 を そ な え て い る か も 、深
く 認 識 す る こ と が で き る で あ ろ う 。 甦 国 の 初 期 、 周 恩 来 、 李 維 漢達
が 提 出 し た 、 我 国 の 宗教
の 「 五 性 」 、 す な わ ち 、 群 衆 性 、 民 族 性 、 国際
性 、 長 期 性 、 複 雑 性 は 、 人 々 が 宗 教 問 題 を 認 識 し 、 対 応 す る た め の 指 導 思 想 の 一 つ と な っ て い る 、 表 面 的 に 見 る な ら 、 ど の よ う な 社 会 制 度 の も と に あ る宗
教 で も 、 す べ て 「 五 性 」 が あ っ て さ し つ か え な い 。 し か し 実際
は 彼 ら の 言 う 「 五 性 」 は 、 マ ル ク ス 主 義 の 観 点 か ら中
国 の 解 放 後 の 実 際 と を 結 び つ け 、 宗 教 の 特 性 に た い し て科
学 的 に概
括 を し た も の で 、 特 定 の 意味
を 持 っ て い る 。 我 国 ぱ 多 宗 教 の 国 家 で あ る 。 世 界 の 三 大 宗 教 、 固有
の 道 教 、 お よ び 各 少 数 民 族 の 宗 教 等、 す べ て そ れ ぞ れ の 信仰
を 持 つ も の を 擁 し 、 総 計 で は 億 を 下 ら な い 。 こ の よ う な 多 く の 信徒
大 衆 の あ る こ と が、 一 つ の 大 衆 の 問題
で あ る こ と は 疑 い な い 。 彼 ら の な か に は、 老 人 も い れ ば 中青
年
も お り 、 工 場 労 働 者、 農 民 も お り 、 イ ン テ リ も い る 。 旧 社 会 で は 、 一 部 の 人 々 は 、搾
取 の 圧迫
の 苦 難 に 耐 え ら れ ず 、 宗 教 に 慰 め を 求 め 、 社会
の 革 命 に 対 し て冷
淡 な態
度 を と っ た 。 社 会 主 義 と い う 条 件 の も と で は 、 信徒
大 衆 は 政 治 上 、 経 済 上 の 根 本 的 利 益 の た め 、 社 会 主 義 建 設 の た め に 積 極 的 に 参 加 し て い る 。L
か し な が ら 彼 ら は 、 依 然 と し て宗
教 を 信仰
し 、 宗 教活
動 に 参 加 し て お り 、 し か も そ れ 相 当 の 宗教
活 動 の 場 所、 宗 教 の 経典
、 刊 行物
な ど 、 特 別 な 要 求 が あ る 。彼
ら の 宗教
感 情 を 理 解 し 、 彼 ら の特
別 な 要 求 を 満 足 さ せ る こ と は 、 億 万 の 宗 教 徒 を 団 結 さ せ 、 と も に 四 化 の 建 設 の 大 事 に 参 加 さ せ る こ と に 関 連 す る こ と で あ り、 軽 々 し く 取扱
う よ う で あ っ て は な ら な い 。 N工 工一Eleotronlo Llbrary我 国 は
多
民 族 の 国 家 で あ り 、 五 五 の 少 数 民 族 の 人 口 が 総 人 口 の 約 六%
を 占 め 、 そ の 居 住 面 積 は 全 国 の 約 六 〇 % ほ ど を 占 め て お り 、 主 と し て 高 原 や 、 山 地 、 辺 彊 の 地 区 に 分 布 し て い る 。 信 仰 を 持 つ 人 々 が 少 数 民 族 の 人 口 の中
で 占 め る 割 合 は 、 と て も高
い か 、 あ る い は 比 較 的 高 い も の と な っ て い る 。 あ る 民 族 で は 、 基 本 的 に 全員
が 信 仰 し て お り 、 大 衆 性 は 明 ら か で あ る , こ う し た 民 族 に あ っ て は 、 宗 教 信 仰 と 民族
感 情 、 風 俗 習 慣 と が 融合
し て 一 体 と な っ て お り 、 宗 教 は 民 族 の 文 化 の 核 心 で道
徳
規 範 と 見 な さ れ て い る 。 旧 社 会 に あ っ て は 、 宗 教 は か つ て 統 治 階 級 に支
配 利 用 さ れ て い た が 、 し か し ま た 、 そ の 民 族 を 団 結 さ せ 、外
か ら の 圧 力 に 抵 抗 す る 紐帯
の 作 用 も果
L
て き た 。 今 日 、 全員
が 信 仰 す る と い う情
況 に は 、 あ る 程 度 の 変 化 が 生 れ て き た が 、 現 実 の 情 況 は宗
教 と 民 族 と は 緊 密 に 聯 係 し て い る の で あ る 。 こ れ ら の 少 数 民 族 を 団 結 さ せ る に は 、 彼 ら の 宗 教 信仰
を特
に 重 視 し 、 尊 重 し な け れ ば な ら な い 。 そ う で な け れ ぽ 、 民 族 の 団 結 に 影 響 が で て く る で あ ろ う 。 宗 教 は 、 人 類 社 会 の 産 物 で あ り 、 世 界 の な か で 宗 教 の存
在
し な い 国 家 も な い し 、 民 族 も な い 。 一 九 八〇
年
版
『 ブ リ タ ニ カ 』 に よ れ ぽ 、 世 界 の 宗教
徒 は 二 、 五 七 八 、 〇 四 九、 九 六 〇人
で あ り ( 「 各 国 の 宗 教 概 況 」 に よ る ) 、 全 世界
の 人 口 の 六〇
%
を 占 め る 。 か つ て 多 く の 国 家 が あ る 宗 教 を 国 教 と 定 め た が 、現
在
で も 宗 教 と 政 治 の 関 係 は 極 め て 密 接 で あ る 。 我 国 が 対外
開放
政策
を 実 行 す る と き 、多
く の 渉 外 事 務 で 、 い つ も 宗 教 問 題 に つき
あ た る が 、 そ の 認 識 と 処 理 が 正 当 で あ る か ど う か は 、 非常
に 重 要 で あ る 。 解 放前
、 我 国 の あ る宗
教 は 、 外 国 の布
教 機構
に 支 配 さ れ 、 帝 国 主 義 に 利 用 さ れ て 中 国 侵 略 の 道 具 と な っ た 。今
日 、 こ の 種 の 膺 況 は 、根
本 的 に あ ら た ま り 、 宗 教 は 我 国 の教
徒 に よ る 自 前 の 宗 教 と な っ た 。 独 立自
主、 平 等 友 好 の 基礎
の 上 に 立 っ て 、 宗教
界 の 国際
的 な 友 好 往来
を 発 展 さ せ る こ と は 我 国 の 人 民 と 各 国 の 人 民 の 間 の 理 解 と 友好
、 そ し て 世 界 の 平和
の維
持 に有
益 で あ る 。 た だ し 国 際 往 来 を 発 展 さ せ る と 同 時 に 、 国 外 の敵
対
勢
力 が 、 宗 教 を 利 用 し て 、 反 中 国 の 活 動 を 行 う こ と に は 注 意 を 払 う 必 要 が あ る 。 宗 教 は 悠 久 な る 歴 史 を も つ 社 会 現 象 で あ る 。 ど う し て い ま 「 長 期 性 」 の 問 題 を 提 出 し よ う と す る の か 。 そ れ は 我 々 が、数
千 年 の 搾 取制
度 を ひ っ く り か え し て 、 社 会 主 義 社 会 を 建 設 し た こ と に よ り 、 あ る 人 は 宗 教 が 存 在す
る 客 観 的 社 会 的 条 件 は す で に消
滅
し 、宗
教 の 消滅
も も う す ぐ だ と 考 え、簡
単 な 強制
的 な方
法 で 宗 教 を 消滅
さ せ よ う と 企 て た こ と に よ る 。 本 書 は 、 多 方面
か ら 社 会 主 義 社 会 に あ っ て 、 宗 教 が 長期
に 存 在 す る 根 拠 に つ い て 論 述 し よ う と す る。 宗 教 に は、 そ れ自
身 の発
生 、 発 展、消
滅
の 客 観 的 規律
が あ る 。 人 類 が 階 級 を 消 滅 さ せ 、 ま た 社会
と 自 然 を 制 御 す る能
力 を 大 き く 発 展 さ せ 、 社会
主義
と 共 産 主 社 会 主 義 中 国 の 宗 教 政 策 ( 永 井 ) 二 〇 一NII-Electronic Library Service 社 会 主 義 中 国 の 宗 教 政 策 ( 永 井 ) 二 〇 二 義 の 長 期 に わ た る 発 展 を 経 過 し て、 す べ て の 客 観 的 条 件 が と と の っ た と き 、 ま た 人 々 が 普 遍 的 に 科 学 的 な 世 界 観 と 人 生 観 を
樹
立 し た と き 、 は じ め て宗
教 は 、 自 然 に 消滅
す る の で あ る 。 し か も、 こ れ は ゆ っ く り と 前 進 す る 過 程 で あ る か ら 、 い か な る 人 も 手 段 を も っ て 宗 教 を消
滅
さ せ よ う と す れ ぽ 、 必 ず 自 ら が 痛 い 目 に あ う こ と に な る 。 宗教
の 持 つ 複 雑 性 は 、 宗 教 と し て 表 現 す る こ と と 、社
会
、 歴 史 等 に 生 ず る 錯 走 し た 複 雑 な る 関 係 の ほ か 、 さ ら に 宗 教 自身
が ま た 一 つ の 複 雑 な 体系
を 持 っ て い る こ と に よ る 。 宗 教 の 表 現 形 式 は多
種 多様
で 、 異 な っ た 宗 教 で は 、 教義
、教
規 、儀
礼 、組
織
が 異 な っ て い る し 、 た と え 同 一 の 宗 教 で も 、 歴 史 的 社会
的 要 因 に よ っ て 、 異 な っ た 教 派 を 形 成 し て い る 。宗
教
の 思 想 の 複雑
さ 、 教 派 の 繁 多 さ、 教徒
の 階 層 の 多 さ 、 そ れ ら す べ て が 正 確 に か つ 全面
的 な 宗教
問 題 の 認 識 に 一 定 の 困難
を も た ら す 。建
国 の初
期
に お い て 、 宗 教 の複
雑 性 は 、 と く に 信 仰 問 題 と 政 治 の 問 題 と が 、 一 つ に 絡 み あ っ て い る 状 態 を 呈 し て い る こ と に あ り 、 工作
の 重 点 は ど う や っ て異
な っ た 性質
の 矛盾
を 区 別 し 、 宗 教 信 仰 の 自 由 を保
障
す る 条 件 の も と で 、 宗 教 徒 を教
育 し て 団 結 さ せ 、 帝 国 主 義 と 国内
の 反 動分
子 が 宗 教 を 支 配 し 利 用 す る 局 面 を 改 変 し て 、 そ の 政 治 的 影 響 を 取 り 除 く か に あ っ た 。 今 日 、特
定 の 地 域 で の 階 級 闘争
と 複 雑 な 国 際環
境
は 、 依 然 と し て 宗 教 に た い す る 影 響 を も っ て い る 、 し か し 主 要 な 問 題 は 、 ど の よ う に 正 確 に 宗教
を 取 扱 い 、 広 汎 な 宗 教 徒 を団
結 さ せ 、 も っ て 中 国 を 振 興 さ せ る か と い う 点 に あ る 。 「 五 性 」 は 新 中 国 の宗
教 の 特 点 で あ る 。 三 〇 余年
の 実 践 が 証 明 す る よ う に 、 人 々 の 「 五 性 」 に た い す る 認 識 が く り か え し 表 れ る こ と が 宗 教 政 策 の成
功 と 失 敗 を 導 き だ す 重要
な 原 因 な の で あ る 。 社 会 主義
建
設 の 新 時 期 に あ っ て は 、 よ り深
く 「 五 性 」 に つ い て の 理解
と 研 究 を 進 め て こ そ 、 は じ め て 正 し い 実 践 を 指 導 す る こ と が で き る の で あ る 。N工 工一Eleotronlo Llbrary Servloe
社 会 主 義 時 期 の 宗 教 問 題 の 研 究 を 進 め る に は 必 ず マ ル ク ス 主 義 を 堅
持
し 、弁
証 唯物
主義
と 歴 史 唯 物 主 義 の 科 学 的 世 界 観 と方
法 論 を 、 指 導 思想
と方
法 に し な け れ ば な ら な い 。 一 九 世 紀、 宗教
の 迷霧
が お お っ て い た ヨ ー ロ ヅ パ の 地 に お い て 、 マ ル ク ス 、 エ ソ ゲ ル ス は 、 唯 心 主 義 の 誤 り を 批 判 し 、 古 い 唯物
主 義 の も と で の 一 面 性 を 克 服 し て 、 宗 教 の 外 面 を 覆 っ て い た 神 秘 の べ ー ル を 開 き 、宗
教 の 本質
を 暴 き 、 人類
が 宗 教 に た いし て 認 識 す る 歴 史 の 過 程 に お い て 、 重 要 な 貢 献 を 作 り だ し た 。 レ ー ニ ン は ロ シ ア の 地 で 、 社 会 主 義 革 命 の 中 で 、
宗
教 問 題 を如
何 に 認 識 し 、 対 処 す る か と い う こ と に つ い て 、卓
越 し た 見 解 と貴
重 な実
践
の 経 験 を 提 供 し た 。 マ ル ク ス は 歴 史 唯物
主 義 の 観 点 に 立 っ て 、 社会
経 済 生 活 の変
化 か ら宗
教 の発
展 と変
化 を 考 察 す る よ う に 人 々 を 指 導 し た 。彼
は 「 じ っ さ い 、分
析 に よ っ て、宗
教 的 な 幻橡
の現
世 的 な 核 心 を 見 い だす
こ と は 、 そ れ と は 反 対 に 、 そ の つ ど の 現 実 の 生 活 関係
か ら 、 そ の 天 国 化 さ れ た 諸 形 態 を 説 明 す る こ と よ り も 、 ず っ と 容 易 な の で あ る 。 あ と の ほ う が 、 唯 一 の 唯 物 論 的 な、 し た が っ て 科 学 的 な 方 法 で あ る 」 〈 資 本 論 二 一 二 〉 。 マ ル ク ス は 、 ま さ に社
会 経 済 の 形 態 と 関 係 づ け て 、 宗 教 を 分析
し た の で あ る 。 古 代 の 自 然 宗 教 、 原 始 宗 教 は 、 人 と 自 然 、 人 と 人 と の 問 の 狭 苦 し い 関 係 の 反映
で あ り 、 キ リ ス ト 教 の 新 教 は 、 資 本 主義
経 済 関 係 に 最 も 適 当 な 宗 教 形 式 で あ る 。 社 会 の物
質
生 産 の方
式 が 異 な る こ と に よ っ て 、 そ の 反 映 と し て の 宗 教 も ま た 異 な っ た も の と な る 。 ま さ に こ の 意 味 に お い て、 マ ル ク ス と エ ソ ゲ ル ス は 「 宗 教 自身
に は も と も と 本 質 も 王 国 も な い 。 … … た だ そ れ ぞ れ の 発 展 段階
に お け る 既 成 の物
質 世界
に お い て 、 そ の 本質
を 探 る だ け で あ る 」 〈 ド イ ッ イ デ ォ ・ ギ ー 〉 と 指 摘 し て い る 。 宗教
は 社 会 存 在 の 一 種 の 反 映 と さ れ る も の で あ り 、 異 な っ た 社会
形
態
で は 、 そ の 反 映 も 同 じ で は あ り え な い 。 異 な っ た社
会 に お け る 宗 教 の 特点
と 働 き を 研究
し よ う と す れ ば、 そ れ ら 各 々 の 社会
形 態 と 、 社 会関
係 に 深 く わ け 入 る こ と あ る の み で あ る 。 マ ル ク ス と エ ン ゲ ル ス は 一 〇〇
年 以 上 も 前 に 生 き た。 彼 ら が 創 立 し た 科 学 的 世界
観
と 方 法 論 は 、 普 遍 的 な意
義 を 持 っ て お り、 こ れ は 私 た ち が 必 ず守
る べ き も の で あ る 。 た だ し彼
ら の 、 そ の 当時
の 、 か の 地 の 宗 教 に つ い て の 具 体 的 な論
述 は 、今
日 の我
国 の 宗 教 の 情 況 に 手 本 通 り 合 致す
る も の で は な い 。 そ れ 故 、 我 国 の社
会 主 義 時 期 の宗
教 問 題 の 研 究 を 進 め る に は 、 マ ル ク ス 主 義 の 基 本 原 理 を 堅 持 す る と と も に 、 必 ず 「実
事 求 是 」 で 「 あ ら ゆ る こ と を 実 際 か ら は じ め る 」 と い う 原 則 に 従 わ な け れ ば な ら な い 。 革命
の 指 導 者 の 宗 教 に つ い て の 個 別 の 論 断 に強
引
に 当 て は め た り 、 断章
摘 句 の態
度 を と っ た り し て は い け な い 。 さ ら に 、 彼 ら が 一 定 の 歴 史 的 条 件 の も と で 提 出 し た 論 点 を演
繹 し て、 社 会 主義
時 期 の 宗 教 問 題 に つ い て の 切 実 な 研究
に 代 え る こ と も い け な い 。 実 際 か ら 出発
す る に は 、 す な わ ち 我 国 の宗
教 の 伝 統 と 現状
に つ い て、系
統
的 な 調 査 と 研 究 を な し 、 宗 教 の 実 際 の 中 か ら 、 そ れ が 社 会 主義
時 期 に あ っ て 、 発 展 し 変 化 し て い く 規 律 を 認識
し な く て は な ら な い 。 宗 教 の 調 査 に あ た っ て は、 社会
と 集 団 の 力 に よ ら な く て は な ら な い し 、 宗教
の 各 層 に 深 く わ け 入 り 、 さ ら に 基層
の 宗教
活 動 と 、 宗 教 教 徒 の中
に 入 ら な く て は い け な い 。 宗 教 の 調 査 に あ た っ て は 、 広 く 、 深 く 、 忍 耐 強 く進
め る こ と が 必 要 で あ る し 、 民 族 の 風俗
、 習 慣 、 文 化 の 伝 統 の現
実 に わ け 入 っ て 、 豊富
で 、 社 会 主 義 中 国 の 宗 教 政 策 ( 永 井 ) 二 〇 三NII-Electronic Library Service 社 会 主 義 中 国 の 宗 教 政 策 ( 永 井 ) 二 〇 四 生 々 し い 宗 教 の 現 状 の
第
一 次 資 料 を 掌 握 し な く て は な ら な い 。 宗 教 の 調 査 に あ た っ て は、 系 統 的分
析
な ど の 、現
代
科 学 の 方 法 を 運 用 し 、 材 料 に た い し て 、 ま じ め な識
別 と 、 理解
を 進 め な く て は な ら な い 。 社 会 の発
展 に と も な っ て 、 つ ね に 新 し い情
況 、新
し い 間題
を 収 集 し 、 新 た な る 材 料 で 、 我 々 の 社会
主 義 時期
の 宗 教発
展 の 規律
の 認 識 を 点 検 し 深 め 、 そ し て、 我 々 の 研 究 成 果 が 、 多 数 の 信 徒 の 団 結 と 、 国 家 に た い す る 基 本 政策
の 貫 徹 、宗
教 事務
の 処 理 、 社 会 主義
の 物 質 文 明 と精
神 文 明 の 建 設 に 、 利 益 が あ る よ う に し な く て は な ら な い 。 三 年余
に わ た り 、 我 々 は、 沿 海 、内
陸、 辺 彊 の 一 〇 余 の省
と 市 の 都 市 と 、農
村 に お い て 、 広範
な実
地 調 査 を 行 い 、 多 く の 信仰
を 持 つ 人 々 、 宗 教 界 の 人 々 、 信 仰 を持
た な い 人 々 、 基 層 の 幹 部 に 接 触 し 、彼
ら と 個別
の 話 し 合 い と 共 同 の討
論 と を 進 め 、 少 な か ら ぬ第
一 次 資 料 を収
集 し た 。 同時
に 、 実 際 の 調 査 の 中 で 提 出 さ れ た 問 題 に つ い て 、 マ ル ク ス 主 義 の 基 本 原 理 を導
き 手 と し て 、 理 論 的 模 索 を 進 め た 。 本 書 は 、中
国 の 宗 教 の 歴 史 的 な特
点 、 建 国 後 の 宗教
の 根 本的
な 変 化 、 宗教
が 長 期 に わ た っ て存
在 す る根
拠 、宗
教
と 社 会 主 義 の 関 係 、 さ ら に 宗 教 信 仰 自 由 の 政策
な ど の 問 題 に つ い て 、 初歩
的 な 考 え を 示 し た も の で あ る 。 宗 教 方 面 の 理 論研
究 に 従 事 す る 人 々 、 実 際 に そ の 任 に 当 っ て い る幹
部
と 、 宗 教 界 の友
人 た ち の御
教 示 を 請 う と と も に、 宗 教 問 題 に 関 心 を 寄 せ る 人 々 の 参 考 に 供 し よ う と す る も の で あ る 。 抛 磚 引 玉 か も し れ な い が 、我
々 は 、本
書 が 、 我 国 社 会 主 義 時期
の 宗 教 問 題 の 探 索 の 一 助 に な る こ と を希
望 す る も の で あ る 。N工 工一Eleotronlo Llbrary Servloe
〈 付 録 〉
郵
県
今
昔
一 九 八 三年
六 月 、 蘇 北 農 村 社 会 調 査 の メ モ と社
会
主 義 時期
の 宗 教 現象
の 社 会 的 根 源 の 分 析 郵 県 の 地 は 、 徐 淮 平原
に あ っ て 、 北 は 山 東 省 と 接 し て い る 。 こ の 一 帯 は 、 漢 民 族 が持
つ悠
久 な る 歴 史 、 文 化 、 伝 統 の 地 方 で あ る 。 古代
の 両 漢 王 朝 に お け る 何 人 か の 風 雲 の 人物
は、 こ こ で 興起
し て お り 、 今 に 至 る ま で 、 こ れ ら の 人物
に つ い て の伝
説 が流 伝 し て い る 。 た と え ば 、 岔 河 公 社 の 黄 石 大 隊 で は 、 劉 邦 の 重 臣 の 張 良 が 、 か つ て 橋 の 上 で 靴 を は か せ て あ げ た 、 か の 黄 石 公 の 生 れ 故 郷 と い う こ と に な っ た 。 以 後 、 黄 石 公 は 、 道 教 の 神 仙 に 奉 ぜ ら れ た 。 ま た こ の 公 社 に は 、 束 の 橋 頭 、 西 の 橋 頭 が あ る が 、 実 際 に は 橋 は な い 。 伝 え る と こ ろ で は 、