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相続税の財産評価方法の特殊性が賃貸住宅市場に与える影響

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相続税の財産評価方法の特殊性が賃貸住宅市場に与える影響

政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU16705 落合和司

1.はじめに 1-1 問題意識

相続税の財産評価方法では不動産には特殊な評価方法が用いら れており、その結果、金融資産に比し不動産の評価額の方が低く なるので、不動産を使った節税策がとられやすい。不動産のなか でも貸家の評価方法が特に低くなるので貸家を使った節税対策が 多い。

1-2 先行研究

貸家の保有を資産選択として論じるとき、資本コストの概念で 説明されることが多い。

倉橋(1998a)「相続税を明示的に取り入れた貸家の資本コスト の定式化」を行い、倉橋(1998b)はそので定式を用いて相続税 の節税効果を資本コストで表した。

山崎ほか(2003)戸建持家、共同持家、貸家について資本コスト に基づく着工数を推計し、消費税が住宅着工に及ぼす影響を実証 的に分析した。

倉橋(2007)は相続税対策が貸家建設に及ぼした影響を検討する ために資本コストの変化を通じて貸家の着工数を推計している。

資本コストを用いて相続税の節税効果が貸家着工数に及ぼす影 響を推計するのは一つの方法だとは思われるが、家屋

1

単位の維 持に必要とされる資本コストは、家計の資産総額に課される相続 税のコスト計算には不向きではないかと危惧される。コスト計算 の元となる家屋と家計全体の資産は別物であるし、相続税は死後 にかけられるという時間差もある。そこで本研究では、資本コス トの概念から離れ、地価の変化と税制の変化が資産家の家計に与 える影響を、25年という比較的長い時系列における

47

都道府県 のパネルデータを構築し分析する。資産家の家計が、地価の変 化、税制の変化に対して、どのように資産選択を変えてきたのか に着目して、5年ごとに分析することとした。

2.相続税負担割合 2-1 我が国の相続税制

相続税制については

1988

年の税制改正以来、1992年、1994 年、2003年と基礎控除の引き上げや最高税率の引下げを含む税率 構造の緩和が行われてきた。1992年には土地の評価を

70%から 80%に引き上げられたが、同時に実行された減税の効果の方が大

きかった。2003年の減税時は、税制調査会の答申では増税と減税 の両施策がうたわれていたが 、減税部分のみが実施された。結果 として、1989年から

2013

年まで

24

年間緩和の時期となり

2013

年になってようやく増税が実現された。この間の相続税の負担感 を見るには図

1

が分かりやすい。

2-2 相続税負担割合

バブル期に拡大した相続税の納税負担は

2013

年には

2/3

程度 に落ちている。その要因は、度重なる相続税の減税と、見送られ てきた増税、そして、この間の地価の下落である。

1

相続税負担の推移(東京都

)

財務省我が国の税制の概要

そこで本研究では、相続税制の変化と地価の変化が各都道府県 の資産家の資産選択に与えた影響に着目し、ある一定の資産を保 有している資産家が直面したであろう相続税の負担割合を試算す ることにより、相続税制の変更、地価の変動が、相続税負担割合 にどのような影響を与え、また相続税負担割合は貸家着工を含む 資産選択にどのような影響を与えてきたのかを分析することとし た。

相続税負担割合の計算式

相続税負担割合とは本研究の研究対象である

47

都道府県 × 6年 次 = 282個のサンプル都道府県の相続税対象家計の世帯主が死亡 し相続が発生したと仮定した場合、総資産額のうちどれくらいの 割合を相続税として徴収されるかを表した比率で、以下の算式に より

282

のサンプル都道府県ごとに試算した。

相続税負担割合 = 相続税支払見込額/相続対象資産額 相続税支払見込額=相続対象資産額-基礎控除額× 相続税率 相続対象資産額:被相続人の資産を各都道府県の商業地

500m2

と金融資産

1

億円と仮定して相続対象資産額を算出した。

2

相続税制の推移と相続税負担割合(東京都)

相続税制の変化 により相続税負担 割合がどのように 変化するかを表し たのが図

2

とな る。相続税負担割 合は

4

回の緩和で 下落し、2013年の 増税で上昇してい るのが分かる。

3.仮説

本研究では、税制の変化、地価の変化により、資産家の家計が どのように資産選択を変えてきたのかに着目し、資産選択につい ての仮説を組み立てたい。

(2)

2

3

相続税負担が大きい場合の資産選択

地価上昇期待と、相続税負担割合により最適な資産選択がどう 変化するかをグラフ化して、分析する。今、仮に土地(遊休地)と 金融資産同額を保有する資産家を考えて、この資産家が、税制の 変化と地価の変動期待によってどのような資産選択をするかを考 える。資産の選択としては、土地に着目し、地価の変動期待に対 し取り得る選択肢とその効果を考える。土地に着目した場合の基 本戦略は

3

つしかない。A.買い増し、B.そのまま保有、C.売却し て金融資産に乗り換えるという3種類となる。相続税対策の影響 を見たいので

B

の戦略に貸家建設による節税策を混ぜる。相続税 負担が比較的大きかった

1989

年当時の相続税を支払った場合の 損益曲線を描いたのが、図

2

である。合理的な資産家は自己の地 価上昇期待により、一番上部に位置する曲線を選択する。この場 合、地価上昇期待が小さいうちは

C

の不動産売却戦略を選択する が、比較的地価の動きが緩やかな局面を予測すれば、保有土地上 に貸家を建てて節税するのが最適資産選択となる、もっと地価が 上昇するとなれば更に土地を買い増してキャピタルゲインを得る のが最適選択となる。

今、Bの曲線は、貸家とその敷地の含み損だけ計上し、含み益 は計上しないよう山形に描いている。通常敷地に貸家を建設して しまうと、相続税対策にはなるが、特に普通借家の場合は取引コ ストが高すぎて売れないことが多く、保守的に見て含み益は計上 していない。しかし、2000年

3

月から定期貸家の制度が導入され たため、B戦略の損益曲線も

A

のキャピタルゲイン戦略の損益曲 線にそれ以前よりは相対的に近づいた。

税制が変わり、相続税負担割合が増えると

B

の曲線は

A,C

に比 べて上方に移動する、税の負担感が増し、節税インセンティブが 増加し貸家の選択幅が広がる。相続税負担割合が減ると、Bの曲 線が、A,Cの曲線より上部に位置する機会は減る。相続税の緩和 で、相続税負担割合が減ると、節税インセンティブが減り、貸家 という資産選択も、相対的に選ばれにくくなる。

以上まとめると、A,B,Cの損益曲線は、相続税制度や地価によ り影響を受けるが、資産選択の基本構造は地価が上がれば、Aの 選択が有利となり、地価が下がれば

C

の選択が有利である。ま た、定期借家導入後は地価上昇期に

B

の曲線は

A

B

の間ぐら いの位置を取る。相続税負担割合との関係で言えば、相続税負担 割合が高いと

B

の選択肢が相対的に選ばれやすくなり、低いと

A

C

の方が選ばれやすくなる。以上から、下記の

2

つの仮説が導 かれる。

仮説1.相続税の制度変化から、相続税負担割合が上昇すると、

貸家による節税策が比較的有利になり貸家建設が進む。

仮説2.地価上昇期待が高まると不動産が選択され、資産家の金 融資産比率は下がる。地価下落期待が高まれば、金融資産が選択 され、資産家の金融資産比率は上がる。

4.実証分析

4-1 実証分析の方法

地価の変動期待、相続税制の変化による相続税負担割合の変 化、その両者の変動により資産家の資産選択も変化する。相続税 制度という全国一律の制度変化によりもたらされる影響を分析し たいので、分析対象は全国が望ましいが、相続税制の影響は各都 道府県の個別事情(特に資産額)に左右される。各県固有の属性 の影響を残したまま、都道府県のデータを直接比較することはで きない。そこで本研究では、固定効果モデルと変量効果モデルを 選択的に用いて分析を進める。実証分析

2

では上位資産家の家計 の金融資産の資産選択について実証を試みる。上位資産家家計の 金融資産比率の推計には以下の方法を用いた。家計の所得や資産 額は対数正規分布に従うことが知られている 。この性質を利用し て、基準年の全国消費実態調査から

47

都道府県の上位

1%、上位 5%の資産家の金融資産額、現住居不動産額、現住居外不動産額を

推計し、金融資産比率を算出し地価の変動率と相続税負担割合と の関係を分析した

4-2 実証分析の推計式と説明変数 家計の資産選択を分析する

には、金融資産、不動産資産 の比率を知る必要がある。こ の要件を満たす統計データは

5

年ごとに行われる「全国消 費実態調査」であった。そこ で、全国消費実態調査の行わ れた、1989年、1994年、

1999

年、2004年、2009年、

2014

年を基準年とすることと した。実証分析

1

の被説明変 数は基準年から

5

年間後まで の累積貸家着工数である。実証 分析

1

の中心的な説明変数は 相続税負担割合と地価である。

これに対して実証分析

2

の基 準年の上位

5%と上位 1%の資

産家の金融資産比率が被説明変 数で、これを相続税負担割合 と、地価で説明することにな る。

実証分析に使用する説明変数の選択に当たっては先に紹介した 先行研究を参考にした。世帯数は貸家の着工に対する需要側をコ ントロールする変数とする。世帯数に対する仮説は、世帯数が増 えると貸家着工は増えるである。したがって正の係数を予測す る。世帯数の他に需要側をコントロールする変数として若年層比 率を加えた、若年層比率に対する仮説は、貸家は若い世代が住 み、非若年層は持家志向が強いというものである。したがって若 年層率の係数の符号も正が予測される。説明変数とその算出根拠 については表1参照

4-3実証分析の結果

(1)実証分析の結果

実証分析

1

から相続税制の変更により相続税負担割合が変化する と貸家着工に有意にプラスの影響がはたらくことが実証された。

地価もまた、貸家着工に有意にプラスにはたらくことが実証され た。世帯数と若年層比率も貸家着工に対して有意にプラスであ り、このことは貸家着工を被説明変数とした先行研究とも整合的 になっている。

A

B

C

(3)

3

表 1説明変数

2

実証分析

1

の結果

(2)結果の解釈

1989

年~1994年にかけては地価が下落し、基本的には図

3

の 地価はマイナス局面の状況で

C

の金融資産選択が主流となる。

しかし、地価の下落幅は東京の

45%と北海道の 4%では格差があ

り、下落がマイルドな北海道では貸家着工は東京ほどには減って いない。このことはマイルドな地価の動きのときには、B貸家戦 略もありえるという仮説と整合的な結果となっている。

1994

年~2013年は

4

度の税制緩和で相続税負担割合は低 いレベルであり、基本的には貸家建設は低レベルとなるはず である。地価の動きは比較的マイルドであり、Cの金融資産 選択が最適な状況である。このことは、1994年から

2013

年にかけて資産家の家計が金融資産を選好し金融資産比率が 全国的に高まったことと整合的となっている。

2013

年の増税アナウンスからは相続税負担割合の増加が 見られ、地価の変動率は

2014

年の前

2

年では東京でわずか にプラス、北海道でわずかにマイナスを示し、マイルドな地 価変動となっており、Bの貸家による節税戦略が採られやす い環境となっている。制度変更を受けて相続税負担割合が上

昇し貸家着工が増えている。このことは資産選択の枠組みで 考えた仮説

1

と整合的な結果となっている。

3

実証分析

2

の結果

4-4

2013

年の増税の影響のシミュレーション 相続税増税がアナウンスされた

2013

年以前の

5

年間の貸家着 工を基に、実証分析

1

の結果を利用して、アナウンス後の

2014

年から

5

年間の貸家着工を推計する。実証分析

1

から②式を選択 する。

Ln(貸家着工)=0.325Ln(

相続税負担割合)

2013

年増税(アナウンス)により増加する相続税負担割合を全国 平均で計算すると

14.4%⇒19.9% となる。

また、2009年~2013年までの

5

年間の貸家着工実績は

Y1=1,580,100(戸)である。

推計する

2014

年から

2018

年までの

5

年間の貸家着工数を Y2 とすると

Y1

Y2

の関係はⅠ式より

Y2/y1=e^(0.325(ln0.199))/e^(0.325(ln0.144))

と表される。

これを解いて、𝑦2=1,755,539 を得る。

y2-y1=1,755,539-1,580,100=175,439 であるから、2014

年から の

5

年間の貸家着工数は相続税の増税により

17

5

千戸増加す ることが推計できる。

5.政策提言

5-1 実証分析から分かる問題点

実証分析の結果、相続税の制度変更等により、相続税負担割合 が変化すると貸家着工数に有意な影響を与えることが実証され た。シミュレーションからは次の

5

年間で今回の増税で増える新 規着工件数は17万5千戸と予想されている。貸家による節税対 策の源は不動産の評価の優遇にある。確かに、不動産は金融資産 に比べて流動性で劣るので、多少の減価は必要かもしれないが、

現行の減価の仕方は流動性を加味しても過大であり、合理性を欠 いている。その問題点を概観すると表

4

のとおりとなる。

5-2制度評価の枠組み

本論文では不動産鑑定理論に即して制度を評価したい。借地権 に関する「借地人に属する経済的利益」をその権利の授受がある おかげで借地権者が通常よりも安い地代で借地を利用できる権利 という意味で「借り得」部分と呼ぶ。また、借地権者がいるおか げで、地主の利用が制約されたり処分が制限されたりすることを 地主にとって土地の流動性が減るという意味で、「流動性」部分 と呼ぶこととする。この「借り得」と「流動性」によって現行の 借地権の財産評価制度を評価すると、表

5

のようになる。

固定効果 変量効果 固定効果 変量効果 固定効果 変量効果 被説明変数

相続税負担割合(対数) 0.451** 0.223 0.325* 0.123 0.449** 0.218 (2.359) (1.358) (1.750) (0.760) (2.351) (1.330) 県内世帯数(対数) 2.687*** 1.087*** 2.463*** 1.065*** 2.684*** 1.087***

(5.174) (18.89) (4.925) (18.53) (5.179) (19.07) 若年層比率変化 8.796*** 6.483*** 2.991 1.287 8.963*** 6.634***

(4.559) (3.607) (1.279) (0.587) (4.727) (3.763) 前2年地価変動率 1.099*** 1.025***

(4.065) (3.851) 前2年家賃変動率 0.452 0.387

(0.495) (0.422)

固定資産税額(土地)/ 0.039 0.0145 0.182 0.0306 0.038 0.0151 都道府県面積(対数) (0.304) (0.378) (1.415) (0.799) (0.294) (0.397) 1989年~1993年ダミー 0.882*** 0.742*** 1.038*** 0.859*** 0.889*** 0.752***

(4.191) (4.582) (5.081) (5.389) (4.242) (4.683) 1994年~1998年ダミー 0.731*** 0.666*** 0.953*** 0.866*** 0.736*** 0.673***

(4.604) (5.232) (5.923) (6.476) (4.655) (5.323) 1999年~2003年ダミー 0.496*** 0.441*** 0.581*** 0.531*** 0.500*** 0.445***

(5.222) (6.021) (6.248) (7.130) (5.280) (6.121) 2004年~2008年ダミー 0.695*** 0.595*** 0.696*** 0.607*** 0.696*** 0.596***

(15.252) (16.24) (15.951) (17.18) (15.311) (16.29)

定数項 -25.774*** -4.411*** -24.379*** -4.556*** -25.721*** -4.435***

(-3.746) (-4.962) (-3.696) (-5.215) (-3.746) (-5.021) サンプル数 235 235 235 235 235 235

決定係数 0.816 0.831 0.816

個体数 47 47 47 47 47 47

修正済み決定係数 0.760 0.780 0.761

F統計量 88.23 98.05 99.65

ハウスマン検定値 Prob>chi2 = 0.0505 Prob>chi2 = 0.0821 Prob>chi2 = 0.0295 基準年に続く5年間の貸家着工数(対数)

固定効果 変量効果 固定効果 変量効果 固定効果 変量効果 固定効果 変量効果 被説明変数 トップ1%資産家の金融資産比率 トップ5%資産家の金融資産比率 相続税負担割合(対数) -0.078** -0.142*** -0.078** -0.119*** -0.045 -0.0776*** -0.048* -0.0880***

(-2.080) (-5.967) (-2.079) (-4.003) (-1.586) (-3.380) (-1.694) (-4.362) 前2年地価変動率 -0.190*** -0.219*** -0.189*** -0.189*** -0.187*** -0.187*** -0.181*** -0.180***

(-4.318) (-4.895) (-4.244) (-4.313) (-5.588) (-5.690) (-5.431) (-5.474) 前2年家賃変動率 -0.263 -0.256 -0.260 -0.289 -0.196 -0.219

(-1.423) (-1.357) (-1.399) (-1.588) (-1.421) (-1.602)

世帯数(対数) 0.010 -0.0115 -0.018 -0.00545 (0.141) (-1.319) (-0.310) (-0.765)

前年の県民所得(対数) -0.043 -0.0257 -0.035 -0.0301 (-0.847) (-0.837) (-0.725) (-1.039) 1989年ダミー -0.020 -0.0511*** -0.017 -0.00468 -0.090*** -0.0684*** -0.078*** -0.0590***

(-1.083) (-5.579) (-0.612) (-0.279) (-3.347) (-4.726) (-4.276) (-4.169) 1994年ダミー -0.172*** -0.190*** -0.169*** -0.164*** -0.205*** -0.194*** -0.197*** -0.187***

(-14.305) (-23.33) (-8.442) (-14.19) (-12.918) (-23.30) (-21.501) (-23.84) 1999年ダミー -0.121*** -0.115*** -0.120*** -0.126*** -0.109*** -0.109*** -0.104*** -0.107***

(-15.377) (-15.09) (-8.888) (-16.49) (-10.635) (-19.45) (-17.552) (-18.57) 2004年ダミー -0.109*** -0.0714*** -0.108*** -0.131*** -0.089*** -0.103*** -0.087*** -0.107***

(-5.494) (-9.481) (-5.138) (-8.211) (-5.606) (-8.483) (-5.875) (-9.770) 2009年ダミー -0.067*** -0.0325*** -0.067*** -0.0856*** -0.050*** -0.0627*** -0.050*** -0.0670***

(-3.717) (-4.407) (-3.633) (-5.809) (-3.613) (-5.610) (-3.672) (-6.752)

定数項 0.206*** 0.351*** 0.064 0.286* 0.819 0.451* 0.508 0.392

(2.953) (43.70) (0.063) (1.813) (0.829) (1.797) (1.277) (1.578) サンプル数 282 282 282 282 282 282 282 282

決定係数 0.807 0.807 0.899 0.900

都道府県 47 47 47 47 47 47 47 47

修正済み決定奇数 0.761 0.760 0.874 0.875

F等係数 118.4 104.8 222.7 224.8

ハウスマン検定 Prob>chi2 = 0.8705 Prob>chi2 = 0.7850 Prob>chi2 = 0.5390 Prob>chi2 = 0.6084

(4)

4

4

相続税の財産評価の問題点

5

現行の借地権の財産評価

5-3借地権について

5

から両制度を評価すると、普通借地権は慣行による

30%~

90%の一律設定となっているが、定期借地権は不動産鑑定理論に

基づいて個別に計算することになっており、定期借地権の方が、

個別事情を反映できるので、評価方法として合理的である。

定期借地権が導入されてから、25年が経過している。新しい制 度が導入されたにもかかわらず、普通借地契約を結んだ地主は、

自己に有利な新制度をあえて利用せず、古い制度により借地人に 高い立ち退き料を認めてしまっている者である。自らの財産を毀 損した者にまで減価の特典を認めることはなく

1992

8

月以降 に結ばれた普通借地権は財産評価上、定期借地権取引とみなして もよいのではないかと考える。

流動性部分の評価については、現行制度は借り得部分と流動性 部分に分けて評価をしている。借地人がいることにより、土地の 利用や処分が制約を受けるのは確かで、流動性部分により減価す るのは合理性がある。相続税の財産評価に関する限り、流動性部 分はあくまでも借り得部分の下限としての役割であり、借地権と して借り得部分にプラスアルファーされるわけではない。補完的 な役割であれば、現行制度での割合による減価を認めてもよいの ではないかと考える。以上をまとめると以下の政策提言となる。

提言1-1

普通借地権減価は現行の地域ごとに割り振られた

30%~90%の

一律減価を改めて、不動産鑑定理論に則った以下の方式とする。

・普通借地権も定期借地権も不動産鑑定評価理論に基づいた評価 とする。

・相続税財産評価上は

1992

8

月以降締結の普通借地権を定期 借地権とみなす。

・流動性部分として現行の普通借地権

20%、定期借地権 20%か

5%の下限という制度を残す。

5-4貸家建付け地と借家権

まず貸家建付け地の減価の制度について評価すると、貸家建付 け地とは貸家とその下の敷地が一人の地主の所有であるときの状 態である。貸家から借家権を減価し、貸家建付け地から借地権割 合 × 借家権割合を減価するのは、明らかに二重減価になってい る。

借家権についても、新制度導入後の旧制度契約締結者は相続財 産の毀損については自己責任なので財産評価上の減価はしないと の立場に立つ。

借家権についても借り得部分と流動性部分を分けて考えるが、

借り得部分には継続家賃と正常家賃の差額を鑑定評価しなくては いけない問題があり、煩雑でコストもかかるので、流動性で割り 切って年数に応じた評価をするという提案をしたい。貸家建付け 地とまとめて示すと以下のようになる。

提言1-2

貸家と貸家建付け地は一体のものとして減価し、二重減価は行 わない。借家権の減価は現行一律

30%の減価を認めているものを

以下のとおりに改める。

・借家権割合の算定は普通借家権の場合も、定期借家権の場合も 借り得部分は算定せずに流動性部分で減価するものとする。

・流動性にあたる部分には以下の減価を認める。5年以下

5%、5

-10年

10%、10-15

15%、15

年以上

20%

・2000年

3

月以降の普通借家権契約も定期借家権契約とみなす。

5-5 土地の

80%評価問題

金融資産との流動性の差、相続税対策のインセンティブとなる ことから考えて現行の

20%のアローアンスは過大である。

100%近辺で評価すると地価下落時に更正の請求が殺到し、その

妥当性判断が膨大なコストなりかねない。それを防ぐためには

5%程度のアローアンスは維持し、これ以上の下落がないと更正請

求は受付けない旨の規定を明文化することで、更正の請求の歯止 めとすることもできると考える。以上をまとめて以下の政策提言 をしたい。

提言1-3

・現行、路線価の公示地価に対するレベルが

80%に設定されてい

るのを

95%に改める。

・地価が公示地価を

5%以上下落しなければ更正の請求は受け付

けない旨明文化する。

・売り急いだ相続人が、公示地価の

95%以下の価格でしか相続し

た土地を売却できなかった場合は更正の請求を受け付ける。

・受け付けた更正請求は請求の内容が、真正売買であるか、客観 的な価格形成であるかを課税当局で判断し、妥当な更正請求と 認められる場合に限り、更正を認める。

6.まとめ

今までにも資本コストの概念を使って、各種税制の変化が貸家 建設に影響を与えることが実証されてきた。しかし、相続税制の 影響は貸家投資のコストとは直接関係なく、貸家の資本コストで は正確には反映できないおそれもある。

本研究の最大の意義は、資本コストの概念から離れ、地価と相 続税制が変動したときに資産家がどのような資産選択をするかと いう枠組みの中で、相続税負担割合が貸家着工に有意にはたらく ことを実証したことである。

シミュレーションからは、2014年からの

5

年間で相続税増税の 影響で

17

5

千戸の賃貸住宅が増加する試算となる。貸家着工 は足元増加傾向であるが、相続税対策による不要不急の貸家着工 はいくらになるのか、本研究は

17

5

千戸という実証分析に裏 打ちされた数字を示したのである。

参考文献

倉橋透(1998a)「相続税を明示的に取り入れた貸家の資本コスト の定式化」日本不動産学会誌 第

12

巻第

3

号、1998.3 pp.82-89 倉橋透(1998b)「相続税を明示的に取り入れた貸家の資本コスト

の計測」日本不動産学会誌 第

12

巻第

4

号、1998.6 pp.51-62 倉橋透(2007)「首都圏における相続税対策の貸家着工戸数への影

響」東京 : 建設物価調査会、 pp.3-12

山崎福寿、浅田義久、井出多加子、篠原二三夫、石川達哉

(2003)「社会構造や資本コスト等の変化が市場に及ぼす影響 について」『住宅税制のあり方に関する調査研究:報告書』住 宅生産団他連合会

pp.87-162

参照

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