• 検索結果がありません。

鉄道の運行本数が駅周辺人口に与える影響について

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "鉄道の運行本数が駅周辺人口に与える影響について"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1

鉄道の運行本数が駅周辺人口に与える影響について

政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU19706 杉本 祐樹 1.はじめに

近年、多くの地方都市ではモータリゼーシ ョンの進展とともに居住地の郊外化が進み、

市街地が拡大している。しかしながら、人口 減少と高齢化によって、これまで人口集積に よって支えられてきた公共サービスの提供が 困難になることが予想されている。富山市で はコンパクトシティ構想を掲げ公共交通機関 を利用し、生活に必要な医療、福祉、商業施 設へアクセスできるコンパクトシティプラス ネットワークの実現に向け、公共交通機関の 利便性を高め公共交通沿線居住の推進を行っ ている。その始まりとして赤字路線であった ため廃線の選択迫られていたJR富山港線を身 近な公共交通として存続させるため2006 年に路面電車化を行い、運行本数を大幅に増 加させた。また、富山駅と岐阜駅をつなぐJR 高山線において運行本数を増発し公共交通の 活性化のために補助金を交付している。

同様に富山駅と立山駅をつなぐ富山地方鉄道 の不二越上滝線においては、事業主体によって ピーク時の運行本数の増発を行っている。

本研究においては、鉄道の増発が鉄道沿線 の居住者を増やしコンパクトシティ化を進め るのではないかという視点から、富山市内に おける鉄道の運行本数の増加数と鉄道駅周辺 の人口数を使い、実証分析を行っている。鉄 道の運行本数の増発は、即座に沿線の人口数 に影響を与えないことがわかった。また、新 幹線開業後、増発した鉄道駅周辺では人口の 増加に影響を与える効果が確認できた。

実証分析の結果を踏まえ、増発に関する効 果の測定、効果測定に必要なデータを共有す

るシステムづくり、沿線居住を進めるための 鉄道利用者の利用コストの低減について提言 を行っている。

2.増発の状況について 2‐1.富山港線路面電車化

富山市では 2006 年に富山港線を路面電車化 し LRT 車両の導入を行っている。国内で初めて 本格的 LRT を導入した。路面電車化に伴い 4 つ の新駅が設置され、運行本数はのぼりくだり合 わせて 1 日 40 本から 132 本に拡充された。

2‐2.高山本線活性化事業

2006年からJRが運行する高山本線の運行本 数を増発している。この事業は第1期と第2 期に分けられ、第1期は2006年の10月21 日から2008年の3月14日まで富山駅から猪

(2)

2 谷駅までの区間を増発した。第2期は2006 年3月15日から2011年の春まで富山駅から 越中八尾駅までの区間を増発した。富山駅か ら越中八尾駅の間の運行頻度は34本/日で あったが、第1期では50本/日、第2期で は60本/日に増便している。また現在も富 山市は年間約 2 千万円を負担し、富山駅から 越中八尾駅において朝夕の混雑時に7本の増 発を行っている。

2‐2.不二越・上滝線活性化支援事業 2011年9月1日から2012年3月31日ま での6カ月間夕方以降の帰宅時間帯を中心に 7本/日の増便を行い、終電時刻を22時台か ら23時台に繰り下げている。

3.鉄道の運行本数増発の効果

鉄道の運行本数増発が沿線居住者数に与え る影響について最小二乗法を用いて分析を行 う。

各鉄道路線の駅周辺地域において分析を行 うため、各鉄道駅を中心に少しでも半径1km に含まれる 500m メッシュデータを使い推定し た。都心部の市内電車、富山駅は運行本数の多 さから除外しており、郊外の鉄道駅を対象とし ている。なお推定モデルは以下の通りである。

推定モデル1

2005 年から 2015 年の人口増加率 = β

0

+β

1

(1995 年から 2005 年の人口増加 率)+β

2

(駅から半径 500m 以内ダミー)+ε

推定モデル2

2015 年から 2018 年の人口増加率 = β

0

+β

1

(1995 年から 2005 年の人口増加率)

+β

2

(駅から半径 500m 以内ダミー)+ε

駅から半径 500m 以内ダミーは公共交通沿線居 住推進事業の対象エリアであれば1、そうでな ければ0をとるダミー変数である。

表1 推定結果

表2 推定結果

表 1 より、2005 年から 2015 年の人口増加率を 説明変数とした推定モデル1では運行本数の 増発は有意ではなかった。しかし、2015 年から 2018 年の人口増加率に 10%で統計的に有意で あった。これは 1 本の増発が人口増加率を 0.0013 あげる、また公共交通沿線居住推進事 業の対象エリアであれば人口増加率を 0.12 減 らすことを示している。これらの推定結果から 増発の効果は 2015 年以降に効果が発生したこ とが示された。この結果は 2015 年 3 月に開業 した北陸新幹線の開業が富山駅周辺の魅力を 高めたことが影響していると考えられる。新幹 線の開業に合わせて富山駅前は再開発事業が 行われた。富山駅前を含む、都心部での固定資 産税は 8%上昇していることからも魅力が高 まっていることがわかる。しかし、新幹線が開 通したことで、富山駅から離れた他の駅周辺の 人口に影響したとは考えにくい。したがって増 発の利便性が駅周辺人口に与える効果は遅れ て発生したと考えられる。また、公共交通沿線 居住推進事業として補助金の交付されるエリ アでは人口を有意に減少させるという結果が 出ている。補助金の交付が人口減少させるとは 考えられないため補助金より、土地代が安く自 動車の利用がしやすい郊外での居住を求める 人がいるためと考えられる。

4.政策提言

4-1-1.ハブとなる駅に魅力がある場合、増 発の効果がある

ハブとなる駅に魅力がある場合、その駅と結

2005年から2015年の人口増加率 係数 標準誤差 P>t 有意性 2005年から2015年の増加運行本数 -0.00063 0.000947 0.506 1995年から2005年の人口増加率 0.00577 0.022723 0.8 駅から半径500m以内ダミー 0.075102 0.07243 0.3

定数項 -0.03953 0.059993 0.51

***,**,*は有意水準1%,5%,10%を示す

2015年から2018年の人口増加率 係数 標準誤差 P>t 有意性 2005年から2015年の増加運行本数 0.001312 0.000714 0.067 * 1995年から2005年の人口増加率 -0.04126 0.017083 0.016 **

駅から半径500m以内ダミー -0.12112 0.054462 0.027 **

定数項 0.088655 0.045108 0.05

***,**,*は有意水準1%,5%,10%を示す

(3)

3 ばれている鉄道路線での増発をすべきである。

また、ハブとなる駅に魅力がない場合、バスで 代替することも検討が必要である。推定式2か ら 2015 年から 2018 年の人口増加率は運行本 数の増発によって運行本数 1 本/日の増加は人 口増加率を 0.001 増加させる結果が示された。

2015 年には北陸新幹線が開業し、ハブとなる 富山駅も新幹線停車駅となった。新幹線停車駅 となったことにより、富山駅の魅力が高まり、

接続している鉄道路線も魅力が高まったと考 えられる。つまり富山駅の魅力の高まりと運行 本数の増発の効果が相乗効果となって表れた と考えられるため、ハブとなる駅やその周辺に 魅力がない場合、増発は効果がない可能性があ る。

また推定式2の結果より運行本数の増発が 人口増加率に与える影響は少ないことも示さ れている。公共交通の利便性を上げることだけ で居住誘導を行うには限界があるため、将来の 展望として公共交通の利用が見込まれる駅周 辺への企業が投資をしたくなるまちづくりが 必要である。

4-1-2.データの公開利用促進

政策の効果を評価が可能となるようなデー タとデータを管理するインフラの構築及び法 整備を提言する。本研究では鉄道の運行本数の 増発が沿線人口に与える影響について分析し たものである。しかし、増発と直接的に因果関 係があるのは乗降客数である。各駅における時 間帯別の乗降客数、定期利用者数などの詳細な データが入手できれば、政策の直接的な効果を 測定し、深い考察を行うことができた。今回は 鉄道事業者から上記のデータ提供を受けるこ とができなかったため、直接的ではない鉄道の

1

運行コスト、鉄道整備費、車両価格、ダイヤ改正にかか るコスト

2

鉄道事業法第三条 1 項「鉄道事業を経営しようとする者

運行本数の増発が沿線人口の関係を考察する こととなった。また、改めて鉄道事業者へ問い 合わせたところコスト1に関係する情報は社外 へ公開できないとの回答があった。

鉄道事業は規制産業2であり鉄道事業を経営 しようとする場合、国土交通大臣の許可が必要 である。本市を含め大都市を除く地方都市にお いては独占企業となっていることが多い。この ため運賃の上限も国土交通省が規制している。

このような規制産業において適切に規制を 行うためには、その産業の綿密な理解が不可欠 である。また適切な規制を行う上で、規制を批 判的に検討するアカデミックな研究は非常に 有益である。しかし、本研究を通じ鉄道事業者 が所有するデータの開示がされていないこと で、その産業の綿密な理解を阻害しており、更 に鉄道事業に関する研究が行われにくい状態 となっていることがわかった。現在、国におい ては EBPM3の推進が進められ、各府省に統計等 データの提供要請を受け付ける窓口設置され たところである。官民データ活用推進基本法第 一条にも「我が国が直面する課題の解決に資す る環境をより一層整備することが重要である」

と示されている。したがって、行政の重要政策 に関わる公共的な鉄道事業においてもデータ 提供要請を受け付ける窓口の設置やオープン データ化を進めていくべきであると考える。

4-1-3.鉄道のパターンダイヤ化

パターンダイヤ化が可能な路線はパターン ダイヤ化の採用を検討すべきである。パターン ダイヤとは、一定の間隔で運行される時刻表の ことである。富山ライトレールはパターンダイ ヤ化されており、午前 9 時から午後 7 時までが 15 分間隔となっている。国内では西日本旅客

は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。 」

3

EBPM(Evidence Based Policy Making)証拠に基づく政策

立案

(4)

4 鉄道の京都線などでパターンダイヤの路線が 見られる。パターンダイヤ化することで利用者 は時刻表を記憶しやすくなる。つまり、利用者 にとって利用コストを下げる効果がある。しか し、パターンダイヤ化は東京の山手線のように 運行頻度が高い路線では時刻表を見る必要が ないため意味がない。また、単線ではなく単線 並列、あるいは複線でなければ実現が難しい。

さらにはダイヤの改正そのものにコストがか かる。ダイヤを構築することは、他の鉄道会社 との調整や、車両の選別があり簡単ではない。

しかし、増発とともにダイヤの工夫をすること で得られる効果が費用より大きくなる場合は パターンダイヤ化などダイヤの工夫を行うべ きと考える。

4-1-4.鉄道の利便性向上

鉄道運賃を引き下げるべきである。混雑が起 きてない場合、鉄道に乗客を一人増やす際の限 界費用は限りなく 0 円に近い。現在は運賃があ ることで死荷重が発生していると考えられる。

つまり、その死荷重を解消し、駅周辺の利便性 を向上させることで駅周辺への居住誘導を進 めることができる。公平性の観点から財源は駅 周辺土地の固定資産税から賄うことが望まし い。なぜなら利便性の向上によって発生する便 益はかなりの分が地価に吸収されるためであ る。しかし、財源が確保でき、運賃の値下げよ り効果が得られる政策を実施できる場合は、相 対的に評価し最も良い施策を実施すべきであ る。駅の利便性向上のため市役所の窓口業務の 機能を併設させても良いかもしれない。

4-1-5.増便の便益評価について

2015 年以降に事業評価に沿線人口の増加に 関する便益を加えることを提言する。本研究に おいては、推定式1では 2005 年から 2015 年の 人口増加率、推定式2では 2015 年から 2018 年 の人口増加率に与えた影響を推定している。そ

の結果、推定式1では有意な結果が得られなか った。しかし、推定式 2 では増発が人口増加率 をあげるという結果が得られた。つまり、増発 に人口増加率を上げる効果はあるが、すぐに便 益に加えられないということが示された。2010 年時点に行われた、富山港線路面電車化整備効 果把握調査業務において「富山ライレール電停 から 500m圏域の人口は、平成 18 年以降、年 間 200 人前後の減少が続いており、減少傾向に 歯止めがかかっていないものの、富山ライトレ ール沿線の隣接している地域であり、市街地の 構造に類似性が高い水橋と比較すると、人口減 少率は小さい」と評価されていた。この調査に おいては、水橋と比べて人口の減少率を比較し ているが、本研究では、富山市の路面電車、富 山駅を除く鉄道駅周辺の人口データで分析を 行っているため、異なる結果が得られたと考え られる。また居住に関する政策の効果はすぐに 表れるものではないことが示されたことから、

長期にわたる予測と評価が必要であると考え る。

4-2.おわりに

本研究では増発の効果が駅周辺の人口に影 響を与えるとして分析を進めたが、第 1 章で述 べた通り富山市ではコンパクトシティ政策と して、都心部の魅力を高める施策を実施してい る。今回の分析で得られた結果は増発した運行 本数で駅周辺の人口を説明しているが、運行本 数以外のまちづくりにおけるデザイン性や、再 開発における効果を取り除くことができてい ない。いろいろな政策の相乗効果がようやく表 れ始めた。今後も魅力を高めていくことができ れば、さらにコンパクトなまちづくりを進めら れる可能性がある。

参照

関連したドキュメント

イドの減少が見られるが、これは前述の記録を大きく 増加させた児童の影響が大きい。この児童はストライ ドを 21cm 減少しピッチを 0.43

膝関節 の条件下では,装具非装着群,装具装

Fig.2 抗酸化酵素の発現 Table1 プライマー配列リスト.. いたが, MMP1,MMP13 に有意な差は見られなかった ( Fig.3)。 3.3 核内転写因子の発現

 本論文の結果としては,インストア・プロモーションがブランド・コミットメントに影響を与

9 4.2.2 実証分析結果 推定式(1)の推定結果を表 2 に示す。全地域においては、線路 100m 圏で約

11 おり、近いほど利便性が高く、便益を高める効果があると考えられる。 4.4 実証分析 2(仮説 2 の分析) 4.4.1 分析の方法

本節では5節で説明した観点から、希望子ども数と出産行動の関係について、

全国の JR 駅施設開発  全国では 1989 年以前に開業した鉄道駅施設が最も 大きな割合を占めている (