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エゾシカの採食が林床植生へ与える影響 -

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2018 年 2 月 8 日

エゾシカの採食が林床植生へ与える影響

-

嗜好性の特徴と個体数変動パターンに基づく地域間の特徴 -

環境資源学専攻 生物生態・体系学講座 植物生態・体系学 加藤華織 1.はじめに

エゾシカ個体数増加に伴い,樹皮剥ぎや稚樹採食など森林への影響が深刻化し,様々な調 査が行われているが,林床植生への影響に関する研究は少ない。北海道森林管理局では,国 有林へのエゾシカの影響について,2009 年度から毎木,稚樹,林床植生の調査を継続してい る。本研究は,森林管理局の林床植生調査データを用い,エゾシカが林床植生へ与える影響 についてエゾシカの個体数密度,嗜好性,エゾシカが侵入してからの時間経過の点に着目し,

嗜好性の特徴と個体数変動パターンに基づく地域間の特徴を明らかにすることを目的とした。

2.方法

①使用データ: 北海道森林管理局の「エゾシカの立木食害等が天然更新等に与える影響調査」

データ(2009~2016年度)を用いた。317ヶ所の調査地に設置された50m×4mの帯状区内 1m×1mのサブコドラート20ヶ所で実施された林床植生調査の,出現植物とシカによる食 痕の有無のデータを用いた。

②植物の区分: 先行研究で明らかになったエゾシカの嗜好性を参考に,植物の形態や生活型 から出現植物を10グループに区分した。

③エゾシカ個体数密度: 密度の指標として,5kmメッシュごとの1狩猟者1日当たりの目撃 数であるSPUE(北海道立総合研究機構環境科学研究センター提供)を用いた。

④地域の区分: 林野庁の森林計画区に基づき,北海道を13地域に区分した。さらに調査地の SPUE の年変動をもとにクラスター分析によって,地域をまとめた。

⑤計算方法: 地域ごとに各植物グループ別に,食痕率(%)=(食痕が確認されたサブコドラ ート数/植物が出現したサブコドラート数)×100,資源量(m3/m2)= 高さ×被度を算出。

3.結果と考察

1990年からのSPUEの年変動をもとにクラスター分析を行った結果,各地域のエゾシカ の個体数変動に基づく地域パターンは5つ(近年増加地域,高密度維持地域,低密度地域①,

低密度地域②,低密度維持地域)に区分された。食痕率を植物グループごとに見ると,嗜好 性が高い植物(ササ,落葉樹,イネ科型植物)は近年増加地域での食痕率が高く,直近SPUE

(調査前年を含めた過去5年間のSPUEの平均値)が高いほど食痕率が高くなる傾向が見ら れた。一方,嗜好性が低いとされるシダ植物は近年増加地域での食痕率は低く,高密度維持 地域において食痕率が高い結果となった。さらに,2巡目の調査が行われている地域につい て,食痕率と資源量の経年変化をみたところ,高密度維持地域ではシダ植物の資源量が増加 し食痕率が上昇していた。これはエゾシカの採食の影響で嗜好性の高い植物が減少し,嗜好 性の低いシダ植物が増加し食痕率も上昇したものと考えられた。近年増加地域では嗜好性の 高い植物の採食が進んでおり,今後も個体数密度が高く維持された場合,高密度維持地域の ように不嗜好性植物の資源量が増加し,採食が進む可能性が示唆された。

参照

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