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臨床神経 indd

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Academic year: 2021

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 頸部神経根症  頸部神経根症の多くは頸部痛や一側上肢の痛みやし びれが主訴となる。Spuring test(頸椎を右または左 へ後屈し,頭頂部を手で押さえて頸椎柱に軸圧をかけ ることにより痛みやしびれを再現させる)が陽性であ ることや頸椎の動きにより症状が誘発されることが診 断の有力な手がかりになる。このような所見がない場 合には,神経症状が単一神経根障害として説明できる か,そして,その神経根に対応する圧迫因子が画像診 断で証明できるかが診断のポイントとなる。原因の多 くは椎間板ヘルニアまたは椎間孔狭窄である。前者は MRI などの画像診断でその存在が比較的容易に確認 され障害レベルを診断できることが多いが,後者は患 者の年齢層が高いこともあって画像上,無症候性狭窄 が多く,責任レベル診断がしばしば困難である。ヘル ニアの場合もそれが無症候性のこともあるため,ヘル ニアにより圧迫される神経根症として臨床症状が矛盾 しないことを確認する必要がある。  従って,頸部神経根症における責任神経根の診断に は神経学的所見や電気診断の必要性が高い。神経学的 に責任神経根を診断する場合,各神経根の皮膚感覚支 配域(デルマトーム)や筋支配域(ミオトーム)を手 がかりとして用いるが,一般に,上肢ではデルマトー ムに重なりや個人差が多いためミオトームの信頼性 の方が高く,下肢ではその逆とされている1,2)。実際, 下肢では表在感覚障害が下腿内側にあれば L4,下腿 外側から足背であれば L5,足背外側部や足底部にあ れば S1 神経根障害と考えてほぼ間違いない。他方, 頸部神経根症では表在感覚障害の領域は各神経根に特 有の傾向はあるものの決め手とはなりにくいため,ミ オトームすなわち徒手筋力テスト(MMT)がより重 要となる。  1.C5 神経根症  C4 5 が罹患椎間となる。肩外転筋(三角筋,棘上筋) と肩外旋筋(棘下筋,小円筋)の筋力低下や EMG 異 要旨 神経根症の原因の多くは椎間板ヘルニアまたは椎間孔狭窄であり,診断にはまず頸椎 や腰椎の動きが上肢症状や下肢症状を誘発するかどうかを確かめることが重要である。次 に,神経診察によりデルマトーム(感覚検査)やミオトーム(MMT,腱反射,EMG 検査) に基づいて障害神経根を特定し,それに対応する椎間レベルに一致して画像診断で異常所見 が存在することを確認する。一般に,上肢はミオトーム,下肢ではデルマトームの信頼性が 高い。運動麻痺が著しい場合,支配神経を末梢部で最大上刺激して麻痺筋から記録される M 波の大きさは支配神経の軸索変性の割合に応じて減少するため運動麻痺の予後の指標とな る。神経根症では麻痺筋から M 波が誘発できないほど運動神経の軸索変性が重度であって も椎間孔(後根神経節)より末梢側の感覚神経は軸索変性を免れるため SNAP は正常に記録 されることが多い。重症例においてこの現象は末梢神経障害との鑑別に有用である。

Key Words : radiculopathy, electromyography, T-reflex, prognostic value, sensory nerve

action potentials

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常が同程度に認められ,それよりも程度は軽いものの 肘屈筋(上腕二頭筋,腕橈骨筋)の筋力低下と EMG 異常も認められる。それとともに上腕二頭筋反射と腕 橈骨筋反射が減弱,消失する。  [鑑別診断]肩挙上障害を来す神経疾患として鑑別 を要する疾患として,副神経麻痺と長胸神経麻痺が あり前者は肩の外転により,後者は前挙した上肢で 壁を押すことにより翼状肩甲骨(Scapular winging) が認められる。それぞれ,僧帽筋,前鋸筋の EMG 検査で筋線維自発放電を確認することにより診断す る。EMG 検査における針電極刺入部位のガイドには Delagi et al. 著のガイドブックが必携の書である3) 。  [予後診断]麻痺の予後診断法として鎖骨上窩の電 気刺激により三角筋から記録される M 波の振幅や面 積が有用である。神経伝導検査の基本原理のひとつと して,神経障害が生じてから 4 5 日後に,障害部位よ りも末梢で支配神経を最大上刺激して記録される M 波の大きさは,支配神経の軸索変性の割合に応じて減 少するため,運動麻痺の予後の指標となる4)。  被検者を背臥位として,双極型表面刺激電極(日本 光電,NM-430S)により鎖骨上窩(Erb 点)を電気刺 激(0.1 ms,0.5 Hz)し,皿電極(Dantec, 13L29)を 三角筋筋腹中央部(関電極)と肩峰(基準電極)に置 いて記録する5)(図 1)。通常,40 mA 以下の強度で最 大上刺激になる。  片側性 C5 麻痺で保存療法を受けた 39 症例の結果 では,麻痺の程度にかかわらず三角筋 M 波振幅の 患側/健側比が大きいほど予後が良い(図 2)。麻痺 が重度であるが M 波振幅の患側/健側比が大きい場 合は麻痺の主因が伝導ブロックであることを意味す る。ROC 解析により,振幅比 47%以上であれば感度 91%,特異度 94%で三角筋は MMT 5 に回復し,振幅 比 24%以上であれば感度 82%,特異度 83%で三角筋 は MMT 4 に回復すると予測できる6)(図 3)。  2.C6 神経根症  C5 6 が罹患椎間となる。EMG により C6 神経根症 における罹患筋の分布を調べた論文では7),C5 神経 根症に類似のパターンを示す症例と C7 神経根症に類 似のパターンを示す症例に分かれるが,筋線維自発放 電が最も高頻度に認められた筋は円回内筋であった。 また別の論文では8),頸部神経根症で円回内筋の筋力 低下を示した症例のうち 72%が C6 神経根症,33%が C7 神経根症であった。従って,円回内筋の筋力低下 や EMG 異常は C6 神経根症を強く示唆する所見とし て重要である。  3.C7 神経根症  C6 7 が罹患椎間となる。Radhakrishnan ら(1994)9) によれば,頸部神経根症 561 症例のうち C7 神経根症 は最も頻度が高く 46.3%に達する。上腕三頭筋,手根 屈筋,総指伸筋が選択的に筋力低下や EMG 異常を示 図 1 三角筋 M 波の記録法5)  双曲型刺激電極で鎖骨上窩を刺激し,皿電極を三角筋筋腹中央 部(関電極)と肩峰(基準電極)に置いて記録する。まず弱刺激 で三角筋に収縮が認められる刺激点を探索し,M 波の大きさを見 ながら刺激強度を上げ最大上刺激にする。 図 2 C5 神経根症患者の三角筋から記録した M 波5) 上段: 58 歳,男。患側の三角筋筋力は <3 であり,このとき患 側 M 波(左)の振幅は健側 M 波(右)の 71%であった。 31 カ月後に三角筋筋力は正常 5 に回復した。 下段: 51 歳,男。患側の三角筋筋力は 2 であり,このとき患側 M 波(左)の振幅は健側 M 波(右)の 16%であった。17 カ月後,三角筋筋力の回復は乏しく 3+ であった。

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し,上腕三頭筋反射の低下,消失を伴えば C7 神経根 症の可能性が高い。  [T 波]上肢腱反射は,安定性において劣ることか ら腰部神経根症における膝蓋腱反射 (PTR) やアキレ ス腱反射 (ATR) ほど臨床上重視されない傾向がある。 しかし,被験筋の等尺性随意収縮下 (最大張力の 10 20%) に腱反射 (伸張反射) を T 波として安定して記録 することができ,反射の定量評価が可能となる)10∼13)。 ハンマーの先端に電極を備え,それが叩打部位に貼り 付けたアルミ箔に接触した瞬間にトリガーパルスが発 生し筋電計オシロスコープの掃引が駆動されるよう にする(direct hammer-skin contact triggering system) (図 4)。対象筋として上腕二頭筋 (BB, C5),腕橈骨筋 (BR, C6),上腕三頭筋 (TB, C7),第一背側骨間筋 (FDI, C8)を選択し,belly-tendon 法に従って関電極を筋腹 中央に基準電極を腱または骨上に設置し,FDI は 50 回,その他の筋は 10 回の反応を加算平均して記録した。 健常例のデータを基に障害神経根が既知の単根障害例 を T 波のみから診断すると的中率は感度 92%,特異 度 81%,精度 83%であった13)。T 波は,EMG 異常が 顕在化する発症後 3 週よりも前に後根や前根の伝導ブ ロックや伝導遅延を評価できる利点がある(図 5)。  4.C8 神経根症  C7 T1 が罹患椎間となる。我々が経験した 16 例中 6 例(38%)に頸椎手術歴があり,おそらく手術によ る頸椎可動性減少が C7 T1 椎間に代償性負荷を及ぼ し C8 神経根症のリスクファクターになると考えられ る。MMT や EMG による診断では,総指伸筋(EDC; C7,C8 支配),指屈筋(FF; C7,C8,T1),手内在筋 (Intrinsics; C8,T1)のいずれにも筋力低下や EMG 異常を認めることが特徴である。EDC の筋力低下に より下垂指(Finger drop)を呈することがあり(図 6), 後骨間神経麻痺との鑑別を要するが C8 神経根症では 橈骨神経支配以外の筋にも異常が検出されることから 鑑別は困難ではない。また,FF の麻痺により握力低 下は必発である。Intrinsics の異常は尺骨神経支配筋 (FDI など)のみならず正中神経支配筋(APB など) にも検出される。尺骨神経支配筋のみの異常はむしろ 肘部管症候群,正中神経支配筋のみの異常は手根管症 候群の可能性を考える。  Intrinsics の異常は C5 6 や C6 7 レベルの脊髄圧迫 による前角障害でも生じるが両側性のことが多い。  5.ミオトームのバリエーション  腕神経叢は通常,C5,C6,C7,C8,T1 神経根か ら構成される。しかし, Prefi xed brachial plexus で は 1 レベル頭側にシフトして C4∼C8 神経根から構成 され T1 神経根の関与が小さくなる。この場合には三 角筋は主に C4 神経根により支配され,Intrinsics の支 配に C7 神経根が関与すると思われる。逆に Postfi xed brachial plexus では 1 レベル尾側にシフトして C6∼ T2 神経根から構成され C5 神経根の関与が小さくな る。この場合には三角筋は主に C6 神経根により支配 され Intrinsics の支配に T2 神経根が関与すると考え られる。従って,ミオトームに基づいて診断された責 図 3  片側性 C5 神経根症 39 症例における三角筋 M 波の振幅比 (患側/健側)と三角筋筋力の回復(MMT 5)に関する ROC カーブ6)  カットオフ値は振幅比 47%。最終の三角筋 MMT 4 とした場合 の ROC カーブではカットオフ値は振幅比 24%。 三頭筋から T 波を記録する方法13)  記録の関電極を上腕三頭筋の motor point 上に置き,基準電極 を肘頭に置いて記録する。上腕三頭筋の等尺性随意収縮下に上腕 三頭筋腱を 10 回叩打し加算平均して記録する。

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任神経根と画像上の神経根圧迫レベルとの間に乖離が ある場合には上記バリエーションの可能性も考慮する 必要がある14)。  腰仙部神経根症  頸椎部では神経根は分岐したのち椎間孔まで横走す るが,腰椎部では神経根は斜走するため,各椎間板レ ベルに 2 つの神経根(Exiting nerve root と Traversing nerve root)が存在する。たとえば,L4 5 椎間板レベ

ルでは L5 神経根(Traversing nerve root)とその外 側に L4 神経根(Exiting nerve root)が存在する。通常, L4 5 椎間板の膨隆やヘルニアでは L5 神経根が圧迫さ れる。まれに外側ヘルニアで L4 神経根障害が生じる。 従って,頸椎部では Exiting nerve root,腰椎部では 一般に Traversing nerve root が圧迫障害を受けるので 神経症状を画像所見と対応させるときに注意が必要で ある。  1.L4 神経根症  通常,L3 4 が罹患椎間となる。下腿内側部の感覚 障害,大腿四頭筋の筋力低下,PTR 低下が診断の基 本である。これと共通の所見を呈する神経障害として 頻度は低いが股関節手術後などに生じる大腿神経麻痺 がある15)。両者の鑑別には大腿神経支配以外の L4 神 経根支配筋(股関節内転筋[閉鎖神経],前脛骨筋 [腓 骨神経],腰仙部脊柱起立筋 [後枝] など)の EMG が 有用である。  大腿四頭筋の筋力低下は軽度であると見逃しやすい ので,歩行中や階段を降りるときに「膝折れ」がない かを問診で確かめること,また,筋力テストを手で行 図 6 右 C8 神経根症における下垂指(58 歳,男) 図 5  左 C7 神経根症(57 歳,男)において,上腕二頭筋(A),腕橈骨筋(B),上腕三頭筋(C),第一背側骨間筋 (FDI)から記録された T 波  いずれも当該筋の随意収縮下に叩打刺激を 10 回(A,B,C)または 50 回(D)加え加算平均して記録した。左側 の上腕三頭筋 T 波が消失している13)。

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うと過大評価になるため,片脚立位で膝関節を屈伸さ せることにより評価することが重要である。「膝折れ」 は痙性麻痺における Clasp-knife refl ex でも生じ得るの で診断を誤らないよう注意が必要である。  2.L5 神経根症  通常,L4 5 が罹患椎間となる。腰仙部神経根症の 中で最も頻度が高い。  下腿外側遠位部と足背部の感覚障害,足関節,足 趾背屈筋 [深腓骨神経支配] の筋力低下および外反筋 (長・短腓骨筋 [浅腓骨神経支配])の筋力低下が生じ る。これと共通の所見を呈するのは腓骨神経麻痺であ る。両者は,側臥位で股関節外転筋力(中殿筋)を左 右で比較することにより鑑別ができることが多い。よ り厳密には,EMG で腓骨神経支配以外の L5 神経根 支配筋(中殿筋 [上殿神経],後脛骨筋 [脛骨神経], 腰仙部脊柱起立筋 [後枝]など)から異常を証明する (図 7-a)。また,腓骨神経の運動神経伝導検査(短趾 伸筋または前脛骨筋記録)により腓骨小頭部における 伝導ブロック(M 波が近位部刺激で遠位部刺激より も 20%以上低振幅となる)を証明できれば腓骨神経 図 7-b 右下垂足症例から記録された浅腓骨神経の SNAP17)  上段は腓骨神経麻痺(17 歳,女),下段は L5 神経根症(46 歳, 女)。いずれの症例も軸索変性が重度で腓骨神経刺激による M 波 が記録できない。下段の L5 神経根症例では患側の SNAP が健側 と同様に記録されている。 図 7-a L5 神経根症による右下垂足症例(55 歳,女)の EMG17)  上段は右前脛骨筋から記録された線維自発電位(矢印)。下段 は右中殿筋から記録された陽性鋭波(矢印)。 図 8-a  L4 変性すべり症による右下垂足症例(55 歳,女)から記 録された腓骨神経刺激,前脛骨筋記録の M 波  M 波の振幅比(患側/健側)は 17%,前脛骨筋は MMT 1 であっ た。手術療法を行ったが前脛骨筋筋力は回復せず最終観察時も MMT 1。 図 8-b  L4 5 椎間板ヘルニアによる左下垂足症例(31 歳,女)か ら記録された腓骨神経刺激,前脛骨筋記録の M 波  M 波の振幅比(患側/健側)は 56%,前脛骨筋は MMT 0 であっ た。ヘルニアに対する手術の待期期間中に前脛骨筋は MMT 5 に 回復した。

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索変性は椎間孔よりも中枢側に進展し末梢側の軸索は 変性を免れるからである。  下垂足の予後診断は前述の C5 神経根症による三角 筋麻痺の予後診断と同様の原理に基づいて,腓骨神経 刺激,前脛骨筋記録の M 波の振幅や面積の患側/健側 比から推測でき,50%以上であれば正常筋力に回復す ることが期待できる(図 8)。  3.S1 神経根症  通常,L5 S が罹患椎間となる。足背外側部や足底 部の感覚障害,下腿三頭筋の筋力低下,ATR 低下が 診断の基本である。下腿三頭筋の筋力テストは手で行 うと過大評価になるため,片脚立位で踵を挙上させる ことにより評価することが重要である。足根管症候群 (脛骨神経麻痺)は足趾や足底の痛みや感覚障害,足 内在筋の筋力低下など S1 神経根症と共通の症状を呈 するが,下腿三頭筋の筋力低下や ATR 低下を伴わな い。EMG で下腿三頭筋や大殿筋,腰仙部脊柱起立筋 の異常を証明することにより鑑別する。  文献

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17谷 俊一,池内昌彦:腰下肢痛に関する補助診断法―電気生

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パサージュ1:腰痛クリニカルプラクティス.中山書店,東 京,pp 55 59, 2010.

参照

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