居住収縮斜面住宅地における空家・空宅地の立地特性 -北九州市枝光地区におけるケーススタディ- [ PDF
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(2) 表 4 空家の建て方別接道条件. ペースを設けることが出来ないことが多く、その結 果、空宅地が駐車場として用途転換されたと考えられ. 専用住宅 長屋. 戸建 車輌進入可 かつ駐車スペース有 車輌進入可 かつ駐車スペース無. る。一方で、未利用地は接道条件にかかわらず地区に ほぼ均一に分布しているが、菜園利用の約 7割が車輌. 車輌進入不可. 23 11.3% 68 33.5% 112 55.2% 203 100.0%. 併用住宅. 進入の出来ない場所に立地している。よって、空宅地. 合計. は家屋の除却はされるものの、接道条件の良い宅地は. 表 5 空宅地の接道条件 駐車場. 駐車場として用途転換され、残りは菜園または未利用 地として地区に点在していることが分かる。これよ. 車輌進入不可. り、接道条件が空家化の要因となるだけではなく、建. 合計. 物除却後の利用用途の決定要因となっていることが考 えられる。. 0 0.0% 1 11.1% 8 88.9% 9 100.0%. 2 18.2% 7 63.6% 2 18.2% 11 100.0%. 菜園. 339 80.0% 0 0.0% 339 62.4%. 車輌進入可. 非住宅. 合計. 共同住宅. 1 2.6% 16 41.0% 22 56.4% 39 100.0%. 4 57.1% 2 28.6% 1 14.3% 7 100.0%. 未利用. 20 4.7% 48 40.3% 68 12.5%. 30 11.2% 94 34.9% 145 53.9% 269 100.0%. 合計. 65 15.3% 71 59.7% 136 25.0%. 424 100.0% 119 100.0% 543 100.0%. 表 6 空家老朽度判定表 判定項目. 3-3. 空家の老朽度. 屋根. 外壁. 基礎/柱. 擁壁. 項目内容 点数. 住宅地区改良法による住宅不良度を基に作成した判. 0. 定表により空家の老朽度の分類を行った(表 6, 表 7)。. 点数. まず、建て方と老朽度の関係を見ると、空家のうち、老. 15. ・屋根葺き材料の一部 に著しい剥落があるも の 項目内容 ・軒の裏板、垂木等が 腐朽したもの、または 軒のたれ下がったもの. 朽度 A が 44.2%、老朽度 B まで含めると約 8割を占め ている(表 8)。これより、空家の多くが良質なストッ. 0 外壁の仕上げ材料の剥 落、腐朽または破損に より下地の口出ている もの. 屋根葺き材料の一部に 剥落、またはズレがあ. 項目内容 るもの. 点数. 15 外壁の仕上げ材料の剥 落が著しく、下地の口 出ているもの、または 壁体を貫通する穴を生 じているもの. 25. 点数. ていることが分かる。建て方別に見ると、戸建と共同. 0. 25. 25. ・柱の不同沈下のあるもの 擁壁のはらみに亀裂が ・柱の傾斜が著しいもの、 あるもの 柱の数カ所に腐朽または破 損があるもの等、大規模修 理を要するもの. 25. 屋根が著しく変形した. 50. 50. 基礎、柱の腐朽・破損、ま 擁壁が崩壊されたまま たは変形が著しく崩壊の危 修復がなされていない 険のあるもの もの. 項目内容 もの. クであるにもかかわらず、活用されずに地区に残余し. 0 石の風化が激しいもの ・柱が傾斜しているもの ・柱が腐朽、または破損し や一部に山肌が見られ ている等、小規模修理を要 るもの するもの. 50. 100. 100. 表 7 空家老朽度分類 分類 老朽度A 老朽度B 老朽度C 老朽度D. 住宅の約 8割、併用住宅と非住宅の全てが、老朽度 A・ 老朽度 B に分類され、老朽化があまり進行していない ことが分かる。一方、長屋は、そのまま居住するには. 合計ポイント 0 15-50 55-125 150-. 内容 修理の必要がなく、そのままの状態で居住が可能な家屋 小規模修理・修繕により、居住が可能となる家屋 大規模修理・修繕により、居住が可能となる家屋 修理・修繕が不可能で倒壊の危険性がある家屋. 表 8 空家の建て方別老朽度. 大規模な修理が必要となる老朽度 C・老朽度 D を含め. 老朽度A. た割合が約 1/4 となり、平均として家屋の老朽化が進. 戸建. 行していることが分かる。. 長屋. 老朽度B. 98 48.3% 6 15.4% 1 11.1% 9 81.8% 5 71.4% 119 44.2%. 老朽度C. 66 32.5% 23 59.0% 7 77.8% 2 18.2% 2 28.6% 100 37.2%. 次に、接道条件と老朽度の関係を見ると、良好な立. 共同住宅. 地条件、つまり、車輌進入ができ宅地内に駐車スペー. 併用住宅. スを有する空家のほとんどは老朽度 A・老朽度 B に分. 非住宅. 類される(表 9)。一方で、老朽度 C・老朽度 D に分類. 合計. された空家のうち、約 8割が車輌進入が出来ないもの. 表 9 空家の接道条件別老朽度 老朽度A. であることが分かる。これより、接道条件が悪い場所 に立地する空家は、除却されることなく、また所有者 や地域住民による管理を妨げ、放置される傾向が強. 車輌進入可 かつ駐車スペース無 車輌進入不可. く、一層老朽化が進行するものと考えられる。. 合計. 老朽度B. 23 76.7% 46 48.9% 50 34.5% 119 44.2%. 車輌進入可 かつ駐車スペース有. 27 13.3% 8 20.5% 1 11.1% 0 0.0% 0 0.0% 36 13.4%. 老朽度C. 6 20.0% 38 40.4% 56 38.6% 100 37.2%. 1 3.3% 8 8.5% 27 18.6% 36 13.4%. 老朽度D 12 5.9% 2 5.1% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 14 5.2%. 老朽度D 0 0.0% 2 2.1% 12 8.3% 14 5.2%. 合計 203 100.0% 39 100.0% 9 100.0% 11 100.0% 7 100.0% 269 100.0%. 合計 30 100.0% 94 100.0% 145 100.0% 269 100.0%. 4. 空家の物的特性と所有形態 所有関係と所有タイプ. 4-1. 空家の所有形態. 住宅の建て方 持地型. 戸建住宅. 53. 所有関係を把握した空家 130について所有形態の分. 併用住宅. 0. 類を行う。建物所有者と土地所有者が同一・親族及び. 長屋住宅. 12. 共同住宅. 3. その他. 1. 1筆に建物が単数・複数あるうち、 建物所有者と土地所有者が同一・ 親族を含むもの. それを含むか否かで大きく持地型と借地型に分け、そ. 68. れを住宅の建て方よって戸建と併用住宅を戸建型、長. 戸建住宅. 44. 屋と共同住宅を長屋型とし、計 4つの所有形態に分け. 併用住宅. 6. た(図1)。老朽度と所有形態の関係を見ると、戸建型、. 長屋住宅. 9. 共同住宅. 3. その他. 0. 借地型. 1筆に建物が複数あるうち、 建物所有者と土地所有者が 異なるもの. 長屋型それぞれ持地型よりも借地型の方が老朽度 C・. 62. 老朽度 D の割合が高い。また、持地型、借地型それぞ. 図 1 空家の所有形態分類. 46- 2. 所有形態 持地戸建型 53. 持地長屋型 15. 借地戸建型 50. 借地長屋型 12.
(3) れ戸建型より長屋型の方が老朽度 A の割合が低く、老 持地戸建型. 朽度 C・老朽度 D の割合が高い(図 2)。よって、持地. 26. 18. 49. 1%. 34. 0%. 5. 4. 9. 4% 7. 5%. 型の方が借地型に比べて老朽が進んでおらず、そのう 持地長屋型. ち戸建型には良質なストックが多い一方、長屋型は戸. 3. 9. 20. 0%. 60. 0%. 2. 1. 13. 3% 6. 7%. 建型に比べ老朽度が進行していることが分かる。これ 借地戸建型. より、所有関係が複雑な空家は住宅の更新や維持・管. 29. 11. 58. 0%. 22.0 %. 8. 2. 16. 0% 4. 0%. 理がされにくく、老朽化が進みやすいものと考えられ 借地長屋型. る。 4-2. 空家の建物属性. 2. 7. 2. 1. 16. 7%. 58. 3%. 16. 7%. 8. 3%. 0%. 20 %. 40%. 老朽度A. 次に、土地・建物を特定した空家 61について分析を. 老朽度B. 60 % 老朽度C. 80%. 100%. 老朽度D. 図 2 空家の所有形態別老朽度. 行う。まず、建物延床面積を車輌アクセス別に見ると、. 表 10 空家の所有形態別平均延床面積. 接道条件の悪い場所に立地している方が建物平均延床. 建て方. 所有形態. 面積が小さい(表10)。また、所有形態別に見ると、借. 持地戸建型. 29. 戸建 併用住宅. 地型の方が持地型に比べて建物平均延床面積が小さい. 持地型. 長屋 持地長屋型. ことが分かる。これより、住宅の規模は、建て方に大. 4 共同住宅. きく左右するものの、所有関係が複雑な借地型が、さ. 戸建 借地戸建型. 19 併用住宅. らに接道条件が悪い場所に立地する家屋が狭小である. 借地型 長屋. ことが考えられる。. 5. 借地長屋型. 共同住宅. 続いて、建築年次と老朽度の関係を見ると、未登記. その他 合計. が多くそれらを除けば、1974年以前に建設された空家. 車輌アクセス 車輌進入可 18 車輌進入不可 11 0 車輌進入可 1 2 車輌進入不可 1 車輌進入可 0 2 車輌進入不可 2 車輌進入可 7 16 車輌進入不可 9 車輌進入可 3 3 車輌進入不可 0 車輌進入可 1 2 車輌進入不可 1 車輌進入可 0 3 車輌進入不可 3 29. 平均面積(m2) 平均面積(m2) 84.77 81.60 76.43 64.80 44.38 23.96 150.32 150.32 76.11 68.33 62.27 121.02 121.02 31.40 44.63 57.85 126.60 126.60. 4 61. 表 11 空家の老朽度別建築年次. が、約 7 割を占め、それらの多くが老朽度 A・老朽度. 老朽度A 1995∼. B に分類される(表 11)。また、1995 年以降に建設さ. (H5∼). れて空家となっているものはない。つまり、建設から. (S60∼H4). 1985∼1994 1975∼1984 (S50∼S59). 30年以上を経た空家が多い中で、その多くは適切な維. 1965∼1974 (S40∼S49). 持・管理がなされ、老朽化があまり進行していないこ. ∼1964 (∼S39). 未登記 合計. とが分かる。これより、空家の老朽度は、接道条件や 建設年次など建物がもつ物的属性だけに依存するので. 0 0.0% 3 75.0% 5 71.4% 10 71.4% 4 44.4% 15 37 60.7%. 老朽度B 0 0.0% 0 0.0% 2 28.6% 3 21.4% 4 44.4% 9 18 29.5%. 老朽度C 0 0.0% 1 25.0% 0 0.0% 1 7.1% 1 11.1% 2 5 8.2%. 老朽度D 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 1 1 1.6%. 合計 0 100.0% 4 100.0% 7 100.0% 14 100.0% 9 100.0% 27 61 100.0%. はなく、維持・管理の有無などの人的条件によっても. 平坦地から斜面地に向かって宅地形成がなされ、密度. 左右されると考えられる。. の高い居住地をつくりあげた。高度経済成長期には山. 5. 枝光地区の形成と空家・空宅地の立地特性. 手線上に道路がつくられ、さらに斜面側も開発が行わ. 5-1. 枝光地区の形成過程. れ、現在の姿となった。 5-2. 空家・空宅地のエリア別特性. 八幡は、1901年官営八幡製鉄所が操業を開始し、企. 次に、宅地形成時期と斜面住宅地の空間構成、基盤. 業都市として発展を始めた。しばらくすると「門前町」 の形態がつくられ、製鉄所の門の位置が初期の住宅地. 条件の指標である接道条件から、枝光地区のエリア区. 形成に大きな影響を及ぼした。枝光地区は、八幡製鐵. 分を行った(図 3, 図 4)。まず、斜面域を接道良斜面域. 所の第二期拡張に伴い、海岸の埋立や耕地整理など社. と接道不良斜面域に分け、それに平坦域を加えた 3つ. 会的生活基盤が急速に整えられると同時に、正門近く. に大きく区分し、分析を行った。 空家について見ると、平坦域、接道良斜面域、接道. に枝光駅(1908 年)が、北門(1916 年)がつくられ、 さらに、本事務所が構内から北門北側に移転される. 不良斜面域の順に空家率が増加していることが分かる. (1922 年)と、北現在の白川町付近に枝光商店街がで. (表 12)。老朽度 C・D 空家の割合も空家率と同じ傾向. きあがり、八幡の中でもいち早く住宅地の開発が行わ. を示し、平坦域は非常に小さく、接道不良斜面域は高. れた。また、付近に鉱業関連企業が立地し、枝光工場. い。また、斜面域では早期開発時期に区分された空家. 街を形成すると、現在の荒手付近には社宅や地主経営. の老朽が進行していることが分かる。これは、建て方. による長屋や共同住宅が多くつくられた。それ以降も. 別に見ても同じである(表 13)。空宅地については平. 46- 3.
(4) 表 12 エリア毎空家率・空宅地率 エリア区分. 建物数. 老朽度C,D 空宅地数 空家数 *除却率. 空家数 空家率. 接道良. 1346 1490. 平坦域. 接道不良 計. 未利用. 51. 1. 144. 121. 5. 18. 1.96%. 9.66%. 84.03%. 3.47%. 12.50%. 2. 0. 18. 13. 0. 5. 1.56%. 0.00%. 12.33%. 72.22%. 0.00%. 27.78%. 1474. 53 3.60%. 1 1.89%. 162 9.90%. 134 82.72%. 5 3.09%. 23 14.20%. 267. 7. 4. 35. 15. 4. 16. 2.62%. 57.14%. 11.59%. 42.86%. 11.43%. 45.71%. 1636 302. 接道良斜 後期開発 面域 1794. 1677. 計. 1944 2096. 早期開発. 菜園. 3.79% 128. 146. 早期開発. 駐車場. 1926. 2109. 接道不良 後期開発 斜面域 267. 243. 計. 2169 2376. 68. 11. 117. 71. 18. 28. 4.05%. 16.18%. 6.52%. 60.68%. 15.38%. 23.93%. 75 3.86%. 15 20.00%. 152 7.25%. 86 22 44 56.58% 14.47% 28.95%. 109. 28. 183. 98. 36. 49. 5.66%. 25.69%. 8.68%. 53.55%. 19.67%. 26.78%. 21. 3. 24. 9. 2. 13. 8.64%. 14.29%. 8.99%. 37.50%. 8.33%. 54.17%. 130 5.99%. 31 23.85%. 207 8.71%. 107 51.69%. 38 62 18.36% 29.95%. *除却率とは、建物数に空宅地数を加えたものを母数とした空宅地数の割合のことである。. 表 13 エリア毎建て方別空家率 戸建住宅. エリア区分. 長屋住宅. 建物数 空家数 空家数率 建物数 空家数 空家数率 平坦域. 接道良平坦域 接道不良平坦域 計. 早期開発 接道良斜 後期開発 面域 計 早期開発 接道不良 後期開発 斜面域 計. 659 90. 27 1. 4.10% 1.11%. 135 15. 749. 28. 9 0. 6.67% 0.00%. 5.21%. 150. 9. 6.67%. 1483 200. 84 5.66% 21 10.50%. 215 11. 20 0. 9.30% 0.00%. 1683. 105 16.16%. 226. 20. 9.30%. 206 1359. 6 59. 2.91% 4.34%. 36 144. 0 9. 0.00% 6.25%. 1565. 65. 7.25%. 180. 9. 6.25%. 坦域の除却率が高く、その多くが駐車場となってい る。一方、斜面域では平坦域に比べ建物の除却が進ん でおらず、菜園や未利用となる傾向がある。 7. まとめ 0. 50 100. 200. 300. 400. 本研究では以下のことが明らかとなった。. 500 (m). (1)空家は建築年次が古いものの、その多くは老朽度 が進行しておらず、適切な維持・管理がなされ良質な 凡例. 早期開発平坦域. 早期開発接道良斜面域. 後期開発平坦域. 後期開発接道良斜面域. ストックであること。. 早期開発接道不良斜面域. (2)所有形態によって老朽度や建物平均延床面積が異. 後期開発接道不良斜面域. その他. なり、所有関係が複雑な空家は住宅の更新や管理がさ れにくく、老朽化が進みやすいこと。 (3)接道条件が空家化の大きな要因となっているだけ. 標高. 図 3 枝光地区のエリア区分分布 平坦域. ではなく、接道不良空家は管理を妨げる要因となり、. 斜面域. 老朽化が進行していること。さらに、除却後の利用用 途の決定要因となっていること。 (4)空家・空宅地の立地特性が、斜面地の空間構成や 宅地開発時期、接道条件を基に区分したエリア別に異. 接道良条件. 接道不良条件. 接道不良斜面域. し、平坦域では除却され空宅地となっていること。. 接道良斜面域. 1925. 今後は、空家の物的特性だけではなく、管理や経営 20. 接道不良. 2. 早期開発. 24. 早期開発. 4. 後期開発. 2. 後期開発. 16. 意向など人的属性を把握することが課題となる。. 1975. 接道良. 謝辞. 開発 時期. 後期開発. 1950. 早期開発. 平坦域. なり、接道不良斜面域に老朽が進んだ空家が多く存在. 接道良条件. 調査にあたり枝光地区の民生委員、町会長、ならびに住民の方々に 多大な御協力を得ました。記して深謝致します。. 図 4 枝光地区のエリア区分. 46- 4.
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