• 検索結果がありません。

学生時代と図書館

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学生時代と図書館"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

学生時代と図書館

学生時代と図書館 63 63

―― 贅沢な時間と場所 ――

田中 道治

6

研究者と図書館

 決して図書館の模範的な利用者ではない私が、このタイトルで想い出を語ることに幾らか躊躇はありま すが、これまで数回、図書館(図書室)を頻繁に利用した時期があったことは事実ですので、そのなかの 二つの時期の思い出を少し書かせていただきたいと思います。

 私の両親は二人とも中学の教員で、私が幼い頃、父親は当直として学校に寝泊りしたり、母親は日曜日 の日中、不時の事態に備える目的で学校へ出かけることがありました。私も小学生中学年の頃までよく母 親について学校へ行き、そこで宿題をしたり、本を読んだりしていました。その場所が多くは図書室だっ たのです。小学校、中学校が同じ場所にあったため、図書室も壁を隔てて同じ校舎内にありました。そこ には母と私だけで、近くの子どもたちが運動場へやってきて遊ぶ声が聞こえることもありましたが、冬な どは静寂そのもので、耳に入る音はストーブの上に置かれたヤカンからでる蒸気の音だけでした。図書室 の古い本の匂い、広々と、整然とした空間、そして静寂、子どもながらにその非日常的な時間と空間はあ る種の快感であったように記憶しています。

 その後、特に本好きでもなかった私にとって図書館はあまり縁のない場所でしたが、大学へ入るとその 関係も一変しました。お金はないが時間には恵まれた環境で、他にやることもあまりなく、授業の時間以 外は大学の図書館か、学生読書室で過ごす毎日でした。私が通っていた大学は、規模も大きく歴史も古い 学校だったので、図書館本館、分館以外にも、いたるところに学生用の図書室がありました。本館にはあ まり通った記憶はありませんが、学生読書室と呼ばれていた学部の図書室には毎日のように通っていまし た。図書室に入ると、真ん中に仕切りのある、横に長い机が整然と並べられていました。私の定席は入り 口から向かって右端の奥の席で、不思議にその席はいつ行っても空いていて、そこで新聞を読んだり、古 本屋で買った本を読んでいました。図書館を頻繁に利用すると気づくことですが、いつも同じ時間帯に同 じ席に座っている人が何人かはいるものです。その頃もそうでした。大学時代の最後の年を迎えるまでの 図書館との関係は、居心地のよい、自分だけの時間が持てる場所としての付き合いだったと言えます。4年 生になり、少し面白い卒論を書いてみようと思い立ち、図書館との真面目な付き合いがはじまりました。

学外の幾つかの図書館にも出かけ、目的を果たすだけでなく、各図書館が持つ設備や機能・サービスの違 いを目にするのも興味深いものでした。この頃から私の図書館との関わり方に変化があったように思えま す。4年生の夏休みに度々足を運んだのは最高裁判所正面にある国立国会図書館です。卒論を書くために 英国、米国、日本で発行されている代表的な英字新聞の、ある時期に書かれた記事が必要になり、その時 期の記事すべてがマイクロフィルムに収められた国会図書館へ通う日が続いたのです。マイクロフィルム 閲覧用の機械で求めるものを確認し、コピーサービスの申し込みをして帰るという単調な作業の繰り返し でしたが、厳かとも形容できる雰囲気の中で適当に緊張感もあり当時の自分には新鮮な感覚でした。

 今は、コンピューター検索で必要な本を探し、借りに行くだけの場所となってしまいましたが、私にと っての理想的な図書館は、英知(情報)の宝庫としての存在はもちろんですが、長い時間を過ごしたくな るような場所、煩雑な日常とは異なる贅沢な時間、空間を提供してくれるところです。大学生時代に無目 的に通っていた図書室は、豪華ではありませんでしたが、一番居心地のよい場所であったことは間違いあ りません。

たなか みちはる(准教授・日本語教育・日本語学)

、、、

参照

関連したドキュメント

キャンパスの軸線とな るよう設計した。時計台 は永きにわたり図書館 として使 用され、学 生 の勉学の場となってい たが、9 7 年の新 大

巣造りから雛が生まれるころの大事な時 期は、深い雪に被われて人が入っていけ

としても極少数である︒そしてこのような区分は困難で相対的かつ不明確な区分となりがちである︒したがってその

 大学図書館では、教育・研究・学習をサポートする図書・資料の提供に加えて、この数年にわ

真竹は約 120 年ごとに一斉に花を咲かせ、枯れてしまう そうです。昭和 40 年代にこの開花があり、必要な量の竹

 講義後の時点において、性感染症に対する知識をもっと早く習得しておきたかったと思うか、その場

大村 その場合に、なぜ成り立たなくなったのか ということ、つまりあの図式でいうと基本的には S1 という 場

北区らしさという文言は、私も少し気になったところで、特に住民の方にとっての北