第3章 構造解析:システムの特性を知る
■本章では,線形システムの可制御性,可観測性や極,零点などの構造的 性質について説明する.
■これらは状態空間表現をベースとする現代制御理論を理解するのに欠 かせない基礎的なものである.
■ n 次元, m 入力, p 出力の状態方程式
· x ˙ y
¸
=
· A B C D
¸ · x u
¸
(38)
あるいは等価的に次数が n である p × m の伝達行列
G(s) = C (sI − A) −1 B + D
で与えられる有限次元線形系について考察する.
47
第3章の内容
1. 時間応答の計算
• 行列指数関数
• 積分する方法
• ラプラス変換による方法
2. 可制御性:状態を意のままに操る
3. 可観測性:測定信号から状態を再現する
4. 極と零点
5. 時間応答収束の速さと極
6. 時間応答の質と零点
48
1 時間応答の計算
■スカラ微分方程式の例:
dx
dt = ax
変数分離法で解くと
dx
x = adt ⇒
Z t
0
dx x =
Z t
0
adt
⇒ ln x(t) − ln x(0) = at ⇒ ln x(t)
x(0) = at
⇒ x(t)
x(0) = e at ⇒ x(t) = e at x(0)
■解は指数関数となっている!
49
2 指数関数行列
■ベクトルの状態方程式の解も指数関数に関係するはず!
■ e at のテーラ展開:
e at = 1 + at + 1
2! (at) 2 + · · · + 1
k ! (at) n + · · · (39)
■行列への拡張:
e At = I + At + 1
2! (At) 2 + · · · + 1
n! (At) n + · · · (40)
■行列指数関数の性質:
(1) e A·0 = I
(2) e A(t+s) = e At e As (3) ¡
e At ¢ −1
= e −At (I = e A(t−t) = e At e −At より ) (4) de dt
At= Ae At = e At A
50
3 指数関数行列の求め方
■ e At の定義式の両辺を Laplace 変換すると
L[e At ] = L[I + At + 1
2! (At) 2 + · · · + 1
n! (At) n + · · ·]
= 1
s I + 1
s 2 A + 1
s 3 A 2 + · · · (41)
■恒等式
(sI − A)( 1
s I + 1
s 2 A + 1
s 3 A 2 + · · ·) = I (42)
を用いると, L £
e At ¤
= (sI − A) −1 と書ける.
■よって,行列指数関数は次式に等しい
e At = L −1 £
(sI − A) −1 ¤
(43)
■すなわち,行列指数関数は逆 Laplace 変換で求めることができる.
51
例
行列
A =
· 0 1
−ω 2 0
¸
の指数関数を求めよ。
【解答】まず
(sI − A) −1 =
· s −1 ω 2 s
¸ −1
=
"
s s
2+ω
21 s
2+ω
2− s
2ω +ω
2 2s
2+ω s
2#
が成立する。これを逆 Laplace 変換すると
e At = L −1 £
(sI − A) −1 ¤
=
· cos ωt ω 1 sin ωt
−ω sin ωt cos ωt
¸
となる。
52
4 零入力応答 (u(t) ≡ 0)
■状態方程式
˙
x(t) = Ax(t), x(0) 6= 0 (44)
■行列指数関数の性質 (4) により,
x(t) = e At v
がこの式の一般解である。
確認 x(t) = ˙ de At
dt v = Ae At v = Ax(t)
■初期状態 x(0) のもとで v = x(0) となるので,状態方程式の解
x(t) = e At x(0) (45)
53
5 一般解 (u(t) 6= 0)
一般解は定数変化法で導出できる.つまり,入力の影響で零入力応答の 係数が x(0) から x(0) + w(t) に変化すると考え,状態方程式 (38) の解を
x(t) = e At (x(0) + w(t)) ⇒ w(0) = 0 (46)
とおく.これを状態方程式 x ˙ = Ax + Bu に代入することによって w(t)
を求める.
Ae At (x(0) + w(t)) + e At w(t) = ˙ Ae At (x(0) + w(t)) + Bu(t)
⇒ w(t) = ˙ e −At Bu(t)
⇒ w(t) =
Z t
0
e −Aτ Bu(τ )dτ
⇒ x(t) = e At x(0) + e At
Z t
0
e −Aτ Bu(τ )dτ
54
一般解 (u(t) 6= 0)
■状態方程式 (38) の一般解:
x(t) = e At x(0) +
Z t
0
e A(t−τ ) Bu(τ )dτ (47)
■特徴:初期状態による第1項と入力による第2項の和となっている.
これは線形システムの特徴であり,重ね合わせの原理と呼ばれる.
■初期状態が x(0) = 0 の場合の応答を零状態応答という ( 上式第2項 )
55
1自由度振動系の応答
■初期状態: x(0) = [1 0] T ,入力: u(t) = δ(t)( 単位インパルス ) ω = p
K/M とおくと,状態方程式の係数行列は
A =
· 0 1
−ω 2 0
¸
, B =
· 0
1 M
¸
と書ける.前記の例によると
e At = L −1 £
(sI − A) −1 ¤
=
· cos ωt ω 1 sin ωt
−ω sin ωt cos ωt
¸
56
1自由度振動系の応答
これを式 (47) に代入して計算すれば,状態の応答
x(t) = e At x(0) +
Z t
0
e A(t−τ ) Bu(τ )dτ (48)
=
· cos ωt
−ω sin ωt
¸
+ 1 M
Z t
0
· 1
ω sin ω(t − τ ) cos ω(t − τ )
¸
δ(τ )dτ
=
· cos ωt + M ω 1 sin ωt
1
M cos ωt − ω sin ωt
¸
(49)
が求まる.ただし,積分の計算にインパルス信号の性質
Z t
0
f (τ )δ(τ )dτ = f (0)
を使った.
57
6 ラプラス変換による方法
■公式 (47) を用いることなく,状態の応答をすべて Laplace 変換だけで 計算することもできる.実際,状態方程式 (38) を Laplace 変換すると,
s x(s) ˆ − x(0) = A x(s) + ˆ B u(s) ˆ ⇒ (sI − A)ˆ x(s) = x(0) + B u(s) ˆ
⇒ x(s) = (sI ˆ − A) −1 x(0) + (sI − A) −1 B u(s) ˆ (50)
が導出される.
■これを逆 Laplace 変換することで状態の解 x(t) が計算できる.
■今の例では, u(s) = ˆ L[δ(t)] = 1 より
ˆ
x(s) = (sI − A) −1 (
· 1 0
¸ +
· 0
1 M
¸
) =
"
s
s
2+ω
2+ M 1 s
2+ω 1
21
M s
s
2+ω
2− s
2ω +ω
2 2#
逆 Laplace 変換をすれば前と同じ解が求まる.
58
数値例
線形システム
˙ x =
· 0 1
−2 −2
¸
x +
· 1 1
¸
u, y = [1 2]x
の単位ステップ出力応答を求めよ.ただし, x(0) = 0 である.
【解答】まず
(sI − A) −1 =
· s −1 2 s + 2
¸ −1
=
· s + 2 1
−2 s
¸
s 2 + 2s + 2
すると伝達関数は
G(s) = c(sI − A) −1 b = [1 2]
· s + 2 1
−2 s
¸
s 2 + 2s + 2
· 1 1
¸
= 3s − 1
(s + 1) 2 + 1
59
となる.よって
ˆ
y(s) = G(s)ˆ u(s) = 3s − 1 (s + 1) 2 + 1
1 s
これを
ˆ
y(s) = a
s + bs + c (s + 1) 2 + 1
に部分分数展開する.
a = lim
s→0 s y ˆ (s) = lim
s→0
3s − 1
(s + 1) 2 + 1 = − 1 2
一方, (b, c) = (1/2, 4) は次式の係数比較よりより得られる.
3s − 1
s(s 2 + 2s + 2) = −1/2
s + bs + c
s 2 + 2s + 2 = −(s 2 + 2s + 2)/2 + s(bs + c) s(s 2 + 2s + 2)
60
従って
ˆ
y (s) = −1/2
s + (s + 1)/2
(s + 1) 2 + 1 + 7/2
(s + 1) 2 + 1
⇒ y (t) = − 1
2 + 1
2 e −t cos t + 7
2 e −t sin t
% 演習問題 3(2) の応答: hm32.m A=[0 1;-2 -2];
B=[1 1]’;
C=[1 2];
step(A,B,C,0) % ステップ応答を計算
61
7 可制御性
■システムの状態を任意に制御できる性質を可制御性という.
定義 1 任意に与えられた初期状態 x(t 0 ) = x 0 , 有限時刻 t f > t 0 及び終 端状態 x f に対し,式 (38) の解が x(t f ) = x f を満たすようにする有界な 入力 u(t) が存在すれば,式 (38) のシステムあるいは (A, B) は可制御で
あるという.そうでない場合は不可制御であるという.
x
1x
2o
x
ox
f62
8 可制御の条件
定理 1 以下の命題は等価である.
(1) (A , B ) は可制御
(2) 可制御行列 C が行フルランク
C = £
B AB · · · A n−1 B ¤
(51) (3) 行列 [A − λI B ] が任意の λ ∈ C に対して行フルランク
(4) A のすべての固有値 λ について行列 [A − λI B ] が行フルランク
■可制御性は状態方程式の係数行列 (A , B ) だけに依存する
■条件 (2) は低次のシステムに対して使いやすい.また,条件 (3) , (4)
は A 行列がブロック対角や三角などの特殊構造を持つシステムに関して 利用しやすく,理論展開でよく用いられる.
63
定理証明の準備
補題 1 任意の t > 0 について,次の等価関係が成立する.
G c (t) :=
Z t
0
e Aτ B ¡
e Aτ B ¢ T
dτ > 0 ⇔ C が行フルランク
( 証明 ) ⇐) もし G c (t) > 0 でなければ, v (t) 6= 0 があり,
0 = v T G c (t)v =
Z t
0
kv T e Aτ B k 2 dτ
を満たす.ノルムが常に非零なので,上式が成立つために
v T e Aτ B ≡ 0, τ ∈ [0, t]
でなければならない.本式を τ について (n − 1) 階まで微分すると,
v T e Aτ B = 0, v T e Aτ AB = 0, · · · , v T e Aτ A n−1 B = 0 ⇒ v T e Aτ C = 0
を得る. v T e Aτ 6= 0 なので, C の行フルランク性に矛盾する.
64
逆に, G c (t) > 0 であるとき, C が行フルランクでないと仮定すると
v T £
B AB · · · A n−1 B ¤
= 0
を満たす v 6= 0 が存在する. e At の展開式に対して Cayley-Hamilton
の定理を繰り返し適用することによって, e At はスカラ関数 f i (t)(i = 1, . . . , n) を用いて
e Aτ = f 1 (τ )I + f 2 (τ )A + · · · + f n (τ )A n−1 (52)
のように書けることが分る.すると,
v T e Aτ B = f 1 (τ )v T B + f 2 (τ )v T AB + · · · + f n (τ )v T A n−1 B = 0, ∀τ (53)
よって, v T G c (t)v = 0 となり, G c (t) > 0 に矛盾する.
65
定理証明の準備
補題 2 rank C = k < n のとき,次式を満たす正則行列 T が存在する.
A = T −1
· A 1 A 12 0 A 2
¸
T, B = T −1
· B 1 0
¸
ただし, A 1 ∈ R k×k , A 2 ∈ R (n−k)×(n−k) であり, (A 1 , B 1 ) に関する可 制御行列 C 1 = [B 1 A 1 B 1 · · · A k−1 1 B 1 ] は行フルランク k を持つ.
( 証明 ) q 1 , q 2 , . . . , q k を C の線形独立な列ベクトルとする. Cayley- Hamilton の定理より
A n = −a n I − a n−1 A − · · · − a 1 A n−1
⇒ AC = [AB, A 2 B, · · · , A n−1 B, A n B ]
= [AB, A 2 B, · · · , A n−1 B, −a n B − a n−1 AB − · · · − a 1 A n−1 B ]
⇒ Aq i = α 1i q 1 + · · · + α ki q k
66
よって
A[q 1 · · · q k ] = [q 1 · · · q k ]
α 11 · · · α k1 .. . .. . α k1 · · · α kk
:= [q 1 · · · q k ]A 1
そこで
T −1 := £
q 1 · · · q k q k+1 · · · q n ¤
が正則となるように実ベクトル q k+1 , . . . , q n を選ぶと
AT −1 = £
A(q 1 · · · q k ) A(q k+1 · · · q n ) ¤
= £
q 1 · · · q k q k+1 · · · q n ¤ ·
A 1 A 12 0 A 2
¸
= T −1
· A 1 A 12 0 A 2
¸
67
た だ し , A 12 , A 2 は 適 当 な 行 列 で あ る 。同 様 に , 行 列 B の 各 列 は
q 1 , . . . , q k の線形結合であり , B = £
q 1 · · · q k q k+1 · · · q n ¤
B = T −1
· B 1 0
¸
が成立つ.最後に,上の関係式を用いれば T AB = T AT −1 · T B = [(A 1 B 1 ) T 0] T などとなることが分り,よって
T C = [T AB, T A 2 B, · · · , T A n−1 B ]
=
· A 1 B 1 A 2 1 B 1 · · · A n−1 1 B 1
0 0 · · · 0
¸
=
· C 1 0
¸
⇒ rank C 1 = k
が成立つ.
68
定理証明 1 の証明
(2)⇔(1) :命題 (2) が成立するとき,補題 1 より G c (t f − t 0 ) > 0 である.
u(τ ) =
³
e A(t
f−τ ) B
´ T
G −1 c (t f − t 0 ) h
x f − e A(t
f−t
0) x 0 i
とすると,状態方程式の解から終端状態は
x(t f ) = e A(t
f−t
0) x(t 0 ) +
Z t
ft
0e A(t
f−τ ) Bu(τ )dτ (54)
= e A(t
f−t
0) x 0 +
Z t
ft
0e A(t
f−τ ) B
³
e A(t
f−τ ) B
´ T dτ
×G −1 c (t f − t 0 ) h
x f − e A(t
f−t
0) x 0 i
= e A(t
f−t
0) x 0 + G c (t f − t 0 )G −1 c (t f − t 0 ) h
x f − e A(t
f−t
0) x 0 i
= x f
となる.よって,可制御である.
69
逆に,命題 (2) が成立たないとき, v e
fB = 0 を満たす v 6= 0 が ある.すると,式 (54) に左から v T をかけると
v T x(t f ) = v T e A(t
f−t
0) x 0
となる. x 0 = 0 のとき, x(t f ) = v は上式を満たさない.すなわち, x(t f )
が x f = v に到達できない.よって,不可制御となる.
(2)⇒(3) :ある λ に対して命題 (3) が成立しないとき, v 6= 0 があり
v ∗ A = λv ∗ , v ∗ B = 0 ⇒ v ∗ A i = λ i v ∗
を満足する.可制御行列 C に左から v ∗ をかけ,上式を代入すると
v ∗ C = £
v ∗ B v ∗ AB · · · v ∗ A n−1 B ¤
= £
v ∗ B λv ∗ B · · · λ n−1 v ∗ B ¤
= 0
を得る.これは命題 (2) に矛盾する.
70
(3)⇒(2) :背理法を用いる. rank C = k < n と仮定すると,補題 2 より
AT −1 = T −1
· A 1 A 12 0 A 2
¸
, B = T −1
· B 1 0
¸
を満たす正則行列 T が存在する.ここで λ と w 6= 0 を A T 2 の固有値とそ の固有ベクトルとすると, w T A 2 = λw T が成立する.すると,上式から ベクトル v T = w T [0 I ]T 6= 0 に関して
v T A = λv T , v T B = 0
が成立ち,命題 (3) と矛盾する.よって, (3)⇒(2) が言える.
λ が A の固有値でないとき, A − λI は常に正則となる.よって, (3)⇔(4)
は明らかである. ♠
71
不可制御状態の本質
上述の (3)⇒(2) の証明に使った行列 T を用いて新たに状態を
T x := z =
· z 1 z 2
¸
とおくと,新たしい状態に関する状態方程式は次のようになる.
˙
z 1 = A 1 z 1 + A 12 z 2 + B 1 u
˙
z 2 = A 2 z 2
状態 z 2 には入力 u が直接的にも間接的にも ( すなわち状態 z 1 を経由し て ) 到達できない.つまり,状態 z 2 の振舞いは入力で変えられない.こ れは不可制御な状態の本質である.
72
1自由度振動系の例
1自由度振動系について,可制御性を確認しよう.
A =
· 0 1
− M K 0
¸
, B =
· 0
1 M
¸
簡単な計算で次式を得る.
C =
· 0 M 1
1
M 0
¸
, [A − λI B ] =
· −λ 1 0
− M K −λ M 1
¸
■前者は明らかに行フルランクである.
■後者については,二つの行が線形独立なので,やはり行フルランクと なっている.
■よって,どの条件からも1自由度振動系の状態空間表現が可制御であ ることが分る.このことは物理的に考えると明らかである.
73
不可制御システムの例 ( 極零点相殺 )
1 s+1 s+1
u s+2 y
y 1 = u 2
■上図は次の二つのシステムの直列結合を表している
G 1 (s) = s + 1
s + 2 , G 2 (s) = 1 s + 1
■おのおのの状態方程式
G 1 : ˙ x 1 = −2x 1 + u, y 1 = −x 1 + u G 2 : ˙ x 2 = −x 2 + u 2 , y = x 2
■ u 2 = y 1 = −x 1 + u を x ˙ 2 に代入して整理すると,システム全体
· x ˙ 1
˙ x 2
¸
=
· −2 0
−1 −1
¸ · x 1 x 2
¸ +
· 1 1
¸
u, y = x 2 (55)
74
不可制御システムの例 ( 極零点相殺 )
■可制御行列
C =
· 1 −2 1 −2
¸
のランクは 1 < n = 2 であるので,このシステムは不可制御である.
■実際,状態 x 2 と x 1 の差 z = x 2 − x 1 は微分方程式
˙
z = −z (56)
を満たしている.上式に入力やほかの状態は一切現れていないので, z を 入力で制御できない.
■まとめ :直列結合の場合,2番目のシステムの極に1番目のシステムの 零点と同じものがあると極零点相殺が起き,システム全体は不可制御に なる.
75
不可制御システムの例 ( 並列 )
u + y
+
1 s+1
1 s+1
y 1
y 2
■上図は同じ動特性を有する二つのシステムの並列結合を表している
G 1 (s) = G 2 (s) = 1 s + 1
■全体の出力は y = y 1 + y 2 で与えられ,おのおのの状態方程式
G 1 : ˙ x 1 = −x 1 + u, y 1 = x 1 , G 2 : ˙ x 2 = −x 2 + u, y 2 = x 2
■よって,システム全体の状態方程式
· x ˙ 1
˙ x 2
¸
=
· −1 0 0 −1
¸ · x 1 x 2
¸ +
· 1 1
¸
u, y = x 1 + x 2 (57)
76
不可制御システムの例 ( 並列 )
■可制御行列
C =
· 1 −1 1 −1
¸
のランクは 1 < n = 2 であり,よってこのシステムも不可制御である.
■実際,状態 x 2 と x 1 の差 z = x 2 − x 1 は
˙
z = −z (58)
を満たし,入力で制御できない.
■まとめ :並列結合する二つのシステムに共通の極を持つ場合,全体とし て不可制御になる.
⇒ まったく同一の車2台を同じようなアクセル・ブレーキ操作で操縦す るとき,速度の差を変えられない現象と一致する.
77
9 可観測性
■状態を自由に制御するにはすべての ( 初期 ) 状態に関する情報が不可欠 定理 1 の証明で構成した入力
u(τ ) =
³
e A(t
f−τ ) B
´ T
G −1 c (t f − t 0 ) h
x f − e A(t
f−t
0) x 0 i
■しかし,実際に計測される信号は状態のすべてではなく,システムの出 力だけである.また,システムの入力も既知である.すると,既知の入出 力情報から状態を算出する必要が出てくる.
定義 2 任意の有限な t 1 > t 0 に対し,区間 [t 0 , t 1 ] における入力 u(t) と 出力 y(t) から初期状態 x(t 0 ) = x 0 を一意に決定できるとき,システム
(38) ,あるいは (C, A) が可観測 (observable) であるという. そうでな い場合には,システムあるいは (C, A) が不可観測 (unobservable) であ るという.
78
10 可観測の条件
定理 2 以下の命題は等価である.
(1) (C, A) は可観測
(2) 可観測行列 O は列フルランク
O =
C CA .. .
CA n−1
(59)
(3) すべての λ ∈ C に対し,行列
» A − λI C
–
は列フルランク
(4) A のすべての固有値 λ に対し,行列
» A − λI C
–
は列フルランク
(5) (A T , C T ) は可制御
79
定理 2 の証明
まず, O が列フルランクであることと
G o (t) :=
Z t
0
¡ Ce Aτ ¢ T
Ce Aτ dτ > 0, t > 0 (60)
が等価である ( ¯ A = A T , B ¯ = C T とおけば,補題 1 から分る ) .
(1)⇔(2) :ここで,信号
w(t) := y(t) − Du(t) − C
Z t
t
0e A(t−τ ) Bu(τ )dτ (61)
をおく. y と u は既知なので,この信号は既知のものとなる.次に,出力
y (t) = C
·
e A(t−t
0) x 0 +
Z t
t
0e A(t−τ ) Bu(τ )dτ
¸
+ Du(t)
⇒ w(t) = Ce A(t−t
0) x 0
80
この式の両辺に左から ¡
Ce A(t−t
0) ¢ T
をかけて積分すると
G o (t 1 − t 0 )x 0 =
Z t
1t
0³
Ce A(t−t
0)
´ T
w(t)dt (62)
が得られる.命題 (2) が成立するとき, G o (t 1 − t 0 ) は正則となる.さら に,上式の右辺は既知であるから, x 0 が一意に求まる.
逆に,命題 (2) が成立たないとき,
Cv = 0, CAv = 0, · · · , CA n−1 v = 0
を満たす v 6= 0 が存在する.本式と Cayley-Hamilton の定理より
Ce At v = C [f 1 (t)I + f 2 (t)A + · · · + f n (t)A n−1 ]v = 0, ∀ t
81
すると,初期状態 x(t 0 ) = v に関して
y (t) = C
·
e A(t−t
0) v +
Z t
t
0e A(t−τ ) Bu(τ )dτ
¸
+ Du(t)
= C
Z t
t
0e A(t−τ ) Bu(τ )dτ + Du(t), ∀ t > t 0 (63)
となる. x(t 0 ) = v が出力 y に現れていないから, y から求めることがで きない.
(2) と (5) の等価性は定理 1(2) より明らかである.残りの部分は定理 1
を適用することで得られる.
■不可観測状態の本質は,それが出力応答に現れないことにある.
82
1自由度振動系の例
測定出力を変位 y とする.このとき,
A =
· 0 1
− M K 0
¸
, C = [1 0]
より
O =
· 1 0 0 1
¸ ,
· A − λI C
¸
=
−λ 1
− M K −λ
1 0
■前者は明らかに行フルランクである.
■後者では1列目と2列目は線形独立なのでやはり列フルランクとなる.
■よって,いずれの条件からも可観測という結論を得る.
83
不可観測システムの例 ( 極零点相殺 )
1 s+1
s+1
u s+2 y
y 1 = u 2
■上図は次の二つのシステムが直列結合したものである
G 1 : ˙ x 1 = −x 1 + u, y 1 = x 1
G 2 : ˙ x 2 = −2x 2 + u 2 , y = −x 2 + u 2
■ x = [x 1 x 2 ] T とおき, u 2 = y 1 = x 1 の結合関係を用いると,システ ム全体の状態方程式
˙ x =
· −1 0 1 −2
¸
x +
· 1 0
¸
u, y = [1 − 1]x (64)
が得られる.
84
不可観測システムの例 ( 極零点相殺 )
■可観測行列
O =
· 1 −1
−2 2
¸
のランクは 1 < n = 2 であるので,このシステムが不可観測である.
■実際,新しい状態を z 1 = x 1 , z 2 = x 1 − x 2 とするとき,状態方程式
˙
z 1 = −z 1 + u, z ˙ 2 = −2z 2 + u, y = z 2 (65) z 1 は z 2 = y と独立なので, z 1 = x 1 は出力から観測できない.
■まとめ :二つのシステムが直列に結合する場合,1番目のシステムの極 が2番目のシステムの零点と極零点相殺するとき,システム全体は不可 観測になる
85
不可観測システムの例 ( 並列 )
u + y
+
1 s+1
1 s+1
y 1
y 2
■並列システムの状態方程式 (x = [x 1 x 2 ] T )
˙ x =
· −1 0 0 −1
¸
x +
· 1 1
¸
u, y = [1 1]x (66)
■可観測行列
O =
· 1 1
−1 −1
¸
ランクは 1 < n = 2 である.よってこのシステムは不可観測である.
86
不可観測システムの例 ( 並列 )
■実際,状態 x 2 と x 1 の代わりにその和 z 1 = x 1 + x 2 と差 z 2 = x 1 − x 2
を新しい状態として用いることができる.
■新しい状態方程式
˙
z 1 = −z 1 + 2u, z ˙ 2 = −z 2 , y = z 1 (67)
■出力に状態 z 2 が現れず,しかも z 2 が z 1 の動特性にまったく関与しな いから, z 2 に関する情報は直接的にも間接的にも出力に伝わらない.こ れがシステムの状態が観測できないわけである.
■まとめ :並列結合する二つのシステムに共通の極を持つ場合,全体とし て不可観測になる.
87
11 状態変換 ( 状態空間実現の非一意性 )
■状態 x(t) を正則行列 T で新しい状態 z (t) に置き換える
z (t) = T x(t) (68)
■ z (t) に関する状態方程式
· z ˙ y
¸
=
· T AT −1 T B CT −1 D
¸ · z u
¸ :=
· A B
C D
¸ · z u
¸
(69)
■恒等式 (XY Z ) −1 = Z −1 Y −1 X −1 より
C (sI − A) −1 B + D = CT −1 (sI − T AT −1 ) −1 T B + D
= CT −1 (T (sI − A)T −1 ) −1 T B + D = C (sI − A) −1 B + D (70)
ゆえに, (A, B, C, D) も G(s) の実現となる.
■式 (68) の座標変換は状態変換と呼ばれ, T は変換行列と呼ばれる.
88
12 可制御性・可観測性の状態変換に対する不変性
ちなみに,前の例における状態の置き換えは次の状態変換と対応する.
z 1 = x 1 + x 2
z 2 = x 1 − x 2 ⇒
· z 1 z 2
¸
= T x =
· 1 1 1 −1
¸ · x 1 x 2
¸
· A B
C D
¸
=
· A B C D
¸
=
· T AT −1 T B CT −1 D
¸
(71)
関係式 (T AT −1 ) i = T AT −1 · T AT −1 · · · T AT −1 = T A i T −1 から
C = T C , O = OT −1 (72)
定理 3 システムの可制御性と可観測性は相似変換に対して不変である.
89
13 システムの極
定義 3 A の固有値を G(s) の実現 (A, B, C, D) の極 (pole) という.こ の実現が最小実現であるとき, A の固有値を伝達行列 G(s) の極という.
■伝達行列の極とその「実現の極」を区別していることに注意
■ A の固有値が実現の極と呼ばれる理由:零入力応答による
ˆ
x(s) = (sI − A) −1 x(0) = adj(sI − A)
det(sI − A) x(0) (73)
■最小実現でない場合, A の制御できない/観測できない固有値は伝達 行列に現れず,実現の極と伝達行列の極は必ずしも一致しない.
例:次のシステムでは, A 行列の固有値の一つが伝達関数に現れていない
G(s) =
1 0 1 0 1 1 1 1 0
= 2
s − 1
90
システムの極
■1入出力系の場合
G(s) = n(s)
d(s) = b m+1 s m + b m s m−1 + · · · + b 2 s + b 1
s n + a n s n−1 + · · · + a 2 s + a 1 (74)
■分母多項式 d(s) の根 p i (i = 1, . . . , n) は伝達関数 G(s) の極となる
d(p i ) = 0 ⇒ G(p i ) = ∞ (75)
例えば,伝達関数
G(s) = 5s + 3
s 2 + 2s + 5 = 5(s + 0.6) (s + 1) 2 + 4
の極は p 1 = −1 − j 2, p 2 = −1 + j 2 である.
91
14 極と応答の収束
■極はシステムの時間応答の収束性を決定づける
例えば,システム
G(s) =
a b 1
−b a 0 1 0 0
= s − a
(s − a) 2 + b 2 (76)
の極は a ± jb であり,そのインパルス応答は e at cos bt である.
92
極と応答の収束
■極の実部 a が負のとき,インパルス応答は収束するが, a が正になると 発散する.また,収束の速さは実部の大きさで決まる.
■極の虚部は応答の振動周波数であり,虚部が大きくなるにつれ,単位時 間における振動の回数が増える. (pole resp.m)
0 0.5 1 1.5 2
-3 -2 -1 0 1 2 3
a=-1 a=0
a=.5 -1
0
0 1 2 3 4
-1 -0.5
0 0.5
1
a=-1 a=0 a=.5 b=2*pai
b=4*pai
93
15 一般的な場合
■零入力応答
x(t) = e At x(0) = T −1 e Jt T x(0) (77) e Jt = diag ¡
e J
1t · · · e J
mt ¢
e J
it = e λ
it
1 t · · · (r 1
i
−1)! t r
i−1
1 . . . .. .
. . . t
1
(78)
ただし, λ i は行列 A の固有値である.
■多項式よりも指数関数の方が収束/発散速度がはるかに速いことから,
応答の収束性は極の実部によって決まることが言える.
94
( 証明 ) 正方行列は必ず Jordan 標準形に相似変換できる.
T AT −1 = J = diag (J 1 · · · J m ) , J i =
λ i 1
λ i . . .
. . . 1 λ i
(79)
一方,行列指数関数の定義により
T e At T −1 = T µ
I + At + 1
2! (At) 2 + · · ·
¶
T −1
= I + T AT −1 t + 1
2! T AT −1 · T AT −1 t 2 + · · ·
= I + T AT −1 t + 1
2! (T AT −1 t) 2 + · · ·
= e T AT
−1t = e Jt (80)
95
さらに,
(sI − J i ) −1 =
(s − λ i ) −1 (s − λ i ) −2 · · · (s − λ i ) −r
i(s − λ i ) −1 . .. .. .
. .. (s − λ i ) −2 (s − λ i ) −1
より
e J
it = L −1 £
(sI − J i ) −1 ¤
= e λ
it
1 t · · · (r t
ri−1i
−1)!
1 . .. .. . . .. t 1
(81)
96
16 システムの零点
■零点が極と同等に重要な概念であり,応答などにきわめて大きな影響 を与えている.
■1入出力系
G(s) = n(s)
d(s) = b m+1 s m + b m s m−1 + · · · + b 2 s + b 1
s n + a n s n−1 + · · · + a 2 s + a 1 (82)
■分子多項式 n(s) の根 z j (j = 1, . . . , m) は伝達関数 G(s) の零点という n(z j ) = 0 ⇒ G(z j ) = 0 (83)
例えば,伝達関数
G(s) = 5s + 3
s 2 + 2s + 5 = 5(s + 0.6) (s + 1) 2 + 4
の零点は z = −0.6 である.
97
17 零点の信号遮断性質
■物理的には,零点は信号を遮断する性質を持つ.
例えば,
G(s) =
· A B C 0
¸
=
a b 1
−b a 0 1 0 0
= s − a
(s − a) 2 + b 2 (84)
において初期状態が x(0) = [0 , − 1/b] T のとき,時刻 t = 0 から入力
u(t) = e at (ˆ u(s) = 1/(s − a)) が印加されると,出力は
ˆ
y(s) = C (sI − A) −1 x(0) + C (sI − A) −1 B u(s) ˆ
= − 1
(s − a) 2 + b 2 + 1
(s − a) 2 + b 2
= 0
となり,入力は出力から完全に遮断される.
98
零点の信号遮断性質
零点 z = a の働きの原理は次の図から理解できる.
s − a は微分器 s とゲイン −a の並列結合であり, e at の入力信号を印加 すると,両ブロックの出力の和がちょうど零となる.
s
−a e at 0
ae at
−ae at
■入力信号 e at の指数が伝達関数の零点と同じである
99
18 次数差と無限零点
G(s) = b m+1 s m + · · · + b 2 s + b 1
s n + a n s n−1 + · · · + a 2 s + a 1 , b m+1 6= 0, n ≥ m (85)
において,分母多項式と分子多項式の次数差 r = n − m ≥ 0 は伝達関数 の次数差と呼ばれる.
例えば,
G(s) = 5s + 2
s 3 + 2s 2 + 3s + 4
の次数差は r = 3 − 1 = 2 となる.このとき
s 2 G(s) = s 2 5s + 2
s 3 + 2s 2 + 3s + 4
が非零の直達項 lim s→∞ s 2 G(s) = 5 を持つ.
100
■ s が微分器であるから,これは出力を次数差回微分してはじめて入力 が直接現れることを意味する.
■状態空間
˙
x = Ax + bu, y = cx (86)
A =
0 1 0
0 0 1
−4 −3 −2
, b =
0 0 1
, c = [2 5 0]
出力の1階微分と2階微分はそれぞれ
˙
y = c x ˙ = cAx + cbu (87)
¨
y = cA x ˙ + cb u ˙ = cA 2 x + cAbu + cb u ˙ (88) cb = 0, cAb = 5 より出力 y の2階微分に入力 u がはじめて現れる.
101
■状態空間実現
˙
x = Ax + bu, y = cx (89)
を有する1入出力系においては,次数差は次式を満たす正数 r と定義す ることができる.
cb = cAb = · · · = cA r−2 b = 0, cA r−1 b 6= 0 (90)
■次数差が零でない伝達関数において s → ∞ とすると, G(s) → 0 とな る.この意味で s = ∞ を G(s) の無限遠点における零点と理解すること ができる.
■そこで,次数差 r の伝達関数が r 個の無限零点を持つと定義する.
■有限零点の数は n − r なので,無限零点と有限零点の数の合計は極の数 と一致する.前記の例では有限零点は一つ,無限零点は二つである.
102
19 零点と応答の質
■零点 z = −aζω n を持つ伝達関数
H (s) = ω n 2
³
1 + aζω 1
n
s
´
s 2 + 2ζω n s + ω n 2 , a ∈ R (91)
■ステップ応答 (a = 1, 4, ∞, −1, −4)
0 2 4 6 8 10
-1 -0.5
0 0.5
1 1.5
2
a=1
2
-4
-1
2 4
Prototype
103
零点と応答の質
■特徴:
• a > 0 の場合, a が小さいほど行き過ぎ量が大きい.
• a < 0 の場合, |a| を小さくすると初期段階で逆振れ ( 目標値とは逆 の応答 ) が生じる.
■定性的説明:変数 s が微分器を表していることに注目する
H (s) = H 0 (s) + 1
aζω n × s × H 0 (s), H 0 (s) = ω n 2
s 2 + 2ζω n s + ω n 2 (92)
基準系 H 0 (s) のステップ応答を y 0 (t) とすると, H (s) のステップ応答
y (t) = y 0 (t) + 1
aζω n y ˙ 0 (t) (93)
104
零点と応答の質
■定性的説明 ( つづき ) : y 0 (t) が初期のころ速い速度で立ち上がり,その 微分値は大きい.よって, |a| が十分に小さいとき a が正であれば大きな 行き過ぎ量をもたらし,負であれば逆振れをもたらす.
0 2 4 6 8 10
-1 -0.5
0 0.5
1 1.5
2
a=1
2
-4
-1
2 4
Prototype
■要するに, システムの応答は極だけで決まるものではなく,零点も大き く影響している. (ord2 zero.m)
105
20 システムの結合
y 2 = u 1
u G 2 G 1 y
図
1
直列結合G = G 1 G 2
G 1
G 2 u y
y 1
y 2
図
2
並列結合G = G 1 + G 2
G 1
G 2 u y
−
図