京都大学文学研究科図書館寿岳文庫蔵「古則聞書零 本」翻刻・解説
著者 山本 佐和子
雑誌名 同志社国文学
号 88
ページ 50‑66
発行年 2018‑03‑20
権利 同志社大学国文学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2019.0000000034
︿ 資 料 紹 介 ﹀ 京 都 大 学 文 学 研 究 科 図 書 館 寿 岳 文 庫 蔵 ﹁ 古 則 聞 書 零 本
﹂ 翻 刻 ・ 解 説 山
本
佐 和 子
解 説
○書 誌 元和 八︵ 一六 二二
︶年 写 存一 冊︵ 元は 二冊 か︶ 種類 禅籍 抄物
︵密 参録
︶︒ 形態 仮綴
︒ 外題 なし
︒表 紙左 端に
﹁古 派/ 喝堂
﹂乾
とあ る︒ 内題 なし
︒冒 頭︵ オ
︶﹁ 元和 八歳 正月 念三 日此 古則 初也 歳十 九歳
﹂と ある
︒ 寸法 縦二 三・ 七糎 横一 七・ 七糎
︒ 丁数 一五 丁︵ 墨付 一三
・五 丁︶
︒ 表紙 本文 共紙
︵原 装表 紙︶
︒ 奥書 なし
︒ 備考 京都 大学 文学 研究 科図 書館 所蔵
︵請 求記 号: 国文
‖寿 岳文 庫
‖7c
‖16
︶︒
﹃向 日庵 抄物 集 上巻
﹄︵ 清文 堂出 版︑ 一九 八七 年︶ に影 印所 収︒ 飯塚
︵一 九九 五︶ に︑ 第一 則︵ オ
~ オ︶ の翻 刻が ある
︒ 本文 献﹁ 古則 聞書 零本
﹂は
︑飯 塚大 展氏 が一 連の 研究 で初 めて そ の実 態を 明ら かに され た﹁ 大徳 寺派 系密 参録
﹂に 類す る①
︒飯 塚氏 に よる 同派 密参 録の 分類 で︿ 百則 密参 録﹀
︑︿ 碧巌 類則 密参 録﹀
︑︿ 百五 十則 密参 録﹀ 等に 収め られ る古 則公 案の うち の五 則︑
①趙 州栢 樹
︵︿ 百則 密参 録﹀ の第 一則
︑以 下同
︶︑
②郎 中地 獄︵ 第四 則︶
︑③ 萬法 不侶
︵第 二則
︶︑
④見 明星
︵第 二六 則︶
︑⑤ 聞撃 竹︵ 第四
〇則
︶に つ いて②
︑問 答で の発 話︵ 師家 の﹁ 拶語
﹂と 学人 の﹁ 下語
﹂・
﹁弁
﹂︶ と︑ 発話 の文 言や 他の 宗派
・寺 院と の差 異に つい ての 解説 が筆 記さ れた もの であ る︒
︿資 料紹 介﹀ 京都 大学 文学 研究 科図 書館 寿岳 文庫 蔵﹁ 古則 聞書 零本
﹂翻 刻・ 解説
五〇
「密 参禅
﹂と は︑ 中世 日本 の禅 宗に おい て︑ 林下
︵官 寺で ある 臨 済宗 五山 派に 含ま れな い︑ 臨済 宗大 徳寺 派・ 妙心 寺派
・幻 住派 や曹 洞宗
︶か ら広 まり
︑後 に五 山叢 林ま で広 く行 われ た参 禅の 方法 で︑ 入室 参禅 の問 答を 類型 化し て︑
﹁型 には まっ た︑ 印可 証明 をも らえ るよ うな 問答
﹂︵ 玉村 一九 九一
︶︑
﹁模 範解 答の パタ ーン
﹂︵ 飯塚 一九 九五
︶の 口訣 伝授 を受 ける こと が参 禅そ のも のと なっ た状 態を いう
︵鈴 木一 九六 八︑ 玉村 一九 九一 など 参照
︶︒
﹁密 参録
﹂︵ 密参 帳・ 密参 覚帳
・行 巻と も︶ や︑ 曹洞 宗で は﹁ 門参
﹂︵ 本参
・秘 参・ 伝参
・秘 書︶ と呼 ばれ る文 献は
︑口 訣伝 授さ れる 内容 を記 した 文献 であ る︒ 禅宗 の教 義に 関わ る内 容の 抄物
︵禅 籍抄 物︑ 禅門 抄物 等と 呼ば れ る︶ の中 では
︑最 も多 くの 伝本 が現 存す ると いわ れて いる
︵石 川二
〇〇 一︶
︒ 近世 以降
︑密 参禅 のよ うな 参禅 の在 り方 は強 く否 定さ れた ため
︑ 禅宗 史研 究で は殆 ど顧 みら れな かっ たが
︑金 田︵ 一九 七六
︶に よる 密参 録の 研究 など 日本 語学 の抄 物研 究が 契機 とな って
︑近 年︑ 禅籍 抄物 を資 料と した 中世 から 近世 初頭 の禅 宗史 研究 が盛 んに 行わ れる よう にな って いる
︵石 川二
〇〇 一︑ 前掲 飯塚 論文
︑安 藤二
〇一 一な ど︶
︒本 文献
﹁古 則聞 書零 本﹂ も︑ 影印 刊行 時に は︑
﹁碧 巌録 抄﹂
﹁無 門関 抄﹂ のよ うな
﹁語 録抄
﹂︵ 禅宗 典籍 類の 注釈 書︶ の草 稿と さ れて いた が③
︑飯 塚︵ 一九 九五
︶に よっ て密 参録 の一 例で ある こと が
明ら かに され た︒ 今回
︑す でに 影印 が公 刊さ れて おり
︑一 部翻 刻も なさ れて いる 本 文献 につ いて 改め て資 料紹 介を 思い 立っ たの は︑ 影印 で判 読で きな い修 正前 の文 字が
︑実 物で は凡 そ判 読可 能な こと に加 えて④
︑次 の三 点︑ 密参 録を 原典 とす る講 義録 であ るこ と︑ 旧仏 教系 論義 資料 と共 通点 をも つこ と︑ 禅問 答と 他の 文芸 との 関連 性を 示す 内容 が認 めら れる こと
︑を 見出 した から であ る︒ 以下
︑翻 刻し て気 づい たこ とを 少し く述 べる ( ︒ 一) 密参 録を 原典 とす る講 義録 密参 録は
︑口 訣伝 授さ れる 問答 での 発話 内容 を︑ 演劇 の台 本の よ うに 記し たも のが 一般 的で ある
︒し かし
︑本 文献
﹁古 則聞 書零 本﹂ は︑ その 密参 録を 原典
︵注 釈対 象の 典籍
︶と して
︑そ れを 説明 した 言葉 まで を口 訣の よう に筆 録し てい る点 で特 異で ある
︒ この こと が端 的に 分か るの が︑ 問答 の発 話を 直接 引用 で示 すこ と や︑ 当該 箇所 に用 いら れる
﹁下 語﹂ が二 つあ ると いっ た指 示で ある
︒ 挙例 では
︑問 答の 発話 を﹁
﹂で 括っ て示 して いる
︒
⑴a
.又 和尚 ヨリ
﹁意 ハ無 ガ寒 暑悲 歓ハ アル ゾ︒ 弁シ テ来 レ﹂ ト 云ゾ
︒
︵ オ⑥ ) b.
﹁過 去ト 云者 ハ無 者テ 候﹂ トヘ ンス ルソ
︒
︵ オ⑫ )
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﹂翻 刻・ 解説
五一
c. サテ 師曰
﹁ア ギヨ
︵下 語︶ シ来 レ﹂ 云︒ 答テ 曰﹁ 柳緑 花 紅﹂ ト云 句ツ クソ
︒
︵ ウ④ )
⑵a
.下 語﹁ 充塞 乾坤
﹂又
︑﹁ 亘古 亘今
﹂ト モ二 句ツ クソ ( ︒ 12ウ
④) b. 真エ キ再 返ア レト モ︑ 事ナ カイ 事︑ マヅ 是レ テス ムソ
︒
︵13 オ④ ) 一般 的な 密参 録で は︑ 誰の 言葉 か分 かれ ば事 足り るの で︑ 各発 話の 冒頭 に﹁ 師曰
/師 拶曰
﹂や
﹁下 語ニ
﹂﹁ 弁ニ
﹂等 はつ くが
︑終 わり に﹁
~ト 云ゾ
﹂等 はつ かな い︒ また
︑⑵ bは
︑講 師が
﹁請 益︵ しん えき
︒実 際に 行わ れた 参禅 の記 録︶ がも うい っぺ んあ るが
︑長 々し いし
︑さ しあ たり これ でよ かろ う﹂ と述 べた もの であ る︒ 密参 録に は︑ 模範 的な 問答 のほ かに
︑見 習う べき 先例 であ る﹁ 請益
﹂を 添え たも のが 多く
︑こ のよ うな 例か ら︑ 本文 献が 何ら かの 密参 録を 原典 にし てい るこ とが 推測 でき る︒ 密参 録の 中に は︑ 先行 の密 参録 を集 成︑ 整理 した もの も存 する
︒ ただ
︑こ の﹁ 古則 聞書 零本
﹂は それ らと は異 なっ て︑ 口頭 での 講義 を経 てい るこ とを 窺わ せる 事象 が複 数認 めら れる
︒夙 に︑ 影印 の解 説・ 解題 でも
﹁講 義の 聞書 きそ のも の﹂ とい う指 摘が ある
︒ ひと つは
︑書 写者 が︑ 当該 の語 を知 らず に︑ 語形
︵音
︶に 自分 の 知っ てい る漢 字や 字音 語か ら適 当な もの を当 ては めた と思 われ る例
が多 数見 られ るこ とで ある
︒今 回︑ 翻刻
・語 釈が 一番 難し かっ たの がこ れら の例 であ った
︒
⑶a
.過 去身 不可 得︑ 現在 身不 可得
︑未 来身 不可
︵ 得 ウ
⑤: 心) b. 須龍 言経
( オ⑨
:首 楞厳 経) c. 西明 寺殿
( ウ⑤
:最 明寺 殿) d. 色想
︵ ウ⑫
:色 相︑ 10ウ 等)
/色 草
( ウ③
:同 ) e. 風花 節月
( オ⑧
:風 花雪 月) また
︑本 文献 に多 い重 ね書 きに よる 修正 は︑ 殆ど が字 音語 や書 き 下し 文の カナ 書き を後 で漢 字や 漢文 に直 した
⑷や
︑宛 て字
・誤 字を 後で 正し い漢 字に 直し た⑸ のよ うな 例で ある
︒︵ 現︶ は修 正後 の現 状︑
︵元
︶は 修正 前で ある
︒
⑷a
.︵ 現︶ 執心 執着
/( 元︶ シウ 心シ ウシ ヤク
( オ② ) b.
︵現
︶芥 子斗 モ不 可㆑
起/ (元
︶ケ シホ トモ スヘ カラ
︵ ス オ
⑧) c.
︵現
︶本 分/ (元
︶ホ ン分
( オ④ )
⑸ (現
︶有 相法 身︑ 無相 法身
/( 元︶ 有想 法身
︑無 想法 身
︵11 オ⑥ ) 禅籍 抄物 は刊 本で も宛 て字 を多 用す るこ とで 知ら れる が︑
⑶に 加え て⑷
・⑸ の修 正例 があ るこ とを 考え ると
︑⑶ につ いて も書 写者 が語
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﹂翻 刻・ 解説
五二
形か ら正 しい 表記 に思 い至 らな かっ た故 の表 記の よう に思 われ る︒ この ほか
︑他 の宗 派・ 寺院 との 比較 や︑ それ らへ の批 判が 見ら れ る︒
⑹a
.マ タ本 分上 ニサ タマ ラヌ 処テ
︑口 テハ 截断
■面 ニス レト モ︑ 心カ セヌ ニヨ ツ( テ)
︑日 マチ 日マ チヲ 洞家 ニハ スル
︒五 山ナ トハ
︑ハ ヤイ ツカ ウノ 無眼 僧シ ヤ︒
︵10 ウ) b. ソウ 道︵ 注: 曹洞
︶ノ ヤウ ニ見 レハ
︑イ キイ ル内 ニ︑ 出離 シヤ ウ用 ハナ イソ
︒
︵ オ③ ) 口訣 を記 す密 参録 で︑ 他の 宗派
・寺 院に 対す る悪 口は 不要 のは ずで
︑ 聞き 手を 飽き させ ない 工夫 でも あろ う︒
﹁古 則聞 書零 本﹂ は︑ 問答 の内 容で はな く︑ 比較 や批 判の 対象 とな って いる 宗派
・寺 院を 除く だけ で︑ 消去 法で 大徳 寺派 のも のと 分か るユ ニー クな 内容 を持 つ︒ 本文 献の 右の よう な状 態は
︑﹁ 初学 者の あり 様を 生き 生き と伝 え てい る﹂
︵飯 塚一 九九 五︶ と言 われ るよ うに
︑講 義の 要点 と余 談を 区別 する 余裕 もな く︑ 講師 の発 言を 一言 一句 聞き 落と さな いよ う記 録す る︑ 書写 者の 様子 を伝 えて いる よう に思 う︒ かな りの 乱筆 拙筆 で︑ 右に 見た よう な文 字使 用の 状態 だが
︑脱 字は 不思 議と 少な い︒ 教義 の基 本用 語の 表記 も覚 束な いの は︑ 現代 の感 覚で はや や心 配 にも なる
︒し かし
︑書 写者 の十 九歳 の正 月と いう 年齢 は︑ 喝食 とし て年 長者 に愛 され
︑遊 興に ふけ るこ とが でき た時 期を 過ぎ つつ ある
年頃 であ る︵ 今泉 二〇 一〇 など
︑参 照︶
︒見 方を 変え れば
︑当 時の 参禅 にお いて
︑例 えば 漢文 の素 読と 同じ よう に︑ 音声 の習 得が 内容 の理 解よ り優 先さ れて いた こと を示 して いる よう に思 われ る︒ (三 ) との 関わ りで 注意 した い点 であ る︒ (二 ) 密参 録と 論義 資料 との 共通 点 密参 録の 中に
︑本 文献
﹁古 則聞 書零 本﹂ のよ うに
︑初 学者
・若 年 者が 宗派 の教 義を 問答 体︵ 師家 から の問 いと 自ら の答 えの 形式
︶で 習得 する ため に個 人的 に作 成し たも のが ある こと から 想起 され るの が︑ 天台 宗・ 真言 宗・ 華厳 宗等 に伝 存す る﹁ 論義 資料
﹂で ある⑤
︒
﹁論 義﹂ はこ れら の宗 派に おけ る教 義問 答を いう
︒論 義資 料に も︑ 初学 者が 問答 を習 得す るた めに 個人 的に 作成 した もの が含 まれ てい る⑥
︒こ の種 の個 人の 学習 のた めの ノー トは
︑通 常の 文献 より 言語 規 範に よる 制約 が少 ない こと が予 想さ れ︑ 作成 時期 が特 定で きる 作成 者自 筆の 文献 であ るこ とも 言語 資料 とし ては 貴重 であ る︒ 加え て︑ 本来
︑教 義に 関す る専 門家 同士 の討 議だ った もの が︑ 在 家の 信者 に参 観さ れる もの とな る点 でも
︑論 義と 中世 の禅 問答 は共 通す る︒ 論義 は法 華八 講な どの 法会 の中 で儀 礼の 一環 とし て行 われ るこ とが ある
︒禅 問答 も中 世に は追 善供 養と して 行わ れる 場合 があ った こと が知 られ てい る︒ 禅問 答が 人に 見せ るも のに なっ たこ とは
︑
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﹂翻 刻・ 解説
五三
問答 の内 容や 作法 に何 らか の影 響を 及ぼ した と考 えら れ︑ これ も︑ 次の (三 )と の関 わり で注 目さ れる
︒ (三 )﹁ 趙州 栢樹
﹂と 狂言
﹁鹿 狩﹂ との 連関 一則 目﹁ 趙州 栢樹
﹂の 公案 の問 答の 中に は︑ 二首 の和 歌︵ 道歌
︶ が引 用さ れて いる
︒
⑺a
.桜 木ヲ クダ キテ 見レ ハ色
︵花
/ナ ニモ
︶ナ シ花 ヲハ 春ノ 空
︵園
/風
︶ソ モツ ラン b. 年々 の吉 野々 山ノ 桜花 木ヲ ワリ テ見 ヨ花 のア ルカ ワ
︵a
︑b とも ウ
︑括 弧内 は異 文の 注記 ) 歌の 直後 には
︑﹁ 又妙 心寺 ナト テハ
︑古 則〳 〵ニ 歌カ ツク
︒然 ガ当 寺テ ハヲ ホカ 付古 則無 ソ︒ マツ 此古 則ニ ツク ソ︵ 妙心 寺な どで は古 則ご とに 歌が 付く
︒し かし
︑こ の大 徳寺 では 謳歌 が付 く古 則は ない
︒ ただ この 古則 だけ は付 くの だ︶
﹂と いう 説明 があ る︒ 前掲 の飯 塚氏 の研 究で 数多 く翻 刻・ 紹介 され る大 徳寺 派系 密参 録 の中 で︑ 右二 首の うち 一首 目は
︑﹁ 最明 寺殿
﹂北 条時 頼の 作と して
︑
﹁趙 州栢 樹﹂ の問 答の 中で しば しば 引用 され てい る︒ しか し︑ 二首 目の 吉野 山の 桜を 詠ん だ歌 を引 用す る密 参録 は少 なく
︑類 歌が 確認 でき たの は︑
﹁古 則聞 書零 本﹂ と同 じく 初学 者が
︿百 則密 参録
﹀中 の数 則を 習得 した 記録 とさ れる
︑次 の﹁ 龍岳 和尚 密参 録﹂
︵松 ケ岡
文庫 蔵ク ハ
︱
八六 九
︱
二︶ のみ であ った
︒
⑻ 春ゴ トニ ニヲ フ吉 野ノ 山桜 木ヲ 破リ ミヨ 花ノ アル カハ
︵龍 岳和 尚密 参録
:飯 塚一 九九 四b
︶ この 吉野 山の 桜の 歌が
︑禅 僧が 登場 人物 の狂 言﹁ 鹿狩
﹂︵ 現行 曲
﹁左 近三 郎﹂
︶の 中で 重要 な要 素と して 用い られ てい る︒ 次は
︑禅 僧 と狩 人が 殺生 の是 非を 巡っ て問 答し
︑最 後に 狩人 が僧 に弓 を向 ける 場面 であ る︒
⑼僧
﹁射 る事 はな るま ひぞ
︒胸 には 三寸 の弥 陀が 有ぞ
﹂ 左近 三郎
﹁弥 陀が あら ば︑ 割つ てみ よ﹂ 僧﹁ 待て しば し﹁ 年ご とに 咲く や吉 野の 山桜 木を 割り てみ よ 花の ある かは
﹂と 聞く 時は
︑割 つた りと 花は ある まひ ぞ﹂ (狂 言記
・巻 一﹁ 鹿狩
﹂) この あと
︑狩 人の 左近 三郎 が﹁ 目の 前に 有︑ これ は花
︵鼻
︶で はな いか
﹂と 切り 返し て︑ オチ とな る︒ 狂言
﹁鹿 狩﹂ の形 成に つい ては
︑橋 本︵ 一九 八五
︶に 詳細 な考 察 があ り︑ 僧と 左近 三郎 の問 答で 用い られ る引 用句 の殆 どが 仏教
︑中 でも 禅宗 に出 典を もつ もの であ り︑ 僧侶 が作 成に 関与 した 可能 性が 指摘 され てい る︒ 右に 見た よう に︑ 劇中 で鍵 とな る道 歌が
︑本 文献 を含 む大 徳寺 派系 の︿ 百則 密参 録﹀ 第一 則の 問答 で用 いら れた 歌で ある こと は︑ この 指摘 を裏 付け るも のと なる
︒さ らに 言え ば︑ 狂言
︿資 料紹 介﹀ 京都 大学 文学 研究 科図 書館 寿岳 文庫 蔵﹁ 古則 聞書 零本
﹂翻 刻・ 解説
五四
﹁鹿 狩﹂ の禅 僧と 狩人 の緊 迫し つつ も中 身の ない 問答 は︑ 密参 禅そ のも のを 風刺 して いる とい う見 方も でき るよ うに 思わ れる
︒ この ほか
︑芸 能と の関 連性 を示 すも のと して
︑三 則目
﹁萬 法不 侶﹂ の問 答中 の︑
﹁シ カタ
︵仕 方︶
﹂︑ すな わち
︑﹁ それ ぞれ の場 に対 応し た身 ぶり 手ぶ りな ど特 定の 所作
﹂︵
﹃時 代別 国語 大辞 典 室町 時 代編
﹄﹁ しか た﹂
︶を 伴っ て語 る︑ とい う指 示が 注目 され る︒
⑽洞 家ナ トニ ハ︑ イロ 〳〵 シカ タ有 テ歌 ナト ヲヽ ケレ トモ
︑当 家 ニハ
︑是 ハカ リニ シカ タア ルソ
︒手 ヲニ キツ テ︑ 是ヲ 弁云 也︒
︵ ウ︑ 行間 の書 入れ ) この あと
︑師 家と 学人 が共 に拳 を振 り回 す身 ぶり を伴 いな がら
︑短 い応 酬を 繰り 返す
︒⑽ の﹁ 洞家 等に は色 々﹃ 仕方
﹄あ って
⁝﹂ は︑ 当時
︑能
・狂 言の
﹁仕 方話
﹂の よう な禅 問答 が存 した こと を窺 わせ る︒
今後 の課 題 現在
︑日 本語 史の 資料
︵史 料︶ とし て広 く用 いら れて いる
﹁抄 物﹂ は︑ 五山 叢林 の禅 僧や 博士 家の 公家 が経 書︑ 史書 や文 学書 の注 釈書 とし て編 んだ もの であ る︒ 林下 の禅 僧が 作成 する のは 主に 禅籍 抄物 で︑ 日本 語史 資料 とし ては
︑曹 洞宗 の僧 侶が 作っ たも のの 一部 が東 国語 資料 とし て利 用さ れる に留 まっ てい る︒
本文 献﹁ 古則 聞書 零本
﹂を 含む 臨済 宗大 徳寺 派・ 妙心 寺派 の禅 籍 抄物 は︑ 五山
・博 士家 系抄 物の 文体 が固 定化 した 後の 安土 桃山 期~ 近世 初期 の中 央語 の一 端を 観察 でき る資 料と なる 可能 性が ある
︒ま た︑ 密参 録に は︑ 初学 者が 個人 用に 筆録 した もの が伝 存す る点 で︑ 内容 面・ 言語 面と もに
︑他 者に 伝え るた めの 文献 では 整理 され てし まう もの が書 き留 めら れて いる 可能 性も 高い
︒ 今回 敢え てや や無 謀な 資料 紹介 と翻 刻を 試み たの は︑ この 種の 文 献の 発掘
・保 存と 研究 の進 展の 一助 とな れば と考 えた から であ る︒ 稿者 は︑ 本文 献の 書写 者以 上に 禅宗 の教 義に 疎い ため
︑翻 刻・ 解説 とも 誤り も多 いと 思わ れる
︒大 方の ご批 正を お願 いし たい
︒ 注
① 飯塚 大展 氏﹁ 大徳 寺派 系密 参録 につ いて
﹂︵ 一)
~( 九︶
︒参 考文 献に は︑ 本文 中に 言及 した もの のみ を掲 げる
︒
② 公案 の名 称は
︑︿ 百則 密参 録﹀ に拠 る︒
③ 石川
︵二
〇〇 一︶ は︑ 曹洞 宗の 禅籍 抄物
﹁洞 門抄 物﹂ を内 容か ら︑
﹁語 録抄
﹂﹁ 代語
﹂﹁ 代語 抄・ 再吟
﹂﹁ 門参
︵密 参録
︶﹂
﹁切 紙﹂ に分 類し て いる
︒
④ 稿者 は平 成二 十九 年度 訓点 語学 会抄 物講 習会
︵八 月二 十三 日於 京都 大 学文 学部
︶に おけ る本 文献 の展 観の 準備 のた め︑ 実物 を調 査す る機 会を 得た
︒
⑤ 論義 資料 に関 する 先行 研究 や言 語的 特性 は︑ 石井
︵一 九九
〇・ 一九 九 一︶ に詳 しい
︒
︿資 料紹 介﹀ 京都 大学 文学 研究 科図 書館 寿岳 文庫 蔵﹁ 古則 聞書 零本
﹂翻 刻・ 解説
五五
⑥ 稿者 は︑ 論義 資料 につ いて は︑ 東大 寺図 書館 所蔵 の華 厳宗 のも のを 写 真で 確認 した に過 ぎな いが
︑書 物の 形状
︵大 きさ
︑枡 形に 近い こと
︑簡 易な 装丁 であ るこ と等
︶も
︑本 文献 と似 通っ てい るよ うに 思わ れる
︒ 使用 した テキ スト
○狂 言記
⁝﹃ 新日 本古 典文 学大 系﹄
︵岩 波書 店)
○日 葡⁝ 土井 忠生
・森 田 武・ 長南 実﹃ 邦訳 日葡 辞書
﹄︵ 岩波 書店 )
○史 記桃 源抄
⁝﹃ 抄物 資料 集成 第一 巻﹄
︵清 文堂
︶ 参考 文献 安藤 嘉則
︵二
〇一 一︶
﹃中 世禅 宗に おけ る公 案禅 の研 究﹄ 国書 刊行 会 石井 行雄
︵一 九九
〇・ 一九 九一
︶﹁ 東大 寺図 書館 蔵﹃ 華厳 経論 義﹄ の用 語
︵Ⅰ
︶﹂
﹁同
︵Ⅱ
︶﹂
﹃暁 大論 文集
﹄41
・42 今泉 淑夫
︵二
〇一
〇︶
﹃禅 僧た ちの 室町 時代 中
︱
世禅 林も のが たり
﹄吉 川弘 文館 飯塚 大展
︵一 九九 四a
︶﹁ 大徳 寺派 系密 参録 につ いて
⑴
︱
﹃雲 門録 百則
﹄ を中 心に して
﹂
︱
﹃宗 学研 究﹄ 36
︵
︱
一九 九四 b︶
﹁大 徳寺 派系 密参 録に つい て︵ 三︶
﹃
︱
碧巌 録龍 嶽和 尚秘 弁﹄ を中 心に
﹂
︱
﹃曹 洞宗 研究 員研 究紀 要﹄ 25
︵
︱
一九 九五
︶﹁ 大徳 寺派 系密 参録 につ いて
︵五
︶
︱
﹃百 則密 参録
﹄ を中 心に して
﹂
︱
﹃駒 澤大 学大 学院 仏教 学研 究会 年報
﹄28
︵
︱
二〇
〇一
︶﹁ 大徳 寺派 系密 参録 につ いて
︵六
︶
︱
駒澤 大学 図書 館蔵
﹃百 則﹄
・﹃ 五十 則﹄ の翻 刻
︱
﹂﹃ 駒澤 大学 仏教 学部 研究 紀要
﹄
︱
59︵二
〇〇 二︶
﹁﹁ 大徳 寺派 系密 参録 につ いて
︵七
︶
︱
﹃百 五十 則﹄ の公 案集 をめ ぐっ て
︱
﹂﹃ 駒澤 大学 仏教 学部 研究 紀要
﹄60
石川 力山
︵二
〇〇 一︶
﹃禅 宗相 伝資 料の 研究
︵上
︶・
︵下
︶﹄ 法蔵 館 金田 弘︵ 一九 七六
︶﹃ 洞門 抄物 と国 語研 究﹄ 桜楓 社 鈴木 大拙
︵一 九六 八︶
﹃鈴 木大 拙全 集・ 第一 巻 禅思 想史 研究
﹄岩 波書 店 玉村 竹二
︵一 九九 一︶
﹃臨 済宗 史﹄ 春秋 社 橋本 朝生
︵一 九八 五︶
﹁﹁ 鹿狩
﹂の 形成 と展 開﹂
﹃能
研究 と評 論﹄ 13
﹇付 記﹈ 貴重 な文 献の 調査
︑翻 刻掲 載を ご許 可下 さい まし た京 都大 学文 学 研究 科図 書館 に︑ 記し て感 謝申 しあ げま す︒ また
︑解 説は
︑第 十四 回論 義資 料研 究会
︵平 成二 九年 九月 一〇 日 於同 志社 大学
︶で の発 表を 元に 大幅 に加 筆修 正し たも ので す︒ 席上
︑ 参加 者の 皆様 から 貴重 なご 意見 を賜 りま した
︒翻 刻に 関し ては
︑京 都女 子大 学文 学部 講師
・山 中延 之氏 にご 教示 頂き まし た︒ 解説
・翻 刻の 誤脱 等は 全て 稿者 の責 任で す︒ 本研 究は
︑J SP S科 研費 JP 17 K1 34 64 の助 成を 受け たも ので す︒
︿資 料紹 介﹀ 京都 大学 文学 研究 科図 書館 寿岳 文庫 蔵﹁ 古則 聞書 零本
﹂翻 刻・ 解説
五六
翻 刻
○凡 改 例 行︑ 仮名 遣い
︑濁 点の 使用
︑平 仮名 の混 用は 底本 に従 った
︒ 傍記 は底 本に でき るだ け近 い形 で示 した
︒ 脱文 を行 間へ の書 入れ で補 った 箇所 は︑ 本文 中の 適当 な個 所に
﹁※ 補入
:~
﹂と して 挿入 した
︒ 漢字 は通 行の 字体 を用 い︑ 新旧 の字 体が 大き く異 なる 漢字
︵﹁ 佛・ 仏﹂
﹁声
・聲
﹂な ど︶ は底 本に 近い 字体 を採 用し た︒ 漢文 部分 の訓 点は
︑底 本の もの を示 した
︒ 底本 にあ る補 助符 号は
︑類 似し た﹁
△﹂
﹁○
﹂﹁
﹁﹂ 等で 示し た︒ 翻刻 に際 し︑ 読解 の補 助と なる よう 句読 点を 適宜 加え た︒ 本文 献に は︑ 公案 が五 則収 めら れる
︒各 則の 冒頭 に︽
◯順 名称
︾を 付し た︒
●修 正・ 抹消 等の 扱い につ いて
:本 文献 は︑ 本文 同筆 の重 ね書 きに よる 修正 や︑ 墨筆 の塗 りつ ぶし によ る抹 消︵ 墨滅
︶が 多い
︒欠 損・ 虫損 も多 いた め︑ これ らを 便宜 上︑ 左記 の方 法で 示し た︒ 重ね 書き は︑ 傍訓
︻
︼内 に修 正前 の文 字を 示し た︒
︻
︼内 の
□は 元の 文字 が読 めな い部 分で ある
︒ 墨滅 は︑ 抹消 前の 文字 が判 読可 能な 限り 翻字 し︑ 上に 二重 取り 消
し線 を引 いた
︒ 墨滅 や乱 筆で 判読 でき ない 字は
□で 示し た︒ 難読 字は
﹇
﹈で 囲み
︑上 に﹁
?﹂ を付 した
︒ 破損 や虫 損に よる 欠字 は■ で示 し︑ 字の 一部 から 推測 でき る場 合 は傍 訓で 示し た︒
●注 につ いて
:修 正・ 欠損 箇所 で右 の方 法で は示 しに くい 状態 の場 合︑ およ び︑ 字音 語の 仮名 書き
・宛 て字
・誤 字な どで 特に 意味 のと りに くい 語句 につ いて 注記 した
︒
︵ઃ オ︶ 元和 八歳 正月 念三
■日 此古 則初 也 歳十 九歳
︽① 趙州 栢樹
︾△
﹁僧 問︑ 趙州 如何 是祖 師西 来意
﹁達 磨天 竺 ヨリ 来故
︑祖 師ー ート 言ソ
︒唐 カラ 天竺 ハ西 也︒
﹁意 無ト 弁ス ルソ
︒無 故如 何︑ 和尚 云也
︒頭 上脚 下 マテ 尋テ モ︑ 無骨 肉筋 五廾 五ザ ウ臓 六フ ハ腑 アレ ト意 無︒ 是カ 縦■
【□
゙
□】
也①
︒﹁ 又和 尚ヨ リ︑ 意ハ 無 ガ寒 暑悲 歓ハ アル ゾ︒ 弁シ テ来 レト 云ゾ
︒﹁ 寒暑 悲歓 ト云 意︑ 非有 非無
︑似
㆑有 無︑
﹇? 師傳
﹈ノ ベン弁 也︒ 如有 如無 トモ 和師 尚家 ニ②
依テ ヘン スル ソ︒ サテ 句ガ ツク ゾ︒ 意如
㆓水 中月
㆒猶
㆓鏡 上之 影㆒
︑如
㆑応
㆓谷 響㆒
如㆓
鐘ノ
在カ
㆒㆑
扣ニ
ト云 四句 ツク ゾ︒
﹁過 去現 在未ミ 来
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﹂翻 刻・ 解説
五七
﹁過 去ト 云者 ハ無 者テ 候ト ヘン スル ソ︒ 又現 在如 何
︵ઃ ウ︶ ト和 尚サ ツス ルソ
︒﹁ 現在 ハ者 似㆑
有無 キ者 也︒ 有無 ニ無 ニヲ チツ クソ
︒此 サキ ノ意 ノ心 ト同 事ソ
︒ サテ 又和 尚ヨ リ︑ 未来 如何 トサ ツス ルソ
︒﹁ 未来 身③
無キ 者テ 候ト ヘン スル ソ︒ 是︑ 句カ ツク ソ︒ 金剛 経云
︑過 去身 不可 得︑ 現在 身 不可 得︑ 未来 身不 可得
︑三 世不 可得 ト此 事ヲ 云ソ
︒又 三世 無心 トモ 云ソ
︒ サテ 長老 ヨリ
︑三 世不 可得 ニシ テ後 如何
︑ヒ ツキ ャウ 不可 得テ ハス ムマ イホ ト ニ此 上ヲ 如何 トサ ツシ 有ソ
︒﹁ 是ハ 輪 廻■サ セマ イト ノ事 ソト ヘン スル ソ︒ サテ 意■
︵ オ︶ 生心 種々 法生 滅心 種々 法滅 ナケ レハ 執 心 執 着
【シ ウ
シウ シヤ ク】
モ︑ アラ ウヤ ウカ アツ テコ ソ︑ 意無 ホト ニ︑ リン ネハ ナイ ソト ヘン スル ソ︒ コヽ ニ句 カ ツク ソ︒ 生心 種々 法生
︑滅
㆑心 種々 法ノ
滅ト 云句 ソ︒ 又此 句モ ツク ソ︒ 心有
時ハ
曠劫 受ニウク
㆓沈チン
淪リン ヲ
㆒心 無時
刹ハセツ
那ナニ
︑成
㆓正 覚㆒
トハ
︑此 句ハ 武帝 之子 ノ照 名大 師 之達 磨
○西死シ
之テ
碑ヲ シテ
︑其 上ニ 書タ 句ソ
︒サ テ
師云
底前 栢樹 子﹁ 草木 花モ 似有 無候 ト
ヘン スル ソ︒ 祖師 西来 之意 テ候 ト云 ソ︒ サテ ナン ト シテ カ無 ト云 ソ︑ ヘン ジテ 来ト 長老 云ソ
︒﹁ 栢樹 子 無ト 云テ 候処 ハ︑ 春ハ 花開
︑夏 ハ長 シ︑ 秋子④
ノ リ︑ 冬葉 落︒ サウ ヘツ 草木 ノタ グイ ヲ︑ 根
︵ ウ︶ 茎枝 葉ヲ ウツ クダ イテ 見ト モ︑ 花カ トレ カ有 トハ 見ヘ ヌホ トニ 無ト 見タ
︒是 ヲ以 テ 意ト 同事 ソ︒ 有似 無処 以テ
︑答 曰ニ シラ レ タソ
︒サ テ師 曰︑ アギ ヨ
下 語
シ⑤
来レ 云︒
﹁答 テ曰
︑柳 緑 花紅 ト云 句ツ クソ
︒底 前栢 樹子 ハカ リ テハ ナイ ソ︒ ソウ ヘツ ノ草 木ノ コト ナレ ト 底⑥
ニ有 タニ 依テ 栢ー ート 云タ ソ︒ サテ ナニ トテ 柳緑 花紅 ト云 ソ︒ アキ ヨヘ ンジ テ 来レ ト師 ノ曰
︒﹁ 此次 サイ⑦
ハ︑ 春ハ 花サ き︑ 秋ハ ミ ノル ニ︑ ウチ クタ イ見 ハ︑ ナン ノド ウリ モナ キニ 依テ ツケ テ候 トヘ ンス ルゾ
︒サ テハ クジ ユノ
□ン ブニ シラ セン ガタ メニ 歌□ 語ニ 有ソ
︒
︵અ オ︶
△桜 木ヲ クタ キテ 見ハ 色モ 無花 ヲハ 春ノ ソラ ソモ
■ケ ル 西明 寺殿 御作 又妙 心寺 ナド テハ 古則 〳〵 ニ歌 ヲヒ クト 聞ト モ︑ 当寺 テハ 歌ヲ ヒク 古則 大ヽ カ無
︒マ ズ此 句ニ 此歌 二首 ツク ソ
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五八
サテ 栢樹 子ヲ モチ イタ 上カ ラハ
︑ナ ニト モチ ヨウ ソト 師曰 答曰
△サ テ龍 儒尊 者ノ 語有 ソ︒
○
ムシ ロ/
有寧
ノ見 ヲ起 ス事 ヲハ
︑如
㆓
須弥 山ノ
㆒ス ルト モ︑ 空見 ヲハ 不芥 子斗
ケシ バカ リ⑧
モ不 可
【ス
㆑ ヘ
起カラ】 スト 云ソ
︒ 須龍 言経⑨
ニ有 ソ︒ 又空 見断ダン
見無 見三 ツ也
︒ 即チ 是ハ 有見 ハ栢 樹
【伯 寿】
之凡 夫
【ホ ンブ
ノ】
シワ サナ レト モ︑ 有ノ 見ハ
※補 入: イカ ホト シテ モヨ イ︒ 空見 ハ 佛モ イラ ヌ︑ 神モ 又ナ トヽ
︑ト 糞シ カケ イ⑩
ノナ トヽ 云テ ヨイ モノ カ︒ 今日 ノ上 テハ
︑一 段勤 行シ テ︑ ヨク
︵અ ウ︶ 佛神 ヲマ ツヽ タカ ヨイ ソ︒ 有ノ 見ハ
︑空 見ヨ リモ マサ レリ ト見 ソ︒ サテ 此句
︑ハ ク儒 之ホ ンブ ニシ ラシ メン カ為 ニ歌 有ソ
︒ 桜木 ヲク ダキ テ見 レハ 色
ナニ モ/
モ花
ナシ 花ヲ ハ春 ノソ ラ
園/
ソ風
モツ ラン⑪
西明 寺殿 歌
△年 々の 吉野 々山 ノ桜 花⑫
木ヲ ワリ テ見 ヨ花 の アル カワ 又妙 心寺 ナト テハ
︑古 則〳 〵ニ 歌カ ツク
︒然 ガ当 寺テ ハ ヲホ カ⑬
ツク付 古則 無キ ソ︒ マツ 此古 則ニ ツク ソ︒ サテ 師曰
︑栢 樹子 ヲモ チイ用 タ其 上ニ ハ︑ ナニ トモ チユ ウソ ト云 ソ︒
﹁答 曰︑ 僧ハ
是僧
︑俗 ハ是 俗テ
候ト 用ユ ウソ
︒
今日 ノ上 テハ
︑色 想【ソウ
】⑭
ヲシ テ有 可様 之受 用テ 候ト ヘン スル ソ︒ ナニ シモ
ラヌ 参■ モシ ラヌ
□カ シヌ レハ イ■
■
︵આ オ︶ 又ヤ ケハ ハイ トナ ル土 トナ ルト テ︑ ナニ モウ チヤ フル 事■ 正見 之者 ハ︑ 無事 ハ無
︑有 ル事 ハ有 ト見
︑邪ジヤ
見ノ 者ハ 有事 モ無 ト見 タリ
︑無 事モ 有ト 見タ リス ル ソ︒ 本【ホン
分】
之者 ハ︑ 僧ハ 僧︑ 俗ハ
々ト 見テ
︑今 日之 上︑ 受用 テ候 トヘ ンス ルソ
︒
﹇空 白﹈
︽② 郎中 地獄
︾地 獄畜 鬼道 修生
︱
人道 天道 修羅 道
︵આ ウ︶ 崔郎 中問 趙州 云︑ 大善 知識
︑還 入地 獄也
︱
⑮否師曰
地獄 ト云 者ハ トノ 方ニ アル ソ︑ ヘン ジ来 レ云
︒﹁ 答曰
︑三 界 ガ皆 地獄 テ候 トモ
︑人 間ノ アタ リカ 地獄 候ト モヘ ンス ルソ
︒ 畜鬼 道如 何ト 師曰
︒﹁ 答曰
︑畜 鬼ト 云ハ 材宝 有 テモ ナニ
■カ ホシ イ︑ カヾ ホシ イ︑ ニナ カク イタ イナ ドヽ テ 思者 カ皆 ガキ 也︒ サテ
︑有 材畜 鬼︑ 無材 畜鬼 トテ 二ツ アル ソ︒ 有材 ーー ハ者
﹇? 思﹈ 事︑ 無材 ハコ ヂ キ︑ ヒ人 ノ事 ソ︒ 師曰
︑チ ク生 道如 何︒
﹁答 曰︑ 人間 ト 生シ テ五 上ノ カケ タ者 ヲチ ク生 ト云 ソ︒ 師曰
︑ 修羅 道如 何︒
﹁答 曰︑ ブケ カ︑ イコ ンモ ナイ ニ︑ テキ ミカ タ
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五九
ナレ ハ父 ヲ子 ガコ ロシ
︑子 ヲ父 ガコ ロシ
︑人 トタ
■ノ
■■
︵ઇ オ︶ 公ノ クビ モウ チス ル■ 修羅 テ候 トヘ ンス ルソ
︒コ レデ
■■ ニバ カリ 修羅 カア ツテ
■ヘ
■ニ ハナ イカ ト云
︒一 身ニ イカ リ ヲ入 ルカ 修羅 テ候 トヘ ンス ルソ
︒一 身カ
︑ム カト ハラ カタ
■テ ハケ ンク ワシ
︑我 ガ僕 来ヲ シカ ルガ 修羅 テ候 ゾ︒ 師曰
︑人 道如 何︒
﹁答 曰︑ アラ ユル チク 生ハ ヲヽ ケレ トモ 五ゼ ウ色 ソウ ヲタ ツル ヲ【ニ】 人道 ト云 ソ︒ 師曰
︑ 天道 如何
︒﹁ 答曰
︑王 位ヲ 天道 テ【ト】 候︒ 王位 ト云 者 ハ風 花節 月⑯
ノ如
︑ヘ ツニ コハ イ者 ハナ シ︑ 意ア リ タイ マヽ ナ者 テ︑ 佛法 もシ ラネ トモ 一身 ノ楽 テ候 トヘ ンス ルソ
︒一 家ノ 主人 カ天 道テ 候 トモ
︑主 人ハ 其一 家テ ハ︑ アリ タイ マ⑰
テア ル トコ ロヲ 以テ 云ソ
︒師 曰六 道ノ ヒツ ケヤ ウ
︵ઇ ウ︶ 如何
︒﹁ 答曰
︑ヒ ツキ ヤウ 六道 ハ︑ 天道 カゴ クラ ク シヤ
︑人 道カ コク ラク シヤ ト云 事モ 無︒ カク 道カ カク シヤ ト云 事モ 無︒ 天道 モカ ク道 モ 皆︑ 生ヲ ウケ テ来 ルハ
︑皆 六道 ヲ ウケ テ候 トノ ヘン 也︒
※補 入﹁ 下語
︑三 界無 安︑ 猶如 火宅タク
﹂△ 師曰
︑ 崔郎 中問 趙州 云︑ 大善 知識
︑還 入地 獄也 否
コヽ ニ下 語シ 来︒
﹁答 曰︑ 問得 始テ
可テ シ
㆑得
︑ 此句 之心 ハ︑ 崔郎 中ガ 趙州 ニ始 問テ 知得 タト 云心 也︒ 師云
︑趙 州云
︑末 上ニ 入︒ 下語 シ来
︒末 上入 トハ マツ サカ サマ ニ入 ト云
■■
■
︵ઈ オ︶ 又︑ マハ ジメ ニイ
■ル ト云 心ト 二色 有也
︒下 語 答曰
︑耳 朶ダ 両片 皮︑ 牙歯 一具グノ
□乎
︒師 曰︑ 郎 中云
︑既 是善 知識
︑為 什麼 入地 獄︑ 州云 老僧 若不 入地 獄︑ 争見 崔郎 中︒ 下語 来︒
﹁答 曰︑ 漏ロウ
逗トウ
不ズ
㆑少
カラ
︒衫 穿 肘 露
サン ウケ テヒ ヂア ラハ
︒ル
漏逗 ーー ト云 心ハ
︑崔 郎中 カ趙 州ニ 問ハ
︑ 既是 善知 識入 地獄 ト云 タ処 テ︑ 趙州 ノ 老僧 若【モ】 不入 地獄
︑見 崔郎 中ト イハ レタ ハ 趙州 モ末 上入 トテ
︑崔 郎中
□始 カラ 入タ ソ︒ 地獄 イラ ンス ンハ
︑崔 郎中 モミ マイ ソ︒ 慈悲 ニ趙 州ノ 入⑱
地獄 ニ入 テ︑ 崔郎
︵ઈ ウ︶ 中ニ 漏逗 不少 シテ
︑シ メサ レタ ソ︒ 衫穿 肘露 ハ︑ 衫カ ヌケ タレ ハ︑ ヒヂ ノ出 タヤ ウニ アラ ハル ヽソ ト云 心也
︒サ テ是 ヲ前 ニ見
【ニ ソハ ニ□ ル】
ヘテ 地獄 ヲア トニ 見ス ルモ アレ トモ
︑是 ヲア トニ 見ス レハ カテ ンユ カン 処テ
︑ア トニ 見ス ルソ
︒俗 人ナ トニ
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六〇
ハ漏 ーー ー衫 ーー ーナ トハ 見セ ヌケ ナソ
︒ サテ 今マ テハ 地獄 一見 ソ︒ 地獄 ニ入 タ ハカ リテ
︑地 獄カ ラ出 ヤウ ハナ イソ
︒地 獄ニ 入タ フン テモ スム マイ ホト ニ︑ 出離 之時 如何 ト師 家カ ラサ ツス ルソ
︒﹁ 答曰
︑色 ソウ ヲセ ツダ ンシ テ︑ 皆地 獄モ ナニ モイ タツ ラ■
■
︵ઉ オ︶ 見タ カ出 離■
■テ 候云
︒当 家ノ ヘン
■■ ソウ 道⑲
ニハ 生ヲ 入地 獄︑ 死ヲ 出離 ト■見 ルソ
︒是 ホト チカ ウタ 事也
︒ソ ウ道 ノ ヤウ ニ見 レハ
︑イ キイ ル内 ニ︑ 出離 シヤ ウ 用ハ ナイ ソ︒ 是レ ホト チカ ウタ ソ︒ コヽ 下【ア】 語有
︒■閑 事ト 云ソ
︒閑 事ヲ イタ ツラ 事ト 読也
︒師 曰︑ ナン ノ用 ニ地 獄ヲ コマ カニ【ト】 六道 ノナ ンノ トテ
︑ハ ケニ⑳
見ス ルハ ナン ノ用 テア ルソ
︒ヘ ンシ テ(
テまま
来)
﹁答 曰︑ チク セウ 道ヲ
︑セ ンニ 用サ セウ カ為 デ候
︒六 道 テモ
︑イ ナ者 ヲ云 ソ︒ 師曰
︑何 シテ カチ ク生 道ヲ 用ル ト云 ソ︒ ヘン シテ 来︒ 答曰
︑チ ク生
︵ઉ ウ︶ セン ニ用 タハ
︑シ ヤウ ルイ チク 類ハ カリ テハ ナイ ソ︒ 人義 五状 ヲシ ラヌ 者カ
︑人 テモ チク セウ ナリ
︒
チク セウ 道ヲ セン スル ハ︑ ヨク 色草 ハナ ニモ イタ ツラ 事ト
︑ヨ クソ コニ モチ イテ
︑ウ エニ 人義 五状 ヲ タテ
︑公 ハ公 トシ
︑父 母ハ 父母 シ㉑
︑ヨ ク人 義ヲ シラ シ メン カ□【為】
■用 テ候
︒ヨ ク〳 〵此 心モ チ︑ タイ【シ】 ジ 也︒ ヨク 〳〵 シア ンシ テ︑ モテ 地獄 候ム ソ︒
﹇空 白﹈
︵ઊ オ︶
︽③ 萬法 不侶
︾△ 龐居 士問
馬大 師︑ 不与 萬法 為侶 者︑ 是 什麼 人○ 師云
︑萬 法為 侶者 ハナ ンテ ア ラウ
︑弁 来︒ 答云
︑※ 補入
:﹁ 自性
シ セ
デウ
候︒
﹂如 虚空 者テ 候ノ 弁也
︒ 師云
︑如 虚空 トハ
︑ナ ニ【ン】 トテ 云来 ソ︒
○答 云 カタ チ■ ク躰 モナ ク︑ 住処 モナ キニ ヨツ テ︑ 如虚 空者 テ候 ト弁 シ候
︒師 云︑ 目ニ ミラ ルヽ 者カ
︑鼻 ニカ ヽル ヽ者 カ︑ 耳ニ 聞ユ ル カ︑ 口ニ 味イ アル カ弁 来︒ 耳鼻 舌心 意ノ 五ツ 也︒ 弁也
︒答 云︑ 無体 住処 モ無 ホト ニ目 ニモ 鼻ニ モ耳 ニモ 口ニ モ味 アラ ス無 者︑ 耳
︵ઊ ウ︶ 鼻舌 心意 ノ知 レヌ 者テ 候︒
○師 云︑ 下 語︒ 法ホツ
身無 相
ム ソ
︒ウ
○師 云︑ 提露 シ来 レ︒ 答 云︑
※補 入﹁ 洞家 ナト ニハ
︑イ ロ〳 〵シ カタ㉒
有テ 歌ナ トヲ ヽケ レト モ︑ 当家 ニハ 是ハ カリ
/ニ シカ タア ルソ
︒手 ヲニ キツ テ︑ 是ヲ 弁云
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﹂翻 刻・ 解説
六一
也︒
﹂ケ ンヲ ニキ ツテ 云︒ 如虚 空ナ ル者
︑セ ウ悪 ニ□
■ミ チ〳 〵テ 候︒
○師 云右 有者 カ左 ニア ル 者□
︒師 云︑ 頭上 ヲニ キリ
︑キ ヤツ 下ヲ スク イ 前後
■左 右ヲ ニキ ツテ 云︒ 内チ ニ有 カ︑ 外カ ニ有 カ︒
○答 云︑ 内外
ナ イ
ニゲ
重満 シテ 候︒ 師云
︑頭 上 ニイ㉓
︒○ 下語
︑頭 上漫 々︒ 師云
︑キ ャツ 下ニ イ︒ 答 云︑ キヤ ツ下 漫々
︒○ 師云
︑前 後ニ イ︒ 下語
︑ 在カトスレ
㆑ ハ
前ニ
忽 焉
コツ エン トシ
在テ リ
㆑
後シリヘ
○ニ
師云
︑左 右ニ イ︒
○答 云︑ 左右 逢㆑
源 師云
︑六 方ナ ニト シテ カサ スソ
︒弁 来︒ 答云
■■
■
︵ઋ オ︶ 師云
︑ナ ニト テ六 方ヲ サス ソ︒ 答云
︑上
■■
■ 維︑ 六方 ニミ チ〳 〵テ 候︒ 上下 ハ天 地也
︒四 維 東西 南北 也︒ 天下 ヲ頭 脚︑ 東西 南北 ヲ 前後 左右 ニタ トヘ テ云 ソ︒
○師 云︑ 自性 ノ 空ト 虚空 ノ空 ト同 カ別 カ︒
○答 云︑ 別テ 候︒ 師云
︑ナ ニト シテ カ別 トハ ミタ ソ︒
○ 答云
︑虚 空ノ 空ハ
※補 入﹁ 無始 以来
﹂空 ニシ ヤク 〳〵 トシ テ無 念ニ ナン ノ用 ニモ タヽ ス︑ 自性 ノ空 ハ開 悟シ テ無 始シ 以来 ノリ ンネ 截断 シテ
︑用 ニタ ツ処 ヲ 別ト ミテ 候︒ 師云
︑下 語シ 来︒
○答 云︑
︵ઋ ウ︶ 虚︱
空ノ
空ハ
空ニ シテ
空ナ リ/ 無ナ リ㉔
︒自 性︱
空ノ
空ハ ニシ
真テ ナリ
︒
又此 下語 モ ツク
︒空 非㆓
性地
ニ
㆒︑ 性地 非㆑
空︒ サテ 皆人 間モ 草 木モ
︑尽 空気 ヲウ ケテ 生ス レト モ︑ 今日 開悟 シテ 大徹 大悟 シテ カ︑ 自性 シヤ ホト ニ別 也︒ 空非 性 地︑ 性地 非㆑
空カ 別ソ
︒又 サテ 虚空
︑無 ナリ
︒ 又自 性■ 開悟 シテ カラ ハ真 ナリ シヤ ホト ニ 別ト 見テ 候ソ
︒師 云︑ ヒツ 境如 何︒
○答 云︑ 自性 ハ天 地シ ユイ㉕
ニミ チ〳 〵テ 有 ホト ニ一 ツヨ
︒無 二又 無三 ト見 テ候
︒無 二又 無三 ハ︑ 虚空 モ自 性モ 一ツ
■■
︵10 オ︶ 云心 ソ︒ 師云
︑下 語シ 来︒
○答 云■唯
■■ 事【□ウ
実】
︑餘 二則 非真
︒是 ハ唯 一事 トハ
︑本 分ヲ 云ソ
︒事 〳〵 ク︑ 人間 生ス ルモ
︑水 カ氷 ニ ナリ 氷カ 水ニ ナル モ︑ 皆空 気カ ラス ル事 ソ︒ 唯タヽ
此ノ
一事
︑実 餘
マコ トア マリ
二ツ ハイ ラヌ 事ヨ ト云 心也
︒ 餘二 ハ■ 生ノ アル 事ソ
︒本 分カ 尽〳 〵ス ルニ モハ ラ㉖
餘二 イラ ヌソ
︒二 ニナ ツテ ハイ ラヌ 者ヨ
︒ 師云
︑佛 性ニ【ヲ】 名ヲ ツケ 来レ
︒○ 答云
︑※
﹁補 入: 名ハ
﹂吹 毛剣 テ候
︒コ ヽニ クワ シイ 弁︒ 吹毛 剣ト 云ハ コマ カナ 毛ヲ ヤイ バノ 上ニ フル イカ クレ ハ︑ チリ 〳〵
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﹂翻 刻・ 解説
六二
キル ヽ︑ ソレ ホト ナツ ルキ ソ︒ サテ
︑今 日開 悟シ テ 大徹 大悟 シテ
︑無 始シ 以来 自性 ノリ ンネ ヲ截
︵10 ウ︶ 断ス ルホ トニ
︑吹 毛剣 トツ ケテ 候︒ サテ 是ハ 当家 洞家 ナト テハ
︑本 分上 カシ レヌ 処テ 本分 ノ︑ 宿樹 ノト ハカ ケト モ︑ 文ヲ ヤレ トモ 至
㆑家 ス㉗
ト﹇
?儒
﹈語 ノ録 ニモ
︑洞 家佛 法ハ アル ソ︒ マタ 本分 上ニ サタ マラ ヌ処 テ︑ 口 テハ 截断
■面 ニス レト モ︑ 心カ セヌ ニヨ ツ㉘
日マ チ日 マチ㉙
ヲ︑ 洞家 ニハ スル
︒五 山ナ トハ
︑ハ ヤ イツ カウ ノ無 眼僧 シヤ
︒当 家ナ トデ ハ 今日 ノ上 ノ色 想ヲ ヨク モチ イテ
カラ 心 ニハ ナニ モイ タツ ラ事 ヨト 見テ
︑今 日上 ヲハ 却テ ヨク 色想 ヲタ ツル
︒今 日ノ 上ヲ
■■
■
︵11 オ︶ ト云 テ︑ 佛ニ クソ ヲシ カケ
︑堂 神ヲ
■■
■ ヨイ 者カ
︒ソ レハ シツ カイ 者ク ルイ㉚
ソ︒ 当家 ノテ ウ宝 ハ︑ 今日 ノ上 ヲ一 段リ ンネ シテ
︑心 ヲ 截断 スル ソ︒ 大徹 セヌ 者カ
︑ナ ニモ ナイ
︑ イラ ヌ者 トイ ヘト モ︑ 心【イ】 ノヨ クモ チイ キラ ヌ ニヨ ツテ
■云 ソ︒ 師云㉛
︑有 相【想】 法身
︑無 相【想】 法 身︒ 法身 ハ木 分㉜
也︒ 自性 ノ佛 性ノ ト︑ 字
ト法 身ヲ
﹇? 聞﹈ 心也
︒ク ワシ イ大 灯ノ 弁︑ 有 ホト ニク ワシ ウ弁 シ来 レ︒ 金剛 性躰 モ本 分ソ
︒有 相法 身︑ 無相 法身
︑弁
︒○ 答云
︑ 有者 ハ無 イ者
︑無 イ者 ハア ル者 ト見 テ候
︒
︵11 ウ︶ 師云
︑ナ ント シテ カ有 者ハ 無者
︑無 イ者 ハア ル 者ト 見タ ソ︒
○答 云︑ 無者 ハ有 トハ
︑虚 空 ト云 者ハ
︑天 地開 閃ヒヤク シテ 無始 以来
︑日 月 皆尽 〳〵 ク古 ヨリ
︑チ ヒ㉝
モセ ス︑ 無キ 虚空 ト見 タ者 ハ有 ル︒ 又︑ 有者 ハ無 者ト ハ 人間
■草
■木 シン ラ満
﹇? 栽﹈
︑尽
︑皆 有者 ハ 死ス レハ 尽〳 〵︑ 虚気 ヘ却 テ無 者也
︒本 分 ノ句 ニモ
︑風 吹不 入︑ 水洒 不着
︒野 火焼
トモ
︑不
㆑尽
︑春 風吹 又ニ
︱タ
生ト 云句 モ此 事也
︒尽 〳〵 人間 ハ 虚気 ヲウ ケテ
︑死 スレ ハ又 虚気 ニ還 ル者
■ 有ソ
︒肉 コソ ハ焼 ケハ ハイ
︑ウ ツメ ハ■
■■
︵12 オ︶ ナレ
︑根 本ハ 虚気 にカ ヘル ニヨ ツテ 不■
■ ノ境 カイ ソ︒ 死ヌ ルト テカ ナシ ム事 ハナ イ︒ 皆尽 虚気 に還 ルホ トニ
︑寒 事モ 無ク
︑ ヒタ ルイ 事モ 無ク
︑一 段ヨ キソ
︒是 ヲ見 性 ト云 ソ︒ 見性 トハ サキ ノ性 ヲミ ルト 云心 也︒
︿資 料紹 介﹀ 京都 大学 文学 研究 科図 書館 寿岳 文庫 蔵﹁ 古則 聞書 零本
﹂翻 刻・ 解説
六三
□【是】 見■
■■悟 也︒ 是ヲ 見ハ
︑死 スル ホト ニカ ナシ イソ
︑ナ ニカ カナ シイ ソト 云事 ナシ
︒ サテ 根本 虚気 ヲウ ケタ ホト ニ︑ 又虚 気に 還︒ アノ サテ㉞
米カ 飯ト ナツ テ︑ 夏 ナド ハ虫 シニ ナリ
︑冬 ハ水 カ氷 トナ リ 氷カ 水ト ナル モ︑ 事〳 〵ク
︑虚 気ヲ ウケ テ 又︑ 氷カ 水ニ ナレ ハ︑ 本ノ 処ヘ 却ル ホト ニ
︵12 ウ︶ 虚気 ト云 者ハ
︑無 始以 来ナ ニニ モア レ トモ
︑ス コシ モチ ヒス ニ有 ホト ニ︑ 有者 ハ無 者︑ 無者 ハ有 者ト 見テ 候︒ 師云
︑ヒ ツ境 如何
︒下 語︑ 充塞 乾坤
︑又
︑亘 古亘 今 トモ 二句 ツク ソ︒ 充塞 乾坤 トハ
︑皆 尽〳 〵ク
■乾 坤ニ ミチ 〳〵 テア ルト 云心
︒ 亘古 ーー トハ
︑虚 空ハ 古モ 今モ 同事 ト 云心 也︒ 是カ 一第 次ノ 処ソ
︒知
□性㉟
ヲト テ一 第次 也︒ 皆知
□性 ヲ■
■ 事ハ アイ マイ トイ ヘト モ︑ 生レ テ又
■■
︵13 オ︶ 却ル 処カ
□性 ソ︒ 是ヲ
︑ト ツク リ■
■■ ソコ
□ヲ ニフ マヘ テ︑ 参ス レハ マタ ウ■
■■ 紙ホ ト明 ニナ ルソ
︒是 レヲ 以テ 明眼
ト云 ソ︒ 真エ キ再 返㊱
アレ トモ
︑事 ナカ イ 事︑ マヅ 是レ テス ムソ
︒
︽④ 見明 星︾
※補 入﹁ 大灯 之一 冊■ 有■ 則也
﹂ 佛見 明星 悟道
○下 語︑ 三上 有 星皆 拱如
︑天 上星 地下 木︑ 二ツ ツク ソ︒ 星ト 云者 ハ︑ 暮コ トニ 出テ ナン ノト ウリ モナ ク無 心︑ 人モ ナン ノト ウ リモ ナク 無心 ノ処 サト ラレ テ候
︒
︵13 ウ︶ 大灯 云︑ 不審 受誰 恩力
○下 語 百華 春到 為誰 開︑ ツク ソ︒ 星ト 云者 モ夕 ニ
■出
︑暁 入ホ トニ
︑ナ ンノ トウ リモ ナク
︑無 心シ テ 佛祖 不識 シヤ ホト ニ︑ 百華 春到 ーー ート ツケ テ候
︒花 ト云 者モ
︑時 刻カ 来レ バ花 開 ミノ リ■
■ト 云事 モナ ク︑ 星ヲ 悟道 セラ レタ モ︑ 誰為 ト云 事モ ナイ ソ︒ 此不 審 受誰 恩力 ハ︑ 大灯 ノ学 者ニ シラ シメ ン タメ ニ謂
︒是 ハ大 灯ノ 一冊 ニセ ラレ タソ
︒
※補 入﹁ 先︑ 是テ スム
︒﹂ シン エキ アル ホト ニ心 得可
︒
︵14 オ︶
︽⑤ 聞撃 竹︾ 香厳 聞撃 竹悟 道○ 下語
︑不
■■
■ 寺風 送鐘 聲来
︒香 厳ノ サウ ジ■テ
■
︿資 料紹 介﹀ 京都 大学 文学 研究 科図 書館 寿岳 文庫 蔵﹁ 古則 聞書 零本
﹂翻 刻・ 解説
六四
サマ ニ︑ カワ ラノ カケ ニテ
︑竹 ニア テラ レタ カ 竹カ ナツ テ有 処聞 テ︑ ナン ドウ リモ ナク 無念 無心 シテ 聲カ 有知
︑悟 道セ ラレ タソ
︒ 鐘ト 云■
■■
■ハ 聲ノ 有処 テ︑ 此句 ヲ ツケ テ候
︑栢 樹ニ モ如
㆑有
㆑鐘 鉦ノ
トニ
云モ 此心 也︒
■是 テス ム也
︒ 注
① 本文 献は 長期 間二 つ折 りに され てい たよ うで
︑折 り目 にあ たる 各頁 中 央の 傷み が激 しい
︒表 紙が 二つ に裂 けて いる ため
︑露 わに なっ た一 丁表 中央 の六
︑七 行目 がさ さく れて いる
︒当 該箇 所は 重ね 書き だが
︑元 の文 字は 殆ど 判読 でき ず︑ わず かに 濁音 符が 確認 でき る︒
②
﹁師 家﹂ は欄 外上 部の 書入 れで
︑﹁ 和尚
﹂と 線で 結ん であ る︒
③
﹁心
︵し ん︶
﹂︒ 五行 目以 下の
﹁過 去身
⁝﹂ 等も 同じ
︒
④
﹁実
︵み
︶﹂ の意 か︒
⑤ 左傍 に書 入れ
︒
⑥
﹁そ こ︵ 其処
︶﹂ か︒ ただ し︑ この 書写 者は
﹁底 前栢 樹子
﹂と 二箇 所で 表記 して おり
︑﹁ 底﹂ と理 解し てい た可 能性 があ る︒
⑦
﹁し さい
︵仔 細︶
﹂︒
⑧
﹁芥 子斗
﹂は
︑︻ ケシ ホト モ︼ の上 に重 ね書 き︒
⑨
﹁首 楞厳 経﹂ か︒
⑩
﹁く そ/ とく そ︑ しか けい
︵糞 をし かけ よ︶
﹂︒ もう 一例
︑﹁ 佛ニ クソ ヲ シカ ケル
﹂︵ 11オ
︶が ある
︒﹁ とく そ﹂
﹁と ぐそ
﹂﹁ どく そ﹂ は未 詳︒
⑪ 和歌 の異 同を 傍書 で示 す︒
﹁風
﹂は 左傍
︒
⑫
﹁花 木ヲ
﹂に 重ね 書き あり
︒﹁ 木ワ リ﹂ か︒
⑬ 前丁 の抹 消箇 所が ほぼ 同文 で﹁ 大ヽ カ﹂
︒﹁ 謳歌
︵お うか
︶﹂ か︒
﹁V ôc a. ヲゥ カ︵ 謳歌
︶V ta ,v ta .︵ 謳︑ 歌︶ 歌謡 また は︑ 詩歌
︒文 書語
︒﹂
︵日 葡p .6 97
︶
⑭
﹁色 相﹂
︒
⑮ 長い 線が 引か れて いる
︒
⑯
﹁風 花雪 月﹂
︒
⑰
﹁有 りた いま ヽ﹂ の踊 り字 脱か
︒
⑱
﹁ゐ る︵ 居︶
﹂か
︒
⑲
﹁曹 洞﹂ か︒
﹁道
﹂の 表記 は﹁ 神道
﹂等 との 類推 か︒
⑳
﹁ば け︵ に︶
﹂は
︑い かが わし く︑ 奇妙 なこ と︒
﹁ば けば けし い﹂
︑﹁ ば けら しい
﹂︒
﹁史 記ナ ンド ニカ ヽル バケ ラシ イ事 ヲバ 書ル サウ ス事 デハ ナ ケレ ドモ
﹂︵ 史記 桃源 抄・ 八 オ︶
㉑
﹁シ
﹂は
﹁ト シ﹂ の脱 字か
︒
㉒
﹁仕 方︵ しか た︶
﹂︑
﹁能 や狂 言で
︑そ れぞ れの 場に 対応 した 身ぶ り手 ぶ りに よる 特定 の所 作﹂
︵﹃ 時代 別国 語大 辞典
室町 時代 編﹄
︶︒
㉓
﹁い る︵ 居︶
﹂の 連用 形︒ 以下
︑師 と弟 子と が短 いや り取 りを 繰り 返す
︒
㉔
﹁空 ナリ
﹂と
﹁無 ナリ
﹂は 双行
︒
㉕
﹁四 維﹂
︒
㉖
﹁も っぱ ら﹂ の古 形︒ もし くは
︑﹁ もっ ぱら
﹂を 表記 した もの
︒
㉗
﹁文 をや れど も家
︵に
︶至 らず
﹂と いう 諺か
︒他 に例 を見 ない
︒
㉘
﹁テ
﹂脱 か︒
㉙
﹁日 待ち
﹂︒
﹁正 月︑ 五月
︑九 月︑ 十月 の十 五日 の夜 など に︑ 潔斎 して 一晩 寝ず に日 の出 を待 って
︑そ れを 拝む 行事
︒﹂
︵﹃ 時代 別﹄
︶﹁ Fi ma ch i. ヒマ チ︵ 日待
︶儀 式と して
︑日 の出 を待 つこ と︒
﹂︵ 日葡 p. 23 2︶
㉚
﹁物 狂い
﹂︒
︿資 料紹 介﹀ 京都 大学 文学 研究 科図 書館 寿岳 文庫 蔵﹁ 古則 聞書 零本
﹂翻 刻・ 解説
六五
㉛
︽萬 法不 侶︾ には
︑複 数の 問答 のパ ター ンが 含ま れて いる よう で︑ こ のあ たり から 後は
︑別 のバ ージ ョン か︒
㉜
﹁本 分﹂ の誤 りか
︒
㉝
﹁禿 ぶ﹂
︒す りへ る︑ すり 切れ るの 意︒
﹁C hi bi ,i ru ,l ,u ru ,i ta .チ ビ︑ ビル
︑ま たは
︑ブ ル︑ ビタ
.︵ 下略
︶﹂
︵日 葡p .1 18
︶
㉞
﹁あ のさ て﹂
︑未 詳︒
㉟ 示偏
・衣 偏に
﹁夆
﹂の よう な字
︒﹁ 法性
﹂︑ 或い は﹁ 真性
﹂﹁ 心性
﹂を 表記 した もの か︒
㊱ 古本 節用 集︑ 落葉 集に 収載 され る︒
﹁S ai fe n. サイ ヘン
︵再 返︶ Fu ta - ta bi ca ye su .︵ 再び 返す
︶そ の物 をも う一 度繰 り返 して 送る こと
︒﹂
︵日 葡 p. 55
0︶ ︿
資料 紹介
﹀京 都大 学文 学研 究科 図書 館寿 岳文 庫蔵
﹁古 則聞 書零 本﹂ 翻刻
・解 説
六六