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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

デントウテキ セオイ ハシゴ セイタ ワ ドノ ヨウニ シンタイ ニ フィット シテイル カ

河原, 雅典

富山大学芸術文化学部造形建築科学コース : 講師 : 人間工学, 働態学

https://doi.org/10.11501/3148614

出版情報:Kyushu Institute of Design, 1998, 博士(芸術工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

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氏名・本籍(国籍) 河原雅典(福岡県)

学位の種類 博士(芸術工学)

学位記番号 甲第25号

学位授与の日付 平成11年3月18日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当

学位論文題目 伝統的背負い梯子「背板」はどのように身体にフィットし ているか

審査委員会 幹事 教授 佐藤陽彦       委員 教授 栃原 裕

      委員 教授 波平惠美子(お茶の水女子大学)

論文内容の要旨

 背板とは山口県玖珂郡錦町での伝統的背負い梯子の呼称である。錦町はほとんど平地が 無いが、その中でも急勾配の谷間にある 3 集落で背板は現在も使用されている。そこで複 雑な農林業を営んできた人々は、背板によってあらゆるものを運搬してきた。人間は道具 によって環境に適応することができるが、そのとき道具は身体の延長であり一部である。

本研究では、そうした観点から背板と身体の関係に着目し多角的な分析を試みた。本論文 は6章構成である。

 第 1 章では背負い運搬研究の背景について概説し、本研究の目的と構成を述べた。日本 での背負い運搬と運搬具に関する研究は民俗学や民族学で行われてきたが、そこでは道具 のみを扱っており身体との関係を論じた研究はほとんどない。一方人間工学や働態学など では軍事的な背負い運搬に関する研究が主流であり、背負い運搬と運搬具に関する問題が 数多く報告されている。しかし背板が使われてきた錦町では非常に多くものを背板によっ て運搬してきたにもかかわらず、背負い運搬に関する問題は皆無といってよい。そこで本 研究は、背板と身体も関係をさまざまな面から明らかにすることを目的とし、調査と実験 の両面から研究を行った。

 第 2 章では、背板を作るときに大事だと考えられていることの聞き取り、これまでの生 活での運搬履歴、背負い運搬に起因する傷害の履歴について調査を行った。背板を作ると きにはツメ(荷台の部分)の位置、腰の当たり(背板の背面の荷重支持部がどこで身体と接 触するか)等、いくつか留意点が明らかになった。背板を使っている人々は自分で体に合 わせて背板を作り、これまでの生活で現在では考えられないほど多くのものを背板で運搬 していたことが確認された。過度の背負い運搬はさまざまな傷害を引き起こすことが報告 されているが、背負運搬に起因する傷害の有訴率は非常に低く、それらに対する特別な治 療法(民間療法)や通院履歴もなかった。過酷なほどの運搬を背板によって行ってきたに もかかわらず、予想される傷害が無かった。この理由が背板と身体の関係に見いだせるの ではないかと予想した。

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 第 3章では、第2章で得られた証言をもとに、背板と身体のフィッティング法に終点を 合わせた。背板寸法の実測値とその使用者の生体計測値からそれらの相関関係を示し、写 真撮影から背負い姿勢の特徴を明らかにした。背板は、身体と広い面で接触するのではな く、小さな面で荷重を支持する構造であるが、荷重を身体背面のどこで支持するかが最重 要課題であった。調査の結果、背板を使用するときには荷重を仙骨上で支持しており(背 板フィッティング法)、決して腰椎上では支持しないことが明らかになった。背負うとき に仙骨上で荷重を支持できるように、ニオ長(肩紐の長さ)と肩腰ヌキ長(背板の肩紐の 上部取り付け位置から腰部接触位置までの長さ)の和を調節していることを示した。これ は第 2 章で背板作りの留意点として得られた「腰の当たり」が重要とする証言を裏付ける ものであった。

 第 4章では、第3章で得られた背板フィッティング法の有効性について実験的に検証し た。仙骨上で荷重を支持すること(仙骨支持条件)と腰椎上で荷重を支持すること(腰椎 支持条件)について、生理学的な実験によって比較した。実験の結果、仙骨支持条件での 歩行は腰椎支持条件よりも酸素摂取量、心拍数、および下肢の筋活動が少ないこと、また 仙骨支持条件の方がより少ない歩数であること、を示した。

 第5章では、第4章に引き続き、第3章で明らかになった背板フィッティング法につい て、力学的な面から検証した。重心動揺の実験により、明らかに仙骨支持条件の方が腰椎 支持条件よりも動揺距離が小さいことを示した。床反力測定では、鉛直方向下向きの力の 最大値、前後方向後向きの最大値および積、左右方向左向きの力積において腰椎侍史条件 よりも仙骨支持条件の方が大きな値を示した。鉛直、前後、左右の3方向の結果から、仙 骨支持条件では床から足が離れるときに蹴る力を発揮しており通常の歩行により近いこと、

腰椎支持条件では蹴る力を使っておらずすり足式歩行により近いことを述べた。また、自 作した張力センサおよび腰仙部負荷荷重センサを用いた実験で、腰椎支持条件よりも仙骨 支持条件の方が肩紐の張力、腰仙部負荷荷重ともに小さいことを示した。仙骨支持条件は 同じ荷重を背負っていても、肩紐の締め付けも少なく、腰の圧迫も小さいことを明らかに した。

 第 6 章では以上のことを総括した。背板を用いた背負い運搬の実態調査から、現代では 信じられない物量を背板によって運搬してきたこと、しかしそれによる傷害が見られない こと、背板の荷重を仙骨上で支持するように背板を身体にフィッティングしていることを 示した。さらにこの背板フィッティング法を実験的に検証し、エネルギー効率がよいこと、

身体動揺も少なく安定性が高いこと、通常の歩容を保てること、そして肩紐の締め付けが 少ないことなどを示し、その合理性を明らかにした。

 巻末資料として、生体計測記録、背板の実測記録とハシラのトレース図を収録した。

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論文審査の結果の要旨

 人間は適切な道具を製作し使用することによって、様々な環境に適応してきた。人力運 搬における背負い梯子もそのような道具の一つであり、その使用法には長年の生活の知恵 が結集していると考えられる。しかし、近代化のなかで人力運搬の機械は激減し、それと ともにそれらの知恵も失われようとしている。本論文は、山口県玖珂郡錦町で現在も使用 されている伝統的背負い梯子である「背板」に着目し、フィールド調査と実験的研究から 多角的に背板と身体の関係を分析し、どのように背板を身体にフィットさせているかにつ いて検討したものである。

 錦町には殆ど平地が無く、急勾配の谷間にある道立野、後野、落合の集落で農林業を営 んできた人々は背板によって様々なものを運搬してきた。その数は男女含めて約40名で、

全員が自分専用の背板を持っており、貸し借りはしない。

 まず、錦町在住の51〜87歳の男女約30名を対象に、これまでの生活における運搬履歴 と、背負い運搬に起因すると考えられる傷害の履歴に関する聞き取り調査を行っている。

その結果によると、米、炭、石、など様々なものを運搬し、男性では 60kg を、女性では 40kgを越す重量を背負って運搬してきた。このような過酷な運搬を行ってきたにもかかわ らず、背負い運搬に起因する傷害は殆ど無かった。

 そこで、背板をどう身体にフィットさせているかを知るために、背板の寸法実測とその 使用者の生体計測、及び背板を背負った姿勢の写真撮影を行った。背板は広い面で身体と 接触する構造にはなっておらず、荷重を身体のどこで支持するかが問題である。分析の結 果、背板を使用するときは荷重を仙骨上で支持することが重要であり、そのためにニオ長

(肩紐の長さ)と肩腰ヌキ長(背板の肩紐の上部取り付け位置から腰部接触位置までの長 さ)の和を調節していることを見出した。これは、背板作りの留意点として「腰の当たり が重要である」という証言を裏付けるものであった。荷重を仙骨上で支持するこの方法を

「背板フィッティング法」と名付けている。

 次に、若年男性被験者におもりを取り付けた実験用背負い梯子を背負わせた実験により、

この背板フィッティング法(仙骨支持条件)の有効性を、腰椎上で荷重を支持する条件(腰 椎支持条件)と比較することによって、確認している。仙骨支持条件での歩行においては、

腰椎支持条件より酸素摂取量、心拍数、下肢の筋活動及び歩数が少ないという結果が得ら れ、背板フィッティング法の有効性が生理学的指標により検証されている。

 また、重心動揺は仙骨支持条件の方が腰椎支持条件より小さかった。歩行時の鉛直、前 後、左右の 3 方向の床反力の測定結果から、仙骨支持条件での歩行は床を足が蹴る力が大 きい通常の歩行に近いのに対して、腰椎支持条件での歩行はすり足式歩行に近いことが判 明した。腰椎支持条件よりも仙骨支持条件の方が肩紐の張力、腰仙部負荷荷重とも小さか った。このように力学的指標からも背板フィッティング法の有効性が明らかにされている。

 論文には巻末資料として、現在使用されている背板の詳細な記録と、それを使用してい る人々の生体計測値が収録されており、貴重である。

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 本論文は伝統的背負い梯子である背板と身体の関係を多角的に分析し、伝統的な背板の 背負い方の有効性を立証した価値あるものである。よって、本論文が博士(芸術工学)の 学位を得るに値するものであることを、本委員会は認めた。

最終試験の結果の要旨

 最終試験を兼ねた公開発表会が、人間工学及び関連分野の研究者の出席のもとに、開催 された。著者の発表に対して、実験条件と坂道歩行との関係、通常歩行とすり足歩行の優 劣、仙骨より下の位置で荷重を支持する条件の実験、背板で運搬するものの種類と重量、

背板使用時の歩行速度、背板のハシラの美しさ、背板の製作者、朝鮮の背負い梯子との関 係、他の背負い運搬道具との比較等について活発な質疑があったが、いずれについても著 者から納得のいく説明がなされた。よって、審査委員合議の結果、最終試験は合格と決定 した。

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How is a traditional carrier frame"seita"fitted to the body?

Masanori Kawahara

Abstract

Seita is a traditional carrier frame for back packing used in Nishiki-cho, Yamaguchi Prefecture, Japan. In the mountainous district, people make their living by agriculture and forestry, and carry everything on their back with seitas. The purpose of this study was to investingate the relationships between th ebady and seita from different angles.

First, the interviews with seita-carriers made it clear how to make a seita, and that particularly some parts of a seita were thought to be fitted to their bodies.

Thoughthey had carried incredibly heavy loads with their seitas, there were no complaint about disorders caused by heavy load carriage.

Next, I measured some anthropometric sizes and seita dimensions, and specified where the load-supporting

point of seita contacted to the lumbosacral area of the body with the use of photographs.

The date of this survey make it clear that when people carry loads with seitas, theysupport loads not on lumbar vertebrae but on sacrum, and that they adjust the lenght of the perimeter consisted of bakd part and shoulder strap of seita.

The question then arose about th edifference between carrying a load on the sacrum(LOS) and on the lumbar vertevrae (LOL). The experimentwas held to verify the difference between LOS and LOL in oxygen uptake, muscle activities, heart rate, cadence, and subjective response. The following s were signigicantly lowere in LOS than in LOL: cadence, and rated perceived exertion. However IEMG of th eerector spinae was signigicantly higher in LOS than in LOL. These results suggest that seita-fitting in LOS causes a decrease of the leg muscle activities, which causes to decrease oxygen uptake beyond the increase of the erector spinae activity.

Further experiments wereheld to verify the difference between LOS and LOL dynamically. The body seay in LOS was significantly smaller than in LOL. The dynamic gaitpettern in both conditions were examined with a force plate. In LOS, subjects kicked the force plate more strongly to walk forward than in LOL. The gate pattern in LOS could keep similar to the cordinary gait pattern. In LOL, subjects walked with gliding steps. The tension of shoulder strap and the force loaded on the lumbosacral area in LOS were lower than in LOL.

It follows trom what has been said that a seita was well-fitted to the body to carry

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a heavy load, and that the fitting method i.e. to support a load on sacrum with a seita was rational physiologically and dynamically.

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