九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
マイクロ波による微小導電性粒子検出に関する研究
池田, 誠人
https://doi.org/10.15017/1398403
出版情報:Kyushu University, 2013, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:Fulltext available.
氏 名:池田 誠人
論文題名:マイクロ波による微小導電性粒子検出に関する研究
区 分:甲
論 文 内 容 の 要 旨
工業製品の微細化、高機能化により使用される材料中の異物の影響が大きくなってきた。なか でも配線ピッチや材料の膜厚が数十mオーダーとなってきた電子材料では顕著である。異物の 中でも、特に金属をはじめとする導電性粒子は、0.1mmを下回る大きさでもその導電性や経時変 化による劣化や変色など、次工程における収率悪化や製品の使用中に影響が現れる可能性も指摘 されている。現在工業的に使われている金属検知技術は電磁誘導やX線を用いたものであるが、
検出下限がそれぞれ1mm、0.3mmである。本研究ではこのギャップを埋めるべく、マイクロ波空 洞共振器(以下キャビティと呼ぶ)にスリットを設けて被検体であるクロスやフィルムを通過さ せて、その共振周波数の変化により粒子の存在を検出する方法を利用したセンサにより、50m の金属粒子の検出が可能であることを明らかにし、工業用の検出器として使用するためのポテン シャルを持つこと、更にこれらの応用上の課題を挙げ、その解決策を示すことで実用化の目処を つけた。
原理そのものは、Slaterの摂動に関する法則として古くから知られているが、これまで粒子検 出には用いられて来なかったのは、数mmの長さまでは実用的に検出可能であったがこれ以下の 検出はその周波数変化が小さく実用的とは考えられていなかったためである。本研究では、まず
Slaterの摂動に関する法則を元に、キャビティの大きさ、粒子の大きさと共振周波数のシフト量
の関係を解析的に求めた。シフト量は粒子の体積に比例し、シフト量と共振周波数の比は粒子の 体積とキャビティの体積の比と等しいことを示した。なお、本研究ではキャビティは50mmの幅 のフィルムを測定するために70mmのスリットを設けたWRJ-10導波管を用いて90mmの長さと して用いた。
次に、このようにキャビティと異物の寸法比が10-7~10-6であるような対象が同時に存在する モデルにおいて数値演算によるシミュレーションが有効であるかどうかの確認を行った。共振周 波数のシフト量と共振周波数の比は粒子の体積とキャビティの体積の比に等しく、これらの数値 演算の結果はSlaterの摂動に関する法則から導いた結果と一致した。またキャビティ内部の感度 分布の検討に用いるため、有限要素法に基づいてキャビティ内部の電界強度分布を計算した。そ の結果、被検体の幅方向に共振モード毎の定在波の腹と節に相当する感度分布があるが、通過方
向には電界強度が一定であり、通過時の時系列信号は単発の矩形波となることを示した。
本研究で提案した検出方法は、このキャビティのS21と呼ばれる透過特性を測定しこの時系列 信号から検出するもので、検出可否の評価はそのS/N比によって行った。S21はSパラメーターと 呼ばれる高周波回路の特性の表現方法の1つで、ネットワークアナライザーにより連続的に測定 することができる。周波数安定度
1 10
7のネットワークアナライザーによって粒子通過時のS21を測定し矩形波状の変化が得られることを確認した。シミュレーションの検証として、100m近 辺の粒子と500m近辺の粒子の共振周波数シフト量を実測し、これに温度補正を行った結果とシ ミュレーション結果を比較することにより、+30~-20kHzのばらつきは残るものの、よく一致す ることを示した。
次に提案した方式による導電性粒子の検知性能を確認し、その性能を装置として実現するため の方法を考案し実証した。45~500mのステンレス粒子を直径90mのナイロン単糸に固定して 作成した模擬サンプルを用いて、50mの粒子でS/N比として2が得られることを確認した。ま たこの矩形波状の信号を自動的に検出するために、その形状から2種類のフィルターを考案した。
その出力信号の強度のレベルと時間幅の2つのパラメーターに閾値を設定することにより、自動 検出が可能となることを、47mと106mの2つサイズの粒子検出実験により実証した。
さらに、この方法を実用化するための検出性能以外の課題について対応方法を示した。被検体 幅方向には共振モードに応じた定在波にあわせた感度分布が存在するが、この感度分布に関して 2つの共振点(モード)を用いて重ねあわせると、幅50mmにわたって感度0の部分がなくなる ことをTE105とTE106を用いた実データで示した。次に被検体を導入するために2分割キャビティ を検討し、締結を十分な力で行えば性能低下なしに導入を簡便化することができることを明らか にした。最後に被検体幅方向の位置同定について、2つのキャビティを非平行に設置し検出時間 差から位置を計算する方法と、その範囲内に複数の粒子が入った場合に3本以上のキャビティを 設置する方法を示した。
最後に本論文の総括を行い、本研究を通じて得られた主要な結果と将来の展望について述べた。