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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

コウコウカンソウショウカンジャニオケルコウコウ ナイビセイブツソウノヘンカトコウコウシッカント ノカンレンセイニツイテノケンキュウ

篠崎, 昌一

Faculty of Dental Science, Kyushu University

https://doi.org/10.15017/18402

出版情報:Kyushu University, 2009, 博士(歯学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

口腔乾燥症患者における

口腔内微生物叢の変化と口腔疾患との関連性についての研究

A study on Association between

Oral Microbial Flora and Oral Diseases in Patients with Xerostomia

2010 年

九州大学大学院歯学府

口腔顎顔面病態学講座顎顔面腫瘍制御学分野 篠崎 昌一

指導教員

九州大学大学院歯学研究院

口腔顎顔面病態学講座顎顔面腫瘍制御学分野

中村 誠司 教授

(3)

本研究の一部は下記の学術雑誌に投稿中である。

Close Association between Oral Candida Species and Oral Candidiasis in Patients with Xrostomia

SHINOZAKI SHOICHI, JUN-NOSUKE HAYASHIDA, MASAFUMI MORIYAMA, MINAMI SAKAE, AKIHIKO TANAKA, TAKASHI MAEHARA, and SEIJI NAKAMURA

Submitted to Oral Diseases

(4)

略語表

CFU: colony forming unit (コロニー形成数) C. albicans: Candida albicans

C. glabrata: Candida glabrata C. krusei: Candida krusei C. tropicalis: Candida tropicalis D: decayed teeth (齲蝕未処置歯) F: filled teeth (処置歯)

M: missing teeth extracted because of caries (喪失歯)

RFLP: restriction fragment length polymorphism (制限酵素断片長多型) SS: Sjögren’s syndrome (シェーグレン症候群)

SWS: stimulated whole salivary flow rate (刺激時唾液分泌量) T-RF: terminal restriction fragment (末端 DNA 断片)

T-RFLP: terminal restriction fragment length polymorphism (末端蛍光修飾制限酵 素断片多型性)

UWS: unstimulated whole salivary flow rate (安静時唾液分泌量

)

XND: xerostomia associated with neurogenic or neuropsychiatric disorders and drugs (神経性・薬物性口腔乾燥症)

(5)

目 次

要旨 緒言 材料と方法 結果

1. 臨床症状の検討

2. 口腔内真菌叢の解析

3. 口腔カンジダ症の重症度と唾液分泌量および Candida 菌数

との関連

4. 口腔カンジダ症の重症度と Candida 菌種との関連

5. 病変局所に存在する Candida 菌種の同定

6. 口腔内細菌叢に関する検討

考察 謝辞 参考文献

1 3

31 10

30 25 6

12

15

18

20

22

(6)

要 旨

口腔乾燥症の患者では唾液の減少により、様々な口腔粘膜疾患および歯性疾 患が生じるが、原因として口腔内微生物叢の変化が考えられる。

口腔粘膜疾患では口腔カンジダ症が多い。その原因菌である Candida 菌の検 出に関する報告は散見されるが、口腔カンジダ症と Candida 菌種との関連につ いての報告は少ない。そこで本研究ではまず第 1 に、口腔乾燥症患者における 口腔カンジダ症と Candida 菌種との関連をみるために、唾液分泌量と Candida 菌数との関係、さらには発症部位と Candida 菌種との関係を検討した。また、

歯 性 疾 患 で あ る 齲 蝕 や 歯 周 疾 患 が 増 加 す る こ と も 多 い 。 原 因 菌 と し て は Streptococcus mutansLactobacillusActinomyces などが挙げられるが、口腔乾燥 症患者の口腔内細菌叢の解析についてはいまだに報告が少ない。そこで本研究 では第 2 に、口腔乾燥症患者における口腔内細菌叢の解析を行った。

以下に本研究で得られた結果をまとめた。

1. 口腔内真菌叢の検討

口腔乾燥症患者では口腔カンジダ症が高頻度で発症しており、検出された

Candida 菌数および菌種が健常者と比較すると多かった。次に唾液分泌量と

Candida 菌数の相関を検討すると、唾液分泌量が減少すると Candida 菌数が増

加するという傾向がみられた。さらに、口腔カンジダ症の重症度を発症範囲で 分類し、その重症度と唾液分泌量および Candida 菌数との関連を検討すると、

(7)

口腔カンジダ症が重症化した場合に唾液分泌量が減少し、重症化した症例では

Candida 菌が増加するという傾向がみられた。また、全ての患者から C. albicans

が検出されたが、non-C. albicans は口腔カンジダ症が重症化した場合にその検出 頻度が高くなった。口腔カンジダ症の病変局所に存在する Candida 菌種の同定 を行うと、舌粘膜からは C. albicans、口角部からは C. glabrata、頬粘膜からは C.

krusei が高頻度に同定された。

2. 口腔内細菌叢の検討

口腔乾燥症患者では残存歯数が有意に減少し、齲蝕処置歯は有意に増加し、

また義歯の装着率が高かった。口腔内細菌叢の検討を行うと、口腔乾燥症患者 では、Rothia 属や Actinomyces 属が含まれている分子量 51955 M の末端 DNA 断片と、Selenomonas 属や Veillonella 属などが含まれている分子量 66826 M の

末端 DNA 断片のピーク面積の割合が有意に高かった。

本研究の結果から、口腔乾燥症患者においては、唾液の減少により口腔内微 生物叢が変化し、種々の口腔疾患が惹起されている可能性が示唆された。特に、

口腔乾燥症患者の口腔カンジダ症においては、病変の部位で増加する Candida 菌種が異なっている可能性が示唆された。

(8)

緒 言

口腔乾燥症は唾液分泌量の低下あるいは唾液の蒸発により生じ、様々な口腔 症状を呈する。口腔乾燥症の原因としては、唾液腺の器質的変化によるもの、

薬物性、神経性によるもの、および全身性によるものが考えられる。唾液腺自 体の機能障害によるものとしては、シェ-グレン症候群 (SS) が代表的であるが、

放射線治療や老人性変化によるものも臨床的には重要である。神経性・薬物性 によるものでは、うつ病、ストレスなどの疾患や抗不安薬、抗うつ薬、降圧薬 などの薬剤によるものが多く、中枢性および顔面神経上唾液核などの唾液分泌 神経系の抑制が原因とされている。全身性または代謝性のものでは、糖尿病、

腎障害、貧血などが主な原因であるが、口呼吸、過呼吸、開口、摂食嚥下障害 などに伴う局所的な水分蒸発によるものも含まれる (1-5)。

唾液には多くの抗菌ペプチドやタンパク質が含まれており、主に外来性の病 原微生物の侵入を防御しているが、複数の抗菌ペプチドが協調して作用し、病 原微生物を含む口腔内微生物叢全体にも影響を及ぼす。また、口腔の感染防御 機構としては、重層扁平上皮細胞からなる粘膜組織そのものが微生物の侵入を 防ぐ防御壁となるが、唾液は口腔粘膜面を保護する被覆剤としてはたらき、物 理的な洗浄・希釈効果による感染防御、そして殺菌・静菌作用を持つことが報 告されている (6)。唾液に含まれる分泌型 IgA、リゾチーム、ペロキシターゼな どは、齲蝕原性細菌である Streptococcus mutans の定着と増殖を抑制し、齲蝕の 発生を抑制しているといわれている。唾液タンパクであるスタセリンとプロリ

(9)

ンリッチプロテインは、初期齲蝕の再石灰化を助ける働きがあり、齲蝕の進行 を阻止する役目を果たしている (6-8)。しかし、口腔乾燥症患者では唾液分泌量 の減少によってこれらの成分が減少し、口腔内微生物叢が変化して舌炎や口角 炎などの口腔粘膜疾患および齲蝕や歯周疾患などの歯性疾患が惹起されている と推察される。

口腔乾燥症患者にみられる口腔粘膜疾患では、舌乳頭萎縮、口角炎、および 頬粘膜萎縮が多いが、その原因は Candida 菌が関与しているといわれている

(9)。通常、Candida 菌はヒトの口腔、腸管、皮膚などに常在し、生体防御機能

や免疫能が低下した患者や高齢者においてその病原性を発揮し、いわゆる日和 見感染の原因となることが知られている (10)。カンジダ症の全身的な発症誘因 としては、副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬、抗癌薬、広域抗菌薬、避妊用 ピルなどの服用があり (11)、口腔領域における局所的な発症誘因では、唾液の 減少や義歯装着などの歯科的なものが考えられる。口腔カンジダ症の原因菌と しては、C. albicans の検出に関する報告が多く (12-18)、C. glabrata C.

tropicalis などの non-C. albicans が検出されたという報告は少ない (19, 20)。そ こで、本研究では口腔粘膜症状の発症における Candida 菌の関与を明らかにす ることを第一の目的とし、まず口腔乾燥症患者における口腔内真菌叢の解析を 行い、唾液分泌量、口腔カンジダ症の発症、Candida 菌数および菌種との相互 関連を検討した。次に、口腔乾燥症患者の口腔カンジダ症を重症度で分類し、

その重症度と唾液分泌量、Candida 菌数および菌種との関連を検討した。最後 に、口腔カンジダ症の各病変局所に存在する Candida 菌種の同定を行った。

(10)

る (21)。 そ の メ カ ニ ズ ム は 、 唾 液 量 の 低 下 に よ り そ れ ら の 原 因 菌 で あ る Streptococcus mutans (エナメル質齲蝕原因菌)、Lactobacillus (根面齲蝕原因菌)、

Actinomyces (象牙質齲蝕) などが増加し、齲蝕や歯周病を惹起していることが推

察される。しかし、従来の培養による細菌叢の解析方法では多くの時間を要し、

さらに口腔内には培養が困難で検出不可能な菌種も存在するなどの問題点が多 かった。そこで本研究では、口腔乾燥症患者における口腔内細菌叢の変化の有 無を明らかにすることを第二の目的とし、培養を必要とせずに迅速・簡便に解 析できる末端蛍光修飾制限酵素断片多型性 (T-RFLP) 法 (22) を用いて口腔乾 燥症患者の口腔内細菌叢の解析を行った。

(11)

材料と方法

1. 対象患者

対象は、2006 年から 2009 年に九州大学病院顎顔面口腔外科を受診し、本研 究に対して同意が得られた口腔乾燥症患者 48 例とした。口腔乾燥症患者の内

訳は、1999 年に改訂された厚生省シェーグレン症候群診断基準 (23) およびヨ

ーロッパの診断基準 (24) の両方で SS と診断された患者 34 例 (男性 1 名、

女性 33 名、平均年齢: 59.1 ± 5.2 歳) と、口腔乾燥症 (ドライマウス) の分類案

(25) に基づいて診断された神経性・薬物性口腔乾燥症 (XND) 患者 14 例 (男性

1 名、女性 13 名、平均年齢: 53.9 ± 8.8 歳) であった。XND 患者は、睡眠導入 薬の内服が 9 例、抗うつ薬の内服が 3 例、降圧薬の内服が 4 例 (重複あり)、 心療内科等でうつ病の診断があるものの内服薬のない 3 例であり、神経性、薬 物性、あるいはその両方による XND と診断された。対照群は、口腔乾燥の訴 えがなく、かつ口腔乾燥を生じるとされる全身疾患の既往や薬物服用がない健 常者 15 例 (男性 2 名、女性 13 名、平均年齢: 53.9 ± 8.8 歳) であった。

2. 口腔内診査

口腔内診査として、舌乳頭萎縮、口角びらん、頬粘膜萎縮などの口腔カンジ ダ症の発症の有無、残存歯数、齲蝕経験の状態 (齲蝕未処置歯: D、喪失歯: M、 処置歯: F)、義歯使用の有無を検索した。

(12)

3. 検体の採取方法

擦過物は口腔カンジダ症患者の病変局所 (舌粘膜、口角部、頬粘膜) を滅菌綿 棒にて擦過し採取した。擦過物の採取後、含嗽液の採取を行った。含嗽液は、

椅子に座った状態で滅菌純水 (10 ml) を口腔内に含み 30 秒間含嗽後、滅菌し たファルコンチューブに全て吐き出して採取し、-80℃ にて保存した (26-28)。 唾液分泌量測定は、擦過物と含嗽液の採取後に行った。

4. 唾液分泌量測定

刺激時唾液分泌量 (SWS) の測定にはガムテスト (23) とサクソンテスト

(29) を、安静時唾液分泌量 (UWS) の測定には吐唾法を行った。ガムテストは、

水で口腔内を軽くすすいだ後、ガムを 10 分間噛み、その間に分泌される唾液 を容器に採取してその容量を測定し、10 分間で 10 ml 以下であれば「減少」と 判断した。サクソンテストは、サージョン®タイプ Ⅳ (ハクゾウメディカルテク ノス社、日本) を毎秒 1 回の頻度で 2 分間口腔内で噛み、ガーゼの重量の増加 を測定した後、2 分間で 2 g 以下であれば「減少」と判断した。吐唾法は、椅 子に座ってかつ作業等を行っていない状態で、安静時に分泌された唾液を容器 に吐き出してその容量を測定し、15 分間で 1.5 ml 以下であれば「減少」と判 断した (30-32)。

5. 制限酵素断片長多型 (RFLP) 法による口腔内真菌叢の解析

擦過物と含嗽液を CHROMager Candida®培地 (関東化学) に塗布し、37℃ の 好気性条件下にて48 時間培養し、コロニー形成数 (CFU) を算出した。菌種を

(13)

同定する時には、CHROMager Candida®培地よりコロニーを採取し、真菌のゲノ

ム DNA を抽出した。DNA の抽出は、500 mlのチューブに Candida 菌のコロ

ニーを採取し、b-lysis (10 mM Tris-HCl、1 mM EDTA、1% sodium dodecyl sulfate、

pH 8.0)、ジルコニアビーズ、タングステンビーズを加え、90℃、10 分間加熱し

て3 分間撹拌後、200 ml の 1% SDSを加え、90℃、10 分間加熱した。その後、

400 ml のフェノール・クロロホルムを加え 4℃、15,000 rpm で 3 分間遠心した

後に DNA を含む水層を採取し、これに 100% エタノールを加え 5 分間静置

した。さらに 4℃、15,000 rpm で 10 分間遠心し、上清の除去後に得られた DNA ペレットを 70% エタノールで洗浄後乾燥させ、100 ml の TE-buffer (10 mM

Tris-HCl 1 mM EDTA, pH8.0) に溶解した。真菌特有の DNA 配列を、プライマ

ー ITS-1 (5’-TCCGTAG GTGAACCTGCGG -3’)、ITS-4 (5’–TCCTCCGCTTATTGA TATGC-3’) を用いてpolymerase chain reaction (PCR) 法で増幅した。PCR は 94℃、4 分間変性後、94℃、1 分間、58℃、2 分間、72℃、1.5 分間を 35 サイ クル繰り返した。その後制限酵素 (MspI) にて PCR 増幅産物を切断し、2% ア ガロースゲルで電気泳動し、UV 照射下にて観察した (33)。

6. 口腔カンジダ症の重症度分類

口腔カンジダ症の重症度をその発症範囲で 3 段階に分類した。口腔カンジダ 症は舌、口角、頬粘膜の 3 部位にみられたため、その中の 1 部位に発症をし

たものを Class I、2 部位に発症をしたものを Class II、全部位に発症したものを

Class III と分類した。

(14)

7. 末端蛍光修飾制限酵素断片多型性 (T-RFLP) 法による口腔内細菌叢の解析 含嗽液 1.5 mlを 4℃、15,000 rpm で 15 分間遠心した後に上精を除去後、沈

殿物から DNA の抽出を行った。DAN の抽出後、細菌特有の 16SrRNA をコー

ドする遺伝子をプライマー 8F_FAM (5’-[6-FAM]AGAGTTTGATYMTGGCTCA G-3’)、806R_HEX (5’-[5HEX]GGACTACCRGGGTATCTAA-3’) を用いて増幅した。

PCR は 94℃、4 分間変性後、94℃、1 分間、58℃、2 分間、72℃、1.5 分間を 35 サイクル繰り返した。その後制限酵素 (HaeIII) にて PCR 増幅産物を切断し、

末端 DNA 断片 (T-RF) の検出率を解析した (22)。

8. 統計学的評価

2 群の比較は unpaired Student’s t test、Fisher’s test、Mann-Whitney U testを用 いて行った。相関関係の解析は Pearson’s correlation coefficients、さらに有意な相 関がみられた場合、直線回帰分析を用いて行った。3 群以上の比較には Kruskal -Wallis test、多重比較検定として Tukey’s test を用いて行った。p < 0.05 を有意 差ありとした。

9. 倫理委員会承認

本研究は、九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会の承認を得たうえ で実施した。

(15)

結 果

1. 臨床症状の検討

両群間で、有意な年齢差は認めなかった。口腔乾燥症患者では、SWS と UWS がともに減少し (Student’s t test、p < 0.01、表1)、口腔カンジダ症 (舌乳頭萎縮、

口角びらん、頬粘膜萎縮) の発症頻度が有意に高かった (Fisher’s test、p < 0.01、 表 1)。また、残存歯数は有意に減少しており (Student’s t test、p < 0.01、表 1)、 それに併せてDMF 歯数は有意に増加し (Student’s t test、p < 0.01、表 1)、さら に義歯装着頻度が有意に高かった (Fisher’s test、p < 0.01、表 1)。

(16)
(17)

2. 口腔内真菌叢の解析

採取した含嗽液より Candida 菌の検出を行うと、口腔乾燥症患者における Canndida 菌の検出率は 68.8% (33/48 例) で、健常者の 13.3% (2/15 例) と比較 して有意に高かった (Fisher’s test、p < 0.01、表 2)。口腔乾燥症患者における Candida 菌数は平均 246.3 ± 248.0 /ml で、健常者の平均 15.2 ± 22.3 /ml と比較 して有意に多かった (Student’s t testp < 0.01、表 2)。含嗽液から検出された Candida 菌は C. albicans の検出率が最も高く、口腔乾燥症患者では 64.5%

(31/48 例)、健常者では 13.3% (2/15 例) から検出された。次に検出率が高かっ たのは C. glabrata 35.4% (17/48 例) で、以下、C. tropicalis が 12.5% (6/48 例)、 C. krusei が 4.1% (2/48 例) であったが (重複検出対象を含む)、これらの Candida 菌種は健常者では検出されなかった (表 2)。

さらに、Candida 菌が検出された症例において、唾液分泌量と Candida 菌数 の 関 連 を 検 討 す る と 、 ガ ム テ ス ト と Candida 菌 数 (Pearson’s correlation coefficients r = -0.58 p < 0.05、回帰直線 y = -28.078 x + 518.452、図 1)、サクソン テストと Candida 菌数 (Pearson’s correlation coefficients r = -0.51 p < 0.05、回帰直 線 y = -135.130 x + 483,198、図 1)、吐唾法と Candida 菌数 (Pearson’s correlation coefficients r = -0.49 p < 0.05、回帰直線 y = -291.517x + 511.696、図 1) のいずれ も負の相関を示した。

(18)
(19)
(20)

3. 口腔カンジダ症の重症度と唾液分泌量および Candida 菌数との関連

口腔カンジダ症を重症度で分類すると、Class I は13 例、Class II は 14 例、

Class III は 6 例であった。 Class I の 13 例は、舌乳頭萎縮を認める 12 例と、

口角びらんを認める 1 例であり、Class II の 14 例では、舌乳頭萎縮と口角び らんを認める 14 例 のみで、その他の組み合わせは認めなかった。そこで、口 腔カンジダ症の重症度と唾液分泌量および Candida 菌数 との関連を検討する と、口腔カンジダ症が重症化した場合にガムテスト (Tukey’s test、* p < 0.01、図 2)、サクソンテスト (Tukey’s test、* p < 0.01、図 2)、吐唾法 (Tukey’s test、* p <

0.01、図 2) のいずれもが減少し、Candida 菌数は有意に増加していた (Tukey’s test、* p < 0.01、図 3)。

(21)
(22)
(23)

4. 口腔カンジダ症の重症度と Candida 菌種との関連

口腔カンジダ症を重症度で分類した 33 例 (Class I: 13 例、Class II: 14 例、

Class III: 6 例) の含嗽液から検出した菌種は、Class I では C. albicans が 92.3%

(12/13 例)、C. glabrata が 9.1% (1/13 例) であった。一方、Class II では、C.

albicans が 92.8% (13/14 例)、C. glabrata が 75.8% (11/14 例)、C. tropicalis が 21.4% (3/14 例)、C. krusei が 7.1% (1/14 例) であり、Class III では、C. albicans が 100.0% (6/6 例)、C. glabrata が 83.3% (5/6 例)、C. tropicalis が 50.0% (3/6 例)、C. krusei 16.7% (1/6 例)と、口腔カンジダ症が重症化した場合には同一患者 から複数の菌種が検出された (表3)。

(24)
(25)

5. 病変局所に存在する Candida 菌種の同定

滅菌綿棒で病変部から擦過物を採取できた 11 例 (Class I: 4 例、Class II: 4 例、

Class III: 3 例) を対象として検討を行った。病変部位の内訳は、Class I は舌乳 頭萎縮のみで、Class II は舌乳頭萎縮と口角びらんを、Class III は舌乳頭萎縮、

口角びらん、頬粘膜萎縮の全てを認めた。また、含嗽液から検出された CFU は、

Class I で平均 89.3 ± 41.3 /ml、Class II で平均 423.2 ± 121.1 /ml、Class III で平

均 597.5 ± 98.1 /ml であり、口腔カンジダ症の重症化に伴い、CFU が有意に増

加していた (Tukey’s test、p < 0.01、表 4)。また、含嗽液から検出された Candida 菌種は、Class I では C. albicans のみが、Class II では C. albicansC. glabrata が、

Class III では C. albicansC. glabrataC. tropicalisC. krusei が検出された。

次に、各病変局所の擦過物から Candida 菌種の同定を行うと、Class I の舌粘 膜から C. albicans が 100% (4/4 例) 同定されたのみで、症状を認めない口角と 頬粘膜の擦過物からは Candida 菌は同定されなかった。Class II の舌粘膜から は C. albicans が 75% (3/4 例)、C. glabrata が 25% (1/4 例) 同定され、口角部 からは C. albicans が 25% (1/4 例)、C. glabrata が 75% (3/4 例)同定されたが、

症状を認めない頬粘膜の擦過物からは Candida 菌は同定されなかった。Class III の舌粘膜から C. albicans が 100% (3/3 例)、C. glabrata が 33.3% (1/3 例)、口 角部からは C. glabrata が 100% (3/3 例)、C. tropicalis が 33.3% (1/3 例)、頬粘 膜からは C. glabrata が 33.3% (1/3 例)、C. krusei が 33.3% (1/3 例) 同定された。

(26)
(27)

6. 口腔内細菌叢に関する検討

図 4 に口腔乾燥症患者と健常者の含嗽液から得られた代表的な T-RFLP パ ターンを各 1 例ずつ示す。全体のピーク面積に対する各 T-RF のピーク面積の 割合を算出した。口腔乾燥症患者では、分子量 51955 M の T-RF (T-RF 51955) と分子量 66826 M の T-RF (T-RF 66826) のピーク面積の割合が、健常者と比較 して有意に高かった (Mann-Whitney U test、* p < 0.05、** p < 0.01、図 5)。一方、

分子量 64942 M の T-RF (T-RF 64942) のピーク面積の割合は、健常者と比較し て有意に低かった (Mann-Whitney U test、** p < 0.01、図 5)。また、分子量 96657 M の T-RF (T-RF 96657) や分子量 129828 M の T-RF (T-RF 129828) のピーク 面 積 の 割 合 は 、 口 腔 乾 燥 症 患 者 と 健 常 者 間 で 有 意 差 は み ら れ な か っ た (Mann-Whitney U test、N.S.、図 5)。

(28)
(29)
(30)

考 察

近年、口腔に対する意識の向上もあり、口腔乾燥を訴える患者が増加してい る。口腔乾燥症の原因としては、唾液腺自体の機能障害による SS や放射線性 口腔乾燥症、ストレス、抑うつといった精神状態や、抗うつ薬、制吐薬、抗ヒ スタミン薬、降圧薬などの薬物の副作用に起因する XND、下痢、脱水症、甲状 腺機能亢進症、糖尿病、腎機能不全、貧血などの合併症としてあらわれる全身 性・代謝性口腔乾燥症がある (1-5)。口腔乾燥症の自覚的症状としては、口渇、

飲水切望感、唾液の粘稠感、口腔粘膜や口唇の乾燥感や疼痛、味覚異常、嚥下 困難感などであり、他覚的症状としては舌乳頭の萎縮による平滑舌や溝状舌、

口腔粘膜の発赤、口角びらん、齲蝕の多発、歯周病の憎悪、歯や義歯の汚染、

口臭などがある。

本研究ではまず、対象患者の口腔内診査を行うと、健常者と比較して口腔カ ンジダ症の発症頻度が有意に高く、残存歯数は有意に減少しており、DMF 歯数 は有意に多く、義歯使用率は有意に高かった。これは、唾液には微生物に対す る自己防御能、粘膜や硬組織に対する保護能などあるが、口腔乾燥症患者では 唾液分泌量の減少によってこれらの唾液機能が低下し、その結果口腔カンジダ 症や齲蝕などの口腔症状が惹起されたと考えられる。

本研究では次に、口腔乾燥症患者の粘膜症状で最も多くみられる口腔カンジ ダ症の病態を解明するために、口腔内真菌叢の解析を行った。口腔乾燥症患者 では、検出された Candida 菌数と菌種が健常者と比較すると有意に多かった。

(31)

このことは、口腔乾燥症患者において口腔カンジダ症の発症頻度が高いことに 反映されていると考えられた。口腔カンジダ症の発症要因として唾液分泌量の 減少が考えられたので、SWS および UWS と Candida 菌数との相関を検討す

ると、SWS と UWS が減少すると CFU が増加するという関連がみられた。つ

まり、口腔乾燥症患者における口腔カンジダ症の発症は、唾液分泌量が減少す

ることで Candida 菌数が増加して引き起こされていることが考えられた。臨床

的には、口腔乾燥症状が強い患者では、口腔の多部位にわたる口腔カンジダ症 を発症していることが多い。そこで、口腔カンジダ症の重症度を発症範囲に応 じて分類し、その重症度と唾液分泌量および Candida 菌数との関連をみること にした。結果をみてみると、口腔カンジダ症が重症化した場合には、SWS と UWS が減少し、また Candida 菌数の増加する関連がみられた。以上より、口 腔乾燥症患者では、唾液分泌量が減少し、Candida 菌数が増加することで口腔 カンジダ症が引き起こされ、さらに増菌することで口腔の多部位にわたる広範 な病変が惹起されると考えられた。

ところで、口腔カンジダ症の直接的な原因菌は C. albicans であるとの報告は あるものの (12-17)、それ以外の Candida 菌種の関与についてはいまだ報告が

少なく (19、20)、さらに臨床症状との関連について検討された報告は非常に少

ない。そこで本研究では、口腔カンジダ症の原因菌を検索するために、口腔内 真菌叢の解析を行うと、Class II および Class III といった重度の患者で、複数

Candida 菌種が検出された。このことより、これらの菌種が単独あるいは相

互的に作用することが、口腔カンジダ症の多様な病態形成に関与していること

(32)

て検討することにした。含嗽液から検出された Candida 菌種を検討すると、C.

albicans は全ての重症度から検出され、C. glabrataC. tropicalisC. krusei は Class II と Class III から高頻度に検出されたが、Class I からは検出されなかっ た。この結果から、口腔カンジダ症の重症化、つまり多部位にわたる発症には、

特定の Candida 菌種が関与していることが示唆された。

しかし、含嗽液を用いた検討では口腔内全ての Candida 菌が同時に検出され るため、口腔内真菌叢のスクリーニングは可能ではあるが、口腔カンジダ症の 発症局所に存在する Candida 菌種の同定は困難である。そこで、口腔カンジダ 症の各病変局所から滅菌綿棒を用いて擦過物を採取し、病変に直接関わってい ると考えられる Candida 菌の同定を行った。その結果、舌粘膜からは C.

albicans が、口角部からは C. glabrata の同定率が高く、また頬粘膜からは唯一

C. krusei が同定された。この結果より、口腔カンジダ症は部位によって異なる

Candida 菌種により惹起されることが示された。しかし、改めて口腔カンジダ

症を認めた 33 例の含嗽液での結果をみてみると、口角びらんが認められなか った 1 例で C. glabrata が検出され、頬粘膜萎縮が認められなかった 4 例で C.

tropicalis C. krusei が検出されていた。また、各病変部の擦過物から同定され

Candida 菌種は、同一患者の含嗽液からも検出されていた。これらの症例で

は口角びらんあるいは頬粘膜萎縮がみられていないものの、これらの部位にも 口腔カンジダ症が発症する可能性がある。今後は、擦過物と含嗽液の両方から 同定された Candida 菌種をさらに比較検討していくことで、それぞれの検体採 取方法の有用性について検討していく予定である。

次に、口腔乾燥症患者の口腔内細菌叢の解析を行った。T-RFLP 法による解析

(33)

の結果、口腔乾燥症患者では、T-RF 51955、T-RF 66826 のピーク面積の割合が 健常者と比較すると有意に高かった。T-RF 51955 には Rothia 属やActinomyces 属が含まれ (22)、Rothia 属は象牙質齲蝕から分離された通性嫌気性で、歯周病 との関連性についても論じられており、一方、Actinomyces 属は糸状の形状をし たグラム陽性の通性嫌気性菌であり、その一種である Actinomyces viscosus は根 面齲蝕や象牙質齲蝕の原因菌とされる。また、T-RF 66826 には Veillonella 属や Selenomonas 属が含まれている (22)。Veillonella 属は偏性嫌気性菌で、単球や双 球菌状で菌塊を形成するが病原性をほとんど示さず、一方 Selenomonas 属は、

歯周病と関連がある菌種とされている。これらの結果より、口腔乾燥症患者で は唾液分泌量の低下により、口腔内細菌叢が変化したと考えられる。しかし、

同一の分子量の T-RF には複数の細菌が含まれるため、齲触や歯周病の原因菌 が存在しているということは現時点では証明できていない。そのため、今後は 各細菌に特異的な遺伝子配列を用いたプローブを用いて同定するといったさら なる検討を行う必要がある (34-36)。また本研究では、含嗽液から検出された細 菌のみを検討しているため、各歯性疾患に特徴的な細菌種を明らかにするには 不十分である。今後は、病変局所であるプラークや歯肉溝浸出液などから検体 を採取し、疾患特異的な細菌の同定を行い、含嗽液から検出される細菌との比 較検討を行う予定である。

本研究の結果から、口腔乾燥症患者においては、唾液分泌量の低下により口 腔内微生物叢が変化し、種々の口腔粘膜疾患や歯科疾患が惹起されている可能 性が示唆された。特に、口腔乾燥症患者の口腔カンジダ症においては、病変特

(34)

かし、今後もさらなる検索を口腔乾燥症の患者で行っていかなければならない。

さらに、本研究で用いた検体は、その採取方法が容易でかつ非侵襲性であるな ど利点も多く、同一患者において、口腔内微生物叢を繰り返し同定することが 可能である。今後は、口腔疾患の原因菌の同定精度をさらに向上させるなど実 用化を目指し、最終的には患者単位の治療計画の立案や治療効果の判定に有用 な検査方法として確立していく予定である。

(35)

謝 辞

稿を終えるにあたり、御懇篤なる御指導を頂きました中村誠司教授、山下喜 久教授ならびに安部喜八郎准教授に深甚なる謝意を表します。また直接御指導 頂きました竹下徹助教、林田淳之將助教、森山雅文先生に深謝致します。また、

常に励ましの言葉を頂きました九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講 座顎顔面腫瘍制御学分野、口腔保健推進学講座口腔予防科学分野ならびに全身 管理歯科学講座全身管理歯科学分野の皆様に深く感謝致します。

(36)

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