Science Journal of Kanagawa University 30 : 103-110 (2019)
©Research Institute for Integrated Science, Kanagawa University
■教育論文■
序論
物理学の歴史の中で、光は波か粒子かという議論 は、中世ヨーロッパを中心に活発に行われた。17 世 紀 後 半、C. Huygensは 光 の 伝 搬、 反 射・ 屈 折 現象などを波動的性質により幾何学的に説明し、
「Treatise in light」 を 著 し た。 一 方、 同 時 代 にI.
Newtonは、著書「Philosophiæ Naturalis Principia Mathematica (PRINCIPIA)」および「A Treatise of the Reflexions, Refractions, Inflexions and Colours of Light (OPTIKS)」の中で、光の持つ様々な物理的 性質を粒子的側面から説明した。それから100年も の間、ヨーロッパを中心に光に関する様々な実験が 行われたが、当時は粒子説が有力であったようであ る。しかし19世紀初頭のT. Youngによる二重スリッ トを用いた光の干渉実験により、光が波動的性質を 持つことが確認され、A.-J. FresnelやG. Kirchhoff らによる理論的な説明がなされると波動説が優勢と なった。1865年には、J. Maxwellにより光が電磁波 の一種であることが一般的に示され、「A dynamical theory of the electromagnetic field」と題された論文
の中でMaxwell方程式として美しくまとめられた。
ところが19世紀後半から20世紀初頭、光電効果や
Compton効果に代表される光の粒子性に起因する物
理的現象が相次いで発見された。当時、量子論の勃 興とともに、光の持つ本質に関して様々な検証実験 がなされた。1905年、A. Einsteinが光量子仮説に 基づく光電効果の説明により光の粒子性が確かめら れ、ノーベル物理学賞を受賞したことは有名である。
ところがその直後にはM. Laueにより、X線が結晶 により回折を起こすこと(波動性)が発見され、結 晶構造解析への応用の端緒となった。
このように、当時数百年にわたり様々な実験が行 われ、光が粒子性と波動性いずれの性質も兼ね備え た二面的存在であることが明らかとなり、現在では
「量子」と考えるに至っている。更にそれまで粒子と して考えられていた電子も波動的性質と粒子的性質 を合わせ持つことが1920年代に発見され、この二 面性はすべての物質にとって普遍的な性質であるこ とがわかっている。そしてこれらの波動的・粒子的 Abstract: I introduce some experimental topics regarding diffraction and interference of light penetrating a single and double slit. The physics of diffraction and interference can be explained by the superposition of waves in direct space with a slight phase difference, which is an important concept in the field of not only applied physics but also condensed matter physics and cosmology. In the Faculty of Science, Kanagawa University, subjects on wave physics are systematically taught to first-year to third-year students in the class of experimental physics.
I show some examples of Fraunhofer diffraction of light by a single and double slit, covered in the Experimental Physics 1, and finally expand to Fresnel diffraction as an advanced subject.
Keywords: diffraction, interference, wave packet, fraunhoher diffraction, fresnel diffraction, coherence
物理学実験1における光の回折・干渉実験の実践例と応用
星野 靖
1, 2, 3Practical Examples and Applications for Diffraction and Interference of Lights in Experimental Physics 1
Yasushi Hoshino
1, 2, 31 Department of Mathematics and Physics, Faculty of Science, Kanagawa University, Hiratsuka City, Kanagawa 259-1293, Japan
2 Research Institute for Integral Science, Kanagawa University, Hiratsuka City, Kanagawa 259-1293, Japan
3 To whom correspondence should be addressed. E-mail: [email protected]
104 Science Journal of Kanagawa University Vol. 30, 2019
テーマを設定している。ここで扱う平面波の回折・
干渉の原理は非常に単純であり、スリットや原子に よる回折で少し位相(光路差)の異なる波同士の重 ね合わせによりすべて説明できる。これら一連の実 験は、物理を学ぶ学生には教育的かつ実学的テーマ であると考える。
まず波の回折干渉に関して、基礎的な考え方につ いて触れよう。上記のように波の干渉による強度分 布は、次式に示すようにわずかに位相の異なる複数 の波同士の重ね合わせにより生じる。
見され、この二面性はすべての物質にとって普遍 的な性質であることがわかっている。そしてこれ らの波動的・粒子的性質は、今日様々な研究・開 発分野において広く応用されていることは周知の ことであろう。このような背景の中、光や物質の 波動性や粒子性に関して理解を深めることは、実 験物理分野のみならず物性理論、ひいては物理教 育の観点からも非常に有意義と考える。
神奈川大学理学部の物理学学生実験においては、
光の波動性に関連する様々な実験テーマが用意さ れ、学生が実体験として系統的に学修できるよう 工夫されている。まず1年次の基礎物理学実験法
では、「Newton Ring」を用いた光の干渉実験を
行い、光の波動性に関して理解を深めると同時に、
計測と誤差について考えるテーマが扱われる。2 年次の物理学実験1では、波長の異なる半導体 レーザ(赤・緑・青)から発せられたコヒーレント 単色光を用いた「Youngの回折・干渉実験」を行 い、スクリーン上に現れた縞間隔と二重スリット 間隔との関係を調べる。スリットとスクリーンと の幾何学的配置により干渉縞の現れ方は単純な関 係で記述でき、実験結果と理論予測を比較するこ とにより、光の波動的性質を深く理解できるテー マである。3 年次の物理学実験2では、光の波動
的性質として重要な「偏光と複屈折」と「X線回 折による結晶構造解析」を行う2つの実践的な テーマを設定している。ここで扱う平面波の回 折・干渉の原理は非常に単純であり、スリットや 原子による回折で少し位相(光路差)の異なる波同 士の重ね合わせによりすべて説明できる。これら 一連の実験は、物理を学ぶ学生には教育的かつ実 学的テーマであると考える。
まず波の回折干渉に関して、基礎的な考え方に ついて触れよう。上記のように波の干渉による強 度分布は、次式に示すようにわずかに位相の異な る複数の波同士の重ね合わせにより生じる。
𝛹𝛹�𝑥𝑥� � � ��s��𝑘𝑘�� �� � 1�𝛿𝛿𝑘𝑘�𝑥𝑥�
�
���
∝ sin �𝑁𝑁𝛿𝛿𝑘𝑘 𝑁 𝑥𝑥2 � sin 𝛿𝛿𝑘𝑘 𝑁 𝑥𝑥2
�1�
δ𝑘𝑘 𝑘 Δ𝑘𝑘 𝑁𝑁 � 1 �
𝑘𝑘�� 𝑘𝑘�
𝑁𝑁 � 1 �2�
例として、�𝑘𝑘�, 𝑘𝑘��=[17, 19] の間で𝑁𝑁 � 1 分割 した𝑁𝑁個の正弦波を重ね合わせた計算結果を図 1 に示す。例えば 𝑁𝑁 � 2の場合、合成波は2つの正 弦波の和、
𝛹𝛹 � ��s�𝑘𝑘�𝑥𝑥� � ��s � 𝑘𝑘�𝑥𝑥�
� 2 ��s �𝑘𝑘�� 𝑘𝑘�
2 𝑥𝑥� ��s �𝑘𝑘�� 𝑘𝑘�
2 𝑥𝑥� ���
となり、いわゆる2���𝑘𝑘�� 𝑘𝑘�� 間隔の「うなり」
が観測される。さらに𝑁𝑁個の正弦波の重ね合わせ によって、波の局在化が起こり2��𝑁𝑁 � 1���𝑘𝑘�� 𝑘𝑘��間隔で波束が形成されることが分かる。これは 数学で言えば、次式(4)で示すように散乱体形状
��𝑥𝑥, 𝑥𝑥� (ここではスリットや結晶構造)を Fourier
変換したものであり、物理的に表現すればスリッ
ト��𝑥𝑥, 𝑥𝑥�による波の回折・干渉現象そのものであ
る。
𝛹𝛹�𝑋𝑋, 𝑋𝑋� � � ��𝑥𝑥, 𝑥𝑥� exp���𝑘𝑘𝑟𝑟��𝑥𝑥�𝑥𝑥 ���
�
��
𝑟𝑟 � ��𝑋𝑋 � 𝑥𝑥��� �𝑋𝑋 � 𝑥𝑥��� � ���
つまり、スリット通過後の経路長𝑟𝑟の差(位相差)が 異なる複数の波の重ね合わせにより、距離Lに置 かれたスクリーン上の点�𝑋𝑋, 𝑋𝑋, ��で波の干渉像
|𝛹𝛹�𝑋𝑋, 𝑋𝑋�|�が現れることが直感的に理解できる。
本稿では、主に物理学実験1で行っている単・
複スリットによる可視レーザ光の回折・干渉実験 の実践例についてやや発展的内容も含めて述べる が、難しい回折積分などの概念は使わず、初等的 な大学数学のみで理解できるよう配慮した。
図 1. 波数�𝑘𝑘�, 𝑘𝑘�� � �17, 19� �Δ𝑘𝑘 � 2�のバンド 幅を持つ𝑁𝑁 個の波の重ね合わせと波束の形成.
-10 -5 0 5 10
N=3 N=2
-10 -5 0 5 10
-10 -5 0 5 10 N=4
Amplitude
-10 -5 0 5
10N=5 2 /k
x
-30 -20 -10 0 10 20 30
-10 -5 0 5 10
x
N=10 2/k
例として、 の間でN-1分割し たN個の正弦波を重ね合わせた計算結果を図1に示 す。例えば N = 2 の場合、合成波は2つの正弦波の和、
見され、この二面性はすべての物質にとって普遍 的な性質であることがわかっている。そしてこれ らの波動的・粒子的性質は、今日様々な研究・開 発分野において広く応用されていることは周知の ことであろう。このような背景の中、光や物質の 波動性や粒子性に関して理解を深めることは、実 験物理分野のみならず物性理論、ひいては物理教 育の観点からも非常に有意義と考える。
神奈川大学理学部の物理学学生実験においては、
光の波動性に関連する様々な実験テーマが用意さ れ、学生が実体験として系統的に学修できるよう 工夫されている。まず1年次の基礎物理学実験法
では、「Newton Ring」を用いた光の干渉実験を
行い、光の波動性に関して理解を深めると同時に、
計測と誤差について考えるテーマが扱われる。2 年次の物理学実験1では、波長の異なる半導体 レーザ(赤・緑・青)から発せられたコヒーレント 単色光を用いた「Youngの回折・干渉実験」を行 い、スクリーン上に現れた縞間隔と二重スリット 間隔との関係を調べる。スリットとスクリーンと の幾何学的配置により干渉縞の現れ方は単純な関 係で記述でき、実験結果と理論予測を比較するこ とにより、光の波動的性質を深く理解できるテー マである。3 年次の物理学実験2では、光の波動
的性質として重要な「偏光と複屈折」と「X線回 折による結晶構造解析」を行う2つの実践的な テーマを設定している。ここで扱う平面波の回 折・干渉の原理は非常に単純であり、スリットや 原子による回折で少し位相(光路差)の異なる波同 士の重ね合わせによりすべて説明できる。これら 一連の実験は、物理を学ぶ学生には教育的かつ実 学的テーマであると考える。
まず波の回折干渉に関して、基礎的な考え方に ついて触れよう。上記のように波の干渉による強 度分布は、次式に示すようにわずかに位相の異な る複数の波同士の重ね合わせにより生じる。
𝛹𝛹�𝑥𝑥� � � ��s��𝑘𝑘�� �� � 1�𝛿𝛿𝑘𝑘�𝑥𝑥�
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∝ sin �𝑁𝑁𝛿𝛿𝑘𝑘 𝑁 𝑥𝑥2 � sin 𝛿𝛿𝑘𝑘 𝑁 𝑥𝑥2
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𝑘𝑘�� 𝑘𝑘�
𝑁𝑁 � 1 �2�
例として、�𝑘𝑘�, 𝑘𝑘��=[17, 19] の間で𝑁𝑁 � 1 分割 した𝑁𝑁個の正弦波を重ね合わせた計算結果を図 1 に示す。例えば 𝑁𝑁 � 2の場合、合成波は2つの正 弦波の和、
𝛹𝛹 � ��s�𝑘𝑘�𝑥𝑥� � ��s � 𝑘𝑘�𝑥𝑥�
� 2 ��s �𝑘𝑘�� 𝑘𝑘�
2 𝑥𝑥� ��s �𝑘𝑘�� 𝑘𝑘�
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となり、いわゆる2���𝑘𝑘�� 𝑘𝑘�� 間隔の「うなり」
が観測される。さらに𝑁𝑁個の正弦波の重ね合わせ によって、波の局在化が起こり2��𝑁𝑁 � 1���𝑘𝑘�� 𝑘𝑘��間隔で波束が形成されることが分かる。これは 数学で言えば、次式(4)で示すように散乱体形状
��𝑥𝑥, 𝑥𝑥� (ここではスリットや結晶構造)を Fourier
変換したものであり、物理的に表現すればスリッ
ト��𝑥𝑥, 𝑥𝑥�による波の回折・干渉現象そのものであ
る。
𝛹𝛹�𝑋𝑋, 𝑋𝑋� � � ��𝑥𝑥, 𝑥𝑥� exp���𝑘𝑘𝑟𝑟��𝑥𝑥�𝑥𝑥 ���
�
𝑟𝑟 � ��𝑋𝑋 � 𝑥𝑥��� �� �𝑋𝑋 � 𝑥𝑥��� � ���
つまり、スリット通過後の経路長𝑟𝑟の差(位相差)が 異なる複数の波の重ね合わせにより、距離Lに置 かれたスクリーン上の点�𝑋𝑋, 𝑋𝑋, ��で波の干渉像
|𝛹𝛹�𝑋𝑋, 𝑋𝑋�|�が現れることが直感的に理解できる。
本稿では、主に物理学実験1で行っている単・
複スリットによる可視レーザ光の回折・干渉実験 の実践例についてやや発展的内容も含めて述べる が、難しい回折積分などの概念は使わず、初等的 な大学数学のみで理解できるよう配慮した。
図 1. 波数�𝑘𝑘�, 𝑘𝑘�� � �17, 19� �Δ𝑘𝑘 � 2�のバンド 幅を持つ𝑁𝑁 個の波の重ね合わせと波束の形成.
-10 -5 0 5 10
N=3 N=2
-10 -5 0 5 10
-10 -5 0 5 10 N=4
Amplitude
-10 -5 0 5
10N=5 2 /k
x
-30 -20 -10 0 10 20 30
-10 -5 0 5 10
x
N=10
2/k
となり、いわゆる 間隔の「うなり」が 観測される。さらにN個の正弦波の重ね合わせによっ
て、波の局在化が起こり 間隔
で波束が形成されることが分かる。これは数学で言 えば、次式(4)で示すように散乱体形状 (こ こではスリットや結晶構造)をFourier変換したも のであり、物理的に表現すればスリット に よる波の回折・干渉現象そのものである。
見され、この二面性はすべての物質にとって普遍 的な性質であることがわかっている。そしてこれ らの波動的・粒子的性質は、今日様々な研究・開 発分野において広く応用されていることは周知の ことであろう。このような背景の中、光や物質の 波動性や粒子性に関して理解を深めることは、実 験物理分野のみならず物性理論、ひいては物理教 育の観点からも非常に有意義と考える。
神奈川大学理学部の物理学学生実験においては、
光の波動性に関連する様々な実験テーマが用意さ れ、学生が実体験として系統的に学修できるよう 工夫されている。まず1年次の基礎物理学実験法
では、「Newton Ring」を用いた光の干渉実験を
行い、光の波動性に関して理解を深めると同時に、
計測と誤差について考えるテーマが扱われる。2 年次の物理学実験1では、波長の異なる半導体 レーザ(赤・緑・青)から発せられたコヒーレント 単色光を用いた「Youngの回折・干渉実験」を行 い、スクリーン上に現れた縞間隔と二重スリット 間隔との関係を調べる。スリットとスクリーンと の幾何学的配置により干渉縞の現れ方は単純な関 係で記述でき、実験結果と理論予測を比較するこ とにより、光の波動的性質を深く理解できるテー マである。3 年次の物理学実験2では、光の波動
的性質として重要な「偏光と複屈折」と「X線回 折による結晶構造解析」を行う2つの実践的な テーマを設定している。ここで扱う平面波の回 折・干渉の原理は非常に単純であり、スリットや 原子による回折で少し位相(光路差)の異なる波同 士の重ね合わせによりすべて説明できる。これら 一連の実験は、物理を学ぶ学生には教育的かつ実 学的テーマであると考える。
まず波の回折干渉に関して、基礎的な考え方に ついて触れよう。上記のように波の干渉による強 度分布は、次式に示すようにわずかに位相の異な る複数の波同士の重ね合わせにより生じる。
𝛹𝛹�𝑥𝑥� � � ��s��𝑘𝑘�� �� � 1�𝛿𝛿𝑘𝑘�𝑥𝑥�
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∝ sin �𝑁𝑁𝛿𝛿𝑘𝑘 𝑁 𝑥𝑥2 � sin 𝛿𝛿𝑘𝑘 𝑁 𝑥𝑥2
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δ𝑘𝑘 𝑘 Δ𝑘𝑘 𝑁𝑁 � 1 �
𝑘𝑘�� 𝑘𝑘�
𝑁𝑁 � 1 �2�
例として、�𝑘𝑘�, 𝑘𝑘��=[17, 19] の間で𝑁𝑁 � 1 分割 した𝑁𝑁個の正弦波を重ね合わせた計算結果を図 1 に示す。例えば 𝑁𝑁 � 2の場合、合成波は2つの正 弦波の和、
𝛹𝛹 � ��s�𝑘𝑘�𝑥𝑥� � ��s � 𝑘𝑘�𝑥𝑥�
� 2 ��s �𝑘𝑘�� 𝑘𝑘�
2 𝑥𝑥� ��s �𝑘𝑘�� 𝑘𝑘�
2 𝑥𝑥� ���
となり、いわゆる2���𝑘𝑘�� 𝑘𝑘�� 間隔の「うなり」
が観測される。さらに𝑁𝑁個の正弦波の重ね合わせ によって、波の局在化が起こり2��𝑁𝑁 � 1���𝑘𝑘�� 𝑘𝑘��間隔で波束が形成されることが分かる。これは 数学で言えば、次式(4)で示すように散乱体形状
��𝑥𝑥, 𝑥𝑥� (ここではスリットや結晶構造)を Fourier
変換したものであり、物理的に表現すればスリッ
ト��𝑥𝑥, 𝑥𝑥�による波の回折・干渉現象そのものであ
る。
𝛹𝛹�𝑋𝑋, 𝑋𝑋� � � ��𝑥𝑥, 𝑥𝑥� exp���𝑘𝑘𝑟𝑟��𝑥𝑥�𝑥𝑥 ���
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つまり、スリット通過後の経路長𝑟𝑟の差(位相差)が 異なる複数の波の重ね合わせにより、距離Lに置 かれたスクリーン上の点�𝑋𝑋, 𝑋𝑋, ��で波の干渉像
|𝛹𝛹�𝑋𝑋, 𝑋𝑋�|�が現れることが直感的に理解できる。
本稿では、主に物理学実験1で行っている単・
複スリットによる可視レーザ光の回折・干渉実験 の実践例についてやや発展的内容も含めて述べる が、難しい回折積分などの概念は使わず、初等的 な大学数学のみで理解できるよう配慮した。
図 1. 波数�𝑘𝑘�, 𝑘𝑘�� � �17, 19� �Δ𝑘𝑘 � 2�のバンド 幅を持つ𝑁𝑁 個の波の重ね合わせと波束の形成.
-10 -5 0 5 10
N=3 N=2
-10 -5 0 5 10
-10 -5 0 5 10 N=4
Amplitude
-10 -5 0 5
10N=5 2 /k
x
-30 -20 -10 0 10 20 30
-10 -5 0 5 10
x
N=10 2/k
つまり、スリット通過後の経路長rの差(位相差)
が異なる複数の波の重ね合わせにより、距離Lに 置かれたスクリーン上の点 で波の干渉像
が現れることが直感的に理解できる。
本稿では、主に物理学実験1で行っている単・複 スリットによる可視レーザ光の回折・干渉実験の実 践例についてやや発展的内容も含めて述べるが、難 しい回折積分などの概念は使わず、初等的な大学数 学のみで理解できるよう配慮した。
Fraunhofer回折の理論
まず、入射波を平面波として扱うことができ、スリッ トとスクリーンまでの距離が十分長い場合の回折・
性質は、今日様々な研究・開発分野において広く応 用されていることは周知のことであろう。このよう な背景の中、光や物質の波動性や粒子性に関して理 解を深めることは、実験物理分野のみならず物性理 論、ひいては物理教育の観点からも非常に有意義と 考える。
神奈川大学理学部の物理学学生実験においては、
光の波動性に関連する様々な実験テーマが用意さ れ、学生が実体験として系統的に学修できるよう工 夫されている。まず1年次の基礎物理学実験法では、
「Newton Ring」を用いた光の干渉実験を行い、光の
波動性に関して理解を深めると同時に、計測と誤差 について考えるテーマが扱われる。2年次の物理学 実験1では、波長の異なる半導体レーザ(赤・緑・青)
から発せられたコヒーレント単色光を用いた「Young の回折・干渉実験」を行い、スクリーン上に現れた 縞間隔と二重スリット間隔との関係を調べる。スリッ トとスクリーンとの幾何学的配置により干渉縞の現 れ方は単純な関係で記述でき、実験結果と理論予測 を比較することにより、光の波動的性質を深く理解 できるテーマである。3年次の物理学実験2では、
光の波動的性質として重要な「偏光と複屈折」と「X 線回折による結晶構造解析」を行う2つの実践的な
図1.波数 のバンド幅を持つ
N個の波の重ね合わせと波束の形成.
20 Science Journal of Kanagawa University Vol. 00, 0000
見され、この二面性はすべての物質にとって普遍 的な性質であることがわかっている。そしてこれ らの波動的・粒子的性質は、今日様々な研究・開 発分野において広く応用されていることは周知の ことであろう。このような背景の中、光や物質の 波動性や粒子性に関して理解を深めることは、実 験物理分野のみならず物性理論、ひいては物理教 育の観点からも非常に有意義と考える。
神奈川大学理学部の物理学学生実験においては、
光の波動性に関連する様々な実験テーマが用意さ れ、学生が実体験として系統的に学修できるよう 工夫されている。まず1年次の基礎物理学実験法
では、「Newton Ring」を用いた光の干渉実験を
行い、光の波動性に関して理解を深めると同時に、
計測と誤差について考えるテーマが扱われる。2 年次の物理学実験1では、波長の異なる半導体 レーザ(赤・緑・青)から発せられたコヒーレント 単色光を用いた「Youngの回折・干渉実験」を行 い、スクリーン上に現れた縞間隔と二重スリット 間隔との関係を調べる。スリットとスクリーンと の幾何学的配置により干渉縞の現れ方は単純な関 係で記述でき、実験結果と理論予測を比較するこ とにより、光の波動的性質を深く理解できるテー マである。3 年次の物理学実験2では、光の波動
的性質として重要な「偏光と複屈折」と「X線回 折による結晶構造解析」を行う2つの実践的な テーマを設定している。ここで扱う平面波の回 折・干渉の原理は非常に単純であり、スリットや 原子による回折で少し位相(光路差)の異なる波同 士の重ね合わせによりすべて説明できる。これら 一連の実験は、物理を学ぶ学生には教育的かつ実 学的テーマであると考える。
まず波の回折干渉に関して、基礎的な考え方に ついて触れよう。上記のように波の干渉による強 度分布は、次式に示すようにわずかに位相の異な る複数の波同士の重ね合わせにより生じる。
𝛹𝛹�𝑥𝑥� � � ��s��𝑘𝑘�� �� � 1�𝛿𝛿𝑘𝑘�𝑥𝑥�
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∝ sin �𝑁𝑁𝛿𝛿𝑘𝑘 𝑁 𝑥𝑥2 � sin 𝛿𝛿𝑘𝑘 𝑁 𝑥𝑥2
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δ𝑘𝑘 𝑘 Δ𝑘𝑘 𝑁𝑁 � 1 �
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𝑁𝑁 � 1 �2�
例として、�𝑘𝑘�, 𝑘𝑘��=[17, 19] の間で𝑁𝑁 � 1 分割 した𝑁𝑁個の正弦波を重ね合わせた計算結果を図 1 に示す。例えば 𝑁𝑁 � 2の場合、合成波は2つの正 弦波の和、
𝛹𝛹 � ��s�𝑘𝑘�𝑥𝑥� � ��s � 𝑘𝑘�𝑥𝑥�
� 2 ��s �𝑘𝑘�� 𝑘𝑘�
2 𝑥𝑥� ��s �𝑘𝑘�� 𝑘𝑘�
2 𝑥𝑥� ���
となり、いわゆる2���𝑘𝑘�� 𝑘𝑘�� 間隔の「うなり」
が観測される。さらに𝑁𝑁個の正弦波の重ね合わせ によって、波の局在化が起こり2��𝑁𝑁 � 1���𝑘𝑘�� 𝑘𝑘��間隔で波束が形成されることが分かる。これは 数学で言えば、次式(4)で示すように散乱体形状
��𝑥𝑥, 𝑥𝑥� (ここではスリットや結晶構造)を Fourier
変換したものであり、物理的に表現すればスリッ
ト��𝑥𝑥, 𝑥𝑥�による波の回折・干渉現象そのものであ
る。
𝛹𝛹�𝑋𝑋, 𝑋𝑋� � � ��𝑥𝑥, 𝑥𝑥� exp���𝑘𝑘𝑟𝑟��𝑥𝑥�𝑥𝑥 ���
�
𝑟𝑟 � ��𝑋𝑋 � 𝑥𝑥��� �� �𝑋𝑋 � 𝑥𝑥��� � ���
つまり、スリット通過後の経路長𝑟𝑟の差(位相差)が 異なる複数の波の重ね合わせにより、距離Lに置 かれたスクリーン上の点�𝑋𝑋, 𝑋𝑋, ��で波の干渉像
|𝛹𝛹�𝑋𝑋, 𝑋𝑋�|�が現れることが直感的に理解できる。
本稿では、主に物理学実験1で行っている単・
複スリットによる可視レーザ光の回折・干渉実験 の実践例についてやや発展的内容も含めて述べる が、難しい回折積分などの概念は使わず、初等的 な大学数学のみで理解できるよう配慮した。
図 1. 波数�𝑘𝑘�, 𝑘𝑘�� � �17, 19� �Δ𝑘𝑘 � 2�のバンド 幅を持つ𝑁𝑁 個の波の重ね合わせと波束の形成.
-10 -5 0 5 10
N=3 N=2
-10 -5 0 5 10
-10 -5 0 5 10N=4
Amplitude
-10 -5 0 5
10N=5 2 /k
x
-30 -20 -10 0 10 20 30
-10 -5 0 5 10
x
N=10 2/k