• 検索結果がありません。

即時効果を特色とした軽運動が心身に与える影響

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "即時効果を特色とした軽運動が心身に与える影響"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

即時効果を特色とした軽運動が心身に与える影響

包國 友幸* 宮田 浩二**

“Light exercise with immediate results and it mental and physical effects”

Tomoyuki KANEKUNI, Koji MIYATA

An exercise program with immediate results was developed for the elderly in 1997. This group exercise program is based on the concept of proprioceptive neuro-muscular facilitation (PNF) and it allows participants to see immediate results.

The current study examined the how the exercise program affected the quality of life (specifically the health-related QOL) of participants.

Subjects of this study were participants in an autumn 2016 Open University seminar on “A Refreshing Gymnastics Class: Learning the structure of the human body by following an exercise program with immediate results.”

Subjects were elderly persons, including 4 males(36%)and 7 females(64%).

The exercise program was conducted four times a week for one month. The SF-36v2 Health Survey served as a generic measure of QOL at the start and the end of the one-month class. The survey was administered to determine the short-to-medium-term effects of the exercise program.

Statistically significant differences in scores on the “Role Functioning Physical”(p<0.01), “Bodily Pain”(p<0.05), “General Health Perception”(p<0.05), “Vitality”(p<0.05), “Social Functioning”

(p<0.05), and “Mental Health”(p<0.05)subscales of the SF-36v2 were noted although the average scores in those 8 domains improved. In fact, results suggested that conducting this exercise program for 1 month may help to improve participants’ QOL.

Key words:immediate results, exercise program, facilitation 即時効果、運動プログラム、促通

* かねくに ともゆき 文教大学人間科学部非常勤講師

** みやた こうじ 文教大学人間科学部人間科学科

Ⅰ.緒言

近年、わが国では少子化、超高齢社会の到来に よる社会福祉費用の増大などの問題が指摘されて いる。医療とコストについて朝日新聞1)では2013 年度の実数と2025の推計値について、①75歳以上 の人口については1560万人(2013)→1.4倍の2180

万人(2025)、②15~64歳の生産年齢人口7901万 人(2013)→0.9倍の7170万人(2025)、③医療費 40兆円(2013)→1.4倍の54兆円(2025)、④医療 機 関 の 病 床 数135万 床(2013)→0.9倍 の119万 床

(2025)、などを示している。日本老年学会が高齢 者の定義を75歳以上とすることを検討している中 で2)、どのような方法でいかに健康寿命を生命寿 命に近づけるかについてのアイデアの創造・実施 とその検証などが課題とされており、転倒予防・

介護予防・認知症予防をテーマとした運動プログ ラムなどが注目されている。

(2)

筆者は、ある運動プログラムを1回実施する前 よりも運動器の可動性や柔軟性の向上、運動の心 理的効果による情緒の変化などにより運動実施後 の方が、「より元気になる」「より楽になる」運動 プログラムはできないものかと考えるに至った。

そこで筋肥大・筋力増強目的の「筋力トレーニン グ」や筋の弛緩・リラクゼーションを目的とした

「ストレッチング」でもない運動、すなわち無意 識レベルの動作においても働筋として機能するべ き部位の神経-筋の反応を高め、協調性を持った 働筋として機能するように動作の再学習を行い正 しい動きを脳に入力する促通3)という現象に焦点 をあて運動後に可動性や柔軟性の改善などの効果 が即座に実感できる運動プログラムを1997年に開 発し1998年より実施・検証・報告4-8)を繰り返し てきた。2000年10月に民間大手スポーツクラブA において上記運動プログラムが展開開始され15 年以上が経過した現在(2017年7月)でも数店舗 において実施継続されている。上記運動プログ ラ ム の 特 徴 と し て、 ①Proprioceptive neuro- muscular facilitation(以下PNF)のコンセプト9)

に基づいている、②一回の運動前・後で即座に可 動性や柔軟性などの改善効果が自覚できる、③集 団運動プログラムである、④肩・腰・膝などをセ ルフコンディショニングする運動プログラムであ る、⑤運動器具など道具を何も必要としない、な どがあげられる。

上記運動プログラムを様々な民間企業、自治 体、NPO法人などの組織において実施・展開し てきたが2015年より文教大学生涯学習センター主 催のオープンユニバーシティーの講座として年に 2回(春・秋)に実施・展開している。

Ⅱ.研究目的

本研究は、オープンユニバーシティーに参加し た中高年齢者に対して上記の即時効果を特色とし た運動プログラムを4週間実施したことによる効 果について検証することを目的とした。

Ⅲ.研究方法

1.調査対象

本研究の対象者は文教大学オープンユニバーシ ティーに参加した中高年齢者であった。この講座

(2016.秋講座)の全参加者は15名であったが、調 査用紙記入時に遅刻や欠席などがあり調査用紙が 回収できなかったものや回答に不備があったもの 4名分のデータを除外して、11名分のデータを調 査対象とした。その内訳は男性4名、女性7名の合 計11名、平均年齢67.2±5.98歳であった。分析に はIBM SPSS statistics23を使用し、教室開始時と 教室終了時との差の検定ではWilcoxonの符号付 き順位検定を行った。

2.運動プログラムの実施

講座の日程・内容等を図2に示した。講座内容 は、第1回目:肩のしくみ・肩痛講座と肩プログ ラム10)、第2回目:腰のしくみ・腰痛講座と腰プ ログラム11)、第3回目:膝のしくみ・膝痛講座と 膝プログラム12)、そして最終回の第4回目:それ ぞれの部位の短縮版プログラム(これだけは覚え ましょうエクササイズ)を実施した。それぞれの

図1.オープンユニバーシティー2016 秋・冬パンフレット

(3)

運動実施前・後において、動き易さ(可動性)の 差異についての各種チェックをしてもらい毎回の 講座において運動プログラムの即時効果を実感し てもらった。

3.調査期間

調査期間は、教室開始時の第1回目:2016(平 成28)年11月7日(月)~教室終了時の第4回目:

11月28日(月)の4週間であった。

4.倫理的配慮

調査にあたっては対象者に研究目的と内容、プ ライバシー保護、自主的な運動実施の中止などに ついて十分に説明し同意を得たもののみに調査用

図2.講座紹介

(日にち、内容、受講料、持ち物・服装など)

紙を提出してもらった。

5.調査項目

(1)健康関連QOL尺度(SF-36v2)

健康関連QOL尺度であるThe Medical Outcomes Study 36-Item Short From Health Survey(以下 SF-36v2)はシンプルかつ有用であり計量心理学 的に十分な特性を持っており、すでに十分なデー タの蓄積があるため健康状態を測る質問紙として 世界中で最も普及している13-14)

SF-36v2は8つの健康概念を測定するための複 数の質問項目から成り立っているが、表1にその 内容を示した。この質問紙調査を教室開始時と教 室終了時とに実施してもらった。

(2)効果についての自由記述式アンケート調査 教室に参加し運動プログラムを継続したことに よる自覚的な効果を調査するため、4週間の教室 終了時に、以下の3項目の質問に対して自由に記 述する形式のアンケート調査を行った。この調査 は、参加したもの一人一人の意見をそのまま反映 することにより運動プログラム実施の感触を確認 する、及び今後の展開時のために改善点を検討す ることを目的として行っており、厳格な独立した 調査項目として用いるには限界があると考えられ るが教室についての本音を聞くことができると判 断し実施した。

下位尺度 下位尺度名 項目数 内容

Physical Functioning (PF) ①身体機能 10 入浴、歩行などが問題なく行えるかどうか Role Functioning Physical(RP) ②日常役割機能(身体) 4 仕事や活動に対する身体的因子の影響

Bodily Pain(BP) ③体の痛み 2 仕事や活動に対する体の痛みの影響

General Health Perceptions

(GH) ④全体的健康感 5 健康状態について(現在・未来)

Vitality(VT) ⑤活力 4 活力にあふれているかどうかについて

Social Functioning(SF) ⑥社会生活機能 2 社会生活に対する身体・心理的因子の影響 Role Functioning Emotional

(RE) ⑦日常役割機能(精神) 3 仕事や活動に対する心理的因子の影響

Mental Health(MH) ⑧心の健康 5 神経質で憂鬱か、穏やかで落ち着いている

か等 表1.SF36v2の下位尺度名、項目数、内容

(4)

質問の項目の一つ目は「1)今回の講座のご感 想などがありましたら自由にお書きください。」、

二つ目は「2)今後開催してほしい講座がありま したら教えてください。」、三つ目は「3)その他、

要望などがありましたら自由にお書きください。」

であった。

Ⅳ.結果

(1) 健康関連QOL尺度(SF36v2)調査の結果

(1-1)0-100点法スコアリングの結果

SF-36v2の下位尺度項目を0-100点法でスコアリ ングした場合の教室開始時と教室終了時との得点 の変化、SF-36v2の女性60~69歳の国民代表値と

標準偏差15)を表2に示した。図3にSF-36v2の8つ の下位尺度を0-100点法でスコアリングした場合 の教室開始時得点と教室終了時得点との変化につ いて示した。

健康関連QOLの8つの下位尺度のすべての項目 の平均値は向上したが、検定を行った結果、「② 日常役割機能(身体):R.P.」がZ値=-2.692、漸 近有意確率(両側)p=0.007、であり有意な向上 が認められた(p<0.01)。また「③体の痛み:B.P.」

がZ値=-2.043、漸近有意確率(両側)p=0.041、

「④全体的健康感:G.H.」がZ値=-2.512、漸近有 意確率(両側)p=0.012、「⑤活力:V.T.」がZ値

=-2.358、漸近有意確率(両側)p=0.018、「⑥社 会的機能:S.F.」がZ値=-2.157、漸近有意確率

0.00 20.00 40.00 60.00 80.00 100.00 120.00

身体機能 日常役割機能(身体) 体の痛み 全体的健康感 活力 社会生活機能 日常役割機能(精神) 心の健康 教室開始時 教室終了時

下位尺度名 教室開始時 教室終了時 p 国民標準値0-100得点

① 身体機能 P.F. 81.36±17.33 87.73±9.05 n.s. 89.13±13.85

② 日常役割機能(身体)R.P. 79.00±15.37 91.49±10.18 ** 89.24±18.81

③ 体の痛み B.P. 55.91±19.24 69.73±23.41 * 73.77±22.40

④ 全体的健康感 G.H. 56.18±17.57 65.27±16.73 * 62.91±18.77

⑤ 活力 V.T. 58.55±19.41 73.32±13.13 * 62.83±19.46

⑥ 社会生活機能 S.F. 75.00±18.54 86.36±16.25 * 86.38±19.40

⑦ 日常役割機能(精神)R.E. 84.85±22.60 87.13±13.62 n.s. 87.85±20.02

⑧ 心の健康 M.H. 66.36±16.45 79.55±14.22 * 71.60±18.63

*:p<.05, **: p<.01, 表2. 0-100得点スコアリングした得点の変化と国民標準値

図3.0-100得点でスコアリングした場合の得点の変化

* *

(5)

(両側)p=0.031、「⑧心の健康:M.H.」がZ値=

-2.203、漸近有意確率(両側)p=0.028であり有 意な向上が認められた(p<0.05)。つまり、②R.P.

が有意に向上し(p<0.01)、その他③B.P. ④G.H.

⑤V.T. ⑥S.F. ⑧M.H. の5つの項目において有意 な向上が認められた(p<0.05)。

(1-2)国民標準値に基づいたスコアリングの結果 表3、図4に、国民標準値を50点とし、その標準 偏差を10点として変換したSF-36v2の国民標準値 に基づいたスアリングを示した。スコアリングさ れた8つの下位尺度得点が50点以上あるいは50点 以下の得点は、国民標準値(50点)と比べてそれ より上か下であると解釈することができる。本研 究の対象者のQOL平均値は教室開始時ではすべ ての下位尺度項目の点数が50点以下であったが、

教室終了時は「②日常役割機能(身体):R.P.」

「④全体的健康感:G.H.」、「⑤活力:V.T.」、「⑧ 心の健康:M.H.」の4項目において、国民標準値 を上回る結果となった。

(1-3)サマリースコアの結果

SF-36の8つの下位尺度はそれぞれ重みづけさ れた後に、「身体的健康を表すコンポーネント・

サマリースコア Physical component summary score:PCS)」、「精神的健康を表すコンポーネン ト・サマリースコアMental component summary score:MCS)」、「役割社会的健康をあらわすコ ンポーネント・サマリースコア Role-social component summary score:RCS)」の3つのサ マリースコアにまとめられる15)

表4及び図5に教室開始時と教室終了時の各サマ

0.00 10.00 20.00 30.00 40.00 50.00 60.00 70.00

身体機能 日常役割機能(身体) 体の痛み 全体的健康感 活力 社会生活機能 日常役割機能(精神) 心の健康

教室開始時 教室終了時

下位尺度名 教室開始時 教室終了時

① 身体機能 P.F. 44.37±12.50 49.29± 5.64

② 日常役割機能(身体)R.P. 44.56± 8.16 51.18± 5.41

③ 体の痛みB.P. 42.03± 8.58 48.19±10.44

④ 全体的健康感G.H. 46.41± 9.40 51.25± 8.90

⑤ 活力V.T. 47.78± 9.97 55.39± 6.76

⑥ 社会生活機能S.F. 44.13± 9.57 49.97± 8.39

⑦ 日常役割機能(精神)R.E. 48.52±11.32 49.65± 6.82

⑧ 心の健康M.H. 47.18± 8.82 53.77± 7.04

表3.SF-36v2の国民標準値に基づいたスコアリング

図4.国民標準値を基準としてスコアリングした場合の得点の変化

(6)

リースコアの変化を示したが、検定を行った結 果、「精神的側面:PCS」がZ値=-2.395、漸近有 意確率(両側)p=0.017、であり有意な向上が認 められた(p<0.05)。

(2)自覚的効果についてのアンケート調査の結果 自覚的な効果についてのアンケート用紙の提出 者は12名であり、記述のない項目や誤字・脱字な どが見受けられたが参加者の素直な気持ちや実感 がそのまま表現されており現場の雰囲気がより伝 わりやすいと判断し原文そのままを記載した。 

一つ目の質問項目の「1)今回の講座のご感想 などがありましたら自由にお書きください。」に おいての記述内容は、「①先生がとてもフレンド リーで楽しく受講することができました。」「②丁 寧なご指導と為になる実技で体が大変すっきりい たしました。」「③4回ではやはり少ないように思 います。せめて肩の講座1日、実技を1日というよ うに8回はあってほしいと思いました。」「④体の しくみが参考になりました。」「⑤大変ありがとう

ございました。腰痛・膝痛のため参加しました。」

「⑥内容が多過ぎる気がします。そして実生活で 身体的に故障を起こしやすいものと筋肉・骨格構 造との関係及び予防体操を関連付けて教えてもら うと記憶しやすいのですが。」「⑦体操の順番が分 からなくなってしまいました。今日の授業でしっ かりと覚えられればと思いますが。出来ればまた 次回参加したいと思います。」「⑧私は若いころか らスポーツをかかすことがありませんでした。体 操でソケイ部を痛め、ママさんバレーで左おしり

(デンブ)坐骨神経を損傷歩けなくなったことを 体験、その後腰の痛みではねたりとんだりができ ない状態が続いていました。友人に誘われ少しで も勉強してみたいと思い参加しました。筋肉のつ き方、状態を知り実践で体を動かすことにより寝 ていた神経が呼びさまされたように、少しずつ回 復しているような気がします。筋肉痛もひどかっ たのに反比例し体の中が軽くなったように思いま す。こわがらずに続けていくと少しでも良いから 毎日動かすことが大事と教わり参加して良かった です。」「⑨体が軽くなった感じです。グランドゴ ルフの球の飛びが良くなったのですが、終わった 後痛かった。」「⑩私は左腕上部が特定の運動で痛 みを感じます。整形外科では異常なし整骨院に5 か月程通っていますが、良くも悪くもなりません。

何が原因なのかどこが悪いのか知りたくて受講し ましたが内容が高度で短期間なので理解するまで にいたりませんでした。」「⑪腰痛の改善の方法 が、少し分かった気がします。」「⑫日常生活の中 で身体に違和感を感じた事についての説明が分か りやすかった。」であった。

二つ目の質問項目「2)今後開催してほしい講 座がありましたら教えてください。」の記述内容 は、①記述なし、「②同じ講座でもいいので再講 座を希望いたします。回数は6回位がいいですね。」

コンポーネント 教室開始時 教室終了時 p

身体的側面(PCS) 43.81±11.10 47.73± 8.85 n.s.

精神的側面(MCS) 47.81± 9.86 54.27± 8.36 *

役割/社会的側面(RCS) 47.95±11.99 49.95± 8.34 n.s.

表4.サマリースコアの得点の変化

図5.サマリースコアの変化

(7)

③記述なし、「④すっきり爽快体操教室のPart2」

⑤記述なし、⑥記述なし、「⑦食についての講座 があればいいなあと思います。」「⑧引き続きもう 少し(2カ月位)8回位のを教えていただきた い」「⑨続けてほしい。」「⑩健康と運動について。」

「⑪今回の講座と同様の長い、詳しい講座を希望 します。」「⑫・症状の事例{良くなった人 悪い 事例}・頭の病気について」であった。

最後に、三つ目の質問項目「3)その他、要望 などがありましたら自由にお書きください」の記 述内容では、「①肩こりだけで2週など少し長い 時間で説明・運動などできたら良いと思います。」

「②特にありません。大変お世話になりました。」

③記述なし、「④できれば実技を多くしてほしい です。」、⑤記述なし、⑥記述なし、「⑦4回コー スから6回~8回コースに増やしていただければ と思います。」⑧記述なし、⑨記述なし、「⑩実技 を多くしてほしい。」、⑪記述なし、「⑫日常生活 の正しい過ごし方について」であった。

Ⅴ.考察

PNFの効果としてROMの改善16)、痛みに対す る効果17)、などが報告されているが、新井は障害 により可動域制限が生じた場合、痛みのある障害 部位に直接アプローチせず、自動ROMを改善さ せる方法があることを述べている18)。新井・柳澤 らは、上肢のROM制限がある整形疾患を対象に した骨盤の後方下制運動に対しホールドリラック スによる上肢への間接アプローチが、上肢障害関 節に直接アプローチするスタティックストレッチ

(持続伸張)と比較し、有意に上肢障害関節の ROMを改善できることを報告している18)。PNF の考え方では、強い筋群を収縮することにより弱 い筋群へのインパルスの溢れ出しにより強化する ことを、発散9)(irradiation)と表現している。

発散の効果は、運動している筋群から直接生じる インパルスのオーバーフロー効果に基づき、その インパルスが抵抗運動を行っている主働筋が拮抗 筋に呼応した筋群に直接働きかけていると考えら れる。骨盤の後方下制のホールドリラックスによ り、発散現象が患側上肢の筋群にも生じ、その後

リラクセーションさせることにより収縮後の弛緩 が得られスパズムが緩解し、患測上肢の可動域の 改善が得られたことが推察されることが示され た18)。痛みなどにより、障害部位に直接アプロー チせず自動ROMを改善させる場合にこの方法は 有効であることが実証されている19)

本研究のこのプログラムでは発散9)を使い間接 法という考え方を応用し、直接対象者に触れずに その効果が反映されるように、体位や負荷の方向 や負荷強度を考慮し各エクササイズをプログラミ ングしたことにより、自動ROMが改善され、痛 みのあるものは痛みが軽減し、また痛みのないも のは動き易さや動作効率の改善などの効果があり QOL下位尺度項目の平均値向上につながったと 考えられる。

運動実施が1回/1週間×約4週間という短期の介 入であったが、特に下位尺度項目の②日常役割機 能(身体)RPは顕著に向上した(p<0.01)こと が示唆され、その他、③体の痛みB.P.・④全体的健 康感G.H.・⑤活力V.T.・⑥社会生活機能S.F.・⑧ 心の健康M.H.の5項目が有意に向上した(p<0.05)。

その理由として、以下のことがあげられる。第 1回目の講座では肩関節の講義により大まかに 肩の構造と疾患の原因などを理解した上で肩プロ グラムにより促通し可動性を改善したが、現在ま での調査により1回の運動プログラム実施により 肩の感覚が改善するなどの即時効果が検証されて いる10)。同様に、第2回目では腰部の可動性を改 善させる腰プログラム11)の実施により、第3回目 では膝(下肢)の可動性を改善させる膝プログ ラム12)の実施により、第4回目でそれらを統合す る 運 動 プ ロ グ ラ ム を 実 施 し た た め、 発 散9)

(irradiation)が誘発されPNFの効果つまりROM や痛みの改善などにより② R.P. ③ B.P. ④ G.H. ⑤ V.T. ⑥ S.F. の下位項目の改善につながったと考 えられる。

次にサマリースコアの結果では「精神的健康を 表すコンポーネント・サマリースコアMental component summary score:MCS)」の値で有意 な向上が認められた(p<0.05)。下位尺度項目の

⑧心の健康M.H.も有意に向上した(p<0.05)。そ の理由として、肩プログラム10)、腰プログラム11)

(8)

膝プログラム12)のそれぞれの調査において、状 態不安の値が有意に低下することを検証した。毎 週の運動の即時効果によりそれぞれの部位が動か し易くなり、不安が軽減することを繰り返すこと により教室終了時には心の健康の数値の向上や精 神的健康を表すサマリースコア(MCS)が向上 する効果が表れたことが考えられる。

引用文献

1 )生田大介:医療とコスト. 朝日新聞[平成29 年8月25日朝刊pp1], 2017.

2 )田村建二・川村剛志:「高齢者は75歳以上」

学会が提言. 朝日新聞[平成29年1月6日朝刊 pp1], 2017.

3 )Susan S. Adler・Dominiek Becker・Math Buck:PNFハンドブック.pp1-42, クインテッ センス出版, 1997.

4 )宮田浩二・包國友幸・小林正幸:高齢者・低 体力者対象運動プログラム開発実施報告①.

文教大学人間科学研究,27:103-111, 2005.

5 )包國友幸・宮田浩二・小林正幸:高齢者・低 体力者対象運動プログラム実施報告②~膝 痛改善運動プログラム実施者の状態不安と運 動後の感覚に焦点をあてて~. ウエルネス ジャーナル, 4:56-59, 2008.

6 )宮田浩二・包國友幸・小林正幸:高齢者・低 体力者対象運動プログラム開発実施報告③.

文教大学人間科学研究, 30:79-86, 2008.

7 )包國友幸・宮田浩二・小林正幸:高齢者・低 体力者対象運動プログラム実施報告④~人工 透析患者の日常生活動作(ADL)能力に焦 点をあててウエルネス ジャーナル, 6:12-16, 2010.

8 )包國友幸・宮田浩二・小林正幸:即時効果を 特色として開発した運動プログラムの中長期 的な適応の効果―低体力者を対象として―.

ウエルネス ジャーナル, 8:12-16, 2012.

9 )Dorothy E. Voss・Marjorie K. Inota・

Beverly J Myers: 神経筋促通手技 パター

ンとテクニック改訂第3版, pp4-5, 協同医書出 版社, 1997.

10)包國友幸・宮田浩二:即時効果を特色とした 軽運動の有効性について.文教大学人間科学 研究, 38:163-172, 2016.

11)包國友幸:即時効果を特色とした介護予防運 動プログラムの有効性 ―腰痛予防・改善希 望者の数値評価スケール(Numerical Rating Scale)に焦点をあてて―, 日本福祉教育専門 学校研究紀要 第23巻, 1:7-15, 2015.

12)包國友幸:即時効果を特色とした介護予防運 動プログラムの有効性―膝痛予防・改善希望 者の数値評価スケール(Numerical Rating Scale)に焦点をあてて―.敬心・研究ジャー ナル, 2:, 2017.

13)Fukuhara S・Bito S・Green J:Translation, adaptation, and validation of the SF- 36Health Survey for use in Japan. Journal of Clinical Epidemiology, 51, 11:1037-1044, 1998.

14)Fukuhara S, Ware J E, Kosinski M, Wada S, Gandek B:Psychometric and clinical tests of validity of the Japanese SF-36 Health Survey, Journal of Clinical Epidemiology, 51, 11:1045-1053, 1998.

15)福原俊一・鈴鴨よしみ:SF-36v2日本語版マ ニュアル.iHope International 株式会社, 京 都, 2004, 2015.

16)和気英樹・柳澤健・ミシェル・アイズマン:

ホールドリラックス手技と徒手持続伸張手技 による膝関節可動域改善の比較.理学療法学 21(4): 279-283, 1994.

17)辻井洋一郎:痛みに対する理学療法の効果.

理学療法学, 20(2): 69-75, 1993.

18)新井光男:骨盤へのホールドリラックスが上 肢関節可動域に及ぼす影響.日本PNFリサー チ, pp22-26, 2002.

19)新井光男・柳澤健:スポーツとファシリテー ション-PNFとスポーツ.PTジャーナル, 36

(8): 579-587, 2002.

参照

関連したドキュメント

 WHO 1) は健康を「Health is a state of complete  physical,  mental  and  social  well-being  and 

「総合健康相談」 対象者の心身の健康に関する一般的事項について、総合的な指導・助言を行うことを主たる目的 とする相談をいう。

c加振振動数を変化させた実験 地震動の振動数の変化が,ろ過水濁度上昇に与え る影響を明らかにするため,入力加速度 150gal,継 続時間

 介護問題研究は、介護者の負担軽減を目的とし、負担 に影響する要因やストレスを追究するが、普遍的結論を

る、関与していることに伴う、または関与することとなる重大なリスクがある、と合理的に 判断される者を特定したリストを指します 51 。Entity

成績 在宅高齢者の生活満足度の特徴を検討した結果,身体的健康に関する満足度において顕著

BC107 は、電源を入れて自動的に GPS 信号を受信します。GPS

また適切な音量で音が聞 こえる音響設備を常設設 備として備えている なお、常設設備の効果が適 切に得られない場合、クラ