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小学校 f接続期jにおける人間関係作りへの支援についての一考察

‑幼稚園での育ちを受けて一

学校教育専攻 幼年発達支援コース 河 野 恵 美

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1 .問題の所在と研究の目的

少子化,核家族化,子どもの遊びの変化な ど,子どもたちを取り囲む環境の変化に伴い,

人とのかかわり方を学ぶ機会は大きく減少し,

子どもたちの「人間関係作りのカjは低下して いると実感している。特に,入学後間もない「接 続期jにおいては,新しい環境や人間関係にと まどいや困難を感じる子どもが増えてきたよう に思う。こうした課題に対し,これまで、小学校 でも様々な取り組みを試みてきた。しかし,こ れらの実践は,入学後の子どもの姿からだけの 取り組み,小学校入学からのスタートで、あった。

現在の子どもたちの多くは,就学前に幼稚園 等で集団生活を経験している。その中で子ども たちは,人とのかかわりを通して「人間関係作 りのカ J を培っているはずで、ある。小学校教師 が,入学前の子どもたちの姿を知ることで,子 どもの「人間関係作りのカj を育てるための新 たな視点が見つかるのではないだろうか白

そこで本研究では,幼稚園において、子ども たちがどのように「人間関係作りのカjを培い,

そのために保育者は5のような支援をしている のかを実際に保育を観察する中で明らかにして いく。そして,引き続き小学校生活における子 どもの姿を「人間関係作りの力Jという視点で 見直していくことで,小学校「接続期jにおけ る子どもの「人間関係作りのカjを培うための 教師の支援の手がかりを探っていくo

指導教員 塩 路 晶 子

2.研 究 の 方 法

徳島県A幼稚園において子どもたちの生活や 保育者の支援の様子を参与観察した。そして,

B小学校入学後も引き続き,子どもたちの生活 や学習の様子,教師の支援の様子を観察した。

観察期間は,平成18年 10月から平成19年 7月までである。デジタルカメラ,ピデオカメ ラ,ボイスレコーダーで記録したものを参考に 文章化し,それをもとに f人関を理解し関係を 調整するカ J (鳴門教育大学附属幼稚園)を手 がかりに,子どもの人間関係作りのカとそれを 支えたと思われる保育者や教師の支援,かかわ

りについて分析・考察した。

3.幼稚園観察から見る人間関係作りへの保 育者の支援・かかわり

幼稚園での事例を通して

r

一人ひとりを認 め応じるJ

r

新しい見方を提示するJ

r

かかわ

りを仕組む J

r

長い目で見守るj という 4つの 視点を導き出し,子どもの人間関係作りへの保 育者の支援について考察を行った。

保 育 者 は 一 人 ひ と り を 認 め 応 じ るJ

r

い目で見守る J というかかわりを通して,一人 ひとりの子どもと信頼関係を築いていることが 明らかになった。保育者は,園生活のすべてを 子どもたちとともに行い,子どもとふれあいな がら一人ひとりを理解しようとしていた。そし てそれは,集団としての生活を重視しがちな小 学校を見据えた「接続期jだからこそ,一人ひ

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とりの子どもが,自信を持って自分の思いを表 現し,人とかかわっていくカをつけてほしいと,

より丁寧に子どもと向き合う姿だ、った。

また,保育者は,この信頼関係を土台にして,

「新しい見方を提示するJ

r

かかわりを仕組むJ というかかわりを通して,子ども同士の人間関 係作りを支援していた。相手の気持ちを聴くこ とや,気持ちに気づきそれを考えたかかわりを するという子どもたちにとって新しい見方,か かわり方を,保育者自身の姿で伝えていた。ま た,保育者間や保護者との連携のもと,みんな で遊ぶ場を用意したり,問題解決のための話し 合いのきっかけを作ったり,方向付けをしたり することで,子ども同士のかかわりを仕組んで¥

きた。こうした支援のもと,子どもたちは,豊 かに f人間関係作りのカjをつけていることが 明らかになった。

4.

小学校観察から見る人間関係作りへの教 師の支援・かかわり

小学校での事例を通して

r

子どもへのかか わり方をひきつぐJ

r

子ども同士のかかわりを 深める場を用意するJ

r

子ども同士のかかわり 合い,学び合いを促すJ

r

子ども同士のかかわ

り合い,学び合いを組織するJという 4つの視 点を導き出し

r

接続期Jにおける小学校での 人間関係作りへの教師の支援について考察を行 った白

まず,イチロウという一人の子どもを継続観 察する中で¥保育者から「子どもへのかかわり 方をひきつぐJ ことがこの時期の子どもが教師

と信頼関係を築く上で,欠かせない視点である ことが明らかになった。教師が保育者や保護者 と密に連絡を取り合い,子どもの育ちゃ保育者 のかかわり方を知り それを生かして子どもと の関係を築いていくことで,子どもは教師への

信頼を深め,小学校生活への安心感や意欲を持 ち,友だち関係を広げていった。

ま た 子 ど も 同 士 の か か わ り を 深 め る 場 を 用意するj とは,教師が子どもの関心や興味,

経験を知り,子どもにとって意味あるものを効 果的に提供することである。「子ども同士のか かわり合い,学び合いを促すJ とは学習の中に 小集団での活動を取り入れ,教師の意図的な言 葉かけにより,子ども同士のかかわりや学びを 深めていくことであるo

r

子ども同士のかかわ り合い,学び合いを組織する J とは,教師が子 どものよさや考えを,つないだり引き出したり しながら,かかわりや学びをリードしていくこ とである。こうした主に授業を通しての教師の 支援のもと,子どもたちは,友だちとのかかわ りを深めるごとに,学びを深めていく姿を見せ た。 時にはそれが,教師の計画や認識を超えて 子ども自身が学びを展開させることもあり,か かわりの深さと学びの深さは,コインの裏表の ような密接な関係にあることが再確認された。

5.小学校 f接続期jにおける人間関係作り の支援に必要な教師の視点

観察を通して明らかになったことをもとに,

次のように教師の視点を提示した。

一人ひとりの子どもを理解し,信頼関係を築 くための支援として・いっしょに行動する・保 育者や保護者からの情報を生かす・他の教師か らの情報を得る・子どもの姿を記録するといっ た視点が必要だと考えた。

子ども同士がかかわり合い,学び合うための 支 援 と し て は 学 び の 入 口 を 大 切 に す る ・ 子 ども同士が交流する場や時間を保障する・綿密 で柔軟な活動を組み立てる・子どもの考えを引 き出し,つなぎ,価値ある内容へ高める・聴く プロをめざすといった視点が必要だと考えた。

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参照

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