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約款のわかりやすさ―ドイツ法における不明確準則 と透明性原則

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約款のわかりやすさ―ドイツ法における不明確準則 と透明性原則

著者 プレルス, ユルゲン

雑誌名 明治学院大学法学研究 = Meiji Gakuin law

journal

巻 91

ページ 233‑256

発行年 2011‑08‑31

その他のタイトル Jurgen Prolss: Die Verstandlichkeit von Allgemeinen Geschaftsbedingungen ―

Unklarheitenregel und Transparenzgebot im deutschen Recht

URL http://hdl.handle.net/10723/1762

(2)

約款のわかりやすさ

―ドイツ法における不明確準則と透明性原則

ユルゲン・プレルス 金岡京子(訳)

阿部満(監)

A.はじめに

 特に,大量取引で同様の契約を締結する企業は,多くの取引において,個別 に契約条件を交渉するのではなく,あらかじめ作成された同一の契約条項,い わゆる普通取引約款

AGB

を使用しています。このような約款を使用する場 合には,多くの問題が生じます。そのためドイツでは,かなり以前から,約款 規制法が規定されており,2002 年以降は,民法に規定されています(ドイツ民 法 305 条以下)。どのような要件が満たされれば,約款が契約内容になるか,特 に定められています。さらにどのような要件に該当すれば,約款は,顧客に,

とりわけ消費者に,不利であることを理由として,無効とされるのか,という ことも特に規定されています。約款の無効を定める規定(ドイツ民法 307 条から 309 条)は,内容規制に関する規定と呼ばれています。

 日本において約款規制法の改正が検討されていますので,おそらく日本に とって関心があると思われる次の問題について,私の講演で取り上げたいと思 います。約款条項を一目見ただけでは,約款にどのような内容が規定されてい るかについて,明確に理解できない事態が,繰り返し起こっています。約款で

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はしばしば非常に抽象的な概念が使用されていることが,特にその原因となっ ています。したがって,いずれにしてもドイツでは,ある条項がどのように理 解されるべきかについて,しばしば争われています。その場合には,その条項 がどのような内容であるかについて,その条項の解釈を通して,確定しなけれ ばなりません。解釈によりその条項の内容が明らかにされない場合は,したがっ て,その条項があいまいな場合には,ドイツ法では,このような場合に適用さ れるべき特定の準則が存在します(ドイツ民法 305

c

条2項)。この準則によれば,

その解釈について疑義がある場合には,約款条項は,作成者不利に,したがっ て顧客に有利に,解釈されなければなりません。その他のルールとして,ドイ ツ民法 307 条1項2文の,いわゆる透明性原則があります。この原則は,約款 条項が,明確,かつ,わかりやすく規定されていない場合には,無効とするこ とができる,ということを定めています。

 私は,最初に,約款条項がこれらの準則により,どのように解釈されるべき かについて,お話しいたします。その後,解釈の結果が一義的でない場合に生 ずる法律効果について,お話しいたします。この講演では,最初に不明確準則 について,その後,透明性原則についてお話しいたします。そして最後に,不 明確準則と透明性原則との関係についてお話しいたします。

B.約款条項の解釈

 したがって最初に,約款条項の解釈についてお話しいたします。約款条項の 解釈には,二つの意義があります。第一に,約款条項の適用範囲の確定が行わ れます。この場合にはたとえば,保険者の普通取引約款の,これは普通保険約

AVB

と呼ばれていますが,危険不担保が,Xという危険の場合を含むか 否か問題となります。この解釈はまた,内容規制のためにも重要です。約款条 項が顧客に不当に不利であるか否かという問題においても,解釈によって確定

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されたその条項の内容が基準となるからです。私がここで挙げた例では,たと えば,危険不担保条項は,Xという危険の場合も含むと解される場合には,無 効となる可能性があると考えられますが,Xという危険は不担保とされない場 合には,疑義は生じません。

 どのような準則に基づき,約款を解釈すべきであるかということは,不明確 準則を除き,法律上規定されていません。したがって,理論的には複数の約款 解釈の可能性があります。

I.法律類似の解釈

 一つの可能性は,法律家が法律を解釈する方法と類似した方法で,約款を解 釈することにあります。当然のことですが,法律の解釈においては,法律の文 言が重要な役割を演じます。しかし,法律の文言は,通常の市民の理解による ならば,簡単に確定されるものではありません。抽象的な法律概念の場合には,

通常の市民が,法律の文言の確定を全くできないこともあり得ます。このこと 以外にも,いずれにしてもドイツの伝統によれば,法律概念を正確に確定する 場合には,可能性のあるあらゆる観点が考慮されます。たとえば,これらの解 釈基準が相互にどのように関連するかについては,この講演では詳しく述べる ことができませんが,その規定の体系的位置づけ,その法律の成立史,また特 にその法律の目的が考慮されます。

 少なくとも法律解釈と類似の方法(1)で約款を解釈する場合には,同一の約款 解釈が奨励されます。他方において,約款は法律ではなく,法律行為による意 思表示の内容です。したがって,この意思表示の相手方の理解を相当程度無視 することはできません。そのため,以前は裁判所で優先されていた(2)法律類似 の約款解釈は,現在の通説では,もはや支持されていません(以下Ⅲ参照)

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II.個々の受領を必要とする意思表示の解釈原則による解釈

 個々の受領を必要とする意思表示の解釈原則による解釈は,法律類似の解釈 に代わるものであると解されています。表意者と相手方の理解が合致しない場 合は,そのような意思表示は,表意者が相手方にその意思表示を実際に理解さ せようとしたとは解釈されず,また,相手方がその意思表示を実際に理解した とは解釈されません。むしろ,相手方が認識可能な意思表示の事情に基づき付 与することを認め,かつ,付与しなければならなかった意味が重要になります。

日本においても,この解釈は似ているのではないかと思います。

 この解釈において決定的に重要なのは,意思表示の具体的相手方であり,し たがってまた,その意思表示に先立つ具体的事情もしくはその意思表示に伴う 具体的事情も重要です。たとえばドイツで,ある機械の売買に関する契約が締 結されたとします。その売買価格は,「ドル」で支払われるべきことになって いました。売主は,アメリカドルの意味での「ドル」による支払を求めていま した。買主は,カナダドルで支払うべきものと思っていました。通常であれば,

「ドル」という文言から,アメリカドルであると理解されるべきです。そして,

売主は,錯誤による取消し(ドイツ民法 119 条1項)によってのみ,その契約を やめることができます。しかし,売主がカナダ人であり,かつ,その機械がカ ナダから輸入されることになっており,そのことを買主が知っていた場合には,

買主は,「ドル」という売主の意思表示をカナダドルの意味で理解する可能性 があります。このように意思表示の具体的相手方の見解を考慮することは,約 款の解釈の観点では,通説によって否定されています(以下Ⅲ参照)。約款がそ の合理化の目的を果たすべきものであるならば,約款は一様に解釈されなけれ ばならないからです。このことは,特に,普通保険約款

AVB

の場合にあて はまります。

(6)

237 III.平均的顧客の理解に基づく解釈

 法律類似の解釈の欠点ならびに個別的解釈の欠点を回避し,できる限り同一 の約款解釈を実現するためには,いわゆる客観的解釈が行われます。客観的解 釈による場合に,約款の内容に関し,当事者の合致した意思が確定されないと (3),法律の専門知識はないが,思慮深く,つまり,当事者の利益を考慮して,

約款を評価する,平均的顧客の理解(4)が基準となります。この場合,取引が行 われる市場において,通常のありかたで行動する顧客が基準となります。した がって,保険約款の解釈の場合には,平均的保険契約者が基準となります。そ れゆえに契約締結時の具体的事情が,約款の解釈において何等役割を演じない 場合であっても,その事情がなんらかの意味をもつと解される場合もあります。

約款の使用者が,具体的事例において,約款条項の内容に関し,平均的顧客の 理解に基づく解釈と矛盾するような,特別な期待を顧客に呼び覚ました場合に は,その条項は,不意打ち的であり(5),その場合には,ドイツ法では契約の構 成内容にはなりません(ドイツ民法 305

c

条1項)。少なくとも,誤った教示を理 由とする,顧客の損害賠償請求権が考慮されます(ドイツ民法 242 条2項との関 連におけるドイツ民法 280 条1項;保険契約法に関する特別規定は,保険契約法6条)  一見したところ,誰が見ても,まったく明確で,確定的な意味をもった約款 ではなく,したがってその意味を解釈するために,何らかの苦労をしなければ ならない場合には,平均的顧客の理解を確認することは困難です。分別をもっ て約款を評価する平均的顧客は,経験的に把握し得る人ではないからです。し たがって,約款の解釈を判断する裁判官は,分別ある顧客の役割を確たる基準 によって定義することなしに,俳優のように,分別ある平均的顧客の役割の身 になって考えなければなりません(6)。高官の地位にある裁判官は,約款の解釈 について争われていたときは,彼の秘書の理解に左右されていた,ということ を,かつて私に語ったことがあります。

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 平均的顧客の理解を基準とする約款の解釈には,例外もありますし,具体化 されているものもあります(7)。たとえば,普通保険約款の場合にしばしば起こ ることですが,確定的に記述された法律概念を用いた約款条項の解釈において は,原則的にこの概念に関する法律家の理解が基準とされるべきであると解さ れています(8)。いずれにしても,法律概念が問題となっていることを平均的顧 客が認識できた場合に,この基準が適用されます(9)。また,多数の見解が賛成 していますが,法律類似の解釈が,約款の客観的解釈に比べ,平均的顧客にとっ て有利な場合には,法律類似の解釈が行われるということが,主張されていま (10)。この点に関しては,この講演ではこれ以上立ち入らないで,これから不 明確準則についてお話しいたします。

C.不明確準則(ドイツ民法 305c 条2項)

 これまで述べてきた客観的解釈によって,ある約款条項の意義が明らかにな らず,したがって,Xの意味にも,Yの意味にも解釈できる場合には,顧客に 有利な意味が優先的に選択されるべきことになります。このことによって,少 なくとも(部分的に),不合意に至り,その結果,その契約が無効(一部無効)

になることが回避されるべきであると解されています(11)。不明確準則による不 合意の回避は,約款使用者に不利になるということは,約款使用者が約款を作 成したことに責任を負っているという考え方からきています。不明確準則には,

実際に役立つ長所があります。なによりもまず複数の解釈の可能性が問題と なっているときは,裁判所は,複雑な考量を行うことにより,平均的顧客の理 解に一致する解釈として,可能性の一つを決定する必要はなく,不明確準則を 援用することができるからです。

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239 I.不明確であること

 不明確であるとは,ある条項が多義的に解釈され得ることを意味します。い ずれにしても,ある条項が特定の事情を取りこんでいることは,しばしば確実 です。したがって,他の事情もその条項に取り込まれているか否か,つまり,

その条項がXの場合だけに関係しているのか,あるいは,Yの場合も関係して いるのか,ということだけが問題となります。

 したがって少なくとも,ある約款条項に二つの解釈の可能性がなければなり ません。正しい見解によれば,その可能性が,等しい価値をもっている必要は ありません。したがって,顧客に不利な可能性のほうが重要であるとされやす いこともあり得ます。しかし問題となっている可能性は,その正確な重さを決 めるために,秤に載せられていません。なぜなら,たとえその重さを決めるこ とができた場合であったとしても,平均的顧客に対し,解釈の可能性の重要さ について,さらに考慮することを要求できないからです。純粋理論的な性質で あって,実践的に考察されないこのような可能性は,確かに考慮されないまま となっています(12)

 裁判所が不明確であることを認めた事案について,皆様に若干紹介いたしま す。これらの事案では,特に,保険約款の条項が問題となりました。普通保険 約款においては,不明確準則は特別重要な役割を担っています。

 傷害保険の普通保険約款には,「一つの腕の肩関節」が機能不全になったと きは,70%の固定身体障害段階であると認められる,と規定されています。あ る保険契約者が傷害を受けました。その保険契約者の肩関節は,機能不全にな りました。しかしその保険契約者は,前腕をまだ 50%動かすことができました。

したがって保険者は,同様に普通保険約款に規定されている一つの腕の機能不 全の段階に基づき,その身体障害の程度を判定しました。その結果,70%をは るかに下回る身体障害の段階であると査定されました。連邦通常裁判所は,保

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険契約者に有利に判決しました(13)。肩関節の機能不全だけが問題となるのか,

つまり傷害を受けた身体部分だけが問題となるのか,あるいは,腕全体の機能 に対するこの機能不全の結果も考慮されるのか,ということが不明確であると 判断されました。

 保険の分野から他の非常にわかりやすい例をお話しいたします。馬の責任保 険には,「馬車馬」は担保されないという条項がありました。保険契約者は,

一匹の馬に引かれる馬車を使う,ある祭りで,馬車による走行のために,一匹 の馬をときどき代用していました。その馬は,保険契約者が賠償しなければな らない損害を発生させました。保険者は,馬車による損害は不担保としている ことを理由として,保険契約者をその損害賠償義務から救済することを拒絶し ました。この事例では,典型的な馬車馬による損害,つまり馬車を引くために 通常使用されている馬による損害が不担保とされているのか,あるいは,不担 保とするためには,ある馬が馬車を引いているときに損害が発生したことだけ が問題となるのか,不明確です。具体的な事案においては,最初の解釈の可能 性のほうが,保険契約者にとって有利な解釈でした。したがって裁判所は保険 契約者に有利に判決を下しました(14)。もっとも,有利さを確定するときに,単 純に具体的事案に照準を合わせてよいかどうかは,疑問視されています。そこ で,これからこの点についてお話しいたします。

 最後の例として,ある自動車販売業者の約款のある条項について取り上げま す。この条項は,次のように書かれていました。「売主は,引き渡したときか ら1年間,その時々の技術水準に応じて欠陥がないことを保証します。」この 約款条項では,保証は,自動車の引き渡し後はじめて発生した欠陥も含むか,

あるいは,引き渡し時にすでに存在していたが,引き渡し後に初めて発見され た欠陥のみを含むのか,不明確です。連邦通常裁判所は,2002 年より前に適 用される法に関する判決において,この条項は,この点に関して不明瞭であり,

したがって,最初の選択肢の意味で,買主に有利に解釈されるべきであること

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を認めました(15)。もっともその保証は,売主の責めに帰すべき自動車の状態と は何ら関係がない欠陥,たとえば買主の責めに帰すべき欠陥,にまで拡張され ることはありません。

II.顧客に有利な解釈の可能性の基準

 複数の解釈の可能性がある場合には,顧客に有利な解釈の可能性が基準とな ります。有利さを確定する際には,ときどき見分けがつかない多くの問題が生 じます。

 最初に問題となるのは,ある約款条項の解釈に問題を生じさせる原因となる 具体的事案に照準を合わせるべきであるかどうかということです。つまり,ま さに具体的な事案において,解釈の可能性の一つが,顧客に有利であるかとい う点に照準を合わせるべきであるか否かが問題となります。正しい見解によれ ば,具体的事案に照準を合わせることは否定されるべきです(16)。約款の解釈に おいては,契約締結時が基準となるからです。したがって,契約締結後にどの ような事情が生じたかということを基準とすることはできず,むしろ,その事 情がその前からどのようであったかを確認しなければなりません。解釈の可能 性の一つが,他の解釈の可能性に比べ,顧客に有利であるか否かという予測が 前提となっています。次にさらに問題となるのは,具体的な顧客の事情が問題 となるのか,あるいは,抽象的な基準により,つまり,平均的顧客に照準を合 わせた基準により,解釈されるべきであるかということです。このことを説明 するために,馬車の例に戻ってみましょう。典型的な馬車馬による損害のみを 不担保としていると,この条項を解釈するならば,この解釈は,通常の馬を所 持していて,ごくたまにこの馬を馬車馬として利用している全ての保険契約者 にとって有利になります。その場合にはその馬による全ての損害について,保 険保護を得られるからです。しかしながら,この解釈は,典型的な馬車馬を所 持している保険契約者にとって不利になります。この馬車馬による全ての損害

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が不担保とされるからです。したがって馬車を引くためにこの馬を使用するこ とによるのではなく発生した損害も,不担保とされてしまいます。正しい見解 によれば,抽象的基準に基づき解釈されるべきです(17)。その解釈は,平均的顧 客の理解を基準とするため,その理解は,顧客に有利な解釈を確定する場合に も適用されなければなりません。馬の責任保険契約を締結するドイツの平均的 保険契約者は,たいていの場合,通常の馬のみを所持しているため,典型的な 馬車馬による損害のみが不担保とされると,その不担保の詳細は解釈されるべ きことになります。したがって,上述した判決は,間違って具体的な保険契約 者の事情に基づき,解釈の可能性の有利さを判断しましたが,結果的には正し いことになります。

 解釈の可能性の一つが,その顧客にとって,一部は有利であるが,一部は不 利であるということもあり得ます。その場合に,いずれにしても出発点におい て考慮しなければならないことは,その不利益が平均的顧客にはわずかな場合 にしか発生せず,したがって結果的に利益が勝っているか否かということです。

したがって利益と不利益が,比較考量されます(18)。普通保険約款の条項が,保 険契約者に不利に,保険契約法の片面的強行規定と異なっているか否かという 問題に関しても,同様の比較考量を行うことが重要となります(19)

 様々な解釈の可能性の一つが,他の解釈の可能性に比べ,その顧客にとって 有利であるか否かを確定することができない場合は,その条項は,内容に関す る合致がないため,合意されていないことになるか(20),あるいは,これからお 話しする透明性原則違反を理由として,無効となります。

III.不明確準則と狭義の内容規制との関係

 透明性原則について詳しくお話しする前に,不明確準則と狭義の内容規制と の関係についてお話しする必要があります。狭義の内容規制は,顧客に不利な 内容を理由として約款を無効にします(ドイツ民法 307 条1項1文)。したがって,

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不透明であることを理由とする無効(ドイツ民法 307 条1項2文)ではありません。

 ある約款条項の内容を判断するためには,問題となっている条項がどのよう に解釈されるべきであるかということが重要です。解釈の可能性が複数ある場 合には,顧客に最も不利な可能性が解釈されなければなりません。したがって その条項は,内容規制の枠組みにおいては,顧客に最も不利な可能性にしたがっ て判断されます。このような,顧客にもっとも敵対的な解釈原則は,最初は,

消費者団体が特定の約款の使用差し止めを求めた訴訟で適用されました(21)。現 在,連邦通常裁判所は,個々の顧客が条項の無効を求めたときも,この原則が 適用されるという判決を出しています(22)

 不明確準則にとって,これは次のことを意味しています。すなわち,顧客に 最も敵対的な解釈をしたときでも,ある条項が,内容規制の観点から有効であ る場合にはじめて,不明確準則に活躍のときがやってくるということです。あ る条項の有効性が肯定されたときにはじめて,不明確準則が適用されます。そ して不明確準則を適用するときには,顧客に最も有利な解釈が適用されるとい うことを意味しています。したがって馬車の例では,何らかの馬が馬車を引い ているときに,その馬によって引き起こされた損害を不担保とすることが有効 であるか否かが,最初に検討されます。なぜならこの解釈は,通常の保険契約 者にとって,最も不利な可能性を示しているからです。この解釈による場合で あっても,その条項が有効であるとき,すでにお話ししましたように,その条 項は,典型的な馬車馬による損害のみを不担保としていると解釈されるべきこ とになります。

C.透明性原則(ドイツ民法 307 条1項2文)

 これぐらいで不明確準則に関する説明を終えまして,これからいわゆる透明 性原則についてお話していきます。不明確準則と透明性原則の関係については,

(13)

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最後に取り上げます。

I.透明性原則の内容

 ドイツ民法 307 条1項2文には,ある約款の条項を無効にすることができる 不当な不利益は,ある約款の条項が,明確でわかりやすいものでないことから も生じ得ると規定されています。したがって約款の条項は,明確で,わかりや すいものでなければなりません。そうでない場合は,いずれにしても原則的に は,無効になります。これが,民法改正前に,したがって,透明性原則を明示 的に規定していなかった約款規制法9条により,約款の無効が判断されていた 時に,すでにドイツの判例が認めていた,いわゆる透明性原則です。

 この原則の適用範囲は,(狭義の)内容規制の適用範囲よりも広いです。企業 の給付に関する記述の中心部分は,総じて約款で規定されている場合には,内 容規制を受けません。たとえば,保険契約の場合は,通常,給付記述の中心部 分が約款で規定されています。この講演では,詳しくお話ししませんが,この 中心部分は,ドイツ民法 305 条3項1文(条項が法規から逸脱しているか,もしく は法規を補充している場合にのみ,内容規制を受ける。)において,非常に不十分に 規定されています。いずれにしても,透明性の観点では,内容規制に関する制 限はありません。このことは,いまや,法律で規定されています(ドイツ民法 307 条3項2文)

 透明性原則に関しては,数多くの学説があり,ここでは学説について詳しく 論じることはできませんが(23),透明性原則は,通常はさらに,わかりやすさの 要請,確定性の要請,誤認惹起の禁止に小分類されます。また,学説において は,さらに別の区分もあります(24)。これらの要請と禁止を厳格に区分すること はできません。いずれにしても,透明性原則の中心には,わかりやすさの要請 があるというべきです。確定性の要請は,不確かな記述によって,企業が過剰 な裁量の余地を留保することから,顧客を保護しているということだけを指摘

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245

するにとどめておきます。確定性の要請による顧客の保護は,わかりやすさの 要請による保護と並んで,重要な独自の意義を得ることができます。確定性の 要請の例としては,たとえば,将来供給をおこなうことになっている企業に,

不確定な価格の引き上げの余地を与える価格調整条項が,思い浮かびます。

 わかりやすさの要請は,少なくとも確定性の要請との関連においては,約款 の使用者が,たいていの場合は企業ですが,その契約の相手方の権利および義 務について,できる限り,明瞭に,見通すことができるように記述し,そのこ とによって,いずれにしても,理解しようと努める平均的顧客にとって,ある 約款条項の効果が明確になるようにすることを要請しています。とりわけ,発 生する可能性のある経済的不利益と負担については,顧客ができる限り広く認 識できるようにしなければなりません(25)。約款の記述の結果,顧客が自分の権 利を見通せない危険は,できるかぎり排除されなければなりません(26)  これは非常に一般的であり,確かにさらに詳しく定義づけることはできませ ん。しかし,透明性原則違反を認めることには,慎重であるべきであり,可能 性の枠組みの中でのみ,明確さが要求され得ることが,相当程度,重視される べきです。約款を使用する企業は,一目見ただけでは明確に理解することがで きない概念を,ある約款条項の内容とされるすべての事情を列挙した,長いリ ストに簡単に代えることはできません。これは,顧客に過大な要求をすること になり,また,決して可能ではないと思われます。したがって,ある約款条項 を難なく明確に規定することができない場合には,一目見ただけでは,平均的 顧客がその適用範囲を理解できない比較的抽象的な概念を使用することが,約 款の使用者に認められなければなりません。特に保険者の場合に,このような ことが起こります。保険者は,平均的保険契約者が理解することが難しい,部 分的にかなり複雑な概念を必然的にその約款で使用しなければなりません。他 方において保険者は,約款の理解を過度に妨げてはなりません。したがって連 邦通常裁判所は,不透明であることを理由として,様々な普通保険約款の条項

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246

を無効にしました。たとえば,保険契約者に対し,生命保険を解約したときの 解約返戻金の計算について,十分に明確にせず,非常に抽象的に規定された約 款条項を具体化するために,それ自体不十分である,一覧表を参照指示する約 款条項は,連邦通常裁判所によって無効にされた約款条項の例です(27)。した がって保険契約者は,保険契約者に不利な早期解約の効果をある程度明確に見 通すことができませんでした。

 保険法から取り出した例ではない,その他の不透明性に関する解説例は,以 前広く普及していた約款条項です。この約款条項によれば,企業に対する顧客 の何らかの請求権が,たとえば損害賠償請求権が,「法律で認められる限り,

排除されます。」と規定されています。顧客は,このような約款条項の効果も 判断することができません(28)

 まだ例をあげていくことはできますが,これ以上例を挙げることは控え,透 明性原則の若干の特別な問題について,これから論じます。

II.透明性原則の特別な問題

1.内容的に不利であるという要件

 平均的顧客にとって不透明な条項の無効は,不透明であること以外に,その 条項がなかった場合の状態に比べ,内容的に顧客に不利であること(29)を要件 とするか否かが争われています。その場合に,ドイツ民法 307 条1項1文の意 味で不当であるとはいえない不利益のみが問題となり得ます。なぜなら,そう でなければ,内容規制により,その条項はすでに無効とされるからです。正し い見解によれば,このような不利益は要件とされません(30)。もっとも,(平均 的顧客よりも高い能力があり,したがって条項の意味を理解できる人の観点からみた場 合に(31),平均的顧客にとって有利な条項は,顧客からその利益を奪うことは 許されないため,本来は,不透明であることを理由に非難され得ないものです。

しかし多くの著者は,企業に対し,将来,有利な条項をわかりやすく記述させ

(16)

247

るために,有利な条項についても,消費者団体訴訟において,透明性規制をお こなうことを達成したいと考えています(32)

2.特別な問題

 この問題以外にも,透明性原則にはまだ別の問題があり,また,さらに新た な問題が生じるでしょう。なぜならすべての法原則は,それが非常に単純なも のであるとしても,予測することができない次の問題を必然的に生じさせるか らです。

 法規の文言を再現している条項(いわゆる宣言的条項)は,正しい通説によれ ば,不透明であるという理由で無効とすることはできません(33)。しかし約款使 用者に対し,とりわけ上述した場合には保険者が問題になりますが,裁量の余 地を認め,したがって具体的に異なった記述がなされ得る法規の場合には,連 邦通常裁判所の見解によれば,その具体的な記述に関し,透明性原則による規 制を受けるべきであるとされています(34)。約款の使用者が,法規と異なる内容 にはなっていないが,法規の規定を独自の文言で再現している場合には,制限 された規制であるとしても,部分的に規制を行うことが支持されています(35)  さらに最近連邦通常裁判所により判決された問題について,指摘しておきた いと思います。その問題は,不透明な条項が無効とされたときの効果に関する ものです。不透明な条項が,補充的契約解釈(36)の方法で,内容は同じであるが,

透明な条項により代替され得るか否かということが問題となります。連邦通常 裁判所は,普通保険約款が無効とされた事案において,これを否定し,保険契 約者が実質的によりよい状態になることを求めました(37)。連邦通常裁判所の見 解には賛成できません(38)

(17)

248 D.不明確準則と透明性原則の関係

 最後にこの講演のテーマとの関連で最も重要な問題の一つにたどりつきまし た。つまり,不明確準則と透明性原則との関係にたどりつきました。不明確準 則を適用する場合と,透明性原則違反を理由としてある条項を無効にする場合 とでは,大きな違いがあります。

 判例は,二つのルールの相互の関係について,明示的に述べていません。判 例は,時には,不明確準則を適用し,ときには,透明性原則違反を理由として,

不明確な条項を無効であると判断しています。明確な境界線を識別することは できません。この点に関して,一つの例があります。高度障害保険のための普 通保険約款では,「先天性の疾病」による高度障害は,不担保とされていました。

連邦通常裁判所は,この条項を不透明であるとして,無効と判断しました(39) 誕生後長い年月を経て初めて発症する遺伝的疾病も含まれるか否かは,平均的 保険契約者にとって不明確であるとされました。私の考えでは,この約款条項 は,この点に関して,決して不明確ではありません。しかし不明確であると認 めるときには,不明確準則が適用されるか否か,したがって,その約款条項は,

保険契約者にとって最も有利な内容で有効とされ得たか否かが,検討されなけ ればならなかったと考えます。別の判決においては,失業に対する保険におけ る失業の概念が問題となりました。連邦通常裁判所の見解によれば,保険者は,

普通保険約款で詳細に記述されているこの概念を社会法の意味で理解すること を望んでいたのではなく,社会法から離れた独自の定義を用いることを望んで いたと解されました。しかし保険契約者は,その条項の特定の詳細な記述を根 拠として,保険者が,社会保険法の定義を使っていると考えることは可能であっ たとされました。したがって,その条項は不透明であると解されました(40)。し かし連邦通常裁判所は,この事案においても,なぜ不明確準則を適用しなかっ

(18)

249

たかについて,述べるべきであったと考えます。

 もしかすると,連邦通常裁判所は(41),一部の学説(42)が懸念しているように,

不明確準則よりも透明性原則を優先させる傾向があるかもしれません。しかし 不明確な場合にはすべて不透明であると判断するならば,不明確準則は,もは や適用の余地がなくなってしまいます。不明確準則は,意味のないものになっ てしまいます。さらにいえば,解釈において疑義が発生し得ないほど明確に規 定されている約款条項は,ほとんどありません。概念は,どのような現在の事 情と将来の事情が示され,また示されていないかについて,あらかじめ明確に 決定することができるほど正確に言語で表現されていません。したがって,不 明確準則の意味での不明確さと,透明性原則の意味での不透明さを区別しなけ ればなりません。

 その場合に,次の点が出発点とされるべきです。すなわち,平均的顧客がまっ たく理解できない約款条項は,そもそも契約内容にはならないということです。

なぜなら理解不能の場合には,その約款条項が規律すべきことに関する契約の 内容について合意がまったく成立していないからです(43)。少なくともこのよう な条項は,透明原則違反により,無効となります。したがって問題となるのは,

平均的顧客が,ある意味を認めることはできるが,その意味が一義的でない約 款条項のみです。

 このような約款条項を顧慮し,おそらく次のように区別されるべきです。あ る約款条項の適用範囲を顧慮すると,ある程度明確に輪郭づけることができる 様々な解釈の選択肢が存在する場合には,不明確準則が適用されます。したがっ て,この意味で多義的な約款条項は,透明性原則違反による無効にはなりませ (44)。ある条項の抽象的な適用範囲は,ある程度明確に輪郭づけられています が,顧客が,この条項の内容から生ずる効果を認識できない場合は,異なりま (45)。その約款条項の経済的意味は,顧客にとってあいまいなままです。この ような場合には,顧客が様々な解釈の選択肢と向き合っていることが問題とな

(19)

250

るのではありません。したがって,その条項が,Xの場合を含むのか,あるい はYの場合を含むのかということが問題となるのではありません。むしろ問題 となるのは,その条項の内容に関する記述が,この内容の条項が有する効果に ついて,顧客に十分な情報を提供していないということです。この点に関して 明確にするためには,追加的な情報提供が求められたと考えられます。一つの 好例は,「法律により認められる限り,」企業は,その責任を免れると規定する,

すでにお話しした約款条項です。保険契約者により早期に解約されたときの生 命保険の解約返戻金についての不正確な定義も,保険契約者に複数の具体的な 解釈の選択肢が認められるという事例ではありません。むしろ保険契約者は,

早期の解約が保険契約者にどのような不利益をもたらすかということについ て,普通保険約款を手掛かりに認識することができません。

 たとえば,エネルギー供給契約のような継続的債務関係において価格を変更 する点に関し,企業に不確定的な裁量の余地を認める約款条項の場合にも(46) 不透明な約款条項が問題となり,不明確準則の適用は問題となりません。確か にこのような約款条項の場合には,顧客に対し,不確定的にマイナスの効果を もたらす可能性があることは,すでにその約款条項の内容から明らかです。こ の点に関する限り,その条項は,顧客にとってわかりやすいといえます。しか しながら,決定的に重要なのは,すでに述べた約款条項の場合と同様に,顧客 は,適用される可能性のある,この約款条項の効果の範囲を判断できないとい うことです。

 したがって,不明確準則と透明性原則の関係を明らかにするためには,透明 性原則の適用は,不明確準則を適用するために,ここで提案した意味で制限さ れるべきであるということです(以下E,

Y

第3文参照)

(20)

251 E.おわりに

 これで私の講演は,終わりにやってきましたが,日本において約款規制に関 する法の改正が検討されている事実を考慮し,若干の法政策的指摘を行いたい と思います。

 約款の解釈は,ドイツ法においてそうであるように,約款を読み,約款を思 慮深く評価する平均的顧客の理解に基づき行われるべきです。確かに,ほとん どの顧客が,契約内容となるべき約款を全く読まないことは,明らかです。し かし,このことから,約款の解釈は,平均的顧客には隠された基準によって行 われるということになる可能性はありません。法律を解釈する方法で解釈する ことが,平均的顧客にとって有利にならない場合には,いずれにしてもこの解 釈が有効です。もっとも,専門的な概念が使用されている場合には,特に法的 概念が使用されている場合に,平均的顧客が,専門的概念が問題となっている ことを認識することができ,それゆえに,この概念が意味する内容を正確に知 りたい場合に,たとえば交渉中の企業に,専門知識に基づく助言を求める機会 があるときは,専門的な意味を考慮して解釈すべきであると考えられます。こ れらすべてのことは,明示的に規定されるべきです。その他の点では,ドイツ 法のように,不明確準則も法律で規定されるべきであると考えますが,次の指 摘を加えるべきです。つまり,その条項が,顧客に最も敵対的な意味で解釈し たとしても(上記

C

Ⅲ参照)有効な場合には,この準則がはじめて適用される ということです。この事柄を規律する法規は,次のように規定することができ ると思われます。

X:

(1)法律解釈の方法により,異なる解釈を行ったときに,平均的顧客 に有利にならない場合には,約款は,約款使用者の正当な利益も配慮したうえ で思慮深く約款を評価する平均的顧客が,約款を理解しなければならないよう

(21)

252

に,解釈されなければならない。(2)認識可能な専門概念が使用されている ときは,その専門的な意味により解釈される。(3)これらの規定による解釈が,

明確な結果をもたらさない場合に,解釈されるべき約款条項を顧客にとって最 も不利に解釈した場合であっても,その約款条項が無効にならないときは,平 均的顧客にとって有利な解釈の可能性が優先される。

 透明性原則も,法律で規定されるべきであり,かつ,不明確準則との関係は,

明確にされるべきです。このような規定は,ドイツ法で規定されたものとは若 干異なり,より具体的に定めることができると思われます。

Y:

(1)理解できない約款条項は,契約の構成要素にならない。(2)平均 的顧客が,わかりやすい概念が使用されている約款の条項の効果を十分に明確 に認識できない場合に,より明確な記述が可能であったと認められ,かつ,そ の規定の量が不適切に増大しなかったと認められるときは,その約款条項は無 効である。(3)その不明確さが,個々の場合の条項の適用に関係する場合は,

X

第3文が適用される。

[謝辞・付記]

 本稿は,2010 年 11 月2日明治学院大学法律科学研究所でおこなわれた,「外 国人招聘スタッフセミナー」におけるユルゲン・プレルス教授の講演に,プレ ルス教授が脚注を加えたドイツ語原稿とその原稿の翻訳である。当日の通訳は 福田清明明治学院大学法科大学院教授が担当された。ドイツ民法と日本民法双 方に精通された福田教授の通訳によって,プレルス教授と参加者の間で細部に 至るまで正確なコミュニケーションが可能となり,当日は盛んで充実した質疑 応答をおこなうことができた。また,本稿の翻訳は,平成 20 年度文部科学省 国際化加速プログラムの採択を受けて派遣されたベルリン自由大学法学部ユル ゲン・プレルス教授のご指導もとで,民法,約款規制および保険法を研究され た金岡京子東京海洋大学教授によるものである。金岡教授には,ドイツ語原稿

(22)

253

の日本語表現に馴染みにくい部分の翻訳についてプレルス教授の許諾を取るな ど,わかりやすく正確な翻訳のために多くのご配慮とご努力をいただいた。福 田教授,金岡教授に記して感謝したい。原稿形式の整理と付記を阿部が担当し (阿部)

* ベルリン自由大学名誉教授(民法・保険法)

(1) 通常の法律解釈との相違については,本稿では取り上げない。この点に関しては,

Pilz, Missverständliche AGB,

2010

, S.

8 以下参照。

(2) 以下の判決のみを参照として挙げる。

RGZ

170

,

233

,

240

;

171

,

43

,

48

; BGH VersR

1967, 652; 1976, 136。

(3) 当事者の意思が実際に合致している場合には,この意思は,選択された表現方 法に左右されることなく,基準となる(いわゆる,falsa demonstratioの原則)。この 原則は,約款の解釈にも適用される。ここでは,次の判決だけを挙げておく。

BGH NJW

2002

,

2102

,

2103

;

2009

,

3422

,

3423。

(4) たとえば,

BGH NJW

2006

,

1056

und für AVB BGHZ

123

,

83

= BGH NJW

1993

,

2369

; BGH VersR

1992

,

606

,

607

;

2003

,

236

; Pilz a. a. O.

(Fn. 1)

, S.

15

ff. m. w. N.;

Prölss in: Prölss/Martin, VVG,

28

. Aufl .

2010

, Vorbem. III Rn.

2。

(5) ある条項の不意打ち的性質が問題となる場合には,連邦通常裁判所は,ある条 項の内容だけでなく,交渉の経過も考慮している(BGH NJW 1987, 2011, 2012; VersR 1999, 745)。また普通保険約款の不意打ち的性質との関連において,個別の事情を 考慮することに関しては,

Prölss a. a. O.

(Fn. 4)

,

6

Rn.

79 参照。

(6) 平均的顧客の理解を基準とすべきであるという,一般的要求に関しては,普通 保険約款の解釈との関連では,

Pilz a. a. O.

(Fn. 1)

, S.

33

ff.; Prölss, Festschr. für E.

Lorenz,

2004

, S.

533

,

534

f

参照。

(7) こ の 点 に 関 し,

Pilz a. a. O.

(Fn.1)

, S.

59

ff.; Prölss in: Prölss/Martin

(Fn. 4)

, Vorbem. III Rn. 9 ff

参照。

(8) この点に関し,BGH VersR 1992, 606; 2000, 311, Prölss in: Prölss/Martin (Fn. 4)

,

Vorbem. III Rn. 10

(もっとも,確定的に記述された法律概念でなければならないとする要

件に対しては,批判がある。)

(9)

Pilz a. a. O.

(Fn. 1)

, S.

65 以下。ピルツは,このこと以外に,専門的概念を使用す ることについて,約款使用者に正当な利益があることを求めている。

(10)

E. Lorenz VersR

2000

,

1092

; Prölss NVersZ

1998

,

17

; ders. In Prölss/Martin a. a. O.

(23)

254

(Fn. 4)

, Vorbem. III Rn. 6; zust. z. B. OLG Nürnberg VersR 2002, 605; Beckmann in:

Beckmann/Matusche-Beckmann, Versicherungsrechtshandbuch, 2. Aufl . 2009, 10 Rn.

169

. Pilz a. a. O.

(Fn. 1)

, S.

45 以下。ピルツは,意思表示の解釈という方法によ り,当該当事者の合致した意思を認めることによって,同様の結論に至っている。

連邦通常裁判所は(詳細な理由を示すことなく),明確に否定している。

VersR

1999

.

748

,

749

;

2000

,

1090

.

(11)

Prölss, Festschr. f. Lorenz a. a. O.

(Fn. 6)

, S.

533

m. N

だけ参照として挙げておく。

(12) Pilz a. a. O. (Fn. 1)

, S. 143 f.; Prölss, Festschr. f. Lorenz

(a. a. O.)

, S. 539 f

参照。連邦 通常裁判所も,不明確原則の適用要件として,複数の解釈結果が純然に是認され 得る場合を述べるときには,たしかにこのことを述べている(BGHZ 112, 65 = 1990, 3016, 3017; VersR 1995, 951)

(13)

VersR

2006

,

1117

.

(14)

OLG Oldenburg VersR

2004

,

772

.

(15)

BGH NJW

1996

,

2504

,

2505

.

(16)

Pilz a. a. O.

(Fn. 1)

, S.

146

f.

(17) たとえば,OLG Hamm VersR 1986, 883, 884; Pilz a. a. O. (Fn 1)

, S. 147 f.; Ulmer in: Ulmer/Brandenr/Hensen, AGB-Recht, 2006, 305 c BGB, Rn. 92 a. Anders z. B.

OLG Hamm VersR 2000, 750, 752; Lindacher in: Wolf/Lindacher/Pfeiffer, AGB-Re- cht,

5

. Aufl .

2009

,

305

c BGB, Rn.

134

.

(18)

Pilz a. a. O.

(Fn. 1)

, S.

152

f.; Prölss, Festschr. f. Lorenz

(Fn. 6)

, S.

541

.

(19) この関連において,通説により認められた利益と不利益との比較考量について は,

Klimke, Die halbzwingenden Vorschriften des VVG,

2004

, S.

57

ff.

が論じている。

(20) 該当する場合については,

Pilz a. a. O.

(Fn 1)

, S.

159

f.

(21) BGHZ 100, 157, 177 = NJW 1987, 1931; BGHZ 119, 152, 172 = NJW 1992, 3158. み参照として挙げておく。

(22)

NJW

2008

,

2172

,

2173

.

通説も同様である。たとえば,

Basedow in: MünchKomm BGB,

5

. Aufl .

2007

,

305

c Rn.

35

; Pilz a. a. O.

(Fn. 1)

, S.

157

f.; Prölss, Festschr. f.

Lorenz a. a. O.

(Fn. 6)

, S.

542

f.

参照。

(23) ドイツ民法 307 条に関しては,たとえば,307

BGB im MünchKomm a. a. O.

(Fn.

22)を参照指示しておく。特に普通保険約款に関しては,

Prölss/Martin a. a. O.

(Fn.

4)

, Vorbem. I Rn.

99

.

参照。

(24)

Wolf in: Wolf/Lindacher/Pfeiffer a. a. O.

(Fn. 16)

,

307

Rn.

253

ff.

参照。

(25) BGHZ 136, 394 = NJW 1998, 454, 456; BGHZ 141, 137 = NJW 1999, 2279, 2280;

(24)

255

BGHZ 147, 354 = NJW 2001, 20014, 2016 = VersR 2001, 841 m. Anm. Präve.

のみを 参照として挙げておく。

(26)

BGHZ

128

,

54

= NJW

1995

,

589

,

590

; BGH NJW

2007

,

3632

,

3635

.

(27)

BGHZ

147

,

354

,

358

ff. = VersR

2001

,

841

= NJW

2001

,

2014

; BGHZ

147

,

373

,

376

ff.

= VersR

2001

,

839

= NJW

2001

,

2012

.

(28) したがって,連邦通常裁判所は,透明性原則違反を認めている。

BGH VersR

1996

,

651

,

653

.

(29) このような不利益は,少なくとも平均的保険契約者に比べ高い能力を有してい る人にとって透明である場合にのみ,認められる。たいていの場合,このことは 強調されていない。

(30) たとえば,

BGH VersR

2007

,

1690

; Grüneberg in: Palandt, BGB,

70

. Aufl .

2011

,

307

Rn.

24

; Pilz a. a. O.

(Fn. 1)

, S.

206

ff. m. w. N.; Prölss in: Prölss/Martin a. a. O.

(Fn. 4)

, Vorbem. I Rn.

103

. Anders z. B. Basedow VersR

1999

,

1045

,

1049

.

(31) 注 29 参照。

(32) たとえば,

Pilz a. a. O.

(Fn. 1)

, S.

21 は,不透明であるが有利な条項を無効である と解しているが,補充的契約解釈の方法で(この点については注 36 参照),その有利 な内容を再び契約に取り込むことを求めている。

(33) この点に関しては,Armbrüster, Festschr. f. Kollhosser, Bd. 2, 2004, S. 3 ffが詳 しく論じている。

Pilz a. a. O.

(Fn. 1)

, S.

223

ff

は,反対説についても論じている。

(34)

BGHZ

147

,

373

= NJW

2001

,

2012

,

2013

= VersR

2001

,

839

. Krit. Prölss in Prölss/

Martin a. a. O.

(Fn. 4)

, Vorbem I Rn.

66

.

(35)

Armbrüster a. a. O.

(Fn. 33)

, S.

10

ff.; Pilz a. a. O.

(Fn. 1)

, S.

231

f.

(36) ある約款条項が無効となり,その約款条項の代わりとなることができる任意法 規が存在しない場合には(ドイツ民法 306 条2項参照),ドイツ法的理解によれば,

その欠缺は,両当事者の合致した仮定的意思が確定され得るならば,両当事者の 利益を適切に配慮した補充的契約解釈により補充されるべきとされる。基本的に は,

BGHZ

90

,

69

= NJW

1984

,

1177

,

1178。

(37)

BGHZ

167

,

297

= NJW

2005

,

3559

,

3564

= VersR

2005

,

1565

; VersR

2007

,

1211

;

2007

,

1547

.

(38)

Pilz a. a. O.

(Fn. 1)

, S.

237

f.; Prölss in: Prölss/Martin a. a. O.

(Fn. 4)

, Vorbem. I Rn.

126

.

(39) VersR 2007, 1690.

(40) VersR 2005, 976.

(41) たとえば,BGH NJW 3632, 3634 und wohl BGH VersR 2008, 816.参照。

(42) たとえば,

Thamm/Pilger, Taschenkommentar zum AGBG,

1998

,

5

Rn.

4。

(25)

256

(43) この見解に賛成する説は,Pilz a. a. O. (Fn. 1)

, S. 101 ff。

(44) Pilz a. a. O. (Fn. 1)

, S. 183 f.; Prölss, Festschr. f. Lorenz a. a. O.

(Fn. 6)

. S. 544.

(45)

Pilz a. a. O.

(Fn. 1)

, S.

200

f. Prölss a. a. O.

(Fn. 44)は,まだそれほど明確ではない。

(46)

Pilz a. a. O.

(Fn. 1)

, S.

202

f.

参照

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