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冬期路面管理の高度化に関する実践的研究 *

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Academic year: 2022

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(1)

冬期路面管理の高度化に関する実践的研究

A Practical Study on Sophistication of Winter Road Management

高橋尚人

**

・徳永ロベルト

**

・浅野基樹

**

・石川信敬

***

・岡村智明

****

By Naoto TAKAHASHI ** ・Roberto TOKUNAGA ** ・Motoki ASANO **

Nobuyoshi ISHIKAWA ***

Tomoaki OKAMURA ****

1.はじめに

積雪寒冷な地域では、冬期における道路交通機能の確 保は重要な課題である。北海道では、冬期路面管理の効 率性向上のため、道路管理者に気象情報と路面凍結予測 情報を提供する冬期路面管理支援システムを試行運用し ている。システムは、逐次改善しながら試行運用してお り、平成 19 年度冬期には、情報提供対象路線と地点の追 加、地図の操作性の向上などのインターフェースの改良 を行った。

更に、当研究所では、冬期路面状態の定量的評価と冬 期路面管理の業績測定に活用するため、路面のすべり抵 抗値を連続的に測定可能な連続路面すべり抵抗値測定装 置を導入しており、平成 19 年度冬期から、路線のすべり 抵抗値の分布を WebGIS 上に表示する取り組みを開始し た。本稿では、これらの取り組み状況について紹介する。

2.冬期路面管理支援システムの試行運用状況 2.1. システムの改善

冬期路面管理支援システムは、平成 19 年度冬期で試行 運用の開始 3 冬目となる。当該年度に取り組んだ変更等 は以下の通り。

1) モデルの改善

構築した路面温度推定モデルの精度(RMSE)は 2℃程 度であったが、沿道構造物の影響(沿道構造物による日 射等の遮蔽と沿道構造物の長波放射)を考慮できるよう にモデルを改良し

1)

(図 1、式(1)~(3))、更に、観測デ ータの蓄積により、反射率(アルベド)や車速等のパラ メータ値を精査して運用したところ、路面温度の推定精 度は、1.2℃に向上した(図 2)。

=σT

+H+lE+G (1)

:路面への入力エネルギー [W/m

2

]

σ

:ステファン・ボルツマン係数(5.67×10

-8

W/m

2

K

4

:路面温度[K]

:顕熱伝達熱量(顕熱フラックス) [W/m

2

]

l

:潜熱伝達熱量(潜熱フラックス)[W/m

2

]

:地中伝達熱量(地中熱フラックス)[W/m

2

]

=S

r

-S

r

+L

r

+L

c

(2)

S r

:路面が受ける正味の日射量 [W/m

2

]

S r

:路面での反射量 [W/m

2

]

L r

:路面が受ける正味の大気放射量 [W/m

2

]

L c

:自動車の車体からの赤外放射量 [W/m

2

]

Lr

=(1-φ)L

r

+φL

strc

(3)

φ:遮蔽率(沿道構造物で天空が覆われている割合)

L strc

:沿道構造物等からの長波放射量[W/m

2

]

図 2 路面温度計算結果例(上:平成 19 年 12 月 11 日~20 日、

下:平成 19 年 12 月 21 日~31 日)

*キーワーズ:冬期路面管理支援システム、路面凍結予測、

情報提供

**正員、

(独)土木研究所 寒地土木研究所

(札幌市豊平区平岸1条3丁目1番34号、

TEL.011-841-1738、FAX.011-841-9747)

***北海道大学 低温科学研究所

(札幌市北区北19条西8丁目、

TEL.011-706-6892、FAX.011-706-7142)

****(財)日本気象協会北海道支社ソリューション部

(札幌市北区北

4

条西

23

丁目、

TEL.011-622-2244、FAX.011-622-8398)

図 1 路面温度推定モデルの概念図

沿道構造物 遮蔽

長波放射

(2)

2) 対象路線の追加

一般国道 231 号を対象に、線的な凍結予測情報の提供 を開始した。当該路線では、平成 18 年度冬期から、地点 での凍結予測情報を提供していたが、検証データの蓄積 とともに、サーマルマッピング調査データの蓄積によっ て、線的予測を行うのに必要な路面温度分布パターンの 情報を得られたためである。

また、平成 19 年度冬期より道路テレメータ・データが 一部利用可能になったため、凍結予測情報を提供する路 線(地点)を追加した。

3) 道路テレメータ・データの活用

道路管理者が設置している道路テレメータのデータを 一部利用できることとなった。このことによって、道路 テレメータが設置されている区間では、新たな設備投資 なしで情報提供対象地点を追加することが可能となった。

今後は、道路テレメータ・データの利用を拡大し、道路 テレメータの設置が疎な区間などに観測機器を補足的に 設置することで情報提供対象路線を拡大する予定である。

4) 地図表示と地図操作性の改善

道路管理者・維持請負業者の使用している PC 画面サイ ズに対応し、地図ウインドウを主に横方向に拡大した。

また、地図は 3 段階で表示倍率を切り替え、地図をドラ ッグして表示位置を変更できるよう改良した。

2.2. システムの利用状況

図 4 にシステムのアクセス数の推移を示す。試行運用 を開始した平成 17 年度冬期には約 10,000 件、平成 18 年度冬期は約 12,000 件のアクセスだったが、平成 19 年 度冬期には、過去二冬を上回る約 27,000 件のアクセスが あった。平成 20 年 3 月のアクセス件数が少なかったは例 年になく温暖だったためと考えられるが、1 月と 2 月に はアクセス件数が月 1 万件に達した。冬期路面管理作業 を行う上で、判断材料の一つとしてシステムの利用が定 着したと考えられる。

図 3 路面温度予測画面

3.冬期路面すべり抵抗モニタリング 3.1. 連続路面すべり抵抗値測定装置の導入

冬期における路面管理は、目視による路面状態の判断 を基に行っている。しかし、目視判断には、正確な判別 が難しい路面や判断の個人差があることから、客観性・

的確性に問題が残る。路面状態を客観的・定量的な指標 で表すことができれば、凍結防止剤散布などの冬期路面 管理の効果を定量的に計測し、評価することが可能にな ると考えられる。

そこで、当研究所では、路面のすべり抵抗を連続的に 測定することができる“連続路面すべり抵抗値測定装置”

(Real Time Traction Tool:RT3)(写真1)を導入し、

冬期路面の客観的・定量的なモニタリング手法について 研究を行っている。この装置は、測定輪を車両進行方向 に対して約2度の角度を与えることで発生する横力(すべ り抵抗値)を測定する。すべり抵抗値(Halliday Friction Number: HFN)は、横力無負荷状態を0、乾燥路面状態を 100とし、その間を100等分した値である。

図 4 冬期路面管理支援システムのアクセス数の推移

12 月 1 月 2 月 3 月 12 月 1 月 2 月 3 月 12 月 1 月 2 月 3 月

平成 17 年度冬期 平成 18 年度冬期 平成 19 年度冬期 H18 年度末累計アク

セス数 22,503 件

H19 年度末累計アク セス数 49,536 件 H17年度末累計アク

セス数 10,508 件

グラフ形式で情報提供 地点追加(1→5)

線的予測情報の提供開始 既往システムと統合

(3)

当該装置は、測定輪に制動をかける必要がなく、走行 しながら、一般の交通の支障とならずに路面のすべり抵 抗値を連続的に測定できることが特徴である。測定した すべり抵抗値は、走行中にリアルタイムに確認できるほ か、時刻や測位データ等とともに外部記録装置(GPS ロ ガー・パソコン等)に記録することもできる。

当該装置を用いることで、時間的・場所的なすべり抵 抗値の変化を仔細にとらえることが可能である(図 5)。

3.2. 冬期路面すべり抵抗モニタリングサイトの試行 平成 19 年度冬期より、すべり抵抗値の測定結果を国土 地理院の電子地図(電子国土 Web)

2)

上にプロットし、

インターネットを介して道路管理者への情報提供を開始 した。電子国土 Web のプラグインをインストールした PC であれば、PC を操作して、サーバーに蓄積された測定結 果を任意に選択し、当該測定時のすべり抵抗値の分布状 況を任意の倍率、任意の区間で表示し、確認することが できる。すべり抵抗値は 0.1 秒間隔、整数値で記録され るが、閲覧しやすさを考慮して、5 秒間隔、3 段階(HFN49 以下、50~69、70 以上)に色分けして表示している(図 6)。

現在は、測定(走行)後に、記録装置に記録されたデ ータを回収・処理してから測定結果をアップロードして おり、掲載まで約 1 日を要している。今後は、道路パト ロールから戻った時点ですべり抵抗値の分布状況を確認 できるように掲載までの時間を短縮すること、更には、

測定データを無線で送信して、リアルタイムですべり抵 抗値の分布を表示し、事務所の職員等が確認・作業指示 をできるようにすることを目標にしている。

4. 冬期道路マネジメントの試行 4.1. 冬期道路管理の業績測定について

冬期路面管理支援システム、冬期路面すべり抵抗モニ タリングサイトは、冬期道路管理を行う上で有用な情報 を提供するツールとなっている。しかし、それらの冬期 道路管理における効果を評価することは簡単ではない。

例えば、凍結予測情報は、凍結防止剤の散布の適正化に 資するものであるが、凍結防止剤の散布が適正に行われ たかどうかを散布量だけで評価することはできず、散布 による路面状態の変化や、交通特性等を把握することに よって初めて評価が可能になると考えられる。

図 7 は、事業等の一連の活動とその結果・成果の流れ を表すロジックモデル

3)

を用い、冬期道路管理のロジッ クモデルを表したものである。

写真 1 連続路面すべり抵抗値測定装置

図 5 すべり抵抗値の測定例

(時間経過に伴うすべり抵抗値の変化状況)

● HFN70~

● HFN50~69

● HFN~ 49

図 6 冬期路面すべり抵抗モニタリングサイト

‰

中間アウトカム

・予算

・機材

・人員 など

・冬期交通特性(交通容量など)

・冬期事故

・満足度(CS) など

INPUT(投入)

・出動回数

・凍結防止剤散布量 など

‰ 最終アウトカム

・路面状態(すべり抵抗値など)

図 7 冬期道路管理におけるロジックモデル

・冬期道路管理作業の実施

ACTIVITY(活動)

OUTPUT(結果)

OUTCOME(成果)

(4)

道路行政においては、国民の視点に立ち、より効果的、

効率的かつ透明性の高い道路行政へと転換を図るため、

平成 15 年度より事前に数値目標を設定し(Plan)、施策・

事業を実施(Do)、達成度の評価(Check)を次の行政運営に 反映(Action)する“道路行政マネジメント”

4)

に取り組 んでいる。冬期道路管理についても例外ではなく、その 業績を測定(Performance Measurement)し、評価するこ とでマネジメントサイクルを構築することが必要である。

4.2. 冬期道路管理の業績測定の試行

一般国道 230 号線札幌市内を対象に、平成 19 年 12 月 から平成 20 年 2 月までの 40 日間(2 往復/日)、連続路 面すべり抵抗値測定装置を用いてすべり抵抗値を測定し た結果をもとに図 7 に示したロジックモデルを用い、業 績測定を試行した(図 8)。一路線のみの試行、一部不備 なデータ、年度や蓄積年数が不揃いなデータがあり、他 の路線との比較や経年的な評価等はできないが、定量的 なデータを用いて冬期道路管理の業績測定が可能である。

5.まとめと今後の課題

冬期道路管理の業績測定をより正確に行うには、デー タの質の向上とデータの種類・量を増やすことが必要で

ある。構築を進めている冬期路面管理支援システム等の 他に、道路管理者がすでに構築し、利用しているデータ ベースやシステムもあるため、今後、これらの集約も念 頭に置いてデータの質・量を充実させ、冬期道路管理の 業績測定に活用していきたい。

また、データの比較や集計結果をわかりやすく示すた めに GIS を活用したマネジメントツールを構築し、冬期 道路管理の高度化に取り組む予定である。

参考文献

1) Naoto Takahashi, Roberto A. Tokunaga, Motoki Asano and Nobuyoshi Ishikawa:Road Surface Temperature Prediction Model Taking into Account the Effects of Surrounding Environment, TRB 87

th

annual meeting, 08-1445

2) 電子国土ポータル、

URL: http://portal.cyberjapan.jp/index.html 3) 龍慶昭,佐々木亮一:「政策評価」の理論と技法,多賀

出版,2000 年 9 月

4) 国 土 交 通 省 道 路 局 : 道 路 行 政 マ ネ ジ メ ン ト , http://www.mlit.go.jp/road/management/about.html

0 500 1000 1500 2000 2500 3000

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0 8.5 9.0 9.5 10.0 10.5 11.0 11.5 12.0 12.5 13.0 13.5 14.0 14.5 15.0 15.5 16.0 16.5 17.0 17.5 18.0 18.5 19.0 19.5 20.0 20.5 21.0 21.5 22.0 22.5 23.0 23.5 24.0 24.5 25.0 25.5 26.0 26.5 27.0 27.5 28.0 28.5 29.0 29.5 30.0 30.5 31.0 31.5 32.0 32.5 33.0 33.5 34.0 34.5 35.0 35.5 36.0 36.5 37.0 37.5 38.0 38.5 39.0 39.5 40.0 40.5 41.0 41.5 42.0 42.5 43.0 43.5 44.0 44.5 45.0

冬期事故率(件/億台km)

0 10 20 30 40 50 60

1.01.31.61.92.22.52.83.13.43.74.04.34.64.95.25.55.86.16.46.77.07.37.67.98.28.58.89.19.49.710.010.310.610.911.211.511.812.112.412.713.013.313.613.914.214.514.815.115.415.716.016.316.616.917.217.517.818.118.418.719.019.319.619.920.220.520.821.121.421.722.022.322.622.923.223.523.824.124.424.725.025.325.625.926.226.526.827.127.427.728.028.328.628.929.229.529.830.130.430.731.031.331.631.932.232.532.833.133.433.734.034.334.634.935.235.535.836.136.436.737.037.337.637.938.238.538.839.139.439.740.040.340.640.941.241.541.842.142.442.743.043.343.643.944.244.544.845.1 0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

11.21.41.61.8 22.22.42.62.8 33.23.43.63.8 44.24.44.64.8 55.25.45.65.8 66.26.46.66.8 77.27.47.67.8 88.28.48.68.8 99.29.49.69.81010.210.410.610.81111.211.411.611.81212.212.412.612.81313.213.413.613.81414.214.414.614.81515.215.415.615.81616.216.416.616.81717.217.417.617.81818.218.418.618.81919.219.419.619.82020.220.420.620.82121.221.421.621.82222.222.422.622.82323.223.423.623.82424.224.424.624.82525.225.425.625.82626.226.426.626.82727.227.427.627.82828.228.428.628.82929.229.429.629.83030.230.430.630.83131.231.431.631.83232.232.432.632.83333.233.433.633.83434.234.434.634.83535.235.435.635.83636.236.436.636.83737.237.437.637.83838.238.438.638.83939.239.439.639.84040.240.440.640.84141.241.441.641.84242.242.442.642.84343.243.443.643.84444.244.444.644.84545.2

出現比率

0 10000 20000 30000 40000 50000 60000

11.21.41.61.8 22.22.42.62.8 33.23.43.63.8 44.24.44.64.8 55.25.45.65.8 66.26.46.66.8 77.27.47.67.8 88.28.48.68.8 99.29.49.69.81010.210.410.610.8 11

11.211.411.611.8 12

12.212.412.612.8 13

13.213.413.613.8 14

14.214.414.614.8 15

15.215.415.615.8 16

16.216.416.616.8 17

17.217.417.617.8 18

18.218.418.618.8 19

19.219.419.619.8 20

20.220.420.620.8 21

21.221.421.621.8 22

22.222.422.622.8 23

23.223.423.623.8 24

24.224.424.624.8 25

25.225.425.625.8 26

26.226.426.626.8 27

27.227.427.627.8 28

28.228.428.628.8 29

29.229.429.629.8 30

30.230.430.630.8 31

31.231.431.631.8 32

32.232.432.632.8 33

33.233.433.633.8 34

34.234.434.634.8 35

35.235.435.635.8 36

36.236.436.636.8 37

37.237.437.637.8 38

38.238.438.638.8 39

39.239.439.639.8 40

40.240.440.640.8 41

41.241.441.641.8 42

42.242.442.642.8 43

43.243.443.643.8 44

44.244.444.644.8 45

45.2

・予算(単位:千円):運搬排雪工107,395、一般・付帯除雪58,060、凍結防止剤工64,601 ※平成18年度作業日報より試算

・機材:除雪ステーション2カ所(薄別、豊滝)、作業車両(除雪車・散布車)管貸16台

INPUT

(投入)

一般国道 230 号(札幌市内延長約 45km)の冬期道路管理の業績測定(試行)

・凍結防止剤散布量

OUTPUT

(結果)

OUTCOME

(成果)

・すべり抵抗値(出現率)

・旅行速度

図 8 ロジックモデを用いた一般国道 230 号の冬期道路管理の業績測定(試行)

・冬期事故率

※H18データ

参照

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