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ルートヴィヒ・ベヒシュタイン編著 : 『ドイツ伝説集』(1853)試訳(その十二)

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(1)

1. ル ー ト ヴ ィ ヒ ・ ベ ヒ シ ュ タ イ ン 編 著『ド イ ツ 伝 説 集』 (一 八 五 三) (略 称 を D S B と す る) の 訳・ 注 で あ る 本 稿 の 底 本 に は 次 の 版 を eu tsc he s S ag en bu ch vo n L ud w ig B ec hs tei n. M it se ch ze hn H olz sc hn itt en na ch Ze ich nu ng en vo n A . E hr ha rd t. Le ip zig , V er lag vo n eo rg W ig an d. 1853.; R ep rin t. N ab u P re ss . 2. DSB所載伝説の番号・邦訳題名・原題は分載試訳それぞれの冒頭に記す。 3.ヤーコプとヴィルヘルムのグリム兄弟編著『ドイツ伝説集』 (略称を DSとする)を参照した場合、次の版を使用。 eu tsch e Sa ge n he ra us ge ge be n vo n B rü de rn G rim m . Z w ei B än de in ein em B an d. M ün ch en , W in kle r V er lag . 1981. V olls tä nd ig e us ga be , n ac h d em T ex t d er d rit te n A ufl ag e v on 1891. なお稀にではあるが、DSの英語訳である次の版(略称をGLとする)も参照した。 e G er m an L eg en ds of th e B ro th er s G rim m . V ol.1/2. E dit ed an d tra ns lat ed by D on ald W ar d. In stit ute for th e Stu dy of H um an

『ドイツ伝説集』

(一八五三)

試訳

(その十二)

 

  

滿

 

訳・注

(2)

Iss ue s. P hil ad elp hia , 1981. 4. D S B 所 載 伝 説 と D S 所 載 伝 説 の 対 応 関 係 に つ い て は、 分 載 試 訳 冒 頭 に 記 す D S B の 番 号・ 邦 訳 題 名・ 原 題 の 下 に、 ほ ぼ 該 当 す る D S の 番 号・ 原 題 を 記 す。 た だ し、 D S B 所 載 記 事 の 僅 か な 部 分 が D S 所 載 伝 説 に 該 当 す る 場 合 は こ こ に は 記 さ ず、 本 文 に 注 番 号 を 附 し、 「DS***に詳しい」と注記するに留める。 5. 地 名、 人 名 の 注 は 文 脈 理 解 を 目 的 と し て 記 し た。 史 実 の 地 名、 人 名 と の 食 い 違 い が 散 見 さ れ る が、 こ れ ら に つ い て は 殊 更 言 及 し な いことを基本とする。ただし、注でこれが明白になる分はいたしかたない。 6. 語 ら れ て い る 事 項 を、 日 本 に 生 き る 現 代 人 が 理 解 す る 一 助 と な る か も 知 れ な い、 と、 訳 者 が 判 断 し た 場 合 に は、 些 細 に 亘 り 過 ぎ る 弊 が あ ろ う と も、 あ え て 注 に 記 し た。 こ う し た 注 記 に お け る 訳 者 の 誤 謬 へ の ご 指 摘、 お よ び、 こ の こ と に つ い て も 注 記 が 必 要、 と い っ たご高教を賜ることができれば、まことに幸いである。 7. 伝説タイトルのドイツ語綴りは原文のまま。 8.本文および注における〔     〕内は訳者の補足である。 『ドイツ伝説集』 (一八五三)試訳(その一)     一──    六〇 所収「武蔵大学人文学会雑誌」第四十四巻第一 ・ 二号 一一七〜二三五ページ、平成二十四年十一月 『ドイツ伝説集』 (一八五三)試訳(その二)    六一──    九〇 所収「武蔵大学人文学会雑誌」第四十四巻第三号 四六三〜五三〇ページ、平成二十五年二月 『ドイツ伝説集』 (一八五三)試訳(その三)    九一──   一三四 所収「武蔵大学人文学会雑誌」第四十四巻第四号 七五〜一七六ページ、平成二十五年三月 『ドイツ伝説集』 (一八五三)試訳(その四)   一三五──   一八四 所収「武蔵大学人文学会雑誌」第四十五巻第一 ・ 二号 一五七〜二八五ページ、平成二十五十一月 『ドイツ伝説集』 (一八五三)試訳(その五)   一八五──   二二五 所収「武蔵大学人文学会雑誌」第四十五巻第三 ・ 四号 九五〜一八〇ページ、平成二十六年三月 『ドイツ伝説集』 (一八五三)試訳(その六)   二二六──   二八八 所収「武蔵大学人文学会雑誌」第四十六巻第一号 二〇九〜三三〇ページ、平成二十六年十月 『ドイツ伝説集』 (一八五三)試訳(その七)   二八九──   三三九 所収「武蔵大学人文学会雑誌」第四十六巻第二号

(3)

一五一〜二四六ページ、平成二十六年十二月 『ドイツ伝説集』 (一八五三)試訳(その八)   三四〇──   三九四 所収「武蔵大学人文学会雑誌」第四十六巻第三 ・ 四号   一〜九八ページ、平成二十七年三月 『ドイツ伝説集』 (一八五三)試訳(その九)   三九五──   四四四 所収「武蔵大学人文学会雑誌」第四十六巻第三 ・ 四号 九九〜一九六ページ、平成二十七年三月 『ドイツ伝説集』 (一八五三)試訳(その十)   四四五──   四八四 所収「武蔵大学人文学会雑誌」第四十七巻第一号 八三〜一七八ページ、平成二十七年十二月 『ドイツ伝説集』 (一八五三)試訳(その十一)四八五──   五四四   所収「武蔵大学人文学会雑誌」第四十七巻第二号 五五〜一五六ページ、平成二十八年三月 *本分載試訳(その十二)の伝説 五四五   乳 ミルク 龍とお 金 か ね 龍

Milch- und Gelddrachen.

五四六   苔 モ ー ス ロ イ テ 小人 、 女 ホ ル ツ ヴ ァ イ ベ ル の樹の小人 、 家 ハ イ ム ヒ ェ ン のちびさん

Von Moosleuten, Holzweibeln und Heimchen.

五四七   姫 キ ュ ン メ ル ブ ロ ー ト 茴香麵麭 Kümmelbrod. 五四八   皮だけになった 麵 パ ン 麭

Das hohle Brod.

五四九

 

おったまげた

小 ヴィヒテル

Das erschrockene Wichtel.

五五〇

 

罰を受けた娘

Die bestrafte Magd.

五五一   繁 ブ ッ シ ュ グ ロ ー ス ム ッ タ ー みの祖母様 Die Buschgroßmutter. 五五二   餌 え さ やりグーペル Der Futter-Gupel. 五五三   建 バ ウ メ ン ヒ ェ ン 築小人 Das Baumännchen. 五五四   カムス 村 ドルフ の山の精たち Kamsdorfer Berggeister.

(4)

五五五   ビルプツェども Die Bilbzen. 五五六   莨 ビ ル ゼ ン ト根 刈 シ ュ ニ ッ タ ー り人 の報い

Des Bilsenschnitters Lohn.

五五七   フォイクトラント Voigtland. 五五八   ロイス一門の名

Der Stammname Reuß.

五五九   悪 ト イ フ ェ ル ス ヴ ェ ー ア 魔の障壁 Das Teufelswehr. 五六〇   クロスターハンマー村の 鍛 ヒュッテンメンヒェン 造小人 たち

Die Hüttenmännchen im Klosterhammer.

五六一

 

おいらのための

灯 ひ

Das Licht für sich.

五六二   娘 ド ッ ケ ン タ イ ヒ っこ池 Der Dockenteich. 五六三   カルシュテートの亡霊 Geist Karrstet. 五六四   粉 ミ ュ ー ル ゲ ッ ツ 挽き場の偶像 Der Mühlgötz. 五六五   トリプストリル Tripstrill. 五六六   ぶ プ ン プ フ ー ト かぶか帽子 Pumphut 五六七   水 ミ ュ ー ル ア ー ル ツ ト 車装置修理人 になった ぶ プ ン プ フ ー ト かぶか帽子

Pumphut als Mühlarzt.

五六八   ルンゲレ Rungele. 五六九   世話好きな 灯 と も し び 火

Das dienstfertige Licht.

五七〇   カ ク ラ ッ ペ ラ ー タカタどん Der Klapperer. 五七一   踊る 牝 め す ね こ 猫 たち Tanzende Katzen. 五七二   正真正銘の 降 ク リ ス ト バ ウ ム 誕祭樹

(5)

五七三

 

青い

靄 も

Die blaue Dunst.

五 七 四   ホ ー フ の 背 高 の っ ぽ 男 D er la ng e M an n i n H of.       *D S1 68 . D er la ng e M an n i n d er M or dg as se zu H of. 五七五   プレヒタの 麦 ビ ー ル 酒 Prechten-Bier. 五七六   ウルバヌスの説教 Urbanuspredigt. 五七七   黄 き ん 金 の上靴を履いた巨人

Der Riese mit dem goldnen Pantoffel.

五七八   カムゼン の ベ ル ゲ 山山 の宝物

Die Schätze im Camsenbergen.

五七九   銀の泡が湧く泉 Silberschaumquell. 五八〇   愚かな女 Die Unkluge. 五八一   オルラミュンデの 市 シ ュ タ ッ ト プ フ ァ イ フ ァ ー お抱え楽士

Der Stadtpfeifer aus Orlamünde.

五八二

 

オルラミュンデ伯爵夫人

Die Gräfin von Orlamünde.

   

*DS585. Die Gräfin von Orlamünde.

五八三

 

グライヒェンの二人用寝台

Das Gleichen’sche Doppelbette.

   

*DS581. Der Graf von Gleichen.

五八四

 

クラニヒフェルト城の記念の

徴 しるし

Schloß Krannichfelder Wahrzeichen.

五八五

 

別別の塔

Die verschiedene Thürme.

五八六   乙 ユングファーン シ ュプルング 女の跳躍 と ベ ベ ー ラ ー ス メ ン ヒ ェ ン ーラーの小人たち

Der Jungfernsprung und die Böhlersmännchen.

五八七

  「マースたっぷり!マースたっぷり!」

„Voll Maaß, voll Maaß!

五八八

 

子ども十字軍と子どもの踊り

Kinderzüge und Kindertanz.

五八九

 

むっつりした子ども

Das stille Kind.

五九〇

 

伯爵の口癖

(6)

五九一

 

ファウスト博士の路地

Doktor Faust’s Gäßchen.

五九二   鞭 べ ん だ 打 巡礼者 Die Geißelfahrer. 五九三   特殊不治病者 Die Sondersiechen. 五九四   短い裁判 Kurzer Prozeß. 五九五   ジビュレの小塔 Sibyllenthürmchen. 五九六   情 じょう の深い 牡 お す 狼 おおかみ

Der zärtliche Wolf.

五九七   ヴォルフラム Der Wolfram. 五九八   グライヒェン伯

Der Graf von Gleichen.

   

*DS581. Der Graf von Gleichen.

五九九   殺 モ ル ト ガ ル テ ン しの庭 Der Mordgarten. 六〇〇   ア ヘ ア ・ ア ウ グ ス テ ィ ン ウグスティンさん Herr Augustin. 六〇一   フリーデンシュタイン 城の財宝

Schatz auf dem Friedenstein.

六〇二   テューリンゲンの洪水 Thüringer Fluthen. 六〇三   ネ ネ ー ゲ ル シ ュ テ ッ タ ー ・ ヴ ァ イ デ ーゲルシュテットの草地

Die Nägelstätter Weide.

六〇四   血の 濠 ほ り Blutgraben. 六〇五   スウェーデンの小さな鐘 Das Schwedenglöckchen. 六〇六   イエナの七つの 奇 き せ き 蹟

Die sieben Wunder von Jena.

六〇七

 

狐 フクストゥルム

と狐という名

Fuchsthurm und Fuchsname.

六〇八   イエナの 降 ク リ ス ト ナ ハ ト 誕祭の夜

(7)

六〇九

 

大学生の受難劇

(8)

五四五   乳 ミルク 龍とお 金 か ね 龍 ザ ー ル フ ェ ル ト 地 方 で は 、 近 隣 の オル ラ 地 ガ ウ 域 や フ ォ イ ク トラ ン ト 同 様 ( も っ と も テ ュ ーリン ゲン で も 、 ま た 遠 く フ ラ ン ケ ン の 地 に 入 っ て も そ う だ が )、 有 ド ラ ッ ヘ 翼 龍 は 悪 魔 と 盟 約 を 結 ん だ 者 に 富 を 授 け る 、 と 広 く 信 じ ら れ て い る 。 ま こ と に 多 く の 村 村 で 住 民 が そ う し た家 を 指 摘し 、 遠 慮 会 釈 無 く 名 を 挙 げる 。 龍 は 火 か え ん 焰 に 包 ま れ た 姿 で 出 現 、 い い 龍 と つ ま ら ん 龍 (1 ( に 区 別 され る 。 大 抵 の 龍 は 火 の 玉 の 形で 煖 炉 の 煙 突 か ら 家 の中に 入 っ て 来 て 、 そこ に 宝 物 や 乳 ミルク や 卵 や 金 か ね や ら を 撒 ま き 散 ら す 。 そ う い う の は 、 い い 龍 、 と 呼 ば れ る 。 長 い 干 し 草 締 め 付 け 柱 (2 ( の 恰 か っ こ う 好 を し て 窓 の 楔 くさび 型 (3 ( か ら 部 屋に 入 り 込 む 龍 が 時 折 い るが 、 こ れ は 財 宝 の 代 わ り に 恐ろ し い 悪 臭 を 残 す 。 こ れ が つ ま ら ん 龍 で あ る 。 い い 龍 が 入 っ た と 分 か っ た ら 、 乳 ミルク 桶 お け を 幾 つ も 急 い で綺 麗 に し て 、 龍 が 乳 ミルク を そ の 中に 注 げ る よ う に 、 台 所 や 穴 蔵に 置 く 。 龍 を 惹 ひ き 付 ける た め に 、 牛 バ タ ー 酪 製 造 の 攪 かくにゅう 乳 桶 (4 ( は 異 教 時 代 神 聖 と さ れた 種 類 の 木 、 た と え ば 杜 ね ず 松 、 立 たちあおい 葵 、 (5 ( 科 リ ン デ の 木 の よ う な も の を用 材 と す る 。 使 う 木 は 降 ヴァイナハツフェスト 誕 祭 の 聖 な る 宵 に 採 っ て 来 て 、 す ぐ に 皮 を 剝 む く 。 攪 乳 桶 に は 別 別 に 三 回 に 分 け て 乳 ミルク を 注 ぎ 込 み 、 掻 か き 混 ぜ て 牛 バ タ ー 酪 を 作 る の は 金 曜 日 の み 。 現 在でも 家 家 の 穴 蔵に は そ こ に 埋 め 込 まれた 独 特 の形 状 の 壺 つ ぼ が 見 つ か る 。 丈 が 高 く 、 底 が 尖 り 、 中 央 部 を 九 本 の 環 わ が 取 り 巻 き 、 把 と っ て 手 は な い 。 本 来 の 蓋 は 縁 を 欠 い て 壺 内 部 の 底 に 置 き 、 蓋 の 代 わ り に 粘 ス レ ー ト 板 岩 の 板 が 載 せ て あ る 。 何 も か も 乳 ミルク を 増 や す と い う 龍 の 仕 事 を 容 易 に す る た め の 用 意 で あ る 。 さてまた火焰龍には別の種類もある。伝説では一般に宝の守護者として登場、宝の発掘を 生 な り わ い 業 とし、そのために 往往にして 己 おのれ の 頸 く び と 永 と わ 遠 の至福を代償にしてしまう連中が目にするやつである。これすなわちお 金 か ね 龍で、しばしば 人間の顔をして二本足で 徘 は い か い 徊 することもあ る (6 ( 。

(9)

ラニスから程遠からぬパイスラ村の近辺に 天 エ ン ゲ ル ベ ル ク 使山 が 聳 そ び えている。全山 赤 あ か 山 ぶ な 毛欅 に (7 ( 覆われている。山麓には深い溝 が 北 へ 向 か っ て 延 び て い る。 ポ ッ ペ ン 溝 グラーベン と い う 名 で、 ポ ッ ペ ン ビ ー ル 山 に 突 き 当 た る。 エ ン ゲ ル ベ ル ク の 東 山 腹 には 洞 ど う く つ 窟 が口を開けている。この洞窟は──伝説によれば──山全体に 拡 ひ ろ がっている由。洞窟内には二頭の火焰龍 が鎖に 繫 つ な がれていて、そこに隠された莫大な宝物を見張っている。何世紀かの後白髪の男の小 人 (8 ( が、財宝に至る入 口を開くことのできる大きな鍵のある場所を教えてくれるだろう。小人は杖でパイスラからドビアンへ行く路傍に 横たわっている大きな石の一つに印を付けるのだ。 五四六   苔 モ ー ス ロ イ テ 小人 、 女 ホ ル ツ ヴ ァ イ ベ ル の樹の小人 、 家 ハ イ ム ヒ ェ ン のちびさん 民衆が種種様様の名称で呼び、種種様様の特徴付けをしている小妖精たちの類縁関係をはっきり区分けするのは 難 し い。 書 こ う と 思 え ば こ う し た 小 人 族 に つ い て だ け で 優 に 一 冊 の 本 が で き よ う。 そ れ も ア イ リ ン・ T・ ナ イ ト レ イ (9 ( の『フェとエルフの神話 学 ((1 ( 』より遙かに内容豊富なものを。けれども本から学ぼうとしてはいけないのだ。村 落 で 庶 民 が 互 い に 語 り 合 う 話 に 自 身 現 場 で 耳 を 傾 け ね ば な ら な い。 神 出 鬼 没 の 小 人 族 が き ち ん と 分 類 さ れ な い よ う に、 小 人 族 の 伝 説 も 整 理 不 能 で あ る。 な に し ろ こ の 連 中 が 現 れ る 場 所 は こ こ と 思 え ば ま た あ ち ら、 姿 に し て も 千 変 万 化、 ま た、 群 れ を 成 す こ と も あ る し、 独 り ぼ っ ち の こ と も。 し か し な が ら 苔 モ ー ス ロ イ テ 小 人 は お 助 け 妖 精 で は な い し、 女 ホ ル ツ ヴ ァ イ ベ ル の樹の小人 は 苔 モ ー ス ロ イ テ 小人 ではない。そして 家 ハ イ ム ヒ ェ ン のちびさん は (((( またこれら全てとはろくすっぽ似ていない。精精のところ お 助 け 妖 精 で は あ る が──。 家 ハ イ ム ヒ ェ ン の ち び さ ん は 荒 デ ィ ・ ヴ ィ ル デ ・ ベ ル タ れ 狂 う ベ ル タ の お 伴 を 形 成 す る。 け れ ど も 彼 ら は 荒 れ 狂 い は し な い。 名 み ょ う せ ん じ し ょ う 詮自性 で親しみ易い。ドイツ語中最も親しみ易い名称で、それゆえ、居心地の良い煖炉の傍、 麵 パ ン 麭 焼き 竈 かまど の

(10)

傍などでひそやかに 温 ぬ く もっている生き物にも附けられている。そのツィル・ツィル・ツィルという鳴き 声 ((1 ( に民間信 仰は予言的意味を持たせる。この虫たちはこの地方で 蟋 ハイムヒェン 蟀 (こおろぎ)と呼ばれる。これをハインヒェンとかハイ ンツヒェンとかと取り違えてはならない。オルラ 地 ガ ウ 域 ではペルヒタは 家 ハ イ ム ヒ ェ ン のちびさん の ケ ー ニ ギ ン 女王 と呼ばれ、このおどけた 妖精の群れに囲まれて登場する。他地方では 小 ツヴェルク 人 たちが川を舟で渡してもらい、どこかへ立ち去るが、オルラ 地 ガ ウ 域 のゴスドルフやレーデルンの村村(どちらももはや現存しない)では 家 ハ イ ム ヒ ェ ン のちびさん たちがそうしたことになってい る。この地域の幾つかの村落では彼らは ち ブッツェルメンヒェン び小人 、 家 ハ イ メ レ ちび 、 地 エ ー ル ト メ ン ネ レ 中小人 と ((1 ( 呼ばれ、指ほどの背丈で、家家の 鼠 ねずみ 穴に 棲 す んでいるごくちっぽけな地の精であると考えられている。通常彼らが姿を現すのは宵の内で、白装束を 纏 ま と い、愛想 の 良 い 性 格 を 示 し、 数 百 も の 数 で 愛 ら し い 旋 回 舞 踏 を 踊 っ て み せ る。 彼 ら は 家 の 者 に 吉 凶 を あ ら か じ め 予 告 す る し、心 細 こ ま やかな応対を受けると、ごくちっぽけではあるが値打ちのある贈り物を残して行くことが少なくない。そ れらは 黄 こ が ね 金 の小箱に入れられて鼠穴の外に置いてあるのが朝見つかる。 グローベンゲロイ ト ((1 ( 近くのシュナファートにある 赤 ローテス ビール山にはその昔 女 ヴ ァ ル ト ヴ ァ イ プ ヒ ェ ン の森の小人 がどっさりいた。彼女らは 干し草山や穀物の束の山の上で跳ね回り、子どものようにふざけあった。人間たちがやって来て、これら小さい者 を目にし、うじうじびくびくした様子を見せると、愛想良く「まあさ、こっちへ来て、やりたいことをやればええ がな。あたしら、あんたらに何もしやしねえで」と声を掛けるのだった。──もっともシュナファートで 野 の ら 良 稼 か せ ぎ をしている人たちから盗み食いするのは好きで、弁当を半分とかあるいは全部持って行ってしまったりした。 ア ル テ ン ゲ 湖 ゼ ー 周 ((1 ( 辺 一 帯── 今 日 に 至 る ま で 樹 木 が 豊 富 で あ る── の 農 民 は 女 ホ ル ツ ヴ ァ イ ベ ル の 樹 の 小 人 た ち と 仲 良 し に し て い た。木が伐採されることになると、彼女らはすぐそこにやって来て、 薪 たきぎ 作りの衆に、倒れる木が地面につかないう ちにどうか十字を三つ幹に 刻 き ざ んでちょうだいな、と頼むのだった。その上にいれば 荒 デ ア ・ ヴ ィ ル デ ・ ヤ ー ク ト れ狂う狩猟 から守ってもらえ

(11)

るの、と。人間が喜んでそうしてやると、その代わり 女 ホ ル ツ ヴ ァ イ ベ ル の樹の小人 たちは知っていることを教え、できることをし て、働く者たちに助力した。朝森に入ると、農民は 麵 パ ン 麭 を一切れとか 団 ク ロ ー ス 子 を一つとかをお助け小人のために十字が 刻まれた幹に載せておくのだった。すると彼女たちは気持ちよくお 招 よ ばれして、こう言いながらせっせと薪を持っ て来た。 薪が要る衆、来ればええ。 貧乏な衆、取るがええ。 五四七   姫 キ ュ ン メ ル ブ ロ ー ト 茴香麵麭 メ ル ケ ン ド ル フ の 西 十 五 分 の 行 程 に あ る シ ャ ル ホ ル ツ に も 男 ホ ル ツ メ ン ネ ル の 樹 の 小 人 や 女 ホ ル ツ ヴ ァ イ ベ ル の 樹 の 小 人 た ち が 棲 す み 着 い て い た 。 彼 ら は 人 間 た ち に 援 助 ・ 奉 仕 す る の が 好 き で 、 干 し 草 作 り の 手 伝 い も し た が 、 内 気 な 性 分 で は な く 、 鍋 な べ か ら 団 ク ロ ー ス 子 を 、 竈 かまど から 麵 パ ン 麭 を 、 し ば し ば 勝 手 に 失 敬 した 。 とう とう 人 間 た ち は我 慢 で き な く な り 、 こ う い う あ り が た く な い お 客 さ ん がたを 厄 介 払 い す る こ と を 考 え 、 有 効 な 手 立 てを 行 使 した 。 粉 こ な ひ 挽 き ── 樹 の 小 人 た ちは こ れ ま で こ ま め に 力 を 貸 し 、 粉 を 掃 そ う じ 除 し たり 臼 う す を 綺 麗 に し たり し た の だ が ── は 彼 ら の た め に 服 を 新 調 し て 置 い て お い た 。 お 助 け 小 人 たち は こ れ に 気 を 悪 く し て 引 っ 越 し て し ま い 、 二 度 と 戻 っ て 来 な か っ た 。 あ る 人 た ち は 姫 キ ュ ン メ ル 茴 香 を ((1 ( 麵 パ ン 麭 生 地 に 混 ぜ て 焼 く か 、 あ る い は 今 日 で も よ く や る よ う に 、 麵 パ ン 麭 生 地 の 皮 に 振 り 掛 け る か し た 。 す る と 女 ホ ル ツ ヴ ァ イ ベ ル の 樹 の 小 人 は 嘆 き 悲 し ん だ 。

(12)

姫 キ ュ ン メ ル ブ ロ ー ト 茴香麵麭 、 あ ン ザ ー ・ ト ー ト たしら死んじゃう 。 そこで彼らは退去しながら──なにせいなくなって、二度と戻って来なかったのでね──こう言った。 姫 キ ュ ン メ ル ブ ロ ー ト 茴香麵麭 を 喰 く うがええ、 苦しい仕事を 背 し ょ 負 うがええ。 それからというもの、人間たちは二度と再び以前のように安楽な暮らしができなくなった。 五四八   皮だけになった 麵 パ ン 麭 ゲ フ ェ ル ((1 ( の 牛 飼 い 娘 が 牧 場 に い る と、 よ く 女 ホ ル ツ ヴ ァ イ ベ ル の 樹 の 小 人 が や っ て 来 た。 そ こ で 娘 は こ の 女 小 人 と 仲 良 し に な っ た。 あ る 日 家 で 新 し く 麵 パ ン 麭 を 焼 い た ((1 ( 。 暮 ら し に 困 っ て は い な か っ た の で、 娘 は 麵 パ ン 麭 を 一 塊 全 部 友 だ ち の 女 ホ ル ツ ヴ ァ イ ベ ル の 樹 の 小 人 の た め に 持 っ て 行 っ た。 女 小 人 は 大 喜 び で そ の 麵 パ ン 麭 を 受 け 取 る と、 割 っ て、 中 身 の 柔 ら か い と こ ろ を す っ か り 取 り 出 し、 牧 場 の 縁 に 生 え て い る 木 の 葉 っ ぱ を 集 め、 そ れ を 皮 だ け に な っ た 麵 パ ン 麭 に ぎ っ し り 詰 め 込 ん だ。こういった子どもっぽい 遣 や り口に若い牛飼い女は憤慨、せっかくの 麵 パ ン 麭 が惜しくてならなかった。それから突 然 女 ホ ル ツ ヴ ァ イ ベ ル の樹の小人 は消え失せていて、牛飼い娘の傍にその 麵 パ ン 麭 が転がっていた。娘は取るものも取りあえず皮だけに

(13)

なった 麵 パ ン 麭 から詰め込まれた葉っぱを振り落とすと、 麵 パ ン 麭 を持って家に戻った。すると 麵 パ ン 麭 の中で何かチャラチャ ラ音がする。娘は、小石が葉っぱと一緒に 麵 パ ン 麭 の中に入ったのかも知れない、と思い、また振り落とした。すると な ん と ま あ、 前 に 振 り 落 と さ れ な い で 中 に 引 っ 掛 か っ て い た 何 枚 か の 葉 っ ぱ が そ れ ぞ れ 葉 っ ぱ タ ー ラ ー 銀 貨 ((1 ( に 変 わっていたのである。牛飼い女は急ぎに急いで牧場の縁へ 駈 か けつけ、値打ち物の葉っぱを 捜 さ が した。葉っぱはまだ見 つ か っ た の で、 前 掛 け に く る ん で 家 へ 持 ち 帰 っ た。 け れ ど も そ れ ら の 葉 っ ぱ は 葉 っ ぱ タ ー ラ ー に は な ら な か っ た。 それからお礼をしてくれた 女 ホ ル ツ ヴ ァ イ ベ ル の樹の小人 にも二度と会えなかった。 五四九   おったまげた 小 ヴィヒテル 人 ゲスジッ ツ (11 ( の農夫の女房がシュリンゲン 谷 グルント にある自家の 森 ホ ル ツ ヴ ィ ー ゼ の草原 で (1( ( 最後の干し草山を 拡 ひ ろ げに掛かったところ、そ の山の上に彼女に背中を向けてごくちっぽけな男の小人が 坐 す わ っていた。はて、どうすりゃよかったろうね。女房は 仕事を済ませてしまいたかったが、そうかといって小人に話し掛け、そこから降りて、と頼む勇気もなかった。そ こでちょっと思案すると、小人の背後から忍び寄り、手にした 熊 フ ォ ー ク 手 で山の下から干し草を 搔 か き取った。 小 ヴィヒテル 人 は一向 それに気付かなかった。女房はまた搔き取り、これを繰り返した。とうとう干し草山は上の重みに 堪 た えかねて崩れ た。おったまげた小人は落ちながら甲高い悲鳴を挙げ、骨折って干し草の中からもがき出た。すると森の中からわ らわらとちっぽけな 小 ヴィヒテル 人 の群れが現れ、こう叫んだ。 どしただ、どした。

(14)

ぬしゃあいったい 何 なにょ された。 小 ヴィヒテル 人 は な ん と か 気 を 取 り 直 し た も の の、 陥 没 し た 干 し 草 山 を ま じ ま じ と 眺 め る だ け。 頭 を 振 り 振 り、 答 え て い わく。 はれまあ、はれまあ、こいつがこんなに崩れてよ。おらあ、全くおったまげただ。 そうして農夫の女房など気にもせず、走れるだけの速さで、仲間と一緒に森の中へと退散した。 五五〇   罰を受けた娘 気 の 強 い 娘 が 三 ドライケーニヒスアーベント 王 節 の 宵 に (11 ( ナ イ デ ン ベ ル ク か ら ザ ー ル タ ー ル(ヴ ィ ル ヘ ル ム ス 村 ドルフ か ら 程 遠 か ら ぬ ザ ー レ 川 に 接 す る 村) へ 向 か っ て 家 路 を 辿 た ど っ て い た。 彼 女 は ナ イ デ ン ベ ル ク の あ る 灯 あ か り 部 屋〔= 紡 ぎ 部 屋 (11 ( 〕 で 糸 紡 ぎ に 精 を 出 し、自分の 下 ス カ ー ト 裳 分〔の糸〕は綺麗に紡ぎあげたのである。谷へとなだれている山腹までは何人か同行の若い衆がい た の だ が〔今 は 独 り だ っ た〕 。 す る と 家 ハ イ ム ヒ ェ ン の ち び さ ん の 群 れ を 連 れ た ペ ル ヒ タ が 山 道 を こ ち ら へ や っ て 来 た。 子 ど も の 大 群 に う よ う よ 取 り 巻 か れ た 堂 堂 た る ご 婦 人 を 目 に し た 娘 は は っ と し て 立 ち 止 ま っ た。 ち び た ち は 大 き な 犁 す き を 引っ張ったり、押し上げたり、他の道具を引きずったり、大骨折りをやらかしていた。この光景になんともおかし く て 堪 た ま ら な く な っ た 娘 は 頭 上 の 絶 壁 か ら 谺 こだま が 帰 っ て 来 る ほ ど 大 笑 い し た。 そ こ で 家 ハ イ ム ヒ ェ ン の ち び さ ん た ち は び っ く り 仰

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天、運んでいた道具を何もかも、犁に至るまでほっぽらかして、急な坂道を転がり落ちて行った。すると 粗 そ こ つ も の 忽者 に 腹 を 立 て た ペ ル ヒ タ 夫 人 は 娘 の 両 眼 に ふ っ と 息 を 吹 き 込 ん だ。 す る と た ち ま ち ピ シ ャ リ、 何 も 見 え な く な っ て し まった。娘はもう怖くて怖くて、道もないところを 闇 や み く も 雲 に突き進み、一晩中あてどもなく踏み迷った。朝になって やっとだれかが彼女を見つけ、川向こうへ渡し、ザールタールの雇い主の家へ連れて行ってくれた。ところが主人 はこの女中に暇を出したので、寄る辺ない彼女は物乞いになった。そしてしばしば泣いて自分の軽はずみを後悔し ながら、道端や川の渡し場に 坐 す わ っていた。さて再び 三 ドライケーニヒスアーベント 王節の宵 が廻って来た。 盲 め し い 目 の娘はだれか女性が道をやって 来るきぬずれの音、たくさんの子どものようなパタパタいう音を耳にし、声を挙げて、喜捨を乞うた。ところでこ の女性はちいちゃなお供を引き連れたペルヒタで、娘に「施しをしましょうね。わたしは一年前におまえの二つの 灯りを吹き消した。今日また 点 と も してあげる」と言うなり、物乞いの顔にフッと息を吹き掛け、行ってしまった。娘 の両眼は突然開き、以前と同様見えるようになった。彼女は自分の身に起こったことを決して忘れず、他の人たち が用心するように、また教訓とするように、たびたびそれを物語った。 オルラ河畔のノイシュタット近郊のいわゆるゾルゲでも、ペルヒタに両眼の 明 め い を吹き消された糸紡ぎ女に関する 同じ伝説が語られている。 五五一   繁 ブ ッ シ ュ グ ロ ー ス ム ッ タ ー みの祖母様 ロイテンベル ク (11 ( の近く、ザーレ左岸に── 田 い な か 舎 の人たちの言い伝えによれば──なんていうか、一種の魔物が 棲 す んでいる。これすなわち 繁 ブ ッ シ ュ グ ロ ー ス ム ッ タ ー みの祖母様 。 苔 モ ー ス フ ロ イ ラ イ ン の嬢ちゃん と呼ばれる娘をたくさん持っていて、これらを引き連れ幾つ

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かの一定の時期と聖夜に田舎をうろつき廻る。出くわすのは 険 け ん の ん 呑 である。目はじいっと 坐 す わ って動かず、髪はもじゃ も じ ゃ。 小 さ い 荷 馬 車 に 乗 っ て い る こ と も よ く あ り、 そ う い う 場 合 う ま く 避 よ け る の に 越 し た こ と は な い。 子 ど も た ち は 殊 の 外 こ の お 化 け 婆 ば あ ち ゃ ん に 怯 お び え、 お 互 い こ れ を 口 に し て 怖 が ら せ っ こ す る。 こ の 妖 怪 は フ ル ダ と か ベ ル ヒタ、あるいは 荒 デ ィ ・ ヴ ィ ル デ ・ ヤ ー ク ト フ ラ ウ れ狂う狩猟の奥方 に他ならない。ここの地域伝説では彼女に娘たちが 扈 こ じ ゅ う 従 することになっている が、そのお隣の地方では 家 ハ イ ム ヒ ェ ン のちびさん がお伴というわけ。 五五二   餌 え さ やりグーペル オ ル ラ 河 畔 ノ イ シ ュ タ ッ ト 近 郊、 騎 リ ッ タ ー グ ー ト 士 の 荘 園 ミ (11 ( ジ ッ ツ で 羊 飼 い の 下 僕── 名 前 は シ ュ ペ ッ ク── が 奉 公 を 始 め た。ここにはグーペル( 家 コ ー ボ ル ト の精 )が一人活躍していて、夜毎羊たちに餌をやるのだった。なにしろ獣どもが干し草 架 に 架 け て も ら っ た 飼 か い ば 葉 を 食 べ よ う と、 秣 まぐさおけ 桶 や 飼 葉 架 け へ 跳 ん で 来 る 物 音 が は っ き り 聞 こ え た も の で あ る。 新 参 の下僕は、ちいちゃなお助け妖精が干し草を脇に抱えて引きずって来て、それを 拡 ひ ろ げてやる──羊たちはその際全 然怖がる様子がなかった──のを、窓の一つからじいっと見守った。こうして丸一年が過ぎた。好奇心に 駈 か られた シュペックは 藁 ブ ン グ 床 ── 藁 わ ら た ば 束 で作った寝床──を家畜小屋の台の上に 拵 こしら えた。できればグーペルの餌の 遣 や り方を見習 おうと思って。これは大失敗だった。なにしろグーペルはそれ以来二度と出て来なくなったからである。羊たちは といえば、その時からどんどん痩せ細り、日の光が透けて見えるほどになった。──これだってまあちったあ教え にはなるだね、と、この話をした時シュペックは付け加えたものである。 ヴァイスバハの古城にも昔大変な働き者の誠実な餌やり小人がいたことがある。この城に 嫁 と つ いで来た若奥様がこ

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の 小 人 の た め に と う と う 新 し い 襯 シ ャ ツ 衣 を 縫 っ て や っ た。 す る と 小 人 は 滝 の よ う に 涙 を 流 し な が ら、 ル ー ル〔= ル ー ラ〕 の あ の 帽 ヒ ュ ー ト ヒ ェ ン 子 小 人 の よ う に (11 ( 、 こ う 嘆 い た。 「お ら あ も う こ れ っ き り お さ ら ば せ に ゃ あ な ん ね え。 労 賃 を 貰 も ら っ ち まっただからよ」 。以来二度と姿を見せなかった。 ラニス近くに住む羊飼いの親方も同じ体験をした。この人は冬にたまたま手伝い好きな餌やり小人の足跡を見掛 け、小人がはだしで歩いているのに気付いて 憂 ゆ う う つ 鬱 になった。そこで急いで縦横の寸法を測り、小人のために綺麗な 可愛い靴を一足 拵 こしら え、これを並べておいた。やって来た餌やり小人は靴を発見、取り上げて上から下までじっくり 検分すると、深い溜息をついて言った。 あんたの靴を貰ったで、 おらは休むとするべえよ。 そうして姿を消してしまい、二度と再び現れなかった。 五五三   建 バ ウ メ ン ヒ ェ ン 築小人 ザ ー ル フ ェ ル ト と ラ ニ ス── ど ち ら も 重 要 な 鉱 山 業 の 町 で あ る── の 間 に あ る 大 グロース カ ム ス 村 ドルフ で 教 会 を 建 立 す る こ と に な っ た 時 の こ と、 顔 は 皺 し わ く ち ゃ で 髪 は 白 い ち っ ぽ け な 男 が い る の が 人 目 に 止 ま っ た。 だ れ も こ の 男 を 知 ら な かったが、まあ働くこと、働くこと。ここかと思えばまたあちら、現れたかと思えば見えなくなり、石材を運んだ

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り、 灰 モ ル タ ル 泥 を混ぜたり、足場をあちこち 攀 よ じ登ったり。とりわけ昼飯時には目立った。なにしろこの男、一切飲食し なかったからである。いたかと思えばいなくなり、どこからやって来て、どこへ帰るのか、さっぱり分からなかっ た。棟梁が週給を払う時、親方連や職人たちの中にいた 例 た め しがなかった。老人たちはこの小男が若手の職人たちに 侮辱されないよう気を配り、職人たちに「ありゃあ 建 バ ウ メ ン ヒ ェ ン 築小人 だ。わしら、絶対にあれを怒らせちゃなんねえ。さも ねえとえれえことになる」と 低 こ ご え 声 で言って聴かせた。さて、教会建立は 滞 とどこお りなくみごとに済み、 竣 しゅんこう 工 は信じられな いほど早かった。教会の奉献式が行われた時、 建 バ ウ メ ン ヒ ェ ン 築小人 は、この新しい神の家を祝福する 祈 き と う 禱 が唱え終わられるま で、 高 エンポーレ 廊 やら、 風 オ ル ガ ン 琴 演奏席やら、説教壇やらに出没した。それから衆目が見守る前でどこへともなく姿を消し、二 度と現れなかった。 五五四   カムス 村 ドルフ の山の精たち カムス 村 ドルフ の数数の鉱坑には性格が善良、意地悪を取り混ぜていろいろな種類、姿形の山の精がいる。 白 し ら が 髪 の 小 ツヴェルク 人 として現れる場合は 山 ベ ル ク メ ン ヒ の修道士 と呼ばれ、鉱夫らに豊かな鉱脈を教えてくれる。事故が起こりそうな時、 捨 ず り 石 山 や ま の 上に 火 か え ん 焰 に包まれた巨人の 恰 か っ こ う 好 で 坐 す わ り込んでいて、鉱夫らが入坑する前に警告することもある。どちらの姿でも親 切な性質であることが分かるが、ただし、大きな騒音や 嘲 ちょうろう 弄 は我慢できない。そこで地底で働く際、鉱夫は無用な 音を一切出さないようにし、暗闇の中では口笛を吹いたり、悪態をついたりすることもあえてしない。どちらも明 るい地上ならしょっちゅう平気の平左でやらかすのだが。呪いの言葉を口にする者がいると、山の精たちはごく深 い 縦 た て あ な 坑 に突き落としたり、 頸 く び をぐいと 捻 ひ ね って顔を真後ろに向けてしまう。灰色の上っ張りを着込んだ彼らは、好意

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を 寄 せ る 鉱 夫 の 仕 事 を 手 伝 っ て や る。 す る と 諸 事 万 端 素 晴 ら し く 速 く 進 しんちょく 捗 す る。 山 の 精 た ち の 声 は 雄 お ん ど り 鶏 の 鳴 き 声 に 似 て い る。 猫 の 姿 に な っ て 掘 り 出 さ れ た 鉱 塊 の 上 に 坐 っ て い る の が 時 折 見 掛 け ら れ る。 大 き な、 火 の よ う な 目 で こ う し た 宝 を 見 張 っ て い る の だ。 カ ム ス ド ル フ の 鉱 坑 の 一 つ に、 ず ん ぐ り む っ く り で み っ と も な い 風 采、 乾 チ ー ズ 酪 鉢 ば ち み (11 ( たいにでっかい目玉の 山 ベ ル ク メ ン ヒ の修道士 がいたことがある。そんな姿ではあったが、極めて善良な性質で、独り静か に 暮 ら し て お り、 鉱 内 作 業 を こ つ こ つ 一 緒 に や っ て く れ た。 と り わ け、 哀 れ な 少 年 鉱 夫 が く た び れ た 時 に は 力 を 貸 し、 仕 事 を 代 わ っ た り し た も の。 け れ ど も そ の 時 一 言 も 喋 しゃべ ら な か っ た。 こ の 少 年 は 坑 内 に 入 る 際 毎 朝 プ フ エ ニ ヒ 小 ゼ ン メ ル 型丸白麵麭 を一つ持って来て、決まった場所に置くことになった。 山 ベ ル ク メ ン ヒ の修道士 をからかってやりたかった別の少 年がその 小 ン メ ル 型丸白麵麭 を平らげた。その後鉱石運搬 容 バ ケ ッ ト 器 が引き揚げられて地表に着くと、その中に 小 ゼ ン メ ル 型丸白麵麭 を 食べてしまった若者が発見された。死んでいた。 山 ベ ル ク メ ン ヒ の修道士 に頸を捻られ、運搬 容 バ ケ ッ ト 器 に押し込まれ、見たり、聞い たり、 麵 パ ン 麭 を 喰 く ったりとは未来 永 え い ご う 劫 おさらばの身となったしだい。 五五五   ビルプツェども こ の 地 域 の 田 舎 の 民 衆 の 間 に は い ま だ に こ の ビ ル プ ゼ と も 莨 ビ ル ゼ ン ト 根 (11 ( 刈 シ ュ ニ ッ タ ー り 人 と か 灯 ビ ン ゼ ン 心 草 刈 シ ュ ニ ッ タ ー り 人 と も 呼 ば れ る、 魔 物 だったり人間だったりのいやらしい穀物刈り手の存在が信じられている。その形態の描写は種種様様だが、小さな 三角帽を 被 か ぶ っていることが少なくない由。彼らは妖精のようなお化けとして、田舎の人たちが宵も遅くになって 畝 う ね の間を抜け、家に帰る折、その行く手にしげしげ出現する。これらビルプツェどもは髪を 靡 な び かせ、大抵は白い亜麻 の服を着ている。巨大な玉の 恰 か っ こ う 好 をして畑を転がり廻り、ひどい損害を与えることもよくある。収穫時にはまま恐

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ろしい 旋 つむじかぜ 風 になって襲来、刈ったばかりの穀物を吹き散らしてしまう。どちらの場合でも、これに気付いたら、農 夫 た ち は 懐 ポ ケ ッ ト ナ イ フ 中 小 刀 ── 刃 に 十 字 が 三 つ 刻 ま れ て い な け れ ば な ら な い── を そ の ビ ル プ ツ ェ に 投 げ つ け、 「こ い つ を 喰 く らえ、ビルプツェめ」と叫ぶのが常である。もっとも、今日一般に民衆が信じているビルゼンシュニッタ ー (11 ( とい う の は こ う で あ る。 こ れ は キ リ ス ト 昇 天 祭、 洗 礼 者 聖 ヨ ハ ネ の 祝 日、 三 位 一 体 の 祝 日 に (11 ( 畑 に や っ て 来 る。 裸 足 で、 右の親指に小さい 鎌 か ま 型の小刀を結びつけている。こうして耕地を歩いて行き、この小刀で一筋ずっと刈り取る。刈 り入れと脱穀の時が来ると、こうされた畑の収穫は十分の一をビルゼンシュニッターに分けねばならない。しかし ながらそうした所業は大きな危険を 孕 は ら んでいる。これをやっている最中ビルゼンシュニッターがだれかに呼ばれた り、頭上に銃を撃たれたりすると、その年の内に死なねばならないのだ。こやつの方がやって来た者に先に気付い て、声を掛ければ、死の 籤 く じ はそちらに 中 あ た る。大抵の農夫はこんな具合に自家の畑に降り掛かりかねない損失を以下 の方法で防ぐ。畑を外側からぐるぐる耕して、種もそのように 播 ま くのだ。そうすればこうして収穫された穀物にビ ルゼンシュニッターは手を出せない。刈り取られた穀物が脱穀されると、ビルゼンシュニッターがやって来て、う ま い こ と を 並 べ 立 て、 収 穫 物 を い く ら か 掛 け で 売 っ て 欲 し い、 と 言 う が、 聴 き 入 れ て は な ら な い。 ビ ル ゼ ン シ ュ ニ ッ タ ー へ 仕 返 し す る に は、 〔こ や つ に や ら ね ば な ら な い〕 十 分 の 一 の 穀 物 を 脱 穀 す る 際、 杜 ね ず 松 の 木 の 小 枝 を 何 本 か〔 殻 か ら ざ お 棹 に〕添えるとよい。穀物を殻棹が打つごとにビルゼンシュニッターに中るので、遂にはビルゼンシュニッ ターが 慌 あ わ ててやって来て、どうかお願いだから、別の殻棹で 叩 た た いてくれ、と頼む。

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五五六   莨 ビ ル ゼ ン ト根 刈 シ ュ ニ ッ タ ー り人 の報い ビルプツェだった欲張り男が、洗礼者聖ヨハネの祝日の真夜中少し過ぎ、日の出前に例のいやらしい畑歩きを始 めようと身支度した。屋根裏部屋のごく人目に付かない片隅から注意深く隠しておいた小さな三角帽と二 挺 ちょう の小さ な 鎌 か ま 型の小刀を取り出し、上っ張りの下にしまい込んだ。隣人の穀物畑を目指して進みながら、男はだれにも見 咎 と が められないよう気をつけた。なにしろ途中ビルゼンシュニッターがだれかに出くわして、声を掛けられ挨拶されよ うものなら、死ななければならないからだ。ふさふさと見事に 稔 み の っている穀物を貪欲に見渡し、男は呪われた妖術 によってこの半 ば (1( ( が自分のものになると思ってほくそ笑んだ。それから急いで小さな帽子を 被 か ぶ り、鎌を両足の親指 に結び付 け (11 ( 、穀物の茎を刈りながら、耕地を斜めに歩いた。これを済ませた帰り道、もう村の取っつきの家並みに 差し掛かった時、彼はうっかり荘園領主の 牝 め う し 牛 の群れに入ってしまった。牛飼いに朝の挨拶をされては大変と、 慌 あ わ てて脇の路地に滑り込んだのはよいが、腹立ちのあまり、牝牛たちが血の 乳 ミルク を出すよう、呪いを掛けた。夕方の乳 搾 し ぼ りの後で女中たちが牛飼いを呼んで、ひどいことになった、と訴えた。 世 せ こ 故 に 長 た けた牛飼いは因果関係を推し量 り、近くの森の一軒家に住んでいる賢い男の 許 も と へ (11 ( 急いだ。賢い男は、犯人はきっと自分から名乗り出るだろう、安 心して家に帰れ、と牛飼いに告げた。それから賢い男は 感 か ん の う 応 と反感応の術を用い、牝牛を汚損した者が不安で 堪 た ま ら なくなるようにした。すなわち、民間信仰によれば、加害者が家畜の所有者に何かを借りに行くまで、居ても立っ てもいられないように仕向けたのである。そこで例のビルゼンシュニッターは恐ろしい不安に襲われ、 遮 し ゃ に む に 二無二 荘 園領主のところへ押し掛け、挨拶もなにもあらばこそ、領主の部屋に転げ込んで、どうかお願いですから、 麵 パ ン 麭 を

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貸してくださいまし、と頼んだ。この異常な懇請に驚いた荘園領主は、どうしたものかと思案した。するとビルゼ ンシュニッターは極度の不安に 駈 か られて 跪 ひざまず き、どうかどうか 麵 パ ン 麭 を一切れお貸しください、と哀訴嘆願した。とう と う 荘 園 領 主 が 願 い を 叶 か な え て や る と、 ビ ル ゼ ン シ ュ ニ ッ タ ー は 蒼 そ う こ う 惶 と し て 立 ち 去 っ た。 さ て、 そ れ か ら 間 も な く、 この男はもっと大きな難儀に見舞われた。自分の穀物畑でだれが例の歩行をやらかしたか、すぐに悟った男の隣人 は、 か ん か ん に 怒 り、 ビ ル ゼ ン シ ュ ニ ッ タ ー に 刈 り 取 ら れ た 穀 物 の 穂 を 一 握 り 集 め、 束 に 縛 る と、 こ れ を 家 の 煙 突の中に吊した。なにしろこれこそかの妖術に対する最も強力な反撃手段なのである。悪評高いビルゼンシュニッ ターはその日から消耗性疾患に取り 憑 つ かれ、穀物畑の所有者が穂の束を煙道から出そうとしなかったので、その穂 のように 乾 ひ か 涸 らびて、生ける 木 み い ら 乃伊 と化し、だれが見てもおぞましい化け物となったが、とうとう惨めな死を遂げ た。これが彼の非道な悪行の報いだった。 五五七   フォイクトラント エールスニッ ツ (11 ( 近郊のフォイクツベルクの 館 (11 ( に 纏 ま つ わる広く知られた伝説によれば、この城を築いたのはローマの 將軍ドルスス・ゲルマニク ス (11 ( だそうな。城の一室──後に役場執務室として使われた──の壁にはかつてラテン語 の二行詩が記されていた。 ここに陣営を張りしドルススは山を 総 プラエトル 督 と名付けたり。 しかしてその名を後代は継承せ り (11 ( 。  

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古人はこの詩句に次のように唱和した。 高貴なるローマの 代 フォイクト 官 ドルススは 危急に遭いてこの 山 ベルク を築きぬ。 彼はドイツで戦をこととせしゆえ、 ここは今に至るまで 代 フォイクツベルク 官山 と呼ばれたり。 更にこういう韻文もある。 代 フォイクツベルク 官山 の周りの土地は どこもかしこもフォイクトラン ト (11 ( 。 幾歳月を 閲 け み した城を たまたま得たのはプラウエ ン (11 ( の殿ら。 一五三六年フォイクツベルクはフォイクトラントのかなりの部分と共にマイセン 辺 マ ル ク グ ラ ー フ 境伯 フリードリヒとヴィルヘ ルムの手に渡った。 フォイクトラントとこれに隣接するオルラ 地 ガ ウ 域 の幾つもの小都市を世俗ではこんな 諷 ふ う し 刺 詩──アルトマルク地方 のものの同類(DSB三四一)──でおちゃらかす。その文句は左のごとし。

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アダムの堕罪でトリプ ツ (11 ( は滅びた。 そしてアウ マ (1( ( はその隣。 ヴァイ ダ (11 ( にゃお 銭 あ し は一文も。 ノイシュタッ ト (11 ( は何もくれない。 ツィーゲンリュッ ク (11 ( は大窮乏。 ラニスにゃ 麵 パ ン 麭 は一口も。 そしてパウ ザ (11 ( はその姉妹。 空っぽの巣じゃないのかい。 伝承によればパウザは世界の中心だそう な (11 ( 。そこへ行くにはザクセン=バイエルン鉄道でメールトイア ー (11 ( まで行 く。 そ こ か ら 郵 便 馬 車 が シ ュ ラ イ ツ (11 ( へ 通 っ て い る。 六 人 以 上 の 人 間 が こ れ に 乗 ろ う と 申 し 込 む と、 こ う 言 わ れ る。 「シュライツ行きの郵便馬車は満員です。でもパウザへなら他の馬車で行けますよ」と。さて、パウザまで行くと、 どうやってシュライツに 辿 た ど り着いたものか、思案 投 な げ く び 首 とあいなる。これを称して「 パ ウ ジ ー レ ン ウザをやらかす 」と申します な。 五五八   ロイス一門の名 ロ イ セ ン ラ ン ト── フ ォ イ ク ト ラ ン ト は こ う 言 わ れ る こ と も 稀 ま れ で は な い── は ヴ ェ ン ド 人 の 部 族 名 (11 ( 「ル ッ ツ ェ

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ン」──「 ロ ル ッ セ ン シア人 」と響きは同じ。ロシア皇帝の称号中にある「あらゆるロイセン人の専制君 主 (11 ( 」というのがま たこのドイツの地方を思い起こさせる──に由来する。伝説はこの 邦 く に の名の語源学的推論を鼻であしらい、このよ うに説く。皇帝フリードリヒ二 世 (1( ( がパレスチナへ大軍──これにはテューリンゲン方伯ルートヴィヒと諸邦の伯爵 や殿 輩 ば ら が多数参加した──を率いて出征した折、プラウエンの 代 フォイクト 官 、ゲ ラ (11 ( の殿、それからかの、後に一度に二人の 妻を持ったので知られるグライヒェン 伯 (11 ( も従軍した。プトロマイ ス (11 ( 攻防戦でグライヒェン伯がサラセン人の捕虜と なった時、プラウエンの 代 フォイクト 官 も同じ憂き目に遭った。彼は異教徒たちによってモスコヴィアの商人 に (11 ( 奴隷として売 り渡され、その故国に連れて行かれた。さてその地でこのドイツの伯爵は 奴 ぬ ぼ く 僕 として仕える身となったが、ロシア 軍 が タ タ ー ル 軍 (11 ( に 打 ち 負 か さ れ た 時、 闘 い で 雄 雄 し く 活 躍 し た。 し か し な が ら、 ま た し て も 虜 と り こ 囚 に さ れ た の で あ る。ヘカッタなる名のタタールの君侯が新しい主人となった。この野蛮な種族の当たるところ敵無き強大な軍勢は ドイツの地にも侵入、シレジアまで押し進んだ。元プラウエンの 代 フォイクト 官 も 軍 ぐ ん り ょ 旅 の 中 う ち にあったが、機会を見つけてうま うまと脱走、再び自らの治める邦と民の 許 も と に戻り、身辺の要務を処置し終わると、皇帝の宮廷に 伺 し こ う 候 、冗談につけ 本 気 に つ け そ の 堂 堂 た る 騎 士 と し て の 進 退 で 頭 角 を 現 し た。 そ の 際 し ば し ば ロ シ ア の 民 族 衣 装 を 纏 ま と っ て 人 前 に 出、 モスコヴィア人の言葉を 喋 しゃべ ることができ、モスコヴィア人の習俗を少なからず身に着けていたものだから、のっぽ の ロ ッ セ シ ア 人 と か ロ イ セ と 呼 ば れ た。 そ こ で 古 文 献 に は 彼 の 名 が ル ッ ツ ォ、 リ ュ ッ ツ ォ (11 ( と 記 さ れ て い る の が 見 つ か る。かくして彼の添え名のロイスが一族の姓および称号として 代 フォイクト 官 家の全ての家系に受け継がれ、後世には 代 フォイクト 官 な る名称を全く押し退けるに至った。

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五五九   悪 ト イ フ ェ ル ス ヴ ェ ー ア 魔の障壁 ツィーゲンリュックから程遠からぬ森林地帯のヴァルスブルク・アン・デア・ザー レ (11 ( のアイヒリュック山に昔む かし悪魔がその子分どもと共に 棲 す み、ここに近づく者を奸計を 廻 め ぐ らして 捉 と ら えようとした。ある時壁工の親方がそこ へやって来た。 邪 よこしま な者〔=悪魔〕は、おれはあんたが見ている前で、真夜中から 雄 お ん ど り 鶏 が 啼 な くまでの間に、川の一番 流れが激しいところを横切って障壁を築くつもりだが、おれと 賭 か けをしないか、と言った。親方は賭けに乗り、近 くの木に登って、そこから事の成行を見届けることにした。親方は、悪魔が山山からでっかい 巖 い わ の塊を幾つも幾つ も も ぎ 取 り、 ザ ー レ 川 に ぶ ち 込 み、 足 で 踏 み つ け て 動 か な い よ う に す る の を 眺 め て 愕 が く ぜ ん 然 と し た。 あ と 僅 か 十 五、 六 肘 エ レ 尺 で工事が完成しようという時、おっそろしく心配になった樹上の壁工は、声高らかに「キッケリキー、キッケ リキー、キッケリキー」と啼いた。そこで悪魔は 瞞 だ ま されて、本物の雄鶏が 刻 と き を作ったのだ、と思い込んだ。かんか んに怒った悪魔は傍にあった巖をぴしゃりとぶん 殴 な ぐ り──今日でもその手の 痕 あ と がそこにまざまざと見える──、そ れからいなくなった。障壁は悪魔がほっぽらかした開口部が残ったままいまだに未完成で、 悪 ト イ フ ェ ル ス ヴ ェ ー ア 魔の障壁 と (11 ( 呼ばれて いる。 障壁近くの大きな巖の上には皿や 鉢 は ち のような 窪 く ぼ みが数数ある。障壁工事を始める前、悪魔が子分どもと一緒にこ れを使って食事をしたそうな。

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五六〇   クロスターハンマー村の 鍛 ヒュッテンメンヒェン 造小人 たち ローベンシュタイ ン (11 ( 近郊のクロスターハンマー村にはその昔鍛造工らの仕事を前もって片づけてくれる 鍛 ヒュッテンメンヒェン 造小人 たちが 棲 す んでいた。彼らが小さな緑の 襯 シ ャ ツ 衣 を着てせっせと働いているのがしばしば見受けられた。一人が炭を火に くべれば、一人が鉄を運び、一人が大きな 鎚 ハンマー を振るうという具合。鍛造工らがやって来ると、いつも仕事の大部分 がもうできているのだった。小人たちが姿を消してから、鍛造業の全盛時代は終わった。 五六一   おいらのための 灯 ひ そうそう昔のことではないが、ヒルシュベル ク (1( ( 近郊の小村レルヒの傍では、 灯 と も し び 火 が一つ、 頻 ひ ん ぱ ん 繁 に目撃された。あ る区域を行きつ戻りつし、これを三回繰り返すと、消えるのである。あえてこれに 出 で あ 逢 おうとか、行く手の邪魔を しようとか、企てる者はなかった。けれどもとうとうごく年若な 生 な ま 物 も の し 識 りが登場した。この坊や、 教 ゼ ミ ナ リ ウ ム 員養成所 で大 量の啓蒙主義を呑み込み、お腹一杯ぽんぽこりんになっていたのである。彼は、迷信に 拠 よ って来たるところのさよ う な 妖 怪 を 信 じ て い る と は 無 知 蒙 も う ま い 昧 な 人 た ち だ、 と レ ル ヒ の 農 夫 た ち を 笑 い 飛 ば し、 「 灯 と う か 火 は た だ 一 つ あ る の み。 す な わ ち、 我 ら が 理 性、 我 ら が 啓 蒙 主 義 の 灯 火 で あ る」 と 片 づ け、 そ の 灯 ひ と や ら を 見 せ て 欲 し い、 そ う し た ら 自 分は、そもいかなる 灯 と う か 火 ぞ、と問い 質 た だ し、これを自然原理に基づいて彼ら農夫に説明しよう、と言った。農夫らは 灯 と も し び 火 がよくさまよう宵を待って、出没する場所までこの小先生に 随 つ いて行った。するとその灯がやって来た。先生

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は 勇 気 凛 り ん り ん 凛 灯 火 に 向 か っ て 進 み、 近 く ま で 寄 る と、 「お い、 あ ん た は い っ た い ど う い う 灯 と う か 火 な ん だ」 と 叫 ん だ。 農 夫たちはけっこう後ろに退いていたが、大きなピシャリという音、すぐに続けてもう一発ピシャリ、それから甲高 い声でこう怒鳴るのは充分聞こえた。 おぬしはおぬしの世話を焼け。 おいらはおいらのための灯よ。 この 科 せ り ふ 白 と共にでしゃばりの啓蒙家はしたたかな横びんたを二つ 喰 く らわされたわけ。それからというもの、レル ヒの農夫たちは彼に「 灯 リ ヒ ト フ ロ イ ン ト のお友だち 」なる 綽 あ だ な 名 を奉った。もっともこちらは、絶対そんなんじゃない、と堅く誓っ たが。 五六二   娘 ド ッ ケ ン タ イ ヒ っこ池 (ア ウ マ 近 郊) メ ル ケ ン 村 ドルフ の 北 西 半 時 間、 ア ウ マ 水 ミ ュ ー レ 車 の 傍 に 娘 ド ッ ケ ン タ イ ヒ っ こ 池 と 呼 ば れ る 池 が あ る。 昔 む か し こ の 池 に は 父親と二人のこよなく愛らしい娘が 棲 す んでいた。その繊細優美なことといったらもう形容しようもなかった。人人 は、それ以外全く知ることのないこの姉妹をただただ「 娘 ド ッ ケ ン っこ 」と呼んだ。この〔水中の〕娘たちには地上の娘た ちと同じく、踊りが大好きという弱点があって、それゆえしばしば山を下りてメルケンドルフやピージギッツへと やって来た。もちろんこの子たちにはすぐさま崇拝者ができ、彼らは怠りなく家まで送り届けた。池の 畔 ほとり まで行く

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と、そこには一種の扉があり、そこから階段が下へ続いていた。これを降りるとすぐに快適で広広とした住まいに 達した。しかし娘らは、父の年寄り 水 ニ ッ ク ス の精 がまず寝てしまわなきゃ、そうすればキリスト教徒〔=人間〕の臭いを 嗅 か ぎつけられないから、と言って、送ってくれた男たちを用心深く玄関の後ろに隠した。男たちはこの場所で、娘 らとその父親の会話を震えながらたまたま盗み聞きした。父親は、おまえたちはキリスト教徒のところに出掛けた のか、それともキリスト教徒をここへ連れて来ているのか、と 訊 き いた。娘らが、こちらから出掛けたの、と答える と、父親はいくらか落ち着いた。この娘らは父親から、宵の十時には家へ帰っているように、と極めて厳しく命じ られた。さもなければ殺してしまう、と脅したのである。ある時メルケンドルフの若者たちはわざと娘らをもっと 遅くまで引き留めて、それから送って行った。若者たちがいつもより長いこと帰って来なかったので、メルケンド ル フ の 乙 女 ら は 不 安 に 駈 か ら れ て 他 の 若 い 衆 に 言 っ た。 「明 日 の 朝 早 く お 池 に 行 っ て み な き ゃ だ め よ。 お 池 の 水 が 赤 く な っ て い た ら、 あ の ひ と た ち、 殺 さ れ ち ゃ っ た ん だ わ」 と。 翌 朝 池 は 本 当 に 血 の よ う に 真 っ 赤 に 染 ま っ て お り、 その後若者たちについても娘らについても何の消息もなかった。 五六三   カルシュテートの亡霊 その昔ブンツィ ヒ (11 ( にカルシュテートという貴族──ベオグラードの会戦 で (11 ( トルコ軍と闘ったことがある──が住 ん で い た。 粗 暴 か つ 傲 ご う ま ん 慢 な 男 だ っ た。 と う と う 到 底 平 穏 無 事 と は 申 せ な か っ た 生 涯 を 終 え る と、 遺 い が い 骸 は ホ ー エ ン ロ イ ベ ン (11 ( の 教 会 に 埋 葬 さ れ た。 し か し い ま だ に こ の 死 者 の 霊 は 夜 白 い 戦 馬 に ま た が り、 遺 骸 が ホ ー エ ン ロ イ ベ ン へ運ばれた道筋を乗り回す。いや、それどころかこの亡霊、教会の中にまで 闖 ちんにゅう 入 する。こういうことである。ある

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時 ホ ー エ ン ロ イ ベ ン の 牧 師 が 黄 た そ が れ ど き 昏 刻 息 子 の 一 人 に 言 い 付 け て、 祭 壇 の 上 に 置 き 忘 れ た 本 を 取 り に や っ た。 息 子 は 合 カ ン ト ア 唱隊指揮者 の二人の息子を一緒に誘って行った。この男の子たちの一人が子どもっぽい悪ふざけで説教壇に上が り、 「来 い や い、 来 い や い、 カ ル シ ュ テ ー ト の 亡 霊 や あ い」 と 叫 ん だ。 す る と な ん と、 建 物 が ど っ と 揺 れ 動 き、 騎 馬の亡霊が 轟 ご う ご う 轟 という音と共になんとも恐ろしい 形 ぎょうそう 相 で婦人席を越えて疾駆して来た。男の子たちは教会墓地で気 を失っているのを発見された。以来カルシュテートの亡霊を呼ぶ者は二度といない。 五六四   粉 ミ ュ ー ル ゲ ッ ツ 挽き場の偶像 プラウエンの上手の 粉 こ な ひ 挽 き場ではかつて──あるいは今日でも──奇妙な古代の木像が見られた。まずまあゾン ダースハウゼンのピュストリ ヒ (11 ( みたいに 不 ぶ か っ こ う 恰好 な人間の形で、 粉 ミ ュ ー ル ゲ ッ ツ 挽き場の偶像 と呼ばれた。これは異教時代に由来 し、本当に神像だったのだ、との言い伝えである。この像には不思議な特性があって、粉挽き場から持ち去ること はできない。片づけてしまおうとしても、再三元のところに戻って来る。もっともその際うるさい音やらお化け騒 ぎはないのだが。ある時のこと、 が ク ラ ッ パ ー ブ ル シ ェ たがた若造 (粉挽き職人)である小生意気な青年がここにやって来て、慣わし 通り親方や 朋 ほ う ば い 輩 にしかるべく仁義を切り、泊めてください、と頼み、ああ、いいともさ、と言われ た (11 ( 。粉挽き場を つ ら つ ら 眺 め る と、 当 然 粉 ミ ュ ー ル ゲ ッ ツ 挽 き 場 の 偶 像 も 目 に 入 っ た。 で、 訊 た ず ね る と、 そ の 木 像 に 関 わ る 由 緒 来 歴 が 講 釈 さ れ た。 これを聴いた 余 よ そ も の 所者 の職人はふふんと鼻で 嗤 わ ら い、こんな古ぼけた茶色の木像が持って行かれた先から自分でここへ 戻って来るなんて話がほんとかどうか一つ試してみるべえ、と心中ひそかに考えた。夜が更けると、あてがわれた 小部屋から抜け出し、折から月が明るく照っていたので、偶像に忍び寄り、安置されていた場所から取って、水車

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溝に投げ込んでしまった。ところが途端に突然嵐が 轟 ご う ご う 轟 捲 ま き起こり、目に見えない手が水車の輪を始動、水車がご とごと運行、鈴がリンリン、水は 凄 す さ まじく 奔 ほ ん と う 騰 、もろもろの装置が、 桶 お け が、箱がぐるぐる回転しだしたので、若者 は気が遠くなった。それから目に見えない手が若者をぎゅっと 摑 つ か むと、水車溝に引き戻した。溝の中からあの木像 が に ゅ っ と 突 き 出 て お り、 仰 天 し た 若 者 は 慌 て て ミ ュ ー ル ゲ ッ ツ を 水 か ら 引 き 揚 げ て 元 の 場 所 に 運 ん だ。 す る と、 何もかもまたしんと静まりかえった。ただし親方を除いて。親方は、奉公人と共に、大騒動の原因を調べ、余所者 がミュールゲッツの平安を妨げたことを知ると、棒を一本おっ取り、奉公人にもそうさせ、二人掛かりで軽はずみ なおっちょこちょいをこてんこてんに叩きのめし、水車場から 抛 ほ う り出した。以来ミュールゲッツは平安を妨げられ ることなく、同じ場所に鎮座し続けた。 五六五   トリプストリル フォイクトラントおよびお隣のテューリンゲンやザクセンではありきたりの冗談だが、どこへ行くんだね、と詮 索 さ れ て、 ち ゃ ん と 本 当 の こ と を 言 う 必 要 が な い、 と 思 わ れ る 場 合、 「ト リ プ ス ト リ ル へ さ」 と 答 え る。 こ の お ふ ざけは小都市トリプティスと関係があり、この町にはこんな事のしだいがある。現在トリプティス市がある地域に は か つ て 三 つ の 城 館 な い し 城 塞 が あ っ た 由。 一 つ 目 は 大 グローサー ホ ッ カ ー 山 上、 二 つ 目 は 現 在 館 やかた が (11 ( あ る と こ ろ、 三 つ 目 は 現 在 墓 地 が あ る と こ ろ。 こ の 三 つ の 城 塞 は「ト リ ー オ」 な い し「ド リ ロ」 と い わ れ、 こ れ か ら「ト リ プ ス = ト リ ル」なる戯名が作られた。 トリプティスの近くには泉がある。今日では麗しからざる名前「 水 デ ィ ・ プ フ ュ ッ ツ ェ 溜まり 」で通っている。そして「水溜まりが

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柳の上に垂れてい る (11 ( 」とふざけた言い方がある。その昔、そこは 日 ひ か げ 蔭 で快い場所だった。いとも歳古りた柳の巨木 が立ち、泉と芝生に緑の天蓋のごとく枝を垂れ、 逞 たくま しい根を泉の底まで伸ばしていた。この根は澄み切った水中に 見えたし、今なお見える。かの麗しきグロイチュ女 伯 (11 ( が未来の背の君の容姿を 水 み な も 面 にありありと予見したのはこの 泉である。しかしやがて柳は枯死し、根っこだけが残った。そこで根っこの上に水があることになったので、前述 の戯言「水溜まりが柳の上に垂れている」が巷間作られたしだい。 五六六   ぶ プ ン プ フ ー ト かぶか帽子 昔むかしパウザ周辺で 家 コ ー ボ ル ト の精 みたいな若者がうろつき廻っていたことがある。この男の素性はとんと見当がつか ず、人間なのか、 手 ヒ ン ツ ェ ル マ ン 伝い妖精 な (11 ( のかも分からなかった。しかしながらいつも 粉 こ な ひ 挽 き職人の 恰 か っ こ う 好 をしており、 被 か ぶ りつ け て い る み ょ う ち き り ん な 形 の 帽 子 の た め に、 だ れ に も ぶ プ ン プ フ ー ト か ぶ か 帽 子 と 呼 ば れ た。 彼 は お っ そ ろ し く 勤 勉 だ っ た が、どの粉挽き場でも長続きしなかった。なにしろひとをからかったり、ぶきっちょな失敗をやらかしたりが再再 なので、しょっちゅう、おめえは 馘 く び だ、と申し渡される羽目に陥ったからである。彼を知っている者は、 麵 パ ン 麭 を 喰 く う以上のことができる〔=一筋縄では行かない〕やつ、と口を 揃 そ ろ えて言ったし、やりこめようとした連中で手ひど く反撃されたのも少なからずだったが、それでも、当たらず障らずでいてもらえれば、たいていは無害な悪戯をす るだけだった。ある時、ヴァレングリューンの百姓屋敷で、一家が大人も子どもも食卓に着いて昼飯を食べていた が、周りにはおっそろしくたくさん 蠅 は え が群がっていた。そこへ扉が開いて、プンプフートが顔を 覗 の ぞ かせた。愛想良 く歓迎の 挨 あ い さ つ 拶 をされて、一緒に食事を、と招かれた彼は、二度まで言わせず、すぐさま 坐 す わ り込んだ。もてなしのい

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い主婦がずっしりした 団 ク ロ ー ス 子 を皿に載せると、 突 と っ ぴ ょ う し 拍子 もないことが起こった。プンプフートが当該 団 ク ロ ー ス 子 を切り分けよ うとすると、 団 ク ロ ー ス 子 は自分の固さを目に物見せてくれんとばかり、プンプフートの 小 ナ イ フ 刀 の下から滑り出し、砲弾よろ しく部屋の戸と真向かいの 厩 うまや の戸をぶち抜き、 斑 ぶ ち の 牡 お う し 牛 の角に刺さったのである。皆、びっくり仰天、口あんぐり となったが、プンプフートは落ち着き払って次次に 団 ク ロ ー ス 子 を皿に取り、 頗 すこぶ る 旨 う ま そうに平らげた。こうした楽しい仕事 にいそしんでいる最中、蠅がなんともうるさく彼を煩わせたので、プンプフートは主人に向かってぶうぶう不平を 鳴 ら し、 害 虫 ど も を 戸 の 外 へ 追 い 出 し た ら い い だ ろ う、 と 言 っ た。 「そ り ゃ ま あ、 や つ ら が 追 い 出 さ れ て そ の ま ま 外 に い て く れ り ゃ あ え え だ が よ」 と 返 辞 が あ る。 「だ ど も、 追 い 出 し た と こ ろ で な ん に な る」 。「そ い じ ゃ」 と プ ン プ フ ー ト。 「お め え さ ま た ち、 こ の け っ こ う な 飯 を 喰 く っ ち ま う ま で、 や つ ら を ど っ か 別 の 場 所 に 置 い と き ゃ あ よ か ん べ え。 そ う す り ゃ、 あ つ か ま し い 虫 け ら に 邪 魔 さ れ ね え で 済 む」 。 こ れ を 聞 い て、 一 座 は げ ら げ ら 笑 い、 一 家 の 父 親 は こ う 言 っ た。 「ま あ さ、 プ ン プ フ ー ト、 お ぬ し が そ う し て み な あ よ。 蠅 ど も を ど っ か へ 片 づ け な せ え。 な ん せ お ぬ し ゃ あ 妖 術 使 い だ で」 。 プ ン プ フ ー ト は 口 を 横 に 拡 げ、 被 っ て い た 帽 子 を 別 の 場 所 に 置 く と、 蠅 ど も に 中 へ 入るよう命じた。するとだれもが 驚 きょうがく 愕 したことには蠅は 悉 ことごと く蜂の集団のように帽子の中に潜り込んだので、帽子は 一杯になって膨れ上がり、更に縁の上でうようよ 蠢 うごめ いた。プンプフートはと申せば幅の広い大きな口を 拭 ぬ ぐ うと、ご 馳走さん、と挨拶し、蠅の入った帽子を手に取り、扉の外へ蠅を持ち出し、そこにあった幾つもの乳入れ 壺 つ ぼ の中へ 払い落とし、大声で笑うと、いなくなった。

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︵原著三三験︶ 第ニや一懸  第九號  三一六

その認定を覆するに足りる蓋然性のある証拠」(要旨、いわゆる白鳥決定、最決昭五 0•