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地域資源としての「棚田」保存活動

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Academic year: 2021

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(1)地域資源としての「棚田」保存活動 −「稲倉の棚田」保存会を中心に. −. “Tanada” Conservation of Regional Resources 高橋真央. TAKAHASHI Mao. 禹 在勇. WOO Jae yong. 長野大学. Nagano University. 1.研究の背景. ある氷沢という名前がつけられた3)。. 今日、高齢化や過疎化によって農業の担い手が減少すること. 条里制で整えられなかった部分は、規格が無く自由に広げる. により、荒廃地の増加や地域資源の損失、自然と農村のバラン. ため、労力を使わずに開拓しやすい部分から現在の形まで広げ. スが崩れるなどの問題が挙げられている。現在、長野県上田市. た(図4)。. の東部に位置(図1)する殿城地域には、地域・観光資源とし. 稲倉の棚田は、土手と耕作地が半分の割合で存在しており、. て期待されている稲倉の棚田があり、「日本棚田百選」に選定. 安全な棚田を造り上げる上では、段となる土手は重要な特徴で. され、耕作放棄地の再生を目指して保全活動を行っている。一. あり、巧みな技術を象徴する部分である。先人の知恵が顕著に. 方、作業者の負担が増加するため苦にならず継続的に地域全体. 現れている。大別すると2種類の土手があり、主として東日本. で行う保全活動を望む声が上がっている。. においては草や土で作られた土手であるナカジマ型の土坡。ま. したがって、地域住民の参加による「稲倉の棚田」保全意識. た西日本では石積みが主流となっており、稲倉の棚田は、上側. の向上や地域振興・観光振興が必要であると共に、原風景であ. の荒廃地の部分が石垣の土手においては「堰免」(せぎめん). る棚田を次世代に残していくことが望ましい。このような背. と呼ばれている。また、下側は草の土手となっており、上側は. 景から農村文化を象徴する棚田の景観保全のため、「稲倉の棚. 急勾配なため、崩れないよう石で固める必要があったため上下. 田保全委員会」と上田市役所と長野大学で「農・学・官連携」. 分かれていると推測できる。. (図2)を結び、保全活動や調査研究の活動を行っている。. 地形の特徴としては、全体面積は約30ha だが、上側の荒廃. そこで、本研究の目的は「稲倉の棚田保全委員会」を対象に. 地を除いた面積のため実際は更に広い面積となる。地権者は. し、これまで行った活動を整理すると共に、地域活性化や観光. 101名おり、水田枚数は大小さまざまな広さ・形を合わせて約. 振興に対するあり方や保全委員会の継続的な活動について検討. 780枚存在する。標高は640mから稲作の限界であると言われ. したものである。. ており900mの高低差がある。2,000m級の山々が連なり稲倉 川を挟み両側に水田が広がっているため、水を引きやすく、棚. 2.稲倉の棚田と稲倉の棚田保全会. 田を造りやすかったため川中心に棚田が広がっている。豊な自. 2.1. 棚田と稲倉の棚田の特徴. 然と棚田が融合して形成されている特長がある。. 棚田とは、山の田、斜面に階段状にひらかれ、形が棚に似て. 一方、地理的に条件が悪く、農作業の生産条件が不利な地域. いるので棚田といわれており、1406年にかかれた『高野山文. であり、かつ、農業が重要な事業である地域とされ、平成5年. 書』に残されている 。. に特定農山村に指定されたように上田市の中でも特に生産基盤. 1). 現在の棚田の定義は、傾斜20分の1以上の斜面にある水田. の整備が遅れている地区である(図4)。. となっている。日本国内に約22.3万 ha あり、全水田の面積の. したがって、昔から受け継がれた棚田の仕組みをそのまま残. 約8%を占めている。また、日本という狭い土地を節約し、作. すと、維持管理に手間がかかるため多大な労力が必要となる。. り上げた形である。. 2.2. 日本の棚田百選. 図3に示すように調査対象地域である殿城地域に位置する. 1999年7月、農林水産省により117市町村の棚田が「日本. 「稲倉の棚田」は、開発起源が戦国時代から江戸時代と推測さ. の棚田百選」として認定された4)。日本の棚田百選では、農村. れていたが、奈良時代に水田の基盤ができたといわれている。. の美しい原風景の形成や伝統・文化の継承など、立地条件を生. かつて、斜面の下側は条里水田で整備した名残があり、水田の. かした多面的な機能を発揮している棚田の整備活動を推進し、. 形が長四角形で均等に約30枚程度並び、特に上田市小県地域. 農業農村に対する理解を深めることを目的として選定されてい. 周辺では、奈良時代に捕縄整備が活発化され、規格を統一され. る。. たと記されている 。条里制部分においては米が早くとれる地. 選定条件においては、「先人が山や谷を切り開き、石垣を積. であり、お上に献上する名誉ある米であったため、この地名で. み上げ傾斜地に造られた田んぼで、先人たち智恵と苦労の結晶. 2). デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-4 No.96 2017. 9.

(2) 図2 農・学・官連携協定. 図1 長野県上田市位置(長野県地図). である。」とされ、以下に評価項目を整理した。 ⑴ 営農の取り組みが健全であること ⑵ 棚田の維持管理が適切に行われていること ⑶ オーナー制度や特別栽培米の導入など地域活性化に熱心に 取り組んでいること. 図3 稲倉の棚田耕作放棄地. この3点を基準として、農林水産省の主導で棚田学会の学者 10名ほどを含む「日本の棚田百選」選定委員会により選定さ れた。 2.3. 稲倉の棚田保全委員会 稲倉の棚田保全委員会とは、「稲倉の棚田の自然景観の保持 と環境保全を推進し、棚田を荒廃から守り貴重な文化遺産を後 世に伝え残すこと」を目指し、平成11年7月26日に農林水産 省による稲倉の棚田「日本の棚田百選」認定をきっかけに活動 が開始された。 しかし、棚田を保全して耕作放棄地がない状態を目指す動き が起こり、村で皆が認める実力と名実優れた方が役員を推薦す ることにより、平成12年3月19日に保全を目的とする「稲倉保. 図4 川を挟み両側広がる水田. 全と活性化をすすめる会」が発足した。これにより、農業委員 会や殿城活性化組合らと協働して保全活動を行うことになる。 この際、市役所からの資金援助無く活動が可能だった。以. その後、ツアーの受け入れや2次産業を行った。近頃は荒廃 した棚田を明治時代の状態に修造することを目指した。. 後、様々なイベントを行い、平成15年9月29日に「稲倉の棚 田保全委員会」を設立して地域団体を発展的に解消し、地域や. JA、行政らと団体結合したことにより、事務局が上田市農政 課に移った。. 10. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-4 No.96 2017. 3.研究方法 平成27年5月から平成28年12月まで、上田市にある殿城地 区の川を挟んで広がる棚田(図5)である「稲倉の棚田」を.

(3) 図5 川を挟んで広がる棚田{稲倉の棚田の風景」. フィールドとして、稲倉の棚田保全委員会の活動や地域の住民. かにするために、主だった参加人数が多い活動の抽出を試み、. らを対象に、以下の通り調査研究を行った。. 分析の対象として下記⑴∼⑽の10件の活動の要素を取り上げ. ① 文献調査:稲倉の棚田保全会の成り立ちからこれまでの保. た(図6)。. 全活動、棚田管理方法、地域の歴史的背景・文化等の資料 を収集する。. ⑴ 大宮北高校による農作業体験 平成13年5月に第1回さいたま市立大宮北高校の農作業体. ② 現地調査:稲倉の棚田保全会による棚田保存活動・農業に. 験が始まり、平成25年まで継続して行われている。この学習. 参加することで農村に残る知恵や文化を学ぶ。稲倉棚の田. プログラムにおいては、外泊込みの数日間自然学習により生徒. 保全委員会が主催するイベント講演等で保全活動に直・間. の多様な学びを行う内容となり、稲倉の棚田以外に菅平や東御. 接的に関わる部分の関係性を調査した。. 市の山林伐採、松代大本営等を各年度組み合わせて実施され. ③ ヒアリング調査:これまでの保存・維持管理方法について どのように感じたか、稲倉の棚田保全委員会や地元農家に ヒアリング調査を行った。 ④ 調査内容の整理:上記の過程で収集したデータを4項目に 整理・分析を行った。 ⑤ 保存・維持管理の検討:今後①∼④に基づき、今日求めら. る。 大宮北高校1年生で7学級が参加し、図7に示すように、① 農業作業体験として先人の知恵が残る棚田で昔ながらの農業を 体感することにより日本の稲作文化を学ぶこと、②地元農家と 触れ合うことによりつながりを持つこと、③入学して間もない 生徒同士で大変な農作業を行うことによる人間関係の構築が挙. れている長期的な保全・維持管理方法を考察し、今後のあ. げられる。農村体験の一環として、田植えの後、稲刈りの後、. り方について考察を行った。. 地元農家に訪問し、懇談する時間を設け、地域の文化や人と人 との繋がりを学んだ。. 4.稲倉の棚田保全会の取り組みの内容 本研究では、稲倉の棚田と稲倉の棚田保全会のあり方を明ら. また、農村体験から得られたお米を大宮北高校との交流があ る沖縄に棚田のお米を送るなど、稲倉棚田と沖縄との間接的な デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-4 No.96 2017. 11.

(4) 図6 稲倉の棚田保全委員会の活動のまとめ. 関係ができた。. ⑷ ほたる火まつり. ⑵ 案山子まつりの開催. 平成17年7月から現在まで行われているイベントとして、. 図8に示すように、平成14年8月から現在まで、約100体. ペットボトルに入ったろうそくを鉄パイプで固定し、棚田の田. の案山子を設置し、毎年継続的に案山子まつりが開催される 。. んぼの土手に約5メートル間隔で設置し、夜のほたる火を楽し. 案山子とは、古くから髪や魚を焼き、田畑に立てることによ. む祭りのことである。平成18年は約800本、以降、平成18年. り、悪臭で取りや獣を追い払っていたことから、「嗅がし」(に. には約1,000本設置している(図9)。. おいかがし)と呼び、形が変化して畑の守り神とされ、現在ま. ⑸ イルミネーション「冬に輝く星の里」. 5). で受け継がれている人形である。堆肥袋や古着を用いて案山子. 平成27年12月から2月に、冬に輝く星の里として、イルミ. を制作しており、現在は殿城小学校の生徒が案山子制作に参加. ネーションを設置し、冬の観光客を誘致する目的で、太陽光パ. している。. ネルの案名で自動的に点灯することができる発光ダイオードを. また、案山子は2つの主だった解釈があり、①文献資料に基. 使用したイルミネーションであるペットポタルを約1,500個用. づく案山子の歴史、②田んぼの神として守る役割があり、古く. 意し、冬の夜に棚田の輪郭が浮き出る幻想的な風景を演出する. から人々の身近に存在していたため、案山子まつりは農村文化. 企画であり冬の観光客に向けて企画したものである(図10)。. の継承としての意味合いが強い。この活動において、他の活動. ⑹ 6次産業化に向けて. と比べ規模が年々拡大し、岩清水の地元農家のみで行われたも. 当会は、稲倉の棚田で作られた「酒米」を6次産業化に向け. のが、殿城地区まで広く行う案山子まつりとなった。. て、平成17年9月に「自然米の会」が栽培した棚田酒米によ. ⑶ 観光ツアー受け入れ. る酒「澤の花」が販売開始された。「澤の花」は、「伴野酒造」. 当会は、観光や研修会・農作業体験などのツアーを受け入れ. で造られ、平成24年まで販売された。また、平成27年には、. る活動を開始した。棚田は、景観が美しいだけでなく環境保護. 棚田酒米を使用し「岡崎酒造」で「亀齢」が製造され(図11). の視点から重要な役割を担っていることから観光ツアーの受け. 販売されるようになり、関東信越国税酒類鑑評会の吟醸部門で. 入れを実施し、平成14年3月にツアーの感想を綴ったエッセ. 最優秀賞、純米部門で優秀賞を受賞した。他にもギフト販売を. イが発行された 。. 行うことにより、棚田米とセットで味わうことができる(図. 6). 11)。. 12. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-4 No.96 2017.

(5) 図7 大宮北高校生による田植え・地元の方との懇談. 図8 案山子まつり準備. 図9 ほたる火祭りの様子. ⑺ オーナー制度開始 平成18年に稲倉の棚田保全委員会で棚田の保存管理が困難. 図10 イルミネーション電灯式. 景と初めて見る生き物と触れあうなど、周囲を気にせずのびの びと家族で農作業体験をできる穏やかな雰囲気が棚田の居心地. となり、主に県外からイベントとして農作業体験を行うことで. の良さとなり、多くのリピーターを望んでいる(図12)。. 棚田の保全を図った。平成18年から始まったオーナー制度で. ⑻ 稲倉の里農村交流館設置. は、参加者に田んぼの一区画を貸し出す。オーナーを募集し、. 平成26年には、約1,000人規模の大きなイベントが数多く. 1年を通じて大自然や農業に触れ合いながら水田を管理しても. あるため、休息や着替え、農機具の保管所、会議、地域間交流. らう企画であり、人手不足の担いや環境整備などの作業を担っ. など、その拠点となる交流施設を設置した。. てもらうと同時に、食文化の大切さや農業の楽しみを感じても らう企画である。海外からのオーナーで遠方から訪れる方も見. また、情報交換の場として利用できるため、外部から訪れる お客さんへの対応が可能となった(図13)。. られる。また家族連れも多く利用し、小さな子供らが棚田の風 デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-4 No.96 2017. 13.

(6) 図11 棚田米とお酒(きれい). 図12 オーナー制度に参加した家族. ⑼ 農学官連携締結. に牛の鼻を擦らせ、事前に柵を破らないように教える「馴致」. 稲倉の棚田保全委員会と長野大学と上田市は、日本初の. という工程があった。地域の学校農業体験事業として、平成. 「農・学・官連携締結」を結び、田植えや草刈り・イベントな. 20年から殿城小学校の農業体験学習の支援を開始し、1年を. どの企画やスタッフに参加するなど、保全活動や稲倉の棚田に. 通じて稲作を体験し、育てた米を食べるプログラムなどを通じ. かかわる様々な商品やパンフレット、チラシなどのデザインや. て、大切な地域資源や地域民とのふれあいによって、地域愛を. 殿城地区の農村デザインの構想や学術研究活動など、農・学・. 育むことを目的に実施している。. 官連携による農村活性化のための活動を行っている。. 4.1. 活動内容の分類. ⑽ その他の事業 牛の舌草刈りで郷耕し事業として、平成19・20年の8月か ら10月の期間に、県の事業で行った「牛の舌草刈りで郷耕し. 14. 図13 稲倉の里農村交流館設置. これまでの活動を対象に、「稲倉の棚田保全会」の発足から 現在までの活動を項目ことにイメージ化したものを図14に示 す。. 事業」を実施した。数年間耕作を行わなかったため水田として. 図は、①祭り②体制③整備④学びの4つに分類し、それぞれ. の再生が困難となっていた土地を昔からある牛を用いた方法で. の項目から、活動の傾向を整理し、これから稲倉の棚田の活動. 復旧させることを目的とした。昔ながらの知恵としては電気柵. におけるイメージを把握することを目指す。. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-4 No.96 2017.

(7) 活動であるイルミネーションでは、冬の棚田に見所が少ないた め、他の地域の棚田で使用されている光源であるペットポタル を用いてイベントを行った。 したがって、最近の活動においては、棚田の本体の保存活動 や特徴を活かし、感性に触れることに重点をおいた企画が多 い。同時に、五感を利用した活動や他人とのコミュニケーショ ンを誘導する要素が若干薄れているように思われる。 棚田のあり方においては、農村の象徴である棚田の原風景を 残すことやイベント、農業デザインによる棚田のブランドつく りなど、情に響くような棚田の特有の雰囲気を活かした自然と コミュニケーションを図れる環境を整えるなど、新たな価値を 大切にしながら保全・維持管理の活動を行うことが必要であ 図14 稲倉の棚田の活動の傾向. る。 ⑴ 地元農家・地元住民の参加. 1)祭り……歴史・文化の継承のための祭りや、棚田の景観を. 「稲倉の棚田保全会」と「活性化をすすめる会」の活動は、. 活かした祭りなど、外から人が集まってくるイベントの企. 地元の農家と訪れた人との交流を重要視されており、両者とも. 画。. 距離感が近いため、県内外からリピーターが数多く訪れる。こ. 2)体制……保全・維持活動を行ううえで、継続していくため に必要な体制。保全会の組織にかかわる活動。 3)整備……棚田の環境を整備して保全・維持に直接つながる 活動。. の背景には、地元農家の「稲倉の棚田」に対する愛着が関係し ている。また、イベントの内容から地域の文化や歴史などの特 色のある要素を取り入れる必要がある。 ⑵ 保全活動の生活リズムへの組み込み. 4)学び……実際に昔ながらの稲作を体感しながら学ぶことに. 図の継承を示す部分が年々減少傾向にあることから、昔なが. よって、得られる様々な経験。水田の機能・山の保全等の. らの農家のように、本人の負担無く草刈などの日常的な保全活. 知識で自然と人間や文化が調和した環境の理解に関する要. 動を、日頃の生活リズムに合わせて、自然のサイクルである朝. 素。. 早い涼しい時間に行うような生活、つまり、昔からの知恵や生 活習慣を伝える。. 5.取り組みの結果と稲倉の棚田のあり方. ⑶ 稲倉の棚田の外部とのコラボレーション. 稲倉の棚田保全会の活動のイメージ図より、これまでの傾向. イベント企画の際は JA だけでなく稲倉の棚田の周辺店舗等. に基づいて稲倉棚田のあり方を考察してみると、共同作業とコ. と協力した企画や周辺の空き家を再生して古民家を利用するな. ミュニケーションにおいて、稲倉の棚田の保全活動の中で、最. ど行い、より一層上田らしいおもてなしを行い、訪れた人が愛. 初の大規模な催しである平成13年の大宮北高校の農業体験か. 着を持って棚田のファンやリピーターとなるように思い出に残. ら、平成17年のツアー受付までの期間は水田整備を主な活動. るような企画を行う。地元協力者の楽しみになるよう心がけて. としており、外部依頼があった場合に棚田の案内やおもてなし. 手伝いを増やす。. などの対応を行った。 したがって、稲倉の棚田が有名になるにつれて、活動の範囲. 6.結論. が広まり、それに伴い参加者も増加し、保全会の負担が大きく. 稲倉の棚田における保全管理は、次世代に継ぐための保全や. なっていった。一方、以降の活動としては、オーナー制度が取. 保存を目的としており、保全委員会以外にも多くの豊殿地域の. り入れられた事で、複数人まとまって参加者に説明や作業等を. 方とともに地域振興を行う必要がある。農作業で人が関わり合. 行うことができる体制になり、効率が上がった。またそうした. うことにより自然とできるコミュニティから感じる居心地の良. 中でも、家族や参加者同士がコミュニケーション行うことで繋. さを作り出し、地域振興の場として定着させることが「稲倉の. がりができ、また、このような環境を意図的に作り出すことに. 棚田」へ行きたいという理由の一つになる。そのため、耕作放. より、稲倉の棚田における思い出や愛着が生まれる場になった. 棄地の整備をする過程に地域住民とオーナー、小学生などの人. と思われる。. 間関係を構築して双方に楽しみを提供できる環境や企画が必要. また、景観利用と大規模イベントにおいては、平成27年の. となる。 デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-4 No.96 2017. 15.

(8) そのためには、1)古民家再生:豊殿地域の伝統的な地域資 源である古民家を整備してオーナーの宿泊施設として利用す る。2)交流会館の開放:現在交流会館に人が通年常駐する環 境が整っていることから、水田の地権者が自由に往来できる環 境を設けて観光客と地権者とのつながりを持つ。3)飲食店と の連携:地元の食材を使用した料理の販売、振る舞いや新鮮野 菜を自由な販売を可能にすることで稲倉の棚田の魅力を発信に 期待できる。 以上のように、農村・農業デザインの観点から活動を実施す ることによって、地域住民の関心の高さと連帯意識が自ずと生 まれてくると思われる。 総じて、今や「地域創生」ということで、国を挙げて地域振 興や活性化に取り組んでおり、その中でも農業デザインにおい ては、上述したようなデザイン活動のプロセスの中に、人間の 生活に対するさまざまな要求・願いを現実化していくための社 会的、実践的な行為である。そして、その要求・願いは、いず れの地域民にあっても、その地域民が歩んできた歴史的文脈、 すなわち、地域が築き、継承してきた生活文化とその機構の文 脈の中に、しっかりと位置づけられていなければならないと考 えている。 本稿は、アジアデザイン文化学会主催の第10回アジアデ ザイン文化学会国際シンポジウム南京大会において発表した 内容「アジアデザイン文化学会論文集「issueno.10, october,. pp.1145-1154, 2016」に掲載されたものに加筆したもので ある。 【参考文献】 1)『高野山文書』室町前期­1406年. 「条里水田」とは,生活の安定と税の徴収のために109m 2) 四方の大区画な圃場整備された水田である.大きな労力と 緻密な計画が必要とされることから,強力な政治背景が あったと考えられる. 3)古墳時代に形づくられたヤマトの国は大和朝廷を組織し, 各地のクニをより支配するために国府を置いた.地域の人 は国府のことをコウと読んでいたため,質がよく,お上に 献上する名誉ある米をつくっていた氷沢には,「国府の沢」 という意味合いで氷沢という名称になった. 「日本の棚田百選」 4) www.tamano.or.jp/usr/sumiyosi/sub10.html 5) 「神科・豊殿えんぴつ散歩」編集委員会『えんぴつ散歩Ⅵ』, 有限会社アオヤギ印刷,2002年. 6)豊殿地区振興会公民館活動活性化委員会『ふるさと豊殿郷 土誌』,㈱上田ワードプロセス企画2009,p7. 16. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-4 No.96 2017.

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