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Journal of the Combustion Society of Japan Vol.53 No.166 (2011) FEATURE Power Generation by Combustion アドバンスト高湿分空気利用ガスタービン

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Academic year: 2021

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1. 緒言

 現在,我が国の電源構成の約 6 割は火力発電が占めてお り,その熱効率は 42.02 % (平成 19 年度一般電気事業者の 平均発電端効率) [1]と既に世界最高レベルに到達している. しかしながら,地球環境問題,エネルギーセキュリティの 確保双方への対応から,火力発電システムの高効率化の取 り組みは今後も重要であると考える.  これまでの効率向上は,主として,ガスタービン (GT) と蒸気タービン (ST) を組み合わせたガスタービンコンバ インドサイクル (GTCC) における燃焼温度の高温化と高圧 力化により図られ,それに伴い大容量化が進んできた.し かしながら,今後,電力系統において再生可能エネルギー による電力比率の増加が予想され,また,現在ピークおよ び中間負荷帯を担っている中容量火力発電所の経年化も進 んでいる.したがって,高効率で負荷調整力の高い中容量 の火力発電システムの開発は,重要な課題のひとつである と考える.  この様な背景の下,GT へ湿分を注入し,再生サイクル と組み合わせたアドバンスト高湿分空気利用 GT (AHAT) システムの研究開発を進めてきた.AHAT システムは,中 容量レベルでも GTCC と同等以上の高効率が期待でき,ま た,ST 系が必要ないため機動性が高いことが期待できる. さらに,現状の GTCC は,大気,海水温度の変化により出 力,熱効率が変化しやすい特性を持っているが,AHAT シ ステムは,圧縮機作動流体を冷却し,かつ復水器を必要と しないため,大気および海水温度変化の影響を受けにくい と考えられている.  本報では,AHAT システムの特長を述べると共に,その 成立性検証のため製作された 3 MW 級検証機の概要と運転 試験結果,さらに年間を通じた運転試験の解析結果から得 られた AHAT システムの各種特性について述べる. * Corresponding author. E-mail: [email protected]

■特集/FEATURE■

―燃焼による発電/Power Generation by Combustion ―

アドバンスト高湿分空気利用ガスタービン (AHAT) システムの研究開発

Research and Development on the Advanced Humid Air Gas Turbine (AHAT) System

髙橋 徹

1

*・小金沢 知己

2

TAKAHASHI, Toru1* and KOGANEZAWA, Tomomi2

1 財団法人 電力中央研究所 〒240-0196 横須賀市長坂 2-6-1

Central Research Institute of Electric Power Industry, 2-6-1 Nagasaka, Yokosuka, Kanagawa 240-0196, Japan

2 株式会社 日立製作所 〒312-0034 ひたちなか市堀口 832-2

Hitachi Ltd., 832-2 Horiguchi, Hitachinaka, Ibaraki 312-0034, Japan

Abstract : Humid air gas turbine systems that are regenerative cycle using humidified air can achieve higher thermal efficiency than gas turbine combined cycle (GTCC) power plant even though they do not require a steam turbine, a high combustion temperature, or a high pressure ratio. In particular, the advanced humid air gas turbine (AHAT) system appears to be highly suitable for practical use because its composition is simpler than that of other systems. Moreover, the difference in thermal efficiency between AHAT and GTCC is greater for small and medium-size gas turbines. To verify the system concept and the cycle performance of the AHAT system, a 3MW-class pilot plant was constructed that consists of a gas turbine with a two-stage centrifugal compressor, a two-stage axial turbine, a reverse-flow-type single-can combustor, a recuperator, a humidification tower, a water recovery tower, and other components. As a result of an operation test, the planned power output of 3.6MW was achieved, so that it has been confirmed the feasibility of the AHAT as a power-generating system. Moreover, running tests on the AHAT pilot plant were carried out over a few years so that various characteristics such as the effect of changes in ambient temperature, and start-up characteristics were clarified by analyzing the data obtained from the running tests.

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2. AHAT システムの概要 2.1. 高湿分空気利用再生サイクル型ガスタービンシステム  GT の効率向上に再生熱交換器を利用する考えは GT が 発明された初期の段階から存在したが,再生サイクルは原 理的に圧力比の小さな GT に適しているため,これまで圧 力比が 10 程度以下の比較的小型の GT に採用されてきた に過ぎない.圧縮機吐出空気で GT 排ガスの熱を回収する 限り回収熱量はそれほど大きくなく,排ガスは温度の高い まま大気中に放出される.  一方,水蒸気の比熱は空気の約 2 倍と大きく,熱回収能 力が大きいので圧縮空気を高湿分空気とし再生熱交換器で 熱回収するならば,GT 排ガスを 100 ℃近くまで熱回収す るシステムが構築できる.また湿分を加えることにより再 生サイクルで最高効率となる圧力比が高い方に移動するの で,再生システムの有効適用範囲は圧力比の高い領域まで 広がることになる.  このような高湿分空気利用再生サイクル型 GT システム の代表例として,図 1 に示す HAT (Humid Air Turbine) サイ クルがある.このシステムは 1981 年に三菱ガス化学の中 村氏らにより中低温の熱回収技術を GT に応用したものと して特許化された日本生まれのシステム概念である.国際 ガスタービン会議 (83-Tokyo-IGTC-38) でこのシステムが報 告され[2],その論文に米国の研究機関が注目して,EPRI, DOE 等で GE 社,ABB 社,Texaco 社などの協力を得て詳 細な評価が行われた.その結果,このシステムは同じ燃焼 温度の場合,通常のGTCCと比較して 3∼4 % (絶対値) 程 度の熱効率向上が期待できることが認められるようになっ た[3].  HAT サイクルで高効率を達成できるのは,圧縮機の中間 冷却も含め,中低温排熱を巧妙に回収し増湿塔で加湿する 際の蒸発エネルギーとして GT に戻していることと,再生 熱交換器で燃焼用空気を予熱し燃料使用量を低減している ことによる.  HAT サイクルが提案された後,HAT サイクルを原型と した REVAP [4],TOPHAT [5],WIWR [6] などのシステム

が提案され,高い熱効率が得られることがわかっている [7].しかし,HAT サイクルを始め,これらシステムにおい ては,圧縮機を分割し中間冷却器を設けた新型の GT を開 発する必要があるため,サイクル的に優れているが,その 後の実用化には至っていない. 2.2. AHAT システム  AHAT システムでは,HAT サイクル実用化の課題となっ ていた GT 新規開発の負担を低減するため,圧縮機を分割 せずに吸気噴霧冷却システムを利用して中間冷却と同様な 効果を達成させる方式を提案した.この方式では,産業用 や電気事業用に広く利用されている 1 軸型 GT を利用して システムを構成できる.  図 2 に AHAT システム系統を示す[8].AHAT システムで は,圧縮機吸気ダクトに設置した吸気噴霧システムにより 圧縮機吸気に微細な液滴を噴霧する.液滴径としては蒸発 が速やかに進行し,圧縮機翼面への液滴衝突によるエロー ジョン防止のため,平均径 15 μm 程度以下の微細なものが 望ましい.噴霧された液滴は圧縮機吸気口に到達するまで にその一部が蒸発し,吸気温度を低下させる.蒸発しなかっ た残りの液滴は圧縮機内部に流入し,圧縮機内部で圧縮中 に蒸発し,空気温度の上昇を抑制する.圧縮空気温度の抑 制は中間冷却と同じ概念であるが,蒸発に伴い空気中の湿 分割合が増加し,作動流体の質量流量も増加することに注 目すべきである.  圧縮機吐出空気は空気冷却器で冷却された後,増湿塔に 流入し,温水と直接接触し高湿分空気となる.加湿割合は システム排熱回収量から決まり,吸気空気流量に対し 15 ∼20 %wt 程度の値となる.これにより作動流体である空 気の流量と比熱が増加して,より多くの排熱を回収できる ようになり,タービン出力が増加する.  高湿分空気は再生熱交換器でタービン排ガスから熱を回 収し,高温の高湿分燃焼用空気となり燃焼器に流入する. 燃焼器では高湿分燃焼のため燃焼時に発生する NOx 量を 大幅に低減できる.高温の燃焼ガスはタービンを駆動した 後排出され,再生熱交換器,エコノマイザで排熱を回収し Fig.1 Schematic of the HAT cycle [2].

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た後に水回収装置に導かれる.  AHAT システムでは空気中に多量の水を加えている.こ れを排気塔からそのまま大気中に放出したのでは水の消費 量が膨大となってしまうため,水回収装置により加えた湿 分を回収し,増湿塔への補給水として再利用する.水回収 装置で所定の湿分を回収された排ガスは,白煙発生防止の ため排ガス再加熱器で 60 ℃程度まで昇温した後,排気塔 から大気中に放出される.  一方,水循環の系統として,空気冷却器とエコノマイザが あり,これらは高温の気体から熱を回収し,高温水として増 湿塔に供給する役割を担っている.高温水は増湿塔で圧縮空 気と直接接触することによりその一部が蒸発し,蒸発しな かった温水は蒸発の際に気化熱を奪われ増湿塔下端から取り 出される.その際,増湿塔入口空気の露点近傍まで水温が低 下する.増湿塔下部から取り出される循環水温度は運用条件 により異なるが 100 ℃前後の値である.この水が空気冷却器 とエコノマイザに再び送られ熱回収して増湿塔へ蒸発に必要 な熱を運ぶ.循環水は増湿塔で一部が蒸発するため,流量が 減少するので,前述の水回収装置で回収された水あるいは外 部から補給水を供給しマスバランスをとる.  AHAT は圧力比,燃焼温度は既存のままでもサイクルを 改良することにより高効率を目指そうとするシステムであ り,燃焼温度に対する圧力比,加湿量等を最適条件で設計 すれば熱効率は同一 GT を想定した GTCC を上回り,特に 中小容量機でその効率差は大きくなると試算されている. 図 3 に既存の GT システムと比較した AHAT システムの効 率目標試算例を示す[9].  AHAT システムは,小型から大型まであらゆるサイズの GT に適用できる概念ではあるが,用いられる再生熱交換 器が圧縮空気と高温排ガス間のガス−ガス熱交換器である ため,大型システムではこの再生熱交換器が巨大なものに なる.また,大型 GTCC では三重圧排熱回収ボイラの採用 が実用化されており高効率が達成されているため,これら の効率差は小さいと予想される.したがって,簡単な機器 構成で高い熱効率を達成するという AHAT システムの特徴 を生かすためには AHAT は中小容量の GT により適したシ ステムと考えられる.

3. 3 MW 級検証機運転試験による特性解析

3.1. 3 MW 級パイロットの概要  AHAT システムのサイクル概念が実際に成立し,目標性 能が得られることを検証するとともに,各種特性を把握す るため,3 MW 級の検証機を製作し,運転試験を行なった. 図 4 にその外観を示す[10].また,基本仕様は表 1 に示す ものである[11,12].検証機は,図 5 に示す小型 GT (遠心 2 段圧縮機,軸流 2 段タービン,単缶燃焼器) を核として,

Fig.3 Comparison of AHAT and other gas turbine systems performance [9].

Fig.4 Photograph of the 3MW-class AHAT pilot plant [10]. Table 1 Design targets of pilot plant [11,12].

Fig.5 Photograph of the compressor and turbine of the AHAT pilot plant [11].

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吸気噴霧冷却装置 (Water Atomization Cooling: WAC),プレー トフィン型再生熱交換器,増湿塔,水回収装置等から構成 されている. 3.2. AHAT 燃焼器の概要 3.2.1. AHAT 燃焼器の特徴と課題  AHAT の燃焼器条件の特徴は,燃焼空気が高温,高湿分 であることである.高湿分空気による燃焼は,火炎温度の 低下により大幅な NOx 低減効果が期待できる一方,燃焼 不安定,不完全燃焼が生じやすくなる.逆に空気温度が高 いことは,燃焼速度が速くなり燃焼安定性には有利である が,火炎温度が高くなるので,NOx 排出量が多くなる.そ こで,高温および高湿分条件下で低 NOx 化と燃焼安定性 を両立することができる燃焼器の開発が課題となる. 3.2.2. 燃焼器構造  図 6 に 3 MW 級検証機の AHAT 燃焼器構造概略を示す. 燃焼器は単缶であり,燃料は天然ガスである.圧縮機吐出 空気は尾筒を対流冷却した後,GT 外へ抽気される.増湿 /再生器を経た高温高湿分空気は燃焼器外筒へ注入され, ライナを対流冷却する.一部の空気はフィルム冷却空気と してライナ内へ流入した後,燃焼ガスと混合して流下する. 残りの空気はライナ上流側の燃料ノズル部において燃料と 混合され,ライナ内で燃焼する.燃焼ガスをタービンへと 導く尾筒は,概略円管状で上部にライナと取り合う入口部, 側面にタービンと取り合う出口部が開口している.また, 尾筒とライナの接続部外周側にはバッフルリングがあり, 圧縮機吐出空気と再生器からの空気を隔てている. 3.2.3. 燃料ノズル  図 7 は,要素試験および検証試験に使用した多孔同軸噴 流クラスターバーナを斜め下流方向から見た写真,および そのノズルの断面概略図である.エンドカバーにボルト締 結された燃料ノズルヘッダに 243 本の燃料ノズルが取り付 けられており,その 1 本 1 本に対応した空気孔を備えた空 気孔プレート (外径 φ 346) が 3 本のサポートによりエンド カバーに取り付けられた構造となっている.  燃料ノズルと空気孔の寸法・配置は,図 7 に示した値と なっている.これは DME 焚きマルチクラスターバーナ[14] とノズル数がほぼ同等となるように決めた空気孔径 (φ 13) を代表寸法として,DME 焚きノズルに対して相似設計し たものである.  図 8 は燃焼バーナの操作モードを表わしている.243 組の 燃料ノズルと空気孔は同心状に 8 列配置されており,中心 から 4 列 (第 1 列∼第 4 列) が第 1 群 (F1),第 5 列が第 2 群 (F2),その外側の 2 列 (第 6,7 列) が第 3 群 (F3),最外周 (第 8 列) が第 4 群 (F4) と群分けされ,それぞれの群ごとにヘッ ダに設けたフランジを通して燃料が供給できるようになっ ており,燃焼条件に応じ群ごとの燃料流量を調整する.  なお,中央の 4 列 (F1) の空気孔はピッチ円接線方向に角 度 15 度の斜め穴にすることで,空気流全体に旋回をかけ, 生じる循環流によって火炎を安定化させている.

Fig.6 Cross Section of the Gas Turbine Combustor [13].

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4. 試験結果

4.1. 3 MW 級検証機の定格性能  本プラントは,GT 回転試験,給水系統起動停止試験, GT 点火・昇速試験,加湿試験を実施し,各機器動作およ びプラント安全性を確認しつつ負荷上昇を行った.  図 9 に最大出力と最高効率を記録した 2007 年 3 月 2 日 の試験データを示す.GT は起動後 15 分で定格回転数に達 し,その後 120 kW/min の負荷上昇率で出力を増加させ, 途中 900 kW と 1800 kW においてそれぞれ 30 分間の暖機 運転を行った.1800 kW までドライ状態で運転した後,増 湿塔による加湿を開始し 3300 kW まで徐々に出力を増加さ せた.そこで 30 分間の暖機運転後,吸気噴霧を行い 3600 kW の定格出力に到達し,燃料流量を調整し出力を 3860 kW まで上昇させ約 2 時間のヒートランを行った.更に 3998 kW 迄出力を上昇させて約 1 時間のヒートランを行っ た.AHAT の特徴である吸気噴霧冷却システム WAC の作 動にともない圧縮機吐出温度が約 20 ℃低下し,噴霧を停 止すると速やかに元の温度に回復することを確認した.こ の結果,AHAT システムが発電システムとして成立するこ とを実証できた.  表 2 にこのときの性能値を示す.発電端効率は測定値で 40 %LHV を達成した.試験機は各種計測センサを備える ため圧力損失あるいはリーク空気等が設計計画値よりも大 きくなっていたためそれらを補正し,また GT 出口温度を 計画値に補正することにより,発電機出力 4441 kW,発電 端効率 43.30 %LHV を達成していたと考えられ,設計値を 上回るものであったことが分かる.  以上の試験結果に基づき,シンプルサイクル GT から再 生熱交換器による排熱回収,増湿,圧縮機水噴霧の発電端 効率に対する効果を解析した.なお,厳密には機器入口の 状態が変化した場合,その機器の性能値 (断熱効率,温度 効率等) も変化するが,今回の算出に当たっては,熱サイ クルの違いによる効果を解析するため,機器性能値は変化 しないものとし,また燃焼温度も一定条件とした.その結 果を図 10 に示す.再生熱交換器での排熱回収による圧縮 空気予熱の効果で 7.6 % (絶対値,以下同様),増湿塔で空 気を約 15 wt% 増湿することにより 6.5 %,圧縮機入口へ約 0.9 wt% 水噴霧することにより 0.6 % 発電端効率が向上し たことが分かる.運転試験結果およびこの解析結果から, 再生サイクルと組み合わせて高湿分空気を利用し,さらに 吸気水噴霧を行うことで,熱効率を向上できることが実証 できた. 4.2. 燃焼器性能  燃焼器性能として,発電出力に対する NOx 濃度を図 11 に,CO 濃度を図 12 に,燃焼効率を図 13 に示す.  1800 kW までのドライ条件では F1 単独モード,F1+F2 モードとも中央の F1 の旋回流保炎による燃焼安定性が良 好であったため,CO は F1 単独モードから F1+F2 モード へ切り換えた時に 15 ppm 程度発生するのみで,起動時と しては全く問題の無い安定性が確保されていることが確認 Fig.8 Operating Modes of Cluster Nozzle Burner [11].

Table 2 Performance of pilot plant [11].

Fig.9 Generator output [11].

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できた.一方,安定性が良い分 NOx が高めとなっており, F1 単独モードで 96 ppm,F1+F2 モードでピーク値 230 ppm となっているが,起動時の通過点なので特に支障無い値で あると考えている.実用化時にさらに低 NOx 化を図るた めには,クラスターノズルの混合改善や増湿開始負荷を低 下させる (F1+F2 モードで増湿) ことが検討項目として考え られる.  一方,F1+F3+F3 モードでは切替え直後に CO が 350 ppm 程度発生したが,燃焼効率は 97.5 % 以上であり,検証機の 運転上問題はなかった.増湿前の 1800 kW 条件では NOx = 36 ppm,CO = 70 ppm であった.  1800 kW から増湿を開始すると,湿分の増加に伴って NOx が低下した.増湿後の NOx は 2200 kW 以降では 10 ppm 程度を推移した.今回の検証試験では燃焼安定性確保 のため,F1 燃料流量の割合を増加させ,その分 F3 燃料を 減少させたパイロット保炎強化モードで運転したため F3 バーナからの CO 排出量が多かったと考えている.これに 対しては,ライナ希釈孔を拡張して燃焼空気量を調整する 減少させることにより,保炎に寄与している F1 燃料を減 少させて低 NOx 化を図るとともに,F3 燃料流量を増加さ せて CO を低減し燃焼効率が改善できると考えている.  3300 kW∼4000 kW の高湿分燃焼状態では NOx < 10 ppm 運転が可能であった.最大負荷条件では,NOx = 8.3 ppm, CO = 190 ppm,燃焼効率 = 99.6 % であり定格 NOx < 10 ppm の目標を達成した.一方,燃焼効率は当初計画値 99.99 % を下回ったが,燃焼空気には余裕があるためライ ナ希釈孔を拡張する燃焼空気量調整によって対処可能であ る.  高負荷時に F4 燃料を添加して F4 までの全燃焼モードを 試した.その場合でも CO の増加が顕著でないことから設 計時に想定した周囲の高温燃焼ガスによる酸化が実現して いると思われるが,その分 F3 燃料が減少するため CO は 190 ppm 程度となった. 4.3. 年間を通じた運転試験による各種特性解析  検証機の運転試験は 2006 年 10 月から 2010 年 2 月まで の間,累積発電時間数約 140 時間行い,全試験期間を通じ て大きなトラブルは無く,安定した運転が可能であること を確認した.さらに得られた運転データを解析・評価し, AHAT システムの特性を把握した.以下にその結果を示す. 4.3.1. 熱効率の変化  吸気水噴霧による湿分率と大気温度の変化に対する熱効 率の変化を調べた.熱効率は,これらの他,燃焼温度によっ ても大きく変化する.そこで,実際の運転試験結果から水 噴霧による吸気湿分率ならびに燃焼ガス温度 (Tcomb) がほ ぼ同じ条件の結果を整理し,熱効率の大気温度および湿分 率に対する依存性を調べた.その結果,以下の 3 つグルー プに整理できた. ①吸気湿分率:0 wt%,燃焼ガス温度:1190℃±10℃ ②吸気湿分率:0.9∼1.1 wt%,燃焼ガス温度:1210℃±10℃ ③吸気湿分率:1.6∼1.8 wt%,燃焼ガス温度:1210℃±10℃  これら 3 つのグループの大気温度変化に対する熱効率の 変化を図 14 に示す.この図から,吸気湿分率が高くなる ほど,熱効率が向上していることがわかる.ただし,グルー プ①は他より燃焼ガス温度が低いため,燃焼ガス温度の違 いによる影響も含まれている.そこで,燃焼ガス温度が 1140 ℃,水噴霧なしの結果も同図に記載した.これに比べ て,燃焼ガス温度が 50 ℃高いグループ①の場合では相対 値で約 2 ポイント上昇しているのに対し,グループ①より 燃焼ガス温度が 20 ℃のみ高いグループ②では,大気温度 によっても異なるが,約 4∼6 ポイント上昇している.さ らに,燃焼ガス温度が同程度であるグループ②と③とでは, ③の熱効率が明らかに向上しており,これらの理由から水 噴霧の吸気冷却効果により熱効率が向上したことがわか る.  一方,GT は大気温度の上昇に伴い,圧縮動力が増加す るため熱効率が低下する特性を持つが,AHAT システムに Fig.11 NOx Emission as a Function of Generator Output [13].

Fig.12 CO Emission as a Function of Generator Output [13].

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おいてもその傾向が見られる.しかしながら,水噴霧が無 い場合での熱効率の低下割合に比べて,水噴霧を行った場 合にはその低下割合は小さくなっている.大気温度が上昇 した際,水噴霧による吸気冷却効果によって圧縮機入口温 度の上昇が抑制されるため,大気温度変化による熱効率へ の影響が低減できることが実際のプラント運転結果から示 されている. 4.3.2. 増湿塔出口空気での湿分率の変化  図 15 に大気温度変化に対する増湿塔出口空気の湿分率 の変化を示す.大気温度の上昇に伴い,湿分率が直線的に 上昇しており,これは,大気温度の上昇により圧縮空気, 加湿用温水の温度が上昇し,増湿塔出口の空気温度が上昇 したため,飽和蒸気量が増加したことによると考えられる. これにより,タービンを駆動する作動流体の重量流量,比 熱が増加するため,タービン出力が増加すると考えられる.  したがって,大気温度が上昇した際,水噴霧による吸気 冷却効果の増加だけでなく,増湿塔出口での湿分率増加も 熱効率低下を抑制すると考えられる. 4.3.3. 起動特性  今後,再生可能エネルギーの導入など,電源構成の変化 により,火力発電には,高効率化だけでなく,負荷変動へ の迅速な負荷追従性が求められる.そこで,起動時間の短 縮について検討した.  初めて最大出力を達成した試験時 (RUN35) の起動カーブ を図 9 に示したが,RUN35 では,900 kW (1/4 負荷),1800 kW (加湿開始前),3300 kW (WAC 開始前) でそれぞれ 30 分 程度の負荷ホールド時間を設けて,GT およびプラント各 機器の健全性を確認した後に次の負荷へ上げる運転方法を 取るとともに,負荷上昇率は 3.3 %/min (120 kW/min) 一定 で増負荷を実施することで,起動指令から WAC 開始前の 負荷条件まで約 2.5 時間を要していた.  そこで,増負荷率を 3 倍の 10 %/min (360 kW/min) とし, かつホールド時間を無くすことで起動時間の短縮を図っ た.その試験時 (RUN44) の起動カーブを図 16 に示す. RUN44 では,約 40 分でタービン排気温度が 650 ℃に到達 し,約 46 分まで 3200 kW の負荷を保持した.その後,排 熱回収系の暖機とともに,増湿塔での加湿量が増加し,ター ビン排ガス温度を 650 ℃以下に維持したまま,起動後 60 分で定格出力に到達した.  3 MW 級検証機では,起動操作の一部が自動化されてい ないものの,起動指令後 60 分以内で安定的にコールド起 動が可能なことを実証できた.  この試験の結果,最大出力を得るには増湿塔での加湿量 が最大になる必要があり,そのためには,図 17 に示すよ うに,再生熱交換器からの排ガスによってその下流側に設 置されるエコノマイザの暖機,つまり給水の加熱が律速と なることがわかった.エコノマイザの暖機に必要な時間は, 再生熱交換器の熱容量に依存するため,システムの設計に 応じて起動時間の長短が決定されることがわかった.  今後のスケールアップ機開発においては,起動操作の自 動化と排熱回収系の熱容量の検討が必要であるが,今回の Fig.14 Relationship between thermal efficiency and ambient temperature

for different effective injected water flow ratio [15].

Fig.16 Turbine speed and power output of the pilot plant during start-up [16].

Fig.15 Relationship between humidity, temperature at the humidification tower exit and ambient temperature [15].

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結果から,通常の GTCC の起動時間が真空保持でコールド 状態から約 180 分であるのに対し,AHAT システムはそれ よりはるかに速い起動時間が期待できると考えている.

5. 結言

 中容量機レベルでも高い効率ならびに高い運用性が期待 できる AHAT システムについて,3 MW 級検証機を製作し, 年間を通じた運転試験結果を解析することで,以下の諸特 性を検証,把握できた. ・定格性能として,所定の計画性能を達成でき,空気への 湿分注入,再生サイクルとの組み合わせにより,高効率 化が図れることを立証できた. ・水噴霧による吸気湿分率が高くなるほど,熱効率の向上 が確認できた.また,大気温度の上昇に伴い,GT の一 般的な特性上,熱効率は低下したが,水噴霧を行った場 合,水噴霧が無い場合に比べてその低下割合は小さいも のであった. ・大気温度の上昇に伴い,増湿塔出口空気の湿分率の上昇 が見られ,このことも大気温度の上昇による熱効率低下 を抑制すると考えられる. ・燃焼器性能として,燃焼空気が高温,高湿分の条件下で 安定した燃焼状態を維持でき,高負荷時では NOx < 10 ppm の目標を達成した.一方,燃焼効率は当初計画値 99.99 % を下回ったが,燃焼空気には余裕があるためラ イナ希釈孔を拡張する燃焼空気量調整によって対処可能 であると考えられる. ・コールド状態から約 60 分で定格出力に達し,AHAT シ ステムの機動性の高さを実証できた.スケールアップ機 において,起動操作の自動化と排熱回収系の熱容量の検 討により,GTCC より速い起動速度が期待できる.  これらの結果を基に,AHAT システムの実用化に向けて, さらなる研究開発を進めて行きたいと考えている.

謝辞

 本研究は,経済産業省資源エネルギー庁から,エネルギー 使用合理化技術開発費補助金の支援を受けて実施したもの である.関係各位の支援に深く感謝の意を表す.

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Fig.17 Recuperator exhaust gas and feed water temperatures of the pilot plant during start-up [16].

参照

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