Title
大腸癌における細胞周期関連遺伝子Aurora familyの発現お
よび臨床病理学的因子に関する検討( 内容の要旨(Summary)
)
Author(s)
永田, 高康
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第1348号
Issue Date
2003-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/14928
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氏 名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査'委 員 永 田 高 康(岐阜県) 博 士(医学) 乙第 1348 号 平成15 年 3 月13 日 学位規則第4条第2項該当
大腸癌における細胞周期関連遺伝子Aurdraiami]yの発現および臨床病理学的
因子に関する検討
(主査)′ 教授 佐 治重
皇
(副査)一教授 岡 野 幸 雄教授一森
脇 久隆
論文内容の要旨 細胞周期関連遺伝子であるAurora familyはserine/threonine寧in鱒eでProsophilaではaurora/IAL,■ S・ cerevisiaeではIpllpのhumanhomologueであり,ヒトではAyrora,A,▲阜urora-B,Aurora-Cの3遺伝子が
familyとして同定されている。こq)Aurorafamilyは中心体,動原体に存在し,細胞分裂期.(M卿)に活性化
され,細胞分裂期の過程で中心体,紡錘糸の安定性に関与していると報告されている。それゆえ,Aurora familyの機能異常は中心体,紡錘糸のchromosomalin琴tabilityを意味する訳で,染色体分裂や細胞分裂が正常に行われず細胞を癌化に導く可能性,あるいは癌の細胞増殖に関与する可能性などが推察されている。一方,
Aurorafamily遺伝子のoverexpressionは,核の倍数性や異数性(rTlultinuclearity)によるが,腫瘍の形成過程で
観察される遺伝子損失や突然変異,染色体不安定性は細胞の癌化?甲季要な要因と推察されている。以上の観点
から,教室では大腸癌におけるAurorafamily(Aurora一旦,二阜叩ra-Q)の寧日レベルでの発現と臨床病理学的
因子との関連を免疫組織学的に検索し,発癌過程でのAurora埠伝子蛋白の関与を示陛してきた。そこで今回申
請者らは,半定量的RT-PCR法を用い遺伝子レベルでAuroraf?mily,の発現程度と臨床病理学的因子との関連に ついて比較検討した。研究対象と研零方法
よ[対象]対象は1998年10月から4年間に当科で切除した初発大腸腺癌症例中,唇部と正常粘膜部からtotal
RNAの抽出が可能であった70例である。症例の内訳は年齢が40∼93(平均66)歳,性別が男性45例,女性25例,腫 瘍占居部位がProximalcolon15例(盲腸1例,上行結腸9例,横行結腸5例),Distalcolon13例(下行結腸2例,S状結腸11例),Rectum42例。病理組織型で高分化曝嘩32例,,.ヰ分化曝癌31例,低分化腺癌5例,粘液癌2例,
病期分類は0期1例,Ⅰ期4例,II期23例,Ⅲ期26例,Ⅳ期16例,Dukets分類でA5例,B23例,C26例,D16例で あった。 i[方法]腫瘍切除後,腫瘍部および近傍の正常粘膜部から約∴5不5不5m甲木の標本を採取し,-80℃で凍結保
存した。凍結標本からISOGENを用いたAGPC変法にてtotal,・鱒.即痔抽出し,さらにM-MLV
ReverseTranscriptaseを用いcDNAを作製した。ついで,GAPDHを内部標準とした半定畢的RT-PCR法で,遺伝子発
現程度を評価し,癌部(T)と正常粘膜部(N)での発現程度,および冬部の解析噴から癌郡/正常粘膜部(T/N)比を求
め,1.5以上を高発現群(high),0.67以上1.5未満を中発現群(middle),0.67未満を低発現群(low)と3段階評価し, 臨床病理学的因子との間で比較検討した。 研究結果 Aurora family遺伝子の発現程度:①Aurora-A,B,C各遺伝子の高発現例は70例中,Aが52例(74.3%),Bが 41例(58.6%),Cが16例(22.9%)とAで高く,Cで低頻度であった。②Aurora-A:腫瘍占居部位がS状結腸と直腸で の高発現例は9/11例(81.8%)と33/42例(78.6%)で,他部位に比べ高発現例が多くなる傾向が観察された(p=0.067)。 また,肝転移は高発現例で9/12例(75%)と中・低発現群に比べ高頻度であった。③Aurora-B:腫瘍占居部位で直 腸での高発現例が29/41例(70.7%)と他部位に比べ有意に高頻度であった(p=0.047)。③Aurora-C:統計学上検索した全ての臨床病理学的因子との間に有意の関連は認められなかった。 Aurora遺伝子発現の組合せと臨床病理学的因子との関連:①Aurorafamily(A,B,C)遺伝子のうち少なくと も一つが高発現を示す頻度は70例中60例,85.7%と高頻度であった。②臨床病理学的因子との関連では,組織型 で粘液腺癌を含め低分化腺癌での高発現率が7例中7例と100%であったが,高分化と申分化腺癌での発現率との 間に有意差はみられなかった。③Aurorafamily遺伝子のA,B,C全てが高発現を示した症例は,70例中12例, 17・1%と低頻度であったが,性別で男性の高発現例(45例中11例,24.4%)が女性(25例中1例,4.0%)に比べ有意の 高発現であった(p=0.031)。また,肝転移は70例中12例で,うち6例,、f50労力iAurorafamily全てが高発現例で, その頻度は発現陰性群に比べ有意の高値であった(p=0.004)。④組織型で中†低分化型に高発現例が多くなる傾 向が観察された(p=0.052)。⑤癌部と正常粘膜部との関連で,Aurora-Aは70例中52例(74.3%)に高発現を認め,そ の陽性率は癌部が6.48±1.19で正常粘膜部の2.27±0.36に比べ有意に高発現であった(p<0.001)。一方,Aurora-B は70例中41例(58.6%)に高発現を認め,癌部が5.64±0.77と正常粘膜部の2.62±0.26に比べ有意の高発現を示した (p=0.004)。また,Aurora-Cは70例中16例(22.9%)に高発現を認めたが,その頻度はAurora-A,Bに比べ低値で, 癌部と正常粘膜部との間に有意差はみられなかった。 考察と結語
今回の検索で,癌部においてAurora family A,B,Cの内,いずれか1つ以上が高発現を示す頻度は85.7%と 高値で,手術時採取したヒト大腸癌切除標本でも従来報告されてきた結果が再確認された訳である。また, Aurora familyのうちいずれか1つ以上が高発現を示す症例と全てが高発現を示す症例a)頻度は;60/70例, 85・7%と12/70例,17.1%で著差がみられたことから,癌化への関与において,AurorafamilyのA,B,C間で異 なった関与を示す可能性が示唆された。また,腫瘍の壁深遠度と肝転移陽性例の検討で,Aurorafamily全て が高発現を示した症例は,いずれか1つ以上が高発現を示した症例に比べ,進行例が多く観察された。それゆえ, 腫瘍の壁深遠度や肝転移などの悪性化段階で,Aurora family全てが関与して増悪する可能性を示唆する結果 と推察している。一方,Aurora familyは男性,直腸に高発現例が多く,男性の直腸は女性の直腸に比べ,遺 伝子的により多くめ傷害を受け易い環境にあると推察された。 ぎ葡間では,Aurora-Aの高発現率は52/70例, 74.3%と高かったが,これは臨床病理学的予後因子との関連で,Aurora-B,Cに比べAurora-Aでの関与が高く, 癌の発生・進展に対しAurora-Aは癌遺伝子的な関与を示す可能性が推察され,少なくともこの段階で重要な働 きを担っていると考えている。すなわち,Aurora-Aの細胞分裂期での発現時期が前期から中期までと早期から 認められ,Aurora familyの関与する腫瘍の癌化は細胞分裂期の比較的早期の段階で決定づけられている可能 性を示唆する結果と考えている。さらに,Aurora-B,Cが関与することで,細胞学的および臨床学的悪性度が 進行する可能性が示唆された。 輸文章査の結果の要旨 申請者 永田高康は,手術時採取したヒト大腸癌新鮮凍結標本から,癌部と正常粘膜部を採取しtotalRNA 抽出後cDNAを作製し,半定量的R℡-PCR法でAurora-A,B,C遺伝子の発現程度を詳細に観察し,臨床病理学 的因子との関連を比較検討した。その結果,癌部ではAurora-A,B遺伝子の高発現例が有意に多く,大腸癌の 癌化過程でAurora familyが深く関与する可能性が示唆された。これらの研究結果は腫瘍外科学の発展,特に 大腸癌の悪性度評価法の分野で少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌] 大腸癌における細胞周期関連遺伝子Aurora familyの発現および臨床病理学的因子に関する検討 日本外科系連合学会誌.2003;28:51∼58