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電気を用いた酸化還元電位調整による微生物の生育促進

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Academic year: 2021

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(1)主要な研究成果. 電気を用いた酸化還元電位調整による微生物の生育促進 背 景 生物は、呼吸・発酵・光合成の過程で起こる電子の授受反応からエネルギーを獲得して生命を維持している。 当所では、これまでに電極と微生物間で電子授受を行うことにより微生物の高密度化を可能とする電気培養法 を提案してきた。一般に電子授受を伴う化学反応は酸化還元電位* 1 によって影響されることから、微生物毎 に生育に適した酸化還元電位が存在すると考えられている。しかし、これまでに酸化還元電位を電気的に調整 しながら微生物の生育や活性を制御する提案はされていない。電子媒体を介して電極-微生物生育場間での電 子授受を行い、酸化還元電位を人為的に調整できれば、従来の電気培養法とは異なり、微生物への電子供給を 行わずに特定微生物の生育を促進できる新しい培養手法を提案できる可能性がある(図 1)。. 目 的 電気を用いて酸化還元電位を調整することにより、微生物の生育を促進する新規培養手法を提案する。. 主な成果 1.生育に伴う酸化還元電位の変動 微生物の代表例として硫酸還元菌* 2 Desulfovibrio desulfuricans を用い、生育に伴う培養液中の酸化還元電 位の変動を測定した。電気的な調整を行わない場合、菌の生育に伴い− 0.1V(銀/塩化銀電極基準)付近か ら− 0.5V 付近まで酸化還元電位は低下することが確認できた。 2.酸化還元電位の電気的調整による生育開始時期の短縮効果 培養液中の酸化還元電位を電極電位+ 0.4V ∼− 0.8V の範囲で一定に調整しながら硫酸還元菌の培養を 行った。− 0.45V 以上の電位に調整した場合では電位調整を行わない場合と比べ生育に変化はなかったのに 対して、− 0.6V 以下に電位調整を行うことにより、硫酸還元菌の生育が始まる時期を短縮できることが明 らかとなった(図 2)。この結果から,人為的に培養液の電位環境を調整することにより特定の微生物を優 先的に生育させることができると考えられた。なお,酸化還元電位そのものが微生物の生育に与える促進効 果を明らかにしたのは本報告が初めてである。 3.酸化還元電位の電気的調整による微生物の選択的生育促進 様々な微生物種を含む混合試料の培養を、電極電位+ 0.4V、− 0.1V、− 0.6V で通電しながら行った。通 電しない場合には複数種の微生物の生育が観察された一方、通電した場合には電位に応じて優占種が変化し、 硫酸還元菌の生育に適した− 0.6V では硫酸還元菌は他の微生物種に先行して優占的に生育していることが 確認できた(図 3)。 以上の結果から、これまでの微生物培養法とは概念の異なる、微生物の生育場における酸化還元電位を電 気的に調整することにより特定微生物の選択的生育を促す革新的培養法に見通しを得ることができた。. 今後の展開 酸化還元電位の調整により微生物の生育が促進される現象の原理解明を行う。 主担当者 関連報告書. 関連特許. 環境科学研究所 バイオテクノロジー領域 主任研究員 平野 伸一 「電気培養による微生物の制御(その 11)─電位による硫酸還元細菌の生育の制御─」 電力中央研究所報告: V07018(2008 年 7 月) 平野 伸一、他:「硫酸還元細菌の培養方法」、特願 2008-022646(2008 年 2 月). * 1 :酸化還元電位:電子の授受反応のおこりやすさを示す指標 * 2 :硫酸還元菌:土壌などに遍在し、硫酸を利用し生育する微生物。環境浄化に用いられている。. 40.

(2) 2.環境 【新しい電気培養】 電気による電位環境の調整. 【従来の電気培養】 微生物への直接的な 電子の受け渡し 金属 など 鉄酸化細菌など. e-. 創出した酸化還元雰囲気. e-. e-. 電 電 極 極. 電子媒体 (還元体). 適した微生物. 適さない微生物. 通電電位によって媒体 の酸化体と還元体の 割合を一定に維持する 電子媒体 (酸化体). e-. 高密度化. 反応の促進. 生育しにくい. 生育促進. 図1 電気を用いた酸化還元電位環境の調整による微生物の生育促進の概念 電極と微生物の生育場との間で電子の授受を行い、目的とする微生物の生育に適した酸化還元雰囲気を電気 的に調整することにより生育を促進する新しい概念に基づいた微生物の生育促進方法である。 約10時間 通電しない場合 +0.4V. 酸化雰 囲気. -0.45V -0.6V -0.7V -0.8V. 還元 雰囲 気. 電 気 効 果 な し 電 気 効 果 あ り. 菌体密度(cells/ml cells/ml). 109. 108 107 109. 108 107 0. 10. 20. 30 40 50 培養時間(h). 60. 70. 図2 酸化還元電位の調整による生育開始時期の短縮効果 +0.4V ∼− 0.45V の電位範囲では電気の効果が見られないが(右上段グラフ)、− 0.6V 以下の電位範囲で通電 することにより通常 37 時間程度かかる生育開始までの時間を約 10 時間早めることができた(右下段グラフ)。. 硫酸 還元菌. 図3 酸化還元電位の電気的調整による微生物の選択的培養 複数の微生物種を含む環境試料と硫酸還元菌を混合した微生物群 集に対して電位環境を調整しながら培養を行ったところ、電位に 応じて培養液中の微生物構成が変化し、− 0.6V では硫酸還元菌 (赤矢印)を選択的に培養可能であった。 微生物の種類:バンド1本が1種類の微生物に相当する。. 通電無し +0.4V -0.1V -0.6V 酸化 雰囲気. 還元 雰囲気. 41. 2.

(3)

参照

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