!52 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(63) モリ タ チ ヒロ森田千尋(昭和3
博士(医学) 乙第1227号平成3年11月15日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
インスリン非依存型糖尿病における急激な血糖コントロールの網膜症におよ
ぼす影響 (主査)教授 大森 安恵 (副査)教授 杉野 信博,宮崎 俊一論 文 内 容 の 要 旨
目的 糖尿病性網膜症は成人の失明原因となる合併症とし て重要視されている.糖尿病のコントロ「ル不良例に 急激に血糖を改善した場合,網膜症が増悪することが 知られている.しかし実際血糖をどれだけ’の期間にど の程度下げた場合,網膜症の増悪を来すのか明らかに されていない.従って血糖コントロール改善の速度が 網膜症にいかに影響するかコントロールの指標を表す HbA、、の推移を用いて統計的に検討した. 対象および方法 1985年から1988年の3年間に東京女子医大糖尿病セ ンターを受診した新患患者のうち,初診時のHbAlcが 10%から15%におよぶコントロール不良例,あるいは 未治療インスリン非依存型糖尿病患者376名を対象と した. 初診時より1ヵ月毎にHbA、cを測定し6ヵ月まで のHbA、cの変動と網膜症の推移との相関を調べた.同 時にHbA、,が6ヵ月以内に9%以下に改善した症例 については改善速度を求め網膜症進展との関係を調べ た.〔改善願一
初診G撫議撃総量舘職H臨〕
網膜症は初診時において,糖尿病眼科専門医により 眼底検査を行い,網膜症なし,単純姓,前増殖性,増 殖性網膜症に大別し,網膜症の程度によって繰り返し 検査した. 結果 初診時前増殖網膜症や増殖網膜症を認めた症例は 124例であった.6ヵ月に3%以上HbA、cを改善させ た例は78例でそのうち網膜症の増悪をみた症例は57例 (73.1%)であった.6ヵ月に3%未満のHbA、cの改善 をみた症例は46例でそのうち網膜所見の増悪は18例 (39.1%)であり6ヵ月に3%以上HbA、cが改善した 場合には網膜症の増悪例が優位に多かった. また網膜症が増悪した症例の改善速度は初診時前増 殖網膜症や増殖網膜症では平均1.83±0.77(%/月)で あり,網膜症が増悪しなかった症例の改善速度は平均 1.20±0.49(%/月)であった. 考察 高血糖のまま長期間放置または未治療糖尿病症例に 対し6ヵ月に3%以上,あるいは1ヵ月に1.8%以上の 急激な血糖の改善を行うと網膜症の増悪する例が多い ことを認めた.急激に血糖を改善させる事は網膜微小 循環血流の変化,血小板凝集能の充進,赤血球の酸素 解離能低下による網膜のhypoxiaなどによって増悪 を来すことが推定される. 結論 コントロール不良例や未治療糖尿病者で治療により網膜症の増悪する症例は血糖をHbA、cで6ヵ月に
3%以上,あるいは1ヵ月に1.8%以上改善させたもの であることを示した.糖尿病性網膜症をもつ症例の治 療は慎重かつ緩徐な血糖コントロールが肝要であるこ 一756一153 とを認めた.