析と多重指標モデルによる男女比較
著者名(日)
島崎 哲彦, 大竹 延幸
雑誌名
東洋大学社会学部紀要
巻
39
号
3
ページ
5-26
発行年
2002-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00002266/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja支出意識に及ぼす消費目的の影響
一確認的因子分析と多重指標モデルによる男女比較一
The effect of the consumptive purpose
on the sense of expenditure
Sexual comparisons by factor analysis
and multiple indicator models
島 崎 哲 彦
Akihiko SHIMAZAKI
大 竹 延 幸*
Nobuyuki OHTAKE
【目 次】 1.はじめに 2.基本統計量の考察 3.確認的因子分析による1998年の分析結果と2001年の分析結果 3.1 消費目的意識の確認的因子分析 3.2 支出意識の確認的因子分析 3.3 消費目的意識と支出意識の因果分析の比較 4.消費目的意識と支出意識の男女比較 4.1 消費目的意識の男女比較 4.2 支出意識の男女比較 4.3 消費目的意識と支出意識の因果分析の男女比較5.まとめ
*株式会社マーケッティング’サービス1.はじめに
支出に対する節約的、浪費的といった支出意識には、他人への同調志向や差別志向、あるいは判 断基準を他人に求めない自分志向といった消費目的が影響していると考えられる。この仮説を検証 するため1998年に社会調査によりデータを収集し分析1)を行なった。用いたデータは、千葉県、東 京都の特定の団地に居住する世帯を対象に収集したものであった。そのため標本は、主に経常的収 入の支出配分を行なっている40歳代、50歳代の主婦が大半を占めた。分析結果は仮説を支持するも のであった。しかし問題点として、若年女性や独身女性あるいは男性の支出意識に対する消費目的 の影響が分析されていないため、こうした層を分析対象に含めた全体において仮説が検証されるか といった問題が残された。そこで、残された問題点を検証するため、15歳以上64歳以下の一般男女を 対象に社会調査によりデータ収集2)を行なった。そこで本論では、1998年に検証された消費目的意 識と支出意識の因果関係を再検証するとともに男女間での比較分析コ)を行なった。 1998年に検証した仮説の概要を記述しておく。消費目的意識という視点から戦後の消費行動を概 観してみる。戦後の高度経済成長は耐久消費財の急速な普及を促した。これは、「隣が買ったから我 が家も買う」といった横並び、同調的な消費目的意識と捉えられる。消費目的意識として、横並び、 同調意識が画一的であったといえる。 そうした耐久消費財ブームも1973年の第1次石油危機、1979年の第2次石油危機以降消費支出の 落ち込みとともに終焉する。この消費支出の落ち込みの説明として消費の飽和や消費の個性化、個 別化がいわれた。この時期の変化を総じてみると、画一的な同調的消費から消費を選択するという 変化であったといえる。消費目的意識が、他人と同じ消費をすることにより中流を誇示するといっ た画一性から、自らが志向する目的のために消費をするという目的意識の変化である。消費の判断 という視点からこの変化をみると、判断基準が他人から自分に変化したと捉えられる。同調的消費 の場合、消費を行うか行わないかの判断基準は他人にある。一方自らが志向する目的のために消費 をおこなう場合の判断は、他人ではなく自分にあるということになる。このように、石油危機を境 に、消費目的意識は画一的な横並び、同調から個別化した。この個別化は、消費の判断基準を他人 に持つ他人志向消費と、自分に持つ自分志向消費への個別化と捉えられる。 つまり、高度経済成長期は支出志向が強く、浪費的支出意識が支配的であった。それを支えたの が同調的消費目的意識である。その後石油危機により消費支出は急速に落ち込んだ。この現象の説 明として、消費の飽和や消費の個別化個性化がいわれた。これを消費の目的意識という側面から、 石油危機を契機に他人志向消費意識だけではなく、自分志向消費意識という消費目的意識が生じ、 消費目的意識が個別化したことによると説明できるのではなかろうか。さらに、石油危機以降の消 費支出が大きな変化をみせていないのは、石油危機を境に変化した消費目的意識の個別化が定着し た結果であると考えた。そこで、消費目的意識と支出意識間の因果関係を分析することでこの仮説 を検証しようと試みた。 6因果モデルを作成する上で、消費目的意識の基本次元として他人志向と自分志向という次元を考 えた。他人志向の下位次元として、見栄・羨望、影響、差別化という3つの次元を考え、自分志向 の下位次元として、合理性、非影響という2つの次元を考えた。支出意識の基本次元としては、節 約的支出意識と浪費的支出意識を考えた。消費目的意識、支出意識共に、因子分析的分析からは因子 の抽出に成功した。その上で、消費目的意識と支出意識間の因果関係を推定するモデルから消費目 的意識への支出意識の影響を分析した。その結果、他人志向的消費目的は浪費的支出意識を持ち、 一方自分志向的消費目的は節約的支出意識を持つと解釈することができた。分析結果から、分析時 点は不況下であるがこうした不況下においても、画一的な節約志向ではく、消費目的意識の違いが 支出意識を大きく方向付けており、見栄・羨望、差別化といった消費目的意識を持つ人びとは浪費 的支出意識を持っていると結論した。
2.基本統計量の考察
消費目的意識と支出意識測定のための基本統計量を考察する。(欠損値処理はリストごとの除外を 行なっているため分析対象の標本数はn=1,034) 表1の基本統計量のうち消費目的意識を測定した項目は、「人から羨ましいと思われる消費生活を したい」から「モノの購入は使用もさること、人にみられることも意識する」までである。支出意 識を測定した項目は、「支出予定金額内で収まるように買い物をしたい」から「生活を豊かにするた めには、借金も仕方がない」までである。 測定は、「Lそう思う」から「5.そう思わない」の5段階の評定尺度によった。平均値は、「Lそう 思う」に1点、以下1点刻みで「5.そう思わない」に5点を与えて算出した。 表1に示すように、合計では消費目的意識を測定した項目は、平均値は1.8から4.1の間の値をとっ ている。3.0が「どちらでもない」であることから、肯定的な回答から否定的な回答まで分散してい ることがわかる。標準偏差は0.9からL3までの値をとっており、比較的分散の小さな項目と比較的分 散の大きい項目がみられる。 各項目ごとに考察すると、平均値が2.5以下の肯定的回答がなされている項目は、「モノの購入は 必要か不必要かを考えてから購入」「商品・サービス購入は品質を重視」「流行に左右されない消費 をしている」といった合理的消費、非影響消費を測定した項目である。その他「好景気、不景気に 関係なく支出金額はいつも同じようなもの」「他人と全く違うのもイヤだが同じもイヤだ」「自分の 消費パターンは何があっても変えない」「自分の地位や立場を考えて消費している」といった非影響 消費、差別化消費を測定した項目でも肯定的回答傾向がみられる。一方平均値が4.5以上の否定的回 答がなされている項目はみられない。否定的回答傾向があるのは、「友人・知人が持っているモノを 持っていないと恥ずかしい」である。表1 基本統計量(M:平均値、SD:標準偏差) 合 計 男 性 女 性 M SD M SD M SD 人から羨ましいと思われる消費をしたい モノを買う時、友人・知人がそのもにどのような イメージを持っているか気になる モノを買う時は・流といわれるモノを買うようにしている 自分の地位や立場を考えて消費をしている 友人・知人が持っているモノを持っていないと恥ずかしい 人と違ったモノを持ちたい 他人と全然違うのも気になるが全く同じというのもイヤだ モノの購入は、必要か不必要かを考えてから購入する 流行に左右されない消費をしている 自分の消費パターンは何があっても変えない 商品やサービス購入に際して品質を重視している 商品やサービス購入に際してイメージを重視している 人の消費を見て羨ましいと思うことがある 支出や消費に関しマスコミや他人から影響を受けることはない 友人・知人の消費生活が気になる 新聞やテレビで景気がいいと聞くと支出額が増える気がする 好景気不景気に関係なく消費支出額はいつも同じようなもの 消費を見ればその人の地位や立場はおおよそわかる モノの購入は使用もさること人にみられることを意識している 支出予定金額内で収まるように買い物をしたい 月々の収入に見合った支出をすべき 支出よりは貯蓄を優先すべきだ 毎月の収入は使い切ってしまうことが多い 欲しいモノがあると貯蓄を取り崩しても買ってしまう 毎月の消費支出は細かい計画を立てて支出すべき 本当にに欲しいモノや必要なモノには支出を惜しまないが、 それ以外は食費でも切りつめる 収入に見合った生活をしている 消費生活は、簡素にすべきだ 気に入ったモノは、借金をしてでも買う 生活を豊かにするためには、借金も仕方がない 3.3 1.3 3.4 L2 3.4 1.1 2.9 1.3 4.l LO 3.0 1.3 2.8 L3 1.8 0.9 2.3 1.0 2.9 LO 2.0 0.9 3.0 1.0 3.l L3 3.0 1,1 3.6 1.2 35 L2 2.7 1.1 3.1 1」 3.2 L2 L7 0.8 1.6 0.7 2.7 1.0 3.0 1.3 3.3 1.2 2.6 1.1 3.1 Ll 2.2 0.9 2.6 1.0 4.O Ll 4.1 1.0 3.3 1.3 3.4 L2 3.4 1.2 3.l L2 4.1 1.0 3.O L3 29 L2 1.9 1.0 2.3 1.0 29 L1 2.0 0.9 3.O l.1 3.1 L2 3.O L1 3.7 L1 3.6 1.1 2.7 1.1 3.1 1.1 3.2 1.2 L7 0.9 1.7 0.8 2.7 L1 3.l L3 3.3 L2 2.7 1.1 3.1 1.1 2.2 LO 2.7 1.0 3.9 1.1 4.1 1.0 3.3 L3 3.4 1.3 3.5 1.1 2.8 1.2 4.O I」 3.0 1.3 2.7 1.3 1.8 0.9 2.3 1.0 2.9 LO 2.0 0.9 3.0 1.0 3.1 1.3 2.9 1」 3.5 1.2 3.3 1.2 2.7 1.1 3」 1」 3.1 1.2 1.6 0.8 L5 0.7 2.7 1.0 2.9 1.3 3.3 1.2 2.5 1.1 3.0 1.1 2.2 0.9 2.6 1.0 4」 1.1 4.2 LO 全体としてみると、肯定的回答傾向がみられるのは自分志向消費を測定した項目、否定的回答傾 向がみられるのは他人志向消費を測定した項目である。 次に、支出意識の基本統計量を考察する。測定尺度、平均値の算出は消費目的意識と同じである。 表1に示すように、平均値はL6から4」の間の値をとっている。3.0が「どちらでもない」であるこ とから、肯定的な回答から否定的な回答まで分散していることがわかる。標準偏差はO.7から1.3まで の値をとっており、比較的分散の小さな項目と比較的分散の大きい項目がみられる。 各項目ごとに考察すると、平均値が2.5以下の肯定的回答がなされている項目は、「月々の収入に 見合った支出をするべき」「支出予定金額内で収まるように買い物をしたい」「収入に見合った生活 をしている」といった所得支出バランス支出、計画支出を測定した項目である。一方平均値が4.5以 8
上の項目はみられないが、「生活を豊かにするには借金も仕方ない」「気に入ったモノは借金してで も買う」といった借金容認を測定した項目で否定的回答が多い。 全体としてみると、肯定的回答傾向がみられるのは節約志向を測定した項目、否定的回答傾向が みられるの支出志向を測定した項目である。
3.確認的因子分析による1998年の分析結果と2001年の分析結果
1998年の分析結果(以下、前回分析)と2001年の分析結果(以下、今回分析)の因子構造を確認 するため、構造方程式モデルによる確認的因子分析を行なった。 3.1 消費目的意識の確認的因子分析 前回の分析結果を図1に示す。⑭㊦
◎
㊦
8繊綴
鱗鷲灘
擁鱗鍵讐
愁謝鰹
一琉といわれる モノ竃買う 人篇惹ぐを⑤ ,鵠畿濡
/一.87 / / / /④ 流鋸i瓢い ・・
自分志向③
.56 図1 前回分析による消費目的意識の確認的因子分析 図1に示すように、「見栄・羨望因子」と「差別化因子」に仮定した2次因子と1次因子間の係数 は高く、他人志向消費という2次因子の仮定は検証された。また、他人志向消費と自分志向消費と いう潜在変数間の相関係数は一〇.67と、両因子間には強い負の相関がみられた。「見栄・羨望因子」と 「差別化因子」と景気への楽観的観測との関連は、見栄・羨望因子間では確認されたが、差別化因子間では確認されなかった。 次に、今回の分析結果を図2に示す。
@
◎
㊦
⑤
景気いいと聞く と消費が増える 蹟ましいヒ思われる 消費生活㊧したい 梼離醜鍵るの纏醗U
友人・知人の消費 生活が気になる 他人と全く途うのも イヤだが筒じもイヤだ .34.74 .80 .68 .51 .68⑤
琉行に左右されない 洞費琶してtiる 自分志向認麟綴 .49
図2 今回分析による消費目的意識の確認的因子分析 一.38 適合度指標を考察すると、表2に示すようにGFIは豊田(1998)が指摘する適合度の目標値であ る0.9を越えておりモデルによる説明力は十分である。 表2 消費目的意識の確認的因子分析適合度指標 残差平方平均平方根(RMR) GFI 修正済みGFI(AGFI) 平均二乗誤差平方根(RMSEA) 0.058 0.959 0、927 0.076 次に、潜在変数と観測変数間の標準化された因果係数の推定値を観察すると、それぞれの因果係 数の推定値は十分高く構成概念の測定には成功している。分析結果からC.R.を検討した。「C.R.」を 標準正規分布における標準得点とみなし、1.96を有意水準5%での標準化得点とした。その結果、 10全ての推定値は5%水準で有意である。 今回の分析では、最初に前回分析と同じモデルで解析を行なった。解析結果は、潜在変数と観測 変数間のパス係数は概ね前回分析と同程度の値を示し、前回分析と同様の因子構造を持つことが確 認された。しかしながら、「他人志向」と「自分志向」間の相関係数は一〇.38と前回分析に比し相関が 弱いことが確認された。そこで、モデル修正を試みた。図2は修正後の結果である。修正は、「自分 志向因子」から「他人と全く違うのもイヤだが全く同じというのやイヤだ」という観測変数にパス を引いた点である。この修正は、「他人志向」と「自分志向」間の相関係数が前回分析に比し弱かっ たことから、「他人志向因子」を測定した観測変数のいずれかと「自分志向因子」間に有意味かつ有 意なパスが存在すると考えた。「自分志向因子」から「他人と全く違うのもイヤだが全く同じという のやイヤだ」という観測変数に引かれたパスは有意である。このことから、自分志向的消費意識に おいても弱いながら差別意識がみられることがわかる。また、前回分析同様「見栄・羨望因子」と 「差別化因子」と景気への楽観的観測との関連は、見栄・羨望因子間では確認されたが、差別化因子 間では確認されなかった。 3.2 支出意識の確認的因子分析 前回の分析結果を図3に示す。
㊦
収入に見合った 生活をしている⑤
歓しいモノは貯蓄を 取り崩しても買う 気に入ったモノは 借金してでも貝う .57⑤ 生識翻㌣ 31
㊦
㊦⑤
本当に歓しいモノ それ以外食費でも 切りつめる 支出予定金額内で 収まるように買い物 をしたい 消費生活は 簡瀦にすぺきだ 支出よりは貯蓄 を優先すべき 一.18 図3 前回分析による支出意識の確認的因子分析前回の分析結果では、探索的因子分析の結果から「所得支出バランス(等身大支出)因子」、「貯 蓄・節約因子」、「借金容認・支出優先因子」の3因子が抽出された。また、「所得支出バランス(等 身大支出)因子」、「貯蓄・節約因子」間には弱い因子間相関が観察された。そこで、「所得支出バラ ンス(等身大支出)因子」、「貯蓄・節約因子」に高次の因子を仮定した因子構造モデルを構造方程 式モデルにより検証した。モデルの当てはまりは悪く、モデルの修正を余儀なくされ最終的に図3 に示した2因子モデルを採用した。 図3に示すように浪費的支出と「収入に見合った生活をしている」の間の係数は負の係数が得ら れ、これにより浪費的支出意識では、所得と支出のバランスをとる等身大的支出意識が希薄なこと がわかった。また「本当に欲しいモノには支出を惜しまないが、それ以外はたとえ食費でも切りつ める」という観測変数には、浪費的支出、節約的支出ともに正の係数が得られた。これは、所得と 支出のバランスをとる等身大的支出を行う節約的支出では限られた支出をどのように配分するかに ついて、欲しいモノがあれば支出をそちらに割り振るという意識であり、一方浪費的支出では、所 得を超えて欲しいモノを購入した後は、所得が残らず食費といえども切りつめざる得ないという意 識であると考察した。 また、節約的支出と浪費的支出という構成概念間の相関係数は一〇.18と、両因子間には弱い負の相 関がみられた。 次に、今回の分析結果を図4に示す。
謄
雛
鵠
㊦
5
◎
気に入ったモノは 借金してでも買う 生蕃劉認声 収入に見合った 生活をしている (≡) *当に欲しい物 でも切り1吉める費㊦㊦
支出予定金額内で 収まるように頁い物 をしたい 消費生活は 簡素にすべきだ 支出よりは貯蓄 を優先すぺき 一.53 図4 今回分析による支出意識の確認的因子分析 12適合度指標を考察すると、表3に示すようにGFIは豊田(1998)が指摘する適合度の目標値であ る0.9を越えておりモデルによる説明力は十分である。 表3 消費目的意識の確認的因子分析適合度指標 残差平方平均平方根(RMR) GFI 修正済みGFI(AGH) 平均二乗誤差平方根(RMSEA) 0.031 0.987 0.970 0.050 次に、潜在変数と観測変数間の標準化された因果係数の推定値を観察すると、それぞれの因果係 数の推定値は十分高く構成概念の測定には成功している。分析結果からC.R.を検討した。「CR」を 標準正規分布における標準得点とみなし、L96を有意水準5%での標準化得点とした。その結果、 このパス図における全ての推定値は5%水準で有意である。 今回の分析では、最初に前回分析と同じモデルで解析を行なった。解析結果は、潜在変数と観測 変数間のパス係数は概ね前回分析と同程度の値を示し、前回分析と同様の因子構造を持つことが確 認された。しかしながら、「浪費的支出」と「節約的支出」間の相関係数は一〇.53と前回分析に比し相 関が強いことが確認された。そこで、モデル修正を試みた。図4は修正後の結果である。修正は、 「節約的支出」から「収入に見合った生活をしている」という観測変数にパスを引いた点であるc.前 回の分析では浪費的支出から「収入に見合った生活をしている」の間の係数は負の係数が得られ、 浪費的支出意識では、所得と支出のバランスをとる等身大的支出意識が希薄なことがわかった、、し かし、節約的支出から「収入に見合った生活をしている」の間の係数は有意ではなかった。今回の 分析ではここに引かれたパス係数は有意となり、節約的支出では等身大的支出意識があり、浪費的 支出では等身大的支出意識がないという結果である。 3.3 消費目的意識と支出意識の因果分析の比較 前回の分析結果を図5に示す。 節約的支出と浪費的支出という支出意識と、他人志向的消費と自分志向消費という消費目的意識 間の因果係数を考察した結果、自分志向的消費から浪費的支出、他人志向的支出から節約支出への パス係数はいずれも5%水準で有意ではなかった。このためこのパスを削除した。その結果が図5 のパス図である。 次に、今回の分析結果を図6に示す。 適合度指標を考察すると、表4に示すようにGFIは豊田(1998)が指摘する適合度の目標値であ るO.9を越えておりモデルによる説明力は十分である。
.23 ■‘6
㊦
・ ㊦
●4 ⑲5 ●6 07 景気いいと聞( ニ淵賃が増える ましいと思 黷髑ェ費生 @をしたい モノ竃買うと倉 人の消費壱 モ紺て異麟る箒灘・搬・
人と違うモノ│縛ちたい 他人と金《直うのもイヤだが ッじもイヤだ .36 .61 .66 戊3 ・76 .49 .51 .51 ●8㊥
d1 ゥ栄・羨望⑧
豊別化 翻語畠セしてい6 モノの頂入は K要か不必要か lえτから晴 一26 .79 @ .70 D63 .55 .86 シ人志向 Q費的支出 @ d3 @ .39 @ .40 「69 @ .43 倒 .67 D34 自分志向 .58 ゚約的支出 @ .71 67 @.28 収入に見合った カ活蜜している 歌UWは貯蓄 気に入ったモノ Z取り廟して ほ借金して @ も買う でも買う 生活豊里かに キるには借金 燻d方ない 畠に歌しいモ ウ出情しまoい サれ以外は食 支出予定金頓 烽ナ収まるよう ノ賃い物し亀い 璃費生活 ヘ筒粛に キべ●だ 文出よりは 剪 を優受 @すべ● 費も切りつめる ・17 ・10 ●11 ●〔2 ●18 ●13 ●14 015 .36 図5 前回分析による消費目的意識と支出意識の因果モデル 次に、潜在変数と観測変数間の標準化された因果係数の推定値を観察すると、それぞれの因果係 数の推定値は十分高く構成概念の測定には成功している。分析結果からC.R.を検討した。「CR.」を 標準正規分布における標準得点とみなし、1.96を有意水準5%での標準化得点とした。その結果、 このパス図における全ての推定値は5%水準で有意である。 因果モデルは、基本的に前回分析と同じモデルで分析を行なった。ただし、消費目的意識と支出意 識の確認的因子分析モデルに若干の修正を行なったため、今回の分析結果を反映させたモデルを作 成し分析を行なった。分析結果は、潜在変数と観測変数間のパス係数は概ね前回分析と同程度の値を 示し、前回分析と同様の因果モデルで説明できることが確認された。しかしながら、前回の分析結果 ではパス係数が有意ではなかった、自分志向的消費から浪費的支出、他人志向的消費から節約的支 出へのパスはそれぞれ有意であった。このことか、自分志向的消費目的をもつ人びとは、支出に対し 節約的意識をもち浪費的支出に背反的なことがわかる。一方、他人志向的消費目的をもつ人びとは、 浪費的支出意識をもつとともに、節約的支出意識をもつことがわかる。他人志向的消費目的を持つ 人びとは、影響を受ける対象が浪費的か節約的かにより支出意識が変化する、あるいは個人内に同 時的に存在すると解釈できる。 14㊦
景気がいいと 聞くと消費 が増える 歓しいモノは relを取D 崩しても貝う③
㊦
ノを買うとき の璃費を見 友人・知人の 蹟ましいと思 i寺つイ)1一シ’ 気になる とがある が気になる をしたい5喜湊慧禦こ生簑庶
㊦
○
一mといma人と違}Eノ他人と全く這 6モノ奄買う e持ちたい 岡じもイヤだ 琉行に左右さ れない消費 奄している⑤
消費生活 支出よりは 貯日を優先 すべtだ すべき .51 図6 今回分析による消費目的意識と支出意識の因果モデル 表4 消費目的意識と支出意識の因果分析の適合度指標 残差平方平均平方根(RMR) GFI 修正済みGH(AGFI) 平均二乗誤差平方根(RMSEA) 0.057 0.949 0.930 0.0534.消費目的意識と支出意識の男女比較 次に、男女別の因子構造の違いを確認する上から多母集団による確認的因子分析の同時分析を行 なった。多母集団による確認的因子分析の同時分析を適用したのは以下の理由による。 ここまでの分析は、単一の母集団を想定してきた。しかし、観測データが単一の母集団から抽出 されたものと仮定できるとは限らない。例えば、性別や年齢によってパス係数の値が異なるかもし れない。因子の分散が異なるかもしれない。このように母集団間で必ずしもパラメータが一致する とは限らない。このため、複数の母集団のパラメータが異なるという仮説を検証する必要がある。 ここで、母集団ごとに別々に分析するという方法が考えられる。しかし別々に分析を行なういうこ とは全てのパラメータが異なるという仮定を置いていることになる。一方、一緒に分析を行なうとい うことは全てのパラメータが同じであるという仮定を置いていることになる。このため母集団間のパ ラメータを比較する場合、比較の枠組みを共通させた上で比較したい仮説を検証する必要がある。 因子分析モデルでいうならば、母集団ごとの探索的因子分析では、得られた因子負荷量の比較は 分析者の主観に委ねられる。これに対し多母集団による確認的因子分析の同時分析では、母集団間 でパラメータが等しいと仮定したモデルと、母集団間でパラメータが等しくないと仮定したモデル の適合度を比較することで、母集団間のパラメータの値を統計的に検討することができる。 4.1消費目的意識の男女比較 消費目的意識について、男性と女性に分け両母集団間での因子構造の同一性を5つのモデルを構 成し検討した。 Mode11 制約なしモデル 全く制約のないモデル Model 2 3因子構造同一モデル 男女間で3つの因子の構造と因子間相関が等しいというモデル Model 3 自分志向因子構造同一モデル 男女間で自分志向因子だけ構造が等しいというモデル Model 4 見栄・羨望因子・差別化因子、2次因子構造同一モデル 男女間で見栄・羨望因子・差別化因子および2次因子の構造が等しいという モデル Model 5 見栄・羨望因子・差別化因子構造同一モデル 男女間で見栄・羨望因子・差別化因子の構造が等しいというモデル Model 6 修正3因子構造同一モデル 人と違うものを持ちたいへのパスとe2とe5間の誤差相関には制約を加えてい ないが、それ以外は3因子構造同一モデルと同様の制約を加えているモデル 16
分析結果は表5に示した通りである。まず、制約のない最もデータ適合度のよいMode11と制約 のあるModel 1以外についての検定結果(帰無仮説:Model 1=Mode11以外、対立仮説:Model 1≠ Mode11以外)をみると、全てのモデルで確率は0.05以上であり帰無仮説を棄却できない。これは、 全てのパラメータを解放したデータに適合しやすいモデルと、制約を課したデータに適合し難いモ デルとの間に有意差が認められないということであり、制約を課したいずれかのモデルを採択する ことができるということになる。次に、どのモデルを採択するかを適合指標を参考に決定した。 RMSEAとAICをみると、 Mode16の適合度がもっと良いモデルということになる。各モデルのX2検 定の結果は確率0.05以下(帰無仮説がモデルは真であるの元での検定)となっている。これは標本 数が多いことによると判断した。 表5 各モデルの適合度 Model Model l Model 2 Model 3 MOdel 4 Mode15 MOdel 6 適合度 残差平方平均平方根(RMR)
GH
修正済みGFI(AGH) 平均二乗誤差平方根(RMSEA) 赤池情報量規準(AIC) 0.060 0.060 0,060 0.958 0.956 0.958 0.924 0.931 0.926 0.052 0。049 0.051 326.053 319.543 322.338 0066 0.066 0.068 0.957 0957 0.957 0.931 0.928 0931 α050 0.050 0.048 323,034 324.106 318.485 図7と図8は、Model 6の修正3因子構造同一モデルの確認的因子分析の結果である。 Model 6が採択されたことにより消費目的意識として抽出された因子、つまり潜在変数の男女間 での同質性が保障されたことになる(パス係数は全て有意)。パス係数(因子負荷量)が異なってい るのは、因子の分散に等値の制約を課していないことによる(以下の男女比較分析も同様である)。 4.2 支出意識の男女比較 支出意識について、男性と女性に分け両母集団間での因子構造の同一性を5つのモデルを構成し 検討した。 MOdel 1 制約なしモデル 全く制約のないモデル Model 2 2因子構造同一モデル 男女間で2つの因子の構造と因子間相関が等しいというモデル Model 3 浪費的支出因子構造同一モデル 男女間で浪費的支出因子だけ構造が等しいというモデル Mode14 節約的支出因子構造同一モデル 男女間で節約的支出因子の構造が等しいというモデル Model 5 修正2因子構造同一モデル 男女間で2因子の構造と誤差相関が等しいというモデル,24
◎
但気いいと聞く と消費が増え6 浪ましL叱思1うΣ帆6 璃費生落竃したい モノを買うとき人が 掴rコイ’←シ’が気に06 友人・知人の消費 生治が気に勾る 値人と金く違うのも イヤだ力働じもイヤだ 誕行に左右されない 消費竃している モノの煩入は島裏 か不必墓かセ身え /一.40 図7 男性の消費目的意識の確認的因子分析 .13㊦
⑤
畳気いいと田く と潮費が増久る 蹟塞しL叱思ねnる 滑費生活tしたい 潟¶賭継る 友人・知人の洞費 生活が気にoる 他人と全く違うのも イヤだが間じもイヤだ 琉行に左右されOい 消費をしてい6 モノの頒入は必要 か不必宴かセ考え てから口入 /一.38 図8 女性の消費目的意詰の確認的因子分析 18分析結果は表6に示した通りである。まず、制約のない最もデータ適合度のよいModel 1と制約 のあるModel l以外についての検定結果(帰無仮説:Mode11=Mode11以外、対立仮説:Mode11≠ Model 1以外)をみると、全てのモデルで確率は0.05以上であり帰無仮説を棄却できない。これは、 全てのパラメータを解放したデータに適合しやすいモデルと、制約を課したデータに適合し難いモ デルとの間に有意差が認められないということであり、制約を課したいずれかのモデルを採択する ことができるということになる。次に、どのモデルを採択するかを適合指標を参考に決定した。 RMSEAとAICをみると、Model 5の適合度がもっと良いモデルということになる。各モデルのZ2検 定の結果は確率0.05以下(帰無仮説がモデルは真であるの元での検定)となっている。これは標本 数が多いことによると判断した。 表6 各モデルの適合度
MOdel Model 1 Model 2 MOdel 3 Model 4 MOdel 5
適合度 残差平方平均平方根(RMR) GFI 修正済みGH(AGFI) 平均二乗誤差平方根(RMSEA) 赤池情報量規準(AIC) 0.036 0.982 0.959 0.037 156.928 0.064 0.975 0.957 0.039 168.391 0.039 0,980 0.961 0.051 156.344 0.040 0.980 0.961 0.037 157.736 0.043 0。979 0.963 0.035 153.365 図9と図10は、Mode15の修正2因子構造同一モデルの確認的因子分析の結果である。 Model 5が採択されたことにより支出意識として抽出された因子、つまり潜在変数の男女間での 同質性が保障されたことになる。しかし、因子間相関は男女で異なるという結果である。因子間相 関をみると、男性よりも女性で強い負の相関がみられ、浪費的支出意識と節約的支出意識の背反性 が強いといえる(パス係数は全て有意)。 4.3 消費目的意識と支出意識の因果分析の男女比較 消費目的意識と支出意識の因果分析について、男性と女性に分け両母集団間での因子構造の同一 性を5つのモデルを構成し検討した。 Model 1 制約のないモデル 全く制約のないモデル Mode12 他人志向的消費意識、自分志向的消費意識構造が同一であり、 他人志向的消費意識、自分志向的消費意識間の共分散が同一である。 他人志向、自分志向から浪費的意識、節約意識への影響は同一であるいうモデル Model 3 浪費的支出意識、節約的支出意識および他人志向的消費意識、 自分志向的消費意識構造が同一であり、潜在変数間の共分散も同一である。 他人志向、自分志向から浪費的意識、節約意識への影響は同一であるというモデル Model 4 浪費的支出意識、節約的支出意識が同一である。他人志向、 自分志向から浪費的意識、節約意識への影響は同一一であるというモデル
.50
㊦
⑤
㊦
欲しいモノは貯蓄を 取り崩しても頁う 気に入ったモノは 借金してでも買う 雛恕謝、 収入に見舎った 生活をしている 本当に欲しい物は 支出を惰しまないが それ以外は食費で も切り詰める 支出予定金額内で 収まるように買い物 をしたい 消費生活は 簡素にすぺOだ 支出よりは貯冒 を優先すべき 一.31 図9 男性の支出意識の確認的因子分析 .52砲
㊦
⑤
⑤
欲しいモノは貯蓄を 取り崩しても貫う 気に入ったモノは 借金してでも買う 活を豊かにする1 借金も仕方ない 収入に見合った 生活をしている 本当に欲しい物は 支出を惜しまないがそ瑠脇ヂ
支出予定金額内で 収まるように買い物 をしたい 消費生活は 簡素にすべきだ 支出よりは貯蓄 を優先すべき 一.71 図10 女性の支出意識の確認的因子分析 20分析結果は表7に示した通りである。まず、制約のない最もデータ適合度のよいModel 1と制約 のあるMode11以外についての検定結果(帰無仮説:Model 1=Model 1以外、対立仮説:Mode11≠ Model 1以外)をみると、全てのモデルで確率は0.05以上であり帰無仮説を棄却できない。これは、 全てのパラメータを解放したデータに適合しやすいモデルと、制約を課したデータに適合し難いモ デルとの間に有意差が認められないということであり、制約を課したいずれかのモデルを採択する ことができるということになる。次に、どのモデルを採択するかを適合指標を参考に決定した。 RMSEAとAICをみると、Model 2の適合度がもっと良いモデルということになる、各モデルのZ2検 定の結果は確率0.05以下(帰無仮説がモデルは真であるの元での検定)となっている。これは標本 数が多いことによると判断した。 表7 各モデルの適合度
Model MOde}1 Model 2 Model 3 MOdel 4
適合度 残差平方平均平方根(RMR) GFI 修正済みGFI(AGFI) ’F均二乗誤差平方根(RMSEA) 赤池情報量規準(AIC) 0.063 0.940 0.915 0.039 735.882 O.071 0938 0.918 0.038 726.521 0.076 0936 0918 0.038 730.292 0.072 0.938 0.917 0.039 733.336 図11と図12は、Model2の他人志向的消費意識、自分志向的消費意識構造が同一であり、他入志向 的消費意識、自分志向的消費意識間の共分散が同一である。他人志向、自分志向から浪費的意識、 節約意識への影響は同一であるいう多重指標モデルの結果である。 Model 2が採択されたことにより、男女間で他人志向的消費意識、自分志向的消費意識の同質性 は保障されたが、浪費的支出意識、節約的支出意識は男女間で異なり、因子間相関も異なっている。 つまり、浪費的支出意識、節約的支出意識の下位項目の解釈のされ方が異なっているといえる。 さらに、平均構造を入れたモデルにより分析を行なってみると、男女間で他人志向的消費意識、 自分志向的消費意識に違いがないことがわかる。一方、他人志向的消費意識、自分志向的消費意識 の影響を取り除いた時の浪費的支出意識、節約的支出意識が男女間で異なっている(男性の因子平均 と切片を0に固定し、女性の平均と切片に0という等値制約を化したモデルでは、平均だけが0とい うモデルが採択される)。 他人志向、自分志向から浪費的意識、節約意識への影響力は同一である。
5.まとめ
本論の目的は、1998年に検証した消費目的意識と支出意識の因果関係の再検証にある。この点にG)(〉(D
縣鵠 偶欝雲醍鶏友人似の債撚’W
とがある が気になる が増える盤轟号 5継 籍!罐
崩しても買う も買う も仕方OLS㊦(⊃
譜梁4纈ぐ鑑鰻
琉行に左右さ れnい鴻費 竃してLva モノの煩入は てから購入1認凝 消費蠕函暇簾
すべ套だ箱竈したい .52 図11 男性の消費目的意識と支出意識の因果分析 ついて考察する。 消費目的意識については、今回の分析では、最初に前回分析と同じモデルで解析を行なった。解 析結果は、潜在変数と観測変数間のパス係数は概ね前回分析と同程度の値を示し、前回分析と同様 の因子構造を持つことが確認された。しかしながら、「他人志向」と「自分志向」間の相関係数は 一〇.38と前回分析に比し相関が弱いことが確認された。そこで、若干のモデル修正を試みた。修正は、 「自分志向因子」から「他人と全く違うのもイヤだが全く同じというのやイヤだ」という観測変数に 22⑤㊦㊦
懸欝耀懇露爾欝璽難
灘灘螺悟饗繋
㊦㊦
譜梁鶴蒼∼驚驚
琉行に左右さ 讐∼源 蹴雑ま てから煩入 箱凱・@i罐麟璃駐活議雛
綴認 す・轡だ 鵠号翻『 .51 図12 女性の消費目的意識と支出意識の因果分析 パスを引いた点であり、このパス係数は有意であった。このことから、自分志向的消費意識におい ても弱いながら差別意識がみられることがわかる。 支出意識については、今回の分析では、最初に前回分析と同じモデルで解析を行なった。解析結 果は、潜在変数と観測変数間のパス係数は概ね前回分析と同程度の値を示し、前回分析と同様の因 子構造を持つことが確認された。しかしながら、「浪費的支出」と「節約的支出」間の因子間相関は 前回分析に比し相関が強いことが確認された。そこで、モデル修正を試みた。修正は、「節約」から「収入に見合った生活をしている」という観測変数にパスを引いた点である、,前回の分析では浪費的 支出から「収入に見合った生活をしている」の間の係数は負の係数が得られ、浪費的支出意識では、 所得と支出のバランスをとる等身大的支出意識が希薄なことがわかった。しかし、節約的支出から 「収入に見合った生活をしている」の間の係数は有意ではなかった。今回の分析ではここに引かれた パス係数は有意となり、節約的支出では等身大的支出意識があり、浪費的支出では等身大的支出意 識がないことがわかった。 これら消費目的意識と支出意識間の因果モデルは、基本的に前回分析と同じモデルで分析を行なっ た。ただし、消費目的意識と支出意識の確認的因子分析モデルに若干の修正を行なったため、今回 の分析結果を反映させたモデルを作成し分析を行なった。分析結果は、潜在変数と観測変数間のパス 係数は概ね前回分析と同程度の値を示し、前回分析と同様の因果モデルで説明できることが確認さ れた。しかしながら、前回の分析結果ではパス係数が有意ではなかった、自分志向的消費から浪費的 支出、他人志向的支出から節約支出へのパスはそれぞれ有意であった。このことか、自分志向的消費 目的をもつ人びとは、支出に対し節約的意識をもち浪費的意識をもたないことがわかる。一方、他 人志向的消費目的をもつ人びとは、浪費的支出意識をもつとともに節約的支出意識をもつことがわ かる。他人志向的消費目的を持つ人びとは、影響を受ける対象が浪費的か節約的かにより支出意識 が変化する、あるいは個人内に同時的に存在すると解釈できる。 本論では、1998年の分析結果を再検証したわけであるが、結果は前回の分析結果を全てにおいて支 持するものではなかった。ことに、前回の分析結果ではパス係数が有意ではなかった、自分志向的 消費から浪費的支出(負のパス係数)、他人志向的消費から節約支出(正のパス係数)へのパス係数 がそれぞれ有意であった点が注目される。これは、自分志向的消費意識を持つ人は浪費的支出意識を もたず、他人志向的消費目的をもつ人びとは、浪費的支出意識をもつとともに節約的支出意識をも つということである。他人志向は他人の影響を受けるということであるから、影響を受ける対象が 浪費的か節約的かにより支出意識が変化する、あるいは個人内に同時的に存在すると解釈できる。 この結果は前回の分析結果のように、自分志向は節約的、他人志向は浪費的といった画一的な因果 関係よりは妥当な解釈が可能であると思われる。 次に、本論のもう1つの視点である男女差が存在するか否かについて考察する。本分析に当たっ ては、構造方程式モデルの多母集団の同時分析により行なった。 消費目的意識については、抽出された因子の男女間での同質性が保障された。支出意識について は、因子の男女間での同質性は保障されたが、因子間相関は男女で異なるという結果である。因子 間相関をみると、男性よりも女性で強い負の相関がみられ、浪費的支出意識と節約的支出意識の背 反性が強いといえる。消費目的意識と支出意識間の因果関係は、男女間で他人志向的消費意識、自 分志向的消費意識の同質性は保障されたが、浪費的支出意識、節約的支出意識は男女間で異なり、因 子間相関も異なっている。平均の構造を入れたモデルの分析結果から、男女間で他人志向的消費意 識、自分志向的消費意識に違いはないが、他人志向的消費意識、自分志向的消費意識の影響を取り 24
除いた時の浪費的支出意識、節約的支出意識の受けとられかたが男女間で異なっていることが確認さ れた。他人志向的消費、自分志向的消費から浪費的支出意識、節約的支出意識への影響力は男女で同 一である。 男女比較から、消費目的意識には同質性が認められ、支出意識への影響にも差がないことが認めら れた。しかしながら、支出意識の同質性は認められない。女性では浪費的意識と節約的意識の背反性 が強く浪費的な人は節約的でなく、節約的な人は浪費的ではない。一方男性では、浪費意識と節約 意識の関連が弱い。 前回の分析結果ではパス係数が有意ではなかった、自分志向的消費から浪費的支出、他人志向的 消費から節約支出へのパス係数がそれぞれ有意になった点は、ひとつには男女差があげられる。前回 の分析対象と今回の分析対象という標本構成による影響は分析されていないため、その影響を実証的 に論じることはできない。主観的ではあるが、団地世帯という環境が影響していることは十分に予 想される。 【注1 D島崎哲彦・大竹延幸「消費目的意識と支出意識の因果分析一因子分析モデルと多重指標モデルによる因果関 係の分析一」「東洋大学社会学部紀要』第37−2号、東洋大学社会学部、2000年、5∼23頁。 2)調査実施要領は以下の通り 調査地域 首都30km圏 標本抽出法 クォータ法 クォータ基準 男女別年齢構成比 調査対象者 調査方法 サンプル数 実査期間 調査主体 15∼64歳の.’般男女 留め置き調査法(訪問留置、訪問回収) n=1.054 2001年10月 東洋大学社会学部社会調査室 3>分析に当たっては、SPSS社のAmos4.0を使用した。 【参考文献】 ①狩野裕 「AMOS EQS LISRELによるグラフィカル多変量解析一目で見る共分散構造分析一』現代数学社、 1997f手三〇 ②豊田秀樹「SASによる共分散構造分析」東京大学出版会、1992年。 ③豊田秀樹「共分散構造分析 構造方程式モデリング入門編」朝倉書店、1998年。 ④豊田秀樹r共分散構造分析 構造方程式モデリング事例編」北大路書房、1998年。 ⑤豊田秀樹「共分散構造分析 構造方程式モデリング応用編」朝倉書店、2000年。 ⑥山本嘉一郎・小野寺孝義編著『Amosによる共分散構造分析と解析事例」ナカニシヤ出版、1999年。
【Abstract】