特集/21世紀の展望
地域経常の枠組みとその主体 一連帯性 を意識 して‑
海老津 栄 一
は じめに
"地域の時代"到来 といわれて久 しい。 しか し地域 と反対にある概念 は何 なの だろ うか。 中央が地域の反対極 にあることを想定 しているのであれ ば、地域で はな くて地方であろ う。 中央集 中一 地方分散 とい う図式である。
では中央集 中では何 を集 中 しているのであろ うか。おそ らく、カネ、モ ノ、
ヒ ト、の よ うな諸資源 の都市集 中であろ う。 その資源集 中を行政の力で地方 に 分配 あるいは再分配す ることによって、地方 を活性化 させ よ うとい う構 図であ る。その際、分配枠や分配方法の決定は、そのほ とん どが中央にある行政で実 行 され る。地方が活性化す るか どうかは、住民が本来その一翼 を担 っているに もかかわ らず、中央集 中 とい う トップダ ウンの仕組みの中に埋没 してい るのが 現状であろ う。
地方 とい う用語が、 どち らか とい うと過疎 とか近代化 されていない、産業集 積がないな どのイメー ジ と連動す ることが多い ことか ら、最近では地域 とか地 区のよ うな言葉が多 く使 われ るよ うになってきている。大学で も本部以外の試 験会場の ことを従来は、"地方"試験 とよんでいた。それがいつの間にか地区試 験 とよばれ るよ うになった。
本稿では人間が生計 を営んだ り仕事 を した りす る場を地域 とよぶ ことにす る。
地域によって特徴の違いがあることは当然の こととして、都会 とか地方 とかの 区別は しない ことにす る。すなわち、千代 田区 も三軒茶屋 も桜木町 も秦野市 も すべて地域 と考 える。 なぜ な らば、人間が生 きるとい うことに違いはないか ら
であ る。岩 手 日報 (2009)に 「地域再生一 主役 が誰 か思 い出そ う」 とい う見出 しの社説 が載 った。 その内容 に よれ ば主役 は住 民で あ り、分権 の対象 は地方 で はな く地域 で ある ことを強調 してい る。
本稿 では先 にふれ た よ うに、人 間が生計 を営 んでい る場 を地域 と規 定 しその 地域 が どこにあ るかは問わない こ とに したい。 その地域 を経営 の対象 にす る大 きな理 由を2つ あげてみたい。
第1は地域 が生計 の場 で あ るに もかかわ らず 、それ を経営 の対象 に して こな か った ことであ る。経営 の対象 は、企業 か ら今 大 き く舵 を と り始 めた。 私企業 のみ な らず公企業や社会その もの も経営 の対象 になってい る。 また ヒ トに注 目 す る と倫理や宗教 、哲学 な ども経営 との関連 で議論 され るこ とが あ る。 地域 も お のず か らその仲 間入 りをす るこ とにな ろ う。 そのた めには、経営概念 の確認 を本文 中で してお く必要が あ る。
第 2は経営 と社会 との識別 が明確 にで きに くくなってい る、 とい う事実 であ る。経営学 でい う経営主体 は一般 的 な意 味で企業 であ る. ところがその企業 は 特定地域 に所在 してお り、地域 と全 く無 関係 で存在 してい るわ けではない。最 近 で は社 会 起 業 家 の分析 や研 究 が進 ん で い る こ ともあ り (Campbell,1998;
Dees,Emerson,&Economy,2002;Roper&Cheney,2005;Wedge,2007年6月) 経 営の社会化 、社会 の経 営化 ともい うべ き現象 が起 こって きてい る。 この現象 は企業 の社会性や社会 の企業性 が双方 で進 み 、両者 の歩み寄 りがみ られ ること を意 味す る。垣根 の唆昧化 が進 んでい る ともい えよ う。
この よ うな現実の変化 を冷静 に とらえ る と、地域や社会 の経 営 は誰 に よって 遂行 され てい るか とい う、新 しい問題 を提起す る必要 に迫 られ る。村長 で も町 長 で も市長や 県知事 で もない。 ま してや企業経営者 で もない。 不特定多数 の地 域住 民が経営 の任 に当た るこ とが求 め られ てい るに もかかわ らず 、誰 もその任 務 を明示的 に遂行 していない ところに大 きな問題 が潜 んでい る と言 わ ざるを得 ない。地域 の経営主体 にふ さわ しい ヒ トの条件 と して"つ なが り"す なわ ち連 帯 概念 の援用 を本稿 の重要課題 の1つ と したい。
地域 とい う社会性 を意識 した問題 を経営 の視 点 か ら考察す る ときの有用 な分 析 ツール は、経営 に参画す る ヒ トの特性 を明示化す るこ とに よって得 られ る と 仮 定 した。 以下で順 を追 って論証 してい こ う。
特集 地域経営の枠組 みとその主体
社会性 を意識 した地域経営特性
地域の概念
かつて国際経営研 究所 主催 のフォー ラムが開かれ た。 その ときのテーマは
「地域の時代 とビジネ ス革新」であった。筆者 はパネ リス トの一人 として参加 機会 を得 、 「地域の時代 にお けるビジネス創 造 ‑ ヒ トの立場か ら‑」で報告 し た (2004)。 その ときに、地域 に壁 をつ くることその ことが、閉鎖的で身勝手 な考 え方であることを問 うた。つま り地域 は識別す る主体の考 え方や思想 、価 値観 、能力な どによってその範 囲が異なる、 とい う立場 を主張 した。 またその 範囲や領域 は弾力的であ り固定化す る意味はない ことも述べた。
この考 え方によれば、地域は 自分の住居、隣近所、区、市全体、周囲の市を 含む拡大空間、県、複数の県を含む広域、国、大陸、地球、宇宙 とい うよ うに、
ミクローマクロで連続的につながっているところに最大の特徴がある (Alexander, 1987)。 グローバル に事業 を展開 してい る経営者 に とって地域 は地球全体であ るか もしれない し、逆 に限定的な範囲で生活 してい る公務員 に とっての地域 は 自宅 と勤め先 との間に限 られているか も知れ ない。
また、経営者 自身、生活空間をもっているので、週末 に過 ごす別荘は一定範 囲に地域が限定 され るであろ う。逆 に、限定範囲で生計 を営んでい る公務員が 週末遠 くまで ドライブす ることを趣味に してい るか も知れ ない。 このよ うに一 定の範囲は大 きくゆれて くるであろ う。 もし地域 を、住んでいる住居範囲に限 定 した とす ると、週末に尋ね る非住居地域 には愛着 も生活習慣 の影響 もな く、
「旅の恥はかき捨て」的発想が顔 をだす ことになる。
この よ うに考 える と地域の概念化 はそ う容易ではない ことに気づ く。 ここで は"ヒ トが周 囲を意識 し相互影響 を受 け与えなが ら自己の責任 の範囲で生計 を たてている一定の場"の ことを地域 とよぶ ことに しよ う。
経営の概念
経営学は経済学 と同様、社会科学の範境 に位置づ け られている。 もしこの考 えを踏襲す ると材料やエネル ギー調達は どう理解すれば よいのだろ うか。学問
の対象外 とい うことで勝手 に もって きて使 って よいのだ ろ うか。水や空気 、土 壌 、森林、海洋 、バー ジン資源 な どいずれ を とって も生命 圏の営み を無視 して の経営はあ り得 ない し許 してはいけない時代 を今 、迎 えてい る。
かつてわれ われ は経営概念 を 「利用可能 な資源 を効率的、有効的に組み合 わ せ 、問題解決や問題 の創造、発 見 を繰 り返 しなが ら、長期 にわたって存続す る こ とを可能 にす る協働 の営みの こと」 ととらえた (海老津、 2007)。 しか しこ の定義では、資源 を所与 としいつで も利用可能 な資源 がそ こにあることが暗 に 想 定 されてい る とい う批判 を論駁す ることは困難 である。 そ こで一部追加修正
して、以下の よ うに概念 の再構築 を図 ることに した。つ ま り経営 とは、
生命‑社会体系のなかでの多様 でかつ限 られた資源 の保有や組合 わせ 、利 用方法 を関係 主体が機能的、有機的、体系的に関係 づ け、問題処理や解決、
創造 、発見 を繰 り返 しなが ら、長期 にわたって存続す ることを可能 にす る 協働 の営み
の こととした (海老揮、2009)。
ここでい う生命一 社会体 系(bio‑sociologicalsystems)とは、有機 的生命 のつ なが りを意図 した 自然界 とその 自然界のなかで生 きかつ生か されてい る人間界 とが相互に影響 、支援 、補助 し合 いなが ら長期的に共生す ることを可能 にす る 共同の集合体の ことである。 この集合体は個別主体の連続す る関係 を意味す る。
先 に述べた よ うに個人、家庭 、組織 、組織 間、地域 、地域 間、社会、社会 間、
大陸、大陸間、地球、の よ うな ミクローマ クロ リンクの連続体 として説 明 され る。
経営 をこの よ うに概念化す る と、次 に問題 になるのは地域 の経営 を誰 が担 当 す るのか とい うことである。企業経営の よ うに経営主体 を特定少数 に限定す る ことはで きない。みずか ら得意技 を もち、 自分のため と同時に地域 のために も 行動す るいわば利 己性 と利他性 を同時に併せ もつ ことが必要 となる。集 団での 成果 が問われ るスポー ツや音楽 の世界 を想 定すれ ば、個 と全体 との整合性 がい かに重要であるかは容易 に理解 で きよ う。
平尾 (2006)は 『人は誰 もが リー ダーである』 の中で、以下の よ うな項 目を 強い組織生成 の条件 としてあげてい る。地域 を1つの組織 と考 えれ ば、応用 は 十分 に可能である。
特集 地域経営の枠組みとその主体
・チームスポーツの個人化のすす め
・出っ張 りを埋 めるアクテ ィブ コミッ トメン ト
・個人 目的許容 と組織 目的の共有化
・異質 を取 り入れ る組織の許容力
・リーダー分業のすす め
これ らの提案項 目を総括す ると全員参画型経営 と同義 になることが理解 でき よ う。カ リスマ性のある特定スーパー リーダーにすべてお任せす るのではな く、
異質で多様 な個 の集合体が全員 リーダーにな り全員経営者 にな り、試行錯誤的 に地域活性化のための行動 を展開す る。
先にふれた新 しい経営概念 の定義 には、その概念 を支援 し促進す るための3 つの条件 を用意 した。個別 にみてお こ う。
① 多様 な資源 の相互影響 の仕組みづ くり :連続 した空間や時間のなかで参画 者それぞれが固有の役割や機能 を相互 に認識 し合いなが ら資源 の相互利用 の仕組み を協働 で制作す る。
② 一連の資源循環過程の動的見直 し :関係 主体による自主的、能動的運営に よる共同体系の制度化 を進 める。
③ 地域 における生活の質向上の恒常的模索 :対等で公平な関係 にある多様 な 利害関係者が生命一社会の枠のなかでそれぞれの役割や機能 を相互に認 め 合 う。
上記の地域経営にかかわ る記述の うち、分業 と制度化について追加 の コメン トを しておきたい。なぜな らば、両者 ともダイナ ミックな経営 と密接にかかわっ ていると考 え られ るか らである。
分業 :1910年代 にアメ リカのフォー ドで始 まったベル トコンベア式の 自動連続 生産は、比較的安価 な 自動車の大量供給 を可能に した。一代巨大産業を構築 し、
国家産業 を実現 した。一方労働者側 に とって未熟練技術者であって も雇用 され たので、生活の安定感 を達成す ることができた。徹底 した作業の標準化が末熟 練労働者 の就労を可能 に した。 しか しその一方で、労働者の仕事 を終 えた後の 私生活 まで徹底的に管理 され 自由度は著 しく阻害 され、労働意欲や動機づ けは ほとん どないに等 しかった。組織的怠業が蔓延す るまでそ う時間はかか らなかっ た。
この よ うな作業の分断化や分業化 、断片化 は、仕事‑の興味 を削 ぐことにつ ながった。 生産の近代化 を支 えてきた分業化 は、人間性 とい う意味では多かれ 少 なかれ この よ うな"部品化"の側 面 を残 してい る。 しか も現在 ではサー ビス産 業で もこの流れ作業 が作業 t程 に組み込まれ てい る。
19世紀後 半 フランスで活躍 した社会哲学者Durkheim (1984)は、血縁 関係 や宗教論 、政治論 を展開 しなが ら、機械論的連帯では同質化が進み分業は未成 熟 のままである、 と主張す る。分業化 され 、細分化 され た個別作業は、能率、
効率追求の旗 印の もとで、次第 に単純化 され る。 その単純化 され た作業 は、経 営者側 に とって も労働者側 に とって も生産性 向上 とい う意味では、共 に利す る ところがある。 しか し時間の経過 と共 に労働者側 に仕事 にかんす る問題意識 の 皮相化、動機 づ け低 下、怠業 な どが深 く静かに浸透す る。 アメ リカの基幹産業 の1つである 自動車産業の凋落原 因の1つが、労働者 の労働意識 の低下にある ことが指摘 され てい ることを考 えれ ば、必然的 に もた らされ た結果 であるとい えよ う。
Durkheimによれ ば、分業には機械 的連帯 を意識 した分業の他 に、個 の意識 に 裏づ け られ た共同意識の高ま り、つま り個 と共 同 との相互支援的結びつ きを前 提 とした有機 的連帯 に もとづ く分業がある。 そ して この有機 的連帯では、社会 の構成 要素であ る各環節 (segment)が異質的であ り、なお かつ相互 に類似 し ていなけれ ばな らない。個 々人は固有の活動領域 を もち、なおかつそれ らの固 有活動が社会性 をもつ ことにな る。 ここに至 って分業が社会のダイナ ミズム と つながって くる。
制度化 :制度化が明示的 に現 われ る前後 の微妙 な変化動 向を、まず地域 内で起 る動 きに よってみてお こ う。地域や社会 は本来的に明確 な共通 の 目的や 目標 を もたない。 もつ として も精 々、他人 に迷惑 をかけない よ う、 ときに支 え合いな が ら、それぞれが 自分の生 き方 を探 る とい う程度 のあいまいな 目標 であろ う。
多少の誤解 を承知の 上でい えば、積極的 とい うよ りはむ しろ消極 的であいまい な共通 目標 、す なわ ち適度 の緊張感 を もちなが ら、楽 しく生活 できる場の提供 が地域 の共通 目標 になって こよ う。
地域 では主 (ある じ)の大 半がそれぞれ 自分の意思で しか も整合性 のない多 様 な 目標 を もって住んでい る。 そ うであって も住空間を共 にす るためには、異
特集 地域経 営の枠組 みとその主体
なった価値観や生き方、考 え方 をもったまま、ある程度の秩序 を守 ることが要 求 され る。ある種の維持 と変化の同時存在であ り、これが制度化の萌芽 となる。
秩序は次第に無秩序化 し、そ して新たなる秩序生成 に向か う。 この流れは均 衡や安定で も同 じことがいえる。す なわち、均衡‑不均衡一新均衡‑‑・、や安 定‑不安定‑新たな安定である。‑‑ゲルの弁証法で よく引用 され る正反合の 流れ とも、一致す る。新均衡 、新たな安定、上位 の秩序、正反か らもた らされ る合な どは、ある状態 とは異なった状態 を関係主体が社会的役割 を意識 しなが ら作 りあげてい くプ ロセ スであると考 え られ る。
新たな秩序や均衡 、安定を構築す るのに要す る時間は、そのダイナ ミックな 変態過程に参画す る関係者が、 どのよ うな思考や思想 をもち どのよ うな社会性 をもち、 どのよ うな才能、能力 をもってい るか どうかで まった く異なる結果 を 生む。いずれ にせ よ、変態過程で必要になるのは、ある状態か ら何 らかの事情 で異なった状態 を作 った り造 った りす る、変化の過程である。その状態の変化 過程の ことを制度化(institutionalizing)とい う。
制度化の基本特性 は、institute‑in‑(中に)+‑stitute(L.statutum(設置 さ れた もの)か ら、バ ラバ ラの状態 にあることや ものを一定の方向に秩序づける 約束 ごとにあることがわか る。 statue(彫刻) も語源 は同 じである。 日本語 の 制度は、法で定め られた ことを守 ることに重点がおかれている印象がある。
制度 は、本来、人間集 団が果たすべ き機能や役割の ことを表 してい る。 隣の 家 との境があま りな く音や匂いが遠慮な く侵入 して くる住環境 と、そ うではな く完全 に遮断 されてい る住環境 とではまった く異なった制度が必要 となる。経 済合理性最優先時代 に共通 に認識 されていた制度 と生命多様性維持時代 にもつ ことを認識 され始めた制度 とでは、共通に認識 されている正当な約束 ごとや考 え方が環境や状況によって大 きく異なって くる。
legitimacy(合法性 ) に も"正 当な"とい う意味がある。 両者 に共通 してい る のは、あ らか じめ先験的に決まってい るのではな く、事後 に必要に応 じて参画 者たちが試行錯誤的に決 ま りを作 ってい くダイナ ミズムがある、 とい うことで あろ う(powell& DiMaggio,1991) 。 制度では したがって破壊す るために作 り作 るために破壊す るとい う、相反す る事象 を交互に展開す ることが必要 となる。
制度化は、企業組織で も社会や地域組織で も必要であることが理解 できよ う。
ただ し後者 の社会や地域では、共通 目標 があいまいであ りしか も時間を測定す る明示的な基準や定規がないのが難点である。 しか した とえそ うであって も、
"暗黙の了解"は次の明示的な約束 ごとを作 る基 になるので、実現困難性 と同時 に決 して無視できない期待感や躍動感 とが併存す る。
地域経営の概念枠組み
先に定義づけた地域 をも う一度再録す る。地域 とは、
ヒ トが周囲を意識 し相互影響 を受 け与えなが ら自己の責任 の範囲で生計 をたてている一定の場 、 の ことである。
社会 との関連 :地域 と同様 、 日常的に使用 している類似用語 に社会があ り、両 者 は地域社会のよ うに併記 して使用 され ることもある。非常に大 きな くくりと して両者 を概念の広域度や複雑度か ら比べ ると、社会 >地域 となろ う。社会の 概念化 には、利害関係 中心の人間関係 としてゲゼル シャフ ト(GesellschaR)が、
また知人や友人、家族の よ うな どち らか とい うと友愛 中心の人間関係 としてゲ マイ ンシャフ ト(Gemeinschaft)が一般的に知 られ てい る。 そ して工業化 、近代 化 に伴 って後者が次第に後退 し前者 の人間関係 が主流 にな りつつあるとい う理 解が多 くなってきているよ うに思われ る。
ルーマ ン (1995)は、社会概念 を包摂 され る統一体であ りひ とつの包括概念 として とらえている。社会的な ものすべてをそれ 自身のなかに含んでい る。 コ ミュニケー シ ョンであるものすべてが社会 を構成す る。 この ことか ら社会はす べてを包み込んでいる自己準拠的閉鎖性 であ り、オー トポイエーシス的社会 シ ステムである、 とい うことになる。
社会の壁 を取 り払 っていけば、社会はすべてを包含す ることにな り、最終的 には世界社会(weltgesellscha氏)にまで広 が る (クニール ‑ナセ ヒ、1993). か くして社会は とてつ もな く大きな広が りをみせ る。地域 もその社会概念 と連動 してお り、原理的な限定枠 はない。 しか しこれではいつまでたって も地域 を経 営の対象 にす ることは不可能 になる。
ここで1つの有用 な ヒン トがDurkheim(1982)に よって提示 され てい る。彼 によれば社会 をマニフェス ト対象の組織の大 きさによって分類す ることを提案
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す る。 まず単一のセ グメン ト社会(single‑segmentsociety)の確認 である。少 な くとも最初のセ グメン ト内では完全な合体や合同(coalescence)が 可能 になる。
そ して経 験や能 力 を蓄積 しなが ら次第 に複雑 で多様 な層 を もつ 多重化社 会 (polysegmentary societies)‑向か う。
イ メージ としては、まず単純 な社会 ‑限定地域、つ ぎに若干複雑 な社会 ‑複 合地域、 さらに多重化社会 ‑仮想地域 とい う進化図式である。 しか も学習や経 験 を蓄積す るのに伴い、社会や地域‑の理解力や分析力の他 に、観察力や認識 力、直感力が次第 に高まって くる。 この ことによって従前は複雑で"他人主題"
であった地域 が 自己主題化 して くる (ルーマ ン、1993)。従前、操作不可能で あった地域の断面が視野に入 ってきて、操作可能 になる。 ここで相対的に縮減 行動が起 こる (ルーマ ン、1990)。つま り自分側の観察力の質が次第 に高ま り、
相手側すなわち地域 の操作範囲全体が拡大 し、透明度が増 し、要素の組み合 わ せ数が多 くな り同時に組み合わせの種類 も多様 になる。
地域経営の枠組み :以上の考察か ら地域経営の枠組み として① どこまでの"広 が り"を対象 にす るか、 とい う空間軸、② どの よ うな性質の"もの"を対象 にす るか、 とい う資源軸、③相互作用 を どの程度意識す るか、 とい う思考‑行動軸 の三軸構想 が浮 かび上が る。第一の空間軸 は狭い一広い (狭広)、第二の資源 軸 は同質 一異質 (同異)、第三の思考‑行動軸 は閉鎖 一開放 (閉開) で説 明で きる。空間軸ば ̀広が り"、資源軸ば ̀高ま り"、思考 ・行動軸ば ̀深 ま り"と呼称 す ることが許 され るであろ う。
重要なことは3つの軸はその程度がいずれ も相対的であるとい うことである。
地域経営に従事す るヒ トつま り主体が どのよ うな特性や価値観、能力、人的ネ ッ トワー クな どをもってい るかで、た とえ客観的に同一の測定位置 にあるとして も、その とらえ方は大 きく異なって くる。その ことを前提 に した うえで、図1 に示す よ うに三軸がそれぞれ どの よ うな特性 をもっているかによって、地域経 営 に対す る概観 図をイ メー ジす ることは可能であろ う。基本モデルは a・狭‑
同一 閉、b.狭一 同一 関、C.狭一 異一 開、d.狭一 異一 閉、e・広一 異一 閃、f・広一 異一 閉、 g.広一 同一 開、h.広一 同一 閉の 8つ ある。軸特性 を個別 に検討 して お こ う。
図 1 地域経営の概念枠組み 一 三軸構想
空間軸 : 狭域 一一{). 企.一・一年 ‑ 広域
資源軸 : 同質 異質
例示
:
○ 狭‑やや同一開 △やや広‑やや異‑閉 0広‑異一開【空間軸】地球規模 で求 め られ てい る21世紀 の資源管理 の視点か らみてみ よ う。
まず空間軸の狭一広では、資源 の偏在 を解消 し有効利用 を図 るために、経営の 対象 となる地域 の幅 を可能 な範 囲内で広 げなが ら連携 を とることが望 まれ る。
特 にバー ジン資源 を中心 に した利用 を特定領域 に限定 して行 うのは、20世紀型 の地域経営 といえるだろ う。本来海洋や地下資源 は地球固有の資源 であって特 定地域や 国家 に所属す る資源 ではないはず である。地域 を超 えた広域空間での 共有一 共用の発想 が今、求 め られ てい る。
Crane(2008)らは生命 多様性 の視 点か ら特 定領域 を超 えた(non‑territorial)義 務 を伴 う生態市民性(ecologicalcitizenship)のあ り方 を論 じてい る。保有概念 は どち らか とい うと希薄である。生態 を意識 した市民概念 は、本稿 での地域経営 の主 (あ る じ) で ある地域経 営者 と相似 であ る。 またTakacs(1996)は生物 多 様性(biodiversity)に とって、今必要なのは境界 を引き直す境界設定作業である、
と述べてい る。本来、動植物 は 自分の生命維持 に必要な領域 をみずか ら設定 し てお り、今西 (1994、2002)流 にいえば棲み分 けをわきまえてい るともいえる。
[資源軸]次に資源の同質一異質 を扱 う資源軸では、技術や特許 、情報、アイデ ィ ア、暖簾 、ブ ラン ド、文化 な どが対象 とな る。資源利用 は同業他社 間で も可能 であるけれ ども、異質 な資源 の組み合 わせ か ら創 出 され る製 品開発やサー ビス 付加価値 の領域 は、同質や類似資源 に比べ る とは るかに幅の大 きな しか も多様 な広が りが期待 され る。 自地域 と異 なった資源 を保有 してい る地域 との提携や 連携 は、新奇性 を伴 う製 品化 の可能性 を一層増幅す る。 具体的には戦略提携 の
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形で異質 な資源 同士 を共 同利用す る。
空間軸 と連動す る資源 管理で大切 な ことは、その資源 が経済価値や貨幣価値 を明示的に生むか ど うかではな く、生態系維持 に どれだけ寄与 してい るか とい ぅ視点か ら価値 を測 るべ きであろ う。特定価値 に限定 した資源利用 は、環境変 化‑の対応力 を削 ぎ、ひ弱な生命 力を維持す ることに しか貢献できない。
特定資本系列や特定仕入販売ルー トに限定 したいわゆる縦型企業系列群 が、
景気後退期 にいかに脆弱 さを露呈 したかはい うまで もない。針葉樹林 の"冷 た い"美 しさではな く、雑然 とした雑木林や落葉樹 の森 がいかに多様 で"温かい"
美 しさを提供 して くれ るかは周知 の とお りである。
[思考一 行動軸13つ めは思考 一行動軸であ る。 みず か らをアイデ ィア ・ジェネ レー タ として情報収集 にある程度成功 した として も、つ ま り受信機能 の性能 が いかに良質で も、発信機能 が一般普及品では受信機能 もやがて劣化 して しま う。
関係者 を固定 しに くい地域経営では、思考一行動 では、ア ンテナ をで きるだけ 高 くたて、いつ も食欲 に情報収集す る。先の2つの軸 との連動では広域空間や 資源異質性 を意識 しなが ら希少資源 のオープ ン化 を試 み ることが肝要である。
企業秘密 に相 当す るR&Dでは、優秀 な人材 と巨額 の資金 を投入 して新製 品に 結びつ くよ うな開発 を中央集権的に秘密裏 に進 めることが一般的 に行 われてい る。 しか しこの場合 、社 内に優秀な逸材 がいていつで も親孝行 して くれ るので、
安心 して任せ られ るとい う、非現実的な前提 をおいていることが多い(Chesbrough, eta1.,2006)。
現実の世界では、地域 の外側 の様子や先進事例 、ユニー クな発想 な どその大 半は外 か ら入 ってい ることが多いのではないだ ろ うか。すべて 自地域 内、 自企 業 内で開発す る とい うよ うな閉鎖的思考‑ 行動ではな く、開かれた行動様式 を とお して収集 した情報 に相乗 りした り、加 工処理 をほ どこ した りして再び発信 す る、開放的な思考‑行動が地域 の活性化 に とってきわめて有用だ と思われ るo 連動 、共鳴パ ター ンでは、効率が良 く一層高い相乗効果が期待 できよ う。
一種 のネ ッ トワー ク行動 は地域経営 に とって、有力な戦略展開の方法で もあ る。地域経営の主体である直接 、間接 の関係者 は、異質で多様 な情報つ ま り‑‑ 種のごみ箱情報 を地域内にもちこみ、その応用性 を探 る。カオスやエ ン トロピー の積極導入 であ る(Rintin,1980)。 ネ ッ トワー カー としての機能 を もつ人的資源
を地域 間ネ ッ トワー ク構築に役立て、広域地域経営のきっかけをつ くる。 この ときいつ も思考一行動の順である必要はな く、行動一思考で もよい ことになる。
地域経営では固定的な仕事の役割 はな く、ある意味で無責任 で出入 り自由の 雰囲気がある。逆 にいえば誰で もが参画でき自分の得意技で 自分の役割が 自然 に形成 され る面 白さがある。 ある意味で ウイキペデ ィアのよ うな辞書作 りを地 域で展開できる楽 しさもある。
3つの軸はそれぞれ独 自していてかつ連動 している。そのため1つの軸が他 の軸 と逆の方向を示 した場合、プラス とマイナスが相互に減殺す る働 きをす る。
効果は半減す るので、相互に支援 し合いなが ら右方 向‑のシフ トを心がけるこ とが肝要 となろ う。
主体性のない地域経営者特性
地域経営の基本特性 は、誰で もが参画できるとい う自由度 とその 自由度 に見 合 う責任 とが均衡 しているところにある。その一方で、経営に参画す る義務 は 必ず しもない とか、ゲゼル シャフ トの世界だけで も十分 に生 きていけるので煩 わ しい こと‑はできるだけかかわ りた くない、 とい う消極的で利 己的な発想や 行動が見え隠れす る。町内会の行事や作業では、 日常的に発生 してい る現象で
もある。
先の図1で示 した地域経営の三軸でいえば、狭い空間に留 まってお り、身近 な資源消費で満足 してお り、思考‑行動 もどち らか とい うと閉鎖的なのが、典 型的地域経営特性 である。 も う少 し核心部分 を探 ってみ よ う。
経済発展途上国か ら先進 国に移行す る過程では、モ ノを沢 山つ くり、売 り、
消費す ることで、つま りロジステ ィックシステムの進歩発展 に何 らかの形で貫 献す ることで経営主体の役割 を果た してきた。無意識 の うちにモ ノを沢山手に 入れ ること、そのためにはカネ をできるだけ多 く儲 けること、賓沢にモ ノを利 用す ることが 自然 に身 に しみて しま う。その過程では、経済価値や貨幣価値の 追求が限 りな く最優先 され る。
企業 も個人 も競争原理のジャングル に入 り込み、意識す る しないに関係 な く
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働 き働か され る。お金や物 に代表 され る物的価値 は、その保有に限界がな く、
い くらで も欲 しくなるとい う一種の麻薬効果がある。言い換 えればいつ も不満 足の状態、欲求不満の状態が現出す る。その結果、メタポ リック症候群は個人 のみな らず家庭、職場、地域、社会、国家、地球全体 にまで広が りをみせてい る。
1つ例 をあげてみ よ う。 日本 には、おめでたい時に"鯛"を食材 として使 う風 習があった。結婚式や誕生 日な どで しか食べ られ ない特別 な魚 だった。それが いつの間にか、いつでも食べ られ る食材にな りお昼の弁当のおかずの1つになっ ている。 めでた くな くて もめでたい鯛 がいつで も食べ られ るので、感謝の気持 ちは消えて しまった。
需要側 の消費が華美 にな り賓沢にな り、モ ノを大切 にす る気持 ちが失せ て し まったことの背景に、供給側の仕組みにも問題があることを指摘 してお きたい。
店頭 に並ぶ 日用品はいつ もあふれている。すべて購買 され、消費 されていれば まだいい として、果た してあの商品の山は どこ‑消 えて しま うのであろ うか。
しか も生鮮食料品 コーナーでは、外国産がひ しめき合 ってい る。需要があれば 必要なだけ供給す るのが経済の需要一供給バ ランスだ とすれば、 この増量スパ イ ラル は どこまで続 くのだろ うか。近代人はあ り余 るモ ノの中に埋没 し身の丈 を忘れ、 自らが"Lもふ り"の牛肉や フォアグラにな りつつあるのか もしれない。
生活の場である地域 に 目を向けず にただひたす ら経済性 を追求 してきた背景 には、企業経済中心主義 ともいえるよ うな ことが部分的に影響 しているよ うに 思われ る。企業は何 らかの生産活動 とそれ に伴 う販売活動 を展開す る。雇用が 促進 され、 自治体には税収の形で資金が還元 され る。一般住民は意識 しな くて も生活基盤 が整 え られ、一定の安定 した生活 をす ることが可能 となる。つま り 地域や社会にある特定組織 か ら恩恵 を受 けているに もかかわ らず、地域の経営 には参加 していない とい う構 図ができあが る。 自主性や能動性、積極性 を欠い た利 己的でわがままな"受動型"人間が形成 されて しまった、 とい うことになる。
地域経営 を支 える主体的関係者の一人 として、地域 に居住す るヒ トそれぞれ が果たすべ き役割がある。それ を次に検討 してみたい。
連帯指向の地域経営
明示的な経営主体のいない地域経営、た とえいた として も従来型の特定地域 だけにのみ強い 関心を示す利 己的経営主体では地域経営は、おぼっかない。 し か も特定少数ではな く不特定多数の地域経営者 は主体の明示化が難 しい。それ ばか りでな く、作業や機能の責任 を伴な う設計者す ら分か らないので、地域の 経営は困難 をきわめる。
しか し植物や昆虫類 の世界に棲み分 けがあるよ うに、情況か ら判断 してみず か ら意思決定 し周囲に声 をかけ、連動 しなが ら主体固有の役割 を遂行す ること は可能であろ う。得意技をもった ヒ トが リーダーシップをとりその リーダーシッ プの もとにフォロワー シ ップやパー トナー シ ップ、ステ ユワー ドシ ップ、サー バ ン トリーダーシ ップ特性 をもつ ヒ トが参集す るとい うシナ リオである。 しか もそのシナ リオは創発的にランダムにたちあがる。共に地域経営者の役割 を担 う。地域経営に不足の資源 は他地域か ら連携 を とりなが ら調達す る。大学人の 頭脳 も地域の資源 となる。本人の了解があれ ば、智恵の貸 し借 りは 自由にでき る。結合や着脱 は仕事 ごとに繰 り返 され る。 それ はあたか も星座(costellation:
Vanhaverbeck,et,a1.,2006)やネ ッ トカフェのイ メージに近い。
以下では空間の広域性 、資源 の異質性 、思考一行動の開放性 を意識 した連帯 指向の地域経営 に必要な要件 を探 ってみ よ う。本稿 で用いる連帯(Solidarity)に は、solid(L.=soll'dusかたい、堅実な、信頼 できる、健全である、充実 してい る)の よ うな意味がある。 先 にふれたDurkheimの機械的連帯 に対 して、有機 的 (organic)連帯は異質な人間同士の特別の関係 をとお した結合のことを意味す る。
それぞれの義務 を遂行 しなおかつお互いの相互依存関係 を引き出す ことを発想 の念頭 にお く。 同質ではな く異質が尊重 され る。
社会的連帯はま さしくこの考 えに則 ってい る。Durkheimによれば分業が機械 的に処理 され るのは、未開発社会に固有の特徴であるとい う。 これ に対 して有 機的連帯あるいは社会的連帯では、社会か らなん らかの利益 を得ている構成員 全員が社会 に対 して責務 を負 う。
連帯に関す る歴史的事件 としては1989年 にポー ラン ドで起 きた東欧初の 自由 選挙が有名 である。 当時共産政権下にあったポー ラン ドで 自主管理労働組合の
特集 地域経営の枠組みとその主体
「連帯」が 円卓会議 の席 についた。 その合意 に も とづ き下院 の一部 と新設 され た上院 の全議席 で 自由選挙 を実施 したo その結果 、議席 の大半 を 「連帯」が 占 めるこ とにな り、共産体制 は崩壊 に追い込 まれ た。
連 帯 で は個性 の存在 そ の ものが問 われ る こ とにな るoHechter(1988)は連 帯 の特徴 を、
集合的な 目的に貢献す る個 々の メンバーの私的資源 の平均的割合が増大す るのに伴い、
集団の連帯の強 さは大 きくなる、
としてい る。 この概念化 に よれ ば、社会的連 帯 あるいは本稿 の主 旨でい えば地 域連帯 のダイナ ミズムが大 き く実行 に移 されれ ば され るほ ど、 ある意 味では感 情 の強 さが影響す る。 関係 主体の意識 が連帯の成果 を大 き く左右す る。以下で、
連帯の個別特性 を3つ の異 なった視 点か ら検討す る。
公 共性(publicity):あ る地域 で生計 を営 む ヒ トす なわ ち地域 の経 営者 の活動 には、それ ぞれ が何 らかの生産 と消費行動 にかかわ ってい る。 その生産 、消費 活動 の過程 で何 らかの資源 を消費す る。 その資源 のなか には、社会的 な共通 の 資源 が含 まれ てい る。具体的 には大気 、森林 、土壌 、水 な どの 自然資源 、道路、
橋 、鉄道 、ダムな どの社会資源 、それ に教育、医療 、介護 な どの制度資源 とい ぅ3つ が含 まれ る (家木)。 いずれ も公 共性 の高 い資源 で あ る。 しか もこれ ら は ミク ローマ ク ロ リンクの論理 を使 えば、全体 としてつ なが ってい るこ とを忘 れ てはな らない (Alexander,et,a1.,1987)。
しか しなが ら一端 、家や事務所や公 民館 、ホテル の部屋 、飲 み屋 な どの建物 で資源 を囲 って しま うと、内 と外 との分割論理 が大手 を振 って歩 きだ し、 ウチ に入れ た資源 の私有化 が始 ま る。01・kosとい う家 の概 念 は消費 のみ で はな く、
本 来、何 らかの生産活動 とも連結 してい る と考 えるべ きであろ うoハバーマ ス (1994)のい う公 共世界 とのかかわ りを意識す る こ とに よって、 た とえ私 有 の 世界 にいて も公 共の思考が芽生 えて くるのではないだ ろ うか。 その意 味では私 生活 と公共生活 とは本来切 り離すべ きではな く私‑ 公 生活 と連動 させ るこ とが 求 め られ てい る。 地域経営 の三軸 でい えば、公共性 は空間軸 の広域性 、資源軸 の異質性 、それ に思考 ・行動軸 の開放性 と関係 して こよ うo
間主観性(intersubjectivity)=シュ ッツ (ブ ロイ ダーセ ン、1991) の間主観性 では 自我 の世界 と他者 の世界 とがお互い に経験 を共有 し、解釈 し、理解す るこ
とが求め られ る。つま り相互作用 を通 じて相互理解 を高めてい く行動 を とるこ とが期待 され る。 しか し実際には、他者理解 はそ う容易ではない。地域経営の 主体 と主体 との間では、当初 よそ者扱い され る。 しか し情報交換 を続 けてい く うちに次第に理解度が深 くな り、共通解釈 も可能 となる。 したがって この間主 観性 にはかな り高度な判断力 と理解力、それ に解釈力が必要 となる。
自分の能動形 と他者の能動形、そ してその他者 の能動形 を とお して 自分が経 験 され解釈 され る。他者 も自分の行動 を とお して経験 され解釈 され る。 この よ うに間主観性ではお互いが共通す る世界 を もっ ことができる。開放的な雰囲気 のある地域での異質な情報や資源 との出会いは、ある意味で個人の創造性 がそ の地域内部の他者 によって促 され る。 したがって間主観性 は地域や社会集団の 組織化の進化 と密接 に関係 して くる (ヴァイ トクス、1996)。
自我の世界について も う1つふれてお きたい。それは、今 ある状態 と異なる も う一人の 自分作 りである。典型的な例 をあげれば、今 ある自分 を中心にいる 主流 とす る。 どち らか とい うと閉 じた世界で完全な情報に囲まれた、 自己満足 の世界である。やがて世界の視野が狭 くな り、部分が全体であるとい うよ うな 錯綜す る世界の住人になって しま う。 この よ うな懸念 に気づいた ときには、 も う一人の 自分 を周辺 にお くことによ り中心にい る自分 を主観的に観察す ること がで きる。 む しろ周辺 か らの参画 を正 当化す る(Lave&Wenger,1991)。 なぜ な らば周辺は未完成であ り、不十分な仕組み しかないか らである。
周辺 にい る自分 も中心にいる自分 も共 に第一人称単数である。両者 の間に距 離や隔た りがあれ ばあるほ ど、新 しい 自分発見に結びつ く。新規の経験 を伴 う 自己発見型学習であ り、 自己探索型学習で もある。 この学習行動は社会や集団、
地域 との関連で展開可能である。個人学習同士の経験、そ してその解釈 と共有 化、 さらには学習世界の共同化‑ と進む。地域経営の三軸では間主観性 は広域 性 と開放性 を基盤 として、相互の異質性 を高めそ して上方向の"高質な同質性"
‑ と昇華 させ る準備 に入 る。
過程性(processing):地域経営では公 と私 とが混在す る。仕事系 と人間系 と の混在 といって も良いか もしれ ない。 目的は必ず しも明示的ではない。 目的の あいまい性 、行動の意味不鮮 明性 な どは、過程論 に特有の現象で もある。
このよ うな混沌 とした状態 を対象 とした経営に とって有用なのは、大型のシ
特集 地域経営の枠組 み とその主体
ステムを設計せずに小 さなサブシステムを数多 く準備 し、そのサブシステムの 前後 に着脱可能な要素を用意す ることであるoできあがったサブシステムか ら 用途 を事後 に考 えた り、手元にあるセ レンデ ィピテ ィか ら目的優位性 を探索 し た りす ることは、一見無駄 なよ うで無駄 にはな らない。創造性 はつねにこの よ うなランダム性 か ら生まれ ることが証明 されてい る。過程哲学のホ ワイ ト‑ ツ ド、社会 とネ ッ トワー クとの相対性 を論 じた ラ トウール、社会 システムのオー トポイエー シスや再帰性 を研究 してい るルーマ ン、決定プ ロセスや組織の研究 を して い るジ ェイ ム ス ・マ ー チ 、 組 織 化 (organizing)や セ ンス メイ キ ン グ (sensemaking)の研 究者 である ウェイ ックな どは、すべ て この過程 アプ ローチ に属す る(Hemes,2008)。
過程性では関係づ けの他 に、測定 よ りも理解 、データよ りも概念、発見 よ り も選択、ラベルづ けよ りもかき混ぜの よ うな作業行動が適 してい るといわれて い る。一種のブ リコラー ジュ(bricolage)の様相である。バ ングラデ シュで貧 し い ヒ トの救済活動か ら始 めて、農村の人々の 自立を支援す ることを とお して貧 困軽減 に寄与 したユヌスのグラ ミン銀行 は、 この過程性 アプ ローチその もので あろ う(エヌス、2009)。 まず地域 に住む人々の救済か ら始まった。最初か らグ ラ ミン銀行の設立を先験的に指向 していたのではない ところに注 目したいo
過程性 はある意味で 目的のない旅の よ うな ものであろ う。 まず旅 に出ること によって新 しい 自己発見がある。そ してその発見を共有できるきっかけができ る(Natanson,1970)。可能性 を将来に先送 りす るきっかけを作 って くれ る。地 域経営の三軸では、空間の広域性意識 、資源 の異質性探索、思考 ・行動の開放 性指向 といずれ も、貢献度 は高い。
おわ りに
経営学の大 きな うね りは、営利 を第一 目的 とす る企業体か ら、 しない企業体 の方向‑大 きく舵 を切 り換 えつつあるよ うに思 う。学会誌のみな らず商業雑誌 や新聞で もソー シャルエ ンタープライズや コ ミュニテ ィビジネ ス、 ソーシャル ビジネス、社会起業家の文字が見出 しを飾 っている。本稿 では経営の対象 を枠 のあいまいな、 しか もとらえどころのない地域 に限定 してその操作化 を試みた。
その過程 で、特定地域 内で生計 をたててい る人達全員が経営 とい う作業 に従事 す る、 とい う条件設定 を した。 その背景 に、分析対象 が企業 であろ うと地域 で あろ うと経営 とい う概念が共通 に適応 可能である とい う命題 をおいた。
地域経営の分析枠組み あるいは概念枠組 み として、空間軸、資源軸 、思考 ・ 行動軸 の三軸 を とった。 そ して この三軸 を使 って、従来型 の地域経営分析お よ び連帯性 を意識 した新 しい地域経営の模 索 を試みた。地域経営 に参画す る主体 は、認知マ ップ作成時の合理性 、状況の解釈性 、資源利用 の公共性や共用性 な どに精通す る必要 のあることが明 らかになった。 この思考過程 ではPfeffer(199 7)か らの影響 を受 けた。地域経営の旅 には経営学の他 に社会学、哲学、生態学 の領域 か らも智恵 を借 りなけれ ばな らない ことも明 らかになった。予想 も しえ ない よ うな危険や逆に幸運 に遭遇す るか もしれ ない。 これ も旅 の楽 しみである。
ある種のセ レンデ ィピテ ィ探索 と実践の旅 で もある。
社会や地域 の よ うな広域空間を対象 とした経営学 に とって、また生命 体の よ うな生 き物 としての組織や企業 を も分析対象 にす ることが要請 され てい る経営 学 に とって、今後取 り組 まなけれ ばな らない課題 が幾つかあるよ うに思 う。以 下で列挙 してお きたい。
・進化論的認識論(vollmer,1990):特に地域経営の主体である経営者の視点から
・社会生態学(Young,2008):特 に社会学 と生態学 との接点か ら
・人間社会 システム と生態系 との共進化(Marten,2001):特 に景観 の視点か ら 経営学 は どこ‑向か うのであろ うか。今 回の試みは社会経営学の理論構築‑
向か う小 さな第一歩であった。 闇の向 こ うに若干 の明か りがみ えた よ うな気 が す る。その明か りを頼 りに手探 りで少 しずつ先‑進む ことに しよ う。
注
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特集 地域経 営の枠 組 み とその主体
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