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誤 っ た 行 政 行 為 の 取 消 の 可 否 お よ び 国 家 賠 償 責 任

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   同志社法学 六七巻二号

三八五七三九

︱︱二項道路の判定に関する判決例を題材に︱︱

           

はじめに

  行政庁が何らかの行政行為を行う際に判断を誤り、違法な行政行為を行うことがある。行政主体といっても、個々の職員が限られた時間と予算の中で一定の行為をせざるを得ない以上、何らかの過誤を起こすことは避けられない。違法な行政行為を行ったことが後に判明すれば行政主体みずから誤りを正すべきことは当然である。しかし、違法な行政行為であっても、いったんそれが行われた場合には、行政行為の相手方はもちろん、そうでなくてもその行政行為が正しいものと信頼し、様々な利害関係を持つ者も出てくる。このような場合に行政行為を取り消すことは、その行政行為を信頼した国民の利益を害することになる。それ故、違法な行政行為であっても、取消しが許されない場合もあるという

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   同志社法学 六七巻二号

三八六七四〇

ことが議論され、判決も出されてきた。また、仮に取消自体は許されるとしても、それによって損害を被った者がいる場合にその者に対する国家賠償責任が生じる場合もあり得る。本稿においては、筆者が訴訟代理人として関与した二項道路の判定をめぐる事件を題材にこれらの問題を考えてみたい。

事    例   原告は、平成一七年二月二日、築後二五年程経過した中古住宅とその敷地(以下﹁本件土地﹂という)を購入したが、本件土地は公道には接しておらず、私有地の通路(以下﹁本件通路﹂という)に接していた。本件通路は、南北に長く伸びる幅員約二・五メートルの道で、北端において公道に接続しているが、南端は建物の敷地に接して行き止まりとなっている。そして、本件土地の西側が本件通路の東の一部に接している(末尾の概略図参照)。

  本件通路の属する区域に係る特定行政庁であった京都府知事は、昭和二五年一二月八日京都府告示第八二○号により、基準時(昭和二五年一一月二三日)現在、同区域において、現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満一・八メートル以上の道で、袋路を除くものを一括して二項道路に指定した。その後、昭和四六年一二月二四日京都府告示第七四八号(以下﹁本件告示﹂という)をもって、昭和二五告示を廃止し、上記の﹁袋地を除くもの﹂との指定要件を撤廃し、改めて、基準時現在、同区域において、現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満一・八メートル以上の道を一括して二項道路に指定した(以下﹁本件指定﹂という)。

  そして、京都府山城北土木事務所所属の建築主事は、本件通路は本件告示の要件を満たす二項道路であると判定し、本件通路に接する土地は接道要件を満たすとして昭和五六年、五七年、平成五年にそれぞれ建築確認適合処分を繰り返

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   同志社法学 六七巻二号

三八七七四一 した。また、同事務所所属の職員は、平成一○年一一月、本件通路に接する土地上に建物を建築することを予定している者から、本件通路が二項道路に該当するかどうかに関する道路調査及び道路判定の依頼を受け、二項道路に該当する旨の判定も行った。

  また、平成一○年六月に行われた建築基準法の改正によって、指定確認検査機関による建築確認・検査制度等が創設され、指定確認検査機関は適正な確認検査を実施するために必要な事項について特定行政庁に照会することができることとされた。そして、旧建設省住宅局長は上記改正に伴い、各都道府県知事宛の通知を発し、改正法の施行後、速やかに指定確認検査機関に対する円滑な情報提供ができるよう書類の調整等の措置を講じることを要請した。これを受けて、京都府建築指導課長は、平成一〇年一二月、京都府の各土木事務所長宛の﹁建築基準法第四二条に規定される道路に関する台帳の整備について﹂と題する通知を出し、建築基準法四二条の道路に関する情報について、迅速、正確に回答できるよう、あらかじめ台帳に整備しておく必要があるとして、平成一一年六月を完成目標時期として、都市計画区域内の建築基準法四二条に規定する道路を対象とする道路台帳を作成するよう依頼した。

  山城北土木事務所職員は、上記通知を受けて、平成一二年頃までに同事務所の所管区域についての道路台帳を作成した。これは、八幡市の住宅地図に、従前の建築確認又は道路判定の結果に基づいて、二項道路は赤色、道路でない部分は黒色、建築基準法四二条一項二号所定の道路は青色、同項三項の道路は黄色に色分けして記入する方法で作成された。閲覧用の写しは﹁道路判定用  八幡市﹂との表題が付され、同事務所に据え置かれて一般の閲覧に供された。この道路台帳には、本件通路は二項道路に該当する私道として赤色で表示されていた。

  ところが、山城北土木事務所職員は、平成一七年一一月二一日、本件通路の隣接地及び地上建物の売買及び建替えを検討している者から、本件通路につき、道路種別の判定依頼を受けたため、基準時に近い時期の航空写真を取り寄せて

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   同志社法学 六七巻二号

三八八七四二

本件通路付近の状況を確認したところ、一面田であり、道らしきものは見受けられず、建築物の立ち並びもないことから、同月二八日、本件通路につき、二項道路には該当せず、道路ではない旨の判定を行い、その旨を上記判定依頼者に回答するとともに、本件道路台帳の赤色で塗られていた本件通路該当箇所を道路でないことを示す黒色で上塗りをして、訂正した。

  原告は、上記のとおり、平成一七年二月二日、本件土地および地上建物を購入したが、その際、仲介業者の作成した重要事項説明書(宅地建物取引業法三五条)には、本件土地は二項道路に接する土地であると記載され、原告もそれを信じた。原告は平成二二年六月、本件土地および地上建物を第三者に売却し、その代金で移転先の不動産を購入する計画を立て、同月、移転先の物件を購入する契約をしたが、本件土地および地上建物の売却の仲介を依頼した不動産業者から、本件通路が平成一七年一一月二八日以降は二項道路としては扱わないとされたことにより、本件土地は建築基準法四三条に定める接道要件を満たさない土地となり、将来、建築確認を得ることができない不適格物件となってしまったと聞かされた。このため、原告は、予定した金額では本件土地および地上建物の売却をすることができなくなり、売却を諦めた。他方、移転先の物件の購入契約の不履行を回避するため、一時的に借入れをして決済し、ただちに売却したが、差損が生じ、損害を被った。

訴訟の推移

  このため、原告は京都府を被告として京都地方裁判所に行政訴訟と国家賠償請求訴訟を提起した。行政訴訟としては、主位的に本件通路が建築基準法四二条二項道路であることの確認を求める請求(行政事件訴訟法四条後段の実質的当事者訴訟)を、予備的に京都府知事の本件通路を二項道路に指定する処分が存在することの確認を求める請求(同法三条

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   同志社法学 六七巻二号

三八九七四三 四項の抗告訴訟としての無効等確認訴訟)を掲げた。また、国家賠償請求訴訟として、本件通路が二項道路に該当しないとすれば、京都府の職員は職務上の義務に違反して、本件通路を二項道路として道路台帳に記載して閲覧に供したものであり、これを信頼して本件土地および地上建物を購入した原告に損害を与えたものであるとして、国家賠償法一条一項に基づき損害賠償請求を予備的に加えた。

  しかし、京都地方裁判所は平成二五年六月二〇日、いずれの請求も棄却したため、原告は大阪高等裁判所に控訴したが、同裁判所は同年一二月二〇日、控訴を棄却した。更に原告はこれを不服として最高裁判所に上告および上告受理申立てをしたが、最高裁判所は、平成二六年六月三日、上告棄却、不受理の決定をした。

いかなる訴訟形式によるべきか

  本件のように包括(一括)指定の方法により二項道路の指定がなされた場合 )1

(に、その指定に処分性が認められるかが問題となるが、最判平成一四年一月一七日(民集五六巻一号一頁)は、処分性を認めた。この事件の原審は、同指定は﹁不特定多数の者に対して一般的抽象的な基準を定立するものにすぎないのであって、これによって直ちに建築制限等の私権制限が生じるものでないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当らない﹂としたが、最高裁は﹁本件告示によって二項道路の指定の効果が生じるものと解する以上、このような指定の効果が及ぶ個々の道は二項道路とされ、その敷地所有者は当該道路につき道路内の建築等が制限され(法四四条)、私道の変更又は廃止が制限される(法四五条)等の具体的な私権の制限を受けることになるのである。﹂という理由から処分性を肯定した。

  この判決に対しては、学説から有力な非難が寄せられており、金子正史教授は﹁告示による包括指定は、ある種の立法行為と解されないだろうか。・・・二項道路であるか否かは、基本的には建築確認申請に対する建築主事の有権的解

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三九〇七四四

釈があって初めて明らかになるのであり、この有権的解釈である建築確認不適合(あるいは適合)処分を争うべきであろう。﹂と批判されている )2

(。

  包括(一括)指定の処分性を論じることは本稿の目的ではないので、ここでは深く立ち入らないが、二項道路に関する紛争の実態からすれば金子教授の上記批判は正鵠を得ているように思われる。ある通路が二項道路に該当する場合はまさしく最高裁のいうように包括指定の効果として私権制限が加えられることから、国民の権利ないし法律上の地位に具体的な法的効果を与える行政庁の行為(最判昭和三九年一〇月二九日  民集一八巻八号一八〇九頁)といえよう。しかし、それは結果として二項道路に該当すると判断された場合にそういえることであって、二項道路に該当すると判断される前においては私権制限の有無は全く不明といわなければならない。建築確認申請に対する処分の判断において、当該通路が二項道路か否かの行政庁の有権判断が示され、はじめて具体的に私権制限が現実的な問題となる。そして、特定の通路について二項道路指定処分の確認を求める場合に、審理の結果、二項道路に該当すると認められれば、行政庁の指定処分があったということが観念しうるが、その逆の場合には問題の様相は異なってくる。審理の結果、二項道路の要件を満たしていなかったという場合に、そもそも当該通路には指定処分そのものが存在していなかったことになる。告示という形式で包括(一括)指定が存在したことは明らかであっても、審理の対象は、当該通路について指定処分があったか否かということなのである。それ故、この場合には、当該通路に二項道路の指定処分は存在してなかったのであり、処分性の存在を前提にその有効、無効を論じることがはたして正しいのか、疑問が生じてくる )3

(。

  そこで金子正史教授のいわれるように﹁有権的解釈である建築確認不適合(あるいは適合)処分﹂あるいは道路判定処分を争うということが正しいというべきであろう。ただ、建築確認申請をしない場合であっても、当該私道が二項道路かどうかはっきりさせたい場合が現実的にはあるのであり、このことをどのように考えるかは問題である。たとえば

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   同志社法学 六七巻二号

三九一七四五 通路に面する土地を売買するに際しては、その土地が接道義務(建築基準法四三条)を満たすか否かは重大な問題であることから、売主とすれば、売買対象土地が接する通路が二項道路であることは明らかにしておきたい。本件訴訟がまさしくそのような場合であった。このような場合は、情報提供として道路判定を依頼する方法もあるが、道路判定は情報提供行為に過ぎず、行政処分とは言いがたいので、端的に当該通路が二項道路に該当するか否かを訴訟において明らかにする途を認めることが最も紛争の解決に適している。

  前掲の最高裁判決は、告示に処分性を認めることで二項道路か否かを明らかにする途を開いたということでは評価できるが、そのためであれば処分性を認める必要はなく、実質的当事者訴訟を肯定すれば良いのではなかろうか。包括(一括)指定の処分性は否定しながら、公法上の法律関係に関する確認その他の公法上の法律関係に関する訴訟(実質的当事者訴訟)として訴え提起の途を認めるべきであろう )5

)(4

(。

  原告は既述のとおり、実質的当事者訴訟を主位的請求とし、行政処分無効等確認訴訟を予備的請求とした。本件は、行政庁が二項道路の要件を欠くと主張することに対し、二項道路であることの確認を求める事案である。しかも、原告の主張によっても、基準時において建築物が立ち並ぶという要件を欠いていることを認めながら、信義則の観点から、二項道路と扱うべきであると主張する事件である。そして、本件に関して行われた行為は、数回の建築確認適合処分と道路判定において、本件通路が二項道路であるとの判定および道路台帳への記載である。つまり客観的には本件通路は二項道路の要件を明らかに欠いていたのであるから、包括指定によって本件通路について行政処分があったとは言えないのではないかという疑問が払拭できなかったことから、処分を前提とする抗告訴訟に絞ることは躊躇された。

  また、実質的当事者訴訟とすべきであるなら、行政事件訴訟法三六条の補充性の要件を厳格に考えると、行政処分無効等確認訴訟は不適法な訴えということになりかねない。前掲最高裁判決は、同法三六条の要件も満たしているとした

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三九二七四六

が、それは処分性が認められている場合であり、本件においてはなお議論の余地があった。そこで、原告は裁判所によって処分性が否定される場合に備えて、実質的当事者訴訟を主位的請求とし、行政処分無効等確認訴訟を予備的な請求としたのであった。

  しかし、裁判所は一、二審とも行政訴訟の形式については何ら触れることなく、いずれの請求も棄却したことから、この点に関する裁判所の判断は示されなかった。

過去の道路判定を覆すことの問題

  本件通路は、基準時において包括指定の要件を欠いており、二項道路に該当していなかったことに争いはない。しかし、過去数回にわたり、本件通路が二項道路であるとの行政庁による判定がなされ、一般閲覧用の道路台帳にも一定期間、二項道路であると記載されていた。

  原告は、このような行政庁の判定を信頼して、建築基準法の道路に接する土地であるという前提で土地および建物を購入した。ところが、その後、行政庁は、他の者から道路判定依頼を受けた際に、はじめて航空写真を取り寄せて調べた結果、本件通路が二項道路の要件を欠いていたことが判明したとして、道路判定を覆らせた。そこで、行政訴訟において、いったん二項道路であるとした道路判定を覆らせることが許されるか否かが争点となった。

  この争点がストレートに行政行為の取消の可否の問題であるかは疑問がある。本件においては原告を名宛人とする行政行為はなされていない。過去数回行われた本件通路に接する土地についての確認建築適合処分は確かに行政行為ではあるが、原告に対する処分ではない。建築確認適合処分を受けた者に対して行政庁が同確認適合処分の取消しを行うことが出来るかという場合は、まさしく行政行為の取消しの可否の問題であるが、本件はそうではない。では、道路判定

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   同志社法学 六七巻二号

三九三七四七 や道路台帳への記載はどうであろうか。しかし、これらは公衆に対する情報提供行為に過ぎない。それ故、本件は行政行為の取消しそのものと言いがたい。しかし、原告に対する行政処分と言えなくとも、建築確認処分や道路判定、道路台帳記載により、本件通路が二項道路に該当するという重要な有権判断をし、その解釈を信頼した者がいるにもかかわらず、その有権判断を後に覆すことができるのかという意味においては、行政行為の取消しの制限に関する議論と同様の利害状況があるといえよう。

  この問題の本質は、法律に基づく行政という原則と信義則(禁反言の法理)との調整の問題である。行政行為の取消しの可否の問題もまさに同じ原理の衝突の問題であることから、そこでの議論が本件でも参考になると考える。

行政行為の取消しの可否

  二項道路指定は対物処分であり、指定を受ける物に対する私権制限の効果を与えるものであり、その意味では、所有者に対する侵益的行政行為である。しかし、当該私道を建築基準法上の道路として接道要件を満たしたい土地所有者にとってみれば、二項道路指定によって建築が可能となるという意味において受益的行政行為でもある。

  違法な行政行為の取消しについては、これを認める明文上の根拠は必要としないといわれている。法律による行政の原則からすれば、むしろ取り消すのが当然であると考えられる。しかし、この場合においても、一定の利益衡量、すなわち取消しには公益上の理由が必要であるとの見解が有力である )6

(。

  しかし、この問題の本質が法律に基づく行政という原則と信義則(禁反言の法理)との調整にあるとすれば、取消が許されるのかという問題を検討するためには、①二項道路と扱われることにより、誰がいかなる不利益を受けるのか、②過去の道路判定を覆し、二項道路と扱わないことにより生じる不利益の内容と程度、③二項道路指定における公益と

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は何か、等の要素が考慮されなければならないであろう。

  ①については、二項道路に面する土地について、道路中心線から二メートルセットバックしなければならず、その部分については所有者の自由な利用が制限される。他方で当該通路のみに接する土地については、同通路が二項道路であることにより、建築確認適合処分を受けることができるという利益を得るのであり、総合的にみれば利益の方が大きいであろう。他方、他に道路に接する土地を所有する者にとってみれば、二項道路と扱われることは私権制限の不利益しか受けない。ただし、この場合においても、問題となる通路について将来的に四メートルの幅員が確保され、同通路の車両等の通行も容易となり、それによって通路に接する土地の価値を上げる効果を生じさせているとも考えられよう。

  ②の内容は、新たに建築確認適合処分が受けられない(再建築不可)という不利益である。土地の価値にとっては、その上に建物が立てられるか否かは極めて重大な問題である。そして、二項道路に接する土地であると信頼して、土地を購入した者にとっては、その信頼を裏切られる不利益を被ることになる。この点について、本件訴訟では、被告は、建築基準法四三条一項ただし書の弾力的運用により建築が許容される可能性があり、そのような場合には建て替えを行う者の不利益が著しく大きいとはいえないと反論した。しかし、同許可を得るためには﹁国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得る﹂必要がある。京都府の場合は建築基準法四三条一項ただし書の規定による許可の取扱い基準を定めているが、詳細で厳しい条件が付されているうえ、本件と同様な事例について弾力的な運用をどのようにするのかは全く不明である。もし、同条項の許可要件を充たさない場合であっても、許可するというのであれば、それ自体の当否が問題であり、それくらいなら端的に二項道路とあつかう方向を目指す方が簡明ではなかろうか。許可制度では、現実に許可申請してみなければ許可を得られるか不明である。しかも四三条一項ただし書きの許可を前提に中古住宅を売却する場合は、融資が受け

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   同志社法学 六七巻二号

三九五七四九 られないものとして、現金の購入者をさがすか、建築確認がおりることを停止条件とし、業者に売ることが多いというのが現実である。このような土地であると買主が住宅ローンを借り入れようと思っても、限られた金融機関しか融資対象と扱わず、融資対象となっても評価および審査基準は厳しくなる。不動産業者の感覚としては再建築不可の不動産と同じくらい流通しづらい不動産となるとのことである。以上からして、建築基準法四三条一項ただし書きを弾力的に適用するなどの実務運用がなされているので、損害が生じるとは断定できないとの被告の主張は疑問である。

  ③については、二項道路の制度趣旨には、私益としての既存建築物の所有者等の既得権の保障のみならず、公益上の要請として道路幅員を最低四メートル確保することも含まれている。ある通路に接する土地について建築確認適合処分が積み重ねられ、通路に沿って相当な数の建築物がセットバックして立ち並ぶという状況に至っている場合に、後に二項道路ではないと扱うことが道路幅員を最低四メートル確保するという公益に資するだろうか。二項道路として扱い続ければ全ての建築物が建て替えられた時点では、幅員四メートルの通路が確保されることになり、公益が充たされることになる。しかし、二項道路として扱わないと、以後、当該通路に接する土地には建築物は建てられなくなり、土地の有効利用が図れないとともに、建替えによるセットバックは行われず、ところどころ幅員が四メートル確保されない通路のままとなる。このようなことを考えれば、従来、二項道路と扱うことで建築物がかなり建ち並んでおり、幅員も四メートル確保されつつある場合には、その扱いを覆すよりも、そのままの扱いを続ける方がはるかに公益に資するであろう。

  以上のとおり、行政行為の取消の可否を決定する①ないし③の要素に本件を当てはめてみると、二項道路であるとの扱いを覆すべき公益上の理由はないと考えることが正しいように思われる。

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三九六七五〇

信義則に基づく二項道路非該当主張の禁止

  行政法の分野においても信義則(禁反言の法理)は適用される。原告は、信義則(禁反言の法理)に基づき、被告が本件通路が二項道路に該当しないと主張することは許されないと主張した。これに対し、京都地裁は﹁信義則の適用により上記主張が制限されるのは、当該道の隣接地等周辺地の地権者らの権利関係に影響を及ぼしてもなお、住民等の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情がある場合に限られると解するのが相当である﹂とし、被告職員の対応に重大な注意義務違反等の非難すべき点があったとは認められないこと、本件土地の仲介業者は被告職員に道路調査、道路判定を依頼して判定結果を聞いたわけではないこと、建築基準法四三条一項ただし書の弾力的運用により建築が許容される可能性があり、そのような場合には建て替えを行う者の不利益が著しく大きいとはいえないとした。

  大阪高裁も、本件各建築確認等がされた当時、本件通路部分が二項道路としての要件を欠くことが明らかであると言うことは困難であること、建築基準法四三条一項ただし書の弾力的運用により建築が許容される可能性があり、そのような場合には建て替えを行う者の不利益が著しく大きいとはいえないこと、本件通路部分の隣接地等周辺地の地権者らの権利関係に影響を及ぼしてもなお、本件通路部分が二項道路に該当する旨の被控訴人の見解を信頼して行動した住民等(原告)の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情があるとは認められないと判断した。

  信義則に関するこのような判断は、判例法理に従ったものといえるであろうか。最高裁は、青色申告事件(最判昭和六二年一〇月三〇日判決  最高裁判所裁判集民事一五二号九三頁)において、信義則が適用されるか否かの判断要素として、﹁①税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表明したこと、②納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したこと、③のちに右表示に反する課税処分が行われ、そのために納税者が経済的不利益を受けること

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三九七七五一 になったものであるかどうか、④右表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責に帰すべき事由がないかどうか﹂を挙げている。ところが、京都地裁判決は上記最高裁判決が信義則適用の要件として要求していない﹁被告職員の対応に重大な注意義務違反等の非難すべき点があったとは認められないこと﹂という要件を挙げ、大阪高裁判決は﹁本件各建築確認等がされた当時、本件通路部分が二項道路としての要件を欠くことが明らかであると言うことは困難であること﹂という事実を指摘している。このような行政担当者の過失の程度によって信義則の適用を左右するという考え方は青色申告最高裁判決には示されていない。

  信義則の適用は、行政庁の誤った言動を信じた者の信頼を法的に保護すべきか否かという問題であり、行政庁の責任を云々するものではなく、行政庁が誤った言動をしたことの原因は問題とはならないはずである。そして最高裁判決の判断基準に従えば、本件において信義則を適用することが十分に可能であったのではなかろうかと考えられる。そこで青色申告最高裁判決で示された四つの要素について本件事案に則して検討する。

  ①  被告は原告に対し、信頼の対象となる判断を表明したこと   被告は、平成一二年、道路台帳を備える際、本件通路部分が二項道路であると記載し、この記載は、平成一七年一一月二八日まで放置されていた。そして、不動産売買の仲介業者は、目的不動産が接する通路が建築基準法上の道路であるかについて行政担当者から説明を受けるか、道路台帳を閲覧することによって判断することになる。現実に、本件土地建物の売買の際には、仲介業者は、京都府山城北土木事務所において担当者から道路台帳を見せてもらいながら、本件通路部分が二項道路であるとの説明を受け、その結果を原告に説明している。そのため被告は仲介業者を介して、原告に対し、本件通路部分が二項道路に当たるという判断を表示していたことになる。

  ②  表示を信頼し、信頼に基づいて行動したこと

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   同志社法学 六七巻二号

三九八七五二

  原告は、仲介業者を通じて被告がなした本件通路部分が二項道路である旨の表示を信頼し、本件不動産を購入している。

  ③  原告が経済的不利益を受けたこと   原告は本件通路部分が二項通路に当たるとの判断が撤回されたことによって、経済的不利益を被っている。   ④  原告の責に帰すべき事由がないこと   我が国における建築行政においては、国民がある道路状の土地が、建築基準法上の道路か否かを判断するについては、国民が独自に調査することまでは求めているとは解されず、担当職員に質問して回答を得るか、備え置いた道路台帳を閲覧するという制度を用意しているのであり、その制度を利用して、その結果を信頼して道路か否かを判断した場合、どこにも国民には責に帰すべき事由はない。

  このように、前掲最高裁判決の基準に照らせば、本件においては信義則が適用されることになり、被告は本件通路部分が二項道路でないと扱うことは許されないと考えることも十分に可能であった )7

(。

  以上のとおり、本件争点を行政行為の取消の制限という問題としてみた場合、信義則(禁反言の法理)の適用に関する最高裁判決に従って考えれば、本件において従来の判断を覆し、二項道路ではないと扱うことは許されないと考えるのが正しいように考えられる。

国家賠償請求

  仮に二項道路であるとの判定の取消は可能であるとしても、行政庁の職員が職務上尽くすべき注意義務を怠り、それ

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   同志社法学 六七巻二号

三九九七五三 によって原告が損害を被ったのであれば、被告としてその損害を賠償すべき義務を負うことになる。

  そこで、次に、被告職員の行為にその職務上尽くすべき注意義務を果たさなかったといえるかを検討する。

京都市に対する損害賠償請求訴訟

  ところで、本件訴訟の前に、京都市の職員が二項道路判定を誤ったとして京都市に対して国家賠償請求訴訟が提起された事件(京都地裁平成二一年(ワ)第二八三七号)において、同裁判所は平成二三年三月三〇日、京都市に損害賠償を命じる判決(裁判所ウェブサイト掲載)をした。同判決は、道路縦覧地図は、特定の道が既に一括指定がなされた二項道路に該当するか否かについての市民に対する情報提供を主たる目的の一つとして作成したものであること、基準時から五〇年以上経過した現在、要件の充足の有無を、不動産取引に際して、取引関係者が認定して判断することは困難であること、取引関係者が独自の判断をしたところで、それが被告の認識判断と相違するなら、実際上、円滑な不動産取引の実現は望めないこと、不動産業者を含む市民は、ある道が二項道路を含む法上の道路に該当するか否かを判断するために、道路縦覧地図の記載を第一次的な根拠とし、当該道路縦覧地図に記載された情報については、それを信じるのが通常であるといえること等の事情から、﹁被告指導課の職員には、個別の市民に対する関係で、道路縦覧地図への情報の記載を正確に行うべき職務上の義務が存するというべきであって、道路縦覧地図の作成及び縦覧が法令上の根拠を有さず、行政サービスの一環としてなされているとしても、それをもって、前記義務の存在を否定することはできないというべきである。﹂と判断した。そして、﹁被告指導課の職員は、平成一四年にした本件通路の道路判定の際、過去の航空写真等を参照したものであるが、上記各航空写真によれば、当時において、本件通路部分付近は田であり、同通路及びその沿道に当たる位置に道及び建物の存在は確認できないのであり、被告指導課の職員は、平成一四年、二項道

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四〇〇七五四

路の要件を明らかに満たさない本件通路を二項道路として道路縦覧地図に記載したものと認められ、誤った情報を道路縦覧地図に記載して市民に提供したといえる。したがって、被告指導課職員の上記行為は、少なくとも過失により、道路縦覧地図への情報の記載を正確に行うべき個別市民に対する職務上の義務に違反したものというべきである。﹂と述べて過失を認定した。

被告職員の過失に関する原告の主張

  原告は本件における被告職員の過失について以下のとおり主張した。   京都府知事は、二項道路を包括(一括)指定し、これによって、八幡市における二項道路の指定処分は完結した。しかし、これによっても、具体的にどの道路が二項道路であるのかは、一義的に明らかではなく、具体的に建物の建築確認申請や道路判定の依頼がある都度、被告職員において、調査し、その敷地に接している道路が二項道路であるか否かを個別に判定することになる。そして、その判定結果は、当該敷地に建物を適法に建築できるか否かという結論を左右するものであり、セットバックの要否も含めて、﹁土地﹂という重要な私有財産の内容や価値に大きな影響を与えるし、一度判定がなされれば、その結果は、同じ道路に面する他の敷地の建築確認申請における判定にも事実上大きな影響を与える。また、当該宅地についてその後取引(売買契約、抵当権設定契約等)が行われる場合や、当該道路に接する他の宅地について同様の取引が行われる場合において、売買代金額や担保価値を決定するに当たっても、過去の道路判定の結果が大きく影響する。そうすると、二項道路であるか否かを判定する職務に従事する被告職員としては、当該道路が、基準時において、現に建物が立ち並んでいる幅員四メートル未満、一・八メートル以上の道であったか否かを慎重に調査、検討すべきである。

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四〇一七五五   そして、調査の方法としては、航空写真を入手・参照する義務まではなかったとしても、被告職員は、少なくとも、次の①~③の調査はすべきであり、これらの調査を経た上で、得た資料を総合的に判断して合理的な道路判定をすべき職務上の注意義務があるというべきである。そして、上記のように、一旦なされた道路判定の結果が、当該宅地についてその後なされる取引や、当該道路に接する他の宅地についてその後なされる取引にも大きな影響を与えることに鑑みると、被控訴人職員が負担する上記職務上の注意義務は、当該建築確認の申請者や当該道路判定の依頼者に対して負担する注意義務であるに止まらず、将来、当該宅地及び当該道路に接する他の宅地について取引に入ろうとするすべての者に対して負担する注意義務であるというべきである。

  ①  周辺土地や近隣の建物の登記簿謄本、公図の写し等を収集   登記簿謄本及び公図の精査によって把握できる地目変更や分筆の経緯及び建物の新築年月日は、基準時における当該道路の状況を把握するうえで、もっとも基礎となる調査方法である。

  ②  現地踏査   現地踏査によって把握できる当該道路の現況における幅員、拡幅の痕跡の有無、建ち並ぶ建物の建築様式や経年劣化状況から、基準時における当該道路の状況を把握するうえで重要な手がかりを得ることができる。

  ③  地元民からの事情聴取   基準時における当該道路の状況を直接に知っているのは地元民であるから、その聴取によって、重要な事実を把握することができる。

  そして、登記簿謄本及び公図によると、本件通路部分及びその両側に接する宅地は、もと田であり、これが昭和三九年四月二〇日付けで宅地に地目変更されるとともに分筆され、その後、順次分筆されていったことが容易に判明する。

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四〇二七五六

念のため、分筆経緯を図示すると後掲のとおりである。

  この分筆経過によれば、昭和三九年以前には、そもそも通路自体が存在しなかったことが容易にみてとれる。そうすると被告職員は、登記簿謄本や公図を収集しなかったか、収集してもその内容を精査することなく、道路判定をしたとしか考えられないし、仮に、これらを精査した上で、本件通路部分が基準時において建物が立ち並んでいる幅員四メートル未満、一・八メートル以上の道であったと判断したのであれば、その判断は明らかに合理性を欠くものである。この登記簿の記載に航空写真を併せて検討すれば、広大な農地が広がる地域の一画に位置していたが、昭和三九年ころから宅地開発が始まり、順次、通路と宅地の区画が形成され、建築物が建てられていったことが合理的に推認できる。被告職員が本件通路部分の道路判定に従事した昭和五六年は、開発が始まってから僅か一七年しか経過していない。地元民であれば、いつころから本件通路部分付近の開発が始まったのか明確に記憶していたはずであるし、そもそも昭和二五年において本件通路部分付近に建築物などなかったことを証言できる地元民は多数いたはずである。そうすると、被告職員は、地元民からの事情聴取もしないで道路判定をしたとしか考えられない。

  そして、昭和五六年道路判定、昭和五七年建築確認における道路判定、平成五年建築確認における道路判定、平成一〇年道路判定は、いずれも被告職員が、当該通路及び周辺土地の登記簿謄本、公図写しを収集しなかったか、収集しても、その内容を精査せず、現地確認もせず、地元民から事情聴取もしないでなしたものであり、そうでないとすれば、明らかに合理性を欠いた判断をしたものであるから、被告職員が道路判定をするについての職務上の注意義務に違反してなしたものとして、国家賠償法上違法であるとの評価を免れないものである。なお、現実問題としては、被告職員が、登記簿謄本や公図の収集すらしないで道路判定をしたとは考え難いから、被告職員は、上記の地目変更や分筆の経緯を認識していた可能性が強い。そうすると、被告職員が、これほど明白に二項道路でないことが明らかな本件通路部分を

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四〇三七五七 二項道路と判定したことについては、被告員の過失に止まらない疑惑すら感じざるを得ないところである。

被告職員の過失に関する原審の判断

  京都地裁は﹁被告担当職員は、特定の道の二項道路該当性について調査判定する場合には、それが建築確認等の相手方の業務の遂行のために行われる場合だけでなく、住民等からの道路調査及び道路判定の依頼等に回答する場合であっても、できる限り正確に調査し判定すべき注意義務を負うと解される﹂とした。しかしながら、基準時である昭和二五年一一月二三日から数十年が経過した後に基準時における道の有無及びその周辺の建築物の立ち並びの有無を調査することは容易ではないこと、二項道路該当性の判定には膨大な時間と労力を要することから﹁その当時、通常行うこととされている調査方法を採らず、又は調査結果の十分な評価、検討を怠るなど、その調査及び判定が明らかに合理性をかくものであった場合には注意義務に違反したと認めるのが相当であるとした。なお、同判決がいう﹁通常行うこととされている調査方法﹂の内容は判決文上明確ではないが﹁担当職員が現地に赴き、道の有無等に関する状況を確認し、必要に応じて、公図、登記簿の確認をするという方法﹂を指しているものと推測できる。そのうえで被告職員は通常行うこととされている調査をしたことが認められるとした。

  そして、大阪高裁も、登記簿の記載からは本件通路部分が昭和三九年四月二〇日に田から宅地に地目変更され、分筆されていった土地であることが認められるとしながら、職員が現地に赴き、道の有無等に関する状況を調査し、必要に応じて公図、登記簿の確認をするという調査をしなかったことをうかがわせる的確な証拠がないとした )8

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四〇四七五八

検    討   まず、公務員一般の注意義務に関する基準についての原審の言い回しが実質的な判断基準を正しく表現しているかが考え方はともかく、文字面からは地方公共団体の職員が現実に行っている職務を基準とし、それに反する﹁怠慢﹂な職務だけを違法とするものと理解される。しかし、それでは職員が総体的に怠慢な職務を行っていれば、個々の職員の怠慢な職務遂行も注意義務に違反しないという結果となる不都合を来すもので相当ではない。あるべき注意義務の内容は、当該職員の置かれた状況を前提にしつつも、その職務の内容、重要性や誤った職務を行った場合に国民に与える影響などを総合的に考慮して判断されるべきであり、現実に職員が行っている職務執行を所与の前提とすべきではないのではなかろうか。

  最高裁は、公務員の行為に国家賠償法一条一項にいう違法があったと評価をすべきは﹁職務上通常尽くすべき注意義務﹂を尽くさなかった場合であると判断している(最判平成五年三月一一日第一小法廷判決  民集四七巻四号二八六三ページ頁)。最高裁の採用するこの見解は職務行為基準説とよばれているが、これは抗告訴訟上の違法と国家賠償法上の違法を区別する違法相対説を導く論拠として採用されていると解されている(﹁所得税更正処分と国家賠償責任﹂北村和生教授解説・行政判例百選Ⅱ四六七頁)。すなわち、抗告訴訟においては当該処分が違法であると判断されるとしても、国家賠償責任が生じるのは公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしていない場合に限られるとしているということを明らかにすることに職務行為基準説の意義があるということである。ところが職務行為基準説の適用において、﹁職務上通常尽くすべき﹂という文言にとらわれると、当該公務員と同じ職務を行う公務員が現実に払っている注意と同じ程度の注意を払ってさえいれば﹁職務上通常尽くすべき注意義務﹂を尽くしていると判断すべきであるとい

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四〇五七五九 うことになりかねないが、最高裁判所の採用する職務行為基準説はそのようなことまで意味しているのではないのではなかろうか。現に上記最高裁判決でも、通常の職員がいかなる注意義務を尽くしているかという判断はどこにもなされておらず、諸般の事情を総合的に検討して判断している(﹁平成五年最高裁判所判例解説﹂上巻・三八〇頁)。このように職務行為基準説は、当該処分(行為)の行われた具体的な事情のもとにおいて公務員として通常いかなる注意義務を尽くすべきかという規範的判断を要求する考え方であり、現実の同種の公務員が行っている職務を是認するものではないはずである。上記判決の調査官解説においても﹁国家賠償請求訴訟における違法とは損害補填の責任を誰に負わせるのが公平かという見地に立って﹂行うべきものであり、﹁究極的には他人に損害を加えることが法の許容するところであるかどうかという見地からする行為規範違反性であると考えられる。﹂と述べられている(前掲三七七頁)。上記最高裁判決の判示するとおり、一般に、事実認定及び判断を内容とする職務に従事する公務員の具体的注意義務の内容は、判断が誤った場合に個人が受ける権利侵害の内容、程度、調査に要する時間、費用、担当する公務員の能力等を総合的に判断して、具体的に決するべきである )9

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  第一、二審判決も、行政庁の職員の職務の実情を尊重するあまり、規範的に判断するという観点が疎かになったとの印象を拭いきれない。

おわりに

  今後、二項道路台帳の整備および見直しが進むにつれ、本件と同様の紛争が生じることが予想される。改正行政事件訴訟法に従い、平成一四年最高裁判決の処分性に関する判決を前提にして、いかなる訴訟形式が最も適しているのかが

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