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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

テイシュウシュク キョウド デノ セイテキ キン シュウシュク ジゾク ニ トモナウ ヒョウメン キン デンズ ノ ヘンカ

大箸, 純也

近畿大学産業理工学部経営コミュニケーション学科 : 助教授 : 人間工学

https://doi.org/10.11501/3124235

出版情報:Kyushu Institute of Design, 1997, 博士(芸術工学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

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  氏 名・本籍(国籍)  大 箸 純 也 (福岡県)

  学 位 の 種 類   博士(芸術工学)

  学 位 記 番 号   乙第3号

  学位授与の日付     平成9年5月21日

  学位授与の要件     学位規則第4条第2項該当

  学位論文題 目     低収縮強度での静的筋収縮持続に伴う表面筋電図の変化   審 査 委 員 会   幹事 教 授 佐 藤 陽 彦

      委員 教 授 山 下 茂 樹       委員 助教授 綿 貫 茂 喜        論文内容の要旨

 生活・労働の場面における人間の筋負担は小さくなってきている。しかし低収縮強度で あっても、作業姿勢の保持のように長時間筋収縮を持続することによって筋疲労が生じる。

双極誘導表面筋電図は筋疲労の推定と関連づけて研究されてきた。しかし低収縮強度にお いては、主観的な疲憊近くまでの収縮を行っても、有効な筋疲労推定法として期待されて いる表面筋電図の徐波化(低周波数成分の割合が増加すること)は不明確であると考えら れている。本研究では、低収縮強度での持続的収縮における筋疲労の表面筋電図による推 定のための基礎的研究として、低収縮強度での筋収縮の持続に伴う表面筋電図の振幅と周 波数分布の変化、およびその原因について検討した。

 先ず収縮の持続に伴う表面筋電図の徐波化の程度と収縮強度の関係を調べた。また、低 収縮強度での表面筋電図の徐波化が不明確である原因として、周波数分析が表面筋電図の 変化を示すのには適していない可能性があると考え、表面筋電図上の平均的な波形の変化 を調べるために、波のピークをトリガにして振幅レベル別平均加算波を求め、収縮持続中 のその変化を調べた。筋電図の徐波化は収縮強度が強い方が大きいという傾向があり、最 大随意収縮(MVC)の 20%以下の収縮では徐波化とは逆の速波化が生じる例があった。

トリガ近傍の振幅レベル別平均加算波の持続時間は、収縮の持続に伴って 30%MVC以上 の収縮強度条件では延長するのに対して、20%MVC以下の条件では短縮する傾向があっ た。 20%MVC以下の条件におけるこの振幅レベル別平均加算波の変化は、筋電図の徐波 化とは逆方向の変化であったが、周波数分布では徐波化が見られた。以上のことから、低 収縮強度では表面筋電図上の個々の波(連続した波の一部で、明確な立上りから立ち下が りまでの間)の持続時間の延長が、筋電図の徐波化の主原因ではないことが判った。

 運動単位における群化活動が筋電図の徐波化の原因であれば、双極誘導よりも導出範囲 の広い単極誘導の筋電図の方が、多くの運動単位の活動を反映するということで徐波化が 生じやすくなると推測し、単極誘導と双極誘導とで表面筋電図の収縮持続中の変化を比較 した。単極誘導の方が双極誘導よりも安定して大きな筋電図の徐波化を示した。ただし、

この誘導法間の徐波化の程度の違いは簡単なモデルから推測した導出範囲の違いよりも大 きなものであった。すなわち、単極誘導で徐波化が明確であった主原因は導出範囲が広い

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ためではなかった。群化放電と表面筋電図の波形上の変化を検討するために、双極誘導筋 電図をトリガとして用い、単極誘導と双極誘導の筋電図について振幅レベル別平均加算波 を求めた。そして、振幅レベル別平均加算波上の各時点の値について、表面筋電図の低周 波数成分の割合との相関を求めた。相関が高くなる時点、その符号および振幅レベルの関 係が、群化放電が筋電図の徐波化に関与していることを示唆した。単極誘導での筋電位は 不関電極の電位に対しての負の方向に発生するため、符号をそのまま用いた単純平均電位 は筋放電レベルを反映する。双極誘導では導出電位は基線に

対して振幅がおよそ正負対称の波になるため、単純平均電位は筋放電レベルとは関係しな い。この導出電位の極性に関する違いが、単極誘導では筋電図の徐波化が見られても双極 誘導では徐波化が見られなかった主原因であるとした。

 以上の結果から、単極誘導であれば表面筋電図の変化から筋疲労の推定が期待できる。

しかし現場での作業は休憩、非活動期をはさんだ繰り返しであり、筋負担の評価は休憩も 含めた作業全体で行うべきである。そのため、休憩を入れて疲労性の収縮を繰り返した場 合にも疲労感と表面筋電図の徐波化および振幅の関係が保たれるかどうかを調べた。表面 筋電図の徐波化と疲労感との関係は疲労を生じさせるような収縮を繰り返しても保たれた。

また、表面筋電図の振幅と疲労感との関係には、一度疲労することにより振幅が増大する という影響があったが、その影響自体が疲労の回復が不完全であることを示していると考 えれば、筋電図の振幅も作業の筋負担の評価のための情報になると考えた。

 最後に、疲労性収縮中の表面筋電図の振幅の増加と徐波化の原因を考察した。表面筋電 図の振幅の増加には、新たに動員された運動単位の特徴が関与していると考えた。表面筋 電図の徐波化の主原因は運動単位の活動の群化であり、その群化活動の原因は脊髄よりも 上位の中枢にあると推測した。

 本研究は、低収縮強度であっても単極誘導であれば、収縮の持続に伴って表面筋電図は 徐波化すること、および筋電図の振幅の変化も作業の筋負担の評価に有用であることを示 した。ただし、表面筋電図の変化には上位中枢の影響があるため、収縮持続中の表面筋電 図の変化の意味を理解するには、持続的収縮に対する運動制御における適応としての解釈 も加えることが必要であると考えた。

       論文審査の結果の要旨

 筋疲労に伴って双極誘導表面筋電図の振幅が増加し、低周波数成分の割合が増加する「徐 波化」が生じることが知られている。この表面筋電図の変化を利用した筋疲労の判定は、

期待されながら、作業現場における応用の方法が未だ確立されていない。その原因として、

事務作業など今日の多くの作業形態で見られるような低収縮強度での静的筋作業において は、表面筋電図の徐波化が生じ難いということがある。また、低収縮強度の筋作業は、従 来あまり研究の対象にされてこなかった。

 本論文は、低収縮強度での静的筋作業における筋疲労を、表面筋電図から評価する方法 の確立を目指して、その基礎的研究として、低収縮強度での静的筋収縮持続に伴う表面筋

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電図の変化を詳細に検討したものである。本論文は4つの実験から構成されている。

 実験1では、静的筋収縮持続中の双極誘導表面筋電図を記録し、表面筋電図の徐波化の しかたと筋収縮強度の関係、および、収縮持続に伴う振幅レベル別平均加算波の持続時間 の変化を調べた。

 実験2では、疲労性収縮持続に伴う表面筋電図の変化を、双極誘導表面筋電図と単極誘 導表面筋電図の間で比較した。

 実験3では、単極誘導表面筋電図と双極誘導表面筋電図について振幅レベル別平均加算 波を求め、それを用いて、運動単位の活動の群化と筋電図の徐波化の関係を検討した。

 実験4では、間に休憩を入れて疲労性収縮を繰り返した場合に、疲労感と表面筋電図と の関係が変化するかどうか、について調べた。また、実験結果から、疲労性収縮持続に伴 う表面筋電図の振幅の増加と徐波化の原因について考察した。

 これらを通じて、以下のような成果が得られた。

 (1) 低収縮強度での筋疲労に伴う表面筋電図の徐波化が、双極誘導では不明確な場 合があり、その場合でも単極誘導であれば検出できる。

 (2) 双極誘導表面筋電図で、低収縮強度での筋疲労に伴う徐波化が不安定であった のは、双極誘導では表面筋電図上の群化放電の周期を周波数成分として検出し難かったた めである。

 (3) 単一の収縮持続だけでなく、休憩を入れて疲労性の収縮を繰り返した場合でも、

疲労感と表面筋電図の徐波化の関係は保たれる。

 (4) 表面筋電図の増加には、新たに動員された運動単位の特性が関与しており、表 面筋電図の徐波化の主原因は運動単位の活動の群化であり、その群化活動の原因は脊髄よ りも上位の中枢にある、と考えられる。

 従って、低収縮強度であっても単極誘導表面筋電図を記録すれば、その変化から筋疲労 を評価することが期待できる、と結論づけている。

 これらの成果は、低収縮強度での静的筋作業における筋疲労を、表面筋電図から評価す る方法を確立するための基礎的研究として、価値があるものである。よって、本論文が博 士(芸術工学)の学位を得るに値するものであることを、本委員会は認めた。

最終試験の結果の要旨

 学力の確認を兼ねた公開発表会が、人間工学及び関連分野の研究者の出席のもとに、開 催された。著者の発表に対して、周波数分析の方法、筋電図の双極誘導法と単極誘導法の 比較、筋電図の周波数分布と筋の筋繊維組成の関係、疲労の進行に伴う運動単位の動員の 様相、上位中枢の影響等について活発な質疑があったが、いずれについても著者から納得 のいく説明がなされた。よって、審査委員合議の結果、学力の確認は合格と決定した。

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