リスクベースでの化学物質管理推進に向けた独り言
化学生物総合管理 第6巻第2号 (2010.12) 126頁 受理日:2010年12月16日
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【巻頭言】
リスクベースでの化学物質管理推進に向けた独り言
三浦 千明多くの化学物質(化合物)が人々の生活の中で使用されて、豊かさや便利さを 演出している現在、化学物質によるヒトや環境に対する不都合の発生を防ぐこと を追求することは極めて自然であり、当然の流れである。これまでも、この目標 に向けて個々には手法の提案やデータの整備など多くの検討や努力がなされてき た。化学物質に伴うヒトの健康や環境保護に関するリスクの発生を防止して、多 くの化合物をより有効にかつ適切に使い続けるため、REACH や
US
チャレンジ などを含めて、世界的にリスクベースでの化学物質管理の更なる拡充に関するプ ロジェクトが鋭意進められている。我が国においても化学物質の審査及び製造等 の規制に関する法律(化審法)が改められてリスク評価の実施に向けた作業が進 行しつつある。リスクベースでの化学物質管理においては当然ながら、リスク評価の実施とそ の結果の活用が最も重要な柱の一つとなる。このリスク評価書の整備に際しては、
速やかな評価の実施、評価の科学的精度と信頼性確保、納得できる内容、結果と それに基づく対応内容の透明性と情報公開などさまざまな観点からの課題も指摘 されている。これらの課題に対処するには内外の既存の評価書作成の経験を活か したり、一定の形式の下での評価の実施が望まれる部分があるのと同時に、特定 の事例においては対象物質に応じたデータ解析などにおいて新たな思想や手法の 導入などが必要となる可能性も考えられる。新たな提案には合理的な説明と内容 の透明性が求められるが、それでもなお効果的な評価の実施のためには期待する ところも小さくない。即ち、旧来の手法のみにこだわることなく、この分野での 新たな挑戦があっても然るべきではなかろうか。
また、上市され使用されているすべての物質について効率的に評価書を作成す るためにはデータの確保、限られているデータの解釈と活用、対象物質の分担な どにおいて官民での更なる連携の活性化が望まれる。知恵の共有や手法の改良な どにおいて連携を強めることによって、相互の評価技術のブラッシュアップや人 材育成がなされ、より信頼性の高い評価の実施とトータルとしての目標の達成が なされることを切に期待する。それらの結果として、海外での評価書の完成を待 ってそれを参照する事例よりも、我が国で整理された評価書が海外で引用される ことが多くなることを願うものである。