• 検索結果がありません。

循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン"

Copied!
32
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008−2009年度合同研究班報告)

【ダイジェスト版】

循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン

Guidelines for Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease(JCS 2010)

目  次

序 文………1054

本ガイドラインで用いる用語について………1054

治療推奨度(クラス分け)およびエビデンスレベル………1055

Ⅰ.睡眠障害………1057

1.睡眠障害とは ………1057

2.睡眠呼吸障害とは ………1057

Ⅱ.疫 学………1058

1.閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の疫学 ………1058

2.中枢性睡眠時無呼吸(CSA)の疫学 ………1059

Ⅲ.病 態………1059

1.閉塞性睡眠時無呼吸(OSA) ………1059

2.中枢性睡眠時無呼吸(CSA) ………1063

Ⅳ.診 断………1064

1.簡易モニター ………1064

2.標準・睡眠ポリグラフ検査(PSG) ………1066

3.欧米,日本でのそれぞれの基準 ………1067

合同研究班参加学会:日本循環器学会,日本呼吸器学会,日本呼吸ケア・リハビリテーション学会,日本高血圧学会,

      日本心臓病学会,日本心不全学会,日本心臓リハビリテーション学会,日本睡眠学会 班 長 百 村 伸 一 自治医科大学附属さいたま医療セン

ター循環器科

班 員 赤 柴 恒 人 日本大学内科学系睡眠学分野 麻野井 英 次 射水市民病院

安 藤 真 一 福岡済生会二日市病院循環器内科 苅 尾 七 臣 自治医科大学

COE

内科学講座循環器

内科学部門

塩 見 利 明 愛知医科大学病院睡眠科

清 野 精 彦 日本医科大学千葉北総病院循環器内科 田 村   彰 大分大学総合内科学第二講座 陳   和 夫 京都大学大学院医学研究科呼吸管理

睡眠制御学

中 元 隆 明 獨協医科大学日光医療センター 成 井 浩 司 虎の門病院睡眠センター 萩 原 誠 久 東京女子医科大学病院循環器内科 山 科   章 東京医科大学第二内科

協力員 安 達   仁 群馬県立心臓血管センター循環器内科

協力員 長 田 尚 彦 聖マリアンナ医科大学循環器内科 葛 西 隆 敏 虎の門病院睡眠センター 篠 邉 龍二郎 愛知医科大学病院睡眠科

佐 田   誠 国立循環器病研究センター呼吸器・

感染症制御部

篠 崎   毅 仙台医療センター循環器科 須 賀   幾 自治医科大学附属さいたま医療セン

ター循環器科

芹 澤 直 紀 東京女子医科大学病院循環器内科 高 田 佳 史 東京医科大学第二内科

内 藤   亮 自治医科大学附属さいたま医療セン ター循環器科

前 野 健 一 虎ノ門スリープクリニック 美濃口 健 治 ファミリークリニック・ハーモニー 吉 岡   徹 埼玉社会保険病院

外部評価委員

栗 山 喬 之 栗山医院

篠 山 重 威 同志社大学心臓バイオメカニクスセンター 山 口   徹 虎の門病院

友 池 仁 暢 国立循環器病研究センター 堀   正 二 大阪府立成人病センター

(構成員の所属は

2010

3

月現在)

(2)

Ⅴ.治 療………1068

1.閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療 ………1068

2.中枢性無呼吸(CSA)の治療 ………1072

3.我が国の保険診療上の治療適応基準 ………1076

Ⅵ.各 論………1076

1.高血圧と OSA ………1076

2.心不全 ………1078

3.不整脈 ………1079

4.脳卒中と SAS ………1081

5.虚血性心疾患 ………1083

6.睡眠時無呼吸と大動脈疾患(大動脈拡張,大動脈瘤)   ………1083

7.肺高血圧 ………1084

8.基礎心血管疾患を有する患者における睡眠呼吸障害   スクリーニングのまとめ ………1084

(無断転載を禁ずる)

序 文

 近年,睡眠呼吸障害が安全管理の面から社会的に関心 をもたれるようになった.一方,様々な心血管疾患に睡 眠呼吸障害を高率に合併することが明らかとなった.さ らに睡眠呼吸障害は偶然に合併するわけではなく,心血 管疾患の発症・進展において重要な役割を果たしている と考えられるようになった.例えば心不全に睡眠呼吸障 害を合併すると予後は悪化する.また,重症閉塞性無呼 吸患者の心血管事故や心血管死亡率は対照群の数倍高い が,前向き観察研究では重症の閉塞性無呼吸を治療する と将来の心血管死亡や心血管イベントを予防できる.し たがって,循環器診療を担当する医師は睡眠呼吸障害の マネージメントに関与する必要がある.しかしながら,

循環器領域の診療を担当する多くの医師にとって睡眠呼 吸障害は馴染みの薄い領域であり,その重要性が理解で

きたとしても,どのような方法で評価し,どのような治 療を行うべきかという段階になると行き詰まる場合が多 い.本ガイドラインは循環器診療に携わる医師を対象と し,これらの医師が睡眠呼吸障害の重要性を認識し,日 常診療においてそのスクリーニングを行い,さらに治療 へと進むための指針を与えるものである.したがって,

その内容は可能な限りプラクティカルにすることを心掛 けた.また,用語の統一を図り,様々な専門的用語の解 説も追加した.

 本ガイドラインにおける最近の医学的根拠に基づいた 診療指針と現行の保険診療の基準とが必ずしも一致して いない場合もあり(例えば持続気道陽圧療法など),両 者を区別して記載した.

本ガイドラインで用いる用語について

 本症の呼称として「睡眠時無呼吸症候群(

sleep apnea syndrome

SAS

)」という言葉が,現在最もよく用いら れていると思われる.この「症候群」という言葉には文 字通り,自覚症状の存在がおのずと想定されやすが,最 近の本症と循環器領域に関連した研究では,自覚症状の 有無を問わずに,無呼吸低呼吸指数(

apnea hypopnea index

AHI

)との関連に焦点が当てられている場合が 多く,特に循環器領域では,自覚症状の有無にかかわら ず,本症に対する治療介入が推奨されうる.そこで,本 ガイドラインでは「睡眠時無呼吸症候群」もしくは「症 候群」という用語の使用は避けることとし,以下の用語 を使用することとする.自覚症状の有無を問わずに

AHI

5

のものを睡眠呼吸障害(

sleep disordered breathing

SDB

)とし,そのうち閉塞型呼吸イベントが優位のもの を閉塞性睡眠時無呼吸(

obstructive sleep apnea

OSA

),

中枢型呼吸イベントが優位のものを中枢性睡眠時無呼吸

central sleep apnea

CSA

)とする.また,後者のうち,

10

分以上持続する漸増漸減の呼吸パターンを伴ったも のをチェーン・ストークス(

Cheyne-Stokes

CSR

)呼 吸を伴う中枢性睡眠時無呼吸(

central sleep apnea with Cheyne-Stokes respiration

CSR-CSA

)とする.

 なお「閉塞性」,「中枢性」のように“性”を付けて呼 ぶか,「閉塞型」,「中枢型」のように“型”を付けて呼 ぶかについては議論のあるところであるが,本ガイドラ インにおいては混乱を避けるために,個々の無呼吸イベ ントについては「閉塞タイプ」,「中枢タイプ」,「混合タ イプ」のように“タイプ”を付け,それぞれの病態名と しては「閉塞性」,「中枢性」のように“性”を付けるこ ととした.

(3)

治療推奨度(クラス分け)およびエビデンスレベル

 本ガイドラインでは以下の基準に従い,治療推奨度(ク ラス分け)およびエビデンスレベルの表記を行った.

〈治療推奨度〉

Class

Ⅰ:エビデンスから通常適応され,常に容認される.

Class

a

:エビデンスから有用であることが支持される.

Class

b

:有用であるエビデンスはまだ確立されてい ない.

Class

Ⅲ:一般に適応とならない,あるいは禁忌である.

〈エビデンスレベル〉

A

 複数の無作為化臨床試験あるいはメタ解析で証明さ れた結果.

B

 単独の無作為化臨床試験あるいは大規模な非無作為 化試験で証明された結果.

C

 専門医の間での合意事項,または,症例報告・レト ロスペクティブ解析・レジストリに基づく事項,標 準的と考えられる治療など.

本文中に用いられる主な略語とその解説

略 語 用語(欧文) 用語(邦文) 同義語 定 義

AASM American Academy of

Sleep Medicine

アメリカ睡眠医学会

AHI apnea hpopnea index

無呼吸低呼吸指数 睡眠中の無呼吸と低呼吸の総数を睡眠時間で

除し,1時間当たりとしたもの(/hr)

AI apnea index

無呼吸指数 睡眠中の無呼吸の総数を睡眠時間で除し,1

時間あたりとしたもの(/hr)

ASV adaptive servo ventilation

サーボ制御圧感知型

人工呼吸器 心不全に伴う

CSR用で,換気量が一定になる

ように,ひと呼吸ごとに換気補助を行う装置

Bi-level PAP bi-level positive airway

pressure 2

層式気道陽圧 呼気時と吸気時の圧をそれぞれ設定できる持

続気道陽圧

CompSAS complex sleep apnea

syndrome

複合性睡眠時無呼吸

症候群 診断時

PSGにおいてOSAS

と診断され,持続

陽圧呼吸(CPAP)療法を施行した場合に,

CSA

が残存してしまう病態

CPAP continuous positive airway

pressure

持続気道陽圧 持続的に気道に陽圧をかける

CSA central sleep apnea

中枢性睡眠時無呼吸 中枢性無呼吸 成人では,10秒以上の気流静止で,胸腹の呼

吸努力を認めないもの.確実な診断には

Pes

の測定が必要

CSAS central sleep apnea

syndrome

中枢性睡眠時無呼吸

症候群

CSAHS: central sleep apnea hypopnea syndrome,中枢性睡

眠時無呼吸低呼吸症 候群

昼間の眠気やいびきなど何らかの症状があ り,AHIが5/hr以上かまたは,症状がなくと も

AHIが 15/hr以上で呼吸イベントの大半が

中枢性のもの.閉塞性に比べて一般的にまれ

CSR Cheyne-Stoks respiration

チェーン・ストーク

ス呼吸

CSBS: Cheyne-Stokes

breathing syndrome

心疾患,脳血管障害または腎不全が基礎疾患 にあり,呼吸の振幅が周期的に漸増漸減を繰 り返すもの

EDS Excessive daily sleepiness

日中過眠

hypersomnia,

somnolence

日中の過剰な眠気.閉塞性睡眠時無呼吸症候

群の代表的な症状

EEG electroencepharogram

脳波

EMG electromyogram

筋電図

EOG electro-oculogram

眼電図

ESS Epworth sleepiness scale

エプワース眠気尺度 眠気に対する質問紙による問診票

HI hypopnea index

低呼吸指数 睡眠中の低呼吸の総数を睡眠時間で除し,1

時間当たりとしたもの(/hr)

(4)

略 語 用語(欧文) 用語(邦文) 同義語 定 義

HOT home oxygen therapy

在宅酸素療法 在宅で,特に夜間に酸素投与を行う

hypopnea

低呼吸

10秒以上の気流の 30%以上の振幅の減少に

SpO

2の4%以上の低下を伴うもの

ICSD-2 The international

classification of sleep disorders:diagnostic and coding manual 2nd edition

睡眠障害国際分類第

2

MSA mixed sleep apnea

混合性睡眠時無呼吸 混合性無呼吸 成人では,10秒以上の気流静止で,無呼吸の

前半は胸腹の呼吸努力を認めず,無呼吸の後 半に胸腹の呼吸努力を認めるもの.病的意義 はOSAと同等で,最近では

OSA

に含めて集 計されることが多い

MSLT multiple sleep latency test

反復睡眠潜時検査 客観的な眠気の評価法

NREM non-rapid eye movement

sleep

ノンレム睡眠 レム睡眠以外の睡眠,緩徐眼球運動,瘤波,

紡錘波,高振幅徐波などの脳波を特徴とする 睡眠

OA oral appliance

口腔内装置

sleep splint,

prosthetic mandibular advancement

いびきやOSASに対する歯科的治療に用いら れるもの

ODI oxygen desaturation index

酸素飽和度低下指数

oxygen dip index SpO

2の低下の総数を睡眠時間で除し,1時間 当たりとしたもの(/hr).2%,3%,4%低 下などを算出する.3%

ODI

やODI(3)など と表す

OHVS obesity hypoventilation

syndrome

肥満低換気症候群 高度肥満により換気が障害されるもの

OSA obstructive sleep apnea

閉塞性睡眠時無呼吸 閉塞性無呼吸 成人では,10秒以上の気流静止で,胸腹の呼

吸努力を認めるもの(小児では,2呼吸分)

OSAS obstructive sleep apnea

syndrome

閉塞性睡眠時無呼吸

症候群

OSAHS: obstructive sleep apnea hypopnea

syndrome,閉塞性睡

眠時無呼吸低呼吸症 候群

昼間の眠気やいびきなど何らかの症状があ り,AHIが

5/hr以上かまたは,症状がなくと

もAHIが15/hr以上で呼吸イベントの大半が 閉塞性のもの

PAP positive airway pressure

気道陽圧

periodic breathing

周期性呼吸 健常者で,睡眠段階

1,2

で周期的に呼吸の

振幅が漸増漸減を繰り返すもの

Pes esophageal pressure

食道内圧

PLMs periodic leg movement in

or during sleep

睡眠時周期性下肢運

睡眠中の周期的脚動

portable monitoring

簡易無呼吸検査 簡 易 ポ リ グ ラ フ ィ ー,簡易検査,携帯 用装置,簡易診断装 置,簡易SAS検査

携帯装置,最低,気流,いびき音,心拍数と

SpO

2の4項目の記録のとれるもの.脳波や眼 球運動の記録はないため,睡眠の状態はわか らず,正確な睡眠時間は不明なため,算出さ れた計測値は,あくまでも推測値.AASMで

typeⅢの装置に相当.睡眠の記録がないの

で,簡易ポリグラフィーや簡易ポリグラフ検 査との表現は許せるが,簡易

PSGと表現する

のは誤用.

Ppl intra-pleural pressure

胸腔内圧 胸腔内圧は直接測れないため,Ppl≒

Pesとし

Pesを代用.

PSG polysomnography

睡眠ポリグラフ検査 ポリソムノグラフィ

ー,終夜睡眠ポリグ ラフィー,full PSG

脳波,眼電図,頤筋筋電図,心電図か脈拍,

気流,呼吸努力,SpO2の7項目以上の記録が とれるもの.睡眠呼吸障害の診断の際のゴー ルドスタンダード.監視下で施行されるのが

AASM

での

typeⅠ,非監視下で施行されるの

AASMでの typeⅡ.

(5)

略 語 用語(欧文) 用語(邦文) 同義語 定 義

pulse oximeter

パルスオキシメータ 経皮的に動脈血酸素飽和度を測定する装置.

連続的に測定,記録することにより,呼吸障 害の程度を推測できる.AASMでの

type

Ⅳの 装置に相当.

RBD REM sleep behavior

disorder

レム睡眠行動障害 レム睡眠時に

RWAを伴う異常行動(寝言を

含む)

RDI respiratory disturbance

index

呼吸障害指数 定義の異同が多いが,現状では,簡易モニタ

ー上での指数.無呼吸と低呼吸の総数を自己 申告による推定睡眠時間で除し,1時間あた りとしたもの.

REM rapid eye movement sleep

レム睡眠 急速眼球運動,頤筋筋電図のトーヌスの消失,

低振幅脳波を特徴とする睡眠

RWA REM sleep without atonia

筋トーヌス低下のないREM

SDB sleep disordered breathing

睡眠呼吸障害 睡眠中の呼吸障害の総称

SHVS sleep hypoventilation

syndrome

睡眠時低換気症候群 睡眠により低換気になるもの

SOREMp sleep onset REM period

入眠後

15分以内の REM

睡眠障害

1 睡眠障害とは

 睡眠障害とは日中の生活に支障を来たす,何らかの睡 眠および覚醒の障害である.睡眠障害,覚醒障害,睡眠 覚醒リズム障害に対して,従来は主に精神科が対応して きたが,睡眠時無呼吸症候群(

sleep apnea syndrome

SAS

)などの睡眠呼吸障害は耳鼻咽喉科,呼吸器科,あ るいは循環器科が中心となって診療すべき領域である.

 

2005

年の

AASM

の睡眠障害国際分類第

2

版(

Interna- tional Classification of Sleep Disorders, 2nd version

ICSD-2

)を表

1

に示す.

ICSD-2

では,睡眠障害の病名 および病状が

96

種類に分類されている.

2 睡眠呼吸障害とは

  無 呼 吸 は, 閉 塞 タ イ プ(

obstructive sleep apnea

OSA

),中枢タイプ(

central SA

CSA

),混合タイプ(

mixed SA

MSA

)と大別されるが,通常,混合タイプは閉塞 タイプに含まれる.一夜に起こる呼吸イベントは,決し て同一のものが続くわけではなく,これらが混在し,経

過により,その組成は変化する.睡眠時無呼吸症状群

SAS

)は閉塞性

SAS

obstructive SAS

OSAS

)と中枢 性

SAS

central SAS

CSAS

)とに分けられるが,通常

SAS

と い え ば, 最 も 頻 度 が 高 い

OSAS

の 意 で あ る.

OSAS

は,米国睡眠学会(

AASM

)の基準によって「

EDS

もしくは閉塞性無呼吸に起因する様々な症候のいくつか を 伴 い, か つ 無 呼 吸 低 呼 吸 指 数(

apnea-hypopnea in-

表 1 睡眠障害国際分類(ICSD-2)の概要

1)不眠症

2)睡眠呼吸障害

 ◦中枢性睡眠時無呼吸症候群  ◦閉塞性睡眠時無呼吸症候群  ◦睡眠時低換気(低酸素血症)症候群

 ◦内科疾患による睡眠時低換気(低酸素血症)症候群  ◦その他の睡眠呼吸障害

3)睡眠呼吸障害によらない過眠症

 ◦ナルコレプシー

 ◦睡眠呼吸障害またはナルコレプシーによらない過眠症  ◦その他の過眠症

4)概日リズム睡眠障害

 ◦原発性概日リズム睡眠障害

 ◦行動により引き起こされた概日リズム睡眠障害  ◦その他の概日リズム睡眠障害

5)睡眠時随伴症

 ◦ノンレム睡眠からの覚醒時睡眠随伴症

 ◦ 通常レム睡眠と関連する睡眠時随伴症(レム睡眠行動 障害)

 ◦その他の睡眠時随伴症

6)睡眠時運動障害(むずむず脚症候群)

7)その他の睡眠障害

8)恐らく正常変異および未解決の間題と考えられる孤発症状

*International C1assification of Sleep Disorders, 2

nd

ed.

(6)

dex

AHI

)≧

5

」と定義される.しかし,

OSAS

以外に も睡眠に関連して発病または増悪する呼吸・循環障害は 多数存在し,これらは総称して睡眠関連呼吸障害(

sleep related breathing disorders

)または睡眠呼吸障害(

sleep- disordered breathing

SDB

)と呼ばれる.

ICSD-2

によ る

SDB

の診断分類を表2に示す.

 循環器疾患を治療する上で関連のある

SDB

は,

OSAS

の他に,チェーン・ストークス呼吸(

CSR

)がある.

CSR

は,表

2

CSAS

の中に含まれるチェーン・ストー クス呼吸パターンを示すもののうち,心疾患,脳血管疾 患および腎不全の既往または合併のある患者において診 断される.表中にはないが,最近,

OSAS

の持続陽圧呼 吸(

continuous positive airway pressure

CPAP

)治療中 に

CSA

が新たに出現するものを複合性

SAS

complex

SAS

compSAS

)と定義されたが,この疾患の定義や 病態はまだ不明の点があり流動的で,今後のエビデンス の集積が必要である.

疫 学

 睡眠呼吸障害(

SDB

)に関する大規模な疫学研究のほ とんどが欧米からの報告であるが,有病率に関しては日 本と欧米とで大きな違いはないと考えられる.近年,

SDB

と種々の循環器疾患との関連を示唆するエビデン スが蓄積されており,多くの循環器疾患で

SDB

の高い 有病率が報告されている(図1).

1 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)

の疫学

 

OSA

に関しては欧米,オーストラリア,アジアなど でいくつかの

population

ベースの

cohort study

が行われ ており,その高い有病率が報告されている.平均すると

5

人 に

1

人 は

AHI

5

で あ り,

15

人 に

1

人 は

AHI

15

, つまり循環器疾患の発症リスクの高まる中等~重症の

OSA

に罹患していると考えられている.我が国では大 規模な疫学研究はなく,正確な

OSA

有病率は明らかで はないが,一般住民

910

名を対象とした疫学調査におい て

AHI

10

OSAS

は男性

3.3

%,女性

0.5

%(全体で

1.7

%)との報告があり,患者数は約

200

万人と推定さ れている.しかし問題は診断率であり,治療の対象とな る

OSA

85

%以上が未診断といわれている.

表 2 睡眠呼吸障害(SDB)の ICSD-2 診断分類

1)中枢性睡眠時無呼吸症候群

 

◦原発性中枢性無呼吸

 

◦病的状態による他の中枢性無呼吸

チェーン・ストークス呼吸パターン 高地での周期性呼吸

上記でない中枢性無呼吸  

◦薬物,物質による中枢性無呼吸

 

◦乳児の原発性睡眠時無呼吸 2)閉塞性睡眠時無呼吸症候群

 

◦閉塞性無呼吸(成人)

 

◦閉塞性無呼吸(小児)

3)睡眠関連低換気/

低酸素症候群

 

◦睡眠関連非閉塞性肺胞低換気,特発性

 

◦先天性中枢性肺胞低換気症候群

4)病的状態による睡眠関連低換気/

低酸素

 

◦肺実質あるいは血管疾患による睡眠関連低換気 /低酸素

 

◦下気道閉塞による睡眠関連低換気 /低酸素

 

◦神経筋あるいは胸壁疾患による睡眠関連低換気 /低酸素 5)他の睡眠呼吸障害

 

◦分類不能

全高血圧 薬剤耐性高血圧症 心不全 心房細動 冠動脈疾患 急性冠症候群 大動脈解離

Kales et al.

Lancet 1984

Sampol et al.

Am J Respir Crit Care 2003 Logan et al.

J Hypertension 2001 Oldenburg et al.

Eur J HF 2007 Gami et al.

N Engl J Med 2005 Schäfer et al.

Cardiology 1999 Yumino et al.

Am J Cardiol 2007 30%

80%

76%

50%

31%

57%

37%

図 1 各心血管疾患における睡眠時無呼吸合併頻度

(7)

 

OSA

は低酸素血症や交感神経活性の亢進などを介し て二次的に種々の病態を惹起する.特に循環器疾患との 関連は強く,合併頻度が高いだけでなく

OSA

により循 環器疾患の病態が修飾される.米国の

Sleep Heart Health Study

SHHS

)によれば,

AHI

11

SDB

がある群で の主な循環器疾患発症のオッズ比は,心不全

2.38

,脳卒 中

1.58

,冠動脈疾患

1.27

であった.

 

OSA

は予後にも影響を及ぼし,中等症~重症の

OSA

患者の死亡率は対照群に比較して有意に高い.

2 中枢性睡眠時無呼吸(CSA)

の疫学

 

CSA

は心不全や脳卒中で比較的多く認められる無呼 吸パターンであり,多くの場合,そうした心血管系疾患 の結果として出現してくると考えられている.

 特に心不全患者における

CSA

の合併率は高く,

21

40

%と報告されている.これは

OSA

合併率とほぼ同じ 割合であるが,

AHI

15/hr

をカットオフ値とすると心 不全の

51.9

%が

SDB

であり,そのうちの

63

%が

CSA

で あったと報告されている.チェーン・ストークス呼吸

Cheyne-Stokes respiration

CSR

)は基本的に中枢性睡 眠時無呼吸低呼吸に伴う呼吸パターンであり,収縮機能 障害,拡張機能障害,各種弁膜疾患などの様々な病態で 認められるが,最も多いのが収縮機能障害である.収縮 不全例ではチェーン・ストークス呼吸を伴う中枢性睡眠 時無呼吸(

CSR-CSA

)は主要な予後予測因子の

1

つで あり,死亡リスクを

2.14

倍上昇させる.また,

CSR- CSA

合併心不全患者は,

CSR-CSA

非合併心不全患者に 比べて有意に死亡率,心臓移植率が高い(相対危険度:

2.53

).心不全患者における

CSA

の危険因子は,男性,

心 房 細 動, 年 齢 ≧

60

歳, 低 二 酸 化 炭 素 血 症( ≦

38 mmHg

)と報告されている.

病 態

1 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)

1 発生機序

 睡眠時無呼吸は

CSA

OSA

とに分類されるが,その 大部分は

OSA

である.

OSA

の基本的病態生理は,睡眠

中に出現する上気道(特に咽頭部)の狭窄・閉塞であり,

これが

10

秒以上持続したときに無呼吸と定義される.

ヒトは通常,仰臥位で就寝するが,このとき,重力の影 響を受け口蓋垂,舌根部が沈下するため上気道は狭小化 する.睡眠状態に入ると,上気道を構成している筋肉群

(頤舌筋などの上気道拡大筋)が活動性を失い弛緩する ため,上気道はさらに狭小化する.

OSA

患者は,上気 道の形態学的あるいは機能的な異常により,睡眠中に容 易に上気道が狭窄・閉塞し,無呼吸が出現する.

① 形態学因子の異常

 上気道(咽頭腔)の狭小化を来たす因子としては表3 に示すように,軟部組織,頭蓋顔面形態,体位の

3

つが ある.肥満は

OSA

発症の最大のリスクファクターであ り,肥満者の上気道は軟部組織の発達や過度の脂肪沈着 のため常に狭小化している.したがって,吸気時の陰圧 により容易に閉塞する.肥満を伴う先天性疾患(ダウン 症候群,

Prader-Willi

症候群など)では

OSA

の有無を念 頭に置く必要がある.しかし,欧米の

OSA

患者の多く が肥満を伴うのに対し,我が国の

OSA

患者の

1/4

1/3

は非肥満であることに注意しなくてはならない.扁桃肥 大(

3

度)による

OSA

は成人ではまれであるが,小児で は比較的多くみられ,扁桃摘出により完治が望める.ま れではあるが巨舌を呈する内分泌疾患(甲状腺機能低下 症,先端巨大症)や代謝疾患(アミロイドーシス)など は二次性の

OSA

を起こすことがある.

 非肥満の

OSA

では,しばしば頭蓋顔面形態の異常が みられる.特に,我が国を含めたアジア人種では,長顔,

下顎の後退,小顎症などのため,仰臥位で咽頭部が狭小 化し

OSAS

を発症しやすい.

表 3 上気道閉塞を来たす形態学的因子

1)軟部組織の因子

◦肥満による上気道軟部組織への脂肪沈着

◦扁桃肥大

◦巨舌

◦上気道の炎症(アレルギー性鼻炎,慢性副鼻腔炎,咽

頭炎など)

2)頭蓋顔面骨の因子

◦上顎骨の後方偏位

◦下顎骨後方偏位

◦下顎骨の未発達,小顎症 3)本位の因子

◦仰臥位

◦頸部の屈曲

◦肺気量の変化

◦循環血液量の変化

(8)

② 機能的因子の異常

 上気道の開存性は気道腔内の陰圧と上気道拡張筋の活 動性のバランスにより決定されている.気道内陰圧は横 隔膜の収縮力によって決定されるが,気道腔内の陰圧が 上気道拡張筋の活動性を上回れば上気道は閉塞する.上 気道拡張筋の活動性は呼吸中枢や大脳皮質の上気道支配 領域からの刺激の程度に影響され,睡眠状態にも大きな 影響を受ける.睡眠により上気道拡張筋群の活動性が低 下して上気道は狭小化するが,この程度が強ければ上気 道は閉塞し,

OSA

が出現する.アルコールや睡眠導入 薬は

OSA

を増悪させるが,これは,舌下神経の活動が 抑制されて上気道拡張筋の活動性が失われるためであ る.

③ 体 位

 上気道の形態は体位により大きな影響を受ける.仰臥 位では重力による舌根部の沈下のため上気道が狭小化す るが,側臥位や腹臥位では重力の影響を受けにくいため 狭小化が防げる.頸部の屈曲は上気道の狭小化を助長す る.また,肺気量の変化も上気道の形態を変化させ,肺 気量の増加は上気道を拡大し,低下は狭小化を招く.さ らに,体位による循環血液量の変化(立位から臥位)も 上気道の狭小化を招くことが報告されている.

2 臨床症状

(表4)

 本症候群では極めて大きないびきや無呼吸が典型的症 状である.自覚的臨床症状としては,昼間の過剰な眠気 が典型的であるが,熟睡感の欠如,全身倦怠感,夜間頻 尿,夜間呼吸困難などをはじめとする症状が報告されて い る. 眠 気 の 主 観 的 な 尺 度 と し て は 一 般 に

Epworth

Sleepiness Scale

ESS

)が使用され,

11

点以上が異常な 眠気あり,

16

点以上で重症と判定する.現在,日本人 向けに一部改変されたものも

http://www.i-hope.jp

からダ ウンロード可能である.循環器疾患患者では自覚症状が 乏しい場合も多く,肥満・顔面形態・咽頭形態の異常の 有無に注意して,異常が疑われる際にはパルスオキシメ ータ検査などを用いて積極的に

OSA

を探すように心掛 ける必要がある.我が国での検討によると,

AHI

5

の 群で日中の過剰傾眠,さらに性機能低下,幻覚,うつと いった症状も付随することがある.

OSA

では胸腔内が 陰圧になることによって胃食道逆流症の合併も多く,

CPAP

治療で改善することが知られている.また,

OSA

患者では夜間口呼吸をしており,口腔内・咽頭などが乾 燥するために扁桃炎を繰り返し生じることがある.

 他覚的徴候としては,いびきが最も多く,我が国の報 告では

OSA

93

%でいびきの合併を認めている.多く の症例では,ベッドパートナーなどから睡眠中の無呼吸 や異常体動を指摘されている.

3 血行動態への影響

 

OSA

が心血管系に与える影響は,胸腔内が繰り返し 高度の陰圧・低酸素状態・高二酸化炭素状態になること,

これらの結果,交感神経活動の活性が短期的・長期的に 亢進すること,また低酸素のために生じる液性因子や血 管内皮の変化などが重なって生じると考えられている.

 高度な

OSA

では胸腔内に-

50 mmHg

以上の陰圧が一 晩中繰り返して生じているが,これは心臓全体に対して 外部から間欠的な吸引を行うことと同様の作用をもたら しており(

transmural pressure

の上昇),心室収縮に対し て逆方向の力を作用させることで後負荷の上昇と同様の 作用を及ぼし,直接的に心収縮に悪影響を与えているこ とになる.一方,胸腔内が陰圧になると静脈還流が急速 に増加し,右心系の容積が急激に増大する.その結果,

心室中隔が左室側に変位するため,左室の収縮・拡張が 妨げられ,左心機能が一過性に低下する(図2).上記 の結果,特に不全心では心拍出量の低下はさらに大きく なる上に,心拍出量や血圧の回復が遅延することが知ら れており,心不全患者に

OSA

が合併していると夜間の 無呼吸時に心機能がさらなる悪化を来たしているものと 考えられる.また,低酸素状態は肺動脈圧の上昇を招き,

短期的・中期的に右心機能を悪化させる原因となる.

4 交感神経活性と神経体液性因子への 影響

 

OSA

を有する患者において,無呼吸時のみならず昼 表 4 自覚症状・他覚徴候

症状・徴候 発現頻度(%)

いびき

93

無呼吸の指摘

92

夜間体動異常

54

日中の過剰傾眠

83

熟睡感の欠如

51

全身倦怠感

51

夜間頻尿

40

夜間呼吸困難感

38

起床時の頭痛

35

夜間覚醒

35

集中力低下

28

不眠

19

うつ,性機能障害,胃食道逆流症 記載なし

(9)

の覚醒時においても交感神経系が亢進していることが,

就寝中の尿中ノルエピネフリン濃度の上昇や筋交感神経 活動の直接記録により確かめられている.交感神経活動 の亢進機序には無呼吸に伴う,(

1

)低酸素血症,(

2

)高 二酸化炭素血症,(

3

)肺伸展反射の消失,および(

4

)途 中覚醒がある.交感神経活動の亢進は

OSA

における一 過性および持続性の血圧上昇にかかわっている(図3).

5 炎症,酸化ストレス,血管内皮,動 脈硬化への影響

 動脈硬化の発症と進展には炎症が重要な役割を果たし ており,多くの免疫細胞やサイトカインが関与する.な かでも高感度

C-reactive protein

CRP

)や

interleukin

IL

-6

は,優れた心血管イベントの発症予知因子である.実 際,

OSA

患者から血清中の

CRP

値と

IL-6

値を測定する と,

OSA

が重症なほど血清中の

CRP

値と

IL-6

値は増加 していた.また,炎症マーカーの

1

つである

serum amy- loid A

OSA

患者では増加している.

 また無呼吸や低呼吸後の再呼吸による急激な酸素濃度 の上昇は,酸化ストレをもたらす.さらに

OSA

患者で

はエンドセリンやアンジオテンシンの値が上昇すること で,持続した血管収縮が誘導され血管内皮障害が誘導さ れる.このように

OSA

では夜間の間欠的低酸素が酸化 ストレスを増加させ,種々の分子を介して炎症反応を増 強し,血管内皮細胞機能障害を引き起こすことで動脈硬 化が加速し,心血管イベントの増加につながると考えら れている.

6 インスリン抵抗性との関連

 インスリン値,

HOMA-R

指数[

homeostasis model as- sessment ratio

HOMA-R=IRI

( μ

U/mL

)×

FPG

mg/dL

÷

405

],糖負荷テスト,グルコースクランプ法などを 利用した多くの横断的研究で閉塞性睡眠時無呼吸(

ob- structive sleep apnea

OSA

)が体重と独立してインスリ ン抵抗性に関連するとの報告がみられている(図4).

国 際 糖 尿 病 連 合(

International Diabetes Federation

IDF

)の「睡眠時無呼吸と

2

型糖尿病に関する

IDF

合意 声明」では「(

1

2

型糖尿病と睡眠呼吸障害(

sleep dis- ordered breathing

SDB

),特に

SDB

で最も頻度が高い

OSA

に関連がある可能性が,最近の研究によって示さ れている.

OSA

40

%がやがて糖尿病になり,糖尿病 患者の

23

%は

OSA

である.(

2

IDF

は医療機関に,この

2

つの疾患の関連についての研究活動を促進することを 求める.(

3

1

つの疾患を持つ患者に対して他の疾患が 伴う可能性を考慮されるべきである」としている.

 

OSA

とメタボリックシンドローム(

metabolic syn- drome

MetS

)の関連も注目される.一般的には,

AHI 30

≧の重症

OSA

60

70

%以上は

Mets

を合併してい ると報告されている.

7 血栓,血小板活性との関連

 心筋梗塞や脳梗塞の発症には,プラークの一部が傷害 され,その部位に血小板が凝集して血栓を形成すること で血管が完全閉塞し発症する.このプラークを脆弱化さ せ る 分 子 で あ る

matrix metalloproteinase

MMP

-9

OSA

患者では上昇している.一方,

MMP-9

を阻害する 分子である

tissue inhibitor of metalloproteinase

TIMP

-1

は,コントロールと

OSA

患者では有意差が認められ ない.さらに,

OSA

では血液凝固異常により過凝固の 状態になっていることが指摘されている.

OSA

患者で 認められる血中

Fibrinogen

や粘性度(ヘマトクリット),

tumor necrosis factor

TNF

-

αの上昇は,血栓形成を促 進させると考えられている.

OSA

では

plasminogen-acti- vator inhibitor type 1

PAI-1

)が増加しており,線溶活 性を阻害して血栓の促進傾向に関与している可能性も指 図 2 閉塞時睡眠時無呼吸の血行動態への影響

 上気道の閉塞(①)が生じると,吸気時の呼吸筋運動(②)

により,全身からの静脈還流が増加(③)する結果,心室中隔 は左心室の方向に張り出す(④).また,左心室に対する外部 からの陰圧は(⑤),収縮に対する障害(後負荷の増大)となり,

心機能が低下する.

(10)

覚醒時の心拍数増加 無呼吸時の心拍数減少

胸部大動 脈伸展 肺血管床

伸展 肺動脈圧

上昇 左室充満圧 上昇 肺血管収縮

副交感神経

高二酸化炭素 血症 低酸素

血症

肺血管床内 血液貯留

心 静脈還流

循環平衡 心室

相互連関

心筋虚血 不整脈 心不全 抑制

亢進 急性効果

急性・慢性 効果 抑制

中心血液量増大

右室流入

増大 左室流入

障害

心拍出量 変動

体血管収縮 腎

O

2化学反射

(頸動脈洞神経)

直接作用 圧反射動脈

ANP

低圧系 圧反射

圧反射 リセッティング 副腎髄質

交感神経 緊張

高血圧

左室肥大 左室後負荷

増大 胸部大動脈内

血液貯留 胸腔

内圧低下

増幅 無呼吸

直後の覚醒

閉塞性睡眠時無呼吸

図 3 閉塞性睡眠時無呼吸の病態生理

 閉塞性睡眠時無呼吸では,(1)気道閉塞下の呼吸努力に伴う胸腔内圧の低下,(2)低酸素血症,そして(3)覚醒反応が循 環動態を大きく変動させ,自律神経系と各種反射調節系を巻き込んで,一過性および持続性の血圧上昇にかかわっている.

ANP:心房性利尿ペプチド,点線は降圧機序を示す.ANP:心房性利尿ペプチド

図 4 肥満・内臓脂肪と閉塞型無呼吸の関連及び結果として起こる病態生理

心血管障害 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)

肥満と内臓脂肪

酸化ストレスおよび活性酸素

HIF-1α 活性化

接着分子 アディポカイン 遊離脂肪酸

インスリン抵抗性 高血圧

炎症,NF-kBの経路 交感神経の活性化 間欠的低酸素 睡眠分断および覚醒

(11)

摘されている.また,間欠的低酸素による酸化ストレス が直接的または間接的に血小板の活性化や凝固能の亢進 に関与していることも示唆されている.

8 肥満低換気症候群(Pickwickian 症 候群)

(表5)

 

1956

Burwell

らによって提唱された

Pickwickian

症 候群とは,肥満,傾眠,痙攣,チアノーゼ,周期性呼吸,

多血症,右室肥大,右心不全の

8

徴候を有する疾患を指 す.

Pickwickian

症候群の臨床像が,

Charles Dickens

の 小説“

Pickwick Club

”の

Joe

少年に酷似していることか ら,この名が付けられた.肥満低換気症候群(

obesity hypoventilation syndrome

OHS

)は

OSA

の重症型と考 えられており,

Pickwickian

症候群と同様に扱われ,欧 米を含めた一般的な考え方では

BMI

30 kg/m

2以上,

PaCO

2

45 mmHg

以上で,かつガス交換障害が高度の ため低酸素血症を伴う肺胞低換気があり,睡眠呼吸障害 があれば

OHS

と考えられている.肺胞低換気を示す重 症慢性閉塞性肺疾患(

COPD

),胸郭拘束性肺疾患,神 経筋疾患との鑑別は重要である.

OHS

は循環器系の合 併症を惹起しやすく,通常の

OSA

より予後不良である.

治療には,減量と同時に睡眠呼吸障害に関しては

CPAP

が第一選択である(クラスⅠ,レベル

A

).しかし,通 常の

OSA

患者に比し,高圧の

CPAP

が必要なことが多 く,その不快感のため治療の継続が難しかったり,

CPAP

だけでは睡眠中の酸素飽和度の低下を防止できな い場合があり,

bi-level PAP

による治療が必要となるこ ともある(クラスⅡ

b

,レベル

C

).重症例では気管切開 が検討されることもある(クラスⅡ

b

,レベル

C

).

 なお,本疾患については厚生労働省特定疾患の対象疾 患に指定されており,調査研究が行われている.

2 中枢性睡眠時無呼吸(CSA)

1 機 序

 睡眠時無呼吸の発生は呼吸調節機序から説明できる.

覚醒時の呼吸は動脈血中の二酸化炭素(

CO

2)および酸 素(

O

2)と高位中枢により調節されているが,睡眠中 はもっぱら

CO

2化学反射を介する負帰還システムにより 換気が制御される.動脈血中に増加した動脈血二酸化炭 素分圧(

PaCO

2)は血液脳関門を通過し,

H

+イオンを遊 離することにより化学受容器を刺激する.したがって,

血中の

PaCO

2の変化が脳脊髄液の

pH

を変化させるため には一定の時間を要する.一般に負帰還システムは,セ ンサーの感度が高すぎる信号の伝達に時間がかかるとき 不安定になる.心不全患者では低酸素血症,交感神経緊 張など種々の要因により呼吸中枢の

CO

2感受性が亢進し ているだけでなく(高いセンサーの感度),循環時間の 延長により

PaCO

2の呼吸中枢への伝達が遅れている(情 報伝達の遅延).これらが呼吸調節システムを不安定化 し,周期性呼吸を誘発しやすい条件を形成している.

2 臨床症状

 

CSA

患者に特徴的な自覚症状はなく,基本的には

OSA

患者のそれと共通する.不眠,日中の眠気,全身 倦怠感などがそれである.また,

CSA

患者においては,

CSA

を有さない心不全患者よりも深睡眠が減少し,

REM

睡眠の割合が低下し,覚醒反応が増加している.

このように

CSA

患者の睡眠構築は障害されているにも かかわらず,

CSA

患者において日中の眠気の指標であ る

Epworth Sleepiness Scale

ESS

)は変化せず,

AHI

と も相関しない.また,心不全に由来する息切れや全身倦 怠感と,

CSA

に由来する症状とを区別することは難し い.純粋な

CSA

患者であれば

OSA

患者のようないびき を生ずることもない.このような理由から,

CSA

の存 在を自覚症状から予測することは難しい.

 

CSA

患者の中には,チェーン・ストークス呼吸(

CSR

) を覚醒時にも示す症例がある.また,覚醒時の

CSR

が 安静時には明らかではなくとも,心肺運動負荷試験によ って明確になる場合も少なくない(いわゆる換気の

oscillation

).

 

CSA

を伴う心不全患者は,睡眠中の血中と尿中のノ ルエピネフリン濃度が高く,

CSA

が睡眠中の交感神経 活性を亢進させると考えられる.

OSA

患者にみられる 交感神経活性亢進の昼間への「持ち越し効果」が

CSA

表 5 肥満低換気症候群(Pickwickian 症候群)の治療

クラスⅠ

◦減量(エビデンスレベルA)

◦CPAP(エビデンスレベル A)

クラスⅡa  なし クラスⅡb

◦CPAP

だけでは睡眠中の酸素飽和度の低下を防止でき ない場合のbi-level PAP(エビデンスレベルC)

◦重症例に対する気管切開(エビデンスレベル C)

クラスⅢ  なし

(12)

患者においても認められるか否かは,いまだ不明である.

3 OSA との違い

(表6)

 

CSA

を伴う心不全例は

OSA

を伴う心不全症例と比較 して,男性に多く,高齢で,

BMI

が低く,心房細動の 頻度が高く,

PaCO

2が低く,肺動脈楔入圧が高い.また,

心不全治療により肺動脈楔入が低下すると

CSA

も改善 する.

 無呼吸が血行動態に与える影響も

OSA

CSA

では異 なる.

OSA

患者の無呼吸中の胸腔内圧が陰圧となる結 果,静脈還流が著明に増加し,前負荷が増大する.拡大 した右心室は心室中隔を圧排し,左室容積を減少させる こともある.また,心室内外の圧較差が増大し,後負荷 も増大する.このような血行動態上の変化が心筋ポンプ 機能を直接低下させる.したがって,このような因子が 心不全増悪に強く関連している症例(肥満肺胞低換気症 候群など)においては,心不全の急性期治療として持続 陽圧呼吸療法は有効である.

 一方,

CSA

による無呼吸中には胸腔内圧低下が生じ ないため,前負荷や後負荷の増大を介した心筋ポンプ機 能の悪化は生じない.しかしながら,

CSA

患者におい ては,無呼吸中にその周期に一致した筋交感神経活性,

心拍変動,体血圧,心拍数,脳血流の周期的変動が観察 される.

4 複合型睡眠時無呼吸症候群

(CompSAS)

 複合性睡眠時無呼吸症候群(

complex sleep apnea syn- drome

CompSAS

)は,閉塞性睡眠時無呼吸(

OSA

) が主体と診断された患者の治療時に,有意の中枢性睡眠 時 無 呼 吸(

CSA

) が 生 じ て く る 現 象 を 指 し て い る.

CPAP

タイトレーション時や耳鼻科的手術治療後にこう した現象が生じることは経験的に知られていたが,

Morgenthaler

ら は,

CompSAS

を,

CPAP

タ イ ト レ ー シ ョンが閉塞型無呼吸低呼吸のイベントを消失させた後に 中枢性無呼吸指数(

CAI

)が

5

以上残存するか,チェーン・

ストークス呼吸が出現して呼吸が分断されるもの,と初 めて定義した.諸外国での検討では,その頻度は

OSAS

患者の

15

25

%に上ると報告されたが,その後に行わ れた我が国における

2

つの調査では,

4,582

症例の

CPAP

タイトレーション時に

194

名(

4.2

%)の発生,また

1,312

例の

CPAP

タイトレーション時に

66

例(

5.0

%)の 発生が報告される程度であり,少なくとも諸外国からの 報告に比較して少ない現象であることが判明している.

 

CompSAS

が発生する機序は現時点では明らかにされ

ていないが,

CompSAS

患者を

CPAP

開始後数か月で再 検すると,多くの患者で

CSA

が軽減または消失する点 から,

CPAP

開始に伴う急激な肺の伸展に対する神経反 射による中枢性の呼吸抑制が一因である可能性が挙げら れている.また,心不全などによって呼吸が不安定とな り,元来

CSA

(チェーン・ストークス呼吸)を生じや すい状態の患者に

OSA

が合併している際に,

OSA

を治 療するための

CPAP

治療を行うことにより

CSA

が表面

化し,

CompSAS

という状況が生じる可能性も推定され

ている.

 治療としては,多くの症例で

CPAP

のみの治療により,

数か月の間に

CSA

が消失していることから,患者が

CPAP

治療を継続できるのであれば,経過を観察するこ とは有効と考えられる.

CompSAS

では元来の

OSA

CPAP

治療後に発生した

CSA

が問題となっているため,

これら双方の加療が可能な

ASV

による治療成績が最も 優れている.

 以上のように,

bi-level PAP

機器や

ASV

機器は

OSA

CSA

両者の睡眠呼吸障害をほぼ完全に治療できるの はわかっているものの,我が国の保険医療体系ではこれ らの機器は

CPAP

と比較して,極めて高額であることを 考えると,まず

CPAP

治療を行った後に残存する

CSA

がある患者に対してのみ,こうした機器を使用していく ことが妥当であると考えられる.

診 断

1 簡易モニター

【同義語】

携帯用装置,簡易検査,簡易診断装置,簡易

SAS

検査

表 6 OSA と CSA の違い 日中の

眠気 睡眠中の交

感神経活性 交感神経活性亢進の日 中への持ち越し効果

無呼吸中の血行動態 胸腔内圧 前負荷 後負荷

OSA

強い 亢進 あり −

50~− 80 mmHg

上昇 上昇

CSA

不明瞭 亢進 不明 −

5

~−10 mmHg 不変 不変

(13)

 睡眠時無呼吸症候群(

sleep apnea syndrome

SAS

) の最も確実な診断方法は,監視(

attend

)下における標 準睡眠ポリグラフ検査(

polysomnography

PSG

)である.

これに対し,

SAS

診断のための携帯用装置(以下,簡 易モニターと呼ぶ)は,脳波,眼電図,頤筋筋電図を省 くことで,在宅での検査を可能にした方法である.

1 検査機器

 米国の

American Academy of Sleep Medicine

AASM

),

American Thoracic Society

ATS

) と

American College of Chest Physicians

ACCP

)の

3

学会合同による指針は,

SAS

の検査機器を

Type 1

4

までの

4

段階に分類した.

Type 1

は監視下での

PSG

である.簡易検査は表7のよう に

Type 2

4

3

段階にまで分類された.

 我が国の診療報酬上の記載では,「携帯用装置とは鼻 呼吸センサー,気道音センサーによる呼吸状態及び経皮 的センサーによる動脈血酸素飽和状態を終夜連続して測 定するもの」である.そのため,医療保険では,鼻気流,

いびき音,パルスオキシメータによる動脈血酸素飽和度

SpO

2)の最低

3

項目を測定できることが必須の条件で ある.日本での通常の

SAS

の簡易モニターの機器は,

米国の指針(表

7)に当てはめると, Type 3

または

Type 4

のどちらかに相当する.

 

Type2

を除けば,

SAS

の簡易モニターには脳波記録が 含まれないため,夜間の睡眠段階(深度)の判定はでき ない.そのため,簡易モニターでは正確な睡眠時間が測 定できず,真の無呼吸低呼吸指数(

apnea hypopnea in- dex

AHI

)の算出に限界がある.検査記録時間や自己 申告の睡眠時間による問題点を含み,簡易モニターで求 めた

AHI

は,あくまでも推定値であることに注意が必 要である.なお,簡易モニターで算出した

AHI

は,

PSG

で求めた

AHI

と区別するため,用語的に

RDI

respiratory disturbance index

RDI

)と区別されることがある.

2 適応症および使用適応

 我が国の医療保険制度における健康保険適用では,簡 易モニター(携帯型装置)は「睡眠呼吸障害が強く疑わ れる患者に対して,睡眠時無呼吸症候群の診断のために 用いる」ものである.

 しかし

COPD

CHF

が合併している場合には,どち らが影響しているのか,判断が難しく,安易に診断でき ないこともあるため,簡易モニターを確定診断のために 使用することは避けるべきで,原則として

PSG

を用い て睡眠呼吸障害の確定(最終)診断を行うことが望まし い.

3 循環器領域において,SAS を診断す る目的

1

)循環器疾患のリスクとしての

OSAS

のスクリーニン グ診断のため.

2

)慢性心不全に合併する

SAS

の診断・治療のため.

 循環器領域において,

SAS

を診断する目的には上記 の

2

つが考えられるが,簡易モニターが使用されてもよ いのは,(

1

)のスクリーニングの場合のみである.(

2

) のために簡易モニターを使用することは推奨されない.

確定診断は,あくまでも

PSG

を用いて行うべきである.

4 評価のための項目

① 無呼吸指数(apnea index:AI)

 簡易モニターにおいて,無呼吸の総回数を記録時間(推 定睡眠時間)で割って,

1

時間当たりに換算したもの.

② 無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index:

AHI)

 簡易モニターにおいて,無呼吸低呼吸の総回数を記録 時間(推定の睡眠時間)で割って,

1

時間当たりに換算 したもの.

③ 呼吸障害指数(respiratory disturbance index

:RDI)

 

AHI

とほぼ同義.通常簡易モニターにおいて,無呼吸 低呼吸の総回数を記録時間(推定睡眠時間)で割って,

1

時間当たりに換算したもの.

表 7 簡易モニターの分類(AASM,ATS,ACCP の 3 学会合同指針)

Type

チャンネル数 検査項目(センサー)

2 7以上

脳波,眼電図,頤筋筋電図,心電図か脈拍,気流,呼吸努力,酸素飽和度(SpO2)

3 4以上

換気か気流(少なくとも2チャンネル以上の呼吸運動か,呼吸運動と気流),脈拍か心電図,SpO2

4 1または 2 SpO

2または気流

(14)

④  酸 素 飽 和 度 低 下 指 数(oxygen desaturation index:ODI)

 簡易モニターにおいては,ベースラインの

SpO

2から 任意の値*注の低下した回数を記録時間(推定の睡眠時 間)で割って,

1

時間当たりに換算したもの.

(*注:任意の値とは,

2

%,

3

%,

4

%などで,

3

%なら

3

ODI

などと表記する.)

 他には,体位,いびきなどが評価項目に挙げられる.

 機種によっては,

AHI with 3

ODI

など呼吸と

SpO

2

低下を組み合わせたもの,または体位別も算出できる.

5

循環器領域における SDB 診療のた めの簡易モニター使用の限界(留 意点)

(表

8)

◦睡眠脳波は記録されていないため,睡眠の質(深さ)

は判定できないこと.

◦在宅や非監視での検査の場合,本当に寝ているかが保

証されないこと.

◦取り付けを患者自身がする場合は,記録状態が保証さ

れないこと.

 上記の点を十分考慮に入れて使用する.

 検査のための機種は,

PSG

を行う前のスクリーニン グで使用するのであれば,

SpO

2モニターか

Type 4

の検 査機器でもよいかもしれない.しかし,ある程度の診断 をつけたいときには,

Type 3

の機種を使用し,鼻・口セ ンサーは圧と温度の両方で,呼吸運動センサーは胸と腹 の両方で行い,

RIP

を使用し,

SpO

2と心電図をつけう るものが好ましい(ただし,センサー数が増加すると患 者自身では自宅で装着できなくなり,結局入院で検査技 師がつける場合もある).

2 標準・睡眠ポリグラフ検査

(PSG)

(表9)

【同義語】

終夜睡眠ポリグラフィー,終夜脳波,終夜ポリグラフ検査

 我が国の医療報酬において睡眠ポリグラフ検査(

Poly- somnography

PSG

)は「他の検査により睡眠中無呼吸 発作の明らかな患者に対して睡眠時無呼吸症候群の診断 を目的として行った場合に算定できる」とあるが,他の 検査とは何かは記載がないため不明である.しかし,前 述の簡易検査や

SpO

2モニターまたは

Holter

心電図など で異常所見があり,問診などから睡眠呼吸障害を疑わせ た場合には

PSG

を施行すべきである.

 

PSG

は,次に挙げる項目を取り付け施行する.

◦脳波,眼球運動,頤筋筋電図の記録より睡眠段階を判

定する.

◦気流,胸腹壁の呼吸運動, SpO

2,体位,前脛骨筋筋 電図,心電図,いびき,食道胸腔内圧,体温,炭酸ガ ス分圧などの生体信号および映像音声を同時記録す る.

 これらの情報の解析により睡眠の質,睡眠中の呼吸障 害,循環状態,パラソムニアなどの有無を評価する.

 

PSG

解析では睡眠段階(

sleep stage

),呼吸イベント,

覚醒反応,周期性四肢運動などをスコアリングする.

2007

4

月 に

AASM

よ り“

The AASM Manual for the Scoring of Sleep and Associated Events

”(

AASM

マニュ アル

2007

)が刊行され,電極装着位置をはじめ新しい 判定基準について記述されている.

表 8  循環器疾患のリスクとしての SDB のスクリーニング診断 のための検査

クラスⅠ

◦ Type 2

機器を用いてSDBのスクリーニング診断を行う

(エビデンスレベル A)

クラスⅡ

a

◦ Type 3

機器を用いてSDBのスクリーニング診断を行う

(エビデンスレベル C)

◦ Type 4

機器を用いてSDBのスクリーニング診断を行う

(エビデンスレベル C)

クラスⅡ

b

 なし クラスⅢ

 なし

注)いずれのtype の機器による検査においても,自動計測の結 果の数値だけを判断基準とせず,必ず実波形を確認した上で判 定すること.

表 9 循環器疾患に伴う SDB の診断・治療のための検査 クラスⅠ

◦循環器疾患に伴う SDB確定診断および治療効果の評価

のためのPSG(クラスⅠ,レベルA)

◦Type 2

機器を用いて循環器疾患に合併する

SDBの診

断・治療を行う(エビデンスレベルA)

クラスⅡa  なし クラスⅡb

◦Type 3

機器を用いて循環器疾患に合併する

SDBの診

断・治療を行う(エビデンスレベルC)

クラスⅢ

◦Type 4

機器を用いて循環器疾患に合併する

SDBの診

断・治療を行う(エビデンスレベルC)

(15)

3 欧米,日本でのそれぞれの基

(表10~12,図5,6)

① OSAS と SDB の診断・治療指針

 表10は,成人の

OSAS

に関する

ICSD-2

の診断基準を 示す.我が国でも,

2005

年に

5

つの関連学会の後援を得 て睡眠呼吸障害研究会から,一般臨床医向けの

OSAS

診 療に関するガイドライン「成人の睡眠時無呼吸症候群 診断と治療のためのガイドライン」が作成されている.

他に耳鼻科医向けの「睡眠呼吸障害(いびきと睡眠時無 呼吸症候群)診療の手引き」,保険歯科研究会協力編の「睡 眠時無呼吸症候群の歯科保険診療」などがあるが,まだ 小児および高齢者向けのものはない.日本循環器学会で は,循環器の診断に関する肺高血圧症治療ガイドライン,

また,慢性心不全治療ガイドラインにおいて,

SAS

SDB

について述べられてきた.一方,中枢性

SAS

central SAS

CSAS

)は慢性心不全で高率に合併するため,チ ェーン・ストークス呼吸(

Cheyne-Stokes respiration

CSR

)を伴った場合には,

2004

年に在宅酸素療法(

home oxygen therapy

HOT

),

2007

年にはサーボ制御圧感知 型人工呼吸器(

adaptive servo-ventilation

ASV

)が使用 可能となった.しかし,

OSAS

以外の

SDB

の病態は非 常に複雑であるため,

SDB

の診察では内科(循環器,

呼吸器,内分泌・代謝・糖尿病,神経など),耳鼻咽喉科,

歯科・口腔外科,ならびに精神科と多くの科の医師・歯 科医師との協力(科・科連携)が必要であり,地域医療

表 10  成人の閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS)に関する ICSD-2 診断基準

A

BとD,またはCと Dで基準が満たされる

A.以下のうち少なくとも1

つ以上が該当する

ⅰ.患者が,覚醒中に不意に眠り込むこと,日中の眠気,

爽快感のない睡眠,疲労感,または不眠を訴える

ⅱ.患者が,呼吸停止,喘ぎ,または窒息感で覚醒する.

ⅲ.ベッドパートナーが,患者の睡眠中の大きないびき,

呼吸中断,またはその両方を報告する

B.PSG記録で以下のものが認められる

ⅰ.睡眠

1

時間当たり5回以上の呼吸イベント(無呼吸,

低 呼 吸, ま た は 呼 吸 努 力 関 連 覚 醒respiratory effort-

related arousal:RERA)

ⅱ.各呼吸イベントのすべて,または一部における呼吸努 力のエビデンス(RERAは,食道内圧測定で認めるの が最も好ましい)

または

C.PSG記録で以下のものが認められる

ⅰ.睡眠1時間当たり

15回以上の呼吸イベント(無呼吸,

低呼吸,または

RERA)

ⅱ.各呼吸イベントのすべて,または一部における呼吸努 力のエビデンス(RERAは,食道内圧測定で認めるの が最も好ましい)

D.異常が,他の現行の睡眠障害,身体疾患や神経疾患,薬物,

または他の物質使用で説明できない.

※ な お, 循 環 器 疾 患 の

SDBで はOSAS

以 外 に, 特 異 的 に

CSAS,CSR,ならびに Complex SAS(複合性 SAS:後記

参照)の合併が高頻度であるため,表

3,4には成人の CSAS

CSRに関する ICSD-2の診断基準を示す

図 5 いびきなどの症状のある循環器疾患患者での睡眠呼吸障害(SDB)診断アルゴリズム 周囲からの強いいびきや無呼吸の指摘

AHI<5

(+)

(−)

SDB

がないか軽症 その他の睡眠障害の項目へ

SHVS

など

OSAS CSAS Cheyne-Stokes

呼吸

AHI≧5

SDB

随伴症状:EDSもしくは,睡眠中の窒息感やあえぎ,繰り返す覚醒,起床時の爽快感欠如,

日中の疲労感,集中力欠如のうち

2

つ以上を認める

AHI

または

3%ODI

5

未満 かつ

ESS<11

SOREMp,PLMS,RWA,PBD

など

その他の睡眠障害

SpO

2<90%が

5

分以上持続 漸増漸減呼吸パター

ンが

10

分以上持続 閉塞性が

50%以上

中枢性が

50%以上 AHI

または

3%ODI

5

未満だが

SpO

2<90%が

5

分以上持続

AHI

または

3%ODI

5

以上 または

ESS≧11

経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)測定装置または簡易無呼吸診断装置による検査と

Epworth sleepiness scale(ESS)

終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)

表 11  成人の中枢性睡眠時無呼吸(Central Sleep Apnea:
表 24 CSR-CSA に対するその他の陽圧治療 -1(Bi-level PAP)

参照

関連したドキュメント

および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値

点から見たときに、 債務者に、 複数債権者の有する債権額を考慮することなく弁済することを可能にしているものとしては、

たとえば、市町村の計画冊子に載せられているアンケート内容をみると、 「朝食を摂っています か 」 「睡眠時間は十分とっていますか」

FSIS が実施する HACCP の検証には、基本的検証と HACCP 運用に関する検証から構 成されている。基本的検証では、危害分析などの

一般社団法人 美栄 日中サービス支援型 グループホーム セレッソ 1 グループホーム セ レッソ 札幌市西区 新築 その他 複合施設

既存の精神障害者通所施設の適応は、摂食障害者の繊細な感受性と病理の複雑さから通 所を継続することが難しくなることが多く、

断するだけではなく︑遺言者の真意を探求すべきものであ

いてもらう権利﹂に関するものである︒また︑多数意見は本件の争点を歪曲した︒というのは︑第一に︑多数意見は