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V.睡眠時無呼吸症候群と循環器疾患

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Academic year: 2021

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はじめに

 睡眠時無呼吸症候群は,循環器疾患の発症予 防(一次予防)及び悪化予防(二次予防)にお けるリスク因子の 1 つであるのみならず,治療 介入のターゲットと考えられている1).睡眠時 の上気道閉塞に起因する閉塞性睡眠時無呼吸 (obstructive sleep apnea:OSA)が一般的である が,循環器疾患,特に心不全では,呼吸中枢か らの呼吸ドライブの低下による中枢性睡眠時無 呼吸(central sleep apnea:CSA)と引き続いて 起こるドライブの亢進による過換気を周期的に 繰 り 返 すCheyne-Stokes呼 吸(Cheyne-Stokes breathing:CSB)を呈することも多い.OSAは, 主に肥満を中心とした生活習慣病との関連が問 題となる病態で種々の循環器疾患のリスクとな り1),CSA(CSB)は循環器疾患(特に心不全) の結果生じると考えられている.循環器疾患の 発症・悪化には並存する肥満や生活習慣病を介 する機序もあるが,睡眠時無呼吸症候群が直接 的に心血管系に悪影響を及ぼす機序も示されて いる1)  本稿では,そのような睡眠時無呼吸症候群と 循環器疾患の関連における機序と,代表的循環 器疾患である冠動脈疾患と心不全との関連につ いてまとめ,睡眠時無呼吸症候群に対する治療 介入による心機能等への短期的な効果,長期の 心血管イベントの抑制効果を大規模臨床研究の データを中心に述べる.

1.‌‌睡眠時無呼吸症候群による‌

心血管系への悪影響

 OSAが心血管系へ及ぼす悪影響の機序とし

睡眠時無呼吸症候群と循環器疾患

要 旨 葛西 隆敏  睡眠時無呼吸症候群は,高血圧,虚血性心疾患ならびに心不全のリスク となるだけでなく,これらの循環器疾患に高頻度に合併し,予後悪化と関 連する.治療として陽圧呼吸療法が主体となるが,近年,陽圧呼吸療法に よる睡眠時無呼吸症候群治療に関する心血管イベントの抑制効果を検証 した大規模臨床研究の結果が複数発表され,さまざまな議論を呼んでい る.本稿では,これらについて解説すると共に,我が国の日常診療におけ る対応について述べる. 〔日内会誌 109:1089~1094,2020〕 Key‌words 高血圧,虚血性心疾患,心不全,持続気道陽圧(CPAP) 順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学講座,同 心血管睡眠呼吸医学講座,同 循環器遠隔管理学講座,順天堂大学医学部附属順天堂医院 睡眠・呼吸障害センター

Sleep Apnea Syndrome. Topics:V. Sleep apnea syndrome and cardiovascular diseases.

Takatoshi Kasai:Department of Cardiovascular Medicine, Juntendo University Graduate School of Medicine, Japan, Cardiovascular Respiratory Sleep Medicine, Juntendo University Graduate School of Medicine, Japan, Department of Cardiovascular Management and Remote Monitoring, Juntendo University Graduate School of Medicine, Japan and Sleep and Sleep Disordered Breathing Center, Juntendo University Hospital, Japan.

Ⅴ. 睡眠時無呼吸症候群と循環器疾患

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て,まず気道閉塞下で起こる吸気努力によって 生じる過度の胸腔内陰圧化が挙げられる1).静 脈還流増加から右室容量負荷が生じ,無呼吸に よる肺胞低酸素から肺動脈攣縮を呈し,右室圧 負荷増大もあいまって,心室中隔の左室側への シフトから左室充満が妨げられ,心拍出量が低 下する.さらに,左室壁も外から陰圧に抗して 内 側 へ 収 縮 す る こ と に な る た め,transmural pressure上昇・左室後負荷増大から左室肥大, さらに長期に亘れば心機能低下につながる可能 性がある.これに加え,無呼吸時の一過性低酸 素と引き続く再酸素化は酸化ストレス亢進と炎 症カスケードの亢進を来たし,血管内皮障害や 動脈硬化を引き起こす1).また,低酸素・高二 酸化炭素血症から化学受容体を介し,心拍出量 低下から圧受容体を介し,繰り返し生じる覚醒 反応も加わり,交感神経活性が亢進する.また, 肺進展受容体を介する交感神経活性低下が無呼 吸によって生じないことも影響して睡眠中抑制 されるはずの交感神経活性が高い状態が続く. さらに,交感神経活性の亢進は日中に持ち越す ことが知られ,昼間も含めた血圧上昇や不整脈 の発生,さらに長期的にみると,循環器疾患の 発症や悪化を来たす1)  循環器疾患の結果生じるCSA(CSB)でも,繰 り返す低酸素と覚醒反応,無呼吸による肺進展 受容体の活性化が起こらないことから,交感神 経活性が亢進する1).循環器疾患では既に交感 神経活性が亢進しており,そのような活性亢進 は予後悪化につながる.

2.冠動脈疾患と睡眠時無呼吸症候群

 米国の疫学研究の 40~70 歳の男性における 解析では,無呼吸低呼吸指数(apnea-hypopnea index:AHI)<5 回/1 時間の非OSA患者と比べ, 重症OSAを有する患者(AHI≧30 回/1 時間)で は1.68倍の冠動脈疾患イベント発生リスクを有 し,AHIが10回/1時間上がる毎のリスク上昇も 有意であることが示されている1).一方,CPAP

(continuous positive airway pressure) に よ る OSA治療の心血管イベント発生(心筋梗塞の発 生,不安定狭心症による入院等冠動脈疾患関連 イベントに高血圧新規発症,脳血管障害ならび に心不全を含む複合イベント)に対する有用性 を検証する無作為化試験がスペインから報告さ れているが,CPAP群,無治療対照群に統計学的 差はなく,冠動脈疾患一次予防におけるCPAPの 有効性は示されなかった2).しかし,CPAPを一 晩あたり平均 4 時間以上使用した群と 4 時間未 満の群の2群に分けた解析では,4時間未満の群 と無治療対照群は差がなかったが,4 時間以上 の群では無治療対照群と比較して有意なイベン ト発生リスクの低下が認められた.従って, CPAPの使用状況が保たれていれば,冠動脈疾患 関連イベントを含む心血管イベントの発生を予 防できる可能性がある.  冠動脈疾患患者の 40~65%に睡眠時無呼吸 症候群が合併する1).また,冠動脈疾患患者に おける観察研究では,OSAの合併は冠動脈疾患 の再発等に関連した心血管イベントの発生が多 く,予後悪化因子であるが,一方で,CPAP使用 患者の予後は良好であったため1),CPAPによる OSA治療のイベント抑制効果の可能性が示され た.その後,2016年にOSAを有する冠動脈疾患 患者におけるCPAP治療の心血管イベント抑制 効果を検証した 2 つの大規模無作為化試験の結 果が報告された.1 つは,冠動脈疾患または脳 血管疾患の既往を有する 45~75 歳のOSA患者 2,717人をCPAP群と無治療対照群に割り付けた 多施設研究であるSAVE試験(Sleep Apnea Car-diovascular Endpoints study)で,CPAPによって 日中の眠気や生活の質はCPAP群で改善したが, 主要評価項目である心血管死,心筋梗塞,脳梗 塞,不安定狭心症や心不全,一過性脳虚血発作 による入院を含む複合イベントの発生は両群間 で差がなかった3).観察研究と相反する結果で あったが,CPAP治療が保険適用外でCPAP治療

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に慣れていない国の施設からの登録患者も多く 含まれたことにも関連し,CPAP群のCPAPの平 均使用時間が一晩あたり 3.3 時間と全体的に使 用状況不良であったことが結果に影響したと考 えられている.実際に使用状況を反映した解析 では,対照群と比較してCPAP群での脳血管障害 の発生リスクが有意に低かった3).もう1つは単 施設での検討で,OSAを有する冠血行再建術後 患者 244 人を対象にCPAP治療群と無治療対照 群に無作為割り付けしたRICCADSA試験(Ran-domized Intervention with Continuous Positive Airway Pressure in CAD and OSA)であり,心血 管死,心筋梗塞,脳梗塞ならびに再血行再建術 の施行を含む複合イベントの発生は,こちらも 両群間で差がなかった4).しかし,この試験で もCPAPの平均使用時間が一晩あたり≧4時間で あることは,主要エンドポイント発生リスクの 低下と関連していた4).さらに,OSAを有する急 性冠症候群患者1,264人を対象に,CPAP治療群 と無治療対照群に無作為割り付けしたISAACC 試験(Effect of Obstructive Sleep Apnoea and Its Treatment with Continuous Positive Airway Pres-sure on the Prevalence of Cardiovascular Events in Patients with Acute Coronary Syndrome)の結 果が 2019 年に報告され,SAVE試験同様に日中 の眠気や生活の質の改善は認めたが,心血管 死,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,不安 定狭心症・心不全・一過性脳虚血発作による入 院を含む複合イベントの発生は両群間で差がな かった5).この試験でもCPAP群のCPAPの平均使 用時間が一晩あたり 2.8 時間と短く,群間差が ないことの理由の 1 つとして挙げられる.  前述の一次予防の試験も合わせて 4 つの試験 を表にまとめる.これらは全て眠気の少ない患 者を対象にしており2~5),無治療対照群になっ た場合の倫理的配慮から,眠気のあるOSA患者 が除外されていることはCPAPコンプライアン スが不良であったことに影響していることは明 らかである.従って,眠気のある患者が少なか らず存在する実臨床にこれらの結果をそのまま 当てはめるのは注意が必要である.CPAPによる OSA治療で冠動脈疾患に関連した心血管イベン ト抑制への有効性を示すことはできていないも のの,CPAPコンプライアンスを高めること,維 持することの重要性を再認識する結果であった.

3.心不全と睡眠時無呼吸症候群

 前述の米国における疫学研究において,睡眠 時無呼吸症候群は男性の心不全の発症リスクの 増加とも関連していた.しかし,心不全の一次 予防をターゲットにした睡眠時無呼吸症候群に 対する治療介入の有用性は検証されていない. 心不全患者での統計をみてみると,11~37%に OSAを,29~40%にCSAを合併することが知ら れ1),心不全患者の半数以上に何らかの睡眠時 無呼吸症候群が合併している.OSAでもCSAでも 合併している場合の予後は不良であり,最近で は,慢性期のみならず,急性非代償性心不全で 入院した患者の急性期に検出された睡眠時無呼 吸症候群も長期予後悪化に関与することが示さ れ,より早期から診断と治療介入の検討がなさ れるようになってきた.  一方で,心不全自体が上気道周囲のむくみを 介してOSA,肺うっ血や心拍出量低下を介して CSA,いずれに対してもそもそもの病因となり, 重症度の悪化に関与することが示唆されてい る.従って,心不全に合併する睡眠時無呼吸症 候群に対する特異的治療の 1 つとして心不全そ のものへの治療の最適化が挙げられており,我 が国の「急性・慢性心不全診療ガイドライン (2017年改訂版)」(日本循環器学会・他,2018 年)でも推奨されている6).そうは言っても, 一定の割合で睡眠時無呼吸症候群が残存した り,目標とする心不全の最適治療達成が困難な 症例も少なくないため,心不全の治療を最大限 行ったうえで睡眠時無呼吸症候群をターゲット にした治療が検討される.

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 OSAに関しては,少数例の慢性心不全患者を 対象にした短期間(1~6カ月程度)の無作為化 介入試験では,CPAPによるOSA治療で左室収縮 機能が改善する等の有効性が示されている1) 長期予後への効果を検討した無作為化試験は今 のところないが,OSAを有する慢性心不全患者 を対象にした我が国の観察研究では,CPAP治療 を受けていない患者群に比べ,CPAP治療を受け ている患者群の予後は良好であった1)  CSAに関しては,β遮断薬,心臓再同期療法等 心不全治療の最適化で心機能改善と共にAHIが 残存することが示されているが,それでも残存 するCSAに対しては,CPAPの効果が多数の小規 模な研究で検証されている1).2005年に報告さ れたCSAを有する駆出率の低下した慢性心不全 患者 258 人におけるCPAPによる長期予後改善 を 検 討 し た 無 作 為 化 試 験 で あ るCANPAP試 験 (Canadian Continuous Positive Airway Pressure

for Patients with Central Sleep Apnea and Heart Failure)では,CPAPによる予後(全死亡と心移 植の複合イベント)改善効果は認められなかっ た7).この試験の事後解析で,CPAP群の約50% 表 睡眠時無呼吸症候群への陽圧呼吸療法の心血管イベントへの効果を検証した大規模無作為化試験 試験名 発表年著者 基礎疾患 介入 方法 (月)期間 N 結果 冠動脈疾患

― Barbé20122) 眠気のないOSA CPAP 中央値48 対照 366CPAP 357

メインの結果はCPAP群と対照群で有 意差なし CPAP一晩平均4時間以上使用した群 では有意にイベント発生改善 SAVE McEvoy20163) 冠動脈疾患/ 脳血管疾患の診断 +眠気のないOSA CPAP 44.4 平均値 対照 1,341CPAP 1,346 メインの結果はCPAP群と対照群で有 意差なし CPAP一晩平均4時間以上使用した群 と対照群を傾向性スコアでマッチさ せた解析でCPAP群は有意に脳血管障 害イベントリスクを低下 RICCADSA Peker20164) 冠 血 行 再 建 術 (PCI/CABG)後+ 眠気のないOSA CPAP 56.9 中央値 対照 122CPAP 122 メインの結果はCPAP群と対照群で有 意差なし CPAP一晩平均4時間以上使用は予後 改善と有意に関連

ISAACC Sánchez-de-la-Torre 20195)

急性冠症候群+眠

気のないOSA CPAP 中央値40.2 対照 626CPAP 629

メインの結果はCPAP群と対照群で有 意差なし

CPAPコンプライアンスはイベント発 生と関連なし

心不全

CANPAP Bradley20057) HFrEF(LVEF≦45%)+CSA CPAP 平均値24 対照 130CPAP 128

メインの結果はCPAP群と対照群で有 意差なし

CPAPレスポンダーではLVEF,生存率 改善

SERVE-HF Cowie20158) HFrEF(LVEF≦45%)+CSA ASV 中央値31 対照 659ASV 666

メインの結果はASV群と対照群で有 意差なし

ASV群で全死亡と心血管死増加 CAT-HF O’Connor201710)

急性非代償性心不 全(HFpEF & rEF)

+OSA/CSA ASV 6 計215予定 途中中止で 対照 61 ASV 65 メインの結果(入院死亡+六分間歩行 距離の複合)で有意差なし HFpEF群ではASV有効 ADVENT-HF Bradley進行中9) HFrEF(LVEF≦45%)+OSA/CSA ASV 進行中 計860(予定) 進行中

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でCSAが十分に抑制されておらず,そのような 症例の予後は不良であり,このような症例の存

在が結果に影響したと考えられている1)

 より多くの心不全症例でCSAが十分に抑制さ れ る 治 療 法 と し てadaptive servo ventilation (ASV)があり,少数の慢性心不全患者を対象に した短期の無作為化介入試験では,ASVによる CSA治療で心機能改善等の有効性が示されてい る1).2015 年にCSAを有する左室駆出率が低下 した慢性心不全患者 1,325 人を対象にASV治療 群 と 無 治 療 対 照 群 に 無 作 為 割 り 付 け し た SERVE-HF(Treatment of Sleep-Disordered Breathing with Predominant Central Sleep Apnea by Adaptive Servo Ventilation in Patients with Heart Failure)試験の結果が報告され,主要評 価項目である全死亡,心移植,心室補助装置植 込み,心停止からの蘇生,除細動ならびに予定 外の心不全入院の複合イベントでは有意差がな かったことに加え,副次評価項目である心血管 死亡と全死亡リスクはASV群で有意に高いとい う予想と反対の結果が出た8).この試験では, ASV群のなかで脱落した症例が 30%近く存在 し,対照群にもASV等の陽圧呼吸療法を途中か ら開始した症例が20%弱含まれている等,群間 のクロスオーバーが大きいこと等が問題点とし て挙げられている.この試験結果によって,米 国,欧州の循環器系学会のガイドラインでは, CSA優位な睡眠時無呼吸症候群を有し左室駆出 率の低下した(≦45%)慢性心不全に対するASV 治療は推奨しない(class III)とされている.保 険制度の違いから,他国に比べて心不全患者に 対するASV使用頻度が高かった我が国において は,ASVの使用方法・設定の仕方等がSERVE-HF 試験と異なること,これまでの短期の無作為化 試験で示された心機能改善効果や我が国におけ る観察研究の結果とあまりに乖離があること等 から,優位なCSAを有し左室駆出率の低下した 慢性心不全に対するASV治療は禁忌ではない6) ただし,「急性・慢性心不全診療ガイドライン」 の記述にのっとり,まずCPAP治療を試み,それ によってCSAが十分に抑制されない場合にASV を 考 慮 す る こ と を 推 奨 し て い る6). 現 在, SERVE-HF試験の組み入れ患者と同様に左室駆 出率低下(≦45%)を有する慢性心不全患者を 対象に,CSA優位,OSA優位いずれも組み入れ可 能 でASVの 長 期 予 後 改 善 効 果 を 検 証 す る ADVENT-HF(A Multi-Centre,Randomized Study to Assess the Effects of Adaptive Servo Ventila-tion on Survival and Frequency of Cardiovascular Hospital Admissions in Patients with Heart Fail-ure and Sleep Apnea)試験が進行中であり,結

果が待たれるところである9)  急性非代償性心不全においても,睡眠時無呼 吸症候群を有する患者の予後は不良であるが, CPAPやASV等の陽圧呼吸療法の導入されてい る群と導入されていない群を比較すると,陽圧 呼吸療法で予後改善する可能性が示されてお り,慢性期に至る前の早期に診断と治療導入す る こ と が 利 益 を も た ら す 可 能 性 が あ る. SERVE-HFの結果を受けて,ASVを用いたその他 の臨床試験のいくつかも中止となったが,その 1つであるCAT-HF(Cardiovascular Improvements With MV-ASV Therapy in Heart Failure)試験は, 睡眠時無呼吸症候群を有する急性非代償性心不 全患者をターゲットにして,退院 6 カ月後まで のASVの有効性を検証する予定であった.中止 時点までの結果として,予定の半分の症例数で ある 126 例で解析結果が報告された10).あくま で予定数に達していない状況での解析で結論を 導くことはできないという前提であるが,主要 評価項目である死亡と心血管疾患による入院, 6 分間歩行距離を複合したグローバルランクス コアは2群間に有意差を認めなかった.しかし, 事前に予定されていたサブグループ解析におい て,ごく少数例ではあるが,左室駆出率の保た れた(≧45%)心不全患者のサブグループでASV 治療による有意なスコア改善が得られたことは 特筆すべき点である.このような症例を対象に

(6)

した無作為割付の大規模研究が行われることに 期待する.

おわりに

 睡眠時無呼吸症候群は,循環器疾患の一次予 防及び二次予防いずれにおいても重要であり, 恐らく,そのための治療ターゲットであると考 えられるが,この証明にはさらなる検証が必要 である.そのような検証においては,組み入れ 基準を眠気等の症状に乏しい症例に限らなけれ ばならないこと,薬物治療等と異なり,陽圧呼吸 療法では治療コンプライアンスが保てないこと も少なくないため,大規模臨床試験で通常用い られるintention-to-treat解析に基づくと,本当の 有効性を適切に評価するのには限界がある.現 在もいくつかの大規模臨床試験が進行中または 計画中であり,これらに期待が集まるものの,結 果が得られるまでには未だ時間がかかる.その 間,実臨床においては,睡眠時無呼吸症候群の診 断と治療の検討に加え,その後の治療コンプラ イアンスの維持に注力すべきと考える. 著者のCOI(conflicts of interest)開示:葛西隆敏;研究 費・助成金(旭化成,三和化学研究所,ソムノメッド), 寄附金(フィリップス・レスピロニクス),寄附講座(パ ラマウントベッド,フィリップス・レスピロニクス,フ クダ電子,ResMed) 文 献

1) Kasai T, et al : Sleep apnea and cardiovascular disease : a bidirectional relationship. Circulation 126 : 1495― 1510, 2012.

2) Barbé F, et al : Effect of continuous positive airway pressure on the incidence of hypertension and cardiovascu-lar events in nonsleepy patients with obstructive sleep apnea : a randomized controlled trial. JAMA 307 : 2161― 2168, 2012.

3) McEvoy RD, et al : CPAP for Prevention of cardiovascular events in obstructive sleep apnea. N Engl J Med 375 : 919―931, 2016.

4) Peker Y, et al : Effect of positive airway pressure on cardiovascular outcomes in coronary artery disease patients with nonsleepy obstructive sleep apnea. The RICCADSA randomized controlled trial. Am J Respir Crit Care Med 194 : 613―620, 2016.

5) Sánchez-de-la-Torre M, et al : Effect of obstructive sleep apnoea and its treatment with continuous positive air-way pressure on the prevalence of cardiovascular events in patients with acute coronary syndrome (ISAACC study): a randomised controlled trial. Lancet Respir Med 2019 [Epub ahead of print].

6) 日本循環器学会,他:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017 年改訂版).2018.

7) Bradley TD, et al : Continuous positive airway pressure for central sleep apnea and heart failure. N Engl J Med 353 : 2025―2033, 2005.

8) Cowie MR, et al : Adaptive servo-ventilation for central sleep apnea in systolic heart failure. N Engl J Med 373 : 1095―1105, 2015.

9) Lyons OD, et al : Design of the effect of adaptive servo-ventilation on survival and cardiovascular hospital admissions in patients with heart failure and sleep apnoea : the ADVENT-HF trial. Eur J Heart Fail 19 : 579― 587, 2017.

10) O’Connor CM, et al : Cardiovascular outcomes with minute ventilation-targeted adaptive servo-ventilation ther-apy in heart failure : the CAT-HF trial. J Am Coll Cardiol 69 : 1577―1587, 2017.

参照

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