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高炉スラグ微粉末の置換率が炭酸化メカニズムにおよぼす影響

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Academic year: 2021

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第 40 回土木学会関東支部技術研究発表会 第Ⅴ部門

高炉スラグ微粉末の置換率が炭酸化メカニズムにおよぼす影響

芝浦工業大学 学生会員 ○豊村 恵理 芝浦工業大学 正会員 伊代田 岳史

1.はじめに

コンクリートの中性化は,鉄筋腐食を助長し,耐久 性能や構造性能を低下させる可能性がある.現在,こ の中性化抵抗性を短期間に評価する目的で,実環境と は異なる高濃度の二酸化炭素により,促進試験が行わ れている.促進試験を行うと高炉セメントを使用した コンクリートは,普通ポルトランドセメントを用いた ものと比較して中性化に対する抵抗性が極めて低い と評価される.しかしながら,実環境調査における普 通セメント,高炉セメントの比較では,いずれも中性 化の進行に差はないという報告 1) が挙げられている.

中性化はコンクリート内の pH が低下することであり,

この現象は水和生成物と大気中の二酸化炭素が反応 し炭酸カルシウムを生じる炭酸化現象によって起こ る.これらのことを踏まえると,炭酸化メカニズムは 二酸化炭素の相違や,高炉スラグ微粉末の混入によっ てセメント水和物の量や性質が異なることで異なる ことが予想される.

そこで本研究では,異なる二酸化炭素環境下におけ る,普通と高炉セメントの炭酸化メカニズムの把握を することを目的とした.試験は炭酸化により生成する 炭酸カルシウムの違いと割合に着目し,検討を行った.

2.試験概要 2.1 供試体諸元

使用するセメントの配合を表-1 に示す.高炉スラグ 微粉末が混入することによって生成される水和物の 量や性質が異なる 2) ため,これらの要因が炭酸化に与 える影響を検討した.供試体は,ブリーディングの影 響をできるだけ受けず,少量で X 線回折の測定が可 能なように,φ 40×5mm の円盤型のセメントペース トとした.手練りによる練り混ぜ後,打設しガラス板 で封緘した.翌日に脱型し,水和の進行を促すため材 齢 28 日まで封緘養生を行った

2.2 二酸化炭素濃度環境

養生終了後,二酸化炭素の濃度を変化させた環境に 供試体を静置し,炭酸化させた.二酸化炭素の濃度は 0%,0.05%,0.5%,5%と変動させた.促進 5%は日本

工業規格(JIS)によって定められているコンクリー トの促進中性化試験方法(JIS A 1153)に基づいた.

0.5%は低濃度促進として,5%の 1/10 となるようにし た.また,0.05%の濃度は実環境下である実験室内と

した. 0%環境は,養生終了後も封緘状態を継続した.

いずれの環境も,温度 20℃,相対湿度 60%とした.

2.3 同一供試体を用いた表面 X 線回折試験

従来行われてきた粉末 X 線回折試験では,供試体 を粉砕し,粉末状にして測定を行うため,炭酸化部と 未炭酸化部を区別することが困難であり,粉砕した全 領域を平均化した値が算出されていた.また,粉砕等 の測定までの処理に手間がかかること,材齢の経過ご とに試験体が異なってしまうため誤差が生じること などが問題になる.そこで本研究では,供試体そのも のを粉砕せずに極表層面を X 線回折試験の測定に用 いた.供試体は表面から炭酸化が進行していくと考え られるため,経時的に表面 X 線分析をすることで炭 酸化の進行を捉えることができると考えた.また,供 試体を粉砕しないため,同一の供試体を用いて測定が

表-1 セメント配合

N BFS

N 100 -

B20 80 20

B50 50 50

B90 10 90

高炉セメントA種相当 高炉セメントB種相当 高炉セメントC種相当以上

備考

セメント

材料

回折角度2θ

回折強度

0.05%炭酸化材齢7日 0.05%炭酸化材齢1日 材齢28日

(養生終了時)

N

Ca(OH) 2 CaCO 3 ;Calcite CaCO 3 ;Vaterite

図 -1 同一供試体を用いた表面 X 線回折試験結果

キーワード 炭酸化,二酸化炭素濃度,高炉スラグ微粉末,カルサイト,バテライト

連絡先 〒135-8548 東京江東区 3-7-5 芝浦工業大学 Tel:03-5859-8356 E-mail:[email protected]

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可能であり,供試体による誤差を減らすことができる.

図-1 に二酸化炭素 0.05%で炭酸化させた同一供試体 を用いた表面 X 線回折試験による試験結果の一例を 示す.これより,養生終了時から炭酸化材齢経過ごと に,炭酸カルシウムであるカルサイト(CaCO 3 ;Calcite)

の回折強度は大きくなり,7 日経過後には炭酸カルシ ウムの他形であるバテライト(CaCO 3 ;Vaterite)が出 現していることが確認できる.そこで,本研究では,

炭酸化による炭酸カルシウムの生成に着目し,回折角 度(カルサイト:29.4°,バテライト:27.03°)の積 分強度を算出し,生成量とした.

2.4 示差熱重量分析試験

示差熱重量分析試験によって,水酸化カルシウム

(Ca(OH) 2 )と炭酸カルシウム(CaCO 3 )の生成量を 測定した.生成量は DTA 曲線の変曲点から TG 曲線 の重量変化量を用いて算出した. X 線回折試験と同様 に,炭酸化した極表層部のみの分析を行うために次の ような検討を行った. 図-2 に,供試体を 0.25mm 間隔 で 1mm 深さまで削りだした試料により測定した示差 熱重量分析によって得られた結果を示す.図は, N の 炭酸化前と二酸化炭素 5%環境下で 1 週間炭酸化した 結果である.水酸化カルシウムは炭酸化前と比べて減 少し,炭酸カルシウムは増加している傾向が確認でき る.水酸化カルシウムは全層に渡り減少しているが,

炭酸カルシウムは,表層からの深さ方向に減少してお り,極表層が最も多く生成されている.このことから,

極表層の試料を削りだして測定することで,炭酸化の 進行を捉えることができると考えられる.そこで,測 定は X 線回折試験同様に,表面の炭酸化部のみを削 り粉末状にした試料を用いて,養生終了後と,炭酸化 開始から経時的に行った.

3.実験結果および考察

示差熱重量分析によって求めた,養生終了時の水酸 化カルシウム生成量を図-3 に示す.置換率の増加に伴 い水酸化カルシウム生成量は減少し,置換率 90%にお いて生成量は 0 となった.次に,水酸化カルシウム量 の炭酸化による経時変化を図-4 に示す.水酸化カルシ ウムは,どの濃度環境下においても,炭酸化開始から 初期段階で水酸化カルシウム量が減少し,その後は減 少傾向がみられなかった.

図-5, 6 は示差熱重量分析によって得られた N, B50 の炭酸化による炭酸カルシウム量の経時変化を示し ている.これより,二酸化炭素濃度の相違により生成 速度が異なり,高濃度ほど生成速度が遅くなる結果が 得られた.炭酸化材齢 14 日以降では,二酸化炭素濃

0 5 10 15 20

0 0.25 0.5 0.75 1 C aC O

3

(% )

表層からの深さ(mm) CaCO3

0 5 10 15 20

0 0.25 0.5 0.75 1 C a( O H )

2

(% )

表層からの深さ(mm) Ca(OH)2

炭酸化前 Ca(OH)

2

炭酸化前 CaCO

3

図-2 示差熱重量分析結果

0 5 10 15 20

0 20 40 60 80 100

C a( O H )

2

(% )

高炉スラグ微粉末置換率(%)

Ca(OH)2

養生材齢28日

図-3 水酸化カルシウム生成量

0 5 10 15 20 25

0 7 14 21 28

C a( O H )

2

(% )

材齢(日)

0% 0.05%

0.5% 5%

N

図-4 水酸化カルシウム量の示差熱重量分析結果

0 5 10 15 20 25

0 7 14 21 28

C aC O

3

(% )

材齢(日)

0%

0.05%

0.5%

5%

N

図-5 炭酸カルシウム量の示差熱重量分析結果(N)

0 5 10 15 20 25

0 7 14 21 28

C aC O

3

(% )

材齢(日)

0% 0.05%

0.5% 5%

B50

図-6 炭酸カルシウム量の示差熱重量分析結果(B50)

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第 40 回土木学会関東支部技術研究発表会 第Ⅴ部門

0 7 14 21 28

材齢(日)

Calcite Vaterite

0 7 14 21 28

材齢(日)

Calcite Vaterite

0 5 10 15 20

0 7 14 21 28

C aC O

3

( C P S ・ de g )

材齢(日)

Calcite Vaterite

5% 0.5% 0.05%

図-7 X 線回折による炭酸カルシウム生成量の変化(N)

0 7 14 21 28

材齢(日)

Calcite Vaterite

0 5 10 15 20

0 7 14 21 28

C aC O

3

( C P S ・ de g )

材齢(日)

Calcite Vaterite

0 7 14 21 28

材齢(日)

Calcite Vaterite

5% 0.5% 0.05%

図 -8 X 線回折による炭酸カルシウム生成量の変化( B50 )

度によらず,セメント種類ごとにそれぞれ, N は 20%,

B50 は 15%程度の炭酸カルシウム生成量となった.こ

のことから,表層部では硬化体内に水酸化カルシウム が残存していても,二酸化炭素の濃度によらず,生成 される炭酸カルシウムの量は変化しないと考えられ る.ここで, X 線回折試験よって得られた炭酸カルシ ウムの生成量の変化を図-7, 8 に示す. N, B50 共に,

材齢の経過につれ,カルサイトとバテライトの両炭酸 カルシウムが増加していることが確認できる. N はい ずれの濃度においても,バテライトと比べてカルサイ トが多く生成された. B50 は N と異なり,どの二酸化 炭素濃度においてもカルサイトと比べてバテライト の生成量が多い傾向を示した.カルサイトとバテライ トは結晶構造と密度が異なり,カルサイトと比べてバ テライトの安定性は低い.バテライトは C/S 比の低い ケイ酸カルシウム水和物(以下 C-S-H と記す)やモノ サルフェートから生成されると報告されており 3) ,高 炉スラグ微粉末の混入された B50 は C-S-H の C/S 比 が低いためバテライトが多く生成されたと考えられ る.以上の結果より N,B50 におけるそれぞれの濃度 ごとの炭酸カルシウムの生成速度も異なっており,濃 度が高いほど生成速度が遅くなることが分かった.

各セメントの炭酸化材齢 28 日の時点で X 線回折試 験によって得られた生成されたカルサイトとバテラ イト生成を割合を図-9 に示す.グラフ内の数値は,X

85%

76%

64%

67%

59%

64%

43%

33%

16%

78%

66%

60%

15%

24%

36%

33%

41%

36%

57%

67%

84%

22%

34%

40%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

0.05%

0.5%

5%

0.05%

0.5%

5%

0.05%

0.5%

5%

0.05%

0.5%

5%

N B2 0 B5 0 B9 0

Calcite Vaterite

N

B20

B50

B90

図 -9 カルサイトとバテライトの割合

線回折によって得られたカルサイトとバテライトの 和を 1 としたときの割合( % )である.どのセメント においても二酸化炭素濃度が異なると,両炭酸カルシ ウムの生成割合が異なることが確認できる.このため,

濃度が異なる環境下においては,炭酸化メカニズムが

異なると考えられる. N と高炉スラグ微粉末が混入さ

れたセメントでは両炭酸カルシウムの生成割合に相

違がみられる. B90 に関しては生成された両炭酸カル

シウムの割合は N と近い傾向を示した.前述したと

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第 40 回土木学会関東支部技術研究発表会 第Ⅴ部門

おり,高炉スラグ微粉末の混入によってカルサイトと 比べてバテライトが多く生成された.そこで,示差熱 重量分析によって得られた炭酸化カルシウム生成量 と X 線回折試験によって得られたカルサイトとバテ ライト生成量の割合から,生成炭酸カルシウムをカル サイト,バテライト生成量に換算した.これより,図

-10,11 に高炉スラグ微粉末置換率とカルサイト,バ

テライトの生成量の関係を示す.カルサイトは高炉ス ラグ微粉末の置換率が高いほど減少した.これは,高 炉スラグ置換率と水酸化カルシウム生成量と同様の 傾向を示した.つまり,炭酸化前の水酸化カルシウム が多いほどカルサイトは多く生成される.バテライト はスラグ置換率の増加に伴い増加する傾向を示し,

50%で最大値となり,その後置換率が増加すると減少 した.スラグ置換率 50%までの間では,炭酸カルシウ ムの生成が,カルサイトの減少,バテライトの増加に よって炭酸化が進行していると考えられる. B90 は水 酸化カルシウムの生成が認められなくてもカルサイ トとバテライトの両炭酸カルシウムが生成されてい ることから,生成された全ての炭酸カルシウムは C-S-H やモノサルフェート由来のものと考えられる.

スラグの高置換によってバテライトが減少するのは,

セメント内で二酸化炭素と反応し,炭酸カルシウムを 生成する水和物が著しく少ないためだと考えられる.

カルサイトの生成量は炭酸化前の水酸化カルシウム との関係があると考えられるが,バテライトの生成量 は水酸化カルシウムか, C-S-H の性質かその他の水和 物による影響なのか不明であり,今後検討を行う必要 があると考えられる.

4.まとめ

本研究では,高炉スラグ微粉末が混入したときの,

異なる二酸化炭素濃度環境下における炭酸化メカニ ズムを把握するため検討を行ったところ以下のよう な知見を得た.

1) 高炉スラグ微粉末の置換率や二酸化炭素濃度に よらず,炭酸化によって生成される炭酸カルシウ ムはカルサイトとバテライトであった.

2) 本研究の範囲では水酸化カルシウムが残存して いても炭酸カルシウムは,一定の量までしか生成 されず,セメント内の全ての水酸化カルシウムが 炭酸カルシウムになるわけではなかった.

3) 二酸化炭素濃度が異なることによって両炭酸カ ルシウムの生成割合に相違がある.また,スラグ 置換率によっても生成割合に相違があり,これら の要因で炭酸化メカニズムが異なる.

0 5 10 15 20

0 20 40 60 80

C aC O 3; C al ci te (% )

高炉スラグ微粉末置換率(%)

0.05%

0.5%

5%

炭酸化28日

図 -10 高炉スラグ微粉末置換率とカルサイトの関係

0 5 10 15 20

0 20 40 60 80

C aC O 3; V at er ite (% )

高炉スラグ微粉末置換率(%)

0.05%

0.5%

5%

炭酸化28日

図-11 高炉スラグ微粉末置換率とバテライトの関係

4) 炭酸化の際に,生成した水酸化カルシウムが多い ほどカルサイトが多くなる傾向がみられた.一方 で,バテライト生成量は何に起因しているか不明 であり今後検討してく必要があると考えられる.

謝辞:本研究の一部は,科研費基盤研究(B) 22360174

(研究代表者:魚本健人)の交付を受けて実施したも のであり,ここに記し謝意を表します.

参考文献

1) 松田芳範,上田洋,石田哲也,岸利治:実構造物 調査に基づく炭酸化に与えるセメントおよび水 分の影響,コンクリート工学論文集, Vol.32, No.1,

pp629-pp634,2010

2) わ か り や すい セ メン ト 科学 , セ メ ント 協 会,

pp108-pp109,1993,3

3) 太田利隆:十勝大橋コンクリートの特性,北見工

業大学地域共同研究センター研究成果報告書第 7

号,2000

参照

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