論文内容要旨
Quantitative analysis of the elastic fiber in the tunica media at the carotid bifurcation(頸動脈分岐部における中膜の弾性線維の定量 的解析)
Okajimas Folia Anatomica Japonica Vol.95 No.2 P.23–27 2018 年 外科系 脳神経外科学 加藤 優 内容要旨
【背景】動脈は中膜の組織学的特徴から弾性型動脈と筋型動脈に分類され る.頸動脈分岐部は 2 つのタイプの動脈の移行部で,弾性線維の量的変化 が認められる重要な部位である.血管弾性線維の定量的解析については,
組織切片上で弾性線維の本数を計測する方法が主に用いられてきた.この 方法は弾性線維束の太さに関する情報が欠落しており,頸動脈分岐部付近 における正確な弾性線維の量を示していない可能性がある.この研究では 顕微鏡画像を用いた画像解析的な手法による中膜における弾性線維の面 積比率を指標とした定量的解析と弾性線維の本数を指標とした定量的計 測を行い,総頸動脈から内頸動脈への移行部における弾性線維の量的変化 の検討を行い,同部の中膜の弾性線維の組織学的な観察も行った.
【方法】10%ホルマリンで固定された解剖実習献体4例(平均 77 歳:63- 89 歳)7 側から得られた頸動脈分岐部を用いた.総頸動脈起始部から頭蓋 内内頸動脈を一塊として摘出した.頸動脈の内腔面よりみた分岐部を基準 とし,血管の横断全周を 5mm 間隔で近位(総頸動脈)側で分岐部より 20 mm から遠位(内頸動脈)側 50 mm まで計 15 カ所の厚さ 5 µm の横断切片 を作成し,Elastica van Gieson (EVG) 染色の前田変法を施した.各切片 上のそれぞれ任意の 90 度間隔の計 4 つの部位を選び,同部位の中膜全層 について加藤らの方法にしたがって中膜における弾性線維の面積比率を 測定し平均値を算定した.また同部位を倍率 200 倍の検鏡下で Janzen の 方法に従って弾性線維の数を計測した.
【結果】中膜における弾性線維の面積比率は-20mm から減少し,-15mm か ら 0mm の位置で極小値,5mm から 10mm の位置で極大値を示し,その後は 減少する傾向を示した.中膜における弾性線維の数は-20mm の位置から増 加し,-10mm ないし-5mm の位置で最大となり,その後徐々に減少する傾向
を示した.
【考察】中膜内の弾性線維の量的変化(面積比率)について,このような 傾向はこれまでに報告されていない.本研究で得られた弾性線維の量的変 化の傾向は血流による動脈へのストレスに対応するための中膜の形態的 適応を表していると考えられる.特に内頸動脈に分岐した直後,弾性線維 の量(面積比率)が最も大きくなるのは,内頸動脈の内径が総頸動脈のそ れに比べて 1.5mm 程度細いために,血流による Stress が増大することに 対応して,Stress を緩衝するための構造として中膜内の弾性線維の量(面 積比率)が増えている可能性が考えられる.また同部位の中膜の厚さが近 位部に比べて減少していることも影響を与えている可能性もある.