論文内容要旨
Randomized Multicenter Phase II Trial of Neoadjuvant Therapy Comparing Weekly Nab-paclitaxel Followed by FEC With Docetaxel Followed by FEC in HER2− Early-stage Breast Cancer
(原発性乳癌に対する術前 DTX followed by FEC と Weekly Nab- paclitaxel followed by FEC の無作為化第Ⅱ相試験)
Clinical Breast Cancer 第 18 巻 6 号 474-480 頁 2018 年
専攻名 外科系外科学(乳腺外科学分野) 桑山 隆志
【背景】切除可能な乳癌に対する標準治療としてアンスラサイクリン・タ キサン系抗癌剤が広く用いられている。しかしながら術前化学療法におけ る至適レジメンはいまだ確立しておらず、より高い抗腫瘍効果と低い有害 事象を両立できるレジメンが必要である。
2010 年 9 月、新規タキサン系抗癌剤として Nab-paclitaxel (Nab-PTX)が 本邦で承認された。再発乳癌症例を対象に weekly Nab-PTX を用いた CA024 試験で抗腫瘍効果、安全性に優れたレジメンとして報告されている。本レ ジメンは有害事象の発生率が低いことで dose intensity を高く保つこと が可能となり、高い pCR 率を得ることが期待される。今回、我々は日本人 における術前化学療法としての weekly Nab-PTX 100mg/m2の有効性・安全 性を検討するために、他施設共同研究として Nab-PTX もしくは docetaxel
(DTX)を投与したのち、5-FU、cyclophosphamide、epirubicine を投与す るランダム化比較第Ⅱ相試験を行った。
【方法】StageⅠ-Ⅲの HER2 陰性乳癌を対象に、当院を含む 6 施設で 2011 年 4 月から術前化学療法として Nab-PTX を4コースもしくは DTX を4コ ース終了後 5-FU、cyclophosphamide、epirubicine を 4 コース行った。
Nab-PTX 100g/m2は各コース内 day 1, 8, 15 に静脈投与し、4 週間を 1 コ ースとして、4 コース繰り返すレジメンとしている。採血は各コース内 day1,8,15 に実施している。一方、DTX は 3 週ごとの投与を行い、5-FU、
cyclophosphamide、epirubicine は 3 週ごとに投与した。採血は各コース 内の day1 のみ行った。
主要評価項目は病理学的完全奏効率(pCR)とし、副次評価項目は浸潤癌消 失率、臨床的・病理学的奏効率、乳房温存率、安全性とした。
【結果】本試験には 152 人の患者が試験に参加し、両群における患者背景
は同様であった。主要評価項目である pCR 率は DTX 投与群では 12%、Nab- PTX 群では 17%と同様であった。(p=0.323)Ki67 が 20%以上では pCR 率は やや Nab-PTX 群のほうが高かった。(DTX 群 16% vs. Nab-PTX 群:24%
P=0.432)
安全性評価では、Grade3/4 の血液学的毒性は、好中球減少が最も高頻度に 認められた。(DTX 群 36% vs. Nab-PTX 群 40%)非血液学的毒性は Grade3/4 のものは認められず、全 Grade においては筋肉痛(DTX 群 32%
vs. Nab-PTX 群:34%)、関節痛(DTX 群 35% vs. Nab-PTX 群:42%)、
末梢性感覚神経障害 (DTX 群 55% vs. Nab-PTX 群 65%)であった。
【考察】今回の研究では、Nab-PTX による術前化学療法の効果は DTX と同 等の治療成績であったが、既報の研究と比較して pCR 率がやや低かった。
この理由としては、今回の研究における Nab-PTX の使用量が既報と比較し て少なかったことが考えられる。また、副作用の発生率は同等であったが、
これは来院頻度の差により Nab-PTX 群がより副作用を検知しやすい状況 にあったことが考えられる。
【総括】Nab-PTX 術前化学療法の検討では、従来の DTX による治療と比較 して同様の治療効果であり、有害事象の発生率が低く、治療完遂率が高い、
安全性に優れたレジメンであった。Ki67 高値の症例ではより高い効果を 得られる可能性が考えられた。既報の有効症例の報告と併せ、今後、術前 化学療法として期待される薬剤であると考えられる。