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道徳教 育カ リキ ュラムの改善 に関す る研 究

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Academic year: 2021

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(1)

道徳教 育カ リキ ュラムの改善 に関す る研 究

平 成9(1997)年9月

国 立 教 育 研 究 所

道徳教育 ・ 特別活動研究室

(2)

本 報 告 書 は 、 道 徳 教 育 カ リ キ ュ ラ ム の 改 善 に 関 す る 研 究 を ま と め た も の で あ る 。 研 究 に あ た り 、 ま ず 、 道 徳 教 育 の 改 善 課 題 を 明 ら か に す る た め 、 道 徳 教 育 に 携 わ る 小 学 校 ・中 学 校 の 教 師 調 査(回 答 者 数:小 学 校607名 、 中 学 校877名)を 、 そ れ ぞ れ 平 成6・7年 度 に 実 施 し た 。 本 研 究 で は 、 こ の 調 査 結 果 に 基 づ き 、 現 行 カ リ キ ュ ラ ム の 問 題 点 を 抽 出 し 、 カ リ キ ュ ラ ム 改 善 の 方 策 を 考 察 す る 。

道 徳 教 育 で は 、 学 習 指 導 要 領 や 全 体 計 画 な ど の 「書 か れ た カ リキ ュ ラ ム 」 だ け で な く 、 実 際 に 学 校 で カ リ キ ュ ラ ム が ど の よ うに 構 成 さ れ 、 い か に 教 え ら れ て い る か と い う 「実 勢 カ リ キ ュ ラ ム 」 が 問 題 で あ る 。 従 っ て 、 カ リキ ュ ラ ム 改 善 の 課 題 も 、 学 校 ・学 級 に お け る カ リ キ ュ ラ ム 編 成 や 実 際 の 指 導 方 法 、 カ リ キ ュ ラ ム の 見 直 し(評 価)等 を 含 ん だ 総 合 的 な 道 徳 教 育 の 在 り方 を め ぐ る も の と な る 。 そ こ で 、 以 下 の 各 節 で は 、 ま ず 、 調 査 結 果 か ら 明 ら

か に な っ た 現 行 の 道 徳 教 育 の 目標 、 内 容 、 方 法 、 評 価 に 関 す る 問 題 点 を 分 析 し 、 そ れ ぞ れ の 観 点 か ら 改 善 課 題 を 具 体 的 に 検 討 す る 。 さ ら に 、 道 徳 教 育 の カ リ キ ュ ラ ム 開 発 に 学 校 全 体 で 取 り組 む た め の 方 策 に つ い て も 考 察 す る 。

な お 、 本 報 告 書 で 言 及 し て い る 調 査 の 概 要 な ら び に 調 査 結 果 の 詳 細 は 、 国 立 教 育 研 究 所 特 別 研 究 報 告 書 『道 徳 教 育 カ リ キ ュ ラ ム の 改 善 に 関 す る 調 査 研 究 一 小 学 校 ・中 学 校 報 告 書 』

と し て 刊 行 され て い る 。 本 報 告 書 は 、 こ の 特 別 研 究 報 告 書 に お い て 道 徳 教 育 班 の 各 委 員 が 分 担 執 筆 し た 分 析 ・考 察 を 、 道 徳 教 育 班 責 任 者 の 西 野 が 要 約 し 、 編 集 し た も の で あ る 。 同 報 告 書 も 併 せ て 参 照 い だ だ け れ ば 幸 い で あ る 。

平 成9年9,月

国 立 教 育 研 究 所 教 科 教 育 研 究 部 道 徳 教 育 ・ 特 別 活 動 研 究 室

西 野 真 由 美

(3)

研 究 協 力 者 〉(平 成9年3月 現 在 、 五 十 音 順)

当 〉

西 野 真 由 美

上 尾 市 立 東 小 学 校

多摩 市 立 諏 訪 小 学 校

教科調査官

葛 飾 区 立綾 瀬 中 学校

鎌 ヶ谷市 立第五 中学校

お 茶 の 水 女 子 大 学

大 阪 育 大

*所 属 は平成9年3月1日 現在 の ものです。

教科教 育研究部道徳教育 ・特別 活動研究室

(4)

研究結果 の概要

I 道 徳 教 育 の 目標 1.

2.

カ リキ ュ ラ ム の 現 状 カ リ キ ュ ラ ム 改 善 の 課 題

1

nI 道 徳 教 育 の 内 容 1.

2.

2‑1 2‑2 2‑3

カ リ キ ュ ラ ム の 現 状 カ リ キ ュ ラ ム 改 善 の 課 題

発 達 課 題 を 取 り入 れ た 重 点 指 導 現 代 的 な 教 育 課 題 に 応 え る 内 容 構 成 学 校 ・家 庭 ・地 域 の 連 携

5 III

道 徳 教 育 の 方 法 1.

2.

3‑1 3‑2 3‑3

カ リ キ ュ ラ ム の 現 状 カ リ キ ュ ラ ム 改 善 の 課 題

横 断 的 ・総 合 的 学 習 で と り く む 道 徳 教 育

「楽 しい 」 道 徳 の 授 業 子 ど も に 根 ざ し た 資 料 開 発

13

IV 道 徳 教 育 の 評 価 1.

2.

カ リキ ュ ラ ム の 現 状 カ リキ ュ ラ ム 改 善 の 課 題

21

V学 校 に 基 礎 を 置 く カ リキ ュ ラ ム 開 発 25

(5)

研 究 結 果 の 概 要

道 徳 教 育 研 究 班 の 研 究 結 果 に 基 づ き 、道 徳 教 育 カ リキ ュ ラ ム 改 善 の 課 題 を 以 下 の よ うに 総 括 す る 。 1道 徳 教 育 の 目標 の 改 善

道 徳 教 育 の 目標 は 道 徳 性 の 育 成 と され る 。 しか し道 徳 性 の 内 実 が 明 確 で な い た め 、 何 を 教 え る か に 関 す る 共 通 理 解 が 得 られ て い な い 。 そ の 結 果 、 目標 で は な く、 「内 容 」 に 着 目 し た カ リ キ ュ ラ ム が 編 成 され て い る 。 道 徳 教 育 の 目標 と して の 道 徳 性 は 、 個 性 の 基 盤 と な る 主 体 性 の 育 成 に あ る こ と

を あ らた め て 確 認 し 、 道 徳 教 育 を 個 性 化 教 育 と して 確 立 す る 必 要 が あ る。

II道 徳 教 育 の 内 容 の 改 善 (1)発 達 課 題 の 導 入

学 校 に お け る 道 徳 教 育 カ リキ ュ ラ ム は 、 「思 い や り」 を 重 点 と す る構 成 が 主 流 で あ る 。 しか しそ の た め 、 学 年 間 の 重 点 指 導 の 差 異 化 が 図 ら れ て い な い 。 小 ・中 学 校 の 一 貫 し た 道 徳 教 育 の 実 現 の た め に は 、 各 学 年 の 発 達 課 題 を 明 確 に し、 様 々 な 内 容 を 重 点 化 した カ リ キ ュ ラ ム 開 発 が 要 請 され る。

(2)現 代 的 教 育 課 題 に 応 え る 内 容 構 成

道 徳 教 育 は 時 代 を 超 え た 普 遍 的 な 人 間 性 の 教 育 で あ る と い う意 識 を も つ 教 師 が 多 い 。 しか し、 そ の 反 面 、 現 代 の 様 々 な 教 育 課 題 一 環 境 、 国 際 理 解 、 情 報 、 福 祉 ・ボ ラ ン テ ィ ア ー な どが 、 カ リ キ ュ ラ ム 編 成 に 反 映 され て い な い 。 道 徳 教 育 を 現 代 社 会 に 生 き る 人 間 の 生 き 方 教 育 と して 捉 え 、 これ ら の 課 題 を 積 極 的 に 取 り入 れ る た め 、 内 容 の 統 合 ・関 連 づ け が 求 め られ る 。

(3)家 庭 ・地 域 と の 連 携

教 師 は 道 徳 教 育 を 家 庭 や 地 域 の 教 育 課 題 とみ な しが ち で あ る 。 しか し家 庭 や 地 域 との 連 携 を 実 現 す る た め に は 、 単 に 教 育 課 題 を 相 互 に 押 しつ け あ う事 態 は 避 け ら れ ね ば な ら な い 。 学 校 の ス リム 化

が 求 め られ る な か で 、 学 校 で は 何 を 教 え る か に 対 す る 意 識 を 明 確 に す る 必 要 が あ る 。 道 徳 教 育 の 方 法 の 改 善

(1)横 断 的 ・総 合 的 な 学 習 方 法 の 開 発

教 師 に は 、 道 徳 教 育=道 徳 の 時 間 と い う意 識 が 根 強 い 。 これ は 学 校 に お け る様 々 な 教 育 活 動 を連 携 ・統 合 す る よ う な 道 徳 教 育 の 視 点 が 確 立 して い な い 結 果 で あ る 。 横 断 的 ・総 合 的 学 習 の 導 入 に よ

っ て 、 学 校 の 教 育 活 動 全 体 で 取 り組 む 道 徳 教 育 カ リ キ ュ ラ ム が 開 発 ・展 開 され ね ば な ら な い 。 (2)子 ど も が 楽 しみ に す る 道 徳 の 授 業

道 徳 の 授 業 を 楽 しみ に す る 子 ど も は 少 な い 。 教 師 も授 業 の マ ン ネ リ化 に 悩 み を 持 っ て い る。 調 査 結 果 は 、子 ど も が 積 極 的 に 意 見 や 考 え を 語 り合 い 、生 き 方 に つ い て 深 く考 え られ る授 業 の な か か ら 、 子 ど も が 授 業 を 楽 しみ に す る 状 況 が 生 ま れ る こ と を 示 し て い る。 多 様 な 資 料 を 活 用 し、 子 ど も が 仲 間 と 共 に 考 え 、 語 り な が ら 、 生 き 方 を 探 究 す る 活 動 を 支 援 す る授 業 が 構 想 さ れ ね ば な ら な い 。 IV道 徳 教 育 の 評 価 の 改 善

道 徳 教 育 に 対 す る 評 価 の 意 識 は 薄 く 、 評 価 活 動 の 重 要 性 が 認 識 され て い な い 。 道 徳 教 育 の 計 画 作 成 ・実 践 ・評 価 ・見 直 し を 年 間 活 動 と して サ イ ク ル 化 し、 評 価 活 動 を 定 着 さ せ る 必 要 が あ る。

V.学 校 に 基 礎 を お く カ リキ ュ ラ ム 開 発 の 推 進

道 徳 教 育 で は 、 子 ど も た ち の 実 態 か ら 導 か れ る 教 育 課 題 と社 会 が 学 校 に 要 請 す る教 育 課 題 との 両 方 を 見 据 え た カ リキ ュ ラ ム 開 発 が 求 め られ る 。 こ れ らの 課 題 に 応 え る カ リキ ュ ラ ム は 、 学 校 に お い て 可 能 で あ る 。 そ れ ゆ え 、 道 徳 教 育 で は 、 学 校 に 基 礎 を お く カ リ キ ュ ラ ム 開 発 が 定 着 され ね ば な ら な い 。 道 徳 教 育 の カ リ キ ュ ラ ム 開 発 に 学 校 全 体 で 取 り組 む た め の 環 境 整 備 が 必 要 で あ る 。

●W

(6)

1道 徳 教 育 の 目標

1.カ リキ ュ ラ ム の 現 状

今 回 の 調 査 に は 、 道 徳 教 育 の 目標 に 関 し て 教 師 の 意 識 を 直 接 問 う設 問 は 含 ま れ て な い 。 し か し、

調 査 結 果 を総 括 す る と 、 教 師 が 道 徳 教 育 の 目標 を どの よ うに 捉 え て い る か が 明 らか に な る。

ま ず 学 級 に お け る指 導 に お い て と く に 重 点 指 導 して い る 学 習 指 導 要 領 の 内 容 項 目」(複 数 選 択) に 関 す る 設 問 で は 、 小 学 校 か ら 中 学 校 ま で の 幅 広 い 層 の 教 師 が 「思 い や り」 を 挙 げ て い る 。 と く に 小 学 校 中 学 年 で は79.2%、 高 学 年 で は71.1%の 教 師 が 「思 い や り」 を 重 点 指 導 し て お り、 中 学 校 で も 全 項 目 中 の 三 位 に 挙 げ られ て い る。 これ ほ ど多 く の 教 師 が 「思 い や り」 を 重 点 指 導 し て い る の は 、

「思 い や りの 心 の 教 育 」 が 道 徳 教 育 の 目標 と して 捉 え られ て い る か らで は な か ろ うか 。

さ ら に 現 行 の 道 徳 教 育 を 特 徴 づ け る 実 態 と して 、 教 師 が カ リ キ ュ ラ ム構 成(内 容 の 重 点 化 ・配 列 な ど)を 行 う際 、 「子 ど も の 実 態 に 何 が 不 足 し て い る か 」 と い う視 点 に 立 っ て い る とい う こ と が 挙 げ ら れ る。 実 際 、 「思 い や り」 に 限 らず 、 ほ とん ど の 内 容 項 目で 、 重 点 指 導 を 決 定 す る理 由 と して

子 ど も の 実 態 か らみ て 不 足 して い る か ら」 が 上 位 に 上 が っ て い る 。 子 ど も の 実 態 か ら み て 不 足 して い る か ら」 に 対 して 、 「子 ど も の よ さ を の ば した い か ら」 とい う理 由 が 上 回 っ た 内 容 項 目 を 見 る と こ の 傾 向 が 鮮 明 に な る 。 子 ど も の よ さ を の ば した い か ら」 が 上 位 と な っ た 内 容 項 目 は 、 低 学 年 で は14項 目 中8項 目 あ る も の の 、 中 学 年 で は16項 目 中3項 目 、 高 学 年 で22項 目 中3項 目、

中 学 校 で も22項 目 中3項 目 だ け な の で あ る 。

こ こ で 指 摘 し た い の は 、 教 師 が 道 徳 教 育 の 内 容 を 「あ るべ き 人 間 像 」 と して 捉 え 、 こ の 内 容 の 教 授 を 道 徳 教 育 の 目標 と捉 え て い る の で は な い か とい う こ と で あ る 。 し か も 、 不 足 」 と み な され る 内 容 は 、 学 習 指 導 要 領 の な か で も、 「思 い や り」 な ど 教 師 が 大 切 だ と考 え る 一 部 の 内 容 に 偏 っ て い

る。 教 師 は 道 徳 教 育 を 内 容 の 教 化 と して 捉 え る 傾 向 が 強 い の で は な い だ ろ うか 。

も ち ろ ん 道 徳 教 育 で は 、 普 遍 的 あ る い は 文 化 的 な 価 値 の 伝 達 一 価 値 教 育 一 は 重 要 な 目標 の 一 つ で あ る 。 しか しそ の 点 だ け を 強 調 す る と、 徳 目 主 義 に 陥 りが ち で あ り、 「子 ど も の よ さ」 を 見 る視 点 が 抜 け 落 ち て しま う可 能 性 が あ る 。 現 行 の 道 徳 教 育 で は 、 道 徳 教 育 の 目標 を 個 性 や よ さ と の 関 わ り で 捉 え る 意 識 が 希 薄 な の で は な か ろ うか 。 よ さや 個 性 が 道 徳 教 育 の 目標 と ど の よ う に 関 わ る の か 、

こ の 点 の 考 察 が 、 道 徳 教 育 の カ リキ ュ ラ ム 開 発 の た め に 必 要 とな ろ う。

と こ ろ で 、 今 回 の 調 査 で は 道 徳 教 育 に 関 す る 自 由 記 述 で 、 「道 徳 と い う言 葉 の イ メ ー ジ が よ く な い 」 と い う感 想 が 散 見 さ れ た 。 こ の 感 想 は 、 道 徳 教 育 と は 何 を 教 え る も の な の か 、 教 師 の 間 に 共 通 理 解 が な い ま ま 、 言 葉 の 持 つ イ メ ー ジ で 道 徳 教 育 が 了 解 され て しま っ て い る事 態 を 示 唆 す る 。

学 校 教 育 に お い て 何 を 重 点 的 に 指 導 す る か とい う内 容 構城 の 問 題 や 教 え に く い 内 容 を ど う指 導 す る か と い う方 法 の 問 題 の 前 に 、 ま ず 道 徳 教 育 は 何 を教 え る か とい う道 徳 教 育 の 目標 を あ ら た め て 共 通 理 解 に も た らす こ と が 必 要 で あ る。 以 下 で は 、 道 徳 教 育 の 目標 概 念 を 検 討 しな が ら 、 道 徳 教 育 と

は 何 を 教 え る の か を 再 考 し よ う。

2.カ リキ ュ ラ ム 改 善 の 課 題 (1)道 徳 性 と は 何 か

ま ず 、 学 習 指 導 要 領 の 目標 の 記 述 を確 認 す る 。 目標 の 記 述 は 、 小 ・中 学 校 で 若 干 異 な る。 こ こで は 中 学 校 の 目標 を 引 用 す る 。

(7)

道 徳 教 育 の 目標 は 、 教 育 基 本 法 及 び 学 校 教 育 法 に 定 め られ た 教 育 の 根 本 精 神 に 基 づ き 、 人 間 尊 重 の 精 神 と生 命 に 対 す る 畏 敬 の 念 を 家 庭 、学 校 、そ の 他 社 会 に お け る 具 体 的 な 生 活 の 中 に 生 か し、

個 性 豊 か な 文 化 の 創 造 と民 主 的 な 社 会 及 び 国 家 の 発 展 に 努 め 、 進 ん で 平 和 的 な 国 際 社 会 に 貢 献 で き る 主 体 性 の あ る 日本 人 を 育 成 す る た め 、 そ の 基 盤 と して の 道 徳 性 を 養 う こ と とす る 。

こ の 記 述 構 造 は や や 複 雑 だ が 、 「主 体 性 の あ る 日本 人jを 育 成 す る た め の 「基 盤 と して の 道 徳 性 を養 う」 こ とが 道 徳 教 育 の 目標 で あ る と され 、 前 半 の 「人 間 尊 重 の 精 神 云 々 」 の 部 分 は 、 主 体 性 の あ る 日本 人 の 具 体 的 な 在 り方 の 記 述 と な っ て い る。 学 習 指 導 要 領 で は 、 以 上 を 道 徳 教 育 全 体 の 目標 と し、 さ らに 道 徳 の 時 間 の 目標 を 次 の よ う に 述 べ る。

道 徳 の 時 間 に お い て は 、 以 上 の 目標 に 基 づ き 、 各 教 科 及 び 特 別 活 動 に お け る 道 徳 教 育 と密 接 な 関 連 を 図 りな が ら 、 計 画 的 、 発 展 的 な 指 導 に よ っ て こ れ を 補 充 、 深 化 、 統 合 し、 生 徒 の 道 徳 的 心 情 を 豊 か に し、 道 徳 的 判 断 力 を 高 め 、 道 徳 的 実 践 意 欲 と 態 度 の 向 上 を 図 る こ と を 通 して 、 人 間 と

して の 生 き 方 に つ い て 自覚 を 深 め 、 道 徳 的 実 践 力 を 育 成 す る も の とす る 。

以 上 の 記 述 か ら明 らか な よ う に 、 道 徳 の 時 間 の 指 導 に 際 して 、 道 徳 性 は 「道 徳 的 心 情 」 道 徳 的 判 断 力 」 道 徳 的 実 践 意 欲 と態 度 」 に 分 類 され て い る。 さ ら に 、 こ の 目標 に 続 い て 、 内 容 が 具 体 的 に記 述 され て い る 。 従 っ て 、 学 習 指 導 要 領 の 全 体 構 成 か らみ る と、 道 徳 教 育 の 目標 は 道 徳 性 の 育 成 で あ り、 こ の 道 徳 性 の 内 包 的 定 義 と し て 「道 徳 的 心 情 ・道 徳 的 判 断 力 ・道 徳 的 実 践 意 欲 と 態 度Jが 挙 げ られ 、 外 延 的 定 義 と し て 「内 容 」 、 す な わ ち 様 々 な 徳 目が 挙 げ られ て い る と解 釈 で き る 。 学 習 指 導 要 領 で は 、 「道 徳 」 と は 何 か に 関 す る 内 包 的 定 義 は 施 され ず 、 具 体 的 な 徳 目 を 挙 げ る こ とに よ っ て こ れ に 替 え て い る とい え よ う。

道 徳 教 育 カ リ キ ュ ラ ム が 、 内 容 教 授(徳 目主 義)に 陥 りが ち な 原 因 の 一 つ は 、 道 徳 教 育 の 目標 の 記 述 の な か に 、 道 徳 とは 何 か を 明 ら か に し て い な い こ と な の で は な い か 。 そ の 結 果 、 「道 徳 教 育 と は 何 か 」 と い う問 い を 教 師 は 「内 容 」 に よ っ て 知 ろ う とす る 。 実 際 、 年 間 指 導 計 画 な ど の カ リキ ュ ラ

ム 作 成 の 際 、 教 師 が み る の は 、14な り22項 目な りの 各 学 年 ご と の 内 容 項 目 の リス トで あ り

、 こ の リス トだ け を 見 て 内 容 の 配 列 と重 点 化 を 決 定 して い る と思 わ れ る。

これ で は 、 「木 を 見 て 森 を 見 ず 」 で あ り、 道 徳 性 の 全 体 像 を 描 か な い ま ま に 細 部 を仕 上 げ て い る よ う な も の で あ る 。 道 徳 教 育 の 目標 は 「道 徳 性 の 育 成 」 で あ る。 この道 徳 性 とは何 か を教 師 が 捉 え て い な けれ ば 、 道 徳 教 育 は 単 な る 徳 目の 教 え 込 み 教 育 に な っ て し ま う。

で は 、 道 徳 教 育 に お け る 目標 道 徳 性 を 養 う」 と は ど うい うこ と を 意 味 す る の だ ろ う か 。

前 述 の よ う に 、 学 習 指 導 要 領 は 、 道 徳 性 を 「道 徳 的 心 情 」 道 徳 的 判 断 力 」 「道 徳 的 実 践 意 欲 と 態 度 」 に 分 類 して 解 釈 して い る。 そ の 学 問 的 意 義 は さ て お き 、 こ れ を 現 在 の 教 育 実 践 の 実 態 か らみ

る と 、 そ れ は 必 ず し も効 果 的 な 役 割 を 果 た して い る と は い え な い 。

な ぜ な ら 、 道 徳 性 が 総 合 的 に 捉 え られ な い ま ま 、 道 徳 性 が 「心 情 」 「判 断 力 」 意 欲 と 態 度 」 に 分 化 され て し ま っ て い る か ら で あ る 。 た と え ば 、 道 徳 の 時 間 の ね ら い で も 、 「心 情 を 養 う」 判 断 力 を培 う」 な ど、 い ず れ か に 的 を 絞 っ た も の が 圧 倒 的 で あ る。

こ の よ うな 分 類 は 、 心 情 」 は 温 か い も の 、 「判 断 力 」 は な に か 冷 た い も の と い っ た ス テ レオ タ イ プ の 解 釈 を 生 み 出 しが ち で あ る。 しか し、 実 際 に は 、 心 情 を 欠 い た 判 断 力 と い う も の は 存 在 しな い し、心 情 だ け で は 道 徳 的 行 為 に 結 び つ か な い 。 これ らの分類 は 、学問 的 研 究 には 意 義 は あ っ て も、

教 育 実 践 に と っ て は 、 む し ろ 阻 害 要 因 と な り う る こ と を指 摘 し な け れ ば な ら な い 。

そ こ で 重 要 な こ と は 、道 徳 性 を 総 合 的 な 能 力 と して 捉 え 、そ の 中 身 を 「内 容 」 と して で な く 、 「能 力 ・資 質 」 と して 定 義 す る こ と で あ る 。 こ こ で は 、 道 徳 性 を そ の 要 素 か ら で は な く、 次 の 三つ 領 域

(8)

か ら な る 総 合 的 な 能 力 と し て 解 釈 した い 。

第 一 は 、 マ ナ ー や 社 会 常 識 に 分 類 さ れ る慣 習 的 態 度 で あ る 。 も と も と道 徳(Moral)の 語 源 は 「 習 」 で あ る。 慣 習 や 常 識 と は 、 あ る 社 会 や 文 化 に 共 通 な 物 の 考 え 方 や 行 為 の 仕 方 、 そ の 枠 組 み で あ り、 し か も そ の 行 為 に つ い て の 主 体 的 な 反 省 は 希 薄 で あ る。 道 徳 性 を 主 体 的 な 反 省 の 契 機 を含 む と み な す 狭 義 の 道 徳 性 の 定 義 で は 、 慣 習 は 道 徳 か ら 区 別 され る。 し か し 、 と り わ け 道 徳 教 育 の 立 場 で み る と 、慣 習 は 、 共 同 体 を 成 立 させ る 基 盤 と して 広 義 の 道 徳 性 に 含 ま れ る とみ な し う る。

第 二 は 規 範 意 識(良 心)に 関 わ る 事 柄 で あ る。 規 範 は 、 あ る 客 観 的 原 理(普 遍 的 な 人 間 性 や 社 会 に 妥 当 し て い る 規 則)を 主 体 が 原 理 と して 承 認 す る と き に 生 ま れ る 。 つ ま り、 そ れ を 「人 間 と して 大 切 だ 」 とか 「守 るべ き だ 」 と私 が 考 え る と こ ろ に 成 立 す る。 こ の 領 域 は 、 最 も 一 般 的 な 道 徳 の 定 義 で あ り、 道 徳 は 、 社 会 に お け る 相 互 の 活 動 の 共 同 と協 力 を保 証 す る基 準 を 主 体 が 承 認 す る こ と とみ な され る。 した が っ て 、道 徳 性 に は 責 任 主 体 の 形 成 が 不 可 欠 に な る 。 多 く の 道 徳 教 育 理 論 に お い て 、 道 徳 教 育 の 目標 は 自fと み な さ れ る。 そ れ は 、 自律 と は 、 自 由 意 志 で 原 則 を 承 認 し、 実 践 し よ う と す る こ と で あ り、 主 体 的 原 理 と客 観 的 原 理 の 統 合 とみ な され て い る か らで あ る。

第 三 に 、道 徳 は 、 個 人 の 実 存 や 生 き 方 に 関 わ る。 例 え ば 、 カ ン トは 道 徳 を 「人 格 の 完 成 を め ざす 」 と 捉 え た 。 社 会 や 自 己 の 属 す る共 同 体 の 規 範 が ど うで あ ろ う と、 自 己 自身 の 生 き 方 と し て の 道 徳 性 を 追 求 す る こ と は 、 あ る 場 合 に は 社 会 の 規 範 の 乗 り越 え や 新 しい 規 範 の 創 出 に 通 ず る も の と な り う る 、 とい う意 味 で 道 徳 性 と 関 わ っ て い る 。

さ て 、 これ ら の 三 つ の 領 域 を概 観 す る と 、 道 徳 教 育 の 目標 に 関 わ る 共 通 項 が 導 か れ る 。 そ れ は 、 第 一 に 道 徳 は 自 己 や 他 者 と の 「関 わ り」 に 関 す る 領 域 で あ る と い うこ と、 第 二 に 、 道 徳 性 と は原 則 を もつ こ と を 意 味 す る とい う こ と で あ る。 す な わ ち 、 道 徳 性 と は 自 己 や 他 者 、 自然 や 他 者 との 関 わ りに お け る原 則 を 持 つ こ と で あ る と規 定 で き よ う。 そ の 具 体 的 な 展 開 と して 、 「徳 」 が 成 立 す る 。 そ れ は 原 理 の 具 体 的 な 展 開 で あ る が ゆ え に 、 原 理 の も っ 普 遍 性 を 体 現 しな が ら も 、 多 様 化 し、 ま た 時 代 と と も に 変 化 す る 可 能 性 を もつ の で あ る 。

こ こ か らす れ ば 、道 徳 教 育 の 目標 と は 、自 己 自身 の 原 則 を 確 立 す る こ と、学 習 指 導 要 領 に あ る 「主 体 性 」 の 育 成 に あ る こ と が 明 ら か と な る 。 そ して 、 そ の 主 体 性 と は 、 自分 の 原 則 を 持 つ 、 自 分 の 生 き 方 を 確 立 す る と い う意 味 で 、 個 性 化 を保 障 す る 原 理 な の で あ る。

(2)道 徳 教 育 に お け る 個 性

現 在 の 教 育 改 革 の 主 流 と な っ て い る個 性 重 視 の 傾 向 で は 、 個 性 は 「違 い 」 や 差 異 、 人 と異 な る 独 創 性 な ど と し て 捉 え られ て い る よ うに 思 わ れ る 。 も ち ろ ん 、 画 一 的 ・閉 鎖 的 と い う批 判 を 受 け て き た 日本 の 教 育 制 度 や 人 と違 う こ と を 極 端 に 嫌 う と指 摘 され て き た 日本 の 文 化 的 傾 向 を 打 破 し て 創 造 力 を 育 成 す る 文 化 的 土 壌 を 形 成 す る た め に は 、 違 い を違 い と し て 大 切 に す る と い う意 味 で の 個 性 化 教 育 の 意 義 は 重 視 さ れ ね ば な ら な い だ ろ う。 そ の 上 で 指 摘 し た い の は 、 「違 い 」 は 個 性 化 の 結 果 と

して 生 ず る もの で あ っ て 、 違 い そ の も の が 個 性 で は な い と い う こ とで あ る。

確 か に 教 育 史 を概 観 す る と 、 個 性 は む し ろ 能 力 の 「違 い 」 とそ の 正 当化 と し て 機 能 して き た と解 釈 で き よ う。 しか し、 現 在 に 至 る 個 性 重 視 の 流 れ を 創 っ た 「臨 時 教 育 審 議 会 第 一 次 答 申 」(1985年) の 「個 性 重 視 の 原 則 」 は 、 こ う述 べ る 。 今 次 教 育 改 革 に お い て 最 も 重 要 な こ とは 、 これ ま で の 我 が 国 の 教 育 の 根 深 い 病 弊 で あ る 画 一 性 、 硬 直 性 、 閉 鎖 性 、 非 国 際 性 を 打 破 して 、 個 人 の 尊 厳 、個 性 の 尊 重 、 自 由 ・自律 、 自 己 責 任 の 原 則 、 す な わ ち 、 個 性 重 視 の 原 則 を 確 立 す る こ と で あ る 」 。

これ に み る 限 り、 個 性 重 視 の 原 則 は 、 違 い や 差 異 と して は 捉 え られ て い な い 。 む し ろ 、人 間 と し

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て の 個 の 尊 厳 、 自 由 ・自律 ・自 己 責 任 な ど と解 釈 され て い る。 こ の 意 味 に お け る 個 性 は 、 主 体 性 一 individuality一 に 他 な ら な い 。 個 性 重 視 の 原 則 と は 、 実 は 、 主 体 性 の 重 視 な の で あ る。

今 世 紀 の 哲 学 を 特 色 づ け る 「近 代 批 判 」 の な か で 、 自律 や 主 体 性 は 攻 撃 の 対 象 と され て き た 。 従 っ て 道 徳 教 育 の 理 論 研 究 の 課 題 は 、 自律 や 主 体 性 を 越 え る 目標 の 枠 組 み の 構 築 で あ ろ う。 しか し現 状 で は 、 自律 と主 体 性 を 原 理 とす る 道 徳 教 育 理 論 を 越 え る積 極 的 な 理 論 は い ま だ に 提 起 され て い な い 。 そ の 意 味 で は 、 今 日 の 道 徳 教 育 に お い て は 、 自律 や 主 体 性 の 持 つ 問 題 点 を 自 覚 しつ っ 、 そ こ に 新 し い 意 義 を 見 出 す よ う な 実 践 を 積 み 重 ね る こ とが 求 め られ て い る とい え よ う。

さ て 、 道 徳 教 育 の 目標 が 自 律 ・自 己 責 任 の 原 則 を 教 え る こ と で あ る と み る な ら ば 、 「道 徳 は 自 然 と身 に つ く」 と い う考 え 方 が 誤 りで あ る こ と も 明 らか と な る 。 つ ま り、 そ の 社 会 の な か で 自然 と身 に っ く も の は 慣 習 と して の 道 徳 で あ り、 主 体 的 な 反 省 は そ こ に は 生 まれ な い か ら で あ る 。 学 校 で カ リキ ュ ラ ム を 作 成 して 行 う道 徳 教 育 は 、 自然 的 に 身 に つ い て き た 道 徳 性 を批 判 的 に 思 考 し、 自 分 自 身 の 原 則 を 考 え 、 実 践 で き る 力(主 体 性)を 育 成 す る 意 図 的 な 学 習 活 動 で な け れ ば な らな い 。

し か し な が ら、 こ の よ うな 力 を た だ 抽 象 的 に 必 要 だ と い っ て 教 え られ る も の で は な い 。 あ る 力 や 資 質 を 教 え る た め に は 、 具 体 的 な 「内 容 」 が 必 要 で あ る 。 道 徳 的 原 理 を も ち 、 そ れ に 基 づ い て 「 か に 行 為 す べ き か 」 を 考 え 、 実 践 す る 力 は 、 具 体 的 な 道 徳 的 原 理 を 持 つ こ とで の み 学 ば れ る か ら で あ る 。 従 っ て 、 道 徳 教 育 で は 、 「内 容 」 を 教 え る こ と が 誤 りな の で は な い 。 た だ し、 そ の 内 容 を 身 に っ け る こ と が 目標 で は な く 、 自分 で 自 分 の 原 則 を 確 立 す る 姿 勢(生 き 方)を 学 ぶ こ と が 目標 な の で あ る。 そ こ で 、 子 ど も 自身 の 生 き 方 の 探 究 に 関 わ る よ うな 内 容 構 成 が 求 め られ 、 さ ら に そ の 内 容 を 子 ど も が 自分 自 身 の 生 き 方 を 探 究 して い く活 動 を 支 援 す る よ う な 方 法 が 求 め られ る 。 道 徳 教 育 の 目標 は 、 個 性 、 つ ま り個 で あ る こ と の 確 立 で あ る 。 そ れ を 学 校 教 育 に お い て 実 践 す る の は 、 「個 で あ る とい う こ と 」 が 共 同 性 の な か で の み 達 成 され る か ら に 他 な ら な い の で あ る 。

道 徳 は 人 間 が 他 者(自 然 ・社 会)と 共 に 生 き る と こ ろ に 成 立 す る人 間 の 有 り方 で あ る。 道 徳 は 社 会 に 生 き る な か で 自然 に 身 に つ く も の で も 、 一 人 で 孤 独 に 学 ぶ こ と に よ っ て も 不 十 分 な の で あ る 。 道 徳 を 学 ぶ こ と は 、 共 に 学 ぶ こ とで な け れ ば な ら な い 。 学 校 に お い て 子 ど も た ち が 共 に 学 ぶ こ とが で き る 学 習 の 共 同 体 を 形 成 し 、こ の 共 同 体 の な か で 子 ど も一 人 ひ と りの 主 体 性 を確 立 して い く こ と 、 そ れ が 学 校 に お け る 道 徳 教 育 の 目標 な の で あ る 。 学 校 に お い て 道 徳 教 育 カ リキ ュ ラ ム を 開 発 す る こ

と は 、 こ の よ うな 学 校 の 有 り方 を め ざ して 、 学 校 自 身 を 変 革 し て い く活 動 で あ る と い え よ う。

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H道 徳 教 育 の 内容

1.カ リキ ュ ラ ム の 現 状

平 成 元 年 度 の 学 習 指 導 要 領 の 改 訂 に 伴 っ て 、 道 徳 の 時 間 に お け る 内 容 項 目の 削 減 が 行 わ れ 、 指 導 す べ き 内 容 が 絞 られ た 。 そ れ に 従 っ て 、 各 学 校 や 学 級 ・地 域 社 会 等 の 実 態 等 に 鑑 み 、 内 容 項 目 の 重 点 化 を 図 る こ と が で き る よ う に な っ た 。 調 査 結 果 に よ れ ば 、 小 学 校 で96.0%、 中 学 校 で71.0%の 師 が 特 定 の 内 容 を 重 点 指 導 して い る 。 これ は 、 学 校 や 学 級 の 実 態 に 応 じ た 重 点 指 導 の 必 要 性 が 理 解 され た 結 果 で あ ろ う。 し か し 、重 点 指 導 の 実 施 は 、内 容 項 目の 扱 い に偏 重 が 生 ず る こ と を 意 味 す る。

も ち ろ ん す べ て の 内 容 項 目 を 同 じ扱 い に す る こ と は 、 各 内 容 項 目 の 性 格 が 異 な る こ と か ら して も不 可 能 な こ と で あ り 、 カ リ キ ュ ラ ム構 成 に お け る 偏 り は 避 け ら れ な い 。 問 題 は 、 教 師 が 重 点 指 導 内 容 を 決 定 す る根 拠 、 つ ま り カ リ キ ュ ラ ム 構 成 の 原 理 が 何 で あ る か と い う こ と で あ る 。

重 点 指 導 され る 内 容 項 目 が どの 学 年 で も ほ ぼ 一 貫 して い る と い う点 は 先 に 指 摘 した 。 そ こ で こ こ で は 、 教 師 が 重 点 指 導 内 容 を 決 定 す る 理 由 や 、 教 師 が 指 導 困 難 を感 ず る 内 容 項 目 とそ の 理 由 を 中 心 に 、 道 徳 教 育 の カ リ キ ュ ラ ム 構 成 に お け る 問 題 点 を 三 点 指 摘 した い 。

ま ず 第 一 に 、 重 点 指 導 に お い て 、 発 達 的 観 点 が 導 入 され て い な い こ と で あ る 。 調 査 で は 、 重 点 指 導 を 決 定 す る 理 由 と し て 、 「と く に 低(中 ・高)学 年 ・中 学 校 段 階 で 指 導 す べ き だ か ら」 とい う選 択 肢 は 、 低 学 年 を 除 き 殆 ど選 択 さ れ な か っ た 。 低 学 年 で 内 容 項 目 が 発 達 課 題 と して 意 識 され て い る の に 対 し、 学 年 が 上 が る と発 達 課 題 と い う観 点 が 反 映 され な く な る の で あ る。

第 二 に 、 重 点 指 導 内 容 お よ び 指 導 困 難 と指 摘 され た 内 容 を 概 観 す る と、 道 徳 教 育 の カ リ キ ュ ラ ム 構 成 に は 、 現 代 的 教 育 課 題 が 盛 り込 ま れ て い な い こ とが 明 ら か に な る 。 た と え ば 、 「国 際 理 解 」 に 関 す る 内 容 項 目 は 一 貫 し て 「指 導 しに く い 内 容 」 の 上 位 に 挙 げ られ て い る 。 しか も 「指 導 し に く い 理 由 」 を み る と 、 小 学 校 ・高 学 年 で 「学 校 の 教 育 活 動 を 通 して は 身 に つ か な い か ら 」 を 挙 げ る 教 師 が 最 も 多 く 、 こ の 項 目 を 指 導 し に く い とす る 教 師 の46.8%、 中 学 校 で は 「生 徒 の 実 態 と か け は な れ て い る か ら 」 を 挙 げ る 教 師 が38.9%と な っ て い る 。 教 師 が こ の 内 容 を 子 ど も に と っ て 身 近 で な い 、 と捉 え 、 しか も体 験 不 足 を 補 う よ うな 学 校 の 教 育 活 動 も と りた て て 展 開 され て い な い 現 状 を うか が わ せ る。 環 境 教 育 や ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 に 関 わ る 内 容 項 目で も 、 同 様 の 傾 向 が み られ る 。

教 師 は 、 現 代 的 な 教 育 課 題 に 対 して 、 子 ど も に と っ て 身 近 で な く 、 学 校 の 教 育 活 動 に は そ れ を 体 験 させ る も の が な い た め 、 指 導 困 難 と感 じて い る と思 わ れ る が 、 同 時 に 、 そ れ を 特 に 道 徳 教 育 で 扱 う意 義 を そ れ ほ ど感 じて い な い の で は な い か 。 そ の 原 因 と し て 、 一 っ に は 、 道 徳 教 育 が 普 遍 的 な 人 間 性 に 関 わ る 教 育 と み な され 、 時 代 や 社 会 の 要 請 す る 課 題 と の 関 わ りが 認 識 され て い な い こ と 、 さ ら に 、 道 徳 教 育 の 内 容 項 目 に は 、 現 代 的 教 育 課 題 に 関 わ る 内 容 が 含 ま れ て い る に も 関 わ らず 、 そ れ が 現 代 的 教 育 課 題 と 結 び 付 け て 解 釈 され て い な い こ と が あ げ られ よ う。

第 三 に 、 重 点 指 導 に お い て 「保 護 者 や 地 域 の 願 い 」 が ほ とん どあ ま り考 慮 され て い な い 。 しか も 指 導 困 難 な 内 容 項 目 を 「主 に 家 庭 が 中 心 とな っ て 教 え る こ とだ か ら」 「学 校 の 教 育 活 動 を 通 して は 身 に つ か な い か ら」 な ど 、 学 校 以 外 の 役 割 とす る 見 方 が 多 い 。 内 容 項 目 の 削 減 と い う観 点 か ら み た と き 、 学 校 の 役 割 とそ うで な い も の を 区 別 す る の は 重 要 な 課 題 で あ る。 た だ し 、 そ れ を 他 に 押 しつ け る と い う考 え 方 で は 、 学 校 ・家 庭 ・地 域 の 連 携 は 形 成 され な い の で は な い か 。 た と え ば 、 家 庭 の 役 割 の 典 型 とみ な され て い る 「家 庭 愛 」 に つ い て 、 学 校 で 「家 庭 愛 」 を 取 り上 げ る こ と の 意 義 が 理 解 が な され て い な い 。 家 庭 や 地 域 と の 役 割 分 担 の 意 義 を 再 考 す る 必 要 が あ る と い え よ う。

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以 上 の 問 題 点 の 指 摘 に 基 づ き 、 以 下 で は 、1.発 達 課 題 を 取 り入 れ た 重 点 指 導 、2.現 代 的 な 教 育 課 題 に 応 え る 内 容 構 成 、3.学 校 ・家 庭 ・地 域 の 連 携 に つ い て そ れ ぞ れ 考 察 す る。

2.カ リキ ュ ラ ム 改 善 の 課 題

2‑1発 達 課 題 を 取 り入 れ た 重 点 指 導

重 点 指 導 は 多 様 な 形 で 行 わ れ る得 る 。 そ の 第1は 、 あ る特 定 の 内 容 項 目 を 重 点 的 に 扱 う も の で あ る 。 重 点 指 導 と い わ れ る 場 合 の 多 く は 、 これ を 指 す と 考 え られ る 。 第2は 、 特 定 の 内 容 の 場 面 を 重 点 的 に 取 り上 げ る 場 合 で あ る。 た と え ば 、 地 域 に 外 国 人 が 多 く住 む よ う に な っ た 学 校 で 、 地 域 の 外 国 人 と の 交 流 に 関 す る 場 面 を 道 徳 の 時 間 に よ り多 く含 め る よ うに す る 場 合 で あ る。 本 稿 で は 、 ど も の 実 態 か らみ て 不 足 し て い る 」 と い っ た 「対 症 療 法 的 な 重 点 指 導 」 を 超 え て 、 子 ど も の 道 徳 性 の 発 達 全 体 を 見 渡 し た 上 で の 重 点 指 導 を 行 う際 の 根 拠 とな り うる 枠 組 み に つ い て 考 察 した い 。

さて 、 重 点 指 導 を 計 画 す る 際 、 広 い 範 囲 の 道 徳 性 の 発 達 に お い て 、 何 に 重 点 を お き 、 何 に 対 して 重 点 を お か な い こ と に な る の か(場 合 に よ っ て 扱 わ な い の か)を 理 解 で き れ ば 、 重 点 化 の 際 の 決 定

に 役 立 つ で あ ろ う。 以 下 に 、 そ の 際 に 参 考 と な り得 る と考 え られ る 事 柄 を あ げ る 。 1)「 指 導 書 」 に お け る 道 徳 の 内 容 の 学 年 間 の 関 係 へ の 参 照

ま ず 考 え ら れ る こ と は 、 「指 導 書 」に お け る 各 学 年 の 「内 容 」の 関 係 を 参 照 す る こ とで あ る。 「 導 書 」 で は 、学 年 間 の 内 容 を 関 連 づ け 、発 展 性 を 考 慮 す る こ と の 必 要 性 が 指 摘 され て い る 。 そ し て 、 か な りの 程 度 、 学 年 間 の 内 容 の 関 連 が 述 べ られ て い る 。 そ れ ら の 関 係 を 参 照 した り、 更 に 系 統 化 す る こ と に よ っ て 、 少 な く と も 、 指 導 内 容 の 重 点 化 の 結 果 が 全 体 と し て の 道 徳 性 の 内 容 に お い て ど の よ う な 意 味 を もつ の か を 知 る こ と が で き る。 そ の 結 果 、 重 点 の 置 か れ な か っ た 部 分 を 後 の 学 年 で 扱 う際 の 指 導 の た め の 情 報 を 得 る こ と も 可 能 で あ ろ う。 しか し、 指 導 書 で は そ れ ぞ れ の 学 年 に お け る 指 導 内 容 の 根 拠 が 、 各 時 期 の 子 ど も の 特 徴 で あ る 場 合 や 、 現 在 の 社 会 的 環 境 や 国 際 的 状 況 か ら導 か れ る 場 合 等 多 様 で あ る 。 重 点 指 導 に 際 し て は 、 少 な く と も よ り統 一 され た 記 述 が 有 用 で あ ろ う。 そ の た め の 一 つ の 観 点 と して 、 以 下 に 発 達 的 な 観 点 か らの 重 点 化 の 枠 組 み を 考 察 す る。

2)発 達 的 観 点 か ら

既 に 指 導 書 に お い て 指 導 内 容 の 発 達 上 の 関 連 づ け が 指 摘 され て い る こ と を 考 え る と 、 発 達 的 な観 点 自体 は 特 に 新 し い も の で は な い 。 こ こ で は 、 発 達 的 な 観 点 を 整 理 し、 「発 達 的 な 観 点 か ら重 点 を お く」 とい う場 合 と し て 、3つ の タイ プ が あ る こ とを示 す。 それ ぞ れ の タイ プ に よっ て 、 そ の内 容 を 重 点 的 に 指 導 す る こ との 意 義(ま た は 、場 合 に よ っ て そ れ を と りあ げ な い こ と の 影 響)は 異 な る 。 な お 、 本 稿 で い う発 達 的 観 点 か らは 、 各 学 年 で 何 を 重 点 的 に 指 導 す る べ で あ る か を 直 接 述 べ る こ と は で き な い 。 発 達 的 な 観 点 か ら提 案 で き る こ と は 、 重 点 的 に 特 定 の 内 容 が 各 学 年 で と りあ げ られ る と き の 理 由 の タ イ プ を 示 す こ とで あ る。

さ て 、 発 達 的 な 観 点 と は 、 子 ど も の 発 達 の 過 程 に つ い て の 以 下 の よ うな 見 方 で あ る。 子 ど も の 生 活 社 会 や 認 識 の 世 界 が 拡 大 され て い く 中 で 、 子 ど も た ち は 新 た な 課 題 と 出 合 う。 そ して 、 そ れ らの 課 題 に 取 り組 む こ と に よ っ て 、 道 徳 性 を 発 展 させ て い く。 子 ど も は 、 本 来 新 た な 課 題 へ の 関 心 と興

味 を も ち 、 よ り よ い 解 決 を め ざす と仮 定 さ れ る。

発 達 的 な 観 点 か ら 重 点 指 導 を 行 う とい う場 合 、a生 活 空 間 や 認 識 の 世 界 の 拡 大 や 変 化 、bそ れ に 伴 う発 達 課 題 の 出 現 、c子 ど も の も つ 関 心 ま た は 問 題 意 識 を 考 慮 に 入 れ 、 指 導 の 系 統 化 を 図 る 必 要 が あ る 。

発 達 課 題 に つ い て は 、 エ リ ク ソ ン 、E.H.に よ る 青 年 期 に お け る 自我 同 一 性 の 獲 得 と い う発 達

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課 題 等 が 著 名 で あ る が 、 「課 題 」 に は 、具 体 的 な 技 術 か ら道 徳 性 に 到 る さ ま ざ ま な も の が あ り得 る 。 な お 、 発 達 課 題 は 、 社 会 と子 ど も との 双 方 の あ り方 か ら 生 じる も の で あ り、 時 代 や 社 会 に 応 じて 異 な り得 る の で 、 教 育 上 は 柔 軟 な 対 応 が 必 要 で あ ろ う。 実 際 に 、 最 近 の テ レ ビ 、 イ ン タ ー ネ ッ ト等 の 媒 体 に よ っ て 、 子 ど も た ち が 接 す る 社 会 的 な 世 界 は 著 し く変 化 を と げ て い る 。 む しろ 、 新 た な 時 代 の 発 達 課 題 が 求 め られ る(古 典 的 な 発 達 課 題 に つ い て は 、 表1を 参 照)。

表1一 般 的 な あ る い は 従 来 の 発 達 上 の 課 題 と子 ど も が もつ と予 想 され る 関 心

主 な 生 活 空 間 ま た は 重 要 な 関 係 発 達 上 の 主 な 課 題 主 な 関 心 学 年(認 識 の 世 界)

家 庭 、 近 隣 、 学 級 学 級 を 中 心 と した 生 活 決 ま り は 何 か

TVな どマ ス コ ミ 学 校 社 会 で の 生 活 人 の 行 動 な ど外 見 的 違 い 家 庭 、 近 隣 、 学 級 、 学 校 人 間 関 係 の 深 ま り 友 情 、 適 切 な 付 き 合 い 方

TVな どマ ス コ ミ

家 庭 、 近 隣 、 学 級 、 学 校 人 間 関 係 の 深 ま り 集 団 全 体 の ま と ま り 社 会 、TVな ど マ ス コ ミ 集 団 に お け る 自 己 集 団 に お け る 責 任 と義 務

aか らcの 発 達 に 関 わ る 事 柄 の も と で 、 子 ど も た ち に は どの よ うな 変 化 が 期 待 され て い る の だ ろ うか 。 こ の 点 に つ い て 発 達 心 理 学 に お い て 、 必 ず し も細 か な 点 で 共 通 の 見 解 が あ る と は い え な い 。 しか し、 そ の な か で 「分 化 と統 合 」 とい う一 般 的 な 方 向 は 、 認 め て も よ い だ ろ う。 た と え ば 、 他 の 人 々 の 考 え に つ い て 粗 い 分 け 方 を して い た 子 ど も が 、 よ り多 様 な 考 え を 細 か く そ れ ぞ れ の 違 い を 理 解 す る こ と に な る 等 で あ る(分 化)。

ま た 、 単 に ば ら ば ら に 細 か く分 け る よ うに な る だ け で は な く 、 そ れ らの 考 え を 整 理 し て 体 系 的 に 位 置 づ け る よ う に な る こ と も 必 要 で あ る(統 合)。 た だ し、 こ こ で 述 べ て お く必 要 が あ る の は 、 こ の よ うな 規 準 に よ る 発 達 的 変 化 は 、道 徳 教 育 の 目的 の な か の 一 っ に 過 ぎ な い こ と で あ る 。た とえば 、

自分 の ク ラ ス に 対 す る 責 任 や ク ラ ス の 一 人 ひ と りの 考 え や 感 情 を 大 切 にす る よ うに な る こ とは 、 「 化 と統 合 」 と い う一 般 的 な 発 達 的 な 変 化 と し て は と ら え 難 い だ ろ う。 し た が っ て 、道 徳 の 内 容 を 「 識 や 感 情 の 分 化 と統 合 」 と い う面 の み に 関 して 学 年 間 で 関 係 づ け る こ と は 、 他 の 関 係 を 無 視 す る こ と に な る 。 た と え ば 、 知 識 量 の 増 加 、 自 己 統 制 能 力 の 増 大 、 感 受 性 の 増 加 は 、 別 の 規 準 に よ っ て 関 連 づ け る 必 要 が あ る だ ろ う。

こ の よ う に 考 え た 上 で 、 道 徳 の 内 容 に っ い て 、 以 下 の 点 に 基 づ く 重 点 的 な 指 導 が 考 え られ る 。 A発 達 上 の 課 題 に よ る も の:そ れ ぞ れ の 学 年 の 子 ど も た ち の 生 活 空 間 や 認 識 の 世 界 が どの よ うに

拡 大 され 、 そ れ に と も な っ て どの よ うな 課 題 が 生 じ て い る か 、 あ る い は 生 ず る と予 測 さ れ る か を 考 慮 す る と い う形 で の 重 点 指 導 が あ り得 る。 そ の 典 型 例 と して は 、 小 学 校 へ の 入 学 時 に 子 ど も た ち が 学 級 と い う集 団 で ど う振 る 舞 うか を 学 ぶ と い う課 題 で あ る。

B子 ど も の 関 心 、 問 題 意 識 に よ る も の:子 ど も た ち が 、 他 者 や 集 団 と の 出 合 い に お い て ど の よ う

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な 関 心 や 問 題 意 識 を も つ か を 見 極 め 、 そ の 内 容 に っ い て 重 点 的 に と り あ げ る こ と が 考 え られ る 。 表1に 示 し た よ うな 一 般 的 に 子 ど も た ち が もつ と考 え られ る 関 心 に 基 づ く指 導 や 、 そ れ ぞ れ の 子

ど も た ち の 関 心 に 基 づ い た 指 導 が 考 え られ る。

C発 達 上 の 位 置 に よ る も の:年 齢 と と も に 期 待 さ れ る認 識 や 感 情 の 分 化 と統 合 へ の 道 筋(ま た は 別 の 規 準 に よ る 系 統 づ け)に よ っ て 、 よ り高 い 学 年 に お い て 重 視 され る 内 容 の 準 備 段 階 と し て 、 そ の 学 年 に お い て 重 点 的 に 指 導 す る こ とが 考 え られ る 。 例 え ば 、 国 際 理 解 に 関 す る 内 容 は 、 指 導 要 領 で は 、 小 学 校 高 学 年 に お い て 初 め て あ ら わ れ る 。 しか し 、 そ の 内 容 は 、 全 く 新 し く子 ど も た ち に 求 め られ る とい う も の で は な い 。 他 者 の 意 見 を 尊 重 す る こ と 、 広 い 心 を も っ て 異 な る意 見 を 理 解 す る こ と 、 偏 見 を な くす こ と等 々 の そ れ 以 前 の 学 年 に お け る 内 容 の 指 導 が 必 要 に な る 。 仮 に 、 地 域 の 状 況 や 子 ど も た ち の 関 心 か ら国 際 理 解 を 取 り上 げ た い と い う場 合 、 高 学 年 で 国 際 理 解 を扱 う前 に 、 そ の 前 提 と な る 内 容 に つ い て の 重 点 的 な 指 導 が 求 め られ よ う。

本 稿 で は 、 発 達 的 な 観 点 か ら重 点 指 導 に つ い て どの よ うな 形 で の 提 案 が 可 能 か を 考 察 した 。 発 達 とい う視 点 か ら は 、 重 点 指 導 は 、 基 本 的 に は 、 発 達 上 の 課 題 の 導 入 、 子 ど も の 発 達 上 の 関 心 、 発 達 過 程 を 考 慮 した 上 で の 準 備 段 階 と して の 重 点 化 が 考 え られ る。 し か し、 重 点 的 な 指 導 は 、 こ こ で い う発 達 的 観 点 か ら の み 行 わ れ る べ き と は い え な い 。 社 会 的 な 変 化 に 応 じて 子 ど も た ち に 新 た な 「 達 課 題 」 を 投 げ か け る 必 要 も あ る こ と 、 そ して 、 重 点 的 な 指 導 は 、 よ り多 くの 観 点 か ら 行 わ れ る 必 要 が あ る か ら で あ る 。 し か し 、い ず れ に せ よ 、 よ り根 拠 の あ る 重 点 的 な 指 導 が 行 わ れ る べ き で あ り、

本 稿 で 述 べ た 発 達 的 な 観 点 か らの 重 点 的 指 導 の タ イ プ は 、 一 般 論 に と どま る が 、 重 点 化 を 行 う際 の 根 拠 に つ い て の 一 つ の 枠 組 み を 与 え る も の で あ る 。

2‑2現 代 的 な 教 育 課 題 に 応 え る 内 容 構 成

(1)道 徳 の 時 間 は な ぜ 現 代 的 教 育 課 題 に 応 え ら れ な い か

現 代 的 教 育 課 題 に応 え る 道 徳 教 育 カ リキ ュ ラ ム を 開 発 す る た め に は 、 ま ず 現 行 の 道 徳 の 時 間 で 現 代 的 教 育 課 題 を扱 う こ と が な ぜ 困 難 な の か を 明 らか にす る必 要 が あ る。 そ こ で 、 こ の 問 題 を 考 え る た め に 、 ま ず 、 現 代 的 な 教 育 課 題 を 洗 い 出 し て み よ う。 例 え ば 、 東 京 都 で は 次 の10程 度 の 課 題 を 挙 げ て い る 。 す な わ ち 、 ① 人 権 尊 重 の 教 育(同 和 教 育 を 含 む)、 ② 国 際 理 解 教 育 、 ③ 環 境 教 育 、 ④ 情 報 教 育 、 ⑤ 福 祉 教 育 、 ⑥ 消 費 者 教 育 、 ⑦ 男 女 平 等 教 育 、 ⑧ 安 全 教 育 、 ⑨ 心 身 障 害 児 理 解 教 育 、 ⑩ 健 康 教 育(エ イ ズ 理 解 ・予 防 に 関 す る 教 育 、 性 に 関 す る教 育)な どで あ る。

さ て 、 上 記 の 課 題 に 応 え 、 日々 の 教 育 活 動 の 充 実 を期 す る た め に 、 毎 年 指 導 資 料 や 指 導 の た め の パ ン フ レ ッ ト類 が 各 学 校 に 配 付 され る 。そ れ ら は 現 場 で 十 分 に 活 用 さ れ て い る だ ろ うか 。実 際 に は 、 都 の 研 究 指 定 校 な り奨 励 校 の 指 定 を 受 け て 研 究 を 進 め て い る 場 合 を 除 い て 、 ほ と ん ど活 用 され て い

な い の が 実 情 だ ろ う。 教 師 が これ ら の 課 題 を 軽 視 して い る わ け で は な い 。 重 要 で あ る と認 識 して は い て も、 そ の た め の 指 導 の 時 間 を 確 保 す る た め に 苦 慮 せ ざ る を え な い の が 現 実 で あ る。

ち な み に 、 道 徳 の 時 間 に 的 を しぼ っ て そ れ ぞ れ の 指 導 資 料 集 を み て み る と 、 ど の 資 料 に も道 徳 の 時 間 の 指 導 実 践 事 例 が 掲 載 さ れ て い る。 全 て の 課 題 に っ い て 「1時 間 の 授 業 を 実 施 」 と 限 定 し て み て も 、 年 間10時 間 は そ の 課 題 の た め に 費 や され る 。 そ うな る と 、 学 習 指 導 要 領 の 「内 容 」 の た め に 充 て る 授 業 時 数 と抵 触 して しま うの で あ る。

こ の よ うな 事 態 が 生 ず る の は 、 学 習 指 導 要 領 の 「内 容 」 が 、 抽 象 的 な 徳 と して 記 述 さ れ 、 現 代 的 な 教 育 課 題 と直 結 し な い よ う に み え る か ら で あ る 。 っ ま り、 道 徳 の 「内 容 」 と現 代 的 教 育 課 題 は 、 全 く別 物 と い う意 識 が 一 般 的 な の で あ る。

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しか し実 際 に 現 代 的 教 育 課 題 に 関 す る 授 業 を し よ う とす る 場 合 に は 、 授 業 時 数 と の 関 係 上 、 現 代 的 な 教 育 課 題 と道 徳 教 育 の 内 容 を 結 び っ け て 授 業 を せ ざ る を え な い 。 しか し そ の 際 、 あ く ま で も道 徳 の 「内 容 」 が 先 に あ り、 そ の 内 容 に 教 育 課 題 を 生 か す こ とに な る。 た と え ば 、3一(1)の 自然 愛 ・ 動 植 物 愛 護 に 関 す る 内 容 の 指 導 の な か で 、 環 境 問 題 を 盛 り込 む と い う授 業 で あ る。 し か し 、 こ の よ

うな 手 法 を と る 限 り、 現 代 的 教 育 課 題 は 道 徳 教 育 に お い て 「主 」 で は な く 「従 」 な の で あ る。 そ こ で は 、 教 師 は 現 代 的 教 育 課 題 を 正 面 か ら取 り上 げ て い る とい う意 識 を持 ち に く い 。

こ う し た 現 状 を 打 破 し、現 代 的 課 題 を真 に 充 実 させ た 授 業 を 行 う に は 、 「道 徳 教 育 か ら 環 境 教 育 」 で は な く 、 「環 境 教 育 か ら道 徳 教 育 」 と い う ア プ ロ ー チ を 確 立 した カ リキ ュ ラ ム を 開 発 し な け れ ば な ら な い の で は な い か 。 す な わ ち 、 現 代 的 な 課 題 が ま ず 先 に あ り、 そ こ か ら こ れ ら の 課 題 が 要 請 す る 道 徳 的 価 値 や 道 徳 資 質 は 何 か を 明 ら か に し 、 そ の 上 で そ れ らの 価 値 や 資 質 を 「内 容 」 に 生 か して い く と い う考 え 方 で あ る 。 価 値 や 資 質 を 各 教 科 ・領 域 を横 断 ・統 合 した 学 習 ・授 業 の 中 で 育 成 す る も の と み な し、 そ の 一 環 に 道 徳 の 時 間 の 学 習 を位 置 づ け る こ とが 求 め られ る の で あ る。

そ の 上 で 、 道 徳 性 の 育 成 と い う視 点 か ら 、 各 課 題 間 の 連 携 を 持 っ た 総 合 的 な カ リキ ュ ラ ム を 志 向 す る必 要 が あ る 。 例 え ば 、 国 際 理 解 教 育 、 環 境 教 育 、 情 報 教 育 、 福 祉 教 育 と い っ た 教 育 課 題 を 個 別 に 学 ぶ の で は な く 、 そ れ らの 課 題 に 求 め られ る 道 徳 と い う視 点 か ら 総 合 的 に 学 習 す る の で あ る。

今 一 つ 重 要 な こ と は 、 現 代 的 な 教 育 課 題 に 即 応 した 道 徳 の 時 間 を 実 施 す る に は 、 そ れ らの 課 題 に 十 分 な 道 徳 の 時 間 を 確 保 す る 必 要 が あ る とい う こ と で あ る 。 そ の た め に は 、 今 ま で の 内 容 項 目 を さ ら に 重 点 化 す る 必 要 が あ る 。 そ こ で 、 次 に 指 導 内 容 の 統 合 に つ い て 考 え よ う。

(2)内 容 の 統 合 と 関 連 化

現 行 の 学 習 指 導 要 領 で は 、 「自 己 自身 に 関 す る こ と」 他 の 人 と の 関 わ り に 関 す る こ と 」 「自然 や 崇 高 な も の と の 関 わ りに 関 す る こ と」 社 会 と の 関 わ り に 関 す る こ と」 の4つ の 観 点 か ら 内 容 項 目 が 整 理 ・統 合 さ れ て い る。 し か し 、 一 つ の 内 容 項 目 に 多 く の 指 導 内 容 が 盛 り込 ま れ る こ と に よ っ て 、 い っ た い ど こ を 重 点 に し て よ い の か は っ き り し な く な っ た も の も あ る 。 例 え ば 、 基 本 的 な 生 活 習 慣 に 関 わ る 内 容 項 目 で あ る 小 学 校 低 学 年1一(1)「 健 康 や 安 全 に 気 を 付 け 、 物 や 金 銭 を大 切 に し 、 身 の 回 りを 整 え 、 わ が ま ま を し な い で 、 規 則 正 しい 生 活 を す る 」 な ど は 、 見 た 目に は 一 項 目 で あ る に も か か わ らず 、 内 容 的 に は 五 項 目で あ り、 焦 点 化 しず ら い 。 一 時 間=一 内 容 項 目 と い う考 え 方 で 全 内 容 を 指 導 し よ う とす る と 、 こ れ だ け で 五 時 間 を 必 要 と し て し ま う。

こ の よ うな 事 態 を 改 善 す る た め 、 内 容 項 目 の 関 連 化 に 基 づ く指 導 を 提 起 し た い 。

た と え ば 、 「環 境 教 育 」 と い う と、 そ こ に は 様 々 な 価 値 が 関 連 づ け られ る 。 環 境 」 を テ ー マ に 一 時 間 の 授 業 を 計 画 す る と、 そ こ に は 、 「生 命 尊 重 」 、 「自 然 愛 」 、 「畏 敬 の 念 」 、 「公 徳 心 」 、

「勤 労 奉 仕 」 、 郷 土 愛 」 、 「進 取 ・工 夫 」 な ど様 々 な 価 値 が 含 ま れ て く る 。 同 様 に 、 「国 際 理 解 教 育 」に お い て も 、そ れ に 関 連 す る テ ー マ は 「国 際 理 解 」に 限 らず 、 「公 平 公 正 」、 「信 頼 ・友 情 」 、

「思 い や り」 、 個 性 伸 長 」 「寛 容 」 、 進 取 ・工 夫 」 な どが 考 え られ る 。

1つ の 課 題 に 関 す る 指 導 に 道 徳 的 な 価 値 を1っ と 限 定 す る と 、 い く ら時 間 が あ っ て も 足 りな い 。 ま た 、 逆 に 、1つ の 内 容 項 目 か ら1つ の 課 題 を ね ら っ て も 限 りが あ る 。 現 代 的 な 課 題 を 重 視 し た 指 導 を 充 実 させ る に は 、 小 学 校 の 道 徳 の 内 容 項 目 の 統 合 ・総 合 化 並 び に 再 編 ・改 編 が 求 め られ る 。 こ れ に は 、 道 徳 性 の 立 場 か ら の 理 論 的 な 研 究 と と も に 、 授 業 実 践 に よ る 検 証 が 欠 か せ な い 。 例 え ば 、

「環 境 教 育 」 を 中 心 に扱 う授 業 で 「生 命 尊 重 、 自然 愛 護 、 公 徳 心 、 勤 労 」 等 に つ い て 、 関 連 価 値 的 に 扱 っ た り、 さ ら に は そ れ ら を 総 合 ・統 合 した ね ら い を 設 定 し た 授 業 を 実 施 し、 そ の 成 果 を 評 価 す る 実 践 の 積 み 重 ね が 求 め ら れ る。 こ の よ うな 授 業 に 対 して は 、 中 心 価 値 が 一 本 に 絞 ら れ ず 徹 底 し

参照

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