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51 判例研究平成二八1(民集七〇巻五号一一五七頁)外国国家が発行した円建て債券の償還等について 債券等保有者のための任意的訴訟担当として債券の管理会社の原告適格が認められた事例債券償還等請求事件(最高裁平成二六年( 受 ) 第九四九号 平成二八年六月二日第一小法廷判決 原判決破棄第一審判決取消し

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全文

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Title

〔最高裁民訴事例研究四五四〕外国国家が発行した円建て債券の償還等について、債券等保有者

のための任意的訴訟担当として債券の管理会社の原告適格が認められた事例(平成二八年六月二日

第一小法廷判決)

Sub Title

Author

山本, 和彦(Yamamoto, Kazuhiko)

民事訴訟法研究会(Minji soshoho kenkyukai)

Publisher

慶應義塾大学法学研究会

Publication year

2016

Jtitle

法學研究 : 法律・政治・社会 (Journal of law, politics, and

sociology). Vol.89, No.12 (2016. 12) ,p.51- 63

Abstract

Notes

判例研究

Genre

Journal Article

URL

http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00224504-20161228

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51 判 例 研 究 平成二八1 (民集七〇巻 五 号 一一五七 頁) 外国国家が発行した円建て債券の償還等について、債 券等保有者のための任意的訴訟担当として債券の管理 会社の原告適格が認められた事例 債券償還等請求事件(最高裁平成二六年 (受)第九四九号、平成 二八年六月二日第一小法廷判決、原判決破棄第一審判決取消 し・差戻し) 〔事   実〕   Y(アルゼンチン国:被告・被控訴人・被上告人)は、平 成八年から一二年にかけて四回にわたり円建て債券(本件債 券)を発行した。この発行の際、Yは、債券の内容等を「債 券 の 要 項 」( 本 件 要 項 ) で 定 め た 上、 X 銀 行 ら( 原 告・ 控 訴 人・上告人)との間で、Xらを債券の管理会社として管理委 託契約を締結した。   本件管理委託契約には、準拠法を日本法とするほか、以下 のような趣旨の定めがあった。   ①   Yは、本件債券の債権者のために、本件債券に基づく 弁済の受領、債券の保全その他本件債券の管理を行うことを 債券の管理会社に委託し、管理会社はその委託を受ける。   ②   債券の管理会社は、本件債券の債権者のために本件債 券に基づく弁済を受け、又は債券を保全するために必要な一 切の裁判上又は裁判外の行為をする権限及び義務を有するも のとする(以下、この②の条項を「本件授権条項」という) 。   ③   債券の管理会社は、本件債券の債権者のために公平か つ誠実に本件要項及び本件管理委託契約に定める債券の管理 会社の権限を行使する。   ④   債券の管理会社は、本件債券の債権者のために善良な 管理者の注意をもって本件要項及び本件管理委託契約に定め る債券の管理会社の権限を行使する。   本件要項は、本件債券の内容のほか、債券の管理会社の権 限等についても定めており、本件授権条項の内容をも含むも のであった。本件要項は、本件管理委託契約の内容となって

〔最

四五四〕

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いたほか、発行された本件債券の券面裏面にその全文が印刷 され、本件債権者に交付される目論見書にも本件授権条項を 含めてその実質的内容が記載されていた。   本件債券は証券会社によって引受けがされ、当該証券会社 を通じて販売された。Yは、平成一四年三月以降、利息及び 一 部 債 券 の 元 金 の 支 払 を し な か っ た。 そ こ で、 X 銀 行 ら は、 平成一五年一二月、債券の管理会社として、償還日の到来し て い な い 債 券 に つ い て も 期 限 の 利 益 を 喪 失 さ せ た。 そ し て、 Xらは、平成二一年六月、Yに対し、本件債権者のうち、本 件債券等保有者のために本件訴訟を提起した。   第一審は本件訴えを却下し た )1 ( ので、Xらから控訴がされた。 控訴審である原審は控訴を棄却し た )2 ( 。原判決の理由は、①授 権について、本件管理委託契約は第三者のためにする契約で あると解されるところ、本件債券等保有者の受益の意思表示 が必要であるが、明示又は黙示の受益の意思表示があったと はいえず、訴訟追行権の授与があったとは認められないこと、 ②訴訟担当の合理性について、本件債券等保有者の個別訴訟 の提起を妨げる事情はなく、Xらと本件債券等保有者との間 に利益相反関係が生ずるおそれもあることなどから、任意的 訴訟担当を認める合理的必要性があるとはいえないことなど か ら、 X ら は、 い わ ゆ る 任 意 的 訴 訟 担 当 の 要 件 を 満 た さ ず、 原告適格を有するとはいえないので、本件訴えは不適法とす るものであった。 〔判   旨〕   本判決は、原判決を破棄し、第一審判決を取り消し、本件 を第一審に差し戻した。その理由は以下のとおりである。   ま ず 一 般 論 と し て、 「 任 意 的 訴 訟 担 当 に つ い て は、 本 来 の 権 利 主 体 か ら の 訴 訟 追 行 権 の 授 与 が あ る こ と を 前 提 と し て、 弁護士代理の原則(民訴法五四条一項本文)を回避し、又は 訴 訟 信 託 の 禁 止( 信 託 法 一 〇 条 ) を 潜 脱 す る お そ れ が な く、 かつ、これを認める合理的必要がある場合には許容すること ができると解される」として、最大判昭和四五・一一・一一 民集二四巻一二号一八五四頁(以下「昭和四五年判決」と呼 ぶ)を引用する。   次 い で、 授 権 の 有 無 に つ い て、 「 Y と X ら と の 間 で は、 X らが債券の管理会社として、本件債券等保有者のために本件 債券に基づく弁済を受け、又は債権の実現を保全するために 必要な一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する旨 の 本 件 授 権 条 項 を 含 む 本 件 管 理 委 託 契 約 が 締 結 さ れ て お り、 これは第三者である本件債券等保有者のためにする契約であ ると解される。そして、本件授権条項は、Y、Xら及び本件 債券等保有者の間の契約関係を規律する本件要項の内容を構 成し、本件債券等保有者に交付される目論見書等にも記載さ れていた。さらに、後記のとおり社債に類似した本件債券の 性質に鑑みれば、本件授権条項の内容は、本件債券等保有者

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53 判 例 研 究 の合理的意思にもかなうものである。そうすると、本件債券 等保有者は、本件債券の購入に伴い、本件債券に係る償還等 請求訴訟を提起することも含む本件債券の管理をXらに委託 することについて受益の意思表示をしたものであって、Xら に対し本件訴訟について訴訟追行権を授与したものと認める のが相当である」とする。   次 に、 授 権 の 合 理 性 に つ い て は、 「 本 件 債 券 は、 多 数 の 一 般公衆に対して発行されるものであるから、発行体が元利金 の支払を怠った場合に本件債券等保有者が自ら適切に権利を 行使することは合理的に期待できない」として、本件債券と 社債との類似性に鑑み、社債に関するいくつかの規律を概観 し た 後、 「 X ら 及 び Y の 合 意 に よ り、 本 件 債 券 に つ い て 社 債 管理会社に類した債券の管理会社を設置し、本件債券と類似 する多くの円建てのソブリン債の場合と同様に、本件要項に 旧商法三〇九条一項の規定に倣った本件授権条項を設けるな どして、Xらに対して本件債券についての実体上の管理権の みならず訴訟追行権をも認める仕組みが構築されたものであ る」とする。   そ し て、 利 益 相 反 の 問 題 に つ い て は、 「 X ら は い ず れ も 銀 行であって、銀行法に基づく規制や監督に服すること、Xら は、本件管理委託契約上、本件債券等保有者に対して公平誠 実義務や善管注意義務を負うものとされていることからする と、Xらと本件債券等保有者との間に抽象的には利益相反関 係が生ずる可能性があることを考慮してもなお、Xらにおい て本件債券等保有者のために訴訟追行権を適切に行使するこ とを期待することができる」とした。   以 上 か ら、 「 X ら に 本 件 訴 訟 に つ い て の 訴 訟 追 行 権 を 認 め ることは、弁護士代理の原則を回避し、又は訴訟信託の禁止 を潜脱するおそれがなく、かつ、これを認める合理的必要性 が あ る と い う べ き で あ る 」 と し て、 「 X ら は、 本 件 訴 訟 に つ いて本件債券等保有者のための任意的訴訟担当の要件を満た し、原告適格を有するものというべきである」と結論づける。 〔研   究〕   本判決に賛成する。   本判決の意義   本判決の事案は、アルゼンチン国が発行したいわゆるソ ブリン債である円建て債券についてデフォルトが生じたと ころ、債券管理会社である銀行が原告となってアルゼンチ ンに対して当該債権の償還及び約定利息等の支払を求めた ものである。第一審及び原審において銀行の原告適格が否 定され、大きな反響を呼んだが、今般、最高裁判所は任意 的訴訟担当の要件を満たすとして原告適格を認める判断を 示した。

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  任意的訴訟担当については、昭和四五年判決において一 般 論 が 示 さ れ、 そ の 後 の 下 級 審 に お い て 多 く の 適 用 例 が あった。ただ、昭和四五年判決の一般論が抽象的なレベル に止まっていたこともあり、下級審のスタンスには微妙な 差異も見られた。本判決において、最高裁が約半世紀ぶり に上記一般論の適用の一例を明らかにし、任意的訴訟担当 の成立を認めたものであ り )3 ( 、その理論的及び実践的な意義 は極めて大きい。   その当てはめとしては特に、不特定の被担当者からの授 権の有無及び合理性について積極的観点から判断している 点が注目されよう。同じ任意的訴訟担当でも、被担当者が 特定されている場合と不特定の場合とがあり、後者の場合 には授権の有無が大きな争点になり得るところ、どの程度 その点を実質的に緩和できるかがそのような場合の訴訟担 当の可否を決する。本判決は、そのような場面での訴訟担 当の可能性を拡大する意味をもちえよう。   以下では、まず一般論として昭和四五年判決の示した要 件 と 本 判 決 の 関 係 を 確 認 し( 2) 、 次 い で、 具 体 的 な 当 て はめとして、訴訟追行権の授与の問題(3)及び任意的訴 訟担当の合理的必要性の問題(4)に関して順次論じ、最 後に、本判決の射程と今後の課題について検討する(5 ) )4( 。   任意的訴訟担当の要件   本判決は、その判断の基本的枠組みとして、昭和四五年 判決の一般論を維持している。昭和四五年判決は、民法上 の組合である建設共同事業体において、規約上、代表者で あるXが建設工事の施工に関して 共同事業 体を代表して自 己名義で 共同事業 体の財産を管理する権限を有していたと ころ、Xが発注者に対して損害賠償を請求した事案につき、 訴訟物である権利・法律関係につき管理処分権を有する主 体ではない第三者も「本来の権利主体からその意思に基づ いて訴訟追行権を授与されることにより当事者適格が認め られる場合もありうる」とし、その場合、原則は選定当事 者によることになるが、それ以外のものが許されないわけ で は な い と し て、 「 任 意 的 訴 訟 信 託 )5 ( は、 民 訴 法 が 訴 訟 代 理 人を原則として弁護士に限り、また信託法一一条(=現行 法一〇条)が訴訟行為を為さしめることを主たる目的とす る信託を禁止している趣旨に照らし、一般に無制限にこれ を許容することはできないが、当該訴訟信託がこのような 制限を回避、潜脱するおそれがなく、かつ、これを認める 合理的必要がある場合には許容するに妨げないと解すべき である」とした。そして、結論としても、組合規約におけ

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55 判 例 研 究 る業務執行組合員の組合財産管理権を根拠に、単に訴訟追 行権の授与に止まらず、実体上の管理権等とともに訴訟追 行権も授与されていることから、上記要件を満たすものと 判断している。   本判決は、昭和四五年判決では当然の前提とされていた 訴訟追行権に係る授権の存在について、それが任意的訴訟 担当を認める要件(前提)であることを確認 し )6 ( 、その有無 が中心的な争点になったものである。一部の学説は、この 授権の点を任意的訴訟担当の決定的な要件とはせず、合理 性・必要性との比較衡量で総合的に判断する考え方を提案 していた が )( ( 、そのような立場を明確に否定したものといえ る )8 ( 。   また、任意的訴訟担当を認める基本的要件として、昭和 四五年判決の一般論は、弁護士代理原則回避・訴訟信託禁 止潜脱のおそれと合理的必要性とを求めていたところ(両 者 は「 か つ 」 で 接 続 さ れ て い る )、 具 体 的 な 当 て は め の 場 面では、必ずしも両者を区別して論じていなかっ た )9 ( 。本判 決はどうかというと、判旨の読み方として、利益相反の問 題が前者の要件、権利行使の期待可能性の問題が後者の要 件 と し て 論 じ て い る と も 見 ら れ る が、 別 の 読 み 方 と し て、 両者の要件について厳密な区別はされず、総合的判断とし て合理性が検証されていると解する余地もありえよう。筆 者自身は、どちらかと言えば、後者のような読み方が相当 であり、最高裁は総合的な評価ないし判断として合理性が 認められれば足りるとしているのではないかと思料する。   訴訟追行権の授与   本判決は、授権の有無を検討するについて、本件授権条 項を第三者のためにする契約として構成している(この点 で は 原 判 決 と 同 じ で あ る )。 本 件 事 案 で は、 契 約 時 点 で は 第三者(債券等保有者)は特定されていないが、第三者の ためにする契約において、第三者は不特定でもよいとする 民法の一般的理解を前提にしたものと解されよ う )(( ( 。   問題は、第三者による受益の意思表示の有無である。本 判決が受益の意思表示を認めた根拠は、①授権条項が本件 要項の内容を構成し、目論見書等にも記載されていること、 ②本件債券等保有者の合理的意思にかなうことによる。① だけでは受益の意思表示を認めるには至らなかったが、そ れは、債券の転々流通等の場合には目論見書等の認識はな い可能性があるし、要項も確認されないおそれがあること によるのであろう。そこで、②の要素、つまり合理的意思 の推認があって初めて意思表示を認めたものと考えられ る )(( ( 。

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  本判決は、一審判決のように、不特定の第三者の意思表 示は明示的なものでなければならないとする理解を否定し、 黙示の意思表 示 )(( ( であっても、合理的な意思推認を補強材料 にして認めるものと理解することが可能である。ただ、本 判 決 の 議 論 は 約 款 論 と も 共 通 性 を 有 す る よ う に 思 わ れ る。 前稿で、筆者は「債券はその性質上集団的・定型的な権利 関係であり、債券要項の定めによって契約内容の統一を図 ることに合理性がある。その意味で、定型約款による取引 として理解できるものであろう」とした が )(( ( 、本判決も同旨 の理解によるものと解することも可能であろう。そのよう な理解は、特に不特定かつ集団的な法律関係に係る意思表 示の認定においては、妥当なものと思われる。   その意味で、本件授権条項が本件債券等保有者の合理的 な意思にかなうとした点に、本判決の本質があると考えら れる。原判決は、この点について授権条項の文言は抽象的 であり、訴訟追行権限の授与まで付与する意思を一般投資 家が有していたかは疑問であるとしていた。しかし、むし ろ「一切の裁判上の権限」という文言は訴訟追行権の授与 を含むと解するのが自然であり、通常の一般投資家は(正 確な法的理解はともかく)当該債券に何か問題が生じたと きは、自ら行動を起こさなくても債券管理に責任を負う専 門家である管理会社が適切に対応してくれることを期待し、 そ の 信 頼 を 前 提 に 債 券 を 取 得 し て い る も の と 考 え ら れ る。 デフォルト時に自ら裁判所に赴き、提訴しなければ自己の 権利が保全されないのでは、投資家の信頼を損なうおそれ があ る )(( ( 。まさに黙示の授権を認めることが投資家の合理的 な意思にかなうものと解されよ う )(( ( 。   授権の有無に関する下級審の判断との関係では、従来も、 あくまで授権が必要的とされるものの、黙示の授権を認め うる場合があることは一般に広く承認されており、その認 定に際しては、担当者と被担当者の関係の濃密さ、被担当 者 の 活 動 実 態、 社 会 的・ 取 引 的 慣 行 等 が 考 慮 さ れ て い た )(( ( 。 本 判 決 も 基 本 的 に は 同 様 の も の で あ る が、 前 述 の よ う に、 被担当者の合理的意思の推認が要素とされている点が重要 であり、少なくとも被担当者不特定型の事案では、今後の 裁判例においても、その点が重視されることになるのでは ないかと予想される。   ただ翻って考えてみれば、むしろ本件授権条項は、三者 間契約(Y(債券発行体) 、Xら(管理会社) 、債券等保有 者の間の契約)の内容として観念できるのではないかとも 思 わ れ る )(( ( 。 本 判 決 も、 「 本 件 授 権 条 項 は、 Y、 X ら 及 び 本 件債券等保有者の間の契約関係を規律する本件要項の内容

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5( 判 例 研 究 を構成」すると判示するが、契約関係を規律する文書の内 容であれば、それは契約条項そのものではないかとの疑問 も生じる。換言すれば、債券等保有者から直接Xらに対し て授権がされたとみる余地もあったし、その方が法律構成 としては直截的であったのではないかという印象も否めな い。本判決も、当事者の主張や原判決等それまでの経緯に 基づき、第三者のためにする契約との理解を前提にしたも のかと思われるが、上記のような法律構成の可能性を否定 するものではなかろう。   第三者のための契約か三者間契約かで異なる点として一 つ 考 え ら れ る の は、 第 三 者 の た め に す る 契 約 だ と す れ ば、 契約時点で第三者が現存している必要はな い )(( ( としても、そ れ が 少 な く と も「 将 来 出 現 す る で あ ろ う と 予 期 さ れ た 者 」 )(( ( である必要がある可能性がある。仮にそのような考え方が 採用されるとすれば、第三者のためにする契約の成立時に 全く存在しなかった者(当時胎児でもなかった自然人や設 立 手 続 も さ れ て い な か っ た 法 人 等 ) が そ の 後 に 受 益 者 と な っ た と き に、 そ の 効 力 に 疑 義 が 生 じ う る こ と に な ろ う。 これに対し、上記約款説であれば、債券の譲受時に三者間 契約が成立するのであり、その時点で現存していれば当然 に授権が認められることになり、後者の法律構成の方が紛 れが少ない可能性はあろう か )(( ( 。   以上のように、本判決の判断枠組みになお議論はありう るものの、その結論は基本的に相当なものであろう。これ によって、契約型の事案では、本来の権利者による授権条 項の確認可能 性 )(( ( 及びそれがその者の合理的意思にかなうこ とを要件として、事前の条項整備によって相当に広く授権 が認められる余地が生じたように思われる。他方、不法行 為型の事案で、メンバーに通知をして、異議がない場合に は授権を擬制するクラス・アクション的な運用はどうであ ろうか。結論的には、本判決の論旨を直ちに類推すること は難しいと 見 られる。確かに、権利者に対する個別の通知 や公告等による表示があり、少額集団被害の場合には合理 的意思の推認が働く余地も否定できない。しかし、本件の ように債券の譲受けという契約に伴って付随的に授権が認 定される場合と、不法行為型で単独の授権が認定される場 合とでは、やはり必要となる意思の「強さ」には差異があ り、後者においては、より実質的な授権が必要と解するべ きであろう。その意味で、上記のような運用を任意的訴訟 担当の枠組みの中で実現することは、やはり難しいといえ よう か )(( ( 。

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  任意的訴訟担当の合理的必要性   本判決は、任意的訴訟担当の合理性について、まず個別 訴訟の期待可能性の問題について論じる。原判決は、本件 債券の券面額が必ずしも少額でないこと( 百 万円・一 千 万 円 等 ) に 鑑 み、 個 別 訴 訟 が 十 分 に 期 待 で き る と の 理 解 を とっていたのに対し、本判決は、本件債券が「多数の一般 公衆に対して発行」したものであることから「自ら適切に 権利を行使することは合理的に期待できない」とする。正 当な判断といえよう。原判決は、投資家というものの性質 を無視しており、提訴のハードルを余りに軽視したもので ある。投資家とは基本的にはお金を出すだけの存在であり、 面倒なことは人に任せるもので、それを自分でしなければ ならないのであれば、そもそもそこにはお金を出さないよ うな属性の存在であろ う )(( ( 。そして、投資家が債券の管理や 回収につき自らは行わず専門家に期待するという点は、投 資額や法人・個人という属性にかかわらず、そのような意 味で専門家に対する授権にはそれ自体十分な合理性がある ものと解される。   特に、本判決は社債との類似性から、社債については社 債管理会社が法定されていることに鑑み、本件債券につい て契約上同旨の仕組みを構築することの合理性が強調され ている。換言すれば、本件債券の仕組みの合理性を否定す ることは、社債管理会社制度の合理性をも否定することに なり、法が不合理な制度(本来不要な制度)をあえて構築 していることにもなりかねず、解釈論として疑問があった ところであ る )(( ( 。むしろ逆に、本件のように、不特定かつ多 数の債権者があり、集団性が強く、各権利者の地位は基本 的に同一であり、訴訟における攻撃防御方法も共通し、個 別争点はほとんど想定できないような場合には、ある者が 授権を受けて訴訟追行することに強い合理性が認められる 事案といえよ う )(( ( 。   授権の合理性に関し、従来の下級審は、個別提訴の困難 性に基づき授権の合理性を認めることには一般に相当慎重 で あ っ た よ う に 見 え る。 例 え ば、 大 阪 高 判 昭 和 六 〇・ 五・ 一六判タ五六一号一四八頁は代理店契約を結んでいる外国 会社も弁護士への委任は困難とはいえないとするし、東京 地判平成一七・五・三一訟月五三巻七号一九三七頁も環境 保護団体について個人の訴訟追行も困難ではないとしてい た )(( ( 。従来の裁判例の傾向として、提訴困難に基づく合理性 の判断はやや厳しすぎる印象が否めなかったが、本判決は、 個別の事例判断ではあるが、少なくとも授権者不特定型の 事案においては、そのような傾向に警鐘を鳴らすものとす

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59 判 例 研 究 る評価も可能であろ う )(( ( 。   次に、本判決は、債券管理会社の利益相反性についても 論じている。原判決及び一審判決は、管理会社が発行体か ら報酬や費用償還を受けることや発行体に助言を与えるこ と 等 の 点 を 指 摘 し て、 利 益 相 反 の お そ れ を 重 視 し て い た )(( ( 。 しかるに、本判決は、銀行法に基づく規制・監督の存在や 契約上の公平誠実義務等の設定から、利益相反のおそれは 抽象的なものに止まり、適切な訴訟追行権の行使を期待可 能と判示する。やはり正当な判断であろ う )(( ( 。そもそも当事 者が授権しているにもかかわらず、利益相反によりその効 果を否定することは、過度にパターナリスティックな介入 になる可能性があり、例外的なものであるべきである。も ちろん、前述のように、授権が明示的なものではない場面 では、利益相反によって「薄い」授権の意思しか認められ ない債券 等 保有 者の 利益が現に害されるとすれば、それは 確かに問題である。しかし、そこには看過し難い実質的な 利益相反の存在が必要であり、本件では当事者の授権意思 を否定しなければならないほどの現実的な利益侵害の懸念、 すなわち、現実の訴訟活動において、Xらが債券等保有者 の利益を無視し、自己の利益あるいは債券発行体の利益等 を優先する現実的なおそれまではやはり存しないと言って よいであろ う )(( ( 。   最後に、本判決の注目すべき点として、本件の特徴であ る時効中断の必要性については一切ふれていないことがあ る。一審判決や原判決の評論においては、本件訴えを却下 してしまうと、投資家の個別請求が時効によって阻まれる 点を重視して当事者適格を認めるべき旨の主張も多かっ た )(( ( 。 しかるに、本判決は、その点が決定的な理由ではないとし たものと解される。換言すれば、本件が仮に時効中断とは 関係のない事案であっ たとし ても、なお判旨は原告適格を 認めたものと考えられ、その意味で、射程は広いというこ とであろう。   本判決の射程と今後の課題   以上 見 てきたように、本判決の結論及び理由づけは基本 的に相当なものとして賛成したい。第一審判決及び原判決 は過度の形式論であって、それが、昭和四五年判決を限定 的に適用し、任意的訴訟担当の適用場面を狭めようとする 一部下級審裁判例の従来の傾向を反映したものであるとす れば、本判決はその点に反省を迫る側面をもとう。確かに 本件はかなり特殊な事案であり、その射程は相当限定され ている。具体的には、①授権条項が予め開示され、それが

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授権者の合理的意思にかなう場合であること、②社債管理 会社と同様の契約上の仕組みが構築されていること、③訴 訟担当者の属性に鑑み、実質的な利益相反の懸念がないこ となどが必要とされよ う )(( ( 。ただ、本判決が、少なくとも多 数の不特定な主体から授権を受ける場合の任意的訴訟担当 について、明確な授権の意思表示が存在しない場合であっ ても、その容認の余地を拡大したことは重要であり、その 意味で、実質的に裁判を受ける権利を充実させるとの観点 からも大きな意味がある判断であると思われる。   なお、ソブリン・サムライ債の問題については、本件で 当事者意思の解釈論として一応その解決をみた。その結果、 ( 原 判 決 が そ の ま ま 維 持 さ れ た 場 合 と は 異 な り ) 立 法 的 な 対処は必然のものではなくなった。しかし、依然としてこ の問題が多数の利害関係人・巨額の投資資金に影響する問 題である点に変わりはな い )(( ( 。投資の基礎として法的安定性 の重要さは否定できないところであり、本判決のような投 資家の希薄な意思を基礎とする問題解決の方途には常に危 うさが伴う。この問題については、なお立法的解決の可能 性を真摯に検討し続けるべきであろう。 ( 1)   第 一 審 判 決 は 東 京 地 判 平 成 二 五・ 一・ 二 八 判 時 二 一 八 九 号 七 八 頁 参 照。 な お、 本 研 究 会 に お け る 筆 者 の 第 一 審 判 決 に 係 る 評 釈( 判 旨 反 対 ) に つ い て は、 山 本 和 彦・ 判 批・ 法 学 研 究 八 九 巻 五 号 一 三 〇 頁 以 下 参 照( 以 下「 前 稿 」 と い う) 。 ( 2)   控 訴 審 判 決 は 東 京 高 判 平 成 二 六・ 一・ 三 〇 金 判 一 四 九 六号一七頁参照。 ( 3)   な お、 授 権 が な い と し て 任 意 的 訴 訟 担 当 を 認 め な か っ た 最 高 裁 判 所 の 判 決 と し て、 い わ ゆ る 豊 前 火 力 発 電 所 差 止 訴 訟 に 係 る 最 判 昭 和 六 〇・ 一 二・ 二 〇 判 時 一 一 八 一 号 七 七 頁があるが、その点については簡単な説示に止まる。 ( 4)   な お、 本 判 決 に つ い て は、 筆 者 は、 別 稿( 山 本 和 彦 「 ソ ブ リ ン・ サ ム ラ イ 債 に お け る 債 券 管 理 会 社 の 任 意 的 訴 訟 担 当 」 N B L 一 〇 八 〇 号 五 九 頁 以 下 ) に お い て も 若 干 の 検 討 を し て お り、 本 稿 の 内 容 は 別 稿 と 重 複 す る 部 分 も 多 い。 予めご寛恕いただければ幸甚である。 ( 5)   こ の よ う に、 昭 和 四 五 年 判 決 は「 任 意 的 訴 訟 信 託 」 と い う 表 現 を 用 い て い た が、 本 判 決 は、 近 時 の 学 説・ 裁 判 例 の 大 多 数 の 表 現 方 法 に 従 っ て、 「 任 意 的 訴 訟 担 当 」 と い う 表現を用いている。 ( 6)   既 に 最 判 昭 和 六 〇・ 一 二・ 二 〇 前 掲 も、 周 辺 住 民 か ら の 授 権 が 認 め ら れ な い と し、 「 か か る 授 権 に よ っ て 訴 訟 追 行 権 を 取 得 す る 任 意 的 訴 訟 担 当 の 場 合 に も 該 当 し な い 」 と し て、 任 意 的 訴 訟 担 当 に は 授 権 が 必 須 の 要 件 で あ る 旨 を 示

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61 判 例 研 究 していた。 ( ()   例 え ば、 堀 野 出「 任 意 的 訴 訟 担 当 の 意 義 と 機 能( 2・ 完 )」 民 商 一 二 〇 巻 二 号 二 七 九 頁 以 下 は、 明 示 的 授 権 を 要 し な い 任 意 的 訴 訟 担 当 と い う 類 型 を 承 認 す る。 本 件 と の 関 係 で、 田 頭 章 一「 債 権・ 社 債 の 管 理 人 の 手 続 上 の 地 位 ( 2・完) 」上智法学五九巻二号八三頁以下も参照。 ( 8)   た だ、 授 権 の 有 無 の 判 断 に 際 し て 授 権 者 の「 合 理 的 意 思 」 を 勘 案 す る こ と で、 授 権 の 事 実 認 定 の 中 で、 実 質 的 に 上 記 の よ う な 学 説 の 問 題 意 識 を 吸 収 し た も の と す る 評 価 も 可能かもしれない。 ( 9)   昭 和 四 五 年 判 決 の 結 論 部 分 で は、 「 業 務 執 行 組 合 員 に 対 す る 組 合 員 の こ の よ う な 任 意 的 訴 訟 信 託 は、 弁 護 士 代 理 の 原 則 を 回 避 し、 ま た は 信 託 法 一 一 条( = 現 行 法 一 〇 条 ) の 制 限 を 潜 脱 す る も の と は い え ず、 特 段 の 事 情 の な い か ぎ り、 合 理 的 必 要 を 欠 く も の と は い え な い 」 と し て、 両 者 の 判断が独立してされているのか、明らかではなかった。 ( 10)   本 件 に 類 似 す る 社 債 保 証 の 法 律 構 成 と の 関 係 で、 不 特 定 の 受 益 者 の 可 能 性 を 肯 定 す る 見 解 と し て、 道 垣 内 弘 人 「 金 融 取 引 に み る 契 約 法 学 の 再 検 討 の 必 要 性 」 徳 岡 卓 樹 = 野 田 博 編『 企 業 金 融 手 法 の 多 様 化 と 法 』( 日 本 評 論 社、 二 〇 〇 八 年 ) 九 八 頁 以 下 参 照。 こ の 点 は、 改 正 民 法 案 五 三 七 条 二 項 に お い て 明 定 さ れ、 第 三 者 の た め に す る「 契 約 は、 そ の 成 立 の 時 に( 中 略 ) 第 三 者 が 特 定 し な い 場 合 で あ っ て も、そのためにその効力を妨げられない」とされている。 ( 11)   な お、 受 益 の 意 思 表 示 の 到 達 の 問 題 は、 本 件 で は 明 示 的 に 議 論 さ れ て い な い が、 ど の よ う に 考 え る か が 問 題 と な り 得 る( 一 審 で は 一 つ の 争 点 と な っ て い た )。 民 法 五 二 六 条 二 項( 改 正 法 案 五 二 七 条 ) の 類 推 適 用 の 問 題 と す れ ば、 債 券 要 項 で 通 知 不 要 と い う 黙 示 の 意 思 表 示 が あ っ た か、 あ る い は 取 引 上 の 慣 習 が 存 在 し て い た と し て、 債 券 の 購 入 に よ り「 承 諾 の 意 思 表 示 と 認 め る べ き 事 実 」 が あ っ た と 解 す る こ と が で き る こ と に な ろ う か。 こ の 点 が 肯 定 さ れ な い と、 授 権 = 任 意 的 訴 訟 担 当 の 成 立 を 認 め る こ と は で き な い は ず で あ る こ と か ら す れ ば、 本 判 決 も そ の よ う な 理 解 を 前 提 と したものとも思われる。 ( 12)   第 三 者 の た め に す る 契 約 と の 関 係 で、 黙 示 の 受 益 の 意 思 表 示 を 認 め る 判 例 と し て、 大 判 昭 和 一 八・ 四・ 一 六 民 集 二 二 巻 二 七 一 頁 参 照。 ま た、 金 融 取 引 一 般 と の 関 係 で は、 道垣内・前掲注 ( 10)一〇〇頁も参照。 ( 13)   前 稿 一 三 八 頁 参 照。 同 様 の 理 解 と し て、 青 山 善 充 ほ か 「 サ ム ラ イ 債 の 債 券 管 理 会 社 に よ る 訴 訟 追 行 の 可 否 」 金 法 一 九 八 一 号 一 五 頁〔 松 下 淳 一 〕 も こ の 取 引 の 集 団 性・ 団 体 性 を 強 調 し、 「 約 款 を め ぐ る 議 論 な ど と 連 続 性 が あ る の で は な い か 」 と 指 摘 す る し、 長 瀬 威 志 = 門 口 正 人・ 判 批・ 判 時 二 二 〇 二 号 一 五 八 頁 も、 権 利 の 同 質 性 及 び「 緩 や か な 集 団性」を重視し、 「約款の一種として」授権を承認する。

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( 14)   この点の詳細は、前稿一三八頁以下参照。 ( 15)   な お、 そ の よ う な 授 権 の 撤 回 の 可 能 性 に つ い て は、 前 稿 一 三 九 頁 参 照。 こ の よ う な 除 外 の 可 能 性 を 判 決 効 拡 張 の 十 分 条 件 と し て 重 視 す る 見 解 と し て、 岡 成 玄 太・ 判 批・ ジュリ一四八九号一二一頁参照。 ( 16)   そ の 例 と し て、 東 京 地 判 平 成 二・ 一 〇・ 二 九 判 タ 七 四 四 号 一 一 七 頁( 世 帯 員 の 世 帯 主 へ の 授 権 )、 東 京 高 判 平 成 八・ 一 一・ 二 七 判 時 一 六 一 七 号 九 四 頁( 組 合 員 の 業 務 執 行 組合員への授権)など参照。 ( 1()   こ れ は、 前 稿 一 三 七 頁 に お い て 筆 者 が 示 し て い た 解 釈 の 可 能 性 で あ る が、 債 券 要 項 の モ デ ル 案 の 立 案 者 に お い て 示 さ れ て い た 理 解 で も あ る。 出 口 博 昭「 円 建 外 国 債 等 の 『 債 券 の 要 領 』 モ デ ル 試 案 に つ い て 」 商 事 法 務 六 〇 一 号 二 頁 参 照( 同 旨 と し て、 濱 田 邦 夫「 外 国 発 行 体 の 円 貨 債 券 ( サ ム ラ イ 債 ) に 関 す る 債 権 者 集 会 の 開 催 に 関 す る 諸 問 題 ( 上 )」 商 事 法 務 一 二 九 五 号 三 二 頁 注 1(「 発 行 体 と 債 権 者 と の 間 の 債 券 契 約 で あ る 債 券 の 要 項 」 と い う 表 現 が あ る )、 西 村 総 合 法 律 事 務 所 編『 フ ァ イ ナ ン ス 法 大 全 上 』( 商 事 法 務、二〇〇三年)五三頁など参照) 。 ( 18)   第 三 者 が 胎 児 や 設 立 中 の 法 人 で も 認 め ら れ る 点 に 争 い は な い。 改 正 民 法 で は こ の 点 が 明 文 で 規 定 さ れ る 予 定 で あ る(改正法案五三七条二項参照) 。 ( 19)   最 判 昭 和 三 七・ 六・ 二 六 民 集 一 六 巻 七 号 一 三 九 七 頁 参 照( そ の 判 決 要 旨 は「 第 三 者 の た め に す る 契 約 は、 た と い 契 約 の 当 時 に 存 在 し て い な く て も、 将 来 出 現 す る で あ ろ う と 予 期 さ れ た 者 を も っ て 第 三 者 と し た 場 合 で も 有 効 に 成 立 するものと解すべきである」というものである) 。 ( 20)   た だ、 本 判 決 で は、 契 約 時 に 第 三 者 の 出 現 が 予 期 さ れ た か は 全 く 問 題 と さ れ て い な い こ と を 考 え る と、 判 例 は、 第 三 者 の た め に す る 契 約 の 有 効 要 件 と し て 上 記 の 点 を 特 に 問 題 に し な い 趣 旨 と も 思 わ れ、 そ う だ と す れ ば 実 質 的 な 差 異 は な い こ と に な ろ う( 改 正 民 法 五 三 七 条 二 項 の 下 で は、 いずれにしても「現に存しない者」の解釈問題となろう) 。 ( 21)   こ の 点 は 約 款 論 か ら の 示 唆 で も あ る。 現 在 国 会 で 審 議 中 の 民 法 改 正 案 で も、 定 型 約 款 の 契 約 組 入 れ の 要 件 と し て、 約 款 内 容 の 表 示 が 求 め ら れ る( 民 法 改 正 案 五 四 八 条 の 三 参 照) 。 ( 22)   も し こ れ を 実 現 し よ う と す る の で あ れ ば、 消 費 者 裁 判 手 続 特 例 法 の 延 長 線 上 で、 や は り 何 ら か の 立 法 的 措 置 が 必 要になろう。 ( 23)   青 山 ほ か・ 前 掲 注( 13)二 〇 頁 以 下〔 松 下 淳 一 〕 の 強 調 す る 点 で あ り、 さ ら に、 米 田 保 晴「 サ ム ラ イ 債( 円 建 外 債 ) の 債 権 の 管 理 会 社 は 訴 訟 追 行 権 を 有 す る か 」 信 州 法 学 二三巻一号二三頁には経済的な例証がある。 ( 24)   この点の指摘は、前稿一四一頁参照。 ( 25)   そ の 意 味 で、 消 費 者 裁 判 手 続 特 例 法 に お け る 共 通 義 務

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63 判 例 研 究 確 認 訴 訟 に つ い て、 多 数 性・ 共 通 性・ 支 配 性 の 要 件 が 求 め ら れ て い る と こ ろ、 そ れ と の 類 似 性 も 強 い。 同 制 度 に つ い て は、 伊 藤 眞『 消 費 者 裁 判 手 続 特 例 法 』( 商 事 法 務、 二 〇 一 六 年 )、 山 本 和 彦『 解 説 消 費 者 裁 判 手 続 特 例 法〔 第 2 版〕 』(弘文堂、二〇一六年)など参照。 ( 26)   他 に も、 東 京 地 判 平 成 一 七・ 八・ 三 一 判 タ 一 二 〇 八 号 二 四 七 頁( 芸 能 人 の プ ロ ダ ク シ ョ ン へ の 授 権 に つ き 個 人 で も提訴可能とする)など参照。 ( 2()   こ の よ う な 観 点 か ら す れ ば、 判 例 準 則 自 体 の 見 直 し を ( 立 法 等 に よ り ) 検 討 す べ き 時 期 に 来 て い る の か も し れ な い。 研 究 会 に お い て は、 こ の 合 理 性 の 要 件 を 任 意 的 訴 訟 担 当 の 積 極 的 要 件 と す る よ り は、 合 意 に よ る 授 権 を 阻 却 す る 消 極 的 要 件 と し て 規 律 し 直 す の が 相 当 で あ る 旨 の 意 見 も 示 された。 ( 28)   長 瀬 威 志 = 門 口 正 人・ 判 批・ 判 時 二 二 〇 二 号 一 六 〇 頁 は、 一 審 判 決 に つ い て、 こ の 点 が「 任 意 的 訴 訟 担 当 を 否 定 する端的な理由であると推察される」と評されていた。 ( 29)   前 稿 一 四 一 頁 で も、 「 本 件 に お け る 利 害 相 反 の 実 質 は か な り 形 式 的 な も の に 止 ま り、 そ の 点 を 過 度 に 強 調 す る こ とには疑問がある」としていた。 ( 30)   仮 に そ の よ う な こ と が 行 わ れ た 場 合 に は、 契 約 上 の 義 務 違 反 に よ る 多 額 の 損 害 賠 償 請 求 の ほ か、 行 政 上 の 制 裁、 さらには 重 大なレピュテーションリスクのおそれがあろう。 ( 31)   本 件 が 時 効 中 断 の た め の 提 訴 で あ っ た こ と に つ き、 坂 井 豊 = 渡 邉 雅 之「 ア ル ゼ ン チ ン 共 和 国 債 に 関 す る 訴 訟 の 当 事 者 適 格 が 争 わ れ た 事 案 」 N B L 九 九 八 号 六 頁 な ど 参 照。 時 効 中 断 の 必 要 性 を 繰 り 返 し 強 調 さ れ る の は、 青 山 ほ か・ 前掲注 ( 13)二三頁以下〔神田秀樹〕参照。 ( 32)   も ち ろ ん、 こ れ ら が 全 て の 任 意 的 訴 訟 担 当 に お い て 必 要 と な る わ け で は な い。 今 後、 学 説 に お い て も、 授 権 者 特 定 型・ 不 特 定 型、 明 示 授 権 型・ 黙 示 授 権 型、 契 約 型・ 非 契 約 型 な ど、 任 意 的 訴 訟 担 当 を 類 型 化 し て、 よ り 精 細 な 要 件 の検討が求められよう。 ( 33)   サ ム ラ イ 債 の 発 行 額 は、 ( 企 業 の 発 行 も 含 め て ) 二 〇 一 四 年 は 二 兆 五 千 億 円 を 超 え た と さ れ る。 最 近 の ギ リ シ ャ 国 債 の デ フ ォ ル ト を め ぐ る 騒 動 な ど を 見 て も、 こ の 点 が 経 済的に重大な問題であり続けていることは明らかであろう。 山本   和彦  

参照

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