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水工学論文集,第53巻,20092

水面形時系列データに基づく交互砂州平均河床 高の時間変化及び流量ハイドログラフの解析

ANALYSIS OF CHANNEL BED VARIATION AND DISCHARGE HYDROGRAPH BASED ON TIME-SERIES DATA OF WATER SURFACE PROFILES

川口 広司

1

・藤堂 正樹

2

・福岡 捷二

3

Hiroshi KAWAGUCHI,Masaki TODO and Shoji FUKUOKA

1学生会員 博(工) 佛教大学教育学部教育学科数学中1高1免課程(〒731-5133 広島県広島市佐伯区旭園10-8)

2正会員 博(工) パシフィックコンサルタンツ㈱国土保全技術本部河川部長 (〒163-0730 東京都新宿区西新宿2丁目7番1号第一生命ビル)

3フェロー会員 工博,Ph.D 中央大学研究開発機構教授(〒112-8551 東京都文京区春日 1-13-27) An analysis of bed variation during floods is needed for the computation of water levels in rivers with large temporal change of bed topography. Because water surface profiles and its temporal change are effected by longitudinal change in cross-section, roughness and bed variation in the river, flood discharge hydrograph and bed variation may be estimated by using observed water surface profiles and 2-D numerical analysis of unsteady flow and bed variation.

In this paper, time change in longitudinal bed height and discharge hydrograph is estimated by the 2D numerical flow and sediment load analyses based on time-series data of water surface profiles in unsteady flow in channel with movable bed. Issues for the application to the river bed variation of the proposed method are presented.

Key Words : unsteady flow , water surface profiles , 2D numerical analysis , bed variation , steep channel, discharge hydrograph

1. 研究背景・目的

洪水中にどの程度の河床変動が起こっているかを知る ことは河川管理上重要である.しかし,河道の広い範囲 で河床形状を測定する機器等を用いて洪水中の河床変動 量を知ることは,現在のところ技術的にも経済的にも困 難である.通常は,洪水前後の横断測量結果から河床の 変動高を推定するが,洪水中の河床高の変化をどの程度 の精度で表現し得ているかは定かではない.一方,洪水 中の水面形の時間変化を測定することは容易であり,わ が国の多くの河川(約30河川,平成20年現在)で水 面形の観測データが集積されている.水面形の時間変化 には,洪水中に起こっているさまざまな現象が含まれて

いる1).福岡ら2),3)は,洪水流の観測水面形の時間変化を

河川管理の基礎情報として生かすための調査研究を行っ ている.そのひとつの成果は,観測された洪水水面形の 時間変化を解とするように非定常浅水流方程式を解くこ とによって,各河道地点の水理量,流量ハイドログラフ を高い精度で算出できることであり,また,この方法に より本川水位の影響を受ける支川からの合流量4),派川

への分流量5),遊水地への流入量6),破堤氾濫流量ハイド ログラフ7)等,従来十分な精度で解析が出来ず,河川管 理上課題であった水理現象を評価することができること を示した.洪水中の河床変動の情報も水面形の時間変化 の中に含まれている.この点に関連して,宇民・上野ら

8)は,洪水時に河床に形成されている砂堆上の水面に現 れている画像を分析し,洪水流の構造と砂堆の関係につ いて興味ある結果を得ている.竹林ら9) は,河口砂州 の存在下では,洪水ピーク流量が砂州に到達する前に上 流でピーク水位に達するとの認識で,河口砂州上流域の 水位変動特性を洪水の時系列特性と砂州高さに着目し数 値シミュレーションにより検討している.船橋ら10)は,

洪水中の斐伊川河口域では,河口水位と宍道湖水面位と の差が大きくなり,大きな掃流力が作用するため,河口 域での洪水中の河床低下量が大きくなり,河床変動量を 考慮しないで実測水位を用いて水理量を計算すると大き な誤差を伴うことを示している.塚本ら11)は洪水後に測 量された河床形状を用い,洪水痕跡水位縦断形を満足す る水面形計算を行なうと,河口水深が洪水中の河口水深 に比して小さく計算され,射流状態の流れが河口に現れ 水工学論文集,第53巻,2009年2月

(2)

るという不合理な結果となることを示し,実際には河口 から海への水面勾配が大きくなり河口域に堆積していた 土砂が侵食されて河床高が下がり,なめらかな常流状態 の流れとなる場合が多いことを示している.このような ことから,河口域の河道計画では観測水面形の時系列デ ータ等から洪水中の河床変動を推定し,流量,水位等の 水理量を適切に算定することが求められている12),13). これまでの河床変動解析は,洪水後に測られた河床高 を再現する解析が中心課題で,洪水流の時間変化との関 係で,河床がどのように変化していくかについての検討 はほとんど行われてこなかった.河口の問題に限らず河 床変動の大きな河川では,洪水中の河床変動の推定は河 川管理上の重要な課題である.洪水中の水面形には河床 変化の情報が含まれており,水面形を用いた解析は河床 変動を推定する有力な方法のひとつとなり得る.具体的 には,観測水面形の時間変化を解とした平面二次元解析 と河床変動解析から求まる河床高さの時間変化が,どの 程度実現象を説明することが出来るかを検討し,洪水中 の河床変動の新しい算定法に繋げるべきと考える.

本研究の目的は,実河川での洪水中の河床変動を合理

的に推定することを最終の目的として,まずは,藤堂ら

14)によって行われた移動床実験結果である交互砂州の発 達・消滅を伴う水面形と河床高の時系列データを用い,

水面データを解とする非定常二次元流・河床変動解析か ら交互砂州の波形の変化過程,平均河床高の時間変化,

流量ハイドログラフについて解析し,非定常流れ下の河 床変動の解析法がどの程度実験結果を説明できるもので あるかを明らかにする.

2. 水面形時系列データに基づく河床変動解析

非定常流下の交互砂州の変形過程の研究について,渡 邊ら15),桑村・渡邊16),渡邊17)は,水路実験で詳細な検 討を行い,実験と弱非線形解析により砂州の形成に及ぼ す流れの履歴の影響を明らかにしている.藤堂ら14)18)は,

先鋭なハイドログラフの流れが実験水路を流下した時,

交互砂州の形成,消滅を伴う河床変動について実験と解 析により検討している.

観測水面形 時系列データ

境界条件

上流設定水位時系列 下流設定水位時系列 給砂量(上流平衡流砂量)

地形データ

平面形状,断面形状

解析メッシュ

(地被状況)

粗度(分布)

(樹木群分布)

非定常二次元流河床変動解析

上流設定水位時系列

下流設定水位時系列

(上流水理量)

上流端水位調整

下流端水位調整

(上流端平衡流砂量)

水面形の時間変化 河床形状の時間変化 流速分布の時間変化

観測水面形,観測流量(参考値)との比較 調整

平均河床高縦断分布の時間変化,流量ハイドログラフ

図-1 水面形時系列データに基づく河床変動解析フロー 観測流量(参考

計算条件

境界条件

解析結果

(3)

洪水中の流砂量が動的にほぼバランスしている河床変 動の小さな緩流河川においては,洪水中の水面形の時間 変化と非定常二次元流解析から,流量ハイドログラフ等 が精度良く算出できることがわかっている2),3).一方,流 砂量が平衡状態になく,河床変動が大きい河道では,洪 水流の水面形は,河床面の時空間的な変化の影響を受け ている.このため,観測水面形の時系列データとほぼ一 致するように行った非定常浅水流・河床変動解析によっ て,流量ハイドログラフと共に河床形状の時間変化が流 れと河床変動解析の精度内で推定できると考えられる.

図-1に福岡・渡邊らの観測水面形による流量ハイドログ ラフの算定法2)を河床変動の推算を含めて拡張した解析 フローを示す.解析上の境界条件(計算メッシュの上流 端と下流端)は上下流端の観測点の水位ハイドログラフ を再現するように与え,その他の観測点の水位ハイドロ グラフは抵抗分布の調整によって再現する2).このとき,

計算される流量ハイドログラフは全体的に流量の観測値

を表現するように留意する(著者らはこのような役割を もつ流量観測値を参考値と呼んでいる)2).河床変動解 析が必要となる場合,この抵抗分布の調整による河床せ ん断力の変化は,流れの抵抗を変化させるだけでなく,

流砂量分布も変化させるため,河床形態を変化させるこ とによる流れの抵抗の変化も生じさせる.このように,

水面形から河床形状の時間変化を求める解析には複雑な システムを有する.本論文では,抵抗係数は時間的に一 定値を与える.解析手法の妥当性は,水面形について実 験値を再現し,実験流量ハイドログラフの実験値を全体 的に再現できる粗度係数を決定できるかどうかと,その 時計算された河床形状が実験値をどの程度再現している かにおいて議論される.なお,図中の( )は現地河道の場 合を示している.また,※で示した流砂に関する上流端 境界条件は洪水時の計算においては河床高が変化しない 断面から計算することになるが,本論文では,河床高の 実験値となるように与えている.

砂床(勾配 1/100,粒径 0.8mm) 礫 床 砂

止 め

Flow

0 5 10 15 20 25

0 60 120 180 240

時間(分)

流量(L/s)

給砂 ( 140L/1 サイクル )

0 5 10 15 20 25

0.13 0.135 0.14 0.145 0.15 0.155 0.16

平均水位(m)

流量(L/s)

1 サイクル目 2 サイクル目

0 30 60 90 120 150 180 210 240

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24

時間(分)

下流端からの距離(m)

-0.06 -0.05 -0.04 -0.03 -0.02 -0.01 0 0.01 0.02 0.03 初期河床面から の変動量(m)

0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 0.03 0.035 0.04 0.045

0 60 120 180 240

時間(分)

平均水位(m)

実験(上流) 実験(中流) 実験(下流)

計算(上流) 計算(中流) 計算(下流)

図-2 移動床直線水路(平面図)

図-3 上流端流量ハイドログラフと給砂状況 図-4 平均水位-流量曲線

図-5 左岸河床高縦断分布の時間変化 図-6 水路上・中・下流の平均水位ハイドログラフ

(4)

本研究では,流れの基礎方程式には,デカルト座標系 における非定常二次元浅水流方程式を用いた.河床変動 計算は従来の慣用的方法を用い行った.流速と水深評価 点はスタッガードに配置した.流砂量式には芦田・道上 式19),河床横断勾配による流砂量は長谷川の式20)により 求めた.底面流速は,Engelundの式(N*=7)21)を応用し た西本らの方法22) により求めた.

3. 非定常移動床実験

11)

の概要及び計算条件

(1) 実験方法・条件及び結果

対象とする藤堂らの実験14) の概要を以下に示す.移動 床実験水路は,図-2に示すように,水路延長25m,幅1m, 河床勾配1/100であり,左岸はガラス張りとなっている.

水路上流におけるバルブ制御型流量計により,図-3に示 すようなピーク流量20L/s,最小流量5L/s,通水時間120 分のほぼ三角波形の流量ハイドログラフが2サイクル与 えられた.また,通水40~80分後と160~200分後には上 流端で各合計140L(=6.0×10-5m3/s )の給砂が行われている.

河床材料は,d=0.8mm,比重2.65の一様砂である. 流量 ハイドログラフの1サイクル毎の下流端の流砂量が計測 された.

通水初期の河床には波長6m程度の交互砂州が発生し ていた.水位と河床高の縦断分布の時間変化は,左岸側 壁ガラス面に沿って縦断1m間隔,10分毎に同時計測さ れた.また,同条件の実験を再度行い,通水しながら移 動する砂州の最深河床位置を含む断面において,水位と 河床高の横断分布を計測した.水位・河床高の縦断分布 の時間変化は強化ガラス面に貼り付けたスケールにより 詳細に求められている.

図-4に水路全体の平均水位と流量の関係を示す.固定 床実験や河床変動の大きくない緩流河川の場合4),5)とは異 なり,同じ水位に対して増水期より減水期の方が流量が 大きくなる.これは,水路における平均河床の著しい低 下のためである.図-5は左岸際の河床高の縦断分布の時 間変化である.赤色で示す砂州の峰から峰までを砂州の 波長と定義すると,砂州の波長は増水期に大きくなり,

1サイクル目より2サイクル目のほうが大きくなっている ことがわかる.一方,減水期には深掘れが進行している.

これは澪筋に流れが集中するためである.

(2) 計算条件

計算条件は,前述の移動床水路に対して,x軸を流下 方向,y軸を横断方向としてdx=12.5cm,dy=5cm,dt=0.02 秒とした.dx=12.5cmは水路延長200分割,砂州波長48~

96分割にあたる.

上下流の流砂量がバランスしていないことによる河床 変動量の時間変化を評価するため計算領域は実験水路と 同じ長さとし,砂州発生のための擾乱として,上流端か ら50cmの右岸側岸に1メッシュの凸部を設けている.実 験の通水10分後の砂州形状と同等となるまで,計算上の 予備通水を行い,初期条件の同期を行った.

給砂量は,上流境界条件に実験値を与えると上流端付 近の河床形状が実験を再現できなかったため,上流端の 計算河床高の時間変化が実験値とほぼ一致するように与 えた.

計測された水面形全体を再現し,流量ハイドログラフ が概ね実験値と一致するように,上下流端の水位境界条 件と粗度係数(n=0.026)を設定した.

4. 実験・数値計算結果の考察

図-6は,上流端から0~5m,6~19m,20~25mを上 流・中流・下流区間として各区間の平均水位ハイドログ ラフを示したものである.ここで,平均水位は初期河床 高を基準としている.下流区間では,下流端の支配断面 による低下背水のため,中流区間と比べて平均水位ハイ ドログラフは若干低くなっている.また,上流端からの 給砂が十分でなく,上流区間では特に2サイクル目にお いて河床低下に伴い水位が低下している.解析結果は計 測された水面形を概ね再現していることが確認できる.

図-7は,河床変動の時間変化を含む流量ハイドログラ フの実験値と計算値の比較を示している.計算における 各断面の流量ハイドログラフは縦断方向にほとんど変化

-0.005 -0.004 -0.003 -0.002 -0.001 0 0.001

0 60 120 180 240

時間(分)

平均河床高(m)

計算

実験 (河床波形解析) 実験 (給砂量-流砂量) 0

5 10 15 20 25

0 60 120 180 240

時間(分)

流量(L/s)

実験 計算(2m) 計算(12.5m) 計算(25m)

図-7 流量ハイドログラフ 図-8 平均河床高時間変化

(5)

せず,先鋭な流量ハイドログラフが下流に伝わっている.

計算流量ハイドログラフのピークは実験と比べるとやや 小さい.これは,実験流量ハイドログラフは,水路の越 流堰(図-2の給水槽)で計測されたものであるため,流 量ハイドログラフは整流槽で減衰していたためと考えら れる.このため,本論文では計算においては,河床変動 量を含む実験の先鋭な流量ハイドログラフを概ね再現で きていると考え,以下河床変動の解析結果について議論 する.図-8は,実験の河床高分布及び上流給砂量と1サ イクル毎に下流端で計測された流砂量から評価した平均 河床高の時間変化の実験結果と,計算結果を示している.

河床高の測定点が少ないために実験の平均河床高はばら ついているが,上流端の給砂量と下流端の流砂量の差か ら求まる平均河床高と計算結果を比べると,計算結果の 全体的な河床低下量は実験と比べると小さい.後述する ように,計算の砂州の移動速度が実験に比べて小さいこ とからも,本解析では実験に比べて流砂量が小さめに見 積もられていると考えられる.

図-9は,水路全体における砂州の波長と波高の時間変

化を評価するために,実験と計算の左岸際の河床高縦断 分布をフーリエ解析により評価したものである.1サイ クル目の増水期に6m前後の交互砂州が発達し,1サイク ル目の減水期から2サイクル目増水期にそれより長い波 長が混在し,2サイクル目の減水期では長い波長の砂州 のみとなる状況が実験・解析とも表れている.水面形の 変化は,交互砂州の波形の変化による水路河床面の形状 抵抗の変化の影響も含んでいるため,水面形の時間変化 を追随するように流れと河床変動を計算すれば,このよ うな砂州などの特徴的な河床形状の時間変化特性をある 程度説明できるようになると考えられる.図-10は流量 ハイドログラフの各サイクルにおける増水期,ピーク付 近,減水期にあたる時間に左岸で計測された水位・河床 高縦断分布である. 交互砂州の波高を平均河床高に対 する峰部とその直上流の谷部の差と考えると,波高は上 流からの距離が10 m以下で小さく,10 m以上で大きくな っている.計算結果は,このような砂州の波高の縦断的 変化と水面に対する砂州の峰部の高さは実験結果と概ね 一致している.一方,水面に対する砂州の谷部の高さ

3.333 3.571 3.846 4.167 4.5455 5.5566.25 7.143 8.33312.510 16.6672550 平均値

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240

波長(m)

時間(分)

実験 平均値16.6673.3333.5713.8464.1674.5455.5567.1438.3336.2512.51025505

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240

波長(m)

時間(分)

-0.025 -0.02 -0.015 -0.01 -0.005 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 振幅(m)

計算

図-9 砂州波長・振幅の比較

(a) 実験結果 (b) 解析結果

-0.05 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3

0 5 10 15 20 25

基準面からの高さ(m)

上流端からの距離(m) 20min 60min 120min 20min 60min 120min

20min 60min 120min 20min 60min 120min 実験 計算

-0.05 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3

0 5 10 15 20 25

基準面からの高さ(m)

上流端からの距離(m)

140min 180min 240min 140min 180min 240min

140min 180min 240min 140min 180min 240min 実験 計算

(b) 2 サイクル目 (a) 1 サイクル目

図-10 水位・河床高縦断分布の比較

(6)

(深掘れ部の洗掘深)と砂州の移動速度についてはいずれ も実験結果よりも小さい.これらはより局所的な現象で あり,河床付近の流速や流砂量の評価法によって決まる ため,流れと河床変動解析モデルの精度に依存すると考 えられる.今後は多くの実河川における洪水流と河床変 動に適用し,上述の実験水路で見られた課題がどの程度 重要であるかを明らかにする必要がある.

6. 結論と今後の課題

移動床直線水路に2サイクルの流量ハイドログラフを 与え発生・変形する交互砂州の非定常実験について,観 測された水面形時系列データに基づく非定常二次元流・

河床変動解析を行い,形状特性の時間変化,流量ハイド ログラフ,平均河床高の時間変化を評価し,以下の結論 を得た.

測定された水面形の時間変化を解とする非定常二次元 流・河床変動解析は,流量ハイドログラフとともに交互 砂州の河床の峰部の高さや波長の縦断変化を概ね把握す ることができる.しかし,本検討結果の範囲では,解析 結果は実験結果に比べて砂州の深掘れ部の深さや移動速 度を小さめに見積もられる.解析対象に用いた交互砂州 の実験値は, 先鋭な洪水ハイドログラフの下で形成,変 形されており,時空間的に測定することの難しい河床デ ータの測定精度とともに,このような流れの下で用いら れた流砂モデルの適用性についての議論も必要と考えて いる.

現地河道の河床変動に対しては,まずは,洪水期間中 に時間的に変化する断面平均河床高の縦断変化とそのと きの流量ハイドログラフを必要な精度で求め得ることが 基本的に重要と考える.本解析法により,水面形の時間 変化が計測されていれば,これを解とする非定常二次元 流・河床変動解析から流量ハイドログラフと共に河床高 の平均的な挙動を推定できると考えられるが,今後多く の河川で検討し,算定精度を上げるとともに,実河川の 河床変動解析についても用いた方法の適用限界を明確に していくことが必要である.

参考文献

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水工学論文集,第50巻,pp.967-9722006.

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河川技術論文集,Vol.9pp.219-2242003.

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土木学会論文報告集,第316号,pp.37-50 , 1981

21) Engelund, F.: Flow and bed topography in channel bends, Journal of hydraulics division, Proc. of ASCE, Vol.100, HY11, pp.1631-1648, 1974.

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(2008.9.30受付)

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