事 由 の 競 合
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(2) 早稲田法学第五四巻第一・二号︵一九七八︶. 五八. いう形で争われるところから明らかなように︑個々の正当化事由の射程範囲の問題に帰着し︑従って︑それぞれの要 ︵2︶ 件に関する解釈が確定すれば︑いずれか一方に一義的に決定しうる性格のものである︒これに対し︑正当化事由の競. 合の場合は︑同一の立場において複数の正当化事由を同時に適用する可能性を留保しているのである︒次に︑正当化. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. 事由の衝突の場合は︑例えば︑緊急避難行為に正当防衛で対抗することがでぎるか︑という形で示されるように︑通. 常︑複数の人間の関与を伴った事象全体が間題とされるのであり︑その際にはもっばら︑ある者についての正当化事 ︵3︶. ︑︑︑︑︑. 由の存在が他の関与者の行為の正当化の可能性に影響を及ぼすか否か︑またどのような影響を及ぼすかが問題とさ. れる︒これに対し︑正当化事由の競合においては︑一個の人間について複数の正当化事由の相互関係が問題とされる. のである︒もっとも︑﹁義務の衝突﹂のように︑複数の正当化事由の衝突が例外的に一個の人格内部で生ずることも. あるが︑それらが対抗関係において存在するところに︑正当化事由が同一の方向に向かう﹁競合﹂との決定的な違い があるのである︒. 正当化事由の競合という考え方を成り立たせているのは︑違法性︵阻却︶に関する一元的理解である︒第一に︑正. 当化事由は︑法の全領域から引き出されるべきであるが︑それは︑行為の違法性がすべての法分野にわたって統一的. にしか阻却しえない︑という事実から導かれる︒ここに︑法秩序の統一性の原理が妥当するのである︒すなわち︑民 ︵4︶ 法ないし公法に従って許容されるものは︑刑法においても正当化事由として現れ︑その逆も成り立つ︒例えば︑ドイ ︵5︶. ツで民法二二八条︵防衛的緊急避難︶ないし九〇四条︵攻撃的緊急避難︶と刑法上の正当化緊急避難との競合︵特別. 関係︶が認められることがあるのはその一例である︒第二に︑すべての正当化事由に通ずる統一的原理の存在を肯定.
(3) ︵6︶. ︵7︶. する正当化一元論の下では︑すべての正当化事由が同扁の基本思想に基づいており︑同じ基本構造を示していること. から︑一つの構成要件該当行為に同時に多数の正当化事由が適合することが可能となる︒また︑個別的には︑﹁許さ. れた﹂行為︑﹁単に禁止されていない﹂行為︑ないし﹁法的に中立な﹂行為という︑積極・消極のニュアンスの差が ︵8︶. あっても︑いずれも違法でないという点で同一の法効果を伴う正当化事由は︑原則として相互に適用可能と解せられ. ω﹂ホヌである︒本稿の叙述もこれに負うところが大きい︒. この問題に関するほとんど唯一の論文が︑妻霞α斜N霞国op貯葺話醤くo昌勾9窪富旨蒔β⇒ひq膠急⇒αo戸閏霧誘9ユ津騰辞戸. ているのである︒ ︵1︶. なお︑筆者は︑可罰的違法性の. 00 0なお︑︿αq一︒竃窪吋8甲Nなひω霞蝉ヰo畠計︾一一堕↓o芦↓o出匿■ど一S刈℃ω●零①● 一零どω90 0︒. これに反し︑対物防衛につき正当防衛と民法二二八条の競合を認めるものとして︑例えば︑冨帥畦8FUo舞の畠3ω霞錬−. 竃帥霞8ダおお ︵2︶ 周8拝℃≧蒔●↓o芦ト︾仁臨. お謡 ω・︒︒おh. ω魯蜜閃Φ・ωoぼ竃巽白窪鼻莞ぴ望﹃帥凝①器9げ琴F国o目ヨ窪貫さ一堕︾蝿鉾一鶏ρωるOS. ︒嚇韻一●ω鎧彗きp曽轟ヰ9プ紗≧茜↓①芦s︾島 ︵3︶譲貰審︶鉾鉾○・ω︒置︒. 理論を肯定するが︑それは必ずしも違法嚇元論と両立しえないものではないと考える︒. ︵4︶. 一零9ω.G︒︒ G鐸. 蹄8算の︸≧一ひq◎↓o芦oo・︾β山︒︸一零o o︶ω﹄雪●. 五九. この点に関する一元論と多元論の対立については︑拙稿﹁刑法における正当化原理﹂刑法雑誌二二巻二号一頁以下参照︒. ︵5︶ω畠温きぎω9ω貫曽旨︒︒算≧蒔↓︒凶一﹄︒︾島. 一①ω魯8Fピo鐸言9留ωω#. ︵7︶ω9巨爵ぎの︒さ鉾餌・ρψ89. ︵6︶. ︵8︶. 正当化事由の競合︵曾根︶.
(4) 一. 正当化事由の併存. 早稲田法学第五四巻第一・二号︵一九七八︶. 二. 六〇. 複数の正当化事由相互の適用可能性を認めるためには︑構成要件該当行為の違法性阻却のための基礎として考. 察される各種の法律規定及び不文の規範︑従って個々の正当化事由が相互に独立して存在することが肯定されなけれ. ばならないが︑これは原則として積極に解すべぎであると思われる︒というのは︑すべての正当化事由が同一方向を. 向いているということから︑その問に対立点を認めることができず︑相互に排斥し合うことなく︑それぞれに独自の. 正当化の可能性が開かれているからである︒相互被制約性という趣旨での従属関係︑あるいは個々の正当化事由の一. 定の序列は︑いかなる場合にも一般に認められるものではない︒それゆえ︑行為の違法性阻却を基礎づける法命題. は︑どれも原理的には同等の資格で併存することが可能となる︒違法性阻却は︑他の正当化事由の存否にかかわら ︵1︶ ず︑右の法命題のいずれかによって支持されることが可能なのである︒. このように︑複数の正当化事由を同時に引き寄せる考え方に対しては︑それは︑一個の構成要件実現行為の違法性. 阻却は概念的には一度しか発生しえないという事実と矛盾する︑との批判が向けられるかもしれない︒しかし︑ヴァ. ルダの説くように︑﹁特定の法実現ないし法効果︵その否認の場合も同様︶が個々の場合に多くの法的理由から招来 ︵2︶. されうるということは︑実際の法適用においてきわめて周知の︑かつ今目の法学方法論において共通に承認されて. いる事実である﹂︒すなわち︑右の批判は︑次の二つの理由から説得性を欠く︒第一に︑違法性阻却は︑正当化せる. 事情の存在の結果として実在の原因及び作用から生ずる外的な存在界の事象ではなくーそこでは自然科学的意味で.
(5) 特定の単一の結果に対する因果性が一回限りの経過をたどるー︑事実的事象の精神的︵法的︶評価であって︑たと. い具体的な生の経過に関連づけられていようとも直ちに累積可能な思惟過程を意味しているのである︒第二に︑違法. 性はただの一度しか阻却しえないから︑複数の正当化事由の要件が充たされている場合にも︑そのうちの一つだけを. 適用すべし︑とする見解を採るためには︑論理構造の上で複数の正当化規範の間に優先順位が確定していることが前. 提とされなければならないが︑特定の行為につき選択に付せられる複数の正当化事由の右のような論理的な優先順位. は実際には存在しないのである︒一個の構成要件該当行為の違法性が相互に適用可能な複数の対立規範によって阻却 ︵3︶ される余地がある︑という事実はやはり正当なものとして確認されなければならない︒. もっとも︑右のような認識が理論上正当であるとしても︑はたしてそれが実際上の利益と結びつくものであるか. は︑まったく疑問なしとしない︒というのは︑行為の違法性が︑ある一つの正当化事由によって阻却せられるのであ. れば︑それと並んで他の正当化事由が存在するかは︑結論に影響を及ぼすものではなく︑従って︑それはおそらくわ. れわれの関心事たりえないともいえるからである︒また︑裁判官はこの点の確認を免れうるし︑事実概ねそうなので. ある︒被告人にとっても︑自己の行為が正当化されるのであれば︑その根拠を全体にわたって解明することはどちら. でもよいのである︒しかしそれにもかかわらず︑違法性の否認が重畳的に根拠づけられる可能性に︑実際上の意義が. まったくないわけではない︒なぜなら︑複数の正当化の可能性が同じ資格で相互に独立して存在するのであれば︑裁. 判官は︑違法性阻却の結論に到達するために複数の正当化事由のうちでもっとも容易に確認可能であり︑あるいは確. 六一. 実に評価しうる要件をもっているものを選択し︑その他の正当化事由の存在を未決定のままにしておくことが許され 正当化事由の競合︵曾根︶.
(6) 早稲田法学第 五 四 巻 第 一 ・ 二 号 ︵ 一 九 七 八 ︶ ︵4︶ るからである︒. 六二. 二 急迫不正な侵害に対する防衛行為が︑同時に第三者に向けられた避難行為でもあるような場合には︑正当防衛. と緊急避難とを並列的に適用することが可能となる︒一個の行為で侵害者に反撃し︑かつ︑第三者の利益を侵害する ︵5︶ ことによってしか自己の利益を擁護しえない場合がそうである︒そして︑緊急避難を正当化事由と解するときは︑こ. こにその競合を認めることができるのである︒従って︑侵害の不正︵違法︶性が必ずしも明らかでないとぎでも︑そ. れが﹁現在の危難﹂と呼べるものであるかぎり︑他の要件の充足を前提として緊急避難により行為の違法性が阻却さ. れることになる︒他面︑急迫不正の侵害であることが明らかな場合には︑しばしば複雑な様相を呈する法益衡量を回 ︵6︶ 避して正当防衛により違法性阻却を認定することが可能となるのである︒. 正当防衛と緊急避難の併存は︑同一の法領域︵刑法︶のみならず︑異なった法領域︵民法と刑法︶の間においても. 認められる︒民法七二〇条一項は正当防衛を規定し︑その本文で行為者に損害賠償責任が発生しないことを明らかに. した後︑同但し書きは︑﹁被害者ヨリ不法行為ヲ為シタル者二対スル損害賠償ノ請求ヲ妨ケス﹂と規定する︒すなわ. ち︑防衛行為によって第三者に損害を加えた場合には︑第三者が︑その防衛行為の原因とみられる不法行為者に対し. て損害賠償を請求しうることを規定している︒これは︑防衛行為が不法行為者に対してばかりでなく︑それ以外の第. 三者に対してもなされることを許容している結果であって︑例えば︑不法行為者の暴行を避けるために第三者の垣根. を破壊して脱出する場合にも正当防衛が成立することになる︒ところが︑刑法においては相手方に対する反撃行為の. みを正当防衛としており︑右の例は緊急避難に当たると解せられている︒何故なら︑刑法三七条の規定する現在の.
(7) ﹁危難﹂は必ずしも不正でないことを必要としないのみならず︑緊急避難を特色づけている﹁正対正﹂の関係は︑﹁避. けようとした害﹂と﹁生じた害﹂との間で問題になるからである︒ここにも︑正当防衛︵民法︶と緊急避難︵刑法︶ との併存を認めることができる︒. 民法と刑法との間で︑さらに緊急避難相互の併存関係の認められる場合がある︒民法七二〇条二項は︑﹁他人ノ物. ヨリ生シタル急迫ノ危難ヲ避クル為メ其物ヲ穀損シタル場合﹂︑すなわち︑いわゆる対物防衛の場合に同条一項︵正 ︵7︶. 当防衛︶の規定を準用している︒対物防衛を正当防衛ないし準正当防衛と解する見解もあるが︑これを緊急避難と解. する通説の立場からすれば︑本条項の要件を充たす事態の下においては︑民法上の緊急避難︵損害賠償義務を負わな ︵8︶ い︶と刑法上の緊急避難︵罰せられない︶とが併存することになるのである︒. 第三者の財産侵害を伴う緊急避難と被害者︵第三者︶の承諾とが競合するような事例において︑被害者が財産の侵. 害に承諾を与えたか否かが争われており︑かつこれを解明することが必ずしも容易でないような場合には︑行為が緊. 急避難の要件を充たすことが明らかであるかぎり︑右の争点を未解決にしておくことが許される︒逆に︑承諾が確認 ︵9︶. される場合には︑緊急避難において不可欠の︑しかしながら必ずしも認定の容易でない法益均衡︑補充性の判断を回. 避することができる︒のみならず︑およそ緊急避難は利益衝突の解決を目ざすものであるから︑このような場合には︑ ︵10︶. 少なくとも被害者︵第三者︶との関係では緊急避難状況が存在しないともいえるであろう︒ ︵11︶ 労働争議行為については︑労働組合法一条二項により︑これに対し刑法三五条の適用があることは明らかであるが︑. 六三. 問題は︑はたしてそれにとどまるか︑ということである︒法令による行為・正当業務行為は︑一般に緊急的正当化事 正当化事由の競合︵曾根︶.
(8) 早稲田法学第 五 四 巻 第 一 ・ 二 号 ︵ 一 九 七 八 ︶. 六四. 由と対比して常態的正当化事由︵一般的正当行為︶と解せられている︒ところが︑争議行為における労使の対立.拮 ︵12︶ 抗の場では︑団結権・団体行動権が危殆に瀕しているような事案がむしろ通常である︒多くの場合︑争議行為は﹁急. 迫﹂性・﹁現在﹂性に通ずるものがあるといえる︒労働争議行為は︑正当防衛行為・緊急避難行為に接することが多. く︑緊急行為としての側面もそこに看取することができるのである︒これもまた︑正当化事由の競合︵法令行為・正 当業務行為と緊急行為︶の一場面である︒. 争議行為の正当化に関するこのような理解は︑労働組合法一条二項但し書きの解釈につき意味をもつ︒右但し書き. は︑﹁いかなる場合においても︑暴力の行使は︑労働組合の正当な行為と解釈されてはならない﹂と規定する︒一般. に︑この条項は︑刑法三六条及び三七条の規定を排除するものではないが︑刑法三五条の適用はほぼ無条件にこれを. 排除する︑と解されている︒しかし︑争議行為が緊急性に連なる状況の下に行われることが通常の事態であるとすれ. ︵13︶. ば︑法令行為ないし正当業務行為として違法性を阻却させうる幅は︑その余の場合に比較して大きいものがあるとい. えよう︒また︑刑法三五条の適用が否認される場合にも︑争議行為が本来︑憲法・労働法上の権利行為であることに. 照らし︑それが急迫性ないし現在性の要件を充たしているかぎり︑正当性の幅はやはり他の緊急行為におけるよりも 拡大することが考えられるのである︒. 三 このように︑一個の行為に複数の正当化事由が併存する場合︑その中でもっとも容易に要件を確認しうる正当. 化事由のみを適用すれば足りるとすることは︑いずれにせよある種の訴訟経済上の利益を有している︒それは︑個々の. 正当化事由の独立性と︑それ単独ですでに行為の違法性を阻却する能力を有している︑という事実によって裏づけら.
(9) ヤ. ヤ. れている︒しかし︑他面︑正当化事由が競合する場合︑常にいずれの事由によっても行為の違法性が阻却されるとい ︵14︶. うのであれば︑正当化事由の競合はそれほど重要な問題ではない︒刑法の適用においては︑個々の正当化事由を列挙. するだけですでに十分だからである︒はたして︑右の原則には例外が存在しないのであろうか︒外見的には正当化事. ︵15︶. 由が併存するように見えて︑その実︑法的規制として︑ある正当化事由が他のものを排斥して優先的に適用されるよ. ︵1︶. 白曽同α欝餌● 餌 ● O ● ω ● 置 O .. 訓く帥嘆魁僧節︒節●O恥P一. これに対して︑正当防衛に際し︑たまたま不正な攻撃者の傍にいた第三者の利益を侵害した場合には︑攻撃者との関係で. O︒. うな場合が存在するかどうか︑また︑いついかなる見地から例外が認められるかが次の課題である︒. ︵2︶. ≦鋤﹃山僧ρ 四 ● O ● ω ● 一 膳 O い. o o h. ︵3︶. 毒餌吋α斜. ・ρ○.ω.一㎝O旧<αq一●ω印q3四昌戸鋤●鋤︒○●ω・oo. ︵4︶. ︵5︶. は適法︑第三者との関係では違法という二重の評価が重畳的に成立する︒その詳細については︑拙稿﹁緊急行為﹂現代刑法. ﹃α9ρ帥・O. の﹂㎝O旧くoq一.切四q3簿β夢斜鉾O・ω●ω爵O●. 講座二巻︹昭和五四年刊行予定︺参照︒. 76. なお︑本文で挙げた二個の事例における避難行為者︵前例では︑民法上は防衛行為者︶は民事上の責任︵損害賠償義務︶. 正当化事由の競合︵曾根︶. 六五. ているが︑違法性阻却内部での二分説︵単なる違法性阻却の場合と可罰的違法性阻却の場合︶が正当であると思われる︒. なり︵第三章第二節参照︶︑これらの場合は純然たる適法行為と解せられる︒緊急避難の本質をめぐって学説は激しく対立し. も負わないのであるから︑正当な危難を回避するために第三者の利益を侵害する︑本来の緊急避難︵不可罰的違法行為︶と異. ︵8︶. 説として柏木千秋﹁正当防衛﹂刑法基本問題六〇講一〇五f六頁がある︒. 正当防衛説として︑植松正・再訂刑法概論−総論一六九−一七〇頁︑平野龍一・刑法総論丑二三一ー二頁等︑準正当防衛. 白. (( )).
(10) くひq一・≦.錠鼠サ餌聾.O●ω﹂㎝Oい嚇ωo哀爵o・ωo日ま震・ピ窪鼻冨び簿●鉾O●ω︒齢ド. 早稲田法学第五四巻第一・二号︵一九七八︶ ︵9︶. ωoげα昌匿?ωoゴaqRきo昌o貯口05勲帥●ρω・&N・. 六六. 労働争議行為が刑法三五条前後の法令による行為であるか︑後段の正当業務行為であるか︑はたまたその他の正当行為で. ︵10︶. ︵11︶. 一条二項などを刑法三五条の﹁法令﹂とみるわけにはゆかない︑として︑その法令行為性を否定する見解もあるが︵例えば︑. あるかについては争いがある︒この点︑労働基本権の保障を定めた憲法二八条︑及びこれを受けて刑事免責を規定した労組法. 荘子邦雄・労働刑法︵総論︶︹新版︺九七頁以下︑とくに一〇二頁︶︑憲法上の﹁権利﹂による正当化機能を行為の違法性を. 荘子・前掲書一〇五頁以下参照︒. 荘子・前掲書三二〇頁以下︒. 三頁以下参照︶︒労働争議行為は法令による行為と解すべきである︒. 阻却しうる﹁法令﹂による正当化の類型から排除すべきいわれはない︵荘子﹁刑法三五条と違法阻却の法理﹂研修三四五号. ︵2 1︶. 譲畦量︸帥・餌●ρω●一鰹●. <αQ一●ω畠旨箆げぎの霞噂ρ鉾ρω︒8望︒. ︵3 1︶ ︵14︶. ﹁犯罪競合﹂との対比. 三 正当化事由の排斥. ︵5 1︶. ︵脚︶. 正当化事由が相互に独立して存在し︑そのため場合によっては複数の正当化事由を並列的に適用しうる︑という原 ︵1︶. 則に対する例外を考察するについては︑実態に即した認識に依拠する必要があることはもとよりだが︑罪数論︵広義︶. ﹂おける﹁犯罪競合﹂の概念道具を参考にするのが便宜である︒けだし︑犯罪性の肯定と否定の違いこそあれ︑共.
(11) に︑同一の事象に対して︑同一方向に向けられた複数の法命題が競合する場合だからである︒もっとも︑当面の課題. の解決にとって︑観念的競合及び実在的競合︵併合罪︶は考慮の外に置かれる︒理論上︵評価上︶数罪とされるこれ ︵2︶ らの場合は︑法命題の一つが他を排斥する︑正当化事由の競合の例外的な場合とその本質を異にするからである︒こ ︵3︶ の間題解決のための基準はもっばら︑いわゆる法条競合において獲得された原則から明らかとなる︒. 法条競合は︑通常︑択一関係︑吸収関係︑特別関係︑補充関係の四つの場合に分けられている︒このうち︑第一の. 択一関係は︑性質上両立しない規定は一方が他方を排斥して適用される︑とする関係であって︑例えば︑背任罪︵二. 四七条︶と横領罪︵二五二・二五三条︶の関係がこれである︑とされる︒しかし︑横領と背任の概念的差異をどう捉え ︵4︶. るにせよ︑横領に当たる行為は背任ではありえず︑またその逆も成り立つのであるから︑ここには本来の意味での競. 合はないものと言わざるをえない︒従って︑少なくとも外見的には併存の認められる正当化事由の競合をこれに対比. せしめること自体不可能である︒第二の吸収関係は︑例えば︑殺人罪︵一九九条︶の適用されるときは︑殺人未遂罪. ︵二〇三条︶は適用されない︑というように︑全部法が部分法を排斥することを意味する︒この場合︑殺人が既遂に ︵5︶. 至ればそこに未遂との競合が存在するようにも見受けられるが︑ここでも択一関係の場合と同様︑一方の構成要件が. 他方の構成要件を論理的に排斥しており︑正当化事由の競合との間にパラレルな関係を見い出すことはでぎない︒い ︵6︶. ずれにせよ︑概念的にも一つの行為が複数の構成要件のどちらか一方にしか包摂しえないような関係は︑ここでの問. 六七. 題解決にとり有用性をもたないのである︒ ︵7︶ かくて︑正当化事由相互の関係に応用可能であるのは︑特別関係と補充関係だけだということになる︒ 正当化事由の競合︵曾根︶.
(12) 早稲田法学第五四巻第一・二号︵一九七八︶. 六八. 罪数の問題と犯罪競合の問題は︑本来︑体系的に区別されなければならない︒前者は︑ 一個の犯罪が成立するのか︑数個. の犯罪が成立するのかを問題とするものであって犯罪論に属するが︑後者は成立した数個の犯罪について科刑上の取扱いを. ︵−︶. 問題とするものであって刑罰論に属する︵中山善房﹁罪数論の現状﹂中野還暦・刑事裁判の課題一六七頁以下参照︶︒しか. これに対して︑前章で論じた﹁正当化事由の併存﹂は︑観念的競合に類似した事態だといえよう︒ただし︑観念的競合に. し︑本稿では︑本来罪数論に属すべき法条競合を含めて︑広い意味で﹁犯罪競合﹂の言葉を用いることにする︒ ︵2︶. ヤ. ヤ. ヤ. ち. おいては︑通常数種類の評価を受けるが︵これに対し︑同種類の観念的競合の場合は一種類︶︑正当化事由の併存の場合は. ︵3︶. なお︑包括一罪の一つである吸収一罪︵例えば︑. 高田卓爾・︵団藤編︶注釈刑法②の皿五六一頁以下参照︒. 譲曽益斜㊤●勲O●oo●犀一・. すべて違法性阻却という点で単一の評価を受ける︒また︑急迫不正の侵害に対し反撃する︵正当防衛︶と共に︑別の行為に よって第三者の利益を侵害する︵緊急避難︶場合は︑実在的競合︵併合罪︶に類似した事態とみることができよう︒. ︵4︶. 殺人が軽い罪である器物損壊を吸収するというもの︶を吸収関係とみる見解もあるが︵例えば︑高田・前掲書五五九頁以. おそらく︑特別関係と補充関係だけが固有の意味での法条競合ではあるまいか︒択一関係及び吸収関係は︑いずれも他の. ︵二︶特別関係 論理的意味での特別関係. 廟. 特別関係は︑通例︑特別法は一般法を排斥する︑という公式で示される︒そ. 法条競合か事実認定の問題に解消しうる︵横領か背任か︑既遂か未遂か︶似非法条競合とでも呼ぶべきものであろう︒. 76. り多くは︑純粋に論理的な視点に従って概念的に確定される︒それは︑二つの法規が同一の構成要件を包含してお. ①. 一発の弾丸で人を殺すとともにその衣服も傷つけた場合︑重い罪である. ︵5︶. 一一頁︶︒. 下︶︑この場合は軽い暴も独立して別に存在しているのであって︑これを法条競合と呼ぶのは妥当でない︵平野・前掲書四 ミ斡巳詳鉾ρO●ω﹂目播. (( )).
(13) り︑その一方︵特別法︶がより狭く限定されているために他の法規︵一般法︶に対し特殊的に構成されているという ︵1︶ 関係にあり︑従って前者の構成要件のみによって評価すれば足りるからである︒例えば︑尊属殺人罪︵二〇〇条︶の. 規定︵特別法︶の下にはいる事態はいずれも必然的に同時に殺人罪︵一九九条︶の規定︵一般法︶の要件をも充足する. が︑逆は成り立たない︒このように特別関係は︑﹁包摂関係﹂という概念論理的な関係に即して整序される︒この意 ︵2︶ 味での特別関係は︑犯罪競合の場合ばかりでなく正当化事由の競合においても存在しうるのである︒ ︵3︶ ヴァルダはその一例として︑正当防衛に対する︑ドイッ民法八五九条一項の占有防衛︵ω①ω醤≦Φ日︶を挙げる︒同. 条項は︑﹁占有者は法の禁ずる私力に対し実力をもって防衛することをうる﹂と規定する︒ここに﹁法の禁ずる私力﹂. というのは︑違法に占有者の意思に反してその占有を侵害または妨害することであり︵同八五八条一項︶︑攻撃の対象の. 観点から︑これに限定を加えない西ドイッ新刑法総則三二条の正当防衛︵一般法︶との間に論理的な特別関係を認め. ることができるであろう︒たしかに刑法三二条二項︵旧五三条二項︶の正当防衛の定義に比較して相対的に簡略な民法. 八五九条一項の文言自体からは︑必ずしも直裁に特別法としての性格を読み取ることはでぎないが︑解釈上占有防衛. のあらゆる場合が常に正当防衛の要件をも充足していることが解明されれば︑この規定の性格は特別法として位置づ けられることになる︒. ︵4︶ 同様の関係は︑占有権に基づく自救行為︵占有自救︶の︑一般的な自救行為に対する関係にも認められよう︒わが. 国の法は︑民・刑事を問わず自救行為一般についてはこれを規定するところがなく︑また占有自救についても正面から. 六九. これを認めた規定をもたないが︑前者については︑緊急行為の一として正当防衛・緊急避難の規定を類推して超法規 正当化事由の競合︵曾根︶.
(14) 早稲田法学第 五 四 巻 第 一 ・ 二 号 ︵ 一 九 七 八 ︶. 七〇. 的正当化事由としてこれを認めることができ︑後者についても占有訴権制度の認められた趣旨や刑法二三八条の類推. などにより︑やはりこれを認めることができるのである︒事後強盗に関する刑法二三八条は︑﹁窃盗財物ヲ得テ其取. 還ヲ拒︹ク︺⁝⁝為メ暴行又ハ脅迫ヲ為シタルトキハ強盗ヲ以テ論ス﹂と規定するが︑その反面解釈上︑占有権に基. づく自救行為が︵少なくとも盗駐の取還について︶許されていると解せられる︒自救行為においても︑占有自救では. 保護されるべき利益が特定されているという点で︑一般的自救行為との間に概念的な包摂関係を︑従って論理的意味 での特別関係を認めることができるのである︒. しかし︑それにもかかわらず正当防衛と占有防衛︑自救行為ど占有自救それぞれの間に︑後者が前者に優先すると. いう︑特別関係を特徴づけている実体をうかがうことはできない︒占有権に対する防衛に際しては一般の正当防衛規. 定を合わせ適用することも可能なのである︒また︑自救行為に関し明石教授は︑コ般的自力救済と特殊的自力救済 ︵5︶. ︹その一つが占有自救であるu筆者注︺とは二者択一的に相排斥するものではなく︑相互に競合または相補充しうるもの. ︵6︶. である﹂とされ︑占有が侵奪された直後には︑占有自救が一般的自救行為や占有回収の訴と並んで可能であると解さ. れる︒占有自救が自救行為と一応別個であるとする点に疑問もあるが︑両者が排斥し合う関係に立たないと解される のは︑まさにそのとおりであろう︒. 二 一般的に言って︑﹁特別法は一般法を排斥する﹂という命題は︑少なくとも論理的な意味での特別関係に関す. るかぎり︑絶対的に妥当するものではない︒特別法の一部廃止の効果がすでに論理の不可避の根拠から生ずる︑とい. うことは適切でない︒すなわち︑従属︵包摂︶関係として特色づけられる特別関係の概念論理的構造の確認によって.
(15) は︑法の適用のためにそこからどのような効果が生ずるかについては︑依然として何も論ぜられていないのである︒. この点を明らかにするためには︑法が特別関係と︑相対するそれぞれの刑罰構成要件の形成を通してどのような目的. を追求したか︑ということに関する目的論的考察を必要とする︒特別関係を含めて︑およそ多数の規範が競合する場. 合には︑その中のある法律規定が他の法律規定によって排斥されると否とにかかわらず︑それらの法文︑相互関係︑. 歴史的展開︑及び特に当該規定の目的に従って決定されるべき解釈ないし個々の事例における法発見さえ問題とされ. るのである︒﹁特別法は一般法に優先する﹂という不動の原則は存在しない︒むしろ多くの場合︑特別法において妥当. する原則は択一的かあるいは累積的に一般法の原則と共通であり︑ここでは︑特別規制がその意味及び目的に従い︑ ︵7︶ 一般法のために与えられた原則を単に補充するにすぎないか︑それともこれに代置されるべきかが問題なのである︒. 以上の認識は刑法においても完全に妥当するところであり︑しかもきわめて実際上の意義を有することが容易に立. 証される︒ヴァルダにょれば︑特別の構成要件に結びつけられる規制の内容として︑一般的な犯罪のために予定され ︵8︶. た刑罰に︑第二の主刑︑付加刑ないし副次的結果︑保安及び改善処分︑あるいは特別の訴訟条件が付加される場合が. これである︒例えば︑親族相盗例に関するわが刑法二四四条は︑窃盗罪︵二三五条︶と特別関係に立つが︑それによ. って刑法二三五条の法定刑が排除されるのではなく︑直系血族︑配偶者及び同居の親族の間においてはその刑が免除. され︑その他の親族に係るときは告訴の要件によって補充されているにすぎない︒刑法理論においても︑厳格な構成. 要件に向けられる特別の規制は特別法として包括的な構成要件を規制する一般規範に優先し︑後者をその適用領域か. 七一. ら排除する︑という命題は絶対的なものではないのである︒特別規定が一般法規に対して制限効果を有しているか 正当化事由の競合︵曾根︶.
(16) 早稲田法学第五四巻第一・二号︵一九七八︶. 七二. ︵9︶ は︑常に当該規定の文言︑内容及び目的︑殊にその法効果の指示する対象及び意味連関に依存しているのである︒. 以上の論理を正当化事由の競合について適用するならば次のようになるであろう︒すなわち︑ある正当化事由が概. 念必然的に他の︵包括的な︶正当化事由の存在を前提とし︑それゆえ両者の間に論理的な意味での特別関係が存在し. たとしても︑その事実は依然として前者が後者を排斥するということを意味してはいない︒実際にそうであるのか. は︑目的論的考慮によって決定されるのである︒しかもその際︑正当化事由が常に行為の違法性を阻却するという法. 的効果を伴っていることが顧慮されなければならない︒その点で︑この状況は︑犯罪競合における特別関係の状況と. は区別される︒特に︑典型的には一般規定を適用領域から排除するための異なる法効果の指示︵例えば殺人︵一九九. 条︶に対する尊属殺︵二〇〇条︶の法定刑︶に示されるような場合からは厳密に区別されなければならない︒一般規. 範の排斥に対するこのような徴表は︑正当化事由にはおよそ欠落しているのである︒それゆえ︑正当化事由の場合は. 相互に論理的な特別関係に立つ場合にも︑一般的事由の排斥が否定されるのみか︑並列的な適用可能性さえ認められ. るように思われる︒仮に︑特別の正当化事由の存在が一般的な正当化事由の適用を不可能とし︑その結果︑後者は前. 者が存在しない場合にのみ適用しうるにすぎないとするならば︑裁判官は︑違法性阻却が一般的な規定を根拠に容易. に確認可能であり︑かつそれが一義的に与えられる場合にも特別の規定に従い︑特別の正当化事由の諸要件の存在に. 関する︑事情によっては冗長な証拠調を必要とすることになろう︒このように︑まさに正当化事由の同一の法効果の ︵10︶. 故に︑多数の正当化規定の同じ資格での適用可能性という訴訟経済上の長所が特別関係の場合に失われるということ は︑受け入れ難いものとなる︒.
(17) もちろん︑右の結論は確定的なものではありえない︒というのは︑他の規定の排斥に向けられた法律の意思が他の. ︵11︶. 規定と同様の法効果を予定しているにもかかわらず︑まさに異なる法効果の指示に基づく場合と同様︑特別規定がそ. ︵2︶. ︵−︶. 明石三郎・自力救済の研究︵増補版︶一一六頁以下参照︒なお自救行為一般に関する筆者の見解については︑﹁自救行為. oh ミ弩山斡℃鉾帥●O.ω﹂㎝o. ≦ &夢ρ勲ρω●窃oo. 高田・前掲書五五七頁︒. れにより規制された特別の事態のために厳格ないし付加的な前提に結びつけられていることがあるからである︒. ︵3︶. 明石・前掲書一一七頁︒ただし︑明石教授のいう﹁特殊的自力救済﹂は︑緊急性の要件を必要としない点で︵もちろんそ. と違法阻却の一般原理﹂早稲田法学会誌二四巻四一頁以下参照︒. ︵4︶. ︵5︶. 明石・前掲書二一〇頁︒. これに対し︑新たな占有が確立された時期及び暫定的時期においては︑﹁一般的自力救済﹂のみ. の内容・程度にもよるが︶緊急性をその本質とする自救行為の特別法といえるか疑問の存するところである︒. が許されるとするが︑この場合の自救行為も占有権に由来するものとみるべきではあるまいか︒占有自救は︑一般的自救行. ︵6︶. ≦鍵ユ費ρρρω●嶺9. ≦餌包欝曽︒曽●○●ω●一留h●. 為の一態様として捉えておけば足りると思われる︒ ︵7︶. ヤ. ヤ. も. ヤ. ち. ヤ. ヤ. ヤ. 譲霞壁︾勲斜O●ψ窃oo●山火助教授は︑犯罪競合における特別関係に関し︑﹁包摂の存在のみで︑特別法が一般法を除外. ︵8︶ ︵9︶. するという法条競合としての特別関係を認めることができるであろうか﹂︵山火正則﹁法条競合の諸問題e﹂神奈川法学七. ただそれだけでは特別関係が存在するとはいえない︒したがって︑特別関係を論理的な関係としてのみ断定することはでき. 巻一号四一頁︶と問題を提起した後︑自らこれに答えて﹁たとえ構成要件間に論理的に包摂の関係が認められるとしても︑. 七三. ない︒さらに︑法益の同一性も必要となる﹂︵四五頁︶とされる︒本文で展開した論旨に照らし︑正当である︒. 正当化事由の競合︵曾根︶.
(18) ≦畦鼠︸ρ斜○●ω︒嶺oo出●. 幽. 七四. ある正当化の規定が他のものを排斥するかどうかは︑本来︑論理的な特別関. 早稲田法学第五四巻第一・二号︵一九七八︶ ︵10︶ ︵11︶ ≦餌注斜餌.ρρω.頴O︒. ② 機能的意味での特別関係. 係の存在から独立して目的論的な考慮に従って決定される問題である︒それに従えば︑ある規範が特定の事態のため. に他の規範に対して究極の特別規制として現れるかぎりで︑機能的意味での特別関係︵9臼巨莚江旨旨鼻ぎ昌巴窪. ω日器︶について論ずることができる︒この概念は︑論理的意味での特別関係︵99芭一鼠ニヨ一轟冨畠①βω旨琴︶. に対立すべきものである︒両者は一致しない︒一面において︑前者は後者の概念より狭い︒というのは︑論理的な包. 摂の事実が直ちに︑狭い規制が広い規制を排斥するということを意味するのではなく︑それに加えて︑このような排. 斥作用が︑規定の文言︑目的︑殊にその法効果の指示する意味連関に従えば立法者により意欲されたものと認められ. なければならないからである︒しかるに︑正当化事由の場合は︑まさに法効果が同一であることからその場合に当たら. ないのではないか︑という疑問が存するのである︒他面︑機能的意味での特別関係の思想は︑概念的に論理的特別関. 係のそれより広きに及ぶ︒というのは︑二つの規定の間の論理的な特別関係の存在自体が︑その一方の適用を不能と. するために十分でないと同時に︑その存在もこのような排斥作用を発生させるための前提ではないからである︒法律. 規定の性格が特定の事実領域のための究極の特別規制と認められる場合には︑その結果相容れない規定は︑前者の規. 範が存在する場合に自己の構成要件的前提が概念必然的に与えられようと︑また個々の場合に単に偶然にしか与えら. れまいと︑排斥されることになるのである︒それゆえ︑機能的意昧での特別関係は︑二つの法規が概念論理的な従属関.
(19) ︵1︶. 係にある場合のみならず︑両規定の成立要件が交叉し︑従って相互の干渉が存在する場合にも考察の対象となるので ある︒. 特別関係を右のような機能的意味で規定する場合には︑そしてその場合にのみ︑特別法が一般法を排斥する︑とい. う絶対的な命題が維持されるのである︒ヴァルダによれば︑この確認は︑正当化事由についてのみならず︑刑法にお. けるその他の諸点︑否︑刑法を超えてその余の法規間の関係についても妥当するものである︒というのは︑これが法 ︵2︶ 学方法論上の認識の成果であり︑一般にも妥当する表現だからである︒. 二 機能的意味での特別規範の規制状況が存在する場合には︑論理的意味での特別関係の場合とは異なり︑その特. 別の法効果の前提を欠く行為について︑これをより緩和された要件を規定する他の規定︵一般法︶に依拠せしめるこ ︵3︶. とは許されない︒なぜなら︑これを認めて行為を正当化することは取りも直さず特別法規の存在意義を失わしめるこ. とになるからである︒ヴァルダが特別関係に基づいて正当化事由を排斥する例として挙げているのが次の三つであ る︒. その一が︑ドイッ民法九〇四条︵特別法︶の超法規的緊急避難︵一般法︶に対する関係である︒現在の危険の回避. に役立つ他人の物への干渉につき︑切迫した損害がなお﹁著しく重大﹂でないとぎは︑たといそれがその作用から所. 有者に生ずる損害より明白に重大であるとしても︑民法九〇四条による違法性の阻却のための要請にとって十分でな. いが︑その場合にも外見的には超法規的緊急避難の成立要件はこれを充足しているのではないか︑ということであ. 七五. る︒そして彼は︑切迫した損害が干渉による損害に優越している場合は︑民法九〇四条の正当化の要請は達成されて 正当化事由の競合︵曾根︶.
(20) 早稲田法学第五四巻第一・二号︵一九七八︶. 七六. いないが︑その所為は︑外形的にこれを一般的正当化緊急避難の規制に従って評価するとぎは正当化される︑という. 事態の存在を肯定するのである︒そこで間題となるのが︑民法九〇四条の規定の中に定立されている正当化の要件が. 充たされていない場合に︑他の僅少の要件しか掲げていない正当化事由に依拠して当該行為を正当化するこどが許さ. れるのかということである︒そして︑この点についてヴァルダは︑民法九〇四条の要件を前提とするかぎり︑右の場. 合に違法性阻却を認めることは本条がその対象を失うことになるから︑民法九〇四条は︑それほど厳格でない一般的 ︵4︶. 正当化緊急避難の要件への遡及を排斥する︑緊急避難による他人の物への干渉の正当化のための最終的な規制とみな すべぎである︑とする︒. しかし︑超法規的緊急避難についてはともかく︑これを実定法化したとされる︑西ドイッ新刑法総則三四条の正当 ︵5︶ 化緊急避難と民法九〇四条との問に右のような意味での特別関係を認めることはできないであろう︒というのは︑刑. 法三四条もまた民法九〇四条と同様︑保護した利益が侵害した利益よりも﹁著しく﹂優越する場合しか行為が正当化. されないことを明示しているからである︒これに対して﹁対立する法益を衡量して︑その者の保護した利益が︑当該. 法益に対する侵害が甘受されなければならないように優越する場合﹂にも行為が正当化されることを認め︑しかも正. 当化緊急避難規定の民法その他の規定に対する補充的性格を明定している︑一九六六年代案・総則一五条の場合は︑. まさにヴァルダの指摘が妥当するであろう︒しかし︑代案におけるような補充的性格条項を欠いている新刑法総則三 ︵6︶ 四条と民法九〇四条との間には︑﹁特別法は一般法に優先する﹂という意味での特別関係を認めることはできない︒. せいぜい︑民法九〇四条が一般的正当化緊急避難の基本原則を具体化しているが故に︑またその限度で優先性を認め.
(21) うるにすぎない︒民法九〇四条によって正当化しえない行為が刑法三四条によっても正当化しえないのは︑後者の要. 件を充たさないからであって︑形式的にこれに当たるにもかかわらず民法九〇四条を顧慮したためにその適用が排斥 された結果ではないのである︒. 正当化事由の排斥という効果を伴う特別関係の認められる第二の例が︑ドイッ民法九〇四条︵一般法︶に対する同 ︵7︶ 二二八条︵特別法︶の関係である︒民法九〇四条において干渉の対象とされる他人の物が民法二二八条においては︑. 同時に急迫の危険の淵源でもある︵いわゆる対物防衛︶︑という点で︑後者が前者の特別規定であるとすることはな. お可能であろう︒しかし︑ここに論理的な意味での特別関係を認めることはできない︒なぜなら︑二二八条の要件を ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. 充たす︵その意味で適法な︶行為がすべて直ちに九〇四条によって正当化されるわけではないからである︒それは︑. 右の二二八条のもつ特殊性の故に︑利益衡量の程度が九〇四条に比し︑﹁その損害が危険に対して不相当でないとき. は﹂違法に行為するものではない︑と要件的に緩和されていることに由来するのである︒それにもかかわらず︑二二. 八条によって九〇四条が排斥されることを肯認するのは︑後者が﹁所有者は干渉によって生じた損害の賠償を請求す. ることができる﹂と規定するのに対し︑前者においては︑その危険につき責を負わないかぎり︑行為者は損害賠償義. 務を負わない︑という法効果の差異に着目するからである︒すなわち︑たとい九〇四条の要件を充たす行為があった. としても︑それが同時に二二八条にも該当するような場合には︑所有者の損害賠償請求権は排斥されることになるの. である︒その点で︑九〇四条を二二八条に対する﹁補充的な﹂規定とみることは可能である︒このように︑特別法の. 七七. 一般法に対する排斥作用を基礎づけるには︑両規範間に論理的な意味での特別関係が存在するだけでは十分でない反 正当化事由の競合︵曾根︶.
(22) 早稲田法学第五四巻第一・二号︵一九七八︶. 七八. 面︑優先せる法規の成立要件が概念必然的に後退せる規定の中に含まれていることは必ずしも必要なことではないの である︒. 排斥作用の認められる第三の例が︑右の民法二二八条︵一般法︶に対する連邦狩猟法二六条︵特別法︶の関係であ ︵8︶. る︒前者は︑後者により特別に規制された︑いわゆる狩猟緊急避難の場合にそれ自身としては適用しえない︒連邦狩. 猟法二六条によれば︑狩猟権利者︑土地の所有権者及び利用権者は︑﹁野獣による被害の防止のためにその土地の野. 獣を寄せつけず︑あるいはおどかして追い払う﹂権限を有しているが︑その際︑﹁野獣に危険や侵害を及ぼす﹂こと. は許されていない︒そこで︑切迫した野獣の被害の防止のためにこれに及ぽす作用が民法二二八条の成立要件を充た. すこともありうるわけであるが︑これを本条によって正当化することはできない︒なぜなら︑その場合にも民法二二. 八条により当該行為を正当化することは︑土地が殿損されないで維持されるという土地権利者の利益︑及び土地の産. 物に対する権利者の利益に優先する野獣保護の見地から︑野獣被害の防止のためにこれに危険及び侵害を及ぼすこと. を禁じている連邦狩猟法二六条の趣旨を没却することになるからである︒その意味で︑本条項は︑野獣の被害防止の. ためにする野獣に対する作用権の最終的な規制とみなされなければならない︒もちろん︑人の生命ないし健康に対す. 正当化に関するある規定がその成立要件上の前提が存在するにもかかわらず︑右の最終的な特別規制という見. る現在の危険を防止するのに必要であるかぎりは︑野獣の傷害ないし殺害も民法一三八条に依拠して正当化されるの ︵9︶ であるが︑これは別問題である︒. 三. 地から他の正当化事由によって排斥される事情としてヴァルダの掲げるのは︑結局次の三つである︒すなわち︑e特.
(23) 但し︑二でみたようにここでこの例を挙げることには間題がある︶︑. 定の事態領域のための違法性阻却を他の規範に比し厳格な︑叉は付加的な要件に結びつけている場合︵例えば︑民法九 〇四条の一般的正当化緊急避難に対する関係. ⇔正当化の要件を厳格にすることなく︑正当化の効果を特定の行為に制限し︑叉はその他の方法で種類又は範囲の点. から制限する場合︵例えば︑民法二二八条に対する連邦狩猟法二六条︶︑㊧正当化の作用を超えて付加された法効果を ︵10︶. ︵損害賠償請求のように︶その規制領域のために指示し︑あるいは排除する場合︵例えば︑民法九〇四条に対する同. 二二八条︶の三類型である︒以下に︑右の分類に従って︑わが国における正当化事由についてその一般的なものの排 斥を伴う特別関係に一瞥を与えることにしよう︒ ︵11︶. 第一の類型に属すると考えられるものに︑刑法三五条後段の正当業務行為ないし︵一般的︶正当行為に対する医師. の治療行為︵特に外科手術︶の関係が考えられる︒まず︑身体の傷害を伴う治療行為が適法であるためには︑第一に︑. それが医学的に必要であって︵目的の正当性︶︑しかも医療行為としての技術的基準︵一〇鴨畦紆︶に合致していなけ ヤ ヤ. ればならない︵手段の相当性︶から︑そこに正当︵業務︶行為性を認めることがでぎる︒もっとも︑それが常に業務. 行為といえるかどうかは問題の存するところであるが︑いずれにしても治療による患者の健康の増進という利益がこ. こでの正当化の基礎にあることについては疑問の余地がない︒ここでは︑利益衝突︵外科手術においては右の利益と. ︵12︶. 身体の傷害の不利益という同一人格内部での衝突︶︑及び許された危険の特殊な場合に機能する﹁正当な利益の擁護﹂. の原理が作用していると思われる︒しかし︑たとい医学的に必要であり︑また医療行為としての技術的基準に合致して. 七九. いたとしても︑患者の意思に反して行われる︑いわゆる﹁専断的治療行為﹂は︑原則として違法とみるべきである︒ 正当化事由の競合︵曾根︶.
(24) 早稲田法学第五四巻第一・二号︵一九七八︶. 八○. そこに患者の﹁自己決定権﹂の侵害が認められるからである︒治療行為においては︑﹁自律﹂の原理を第二の正当化 ︵13︶. 原理として顧慮むなければならない︒以上から明らかなよう匹医学的に必要で︑しかも医療としての基準に従った. ︵15︶. 治療行為であっても︑患者の承諾︵場合によっては推定的承諾︶のないものについては︑これを刑法三五条により正 ︵M︶ 当化することが原則として許されないのである︒治療行為には︑その余の正当︵業務︶行為と異なり︑﹁被害者の承 諾﹂が付加的な要件として結びついているといえよう︒. 第二類型に属する例としては︑刑法上の緊急避難に対する民法上の緊急避難の関係が考えられる︒民法上の緊急避. 難は︑上述のように︑民法七二〇条二項の場合を除いては認められていない︒すなわち︑第一に︑刑法では人の侵害 ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. 行為の場合にも緊急避難が可能であるのに︑民法では﹁他人の物より生じたる﹂危難に限られている︒第二に︑刑法 ︵16︶. では第三者の利益を害したすべての場合に緊急避難が成立するのに対し︑民法では危難の原因たる﹁物を段損したる. 場合﹂に限定されている︒従って︑危険の原因が人である場合とか︑危難を避けるため第三者に損害を加えたような. 場合には︑刑法規定のみが適用されることになる︒しかもこの場合︑民法の規定の趣旨を活かすとすれば︑刑法三七. 条に該当することを根拠に行為者の損害賠償責任の解除を許容するわけにはゆかない︒その意味で︑民法七二〇条二. 項に当たる例外的な場合を除き︑緊急避難は一般に不可罰的違法行為と解すべぎであろう︒緊急避難行為の正当性の 評価に関する限度で︑刑法の緊急避難規定は民法のそれによって排斥されているのである︒. ヴァルダの呈示する第三類型は︑特別法が一般法に付加された法効果︵例えば︑損害賠償︶を排斥する︑という形. で示されているが︑その実質的な根拠は︑行為者に有利な︵逆に言えば︑相手方に不利な︶特別の状況の下では︑要.
(25) 件が緩和されてそれだけ正当化の働く余地が拡がるということに求められよう︒その場合︑一般法が本来違法と判断. している行為が︑特別法によって正当性の枠内に取り込まれてくるのである︒正当化の範囲が拡大する方向で一般的. 正当化事由の排斥がなされる点で前の二つの類型とは異なる︒ドイッ民法九〇四条の法文に従えば︑干渉の対象たる. 物がたとい危険の発生源であっても切迫している損害が干渉による損害より著しく大きくないときは︑その干渉は違︑. 法なのである︒これを正当化する規定がまさに同二二八条であるといえよう︒わが国でこれに相当するものとして. は︑刑法三六条の正当防衛に対する盗犯等ノ防止及処分二関スル法律︵以下︑盗犯等防止法と略称︶一条一項の正当防. 衛の特則がある︒右条項は︑盗犯の防止等︑一号から三号までの要件のいずれかを充たす事情の下において︑自己又. は他人の生命︑身体又は貞操に対する現在の危険を排除するため犯人を殺傷したときは正当防衛となる旨規定してい. る︒本条の趣旨については争いがあるが︑立法当局は︑本条を盗犯に当面した一般市民の防衛権の発動を安固にする ︵貿︶ 趣旨で盗犯や家宅侵入者に対する正当防衛の成立要件について具体的な事情を明示した解釈規定である︑と説明して. いた︒仮にこの理解が正しいとすると︑本条項が一般法である刑法三六条を排斥するという意味での特別関係を認め. ることはできなくなる︒せいぜい︑盗犯等の特別の場合の規定ということで︑論理的な意味での特別関係が認められ. るにすぎないであろう︒しかし︑昭和初年の︑いわゆる説教強盗をはじめとする盗犯の跳梁によって生じた社会不安 ︵18︶. に対処しようとした立法の動機︑そして何よりも刑法三六条と異なり︑﹁己むことを得ざるに出でたる﹂ことを明示. 八一. していない規定形式等を考慮すると︑少なくとも形式的には盗犯等防止法一条一項を刑法三六条の単なる解釈規定と みることは妥当ではあるまい︒ 正当化事由の競合︵曾根︶.
(26) 早稲田法学第五四巻第一・二号︵一九七八︶. 八二. もっとも︑盗犯等防止法一条一項の場合が刑法の正当防衛と実質的にもまったく異なる︑とみることも正当でな. い︒というのは︑急迫不正の侵害に対し自己又は他人の権利︵利益︶を防衛するという点で︑本来の正当防衛とその. 基本構造を同じくするからである︒盗犯等防止法︸条一項の行為も広義の正当防衛の中に数えてよい︒同法は︑盗犯. の防止等の場合において﹁自己又ハ他人ノ生命︑身体又ハ貞操二対スル現在ノ危険﹂を排除するために行なった﹁犯 ︵19︶. 人ヲ殺傷﹂する行為を正当防衛とした︒防衛行為である以上︑それは攻撃に対応したものでなければならない︒その ︵20︶. 意味で防衛行為には相当であることが要件とされる︒また︑必要性も備えない行為に対して︑相当性の要件が付与さ. れることはありえないともいえる︒刑法においては︑必要性・相当性が﹁己ムコトヲ得サル﹂の内容として︑防衛行. 為が正当化されるための要件であるのに対し︑盗犯等防止法においては︑より緩和された形で防衛行為それ自体の要 ︵21︶. 件であると解せられるのである︒藤木博士が︑﹁いちじるしく相当性を欠くことが明白である場合のほかは︑一応殺. 傷行為について相当性ありと解するのが穏当である﹂とされるのは︑右の意味において正当である︒その限度で盗犯. 以上に対し︑論理的に違法性の阻却を認めることができる場合に︑特に法令の規定を設けてその適法性を注意. 等防止法一条各号の規定する場合には刑法三六条の適用が排斥され︑本来違法な行為も正当化されるということにな ろう︒. 四. ︵22︶. 的に明らかにするとともに︑その方法・範囲などについて技術的な制限を置いて︑その逸脱を防止しようとしているも. のについては事情が異なる︒例えば︑優生保護法による人工妊娠中絶と刑法三五条との関係がこれにあたる︒優生保. 護法一四条の要件を欠いた妊娠中絶でも︑緊急避難に当たる場合はもとより︑その他にも理論上違法性の阻却を認め.
(27) てよい場合がありうる︒すなわち︑胎児が母体外において生命を保続できる時期において︑妊娠の継続・分娩が母体 ︵23︶. の生命・身体に著しい危険があるような場合には︑緊急避難の要件を充たさなくても︑胎児を母体外に排出すること ︵24︶. は適法である︒これに対し︑﹁優生保護法はその規定によらない手術を禁止し︑その違反を罰しているから︵二八条︑. 一一⁝条︶︑刑法三五条の違法阻却は︑優生保護法との関係で制限を受ける﹂とする見解もあるが︑妥当でない︒すな. わち︑この見解は優生保護法二八条の解釈に問題があるばかりでなく︑そもそも違法性の判断は︑形式的な法規を超. ︵25︶. えて実質的になされるべきものであり︑当該行為について法秩序全体の見地から超法規的に判断されるべきであるか ︵26︶. ら︑優生保護法の規定によって︑刑法三五条による違法性の阻却が制限されるものではない︒少なくとも三五条の精. ゑ¢益碧斜ρO・の●一8●. 神から認められる超法規的違法性阻却の余地は残しておかなければならない︒ ︵1︶. ミ貫量℃勲鉾9P嶺9くひ亀一・密ω99F勲鉾ρψま刈篭︾づ目・き・これに対し︑論理的意味での特別関係においては︑. ︵2︶譲震量る︒餌●O●ω﹂雪.. 特別に規制された正当化事由に当たらない行為について︑これを一般的正当化事由によって正当化することが可能である︒. ︵3︶. 例えば︑ドイッ民法八五九条一項はたしかに物の占有に対する違法な攻撃の防衛を特別に規制しているが︑そこでは︑刑法の. る︒八五九条一項は︑占有防衛の際の正当化のための要請という点で︑正当防衛を超えるものがない︒従って︑ここでは︑. 正当防衛規定が違法性阻却のために違法な攻撃一般に対する防御に必要とする以上の厳格な要件を提示していないからであ. 禁止された私力の防衛に際し違法性の阻却を意識的に正当防衛の場合より厳格な要件の下に置き︑かつこの場合を正当防衛. 八三. 規制に従って取り扱うことを禁止した究極の特別規定による正当防衛規定の排斥ということは︑およそ問題となる余地がな いのである︵≦曽箆斜ρ斜ρψ嶺窯︒︶︒. 正当化事由の競合︵曾根︶.
(28) くひq一りω畠菖箆げぎωoびρ帥●O●ω・遷900ωqい. ≦餌a斜鉾鉾O●ω●一〇〇卑. 八四. ︵5︶. ︵4︶. 早稲田法学第五四巻第一・二号︵一九七八︶. ︵6︶. 譲餌透欝斡●曽︒O︒ω●H爲映・. ω魯α昌犀①・o o 9&山R・い窪o犀冨ぴ斜斡●ρψホドなお︑内藤謙・刑法改正と犯罪論ω二三七ー八頁︑二六〇1一頁参照︒. ヒルシュは︑本文で引用したヴァルダの例のほかに︑一般的正当化緊急避離に対する︑刑法一九三条︵正当な利益の擁護︶. ゑ帥透帥︾pρρψ一〇蔭●. ︵7︶ ︵8︶. に含まれている緊急避難︑並びに正当化せる妊娠中絶のための特別の規制︑刑法二二六条a︵被害者の承諾︶に対する去勢. ︵9︶. ︵0 1︶. 治療行為の刑法上の問題点については︑町野朔﹁刑法解釈論から見た治療行為﹂法学協会雑誌八七巻四号四五七頁以下︑. 薫餌旨ρ卑帥●O●ω●S㎝h. ︶︒ 法を挙げている︵国ヰ8Fω#錬鴨8欝び信oFU虫冒侭震国○日BΦ馨震・O・︾qゆこく9㈱臼鉾男悶q戸oooo. ︵n︶. 拙稿・前掲刑法雑誌二二巻二号二〇六ー七頁参照︒. 同八八巻九H一〇号七七五頁以下︑斎藤誠二・刑法講義各論−一八九頁以下参照︒. 141312. (. ( ). ). ). べきときは︑例外的に︵可罰的︶違法性の阻却を認めるべきであろう︵斎藤・前掲書一九二頁以下参照︶︒. 業務行為についてはおよそ相手方の承諾を必要とするものに︑荘子・刑法総論三一四頁︑三二六頁以下︑内田文昭・刑法. 1︵総論︶一九三頁︒その理由は︑同じく刑法三五条の規定するところでありながら︑権利又は義務として認められた﹁法. ︵16︶. 学説の一部には︑この場合に行為者に損害賠償責任を認めるのは不合理であるから︑正当防衛と同様に取り扱うべしとの. その性質上︑前者ほどの強力な許容を受けるわけにはゆかない︑という点に求められている︒. 令による行為﹂とは異なり︑一般規範上正当な業務として認められている事務を構成する行為にすぎない正当業務行為は︑. ( 15. 常に傷害の違法性を基礎づけることができるとすることにも間題がある︒自己決定権を犠牲にしてまでも健康状態を増進す. もっとも︑患者の承諾がなければ︑それがどんなに医学的にみて必要であり︑医療の基準に合っているものであっても︑. ﹁被害者の承諾﹂の正当化原理については︑拙稿﹁﹃被害者の承諾﹄の違法阻却根拠﹂早稲田法学五〇巻三号一頁以下︒. (. ).
(29) ら︑﹁避難者に損害賠償義務をみとめるのが民事責任の基礎たる損害分担ないし衡平の観念に適するであろう﹂︵明石﹁緊急. 見解︵例えば︑我妻栄﹃事務管理・不当利得・不法行為﹄一五〇頁︶もあるが︑緊急避難は﹁正対正﹂の関係にあるのだか. これに対し︑盗犯等防止法も当然に﹁已むことを得ざるに出でた﹂ことを要件とするものと解する判例として︑名古屋高. 司法省刑事局﹁盗犯等防止及処分に関する法律理由説明﹂法律新聞三一二三号一七頁︒. 避難﹂民事法学辞典上四〇八頁︶︒なお︑西原春夫﹁民事責任と刑事責任﹂現代損害賠償法講座1総論三五頁以下参照︒ ︵17︶. 小野清一郎﹁盗犯等の防止及処分に関する法律﹂刑の執行猶予と有罪判決の宣告猶予及び其の他二三五ー六頁︑大塚仁・. 判昭和三七年一二月四日高刑集一五巻九号六六九頁がある︒. ︵8 1︶. 23. 22. 21. 20 ). ). ). ). ). ( ( ( (. 山火正則﹁盗犯等ノ防止及処分二関スル法律第一条第一項における正当防衛﹂神奈川法学八巻二号一〇九頁︒ 藤木英雄・ ︵ 団 藤 編 ︶ 注 釈 刑 法 ② の 1 二 五 五 頁 ︒ 板倉宏・︵ 団 藤 編 ︶ 注 釈 刑 法 ⑤ 一 八 九 頁 ︒. 福田平・︵団藤編︶注釈刑法②の1一〇四−五頁︒. 滝川幸辰・刑法各論五三頁︒. 西原教授は︑適応事由の種類を分け︑﹁医学的適応の場合には︑緊急避難の成立する範囲内において違法性の阻却が認め. 名誉殿損罪においても類似の問題がある︒刑法二三〇条の二︵事実の証明︶の法的性格については争いがあるが︑これを. 頁︶︒. 正当化事由の競合︵曾根︶. 八五. 告人の弁護権の行使︑議員の論議︑労働組合の行動︑新聞の記事︑被害者の承諾等に現れる︵福田・前掲書三五五頁以下︶︒. 正当化事由の一つと解しても︑右の規定のほか︑一般の正当化事由が適用されて違法性が阻却されることがある︒例えば︑被. ︵26︶. られようし︑優生学的および倫理的適応の場合には︑刑法三五条の適用される余地がある﹂とされる︵西原・犯罪各論三四. 24 ). 特別刑法九三頁参照︒. ( 19 ) (. 25. (.
(30) 早稲田法学第 五 四 巻 第 一 二 一 号 ︵ 蝋 九 七 八 ︶ ︵1︶. 八六. ︵2︶ 一般的な法条競合の規制に従うと︑補充関係︵ωqぴω窪霞津簿︶の思想も︑ある正当化事由が他の正当化事由の. ︵三︶補充関係 一. 背後に退く︑という帰結をもたらす可能性がある︒この問題が判断されるその基準はもちろん︑補充関係の概念によ. って直ちに与えられるものではない︒なぜなら︑これは単なる事実にすぎず︑ある法律規定が他の法律規定の背後に. 位置していることの実質的根拠を特徴づけているわけではないからである︒それゆえ︑補充関係の下に個々に異なっ. た現象が総括され︑殊に法条競合の他の形式に対する限界も統一的になされていない︑ということは驚くにあたらな. い︒ただいずれにしても︑補充関係によってーすでに法条競合の他の部門に整序されることのない﹂法律の明. 示された指示により︑あるいはこのような指示なしに︑評価的考察の結果としてある法律規定が単に補助的に他の規 ︵3︶. 定が地歩を占めない場合に適用されるような状態が考えられるという趣旨で︑本来的な一致を確認することはできる であろう︒. このように理解された補充関係が正当化事由の領域で意味をもつか︑またどのような意味をもつかを検討する前. に︑まず次の点が確認されるべきである︒すなわち︑単に補充的にしか妥当しない規範は︑それの純粋の競合事由か. らの排斥について論じうるためには︑その成立要件が充足されなければならず︑従って所与の事態に内容的に完全に. あてはまらなければならない︑ということである︒それゆえ︑なるほど﹁補充関係﹂ないし﹁補充的に妥当﹂という. 特微が正当化事由との関係で用いられはするが︑事実上この正当化事由の事実的な前提が欠如し︑従ってすでにそれ. が概念的に存在しないということが明らかなような場合には︑当面の考察から排除されることになる︒例えば︑推定.
(31) 的承諾が現実の承諾に対し﹁補充的﹂と呼ばれるときがこれである︒というのは︑推定的承諾という正当化事由が︑ ︵4︶ 行為者が法益保持者の決意の適時の承認を得ることが不可能な場合にしか適用しえない性格のものだからである︒補. 充関係の競合状況においては︑上述の定義によると︑優先規範が与えられた事態に適用されない場合に直ちに第二次. 規定が引き合いに出されることになるが︑推定的承諾の場合はこのような状況が存在しないのである︒推定的承諾の. 援用は︑現実の承諾の不存在︵Z一畠讐o島濃窪︶によってではなく︑その承諾を得る可能性の不存在︵家9$ぢぎ一・ ︵5︶. 右に対して︑競合の意味での純粋の補充性は︑まず第一に︑ある正当化事由の法律上の規制において︑それが. 富蒔①δによって初めて可能とされるのである︒. 二. 一つあるいは複数の他の正当化規範が適用しえない場合にのみ関与するという明示の文言が規定されている場合に ︵6︶ は︑いわゆる明示的あるいは形式的補充関係として考察の対象となることになる︒しかし︑このような補充関係条項 ︵7︶ は︑現行法上は正当化事由について存在しない︒それゆえ︑正当化事由については﹁黙示の﹂補充関係の可能性だげ ︵8︶ が残されることになる︒. それにもかかわらず︑犯罪競合論において︑ある規範は︑他の規範の前提が与えられた場合には︑自らの成立要件. を充足したとしても適用しえない︑という想定を基礎づけている実質的考慮が正当化事由相互の関係にとって対象を. 失うのである︒そのことは︑通常刑罰規定の黙示の補充関係の例として挙げられているものとの対比から明らかとな. る︒例えば︑刑法と軽犯罪法︵以下︑軽犯と略称︶との間における︑建物等潜伏の罪︵軽犯一条一号︶と不退去罪︵刑. 八七. 法一三〇条︶︑粗野・乱暴の罪︵軽犯一条五号︶と暴行罪︵刑法二〇八条︶・脅迫罪︵刑法≡三条︶︑身体露出の罪︵軽犯一 正当化事由の競合︵曾根︶.
(32) 早稲田法学第五四巻第一・二号︵一九七八︶. 八八. 条二〇号︶と公然狸褻罪︵刑法一七四条︶等の場合においては︑それぞれの対象領域ごとに基本法︵個別法︶と補充法と. の問で異なった刑罰効果を伴う種々の無価値内容が示されているが︑正当化事由にはこのような状況が欠如している. のである︒上述のように︑正当化事由の下で把握された事態は︑それがことごとく同じように行為の違法性を阻却す. るものである以上︑むしろすべて等価性を有しているのである︒従って︑ある正当化事由を他の正当化事由に対して. 単に間に合わせに妥当させるということは︑黙示の補充関係の想定の際に刑罰規定により承認され︑これに対応する﹄ ︵9︶ 根拠からは引き出しえないのである︒. もっとも︑刑法三五条の解釈如何によっては︑個別規定︵基本法︶が適用にならない事例にのみ補充規定が関与す. るという意味での補充関係は︑なおこれを是認する余地があるようにも見える︒第一に︑刑法三五条後段は︑刑法が ︵10︶ 類型化して規定した以外のすべての正当化事由を含むと解する立場では︑正当防衛︵三六条︶︑緊急避難︵三七条︶︑法. 令行為︵三五条前段︶の領域に属さない行為はすべて補充規定たる三五条後段によって正当化されることになる︒第 ︵11︶. 二に︑正当化事由に緊急的正当行為と常態的正当行為の区別があることを前提に︑三五条の解釈については後者はす. べてこれを含むと解する立場では︑緊急的正当行為と法令行為を除いたすべての正当化事由が︑補充法たる三五条後 ︵12︶ 段に含まれることになる︒しかし︑同条に関するこれらの解釈の問題は措くとしても︑従って仮に︑明文化されてい. ない正当化事由の全部ないし一部が刑法三五条に含まれると解するにしても︑それは︑同条後段によってそれらの事 ヤ. ヤ. 由に該当する行為が正当化されることを意味するにすぎず︑それ自体が正当業務行為以外の正当化事由を類型化して. 規定したものではないから︑ここに︑個別的な正当化事由の排斥を伴う正当化事由の競合という意味での法条競合.
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