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第3章 高温暴露によるコーティング材の機械的特性の変化 3.1

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(1)第3章 3.1. 高温暴露によるコーティング材の機械的特性の変化. 緒言. 前章では、Al 拡散浸透処理した CoCrAlY コーティング材を対象にし、高温暴露に よるミクロ組織および元素分布の変化を報告した。ところで、Al 拡散浸透処理により コーティング材の耐酸化性は向上するものの、疲労強度を低下させる可能性が指摘さ れている. 1 ) 。ガスタービン動翼は、内部に冷却構造を有する薄肉部材であり、高温下. で材料劣化が表面近傍に局在化して進行する. 2 ) 。また、動翼には運転中の遠心力など. の負荷応力に加えて、頻繁に行われる起動停止に伴う熱応力の繰り返しも負荷され、 これらの負荷によりコーティング層に発生したき裂が進展し、動翼の信頼性を低下さ せることが危惧される 性に関する研究. 3 ) , 4 ) 。これらの背景から、従来よりコーティング材の機械的特. 5 ) が積極的に行われている。しかし、実機部材からの試験片採取 が困. 難なこともあり、高温あるいは実機使用環境下におけるコーティング材の機械的特性 の変化や劣化に関する報告. 6 ) ~8 ) は少なく、十分解明されているとは言い難い。また、. 実機使用環境下で動翼に負荷されるひずみは、低温あるいは中間温度域でも大きいこ とから. 2 ) 、室温における機械的特性の評価も重要である。動翼におけるコーティング. 材の室温および高温での機械的特性は、表層部の特性評価が重要であるために適切な 試験法が技術的に困難であるが、ミニチュア試験法の一種であるスモールパンチ(S P) 試験法を適用して評価できることがこれまでに報告されている. 6 ) ~8 ) 。. そこで本章では、長時間熱時効および実機で使用したコーティング材を対象とし、 S P 試験を用いて長時間高温暴露による機械的特性の変化を調査し、高温環境がコー ティング材の機械的特性に与える影響を検討した。. 3.2 3.2.1. 供試材および実験方法 供試材. 本研究に用いた供試材は、前章で用いた供試材と同一であり、動翼材表面に CoCrAlY 合金を減圧プラズマ溶射し、コーティング層表面をパック法によって Al 拡散浸透処 理している. 9 ) , 1 0 ) 。本研究では、未使用の動翼におけるコーティング材(以下、非時効. 材と称す)、およびこれに対し大気中で 870℃×8000h の熱時効を行ったコーティング 材(以下、熱時効材と称す)、さらに前章と同一使用履歴の動翼から切り出したコーテ. 51.

(2) ィング材(以下、実機使用材と称す)を用いた。. 3.2.2. 試験片. 供試材の表面部分から、5mm 程度の厚さでコーティング材を放電加工により切り 出した 。実 機 使 用 材における 試験片切り 出し 位置は 、Fig.3-1 に示す 翼有効部高さ 70~80%部位の腹側後縁部近傍とした。前章 Fig.2-1 に示すように、供試材における コーティング層の厚さはいずれも 200~250 µm で層状組織となっているため、前章と 同様に非時効材のコーティング層を以下の 4 つの領域に区別した。すなわち、非時効 材におけるコーティング層表面の厚さ約 20µm の Al が濃化した領域をⅠ、その内側 で隣接する厚さ約 50µm の Cr と Al が濃化した領域をⅡ、コーティング層中央の CoCrAlY 合金層をⅢ、母材に隣接する厚さ約 60µm の Cr が濃化した析出物が観察さ れない領域をⅣとした。また、熱時効材においても層状組織が認められることから、 非時効材の各領域に対応する位置においてコーティング層を 4 つに区別した。試験片 の表面がコーティング層の各領域(Ⅰ ~Ⅳ)のほぼ中央 に位置するようにエメリー紙 (#1000 )で研磨を行い、φ6mm×0 .5mm t の S P 試験片を作成した。なお、母材試験 片はコーティング 層、熱時効材および実機使用材 におけるコーティング層/母材の相 互拡散層を除去し、供試した。. Coating. SP Specimen. Pressure Side. Fig.3-1. Extraction of disk-shaped SP specimens from serviced blade.. 52.

(3) 3.2.3. S P 試験. S P 試験に用いた試験装置の概略を Fig.3 -2 に示す。試験装置は、Ni 基超合金製 の パンチャーと上部・下部支持台からなる治具を有するインストロン製電気機械サーボ 式試験機である。なお、変位量は図中に示す LVCT(Linear Voltage Capacitance Transducer)により測定し、荷重 −変位曲線を求 めた。コーティング材試験片の場 合、コーティング 面に引張応力が作用するように 母材側からパンチャーを押し込み、 コーティング面にき裂が発生するまでの荷重−変位曲線を測定した。クロスヘッド速 度は 8×10 - 6 m/s で、試験治具全体を高周波コイルにより加熱し、高温での試験を行っ た。高温での試験片とパンチャーとの溶融を避けるため、パンチャー先端部のφ2.4mm の半球部に SiC を用いた。温度の測定は下部支持台に取り付けた熱電対により行い、 大気中で室温から 950 ℃までの試験を行った。測定した荷重−変位曲線から、弾性域 から塑性域への遷移点である降伏荷重 P y を求めた。なお、試験片表面におけるき裂の 発生は、荷重−変位曲線における荷重増加率の急激な減少として検出され、荷重−変 位曲線からき裂の発生が明瞭に検出できない場合は試験を途中で止め、試験片表面の 走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い、少なくとも 50µm のき裂が生じていることを 確認し、き裂の発生と定義した。. P. Puncher Puncher. Specimen. Al2O3 Rod. Induction Coil. Thermocouple P. Cross Section Fig.3-2. LVCT. Schematic drawing of set up for SP testing.. 53.

(4) 測定した荷重−変位曲線より求まる降伏荷重 P y と試験片表面にき裂が発生するまで の限界変位δ f から、降伏応力σ y と試験片表面にき裂が発生す る時の破壊ひずみε f を、以下の実験式. 1 1 ) により求めた。ここで、σ y ;降伏応力(MPa ) 、P y ;降伏荷重. (kN)、ε f ;破壊ひずみ(%)、δ f ;限界変位(mm)、t 0 ;試験片厚さ (mm)であ る。なお、式(3.2)は再結晶法によるひずみ解析の結果. 1 2 ) から確認されている。. σ y = 360(P y /t 0 2 ). ( 3 . 1). ε f = 12 (δ f /t 0 ) 1 . 7 2. (3.2). 一方、荷重−変位曲線に対する試験雰囲気の影響を調べるため、熱時効材を対象に 870℃、真空中(4×10 - 3 Pa )で試験を行った。. 3.2.4. 低サイクル 疲労試験. 前節に示した S P 試験装置を用い、クロスヘッド変位振幅一定、応力比 R = P m i n/ P m a x < 0 . 0 5 、周波数 0.1Hz 条件で繰返し荷重を試験片に負荷し、低サイクル疲労試 験を行った。波形は保持なし三角波で、室温、大気中において試験を行った。繰返し 数と荷重振幅(ΔP = P m a x −P m i n)および LVCT による変位振幅Δδを測定した。荷 重振幅の減少時に試験片表面にはき裂の発生が観察されることから、き裂発生時 の繰 返し数を破損寿命 N f とした. 7 ) 。低サイクル疲労試験における全ひずみ範囲Δε t. は、. 変位振幅Δδと試験片厚さ t 0 から、以下の実験式により求めた。ここで、Δεt ;全 ひずみ範囲(%)、Δδ;変位振幅(mm)、t 0 ;試験片厚さ(m m)である。. Δεt = 12(Δδ/t 0 ) 1 . 7 2. 3.3 3.3.1. ( 3 . 3). 実験結果 コーティング材の降伏応力. S P 試験より求まる荷重−変位曲線の測定例を Fig.3 -3 に、S P 試験により求めた非 時効および 熱時 効材 のコーティング 層各領域 における 降 伏 応 力σ y の 温度依存性 を Fig.3-4 に示す。ここで、非時効材の領域Ⅰ、Ⅱおよび熱時効材の領域Ⅱは 870 ℃以 下では降伏挙動を示す前に試験片にき裂が発生したため、950℃においてのみ降伏応. 54.

(5) 力が求まったが、熱時効材の領域Ⅰではすべての温度域で降伏応力は求まらなかった。 Fig.3-4 より、非時効および熱時効材 の領域Ⅰ、Ⅱにおける 950℃の値はほぼ同等で あることから、コーティング層の表面近傍領域では、950℃の降伏応力には熱時効に. Load (kN). よる影響は認められなかった。. Deflection Fig.3-3. Typical load versus deflection curves obtained. Yield Strength, s y (MPa). Ⅰ 800. Open : Unaged Solid : Thermally Aged. Ⅱ Ⅲ Ⅳ. 600. 400. 200. 0 0 400. 100 500. 600. 700. 800. 900. 1000. Temperature, T (℃) Fig.3-4. Yield strength in various coating regions of unaged and thermally aged blades.. 55.

(6) 一方 Fig.3 -4 より、非時効材の領域Ⅲ、Ⅳの室温および 650℃における値はほぼ同 等で、700 ℃を越えると領域Ⅲに比べ領域Ⅳの値は高くなる。熱時効材では、それぞ れの値はほぼ同等で領域の影響は認められず、800℃程度までは室温と同等の値を示 し、800℃を越えると低下する傾向を示した。なお、いずれの温度域においても熱時 効により軟化することが分かる。 母材の降伏応力σ y の温度依存性を Fig.3-5 に示す。図より、非時効および熱時効材 ともに 800 ℃程度まで室温の値と同等である。しかし、800℃を越えると低下する傾 向を示した。Fig.3-4 および Fig.3 -5 から母材と領域Ⅳを比較すると、非時効材 では 700℃を越える温度域において同様な降伏応力の温度依存性を示した。しかし、領域 Ⅳは熱時効によって顕著に軟化した。なお、いずれの温度域においても非時効材 に比 べ熱時効材の母材の値は低下していることから、コーティング層と同様に母材も熱時. Yield Strength, sy (MPa). 効により軟化することが分かる。. 800. Open : Unaged Solid : Thermally Aged. Substrate. 600. 400. 200. 0 0 400. 500 100. 600. 700. 800. 900. 1000. Temperature, T (℃) Fig.3-5. Yield strength in substrate o f u n a g e d a n d thermally aged blades.. 非時効材および熱時効材におけるコーティング層表面近傍の領域Ⅰ、Ⅱは、いずれ も室温から 870℃までは降伏挙動を示す前に試験片表面にき裂が発生するなど脆性的. 56.

(7) であったことから 、実機使用材ではこれらの領域は調査対象から除いた。Fig.3-6 に、 実機使用材のコーティング層領域Ⅲ、Ⅳおよび母材における室温、870℃および 950 ℃ での降伏応力を、非時効材の結果と合わせて示す。領域Ⅲは、室温および 950℃で未 使用材と同等の降伏応力を示すが、870℃ではわずかに低下する。領域Ⅳおよび母材 では降伏応力は低下しており、Fig.3-4 に示す熱時効材と同様に軟化することが 分か る。. 800. Unaged. Yield Strength, s y / MPa. Ⅲ. Substrate. Ⅳ. Serviced. 600. 400. 200. 0 22. 870. 950. 22. 870. 950. 22. 870. 950. Test Temperature, T / ℃ Fig.3-6. Comparison of yield strength between unaged and serviced blades.. 3.3.2. コーティング材の破壊ひずみ. S P 試験により求めた非時効および熱時効材のコーティング層領域Ⅰ、Ⅱにおける 破壊ひずみε f の温度依存性を Fig.3-7 に示す。図より、非時効および熱時効材 はいず れも室温の値は小さく、熱時効の影響は認められない。また、700℃を越える温度域 では、温度の上昇に伴って非時効材の値は上昇する傾向を示し、特に領域Ⅱの 950 ℃ では著しく高くなっている。一方、700℃以上でも熱時効材の値は上昇せず室温と同 様に小さいことから、コーティング層の表面近傍領域におけるき裂発生時の延性は、 熱時効により低下することが分かる。. 57.

(8) S P 試験後、試験片表面の SEM 観察を行った結果、室温の試験では非時効および熱 時効材ともに、Fig.3 -8 に示すように試験片中央部に放射状のき裂が観察され、直線 的に進展していた 。図中には、観察した試験片の破壊ひずみε f と試験停止時のひずみ εi n t を合わせて示している。一方、高温の試験でも非時効および熱時効材ともに脆性 的な直線状のき裂が観察された。. 10. Ⅰ. Fracture Strain, ef (%). Ⅱ 8 Open : Unaged Solid : Thermally Aged. 6. 4. 2. 0 0 400. 100 500. 600. 700. 800. 900. 1000. Temperature, T (℃) Fig.3-7. Fracture strain in coatin g regions Ⅰ and Ⅱ of unaged and thermally aged blades.. ε f = 0.1,ε i n t = 1.7. Fig.3-8 Cracking morphology on the surface of coating region Ⅱ of unaged blade tested at room temperature.. 58.

(9) 非時効および熱時効材のコーティング層領域Ⅲ、Ⅳにおける破壊ひずみε f の温度依 存性を Fig.3-9 に示す。図より、温度の上昇に伴い非時効材の値は上昇する傾向を示 し、領域Ⅲでは 700℃を越える温度域で急激に上昇して延性−脆性遷移挙動を示した。 一方、熱時効材の値は室温では非時効材より小さく、850℃前後において著しく低下 している。Fig.3 -7 と比較すると、非時効および熱時効材の破壊ひずみはともに 領域 Ⅰ、Ⅱの値よりも大きかった。 試験後に試験片表面を SEM 観察した結果、室温での領域Ⅲは、非時効および熱時 効材ともに Fig.3-10 に示すように試験片中央部 に開口した放射状もしくは直線状の き裂が観察され、ジグザグに進展していた。室温での領域Ⅳは、非時効材では Fig.3-11 (a)に示すように試験片中央部に微 小なき裂が多数観察されるのに対し、熱時効材 では試験片中央部 に Fig.3-11(b)に示すような 開口幅の大きいき裂のみが観察され た。一方、高温での領域Ⅲ、Ⅳは、非時効材では Fig.3 -12(a)に示すように試験片 中央部に開口したき裂が観察され、ジグザグに進展しているのに対し、熱時効材 では. Fracture Strain, e f (%). Fig.3-12(b)に示すような微小なき裂(? で示す)も多数観察された。. Open : Unaged Solid : Thermally Aged. 15. Ⅲ Ⅳ. 10. 5. 0 400 0. 100 500. 600. 700. 800. 900. 1000. Temperature, T (℃) Fig.3-9. Fracture s t r a i n i n coating regions Ⅲ a n d Ⅳ o f unaged and thermally aged blades.. 59.

(10) ε f = 2.8,ε i n t = 4.1. Fig.3-10 Cracking morphology on the surface of coating region Ⅲ of unaged blade tested at room temperature.. ε f = 4.0,ε i n t = 5.5 (a)Unaged. Fig.3-11. ε f = 0.8,ε i n t = 1.1 (b)Thermally aged. Cracking morphology on the surface o f coating region Ⅳ of unaged and thermally aged blades tested at room temperature.. ε f = ε i n t = 12.6 (a)Unaged. Fig.3-12. ε f = 4.7,ε i n t = 5.8 (b)Thermally aged. Cracking morphology on the surface o f coating region Ⅲ o f unaged and thermally aged blades tested at 870 ℃.. 60.

(11) 非時効および熱時効材の母材における破壊ひずみε f の温度依存性を Fig.3-13 に示 す。図より、非時効材における 650℃から 870℃の値はほぼ同等であるが、室温の値 と比較するとやや 低くなっている。一方、熱時効材では室温と 650℃の値は同等であ り、650℃以上では上昇する傾向を示した。このことから 、室温および 870℃までの 温度域では、母材の延性は熱時効により低下することが分かる。Fig.3-7、Fig.3-9 お よび Fig.3-13 に示すように、室温の非時効材の破壊ひずみはコーティング層の各領 域より大きな値を示した。 試験後の試験片表面を観察した結果、室温での非時効材では Fig.3-14(a)に示す ように、試験片中央部に微小なき裂が多数観察されるのに対し、熱時効材では試験片 中央部に Fig.3-14(b)に示すような開口幅の大きいき裂のみが観察された。一方、 高温での非時効材 では、試験片中央部に Fig.3 -14(c)に示すような開口したき裂が 観察され、ジグザグに進展しているのに対し、熱時効材では Fig.3-14(d)に示すよ うな開口したき裂だけでなく、微小なき裂(? で示す)も多数観察された。このよう. Fracture Strain, e f (%). に、母材では室温および高温において領域Ⅳと同様な表面き裂形状が認められた 。. Open : Unaged Solid : Thermally Aged. 15. Substrate. 10. 5. 0 400 0. 500 100. 600. 700. 800. 900. 1000. Temperature, T (℃) Fig.3-13. Fracture strain in substrate of unaged and thermally aged blades.. 61.

(12) Tested at RT. Tested at RT. ε f = ε i n t = 9.6. ε f = ε i n t = 3.5. (a)Unaged. (b)Thermally aged. Tested at 870℃. Tested at 870℃. ε f = ε i n t = 6.9 (c)Unaged. ε f = ε i n t = 5.4 (d)Thermally aged. Fig.3-14 Cracking morphology on the surface of substrate of unaged and thermally aged blades.. 870℃、真空中の試験で求めた熱時効材の破壊ひずみε f を、空気中における試験結 果と合わせ Fig.3-15 に示す。コーティング層の各領域および母材は、いずれも 空気 中の結果より真空中の結果の方が大きいことから 、熱時効材の機械的特性は試験雰囲 気に顕著に影響を受けることが分かる。 次に、実機使用材のコーティング層領域Ⅲ、Ⅳおよび母材における室温、870℃お よび 950 ℃での破壊ひずみε f を、非時効材の結果と合わせて Fig.3-16 に示す。領域 Ⅲでは非時効材と比べて実機使用材の高温での値は低下しており、Fig.3 -9 に示す熱 時効材と比べても破壊ひずみは低下している。領域Ⅳでは非時効材と比べて実機使用 材の値はいずれの温度でも低下しており、Fig.3-9 に示す熱時効材と同様に破壊ひず みは低下することが分かる。一方、母材では非時効材および熱時効材と比較して、実 機使用材の破壊ひずみは顕著に低下している。試験後の試験片表面の観察結果では、. 62.

(13) コーティング層領域Ⅲ、Ⅳのいずれの試験片でも試験片中央部に Fig.3-17(a)に示 すような開口した放射状もしくは直線状のき裂が観察され、高温では Fig.3-17(b) に示すような開口したき裂だけでなく、微小なき裂(? で示す)も多数観察されるな ど、熱時効材と同様な表面き裂形状であった。また、母材も熱時効材と同様な表面き 裂形状であった。. 15. In Air In Vacuum. Fracture Strain, ef (%). Thermally Aged. 10. 5. 0. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. Substrate. Fig.3-15 Comparison of fracture strain tested in air and vacuum of thermally aged blade.. 20. Unaged. Fracture Strain, ef (%). Ⅲ. Ⅳ. Substrate. Serviced. 15. 10. 5. 0 22. 870. 950. 22. 870. 950. 22. 870. 950. Test Temperature, T / ℃. Fig.3-16 Comparison of fracture strain between unaged and serviced blades.. 63.

(14) ε f = 2.5, ε i n t = 2.9 (a)Tested at room temperature. ε f = ε i n t = 1.9 (b)Tested at 870℃. Fig.3-17 Cracking morphology on the surface of coating region Ⅲ. Load Range, ? P (N). of serviced blade tested at room temperature and 870 ℃.. Number of Cycles. Fig.3-18. 3.3. Typical variation of load range with number of fatigue cycles.. コーティング材の低サイクル 疲労寿命. 室温における低サイクル疲労試験の測定例を Fig.3 -18 に、非時効および熱時効材 のコーティング層領域Ⅰ、Ⅲにおける破損繰返し数 N f と全ひずみ範囲Δε t の関係を Fig.3-19 に示す。非時効材では、領域Ⅲは領域Ⅰより長寿命となっている。また、領 域Ⅲの熱時効材は非時効材と比較して疲労寿命は低下している。また、領域Ⅰ、Ⅲに お け る 破 損 繰 返 し 数 N f は 、 Fig.3 -19 よ り 本 試 験 範 囲 内 で は 式 ( 3.4 ) に 示 す. 64.

(15) Coffin -Manson 型の関係式で整理できる。ここで、αと C は定数であり、コーティ ング層領域によって異なることが分かる。. Δεt ・N fα = C. Total Strain Range, ?et (%). 10. ( 3.4 ). Open : Unaged Solid : Thermally Aged. Ⅰ Ⅲ. 1. 0.1. 0.01 0 10 1. 1 10 10. 2. 10 100. 3. 10 1000. 4. 10 10000. Number of Cycles to Cracking, Nf Fig.3-19 Low cycle fatigue life in coating regions Ⅰ and Ⅲ of unaged and thermally aged blades.. 岡崎ら. 1 3 ) は、IN738LC. の板状試験片(2.3mm w ×1.5mm t ×50mm L )に CoCrAlY. を HVOF( High Velocity Oxygen Fuel; 高 速 フ レ ー ム) 溶 射し 、 溶 射 後 CVD (Chemical Vapor Deposition)法により Al 拡散浸透処理したコーティング材を対 象に、大気中、900℃×2000h の長時間熱時効を与え、荷重制御により室温および 800 ℃ において試験片破断までの疲労寿命を調査している。その結果、長時間熱時効は疲労 寿命に影響を与えないことを報告しているが、本試験範囲内では、熱時効によりコー ティング層の疲労寿命が低下する傾向にある。 試験後に試験片表面を SEM 観察した結果、領域Ⅰ、Ⅲはいずれも Fig.3-20 に示す ように試験片中央部に放射状のき裂が観察され、いずれのひずみ振幅においても 直線 的に進展していた 。. 65.

(16) ? ε t = 0.34. Fig.3-20 Cracking morphology on the surface of coating region Ⅲ of unaged blade in LCF tested at room temperature.. 10. Total Strain Range, ?e t (%). Unaged Serviced * *. 1. 0.1 10 1. 0. 1. 10 10. 2. 100 10. 3. 1000 10. 4. 10000 10. Number of Cycles to Cracking, N f. Fig.3-21. Low cycle fatigue life in coating region Ⅲ o f u n a g e d a n d serviced blades. An asterisk mark indicates fracture strain.. 次に、実機使用材 の領域Ⅲにおける室温の低サイクル疲労試験結果を、非時効材 の 結果と合わせて Fig.3-21 に示す。図より、領域Ⅲにおける破損繰返 し数 N f は、本試 験範囲内では式(3.4)で整理でき、実機使用材 と非時効材には明瞭な差は認められな い。また、熱時効材の結果と異なり、実機使用による疲労寿命への影響は認められな い。なお、図中には Fig.3-16 に示す破壊ひずみの値を N f = 1 にプロットして示して いるが、N f = 1 とした場合の低サイクル疲労寿命の外挿値と破壊ひずみは良く一致し. 66.

(17) ている。また、試験後の SEM 観察の結果、いずれの試験片でも Fig.3-22 に示すよう に試験片中央部に微小なき裂が多数観察された。 マイクロビッカース硬さ試験機により、荷重 1.96N、室温において供試材の表面近 傍断面における硬さを測定した結果を Fig.3-23 に示す。図より、コーティング層の 内部および母材に比べ Al 濃度が高いコーティング層表面近傍で硬く、非時効および 熱時効材ともに同様の硬さ分布を示す。なお、熱時効によりコーティング層の硬さの 低下が報告されているが. 1 3 ) 、本研究では明瞭な硬さの変化は認められなかった。. ? ε t = 0.6. Fig.3-22. Cracking morphology on the surface of coating region Ⅲ o f serviced blade in LCF tested at room temperature.. 1000. Vickers hardness (Hv). Unaged Thermally Aged. 800. 600. 400. 200. 0. -200. 0 Interface. -100 Coating. 100 Substrate. Distance from the interface (µm). Fig.3-23. Hardness distribution of coatings and substrate near interface of unaged and thermally aged blades.. 67.

(18) 3.4 3.4.1. 考察 高温暴露による機械的特性の変化. 本研究対象のコーティング層は微細で複雑な層状組織であり、長時間熱時効や実機 使用による各領域の機械的特性の変化はそれぞれの領域におけるミクロ組織の変化に 起因すると考えられる。そこで、長時間熱時効による機械的特性の変化とミクロ組織 との関係を考察する。なお、CoCrAlY などの MCrAlY コーティング層と N i 基超合 金のヤング率は同等であることから. 1 4 ) 、試験片におけるコーティング層の占める厚さ. の割合が変わっても、本研究で用いた試験片は均質材と近似できると考えて機械的特 性を評価する。 熱時効によるミクロ組織の変化は、前章で報告したように以下に要約できる。領域 Ⅰでは Al 濃度が高く、主に Cr が固溶したβ-CoAl 相により構成され、熱時効により 最表面に Al 2 O 3 が生成し Al 濃度は低下する。領域Ⅱでは Cr 濃度が高く、微細なσ -CoCr 相が主体の組織であり、熱時効により粒状・塊状のσ相が凝集・粗大化する。 領域Ⅲではγマトリクス中にβ相とσ相が析出した組織であり、熱時効によって 母材 から Ni 拡散が起こり、σ相と粒状のβ-(Co,Ni)Al 相が析出した組織に変化する。領 域Ⅳでは主にγ相とβ相から構成され、熱時効により Ni の相互拡散が著しくなり、 Ni が濃化したβ相が粗大化する。一方、コーティング層/母材の相互拡散層近傍 の母 材では、熱時効により Cr 炭化物が析出する。したがって、Fig.3 -4〜Fig.3 -6 に示す 熱時効や実機使用による強度の低下、および Fig3 -7、Fig3-9、Fig.3 -13 および Fig.3 -16 に示す熱時効や実機使用による延性の低下は、コーティング層におけるσ相やβ相の 粗大化、あるいは 母材における炭化物の析出に起因すると考えられる。なお、熱時効 中に析出する炭化物がき裂の起点となり、母材を脆化させることが報告されている 1 5 ) 。 ところで、熱時効した Ni 基超合金に対する高温大気中の引張試験では、真空中の 結果と比較して酸素脆化の関与による延性低下が報告されている. 1 6 ) 。また、Ni. 基超. 合金および NiAl などの金属間化合物は Co 基合金よりも酸素脆化感受性が高いこと が報告されている. 1 7 ) 。これらのことから、Fig.3-15. に示す大気中における延性の低. 下には酸素脆化の関与が考えられる。熱時効中に母材からコーティング層へ Ni が拡 散し、元来酸素脆化感受性の低い Co 基合金であるコーティング層へ酸素脆化感受性 の高い Ni が拡散することにより、コーティング 層の酸素脆化感受性を高めたことが 原因と考えられる。また、Fig.3-14(d)に示すような高温における熱時効材、ある. 68.

(19) いは Fig.3-17(b)に示すような実機使用材では微小なき裂が多数観察されたことか ら、試験環境中の酸素が粒界へ拡散して結合を弱めることにより、粒界におけるき裂 の発生を促進したことが示唆される。なお、CoNiCrAlY コーティング層においても、 高温大気中で延性の低下が報告されている. 8 ) 。以上のように、コーティング層の高温. 延性の著しい低下は、熱時効や実機使用といった 高温暴露によるミクロ組織の変化の みならず、母材からの Ni の拡散も一因と考えられる。なお、本研究で示したコーテ ィング材の機械的特性の変化は、Fig.3-23 に示すように硬さ試験の結果から推定は困 難である。 一方、前章 2.4.3 項で明らかにしたように、コーティング層/母材の相互拡散層 の 成長から求めた実機使用材のメタル温度の推定値は約 920℃で、使用時間は約 17000h であるのに対し、熱時効材の時効温度は 870℃で時効時間は 8000h であることから、 実機使用材の方が熱時効材と比較して暴露温度は高く、かつ暴露時間は長い。したが って、実機使用材 は熱時効材と比べて、非時効材 からの組織の変化は著しいと考えら れる。一方、Fig.3-19 および Fig.3-21 に示す領域Ⅲにおける低サイクル疲労試験結 果から、熱時効材 は非時効材と比較して疲労寿命 の低下が認められるのに対し、実機 使用材は疲労寿命の低下は認められない。この原因は明確ではないが、前章 Fig.2-6 に示すように熱時効材の領域Ⅲではσ相が認められるのに対し、前章 Fig.2-12 に示 すように実機使用材の領域Ⅲではσ相が認められないことが要因として挙げられる。 一方、Fig.3-21 に示すように、N f = 1 とした場合の疲労寿命の外挿値と破壊ひずみ は良く一致しており、破壊ひずみと疲労寿命の関係には相関があると考えられる 。す なわち、実機使用材では破壊ひずみは低下していないため疲労寿命にも低下が認めら れないのに対し、熱時効材では破壊ひずみが低下したため、疲労寿命も低下したと考 えられる。ところで、式(3.4 )におけるα、C は Fig.3 -19 および Fig.3-21 におけ る直線の傾きと切片に反映されるが、Fig.3 -21 に示すように 実機使用材のα、C は非 時効材と同一で、Fig.3-19 に示すように熱時効材では C は非時効材と異なるものの、 αは非時効材と同一と推定される。このことから 、高温暴露によってもαは不変であ ることが示唆されるため、コーティング層における破壊ひずみの低下を評価すれば、 疲労寿命の低下度が推定できると考えられる。. 69.

(20) 3.4.2. 高温暴露が動翼に与える影響. 一般的に、動翼に適用されているコーティング層は動翼の強度を分担しないことか ら 2 ) 、Fig.3 -4 および Fig.3-6 に示した高温暴露によるコーティング層の強度低下 は、 実用上大きな問題にはならないと考えられる。しかし、動翼は原則的にき裂を許容し ないことから、コーティングに発生するき裂が動翼の信頼性に影響を及ぼし、動翼の 早期取替えあるいは再コーティング(リコーティング)などの修理が必要になること が懸念される。そこで、コーティング層における 延性や疲労寿命の低下が動翼に与え る影響を考察する。 Fig.3-7 に示したように、コーティング層の表面領域では運転中の使用温度と想定 される高温においても延性は小さく、室温における疲労寿命も比較的短いことが 分か った。このことから、実機使用中に負荷されるひずみにより表面領域においてき 裂の 発生が考えられるものの、Fig.3-9、Fig.3-16 および Fig.3-19 に示すように、コーテ ィング層内部では表面領域に比べて延性および疲労寿命は優れることから、内部でき 裂は停止すると考えられる。内部の CoCrAlY 層は、前章 Fig.2 -15〜Fig.2-18 に示す ように表面領域と比較して Al 濃度が低いことから、き裂が停止する内部において酸 化の加速が懸念される。また、長時間実機使用により Fig.3-9 や Fig.3-16 に示す延性 の低下、あるいは Fig.3 -19 に示す疲労寿命の低下が起こり、き裂進展が促進される ことも考えられる 。一方、Fig.3 -9 と Fig.3 -15 の比較から、き裂が発生せず耐環境性 が確保されている 場合の高温暴露によるコーティング層内部の延性低下は軽微である ことが分かるが、き裂の発生によって高温酸化雰囲気に曝されることによって、Fig.3-9 に示すような延性の低下が急激に引き起こされると考えられる。 実機動翼ではき裂の発生などによりコーティング 層の環境遮蔽効果が失われる可能 性があるため、本章に示した大気中での試験による評価は、動翼保守管理の観点から 妥当と考え ら れ る。また、 実機で使用 した動翼か らコーティング材を 切り出し、S P 試験法により評価する本手法は、使用中の動翼コーティング層およびコーティング層 近傍における母材の劣化診断法として有効であると考えられる。. 3.5. 小括. 本章では、前章と同じ未使用材、熱時効材および実機使用材を供試材とし、S P 試 験法および S P 試験装置を用いた低サイクル疲労試験により、コーティング材の機械. 70.

(21) 的特性を室温および高温で調査し、長時間高温暴露によるコーティング材の機械的特 性の変化とミクロ組織との関係を検討した。結果を以下にまとめる。 (1)SP 試験および低サイクル疲労試験によって、コーティング材の機械的特性の変化 を室温および高温で評価できることが明らかになった。したがって、本手法はコー ティング材の劣化診断法として有効であると考えられる。 (2)表面近傍のコーティング層では、高温暴露により高温における破壊ひずみは 低下し た。 (3)コーティング 層内部では、高温暴露により室温および高温における降伏応力 はわず かに低下し、破壊ひずみは高温で著しく低下した。 (4)コーティング 層/母材界面近傍のコーティング層および母材は、高温暴露により室 温および高温における降伏応力および破壊ひずみは低下した。 (5)コーティング 層の低サイクル疲労寿命は Coffin -Manson 型の関係を示し、破壊ひ ずみが低下した場合に低下する傾向を示した。 (6)高温暴露による機械的特性の変化は、ミクロ組織の変化に起因することが明らかに なった。また、コーティング層の機械的特性の低下には、Ni 拡散による酸素脆化感 受性の上昇が関与していると考えられる。. 71.

(22) 参考文献. 1) 日本材料学会高温強度部門委員会,超合金とそのコーティング材の高温強度評価技 術 WG 第Ⅰ期活動成果報告(2001). 2) 吉岡洋明,斉藤大蔵 ,村上格,藤山一成,岡部永年,材料,41 ,1724 (1992 ). 3) J. A. Daleo and D. H. Boone,ASME Paper 97-GT-486(1997). 4) 古葉正行,日本ガスタービン学会誌,26-101,63(1998 ). 5). R.. Viswanathan ,. Damage. Mechanisms. and. Life Assessment. of. High-Temperature Components , Chap.9 ( 1989 ) ASM International , Materials Park. 6) 桜井茂雄 ,磯部展宏,熊田和彦,亀田純,日本機械学会材料力学部門講演会講演論 文集,445(1996). 7) Y. Sugita ,A. Ito,S. Sakurai and J. Kameda,Proc. of Materials Ageing and Component Life Extension,307(1995 ). 8) J. Kameda,T. E. Bloomer,Y. Sugita ,A. Ito and S. Sakurai,Materials Science and Engineering ,A229,42(1997). 9) K. A. Ellison,J. A. Daleo and D. H. Boone,Proc. of Materials for Advanced Power Engineering,1523(1998 ). 10) J. R. Rairden Ⅲ,US Patent,Re 30995 (1982). 11) J. Kameda and X. Mao,J. of Material Science,27 ,983(1992). 12) X. Mao and H. Takahashi, J. of Nuclear Materials,150,42(1987). 13) 岡崎正和,武藤睦治,貞末照輝,藤田厚,斉藤正弘,材料,47,1143 (1998). 14) 伊藤義康,斉藤正弘,宮崎松生,本多啓三 ,材料,43 ,690(1994 ). 15) 駒崎慎一,高村和宗,庄子哲雄,藤田範生,阿部宏紀,日本機械学会材料力学部 門講演会講演論文集,113(1999 ). 1 6 ) W . H . C h a n g , Superalloys-Processing , S e c . 5, p.1 ( 1972 ) Battelle Columbus Laboratories,Columbus. 17) S . T. Wlodek, Long Term Stability of High Temperature Materials ,p.3 (1999)TMS.. 72.

(23)

参照

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