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高エネルギー物質を用いたイオン液体推進剤の 分解・着火挙動の解析

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(1)

[HH3CNHH3]+[NOOO3]- (Ammonium dinitramide)o uADN

m.pp.=92dnit t a tC

(Monomethylamine nitrate)etMMAN m.pp.=110y a ne

eeC

m.pp.=134CUrea

$'1ܧ(,/V$08 ೫র͹༹ࢢ

ADN 系 EILs(AMU)の調製と燃焼の様子,)

高エネルギー物質を用いたイオン液体推進剤の 分解・着火挙動の解析

高エネルギー物質研究チーム(課題番号: ) 研究期間:平成 年 月 日〜令和 年 月 日 研究代表者:松永浩貴 研究員:加藤勝美

研究成果

.はじめに

通信,海洋・気象情報,地理情報など,人類が豊かな 生活を送るのに欠かせない技術は,地球周回衛星を用い た宇宙インフラによって支えられている。現在は,現技 術の質の向上とともに,超小型衛星(数十 kg 以内)に よる宇宙開発や探査に向けた研究が世界中で盛んになっ ている。衛星の小型化は製作にかかる材料費,時間を直 接的に削減することができ,低コストかつ短期間での製 作を可能にするのである。近年では急速な技術向上に伴 い,超小型衛星を用いた高度な宇宙探査ミッションが増 えつつある。宇宙空間において推進や制御を行う推進 系技術は,多様な宇宙機利用において自在性を獲得する のに欠かせない根幹技術である。化学推進は推進剤の分 解・燃焼により推力を得る方式であり,インパルスビッ トが求められる姿勢制御や軌道遷移においては液体推進 剤の利用が望ましい。

衛星用化学推進における汎用の推進剤はヒドラジンで ある。ヒドラジンは加温しなくても特定の触媒や酸化性 物質との反応によって一定量のガスを発生するため,反 応制御が容易である。一方で,ヒドラジンは毒性が高く,

室温で可燃性の蒸気を形成することから,充填をはじめ とする取扱い操作において特殊な設備と厳重な管理を必 要とする。ヒドラジンの取扱性の低さは,低コスト・高 頻度を目指す超小型衛星と逆を行くものである。さら に,化学推進系を超小型衛星に搭載するにあたり,推進 剤タンクの占める体積を小さくすることが要求されるた め,推進剤のエネルギー密度をより高くすることが必要 である。これらを解決する方法は,低毒性かつハンドリ ングが容易な高エネルギー物質(HEMs;加熱分解によ り高温の低分子量化学安定ガスを発生する材料)による ヒドラジンの代替であり,世界中で研究開発が進んでい

− )

筆者らは,HEMs の一つであるアンモニウムジニト ラミド(ADN)に着目した。ADN はヒドラジンに比べ 毒性が低く,エネルギー密度が高いことから,推進剤へ の適用が期待され,欧州を中心に研究が進められてい る。ここで,ADN をはじめとした HEMs は一般に室温 で固体であり(ADN は ℃),ヒドラジンの代替とし て用いるには液体とする必要があり,例えば,スウェー デンを中心に研究開発が進む ADN 系推進剤 LMP‐

Sの組成は,ADN %,水 . %,メタノール .%,

ア ン モ ニ ア . %,FLP‐ で は,ADN .%,水

.%,モノメチルホルムアミド .%である。これら に 対 し,筆 者 ら は ADN と モ ノ メ チ ル ア ミ ン 硝 酸 塩

(MMAN,融 点 ℃),尿 素(融 点 ℃)の 混 合 物

(AMU)は,溶媒を用いずに可燃性の ADN 系高エネ ルギーイオン液体(EILs)を形成し(図 ),化学平衡 計算ではヒドラジンを上回る性能となることを見出し 。EILs は固体同士の凝固点降下を用いて液化させる ものであり,液体の溶剤を用いない。そのため,イオン 性化合物特有の高密度・低蒸気圧・高安定性が燃料タン クの小型化,取扱性の向上,意図しない爆発リスク低減 につながる。

(2)

レーザー点火方式の種類

レーザー点火試験の概略 ADN 系 EILs を推進剤として実用化するための喫緊

の課題は点火である。ヒドラジンの場合は触媒に噴射し てガス化させるが,イオン液体の高い熱安定性は着火性 を低下させ,HEMs の高いエネルギー密度は高い燃焼 温度につながるため,従来の点火方式では対応できな い。そこで筆者らはレーザーを用いた点火に着目した。

レーザー点火は,非接触点火方式であるため燃焼による 劣化や損耗が生じず,長寿命かつ安全性の高い点火方式 となることが期待できる。昨今はレシプロエンジン,ガ スタービンエンジンなどの分野でレーザー発振器の小型 軽量化が急速に進んでおり,液体推進剤への適用も検 討されてきたが,宇宙先進国においても液体推進剤の 点火に至った例はなかった。そこで本研究では,レーザー 点火の実現可能性および点火に至る反応挙動を明らかに することを目的とした。

.レーザー点火の実現可能性評価

レーザー点火には主に,光反応,ブレイクダウン,加 熱といったメカニズムが挙げられる(図 )。光反応に よる点火では,ある特定の波長のレーザーを照射するこ とでその波長に吸収波長をもつ分子が選択的に解離し,

生成したラジカルにより燃焼反応が促進して着火に至 る。ブレイクダウンによる点火では,パルスレーザーを レンズなどで微小面積に集光してブレイクダウンを起こ し,生成するプラズマを着火源として点火する。加熱に よる点火では,レーザー(主に連続光レーザー)を照射 して試料を加熱と熱分解や気化が起こって高温の可燃性 混合気を形成し,それが着火する。

本研究では加熱方式を用いた点火について,実現可能 性を評価した。点火試験の概略図を図 に示す。側面が 石英ガラス製の密閉容器( mm× mm× mm)の 内部に交差させたガラス線(φ .mm)を設置し,そこ に ADN 系 EILs(AMU)の液滴を約 μL 懸垂させた。

そ こ に 波 長 nm ま た は nm,出 力 W の 連 続 光 レーザーを照射し,その時の様子を高速度カメラ(フレー ムレート: fps)で観測した。

図 (a)は nm のレーザーを AMU に照射したとき の様子である。レーザー照射開始後ただちに凝縮相反応 が開始し白色のガスが発生する様子が観測されたが,着 火には至らなかった。一方で添加剤として塩基性硝酸銅

(BCN)を wt%程度加えた液滴では,凝縮相反応で 発生したガスが約 ms 経過後に着火する様子が観測 された(図 (b))。本結果により,レーザー加熱を用 いた EILs の非接触点火の実現可能性が示された。Fang の研究よれば,エネルギーの入射から着火に至るま での時間(着火遅れ時間)は,レーザー強度の 乗に反 比例するとされており,AMU は出力が数十 W の CW レーザーを用いると人工衛星で使用可能なレベルとされ る ms オーダーの着火遅れ時間を達成可能であると推定 される。また,本試験レベルのレーザーの入射でも AMU のガス化が直ちに進行したことから,低出力の小型 CW レーザーでガス化させ,それをパルスレーザーやスパー クなどによって点火する方式の実現も期待できる。

.点火に至る反応の解析

加熱時の反応挙動の観察

AMU の着火に必要な条件を明らかにするため,AMU を加熱した際の凝縮相温度を測定した。本実験に用いた

(a)AMU(添加剤無) (b)AMU(BCN 添加)

AMU 液滴へのレーザー入射時の様子

(3)

本研究で調製した AMU およびヒドラジンの融点(実測値)

と推進性能(計算値)

AMU AMU Hydrazine

ADN/ wt%

MMAN/ wt%

Urea/ wt%

/ ℃

/ m s / s

AMU の凝縮相温度測定

(a)熱電対に懸垂させた液滴,(b)液滴がアルミニウム板に接 触する瞬間( = )の様子

AMU の組成とそれらの融点の実測値および化学平衡計 算プログラム NASA‐CEA による推進剤としての性能

(特性排気速度 および比推力 )の計算値を表 に 示す。NASA‐CEA の計算は,燃焼室圧力 .MPa,ノ ズル開口比 ,凍結流とした。また,比較対象として,

質量比 : の ADN/MMAN(AM )も調製した。

着火に至る様子を観測するため,線径 .mm の K 熱 電対の先端に液滴を約 μL 乗せ(図 (a)), ℃に加 熱したアルミニウム板に接触させ(図 (b)),着火(火 炎を観測)に至るまでの液滴の温度を測定した。液滴が アルミニウム板に触れた時刻 を とした。また,その 時の様子を高速度カメラにより fps で撮影した。

凝縮相温度測定の結果を図 に示す。どの試料もアル ミニウム板に接触すると同時に温度上昇および熱分解反 応が開始した。 ℃からさらに反応および温度上 昇が顕著になり,レーザー点火試験の時と同様,白色の ガスが発生した。AMU の凝縮相温度は約 ℃まで 上昇したが着火せず,AMU ,AM では凝縮相温度 がより上昇し,約 ℃に達した時に液滴付近のガスか ら火炎が発生した。また,着火に至るまでの時間は AM が最も短かった。各試料を熱分析装置(示差走査熱量 計,示差熱−熱重量計)で定速昇温した結果,凝縮相反 応による発熱が観測され,その発熱開始温度はどの試料 においても約 ℃と変化なかったが,発熱量は AMU

<AMU <AM であった。凝縮相の発熱が着火 性に寄与しており,発熱分解する ADN が多く,吸熱分 解する尿素が少ない試料ほど着火性が高くなると考えら れる。ここで,着火時の液滴温度が尿素の有無で変わら なかった。したがって,ADN と MMAN の反応から生 成するガスが発火することで燃焼が開始することが示唆 された。

ADN/アミン硝酸塩の凝縮相反応機構の解析 ここまでの結果で AMU の着火性は ADN と MMAN の凝縮相反応挙動の影響を受けることが示唆された。そ こで,ADN と MMAN をはじめとしたアミン硝酸塩と の凝縮相反応の発熱挙動および生成ガスを解析し,反応 機構および着火に寄与する生成ガスについて検討するこ ととした。

発 熱 挙 動 の 解 析 の た め,ADN と ア ミ ン 硝 酸 塩

(MMAN,ジメチルアミン硝酸塩(DMAN),トリメ チルアミン硝酸塩(TMAN),ジエチルアミン硝酸塩

(DEAN),モノエタノールアミン硝酸塩(MEAN),

シクロヘキシルアミン硝酸塩(CyAN),硝酸アンモニ

AMU ,AMU ,AM の凝縮相の温度履歴と反応の様子

(4)

100 200 300 AN

TMAN

DEAN DMAN

MEAN CyAN MMAN ADN Exo.Heat flow/ W g-1 20

Temperature /oC

ADN/アミン硝酸塩の DSC 測定結果(実 線は ADN との混合物,破線はアミン硝酸 塩単体を示す)

ウム(AN))の : (質量比)混合物を 調 製 し,示 差走査熱量測定(DSC)を実施した。各試料単体および 混合物を SUS 製セルに mg 秤量して密封し, K minで昇温した。

DSC 測定結果を図 に示す。ADN 単体では

(1st peak), ℃(2nd peak)で発熱が観測され た。1st peak での反応は ADN が AN および N O へ分 解する反応であり ℃, ℃付近にピークがある ように見える。これは,ADN の一部が NH とジニトラ ミド酸(HDN)へ解離して分解する反応[式⑴,⑵]

を起こし,それ以外の ADN が AN へ直接分解している

[式⑶]ことが考えられる。

NHN(NO ) "# NH + HN(NO )

HN(NO )"# HNO + N O

NHN(NO ) "# NHNO+ N O また,2nd peak では,1st peak で生成した AN がさら に分解し,ガスを生成する[式⑷]。 とされる。

NHNO "# N O + H O

アミン硝酸塩の分解はまずアミンと硝酸への解離が起 こり,それらがさらに分解するとされる 。ADN/アミ ン硝酸塩では,ADN 単体と同様, ℃から発熱(1st ピーク)が開始したが, ℃付近のピークは見られな かった。これはアミン硝酸塩の NOが反応 性 の 高 い HDN の生成を抑制するためであると考えられる[式

⑸]。

N(NO )+ HNO "#!" HN(NO )+ NO 1st ピークの発熱量(ADN の質量あたり)は,ADN 単 体で .kJ,ADN/MMAN で .kJ,ADN/TMAN で . kJ,ADN/MEAN で .kJ であった。これは1st ピーク の温度範囲で ADN の熱分解と並行して ADN とアミン 硝酸塩が凝縮相反応をしていることを示している。ま た,式⑷の AN の分解に由来する発熱は観測されなかっ た。アミン硝酸塩との反応により,ADN の分解の中間 生成物が消費され,AN が生成しなかったと推定され る。

一方で,ADN との混合物おけるアミン硝酸塩の分解 に伴う発熱挙動は,試料により違いが生じた。MMAN と DMAN では,1st ピークの後に純粋なアミン硝酸塩 と同じ分解温度で発熱が観測された。一方で,MEAN,

TMAN,CyAN は1st ピークの後に発熱が現れなかっ た。MMAN,DMAN と 比 較 し て,MEAN,TMAN,

CyAN は ADN と特に高い反応性を有することがわかっ た。なお,ADN/DEAN の発熱ピークは ADN 単体と同 じ温度であったため,ADN との反応性の高さは評価で

きなかった。また,ADN/AN は1st ピークの発熱量増 加は確認されなかった。AN は凝縮相で NH にほとんど 分解しないとされており ,1st ピークでの反応に寄与 しなかったと考えられる。

凝縮相反応メカニズムを明らかにするため,示差熱−

熱重量−質量分析(TG‐DTA‐MS)による熱挙動と生 成ガスの同時分析を行った。試料約 mg をアルミニウ ム製開放セルに秤量し,ヘリウム雰囲気(流量 mL min)において速度 K minで室温から ℃まで昇 温した。生成ガスを ℃に加熱したステンレスチュー ブを通して質量分析計へ送り,電子イオン化法で分析し た。

各温度域における ADN,MMAN,DMAN,TMAN,

ADN/MMAN,ADN/DMAN,ADN/TMAN の生成ガ スのマススペ ク ト ル を 図 に 示 す。ADN 単 体(図

(a))で は, / = , , , , , , の ガ ス の生成が確認された。これは H O( / = , ),N O

( / = , , ),N ( / = ),NO ( / = ,

),HNO ( / = , , )であると考えられる。

主生成ガスは N O であり,これは式⑸の熱分解反応に 由来する。MMAN(図 (b))では, / = , , , のガスの生成が反応開始直後に確認された。これは MMAN がメチルアミン( / = , , )と硝酸に解 離したためであると考えられる。高温側の主な生成ガス / = , , , , , , , , , ,

, であり,メチルアミンに由来する / = の割 合が減少していた。既往の研究で示される MMAN の熱 分解生成ガス のうち,H O( / = , ),N ( /

= ),CO ( / = , ),N O( / = , , ),

(5)

HCONH ( / = , , , ),CH OH( / = ,

, ),NO ( / = , ),HCN( / = , ) がメチルアミンと硝酸の間の反応により生成したことが 示唆された。 / = , はメチルアミンのニトロソ化 による生成物であると推定される[式⑹]。

H CNH !"+HNO−H O H NHNO !" H CN=NOH メチルジアゾヒドロキシドは酸性条件では非常に不安定 であり,直ちに分解する [式⑺]。

H CN=NOH !"−H O+H H CN≡N !" CH+ N

ADN/MMAN(図 (c))においては,上記で観測され た生成ガスの多くが観測された。混合物の状 態 で も ADN,MMAN それぞれの熱分解が進行することがわ かった。一方で,メチルアミン( / = )は生成して おらず,ADN との反応で消費されたことが考えられ る。また,新たな生成ガスとして, / = , , , が観測されるようになった。 / = はニトロメチル アミン,硝酸メチルに由来すると考えられる。ニトロメ チルアミンはメチルアミンのニトロ化によって生成する

[式⑻]。

H CNH + NO !" H CNHNO NOは硝酸の分解の過程で生じるとされ,酸性条件で生 成が促進される 。ニトロメチルアミンは酸性条件でさ らに分解する

H CNHNO + H+ !" CH+ N O + H O 硝酸メチルは式⑺や式⑼の反応で生じる CHと ADN の 分解で生じる NOが反応することによって生じたと考 えられる。ここで,MMAN 単体の分解で多く見られた / = の割合が顕著に減少した。ADN の分解時に生 じる HDN や硝酸といった酸性物質により,式⑹や⑺の 反応が促進されたと推定される。また,MMAN 単体で は 見 ら れ な か っ た / = , の 生 成 が 顕 著 に な っ た。 / = は メ チ ル ホ ル ム ア ミ ド( / = , ,

), / = は ,,‐トリアジン( / = , , ,

)の生成を示しており,メチルホルムアミドは式⑺や 式⑼の反応で生じる CHと MMAN の分解で生じるホ ルムアミドとの反応, ,,‐トリアジンは HCN の 量 化により生成したと考えられる。

DMAN(図 (d))では ‐ニトロソジメチルアミン

( / = , , , )が主な生成ガスとして観測さ れた。分解初期のジメチルアミンの生成はほとんど見ら れなかった。したがって,解離によって生じたジメチル アミンが硝酸によってニトロソ化したことが示唆され た。第二級の ‐ニトロソアミンは比較的安定である ことから,本実験系では生成後分解せずに気化すること

がわかった。 , ‐ジメチルホルムアミド( / = ,

, )の生成も見られ,DMAN の分解経路は MMAN と類似していることが示された。ADN/DMAN(図

(e))で は,ADN,DMAN 単 体 と 同 様 に N O と ‐ニ ト ロ ソ ジ メ チ ル ア ミ ン の 生 成 が 観 測 さ れ た。ADN/

DMAN においてもそれぞれ単体の分解が進行している ことがわかった。一方で, / = の生成が新たに観測 された。これは ‐ニトロジメチルアミンと推定され,

ADN の解離および分解生成物がニトロ化を促進したこ とが示唆された。TMAN(図 (f))では解離により生 じるトリメチルアミン( / = , )および ‐ニト ロソジメチルアミンが観測された。ADN/TMAN(図

(g))では, ‐ニトロソジメチルアミンは観測された が,トリメチルアミンの生成はほとんど観測されなかっ た。発生ガス中のニトロソアミンの生成割合が ADN/

MMAN や ADN/DMAN と比べて高く,DSC において 発熱量が最も高かったことから,TMAN が ADN と特 に高い反応性を有していることがわかった。

以上の結果より推定された,ADN/アミン硝酸の凝縮 相反応機構を図 に示す。混合物においても ADN とア ミン硝酸塩それぞれの熱分解反応が進行する。ADN の 分解の中で生じる HDN や硝酸といった強酸により,ア ミン硝酸塩の解離により生じたアミンのニトロ化,ニト ロソ化が促進される。第一級アミンより生じるニトロア ミン,ニトロソアミンは不安定であり,カルボカチオン とガスに分解する。第三級アミンの場合は,ADN との 反応で第二級のジメチルニトロソアミンを生じる。

.まとめ

ADN 系 EILs は溶媒を含まない高エネルギー液体で あり,今後の超小型衛星の利用拡大に向け,ヒドラジン に代わる新規推進剤として期待される。一方で,高い安 定性と燃焼温度のために新規点火方式を確立することが 喫緊の課題である。本研究では,新規点火方式として,

非接触でのエネルギー入射が可能なレーザーを用いた点 火に着目し,CW レーザーを用いた AMU 液滴の点火試 験を実施したところ,凝縮相反応の後に生成ガスが発火 する様子が観測され,レーザー点火を達成することがで きた。また,凝縮相における ADN とアミン硝酸塩の凝 縮相反応の発熱量の高さが着火性に寄与すること,

MMAN,DMAN と比較して分子量の大きい TMAN,

MEAN,CyAN が ADN との反応性が大きいことがわ かった。熱挙動−生成ガス同時分析により,凝縮相では ADN,アミン硝酸塩それぞれの分解が進行し,ADN の 分解時に生じる強酸性物質(HDN や HNO )がアミン 硝酸塩の解離で生じるアミンのニトロ化,ニトロソ化を 促進することが示された。

本研究により,新規点火方式であるレーザー点火の実 現可能性を示したとともに,その着火性の高さに寄与す

(6)

150oC

20 40 60 80

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

150oC

60 62 64 66 68 70

0.000 0.002 0.004 0.006 0.008 0.010

Relative intensity/-

m/z 180oC 210oC

(a)

Relative intensity/-

m/z

180oC 210oC

20 40 60 80

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

Relative intensity/-

m/z

170oC (b)

250oC

150oC

20 40 60 80

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 (c)

Relative intensity/-

m/z

190oC 225oC

20 40 60 80

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 (d)

Relative intensity/-

m/z

160oC 195oC

160oC

20 40 60 80

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

Relative intensity/-

m/z

195oC (e)

215oC

(f) 130oC

20 40 60 80

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

Relative intensity/-

m/z

140oC 160oC

(g) 150oC

20 40 60 80

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

Relative intensity/-

m/z

180oC 185oC

昇温時の生成ガスのマススペクトル

(a)ADN,(b)MMAN,(c)ADN/MMAN,(d)DMAN,

(e)ADN/DMAN,(f)TMAN,(g)ADN/TMAN

(7)

NH4N(NO2)2

NH4+ + [NO2ʀNNO2-]

NH4+NO3-+ N2O

HN(NO2)2 + NH3

HNO3 + N2O NH4+ + N(NO2)2-

RNR’H2NO3

RNR’H2+ + NO3- RNR’H + HNO3

RNR’H2+N(NO2)2-+ HNO3 RNR’NO2

R++ N2O + H2O

RNR’NO RN2

R++ N2

RNR’H2+NO3-+ N2O

N2+ NO2+ H2O + N2O

H+

-OH-

RNO3

HCN

(HCN)3 HCORNR’

る凝縮相反応のメカニズムについて把握することができ た。今後は各点火方式の着火条件,パラメータの定量化 を進めるとともに,試験用小型スラスタを設計・試作す る。

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(8)

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図 AMU ,AMU ,AM の凝縮相の温度履歴と反応の様子
図 本研究により推定された ADN/アミン硝酸塩の反応機構

参照

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