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Title 中国語ブレンド型学習の実践と混合研究法による評価 : 遠隔交流が創る学びの経験を学習者視点で解釈する
[論文内容及び審査の要旨]
Author(s) 杉江, 聡子
Citation 北海道大学. 博士(国際広報メディア) 甲第12447号
Issue Date 2016-09-26
Doc URL http://hdl.handle.net/2115/63371
Rights(URL) http://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/2.1/jp/
Type theses (doctoral - abstract and summary of review)
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File Information Satoko̲Sugie̲review.pdf (審査の要旨)
Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP
学位論文審査の要旨
博士の専攻分野の名称:博士(国際広報メディア) 氏名:杉江 聡子
審査委員
主査 准教授 田邉 鉄 副査 教授 河合 靖 副査 教授 長野 督
学位論文題名
中国語ブレンド型学習の実践と混合研究法による評価
―遠隔交流が創る学びの経験を学習者視点で解釈する―
本論文は,日本の高等学校における第二外国語としての中国語教育において,ネ イティブスピーカーとの遠隔交流を含む混合学習を導入し,その効果を学習者の動 機づけと学習効果の両面から検証するものである。研究の背景として,日中の人的 交流が依然増加していることと,教育における ICT 活用の機運が高まっていること を挙げており,妥当な現状認識である。また「高校で」「第二外国語として」行う 意味について,「知識蓄積型」授業だけでは興味をつなぎ留めるのが難しいこと,
限られた教育リソースの中でも,実用的な会話スキルを身につけさせられる,とい う意義を説明している。
第2章では,言語教育における,遠隔学習,ICT 活用,ブレンド型学習に関する 先行研究を,学会誌を中心に広く収集し,紹介している。取り上げた研究にやや偏 りがあり,特に 1990 年代の西日本を中心とした実践にあまり触れていない瑕疵は あるが,1990 年代以降日本で試みられた中国語遠隔授業実践が,主として大学生を 対象に行われ,継続反復的なものよりは「イベント」的なものが多かった,という 傾向を正確に捉えている。
第3章では実践と研究の理論的枠組の説明として,インストラクショナルデザイ ン(ID)を取り上げている。ID は,学習者とのインタラクションを通して,教育や 学習の細分化された単位である「授業」をデザインする手法である。従来の理論で は個々の授業の改善に効果があっても,授業間の連携や,学習期間を通しての学習 者や学習環境の変化についてはあまり考慮されていなかった。本論文では,対象が 成長途上にある高校生であることも踏まえ,学習者の経験や成果を反映しやすい上 昇スパイラル型のモデルを提案している。これは日本の学校教育に無理なく ID を
導入する仕組であり,ID の応用可能性を広げる上で極めて重要な示唆であると言え,
本論文の優れた独創である。
第 4 章は具体的な実践の準備について取り扱っている。同様の交流を個人レベル で企画する教師には,実用的な情報提供にもなっている。日本語と中国語の両方で 交流できる相手を探す,という条件には,異論もあろうが,双方の言語運用能力に 差があるような場合には,コミュニケーション不全を防ぐ上で効果があった,と見 る。
第
5
章は実践についての詳細な記録である。授業のスクリプトを中心に,学習者 の様子とその変化を克明に記述している。やや冗長に過ぎるようにも思われるが,スクリプトからの変化の読み取りは適切であり,定型化していない。実践記録に不 可欠の,学習者観が事前に提示されていないのは,先入観なしに「変化」を中心に 記述していった結果であり,著者の深慮遠謀がうかがえる。ただ,表情や態度の変 化を見るために添えられた写真はスナップ写真の域を出ておらず,その範囲で学習 者の変化が反映されてはいるが,文字情報を補強する資料としては,もう少し効果 的な撮り方・見せ方があったのではないか。
第6章ではデータ分析を行っている。量的分析と質的分析を組み合わせた,トラ イアンギュレーションの研究デザインになっている。量的分析ではノンパラメトリ ックな手法を採用することで,母数の少なさをカバーした。質的分析では,第
6
章 の詳細な記録をもとに,学習者の意識・意志の変化をあとづけ,それをCode
分析 ツールで可視化した。特に,反中・反日感情が連日話題になるような社会的状況と いうマクロな視点と,個人の交流経験というミクロな視点との「あわい」で行われ る実践の中で,後者により力点を置く,という価値観が醸成されたとの指摘は,「社会状況の変化による中国語の人気の上下」という単純な文脈で語る従来の言説か ら,一歩も二歩も踏み込み,学習者の実相に迫っている点で高く評価される。
第
7
章では,ここまでの議論を総括し,遠隔交流が学習者の情意に好影響を与え ること,またそれが遠隔交流の準備として設定された知識や言語運用技術の養成に おける成果にも繋がっていることから,ブレンデッドラーニングは有効である,と の結論を引き出している。これは,学習者の情意面のみ・交流の社会的意義のみに 着目したイベント的な交流実践では決して得られない結論であり,著者の「学校カ リキュラムに沿ったID
」という枠組の確かさを示している。第
8
章では,ここまでの結果を踏まえて本研究が外国語教育はもとより隣接領域 への一般化が可能な研究として設計された結果,サンプル数が少ないという欠点を 補って余りある広がりを持ったことを示した。一方,評価指標の最適化,学習者ニ ーズを授業に取り込む時の恣意性といった課題も残った。以上、本論文は優れた授業実践をもとに,中国語教育論に対しても、