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論 文 内 容 の 要 旨

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Academic year: 2021

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(1)

かつ

(199037日)

氏 名(生年月日)

学 位 の 種 類 博 士( 薬 学 学 位 記 番 号

170

学 位 授 与 の 日 付

2018

3

17

学 位 授 与 の 要 件 学位規則第

4

条第

1

項該当

学 位 論 文 題 目

末期腎不全患者血清由来成分による有機アニオン輸送ポリペプチド 1B1 を介したイリノテカン活性代謝物

SN-38

の肝取り込み抑制作用に関する 研究

論 文 審 査 委 員 (主査) 教 授 西 口 工 司

(副査) 教 授 中 田 徹 男

(副査) 教 授 山 本 昌

論 文 内 容 の 要 旨

序章

末期腎不全患者では腎機能が著しく低下しており、腎機能に応じた既存の理論を用いても腎排泄型 薬物の投与設計は困難を極める場合がある。それゆえに、末期腎不全患者では、肝臓への薬物取り込 みや肝代謝がその消失に大きく寄与する肝消失型薬物の使用が重要視されてきた。抗がん薬であるイ リノテカンも肝消失型薬物の一つであり、肝臓のカルボキシルエステラーゼによって

SN-38

に代謝さ れ活性体となる。SN-38は、全身循環に移行した後、有機アニオン輸送ポリペプチド (OATP) 1B1 介して肝細胞に取り込まれ、グルクロン酸抱合化を受けて投与量の

90%以上が胆汁中に排泄される。

しかしながら、末期腎不全患者では、SN-38の消失半減期の延長や最高血中濃度の増大が報告されて いる。本論文では、末期腎不全患者における

SN-38

の消失遅延機序の解明を目的として、OATP1B1

による

SN-38

の取り込みに及ぼす末期腎不全患者血清の影響について検討し、さらに、血清中の

OATP1B1

阻害成分の特定を試みた。

1

OATP1B1

を介した

SN-38

の取り込みに及ぼす末期腎不全患者血清の影響

末期腎不全患者の血液成分が

OATP1B1

機能に及ぼす影響を調べるために、仁真会白鷺病院におい て維持血液透析を受けている末期腎不全患者

400

名以上の残余血清を収集したプール血清を用いた。

OATP1B1

を介した

SN-38

の細胞内取り込み速度は、ヒト胎児腎細胞に

OATP1B1

を安定発現させた細 胞を用いて評価した。まず、メタノールにて除タンパク処理した血清を窒素気流下で乾固し、得られ た残渣を反応溶液で任意の濃度となるように溶解することにより、血清成分の影響を評価した。その 結果、健常者及び末期腎不全患者血清はいずれも濃度依存的に

SN-38

の取り込み速度を低下させたこ とから、血清中に

OATP1B1

機能を阻害する成分が存在することが明らかとなった。血液成分中には タンパク結合率が高いものが存在する。そこで、除タンパク処理後の血清残渣にアルブミンを添加す ることで、タンパク結合も考慮した条件下

(アルブミン含有血清 )

において血清成分の影響を評価し た。この実験条件下では基質である

SN-38

も強くタンパク結合し、その取り込みが制限されるため、

本検討では

SN-38

のタンパク非結合型濃度を限外ろ過法

(分画分子量 3000)

により求め、細胞内取り 込み速度をタンパク非結合型SN-38濃度で除した値である

SN-38

の取り込みクリアランスとして評価

(2)

した。その結果、アルブミン含有健常者血清及び末期腎不全患者血清は、血清非存在時と比較して

SN-38

の取り込みクリアランスを顕著に低下させた。また、アルブミン含有末期腎不全患者血清は、

アルブミン含有健常者血清と比較して

SN-38

の取り込みクリアランスをより顕著に低下させた。この 両アルブミン血清存在時の

OATP1B1

を介した

SN-38

の取り込みのミカエリス定数はほぼ同等であっ たのに対して、最大取り込み速度はアルブミン含有末期腎不全患者血清存在時において顕著に低かっ た。以上のことから、末期腎不全患者血清中には

OATP1B1

機能を非競合的に低下させる成分が蓄積 していると考えられた。

2

章 血清中の内因性成分および尿毒症物質が

OATP1B1

機能に及ぼす影響

1

章では、末期腎不全患者血清中に

OATP1B1

阻害作用を有する成分が蓄積していること、この 成分の少なくとも一部はアルブミンに高い結合能を有していることを示した。一般的に、末期腎不全 患者の体内には、尿毒症症状を惹起する尿毒症物質が蓄積している。特に、タンパク結合率の高い尿 毒症物質は、血液透析でも除去しにくく血液中に高濃度で蓄積しており、

OATP1B1

阻害に関与してい る可能性が考えられる。そこで本章では、代表的なタンパク結合性の尿毒症物質である

3-カルボキシ

-4-メチル-5-プロピル-2-フランプロパン酸、馬尿酸、インドール酢酸及び 3-インドキシル硫酸が、

OATP1B1

を介した

SN-38

の取り込みに及ぼす影響について評価した。

4

種類全ての尿毒症物質の単独

処置は、いずれも濃度依存的に

OATP1B1

を介した

SN-38

の取り込みを阻害したものの、末期腎不全 患者血清中のタンパク非結合型濃度では、その阻害作用は軽微であった。また、末期腎不全患者血清 中の総濃度と同程度の尿毒症物質

4

種類を添加したアルブミン溶液においても、

SN-38

の取り込みク リアランスは変化しなかった。以上のことから、第

1

章において末期腎不全患者血清で認められた

OATP1B1

機能低下は、タンパク結合性の尿毒症物質のみでは説明できないと考えられた。そこで、健

常者血清中にも存在する他の内因性成分と尿毒症物質との協働的な相互作用の可能性に着目した。そ の結果、4 種類の尿毒症物質を添加したアルブミン含有健常者血清では、健常者血清と比較して、

OATP1B1

を介した

SN-38

の取り込みクリアランスを有意に低下させ、その阻害作用は末期腎不全患

者血清と同程度であった。近年、薬物の能動輸送にアルブミンが影響することが報告されていること から、本相互作用においてもアルブミン存在下において、

OATP1B1

への影響を考えることが必要であ る。そこで、尿毒症物質

4

種類を添加した健常者血清を、限外ろ過法 (分画分子量

3,000)

にて分離し、

ろ液をメタノールで除タンパク処理することにより得られた残渣の影響を評価したところ、末期腎不 全患者血清による

OATP1B1

機能阻害を再現できた。以上のことから、末期腎不全患者血清による

OATP1B1

を介した

SN-38

の取り込み阻害は、末期腎不全患者に蓄積するタンパク結合性の尿毒症物

質と健常者血清にも存在する成分とが協働して生じている可能性が示唆された。

結論

本研究は、プールした末期腎不全患者血清とアルブミンを用いることにより、ヒトにおける状況を

in vitro

において再現することで、末期腎不全患者血清中に蓄積するタンパク結合性の尿毒症物質と内

因性の血清成分とが協働的な

OATP1B1

阻害作用を示すことを明らかにした。したがって、末期腎不 全患者では

OATP1B1

を介した

SN-38

の肝取込み過程の低下が、

SN-38

の消失遅延に寄与している可 能性を示唆するものである。

OATP1B1

はアニオン性薬物の肝細胞内取り込みに関わる重要な役割を担 うことから、本結果はイリノテカンに限らず、末期腎不全患者における肝消失型薬物の薬物動態変動 が生じる可能性を示唆しており、末期腎不全患者における肝消失型薬物の適正使用に寄与するものと 考えられる。

なお、本研究は、仁真会白鷺病院及び京都薬科大学倫理委員会の承認を得た上で行った。

(3)

審 査 の 結 果 の 要 旨

腎機能が著しく低下している末期腎不全患者では、腎排泄型薬物の投与設計は困難を極める場合が あり、肝消失型薬物の使用が重要視されてきた。イリノテカンは、その活性代謝物である

SN-38

に代 謝された後、有機アニオン輸送ポリペプチド

(OATP) 1B1

を介して肝細胞に取り込まれ、グルクロン 酸抱合化を受け、ほとんどが胆汁中に排泄される代表的な肝消失型薬物である。しかしながら、末期 腎不全患者では、SN-38の消失半減期が延長することや最高血中濃度が増大することについて報告さ れている。そこで、本論文では、末期腎不全患者における

SN-38

消失遅延機序の解明を目的として、

OATP1B1

を介した

SN-38

の取り込みに及ぼす末期腎不全患者血清の影響について検討した。 なお、

本研究は仁真会白鷺病院及び京都薬科大学倫理委員会の承認を得て実施した。

1

章では、OATP1B1を介した

SN-38

の取り込みに及ぼす末期腎不全患者血清の影響について、

末期腎不全患者の血液成分がOATP1B1機能に及ぼす影響を

OATP1B1を安定発現させた細胞を用いて

評価した。その結果、末期腎不全患者血清中には

OATP1B1

機能を非競合的に低下させる成分が蓄積 していること、これら成分の少なくとも一部はアルブミンに高い結合能を有していることを見出した。

第2章では、血清中の内因性成分および尿毒症物質が

OATP1B1

機能に及ぼす影響について検討した。

その結果、末期腎不全患者血清とアルブミンを用いてヒトにおける状況を

in vitro

において再現する ことにより、末期腎不全患者血清中に蓄積するタンパク結合性の尿毒症物質と内因性の血清成分が

OATP1B1

機能を協働的に阻害していることを明らかにした。

本研究から得られた成果は、イリノテカンのみならず、末期腎不全患者における肝消失型薬物の薬 物動態変動が生じる可能性を示唆しており、末期腎不全患者に対して肝消失型薬物を適正に使用する ための有益な知見になるものと考えられる。

学位論文とその基礎となる報文の内容を審査した結果、本論文は博士(薬学)の学位論文としての 価値を有するものと判断する。

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