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Academic year: 2021

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(1)

    耐久財独占と利潤税・脱税の中立性

      吉岡守行

 1.はじめに

 独占企業は,利潤に一定率:tで課税がなされているとき,収入を過少 申告するかあるいは費用を過大申告するかなどにより利潤税負担を軽減し ようとする場合があることが考えられる。これらの脱税が利潤最大化によ る生産量決定に影響をおよぼすかどうかについて,これまでには影響はな いすなわち中立的であるという見解が支配的であった1)。

 ところが最近Lee (1998)が次の命題をまとめた。

 Lee (1998)の命題  ケース 1)

   脱税が失敗する確率と失敗した場合の罰金率が外生的に与えられる   すなわち一定であるときは,脱税は生産量の決定について中立的で   ある。

 ケース 2)

   収入の過少申告額あるいは費用の過大申告額とそれらの現実値との   乖離額にのみ脱税が失敗する確立と失敗した場合の罰金率が依存す   るときは,脱税は産出量の決定に影響しないすなわち中立的である。

 ケース 3)

   脱税が失敗する確率と失敗した場合の罰金率が独占企業による生産   量の関数であるφと現実値と過大あるいは過少申告額との差額:c7‑

−29−

(2)

  との和で表わされる申告額に依存するとき,脱税は生産量の決定に   影響力をもつすなわち中立的ではない。

 本論文は耐久財独占レンタル・モデルを前提として脱税問題を検討した 場合,上記Lee (1998)の命題がどのように修正されるかを検討しようと するものである。

 2.モ デ ル I

 耐久財独占レンタル・モデルにおける脱税の問題を分析する。

 最も単純な耐久財モデルは,それぞれの各期において生産物が生産され る2期間のモデルである。しかし第1期の生産物:xIのうち∠UI(0,1)の 部分が第2期に持ちこされる。各期におけるレンタル(サービス)価格:

qt (/ = 1,2)は,その期間の既存の生産量金ストックに依存する。第1期 においてはレンタル価格:q1は第1期の生産量:XIにのみ依存するが,

第2期のレンタル価格:92はストック:∠WI十x2に依存する。すなわち 第2期の生産量ストックは,第2期の生産量と第1期の生産量から持ちこ された部分からなる。

 耐久財独占企業は,ら(f=1,2)の率で生産費:G収)ポ= 1,2)を過 大申告することにより利潤税負担の一部あるいはすべてを回避することが できる。脱税が露見する確率:ρと脱税露見により課せられた罰金率 θ(>1)は各期の生産費の過大申告額の合計額(δICI(xl)十S2C2(X2))と

ともに増加するとする。すなわちμ=ρ[δICI(x1)十S2C2(X2)]およ

びθ=θ[δICI(xl)十b‑yC‑i(z2)]で卵/∂(δICI)>0,卵/∂(So Co)>0,

∂θ/∂(δICI)>0,∂θ/∂(らC2)>Oである。

 ここでの耐久財独占企業の問題は,次式で表わされる期待効用を最大に

するように第1期と第2期のそれぞれの生産量水準:Xi , Xoと費用の過大 申告率:δ1,らを選ぶことである。

      −30−

(3)

 ここで7r1は脱税が露見しない場合の利潤であり,7r2は脱税が露見した 場合の利潤である。

 それぞれ次のように表わされる。

ここでβ∈(0,1)は第2期の利潤の割引率である。

3.分 析

期待効用の内部最大化のための1階の条件は次のごとくである。

−31−

(4)

−32−

(5)

 ここで 栢,(j=1,2)=第i期の限界収入,C,り=1,2)=第丿期 の限界費用である。

 本節の分析結果は次のようにまとめられる。

 ケース 1)脱税が失敗する確率:ρと失敗した場合の罰金率:θが外   生的に与えられ一定であるとき。

  イ)第1期ではこのケースでは戸'=θ'=Oであるが,(4)パ6)より    栢一心≠Oすなわち脱税は産出量決定に影響をおよぼすつまり    中立的ではないことになる。というのは(4)

   の第2項の後半の式

   (1−z)β(A・g2+9j(∠UI十x2)Aがあるから,(4)に(6)を考慮しても    第1期においては栢一回=oが成立しないからである。

  ロ)第2期に関しては(5)に(6)を加味すると柘一心をうる。つまり    脱税は産出量決定に中立的となる。

 ケース 2) p =p[δICI(x1)十らC2(x2)]お よ びθ=θ[δICI(xl)    十S2C2(X2)]のとき。

  ィ)77=θ=一定の場合(ケース 1))と同様に第1期では(4)パ6)    から脱税は産出量決定に影響するすなわち中立的ではない。(栢−

   G≠o)。

  ロ)第2期においては(5),(6)より,柘一応=oを求めることができ    る。すなわち脱税は産出量の決定に関して中立的である。

 4.モ デ ル Ⅱ

 ここでの脱税を考慮する耐久財独占レンタル・モデルでは,脱税が失敗 する確率:ρおよび脱税が露見したときの罰金率:θは数式で表わすと次 のようである。

   ρ=(φ収)士a),{i = 1,2),^ =θ(φ隔)士0,り= 1,2)

      −33−

(6)

 φ:現実の費用額あるいは現実の収入額であり,生産量の関数でもある。

 a : 費用あるいは収入についての,企業の申告額と現実額の差額。

 費用の過剰申告の場合は,φ隔)士ら=G(x,)十ら,(j=1,2),とな り,収入を過少申告したときは,φ脈)士(Ji =/?, (x,)‑a,., a = 1,2)と 表わされる。

 耐久財独占企業は,次式の期待効用をx1,x2,cy1,らに関して最大とな るように行動する。

5。分 析

(8)の期待効用を最大ならしめる一階の条件は次のようである。

−34−

(7)

次に本節の分析成果を整理してみよう。

イ)第1期については, (11)より栢一心≠Oとなり脱税は産出量の  決定に中立的ではない。

ロ)第2期においては, (12)からRレC1=Oをうることができ,脱  税は産出量決定に中立的となる。

      −35−

(8)

  イ)第1期では,(l1)を参照すると,栢一回=oは成立せず,脱税は    産出量決定に影響することになる。

  ロ)第2期に関しては,聯によると柘一心=Oとなる。すなわち    脱税は産出量決定に中立的である。

 ケース 3) p=p{φ士憾θ=θ(φ士○の場合,P ≠0, 9'≠0づ    片o,φ1≠o,φa≠o,θ;片oである。

    このさいは,卸, (12)を検討すると第1期,第2期ともそれぞれ    硲一司≠0,柘−C≠をうることができ,脱税は産出量決定に

   影響をおよぼす。すなわち中立的ではないことになる。

 6.む す び

 これまでえたわれわれの分析結果をLee (1998)の命題と比較しながら まとめて,むすびとしたい。ただし脱税が生産量の決定に中立的である(あ るいは中立的ではない)ということを以下ここでは省略してただ単に中立的 である(あるいは中立的ではない)と記すことにする。

  エ ρ:脱税が失敗する確率とθ:脱税が失敗した場合の罰金串が外    生的に与えられ一定であるに相当するつぎのケースについての中    立性の判定は以下のごとくである。

   (1) Lee (1998)の命題のケース 1):中立的    (2)モデル I のケース 1)

    イ) 第1期 中立的でない。

    ロ) 第2期 中立的

   (3)モデル Ⅱ のケース 1)

    イ) 第1期 中立的でない。

    口) 第2期 中立的

       −36−

(9)

耐久財独占と利潤税・脱税の中立性

  H pおよびθが(7のみに依存する場合    (1)Lee(1998)の命題のケース 2)中立的    (2)モデル Ⅱ のケース 2)

    イ) 第1期 中立的でない。

    ロ) 第2期 中立的

  m p=ρ[δ1c1(x1)十らc2(x2)]および     θ=θ[δ1CI(xl)十<52C2(;c2)]のとき      モデル I のケース 2)

     イ) 第1期 中立的でない。

     ロ) 第2期 中立的

  IV p =p(φ士0,θ=θ(φ士○という状況のもとでは      モデル Ⅱ のケース 3)

     刊 第1期 中立的でない。

     ロ) 第2期 中立的でない。

 以上のまとめのなかで

  a)Iの(2)のモデルIのケース1)のイ)   b)Iの(3)のモデルⅡのケースI)の引   c)Ⅱの(2)のモデルⅡのケース2)のイ)   d)ⅢのモデルIのケース2)のイ)

等のLee (1998)の命題とは異なる中立的ではないケースを確認できたの は本橋での新しい収穫である。

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― 37 ―

(10)

耐久財独占と利潤税・脱税の中立性

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(本橋は「成城大学教員特別研究助成」による研究成果の一部である。)

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参照

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