生活保護に関する若干の考察 (2)
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(2) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 生活保護に関する若干の考察 (2). 8 0 1. ‑57ー. ここではまず,若干の統計学的注意を記しておこう。実態生活費といってもその代表値 として,平均値を用いるか,あるいは中位数・並数等その他の値を使うかで大きな差を生 じうる。あの項目の支出額分布が,対数正規的分布の場合,中位数・並数は算術平均値を 下回る。アメリカ合衆国 では,生活費算定に中位数を使用した例がある。次に,理論生活 l. 費といっても,その中身は多種の実態調査の平均値に依存しているという. ζ とである。す. なわち,栄養調査による消費カロリ ーの平均値,マークット・パスク y ト構成に用いる家 l. 計調査の平均値,タイム・ラグを除去するための物価指数等である。. (2) 最低生活費の算定 最低生活費の算定において,基本的なものは,マークット・パスケットの決定で忘る。 これは個人あるいは世帯が 1か月に購入消費する財の諸震を表わす。その時,パスケット が飲食物だけの方法と,飲食物以外全ての費自にわたってパスクットを構成する方法とが ある。前者はそのパスケットに各財の市場価格を乗じてパスクット費用を求めた後,エシ グノレ係数で割ってやることにより生活費を計算するものでマノレティプノレ方式くあるいはエ シグ jレ方式)と言われる。後者は会資自についてパスクット費用を計算するので総物量方 式と呼ばれる。もちろん,エシグノレ係数は家計調査による。 問題のパスケ y ト構成であるが,飲食物については必要栄養素,必要カロリーを基礎と する。これらの必要量を最小限満たすように現実の平均消費パスケット(とれは家計調査 等による実態平均〉を参照しつつ,しかも市場価格が容易に得られるものを抽出してパス ケットを組み立てる訳である。もう少し手の込んだものに,実態調査により所得に対する 支出の弾力性や回帰式の切片を求めて,その弾力性の転換点を必要支出額としたり,切片 が正の品目を必需品としたりする方式もある。. ζ. の一変形として,労働科学研究所が考案. したプラト 一方式がある。これは,被服費や住居費の品目において,その支出額がある水 l. 準に達すると,プラトー化することを観測し,その水準をもっ℃必要額と考えるものであ る 。 いかなる算定法におい℃も,最低とか必要とかの概念規定が避けられないが,ここに怒 意的要索の入り込む余地が大いにある。もちろん,最低は動物的生存の水準ではなく人間 的生活のそれではある。そこで,体裁とか健康維持の水準,文化的最低生活水準とか穏々 プラス αを加味するための家計構造が提唱されてきた。会て,経済理論で害jり切れるもの でなく個人のむしろ政治的判断が必要である。最低生活の算定に,歴史的・社会的要素が 影響するのは当然であるうし,その煮詰められた点として政治的要索が関与してくるの.
(3) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑58‑. 第5 6 巻 第 4号. 8 0 2. は,むしろ概念の「明確化」にとって有意義でもあろう。最低生活費の決定は,あらゆる 階級・階層の対立を内包しているのだから。古くはエシグル,ラクシトリーから,今は各 組合・団体の生活費算定には,ある種の変革の意志が込められている。. (3) 標準生計費と家計調査生計費. .3記しておく。まず,標 ここでしばらく脱線して,標題の生計費に関する注意事項を 2 準生計費では人事院標準生計費を取り上げてみると,これはマノレティプノレ方式に基づくも のである。独身男子のもの,世帯人員別のものがあるが,食料パスケットは一日必要カロ リ一等に依存している。種々の問題点の中で,気になるのは年令条件を考慮していない 点,有効数字が均一でない,という技術的所である。例えば,食べられる割合「可食露景 比」では. 0 . 8というー桁有効数字でありながら,その品目を含む支出額は 1 5, 3 1 2円とい うように細かい ω もっとも,標準生計費が俸給額引上げ勧告のー参考資料として,その変 化率のみが重要な指標であるのなら,上の難点は大したものではなくなる。その代わり, 行革ではないが,標準生計費算定に余り大きな予算を使うことは避けなければならない。 家計調査の方は,総理府統計局のものについて注意を述べておくと,その結果は全て算 術平均であり,調査が世帯単位であって,しかも農家家計調査は農林省の別個の調査で行 われる,ということである。世帯人員別,地方別,収入階級別等の結果はあるが,世帯属 性の詳しい分類別表はない。これらは特別な集討を要する訳である。. (4) 保護基準との関係 戦時中の最低生活費の算定は,国民がイモを食べてどこまで耐乏して行けるか,という ように,いかに低い賃金・カロリーで軍需生産・食事量生産に労働よの支障が無いかを損l t る ためであった。それは賃金カットの道具であれ 憧救制度,救貧制度を劣悪化するための 口実であった。戦後になって初めし総物量方式で必要額を算定し,保護水準決定の参考. 9 4 6 年1 0 月に生活保護 にしたのであれ極貧を引き上げるためのパーとなった。これには1 法を成立させた占領政策が関与している。. 1 9 6 0 年には算定方式が, マノレティプノレ方式とされたが依然,最低生活費算定は保護基準 9 6 5 年からは前年の社会福祉審議会決定の 設定に重要な役割を果たしていた。ところが. 1 通り, マノレティプル方式と共に貧困層の消費水準との格差を是正していく方式を同時に考 慮することになった。この時点で,最低生活費算定は保護水準決定にはほとんど影響を持 たなくなった。低所得隠の消費額と増加率,前回の保護基準のみが重要資料であり,残り は所得倍増の中でどれだけプラス αするかであった。保護基準は最低生活費から離れて,.
(4) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 8 0 3. 生活保護に関する若干の考察 (2). ‑59ー. 熱い経済成長の中で少しづっ膨張した訳である。 ところが最近,保護水準が一般世帯消費額の 60%に達した頃になって,再び最低生活費 が生活保護水準の抑制・切り下げの道具として用いられそうな気配が出てきた。戦前の貧 民堕民感の復活.r 財政難」を理由とする社会保障費のカットの中で,生活保護制度もまた 厳しいもう一個の転機を迎えようとしている。 一方,最低生活費の算定は裁判所において重要化し℃いる。特に扶養料の決定にあたっ ては,この算定が必須となっ ている。また,交通事故等の多発化に伴い,補償費の計算に l. 一般的「合理的」生活費算定法が求められていることも付言しておこう。(未完)。. 参考文献 (1) 労働科学研究所『最低生活費の研究 J1 9 4 2 年 。 (2) ←一一一一『最低生活費に関するー研究.n1 9 5 4 年 。 (3) 一一一一一一一「最低生活費算定の方法論について.n1 9 6 4 年 。 (4) 野村俊夫『生計費の研究』労働文化社, 1 9 4 9 年 。 (5) 新保赫子『経済状況調査における生活費の問題』家庭裁判所調査官研修所研修論文 選集 4 .1 9 6 1 年 。. (6) 小沼正『貧困』東京大学出版会, 1 9 7 4 年 。. (7) 中鉢正美・徳山京『最低生活費の算定」中央労働学園。 (8) 深谷松男「扶養料額の算定方式J (山畠・泉編『演習民法(親族・相続) J青林書房新 社 ) 。. (9) 国立国会図書館「社会保障の最低基準」調査資料6 4 ‑ 5,1 9 6 5 年 。. 1 f. ( 1 0 ) 厚生省「生活保護動態調査報告」。. ̲ ̲ r. 〕 一 一 生活保護資料J o 1 2 ) 総理府統計局「家計調査報告 J 。. ( 1 3 ) 一一一一一一一「全国消費実態調査報告」。 ( 1 4 ) 労働省「毎月勤労統計調査報告」。.
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