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質問紙法によるセルフ・コントロールの評価

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

質問紙法によるセルフ・コントロールの評価

著者 杉若 弘子

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 45

号 1

ページ 165‑176

発行年 1996‑11‑25

その他のタイトル The Questionnaires for Assessing Self‑Control Behaviors

URL http://hdl.handle.net/10105/1595

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奈良教育大学紀要 第45巻第1号(人文・社会)平成8年 Bull. Nara Univ. Educ, Vol.45, No. 1 (Cult.&Soc.) , 1996

質問紙法によるセルフ・コントロールの評価

杉 若 弘 子 (奈良教育大学心理学教室)

(平成8年4月30日受理)

セルフ・コントロールと評価

".日 セラピストの行う治療技法は、クライェントが行うセルフ・コントロール技法をマス ターさせる技法と考えるべきだろう(春木, 1986, p.44) 。心理療法、なかでも行動療法では、

セルフ・マネジメント・テクニックの通用が多く、行動のコントロールができるということは、

治療の終結であるとも考えられている。しかしながら、治療プログラム中のセルフ・コントロー ルの通用能力には、かなりの個人差が認められることも確かである(Bellack & Schwartz, 1976)c このような個人差の的確な評価は、治療技法選択のガイドラインを提供し、個々の事例 に最も適した治療計画を組み立てるのに役立っであろうo

セルフ・コントロールの個人差評価には、大きく分けて3つの方法がある。ひとっは、現実場 面での行動観察による方法である。観察対象となる場面と期間を限定した上で、標的行動の有無 を記録していく。最も具体的な、いわば生の行動を評価できる方法であるが、記録者の訓練や実 施に要する時間などコスト面に問題が残る。 2つめは、アナログ課題を用いた方法である。これ は、冷水刺激に耐えるコールドプレッサーテストのように、実際にセルフ・コントロールが要求 される課題を実施し、耐性時間などのパフォーマンスをもとにセルフ・コントロールを評価する 方法である。客観的なデータが得られる方法だが、観察されるセルフ・コントロールは単純で非 日常的なものであることが多い。 3つめが、質問紙法による評価である。日常場面で、どの程度 セルフ・コントロールが実行されているかを、あらかじめ用意した質問項目に基づいて評定させ る。質問紙法の最大の利点は、実施が容易で時間が節約できることにある。また、行動観察やア ナログ課題とは異なり、評価対象となる場面が限定されない。しかし、評価の基盤となる質問項 目の選定や信頼性と妥当性の確立には、入念な検討が必要である。

本稿では、このうち、質問紙法が有する簡便性とデータの公共性に注目し、これまでにどのよ うな質問票が開発されてきたかを概観した上で、批判を加え、今後の課題を論じる。本稿で取り 上げる質問票は、 Table lに示したとおりである。(J)

(1)本稿では、より包括的なセルフ・コントロールを評価するための質問票のみを取り上げた。そのた め、自己評価(self‑evaluation)や自己監視(self‑monitoring)といった特定のセルフ・コントロール する反応(self‑controlling response)、あるいは、うつやアルコール依存症など特定の症状と関連した

セルフ・コントロールの評価を目的とした質問票は取り上げていない。

川5

(3)

Table l セルフコントロールを評価する代表的な質問票とその特性(本文紹介順)

質問票の名称

Self‑Control Rating Scale

Teacher s

Self‑Control Rating Scale

Children s Perceived Self‑Control Scale

Child

Self‑Control Rating Scale

Self‑Control Schedule

Redressive‑Reformative Self‑Control Scale

開発者と発表年

Kendall & Wilcox

(1979)

・V・・!‑.',∴I I‑・.;ミA.・

i2S」

Humphrey (1982) 子ども

他者   33項目 (教師・両親) 7件法

他者 (教師)

Humphrey (1982) 子ども   自己

Rohrbeck, Azar, &

Wagner (1991) 子ども   自己

Rosenbaum (1980)成 人   自己

杉若(1995)    成 人   自己

1 (認知・行動的SC)

15項目 2 (認知的かつ自己完結的SC、

5件法   行動的かつ対人関係的SC)

9項目 3 (対人関係場面でのSC、

2件法   自己完結的SC、自己評価)

33項目 4件法

amfii l wm

20I削I G件,:<;

信頼性係数b)  妥当性検討の材料

α‑.98    行動観察、 MFFテスト、

r‑.84    行動変容プログラムなど

r‑.88‑.94 行動観察、適応度検査、

知能・学力検査

r‑.56‑.63    同  上

α‑.90 r‑.84

α‑,78‑.84 r‑.77

Self‑Control Rating Scale

Irrational Beliefs Test、

コールドプレッサ‑テスト、

眉9」J田

3 (改良型SC、調整型SC、

外的要因による行動の   α‑.84 ‑.96   準構造化面接

コントロール)

a) SCは、セルフ・コントロールの略であるo b) rの値は、再テスト法による相関係数を示す。

t e   n   u   r

(4)

質問紙法によるセルフ・コントロールの評価

子どものセルフ・コントロールの評価

167

Self‑Control Rating Scale

セルフ・コントロールを評価する質問票として最初に報告されたのは、子どもを対象に他者評 定の形式を採用したSelf‑Control Rating Scale (SCRS) (Kendall & Wilcox, 1979)である。

彼らは、子どもの問題行動に対する行動変容プログラムの有効性を強調した上で、その般化の程 度を効率的かつ簡便に評価する測度が必要であるとし、 SCRSを開発した。

SCRSにおいて、セルフ・コントロールは、衝動性の強弱に代表される認知的な側面と、遂行 もしくは抑制能力として観察される行動的な側面によって構成されると考えられている。全33 項目のうち10項目は、セルフ・コントロールが実行されている状態を記述した内容であり(例 :ものごとを最後までやり遂げますか?)、 13項目は衝動性の強さを記述した内容(例:他人の 持ち物を横取りしますか?)、残りの10項目は、セルフ・コントロールの強さと衝動性のそれを 比較する項目(例:友だちとの会話中に不適切な割り込みをしますか、それとも適切なタイミ ングがくるまで待ちますか?)で構成されている。各項目について、担任教師もしくは両親のい ずれかが7件法で評定し、合計得点を算出する。

標準化手続きの対象となったのは、小学校3‑6年生計110名であった Cronbachのα係数 は.98、 3‑4週間隔で実施した再テスト法による相関係数は.84であり、この結果は、 SCRS の内的整合性および信頼性を支持するものである。妥当性を検討するために実施された他のセル フ・コントロール測度(行動観察、 Matching Familiar Figures Test (MFFT)、 Porteusの迷 路課題、満足遅延課題)との比較では、満足遅延課題を除くすべての測度との間に有意な相関が 認められた(行動観察: r‑.28; MFFT: r‑.28;迷路 r‑.35 満足遅延: r‑‑.05)。

さらに、追試的研究によって、担任教師と両親の評定が有意な相関をもつこと(r ‑.66) (Kendall & Braswell, 1982)、認知行動的なセルフ・コントロ‑ル訓練プログラムによる行動の 変化を反映すること(Kendall & Wilcox, 1980; Kendall & Zupan, 1981)が示されている。

項目数の多さや項目内容の重なりなどの問題点も指摘されているが(Humphrey, 1982)、数 多くの関連研究で利用されており、子どものセルフ・コントロ‑ルを評価する代表的な質問票で ある。

Teacher's Self‑Control Rating ScaleとChildren's Perceived Self‑Control Scale

Teacher's Self‑Control Rating Scale (TSCRS)とChildren's Perceived Self‑Control Scale (CPSCS)は、ともにHumphrey (1982)が作成した質問票である。

担任教師による他者評定を採用したTSCRSは15項目で構成されている。このうち10項目は、

先に紹介したSCRSの項目を若干修正したものである。新たに加えられた5項目のうち4項目 は、 "結果を予測した上で行動していますかγ など、認知過程の重要性を強調したKanfer &

Karoly (1972)のセルフ・コントロールモデルに基づく内容である Kendall & Wilcox (1979)のSCRSは、一人の担任教師がクラス単位で評定するには多すぎる項目数(33)であっ たため、これを再整理して少なくし、また、評定形式も7件法から5件法にするなど、回答のし やすさを配慮した構成になっている。

一方、 CPSCSは、子ども白身が自分のセルフ・コントロールを自己評定するための質問票で

(5)

168 杉 若 弘 子

ある。成功の予測度合いが強い子どもは、より強力なセルフ・コントロールを示すという研究 (Fry, 1977)が示唆するように、子どもの行動をより包括的に評価するためには、子ども自身の 自己評価が重要である。このような考えに基づき、 Humphrey (1982)は、 CPSCSの開発を試 みた。標準化データ収集のために選定された11項目は、 TSCRSの項目内容と対応するよう整 備された。例えば、 TSCRSに含まれる"素早く片づけようとするあまり、不注意なミスを犯

す"という項目は、 CPSCSの"急ぎすぎて失敗します"という項目と対応している。評定形式 は、 YES‑NOの2件法である。

小学校4、 5年生計763名を対象に実施した標準化手続きの結果は、次の通りである。

(1)因子分析の結果、 TSCRSでは"認知的かつ自己完結的なセルフ・コントロール"と"行 動的かつ対人関係的なセルフ・コントロール"という比較的安定した2因子が得られた。

(2) CPSCSでは項目数の少なさにも関わらず、 "対人関係場面でのセルフ・コントロール"

"自己完結的なセルフ・コントロール" "自己評価" "行動結果に伴う思考"という4つもの園子 が抽出された(3) 2過半〜3週間隔で実施された再テスト法では、 CPSCSの1因子(行動 結果に伴う思考)を除くすべての因子で有意な相関が認められた(r‑.56‑.94)。この結果に もとづき、 "行動結果に伴う思考"因子への寄与率が高かった2項目は削除され、 CPSCSは、

最終的に9項目3因子構造の質問票となった (4)両質問票ともに、男子よりも女子の得点が 高かった (5)両質問票による評価の一致度は低かった(r‑.07‑.24)。 (6) TSCRSでの み実際の行動観察結果との間に有意な相関が認められた(r‑.24‑.39)。知能・学力検査、心 理社会的適応度検査を外的基準とした場合にも、 TSCRSは54指標中48指標で有意な相関を示 したが(r‑.29‑.84)、 CPSCSでは72指標中8指標でしか有意な相関が認められなかった

(r‑.39‑.45)e

以上の結果は、 TSCRSの信頼性と妥当性を支持してはいるが、 CPSCSに関しては項目の選 定や回答方法の工夫など再検討すべき点が数多く残っていることを示している。

Child Self‑Control Rating Scale

Rohrbeck, Azar, & Wagner (1991)もまた、子どもに自分の行動を自己評定させることの 重要性を説き、 Child Self‑Control Rating Scale (CSCRS)を作成している。親による評定で

は、主観性によるバイアスが加わり、担任教師では、授業中などの構造化された状況や教師と児 童という限定された関係の中で観察された行動しか評価対象となり得ないと考えたのである。ま た、子どもの自己評定を無視していては、介入時に取り扱うべき問題行動の範囲を狭めてしまう ため、自己評定させることにより、子どもに自分の問題点を気づかせて、治療に対する動機づけ を高めようとしたのである。

CSCRSは、先にKendall & Wilcox (1979)が作成した他者評定によるSCRSの併行検査と しての役割を担うことを目的に開発された。全33項目の質問文は、 SCRSの項目を子どもが理 解可能で自己評定しやすい表現に修正したものである。また、 Humphrey (1982)のCPSCSが 内的整合性に乏しいという報告(Reynolds & Stark, 1986)を受け、本質問票では、二者択一 の評定形式を採用している Figure lに示したように、子どもは、まず自分が左右どちらに表 現されたタイプの子どもであるかを選択し、次にその程度を評定する。評定結果は、 4件法とし て処理される。

小学校3年生と5年生計103名を対象にした結果では、 Cronbachのα係数が.90、 6‑8週

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質問紙法によるセルフ・コントロ‑ルの評価

ぴったり    だいr=い SH罰BX^^KTBR売る

□□ じっとすわっているのは.

がんだんです. ‑ どっちかな?‑ じっとすわっているのは.

FJEi崩男as**

掬[ォ蝣*サ    軌am.

L5a芭I^^KH売る

□□

169

Figure 1 Child self‑control rating scaleの項目例

(Rohrbeck, Azar, & Wagner (1991)より抜粋の上、翻訳)

原文では、 "ぴったりあてはまる"が"really trueforme"、 "だいたいあてはまる"描"sortoftruefor me"となっている。また、中央の矢印と"どっちかな?"の部分は、 "but"で表現されている。

間隔で実施した再テスト法による相関係数は.84であり、項目分析の結果とともにCSCRSの 信頼性を支持するものである。妥当性を検討するために、担任教師が評定したSCRSとの相関 係数を求めたところ、その値は‑.22であったo この相関係数の低さについては、どちらかの行 動評定の信頼性と妥当性の低さを表しているというよりは、むしろ、異なる評定者による情報収 集の重要性を示す結果だという考察がなされている。ただ、調査対象者の数が少なく、実際の行 動観察による妥当性の検証がなされていないなど問題点もあり、今後の追加資料が待たれる質問 票である。

成人のセルフ・コントロールの評価(2)

Self‑Control Schedule

これまでに紹介してきた質問票は、すべて、子どもを対象にしたものであった。成人のセル フ・コントロールを評価する質問票として最初に報告されたのは、 Rosenbaum (1980)の Self‑Control Schedule (SCS)であるo

scsは、次のような仮説に基づいて開発された。すなわち、セルフ・コントロールする反応 は、不安や痛み、あるいは標的行動の遂行を妨害する考えといった何らかの内的な出来事を手が かりとし、そのような出来事によって引き起こされた弊害を減少させるために実行されるという ものである。例えば、テスト中に発生した不安の初期兆候が手がかりとなって、深呼吸してリ ラックスせよと自分に言い聞かせるというセルフ・コントロールする反応が用いられるというこ とになる。 SCSは、個人が行動上の問題を解決する方法としてセルフ・コントロールを実行す る傾向を測定する尺度である。

全36項目は、 (1)情動的・身体的な反応を制御するための認知と自己陳述 (self‑statements)の使用(12項目)、 (2)問題解決方略の適用(11項目)、 (3)即時の報酬 を遅延する能力(4項目)、 (4)自己効力感(9項目)、を示す内容で構成されている。項目選 定にあたっては、 2名の行動療法家に項目内容の評価と敢捨選択を依頼し、さらに、大学生152 名を対象にした予備調査によって項目分析を行っている。各項目に対する評定は、 "まさにあて

(2)成人を対象にした質問票には、 他にもSelf‑Control Questionnaire (Rehm, Fuchs, Roth, Kornblith, & Romano, 1979)やCOgnitive Self‑Managemant Test (Rude, 1986)があるが、これら はいずれも標準化手続きを経ていないため、本稿では取り上げていない。

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wo 杉 若 弘 子

はまる"を+3、 "全くあてはまらない"を‑‑3とする6件法が採用されている。 ̀̀どちらでもな い"を表す0は除外されているため、得点可能範囲は‑ 108  108である。

信頼性の検証と標準化データの収集を目的に実施した調査では、 6つの標本グループ計739名 が対象となった。標本グループの内訳は、国籍(イスラエル、アメリカ合衆国)や専攻(工業系、

心理系、その他)の異なる学生5グループ計634名(平均年齢22.2歳)と一般成人105名(辛 均年齢50.5歳)の全6グループである。大学生の1グループ(n‑82)に対して4週間隔で実 施した再テスト法による相関係数は.86、残りの5グループのデータをもとに算出した Kuder‑Richardsonの第20公式によるα係数は、 .78‑.84の範囲であった。追加資料として、

11週間隔で実施した再テスト法の相関係数は.77 (Leon & Rosenthal, 1984)、 Cronbachのα 係数は.82 (Redden, Tucker, & Young, 1983)というデータが報告されている。これらは、

いずれもSCSの信頼性を支持する結果だといえるだろう。標準化データとしては、大学生で構 成された4つの標本グループの平均得点が+ 23' 27、標準偏差は20.6‑25.1の範囲であっ た。一般成人の平均得点は 31.3、標準偏差は23.2となっている。すべての標本で認められた 標準偏差の大きさは、 SCSで測定されるセルフ・コントロールに大きな個人差があることを示 しているといえよう。なお、いずれの標本グループにおいても有意な性差は認められていない.

併存的妥当性の検討では、トE尺度(Rotter, 1966)とIrrational Beliefs Test (IBT) (Jones, 1968)が併行検査として用いられた。調査対象は、上記大学生の標本グループである。 I

‑E尺度との相関係数は‑.40であったIBTでは、全般的に値は低いものの、ひとつの下位尺 度を除くすべての尺度で有意な相関が得られている(r‑‑.48‑‑.19)。新たな被験者(n‑

80)を募集して行ったコールドプレッサーテストでは、冷水刺激に対する感受性に差がないにも 関わらず、 SCSの高得点者は低得点者に比べ、痛みへの対処可能感と実際の耐性時間が有意に 長かった。後の研究においても、 SCSの高得点者は、ストレス事態に効果的に対処し、より課 題志向的な問題解決方略を用いることが明らかになっている(例えば、 Katz & Singh, 1986;

Leon & Rosenthal, 1984 ; Rosenbaum & Ben‑Ari, K., 1985 ; Rosenbaum & Ben‑Ari, S., 1986)c これらの結果は、いずれもSCSの妥当性を支持するものである。

SCSは一次元性を仮定して作成されているが、その後の研究では多次元性が指摘されている (Gruber & Wildman, 1987; Rude, 1989)。この点については、十分な検討を要する。

Redressive‑Reformative Self‑Control Scale

Rosenbaum (1989)は、 SCSを用いて行った研究の成果をふまえて、セルフ・コントロ‑ル を調整型(Redressive)と改良型(Reformative)に分けて考えることを提唱した。調整型セ ルフ・コントロールとは、 "ストレス場面において発生する情動的・認知的反応の制御"を指し ており、不安場面での気そらし(distraction)や自己教示などがこれに含まれる。一方、改良 型セルフ・コントロールは、 "習慣的な行動を新しくてより望ましい行動へと変容していくため

のセルフ・コントロール"である。禁煙やダイェットがこれに当てはまり、調整型セルフ・コン トロールに比べて、より自発的な問題設定が必要となる。セルフ・コントロールを多次元的に評 価しようとする考えは、他の研究者によっても示されてきたが(例えば、 Kanfer & Schefft, 1988; Nerenz & Leventhal, 1983)、いずれも仮説にとどまっており、実証的な研究は行われて いない。

これらの研究報告を受け、杉若(1995)は、成人を対象としたE]常的なセルフ・コントロール

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質問紙法によるセルフ・コントロールの評価 HI

の個人差を多次元的に評価するための尺度Redressive‑Reformative Self‑Control Scale (RRS) (Appendix 1)を開発し、その信頼性と妥当性を検証した。

項目は、Rosenbaum(1980)のSCSならびにストレス・マネジメントとセルフ・コント ロールに関する文献を参考に選定した。各項目への評定形式は、 SCSと同様の6件法を採用し ている。

大学生と専門学校生計529名を対象にした調査データをもとに、因子分析を行った結果、 3つ の因子が抽出された。第1因子には、改良型セルフ・コントロールのためのスキルであると考え られる問題解決方略や報酬の遅延に関する項目が含まれるため"改良型セルフ・コントロール"

として8項目を決定した(Appendix 1 :項目番号1、 4、 6、 7、 9、 11、 14、 18)。第2 因子に含まれる7項目は、他者依存の傾向や自発的な行動に対する消極性を示す内容であったた め、 "外的要因による行動のコントロール"とした(Appendix 1 :項目番号3、 5、 8、 10、

16、 17、 19)。第3因子に負荷の高い5項目は、情動的なストレス反応を除去してその場を乗り 切ろうとする内容であったため"調整型セルフ・コントロール"とした(Appendix 1 :項目 番号 2、 12、 13、 15、 20)。異なる標本グループ(n‑579)の因子分析においても、全く同じ 因子構造が確認されている(Sugiwaka & Agari, 1995)。 RRSでは、これらの3因子を下位尺 度として扱っている。 3つの下位尺度はいずれも正規分布を示し(コルモゴロフ・スミルノフの 法によるD‑.04‑.08、いずれもp<.01)、また、得点に性差は認められていない(t (527)

‑.22‑.78、いずれもns)c

項目の弁別力を確かめるために行った上位下位分析では、各尺度すべての項目において上位群 と下位群に有意な得点差が認められた Cronbachのα係数は、 .84‑.96の範囲にあり、内的 整合性の高さを示している。これらの結果は、 3下位尺度20項目で構成されたRRSの信頼性 を支持している。

妥当性に関しては、 "調整型セルフ・コントロール"と"改良型セルフ・コントロール"の尺 度で次のような検討がなされている。 2つの下位尺度得点の高低によって分類した4群の被験者 に対して、セルフ・コントロールに関するより具体的な情報を得るための面接を実施し、その結 果を5名の評定者に再分類させた。 RRSに基づく分類結果と評定者らの分類の一致度は83‑

100%であり、 4群の被験者は、いずれも群に特異的なセルフ・コントロールの行動傾向がある ことが明らかになった。また、杉若と上里(1994)は、試験の準備期間を背景に、状況の困難度 と行動結果の明確さが異なる4つの場面を呈示し、各場面における調整型、改良型セルフ・コン トロールの実行度を比較した。その結果、調整型セルフ・コントロールに比べ、改良型セルフ・

コントロールの方が困難度や結果の明確さといった状況要因の影響を受けやすいことがわかって いる。これらの結果は、セルフ・コントロールが2つの種類に分けられること、したがって、そ の個人差は2種類のセルフ・コントロールのいずれにも注目し、 2元的に評価すべきであること を示している。

結論と今後の課題

セルフ・コントロールを評価するための質問票は、子どもを対象にしたものと成人を対象にし たものに分けられる。このことからもわかるように、従来のセルフ・コントロール研究では、子 どものセルフ・コントロールと成人のそれを別々に研究してきたo セルフ・コントロールの学習

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H萄 杉 若 弘 子

メカニズムや効果的な学習方法を明らかにするためにも、研究間の関連性を検討すべきではない だろうか。例えば、子どもでは、男児よりも女児でセルフ・コントロールの実行度が高いが(例 えば、 Kendall & Wilcox, 1979; Humphrey, 1982)、成人には性差は認められていない(例え

ば、 Rosenbaum, 1980;杉若, 1995)c このような違いは、発達的な要因によるものかもしれな い。しかし、子どもと成人では用いられた尺度が異なるため、評価の対象となった行動そのもの が異なっていたことによるとも考えられる。以上のような問題を解決するためには、子ども用と 成人用の項目内容に対応をもたせた尺度の開発が必要である。

質問紙法を用いた評価の有効性が最も期待されるのは、治療・教育場面における対象者のスク リーニングであろう.セルフ・コントロールの個人差に応じてどのような技法を選択するかにつ いて、 Simons, Lustman, Wetzel, & Murphy (1985)は、うつ病患者のうち、 SCSの高得点 者には認知療法が、低得点者には薬物療法が適していると報告している。しかし、この種の研究 は現時点ではほとんどなされていない。セルフ・コントロールと治療技法選択の問題に関する理 論的および実証的研究が今後の課題である。

引 用 文 献

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(11)

M引 午:. r,= 弘 [

Appendix 1 Redressive‑reformative self‑control scale (杉若, 1995)

氏名 年令 歳   性別 男・女

以下に20個の項目があります。各項目がどの程度あなたにあてはまるかを, +3(まさにあてはまる)から

‑3(全くあてはまらない)の範疎で評定してください.あまり深く考えすにありのままを答えて下さい.

‑3  ‑2 ‑1 +1 +2 +3

^MH5毘m臣Jfflがsaw玩Vtj&t

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あてはまる +

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あてはまる +

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1ままらない一 2 はまらない I 3 はまらない r

IKc]里kkihnas雲」H糎輝が回BtWf.d閑maa いつでもます計画を立てる.

2.不愉快な思いに悩まされる時には,なにか楽しい ことを考えようとする.

3.過去の失敗をくよくよ考えてしまう。

4.ものことに集中できない時には,集中する方法を 見つけ出す。

5.難しい決定を迫られた時は.たとえ自分次第で決 まることであっても決定を先に延ばしがちである。

6. しなければならないことを済ませてから自分の好 きなことをする。

7.忙しい時ほど規則正しい生活をするように心掛け.

実行している。

8.日分の悪い習慣をやd)るには,外部からの手助け が必要である。

(12)

質問紙法によるセルフ・コントロールの評価

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はまらない ︼ 2

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3 はまらない I

9.何かを決定する時には,あTDてて決めないで可能 な選手R肢をすべて拾い出してみる。

1 0.気分が暗くォるのは分かっていても.将来起こるか もしれない最悪の事態についてつい考えてしまうa

1 1.仕事に身が人ら'"d."い時に(3. S九とつ\勇巨人rlる 方法を探そうとする。

1 2.気分が沈んでいる時は,あえて陽気に振舞い気分 転換をはかううとする。

1 3.憂うつな時には,楽しいことを考えるようにして HE9

1 4.仕事に神経を集中できない時には.小さな目標を 立てて少しすつ処理していく.

1 5.落ち込んでいる時には,好きなことでもして気管 .Wらわせようとする。

1 6.すぐに片付けてしまえる事でも,気乗LJしないこ とは先に延ばし乃(ちである。

1 7.外部からの助けがないといらいらや緊張を克服で きない。

1 3. Itしい間盟にぶっかつr=時Ieio.覗き逼つ,たやり 方で解決しようとする。

1 9.日分を悩ませる不愉快な思いに芋丁ち勝てないのは いつものことである。

20.失敗で滅入った気分を乗LJ越えようとして, "こ れはとLJ返しのつかないことでもないし,何か\で きることがあるはすだ''と自分に言いきかtZるこ とがある。

こ協力ありがとうこさいまし/<̲a

1 7.rl

(13)

門脈

The Questionnaires for Assessing Self‑Control Behaviors

Hiroko Sugiwaka

{Department of Psychology, Nara University of Education, Nara 630, Japan) (Received April 30, 1996)

Self‑control procedures have been frequently used in psychotherapy, especially behavior therapy. However, there is a high degree of variability among clients in their ability to apply self‑control methods. Present article reviewed researches on the assessment of individual differences in self‑control behavior by the questionnaire method. Four questionnaires for children (Self‑Control Rating Scale : Kendall & Wilcox, 1979 ; Teachers Self‑Control Rating Scale and Children's Perceived Self‑Control Scale : Humphrey, 1982; Child Self‑Control Rating Scale: Rohrbeck, Azar, & Wagner, 1991) and two for adults (Self‑Control Schedule: Rosenbaum, 1980; Redressive‑Reformative Self‑Control Scale: Sugiwaka, 1995) were evaluated in terms of the reliability and the validity. Following research problems were pointed out : (a) construction of a questionnaire measuring developmental differences in self‑control behavior, (b) determination of intervention techniques based upon individual differences measured by self‑control questionnaires.

Table l セルフコントロールを評価する代表的な質問票とその特性(本文紹介順) 質問票の名称 Self‑Control Rating Scale Teacher s Self‑Control Rating Scale Children s Perceived Self‑Control Scale Child Self‑Control Rating Scale Self‑Control Schedule Redressive‑Reformative Self‑Control Scale 開発者と発表年 K

参照

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