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データグローブシステムによる自助具の評価

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Academic year: 2021

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(1)

データグローブシステムによる自助具の評価

竹馬 俊哉1 長尾 哲男2 金城 正治2

要旨本研究はデータグローブシステムのアイソトラック部を用いて,手部の動 きを計測し自助具の影響を検討したものである.

 すくい動作は自助具の「すくいやすい皿⊥と「普通皿」とで比較検討した.

 その結果「すくいやすい皿」は「普通皿」に比べ,動作時の角度範囲が狭く,回旋 運動のスピードが遅いことが明らかとなった.

      長大医短紀要4:91−95,1990

Key words:データグローブシステム,自助具,評価

はじめに 実験方法

 身体障害者は日常生活行為にそれぞれ固有 の機能的障害に起因する(できない・困難で あるなどの)問題を持っており,治療者はこ の問題に対して自助具(self help devise)

を作り対処している.自助具は,個々の障害 者の二一ドに応じて作製したり,既製品を改 良しているが,二一ドに適合しているか否か は,OTの経験を基に行われているのが現状 である.自助具が動作に与える影響を数値化

し分析することは,自助具の開発を促進し,

より合理的な選択を可能にする.そこで今回,

データグローブシステムを用いて頚髄損傷者 が食事に用いる自助具「すくいやすい皿」と,

「普通の皿」でのすくい動作にっいて比較検 討したのでここに報告する.

 対象者は健常の40代,30代,20代の男性そ れぞれ1名ずっと20代の女性4名である.

 計測機器はマクダネルダグラス社のデータ グローブモデル2システムのアイソトラック 部と東芝の3100GTを組み合わせて計測し,

データ処理はNE Cの9801系を用いてバッチ 処理した.計測時のホストコンピュータとの 通信速度は9600ボーにて行なった.一回の計 測のサンプリング速度は毎秒40データで,3000

データ(75秒聞)とした(図1).

 データグローブシステムはソースから磁界 を発生させ,センサーにより誘起電力を取出 すようになっている。得られる情報は,セン サーの3次元空間での(X,Y,Z)の位置 座標とその位置における垂直軸での動きであ るアジマス,横軸での動きであるエレベーショ ン,縦軸での動きであるロールの6データで

1 三原台病院  2 長崎大学医療技術短期大学部作業療法学科

一91一

(2)

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図1 システム図

る.実験では,センサーを手背部に固定し たため,アジマスが手関節の僥屈尺屈運動,

エレベーションが手関節の背屈掌屈運動,ロ ールが前腕の回内回外運動として見なされる.

但し,実験設定した対象者が頚髄損傷者であ るため手関節は固定しているので,実験での 動きは前記の動きを他の関節で代償運動した ものとして考えられる,対象物は市販のすく いやすい皿(以下皿Aと略す)と普通皿(以 下皿Bと略す)とで比較検討した.各皿の断 面は図2に示す.皿の材質は皿Aはプラスチ

ック,皿Bは陶器であり,材質の違いにより すくい動作が異ならないように,各皿の上に オストロンの粉末をまいた.また,皿は固定 のため作業机にノンスリップマットを敷いた1 上に置いた.スプーンは頚髄損傷者に利用さ れている柄の部分を曲げたもの(図3)を使 用し,手関節を固定する装具に付け固定した.

 すくう対象物は,各作業の再現性の高い物 を検討した結果,すぐに潰れたり,跳ねたり

しない物として皮を大豆大に丸めたものを使

用した.

 アイソトラックのセンサーは手背部にテー

図3

プで固定しソースは左前方に作業テーブルよ

、り3.5センチ低い所に固定した。皿は被験者 の正面に配置し,その前方に別の皿を用意し た.被験者には(スプーンを持った状態で)

皿より右へ20センチの所に手を置かせスター ト位置とした.また,対象物は皿の定位置中 央に置いた.実験手順はスタート位置に手を 置いた後,検者がデータ採取開始と同時に動 作の開始を指示し,対象物をすくい終わった ら前方の皿へ入れ,元のスタート位置に手を 戻すという行程を計測時間中繰り返し行6先.

検者は一行程ごとに対象物を皿の中央に戻し た.途中すくい動作を失敗した場合はスプー

ンを左へ大きくやり過ごすようにした.

 すくい始めはスタート位置から移動し始め て最初にY座標の値が皿の中央点のY座標の 値より小さくなった時点とし,終了はX座標 の値が中央点のX座標の値より9センチ小さ

くなった時点とした..X座標の値が中央点の X座標の値より15センチ大きくなった時点で 試行の失敗と判断した.

結果と考察

・皿A 皿B

       傷

/////// %砺

図2 皿A・Bの縁の断面図

 時間内にすくえた数は被験者のうち6名が 皿Aで多く,残り2名の被験者D,Eはほぼ 同試行数であった.また1試行の平均サンプ ル数は被験者8名中6名が皿Aで少なく,残 り2名の被験者B,Dはほぼ同じサンプル数

(3)

データグローブシステムによる自助具の評価

表1 試行数と平均サンプル数 試行数 平均サンプル数

A

A B t検定

A 22 12 32 58

B

13 10 48 4豆 c 17 10 48 77 D 11 12 62 62

11 11 35 51 零*

F 16 12 49 60

G

14 6 56 74

17 旦5 46 53

15 ・11 47 60

掌*Pく.0亙   *P〈.05

表2 最大と最小の差の平均 嚇pく.05

X Y Z ozi闘th levation roU

A  B

27

琴8

20 22

24 29

28

 ■卓36

23 ,

30

39

 ひ58

(鯛)

だった.皿Aと皿Bの平均サンプル数のt検 定を行った結果,95パーゼントで有意差があ

った(表1).

 表2に表す位置座標のデータ(X,Y,Z)

とアジマス・エレベーション・ロールの角度 のそれぞれの最大値と最小値の差にセンサー の動く範囲を示している.条件設定を行って いるXとYを除いて皿Aは皿Bより平均値が 小さかった.アジマス,ロールの最大値と最 小値の差はt検定を行った結果,95パーセン

トで有意差があった.つまりこれは皿Aが皿 Bより小さい範囲で動作していることを示し

ている.

 皿の中心への進入角度,っまりロールのす くい始めの角度については,皿Aでは進入角 度が小さくなる被験者と大きくなる被験者と に分れて,今回皿による特性は見出だせなか

った.

 皿Aと皿Bにおける6データの時間をおっ ての変化は,ロールを除く5データの変化は 皿Aと皿Bとではほぼ類似パターンを示した.

しかしロールの角度の変化は,サンプル番号 が増えるに従い傾斜が皿Aは皿Bより緩やか であるパターンを示した(図4A,4B).

このことで皿Bが対象物をすくうとき,単位 時間あたり早い回旋の動きをしていることが

分る.

 X−Y座標で中センサーの軌跡は,.皿Aで

は被

験者全員にY座標の値が減少するとX座 標の値は少しずっ増加し,Y座標が最小値か

ら増加するとX座標の値は急に小さくなって くる逆「て」の字に似たパターンの軌跡であ

る(図5).皿BではY座標の最小値付近で X座標の値がばらっくパターン軌跡と逆「て」

の字に似たパターン軌跡を示すものがあり,

共通なパターン軌跡は見出せなかった.この ことは皿Aではスムーズに対象物をすくえる のに対し皿Bでは皿の縁付近で,少し手問取っ てしまうことを示している,しかし,一人の 被験者だけは両皿で類似パターンを示した.

 Y座標とロールから見たセンサーの軌跡は,

皿AではY座標の値の減少と共にロールの値 が少しずっ増加し,Y座標値が最小値から増 加すると同時にロールの値も多く増加を始め

る.ちょうど横「V」の字の類似パターンを 示す.皿BではY座標値が減少し,最小値か

ら再び増加する流れの中でロールの変化は

「C」の字の類似パターンを示した(図6).

このことは,皿Aでは食物のすくい動作が

「皿の縁への移動」と「食物のすくい」、とい う2工程に分かれていることがわかる,また X−Y座標にて被験者間のパターンの違いを 少なくして類似性が見られている要因の1っ になっている.それに対して皿Bでは2っの 工程を同時に行なわせると言える.

 以上の結果から「すくいやすい皿」が持っ ている基本特性をまとめてみると,動作時の 角度範囲が少ない,動作時の回旋運動をゆっ くり行えるということが言える.今回想定し た身体障害者っまり頚髄損傷者は上肢や手の 動きが不十分で動かせる範囲も少ないため,

一93一

(4)

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(5)

データグローブシステムによる自助具の評価

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図5 皿AにおけるX−Y座標での変化パターン

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図6 皿Aと皿Bのro 一Y座標での変化パターン

「すくいやすい皿」を使うほうがより使いや すいことが推察できる.

おわりに

ク部を用いて,位置座標と3次元の角度変化 を見ることができた.その中で自助具である

「すくいやすい皿」と「普通皿」とで差のあ ることがわかった.今後臨床場面での実験を 行い特性を見出したい.

今回データグローブシステムのアイソトラッ

一95一

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