• 検索結果がありません。

熊本県における「よかボス企業」登録の効果と課題

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "熊本県における「よかボス企業」登録の効果と課題"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

( 209 )

熊本県における「よかボス企業」登録の効果と課題

八幡(谷口)彩子・田上 千咲**

Impact and issues of the Good Boss registration system promoted by the Kumamoto Prefectural Government

Ayako Yahata-Taniguchi and Chisaki Tanoue

(Received September 30, 2020)

 Given the background of fewer children born in Japan and the decreasing population in local areas, many regional public corporations have taken steps to create a more comfortable working environment.

 The objective of this paper is to examine the impact and issues of the Good Boss registration system, which has been promoted by the Kumamoto Prefectural Government with a view to rendering companies easier to work for, regardless of gender.

 To achieve this objective, we analyzed the declarations made by companies when they register with the Good Boss system. We also conducted interviews with ten companies registered with the system.

 Our results were as follows:

 1) Many companies registered with the Good Boss system described their work-life-balance and any original aspects of their company ʼ s working style.

 2) According to the interview survey, several companies or bosses have found the Good Boss registration system VLJQL¿FDQW

 3) :LWK VRPH FRPSDQLHV ZH LGHQWL¿HG DQ LVVXH ZKHUH WKH *RRG %RVV UHJLVWUDWLRQ V\VWHP DQG DVVRFLDWHG declarations/descriptions were not made known to all employees.

Key words : Good Boss registration system, Kumamoto Prefecture, fewer children born society, comfortable working environment

1.研究目的

 近年,次世代育成や男女共同参画の推進,地方にお ける人口減少などを背景に,国や自治体は,さまざま な少子化対策・子育て支援策を実施している.

 国が行っている「くるみん認定」 , 「えるぼし認定」 , 熊本県が行っている 「ブライト企業」 「子育て応援団」 , , 熊本市が行っている「子育て支援優良企業」の認定・

表彰制度などがその例として挙げられる.このうち,

国が実施している「くるみん認定」や「えるぼし認定」

等は,行動計画を策定や計画目標や認定基準の達成が 認定の条件となっているなど,認定のためのハードル が高く,熊本県内の認定企業は決して多くはないのが 実情である.

 このような中,熊本県では,働きやすい職場づくり

を行うことにより,人口の流出を抑え,人口減少に歯 止めをかける少子化対策・子育て支援策として「よか ボス企業」登録の取り組みを始めたが,その効果につ いてはまだ検討が行われていない.

 本研究の目的は, 「よかボス企業」登録の際に提出 が求められる「よかボス宣言」の分析や, 「よかボス 企業」への聞き取り調査を通して, 熊本県における「よ かボス企業」 登録の効果と課題を考察することである.

2.研究方法

 研究の方法は以下の通り.

 ①「よかボス企業」登録事業の概要について把握す るため,熊本県庁健康福祉部子ども・障がい福祉局子 ども未来課の澤田光氏に聞き取り調査を行った.聞き 取り調査のおもな内容は, 「よかボス企業」登録事業

* 熊本大学大学院教育学研究科

**熊本大学教育学部卒

(2)

を始めるに至ったきっかけ, 「よかボス企業」登録の 基準, 「よかボス企業」登録事業の効果と課題, 「よか ボス企業」 登録推進事業の具体的な取り組みについて,

などである. (調査日:2019 年 10 月 17 日)

 ②「よかボス企業」の属性等を把握するため, 2019 年 12 月 2 日時点で登録されていた 392 事業所を対象 に分析を行った.分析には,熊本県庁のホームページ に掲載されている「よかボス企業」登録企業・店舗等 の一覧(URL:https://www.pref.kumamoto.jp/common/

UploadFileOutput.ashx?c_id=3&id=23329&sub_

LG ÀLG )を用いた(2019 年 12 月閲覧) .

分析項目は,所在地,従業員数,業種,代表者の性別,

設立年,ブライト企業認定の有無である.

 また, 「よかボス宣言」にどのような内容が記載さ れているのかを把握するため,2019 年 12 月の時点で

「よかボス宣言」 が公開されていた 234 社を対象に, 「よ かボス宣言」の分析を行った.分析項目は,ワーク・

ライフ・バランス,企業の独自性,ライフステージに 合わせた支援,休暇の取得, 「よかボス企業」登録の 働きかけ,社会貢献等とした.

 ③「よかボス企業」の実態を把握するため, 「よか ボス企業」10 社に聞き取り調査を行った.聞き取り 調査項目は, 「よかボス企業」への応募動機, 「よかボ ス宣言」で工夫した点, 「よかボス宣言」をしたこと による効果と課題,社員が働きやすい職場環境づくり の取組で実施していること,また,これから実施する 予定の取組,どのような「よかボス」でありたいと考 えているのか,企業の特色とそれをどのように「よか ボス企業」 の取組に生かしているのか, などである. (調 査期間:2020 年 10 月 9 日〜12 月 18 日)

3.結果と考察

(1)熊本県における「よかボス企業」登録推進の取組

 熊本県が策定した 「熊本復旧・復興 4 カ年戦略」 (2016 年度〜2019 年度)では, 4 つの基本目標の一つに「県 民の結婚・出産・子育ての希望の実現」を掲げた.そ のための施策として,2017 年 9 月から,県内の企業・

団体・店舗・事業所を対象に「よかボス企業」の募集・

登録を行っている. 「よかボス企業」登録推進の取組 を知るために,この施策を管轄する熊本県庁健康福祉 部子ども・障がい福祉局子ども未来課の澤田光氏に聞 き取り調査を行った.

  「よかボス」とは,自らの仕事と生活の充実に取り 組むとともに,従業員等の結婚・妊娠・出産・育児・

介護等,従業員等のライフイベントにおいて切れ目の ない支援を行い, 仕事と生活の充実を応援するボス (企 業等の代表者等)のことである.熊本県内に事業所等

があり,従業員等が 2 人以上の企業等が「よかボス宣 言」 を実施し, 代表者が 「よかボス宣言書」 を持って写っ た写真等の応募書類を運営事務局(2019 年 10 月時点,

株式会社サンマーク ナッセ編集部熊本支店)に送る ことにより 「よかボス企業」 として登録される. 国の 「く るみん認定」や「えるぼし認定」に比べると,登録し やすいしくみになっている.

  「よかボス企業」として登録されると, 「よかボス企 業登録証」と「よかボス宣言ピンバッジ」が贈呈され,

「よかボス倶楽部」や「よかボス企業」間の異業種交 流会に参加でき, 「よかボス企業」として熊本県子ど も未来課の Facebook やホームページに掲載される.

また, 「よかボス企業」がグループを作って,自主的 に取り組む子育て支援事業に対して補助金が受けられ たり,くまモンをあしらった「よかボス企業」のシン ボルマークを会社案内のパンフレットや就職説明会場 のブース,ホームページ,社員の名刺などに使用でき たりする等のメリットがある.

 澤田氏によれば, 「よかボス企業」登録事業を始め たきっかけは, 「イクボス」は “ 育児 ” にしか焦点が 当たっていなかったため, 「よかボス」であれば結婚・

妊娠・出産,育児,介護など広い範囲で扱うことがで きると考えたことである.また, ボス(会社の責任者)

が自分たち(従業員)のことを大切に考えている,応 援してくれているということがわかれば,従業員は頑 張れると考えたということである.

 澤田氏が感じている「よかボス企業」登録事業の効 果は,ボスと従業員の距離が近くなったことや職場が 明るくなったことである.一方,課題は, 「よかボス 企業」の認知度の低さや「よかボス宣言」を作成する というハードルがあることが挙げられた.

  「よかボス企業」の登録数を増やすために, 「よかボ ス企業」関連のイベント開催や,毎月 4 のつく日を

「よかボスの日」として, Facebook に「よかボス企業」

へ取材を行った動画を投稿する,“ 口コミ ” によって 広める等に取り組まれていることがわかった.

(2)「よかボス企業」の属性と「よかボス宣言」の分析

 ①「よかボス企業」 (392 社)の属性

 熊本県子ども未来課のホームページには,登録され た「よかボス企業」の情報や「よかボス宣言」が掲載 されている.このデータをもとに,2019 年 12 月 2 日 現在,登録されている「よかボス企業」392 事業所の 属性を分析し,表 1 にまとめた.

 表 1 によれば, 「よかボス企業」の属性は,所在地 としては,熊本市内が 231 社(58.9%)を占める.従

業員数は 11〜50 人が 162 社(41.3%)と最も多く,

次いで 2〜10 人が 108 社(27.6%)と規模が小さい

(3)

事業所が 7 割を占める.業種では,卸売業・小売業 94 社(24.0%)が最も多く,ついでサービス業 60 社

(15.3%) ,医療・福祉 42 社(10.7%)となっている.

熊本県が実施していて, 「よかボス企業」との類似性 が高いと考えられたブライト企業の認定の有無につい ては, 認定を受けていない企業が334 社 (85.2%) であっ た.

 ②「よかボス宣言」 ( 234 社)の分析

  「よかボス宣言」は,各事業所の代表者がどのよう な「よかボス」を目指すのか,どのような取組を行お うとするのか等が端的に述べられており, 「よかボス 企業」登録事業の特徴の一つとなっている.どのよう な内容が「よかボス宣言」に記載されているのかを分 析することにより,事業所の代表者がどのような取 組を目指しているのか把握できるのではないかと考 えた.そこで,2019 年 12 月 2 日時点登録されている 392 事業所のうち,ホームページで閲覧できた 234 事 業所の「よかボス宣言」を分析することとした.

  「よかボス宣言」の 1 つのモデルとして,子ども未 来課のホームページで公開されている熊本県知事の

「よかボス宣言」は,熊本県知事自身がどのように自 らの仕事と生活の充実を図ろうとするのか,熊本県庁

職員に対して,仕事と生活の両立・充実(ワーク・ラ イフ・バランス)を促す項目,休暇の取得促進,イ フステージに合わせた支援,さらに, 「よかボス企業」

登録の働きかけ(登録推進)に関する 5 つの項目が記 されている.県知事の宣言文には,事業を管轄する子 ども未来課がめざす「よかボス」の姿が象徴されてい ると考える.

 また,ホームページには,登録企業が,それぞれの 事業内容をふまえた特色ある宣言書が公開されてい る.例えば,株式会社サンマーク ナッセ編集部 熊本 支店(登録番号 0174)の「私は,社員と共に,地域 のお店が盛り上がるような企画を立案し,熊本経済の 発展に貢献します」や住宅金融支援機構 熊本センター

(登録番号 0083)の「私は,熊本の良さを全国の職員 に知ってもらうため,熊本の魅力を社外に発信してい くとともに,熊本の復興の状況についても積極的に情 報発信を行います」のように, (地域)社会への貢献 についての内容を盛り込んでいる企業も多い.有限会 社 ウルトラハウス(登録番号 0057)の「自らも仕事 と私生活を楽しむ『よかボス元気人』となる」のよう に,企業理念と関連づけた文言を入れる等,企業の独 自性を盛り込んだものも多かった.このような観点か ら, 「よかボス宣言」にどのような観点が盛りこまれ たのかを表 2 に示した.

2.「よかボス宣言」に記載される観点

(複数回答)(N=234)

宣言の観点 企業数 割合(%) ワーク・ライフ・バランス 192 82.1 

企業の独自性 174 74.4 

ライフステージに合わせた支援 145 62.0  休暇の取得促進 141 60.3 

「よかボス企業」登録の働きかけ 93 39.7 

社会貢献 46 19.7 

 表 2 によると, 「よかボス宣言」に記載された観点 としては, 「ワーク・ライフ・バランス」が 82.1%と 最も多く,次いで, 「企業の独自性」74.4%, 「ライフ ステージに合わせた支援」62.0%, 「休暇の取得促進」

60.3%であった.その他に,約 4 割の企業が「 「よか

ボス企業」登録の働きかけ」を記載していた.

(3)「よかボス企業」への聞き取り調査

 ①聞き取り調査企業の属性

 つぎに, 登録されている「よかボス企業」の中から,

10 社に聞き取り調査を行った(調査期間: 2019 年 10 月 9 日〜12 月 18 日) .聞き取り調査にご協力いただ いた事業所等の概要は表 3 の通り.調査対象 10 社の 業種は,卸売・小売業,情報通信業など,できるだけ 幅広い業種から調査ができるようにした.従業員数は

1.「よかボス企業」の属性 (N=392)

属性 分類項目 事業所数 割合(%) 所在地 熊本市内 231 58.9 

熊本市外 161 41.1  従業員数 2〜10人 108 27.6  11〜50人 162 41.3  51〜100人 35 8.9  101〜300人 51 13.0  301〜1,000人 22 5.6  1,001人〜 11 2.8  業種 卸売・小売業 94 24.0  サービス業 60 15.3  医療・福祉 42 10.7 

建設業 36 9.2 

製造業 35 8.9 

情報通信業 14 3.6 

金融業 13 3.3 

不動産業 11 2.8 

運輸業 10 2.6 

教育・学習支援業 9 2.3  その他 86 21.9  代表者の性別 348 88.8 

44 11.2 

設立年 昭和 19 年以前 16 4.1  昭和 20〜64 年 156 39.8  平成元年以降 219 55.9  ブライト企業 認定あり 58 14.8  認定なし 334 85.2 

(4)

3.聞き取り調査対象企業10社の概要

企業 業種 従業員数(男:女) 宣言の作成者 回答者

A 社 卸売・小売業 745(4:6) 社長 従業員

B 社 教育・学習支援 16(6:4) 社長 社長・従業員

C 社 情報通信業 460(6:4) 社長と担当者 従業員

D 社 医療・福祉 180(6:4) 社長と従業員 従業員

E 社 卸売・小売業 480(不明) 社長 従業員

F 社 情報通信業 27(4:6) 館長 館長・従業員

G 社 宿泊業・飲食サービス業 60(11:8) 社長 社長 H 社 宿泊業・飲食サービス業 10(2:8) 社長 従業員

I 社 教育・学習支援 37(5:5) 校長 校長

J 社 その他 1,950(不明) 社長と従業員 社長・従業員

4.「よかボス企業」への応募動機

企業 「よかボス企業」への応募動機

A 社 ニュースや新聞で情報を得た従業員から勧められた.

B 社 ブライト企業のセミナーで「よかボス企業」の広告を見たため.

C 社 (熊本県から)事業を委託されているため宣言を出す必要性を感じた.

D 社 すでにさまざまな取組を行っていたため,熊本県から「宣言を出してほしい」と要望があった.

E 社 日本一働きやすい企業にしていきたいという思いから.

F 社 (熊本県から)事業を委託されているため宣言を出す必要性を感じた.

G 社 館長が「よかボス企業」の担当部署である熊本県庁子ども未来課に勤めていたため.

H 社 「よかボス企業」登録事業の委託を受けている.その事業に取り組んでいく中で,「よかボス企業」の 考え方に共感し必要性を感じたため.

I 社 校長がワーク・ライフ・バランスの実現や子育てしやすい職場環境づくりには,職場の上司の理解が 必要だと感じていたため.

J 社 (熊本県から)事業を委託されているため宣言を出す必要性を感じた.

5.「よかボス宣言」で工夫した点

企業 「よかボス企業」で工夫した点

A 社 実際に会社にある制度や設備,考えを具体的に入れた.

B 社 「成長」「ワクワクと挑戦で溢れる」「人づくり」等,会社で大切にされている言葉を使用した.

C 社 会社の部署によって働き方(勤務体制)にかなり差や違いがある部分を考慮した内容となっている.

D 社 女性が創設したハンセン病患者のための病院が元となっている施設であるため,女性登用,障がい者 登用,難病者登用などを実現させることを目的とした宣言となっている.

E 社 健康食品を扱っているため,「健康」というワードを入れた.会社にはさまざまな制度や設備があるた め,「制度・設備を整える」と入れた.

F 社 「イクボス」の考え方を参考にして,企業理念とリンクさせた内容となっている.

G 社 従業員への信頼や期待,愛情から従業員のことを「宝人」と呼んでおり,宣言に入れた.

H 社 男女共同参画の NPO 法人から始まった会社であるため, 女性の働き方について ということを意識 した内容となっている宣言.

I 社 ワーク・ライフ・バランスの実現を目指す内容であること.校長が熊本大学で家庭科を専門科目にし ていることから「食」に関する文言が入っていること.

J 社 女性だけでなく「男性社員も家庭サービスを行う」と入れたこと.

(5)

10 名から約 2,000 名までと幅広い.聞き取り調査では,

企業の状況にあわせ,社長または従業員等に答えてい ただいた.

 ②「よかボス企業」登録への応募動機

  「よかボス企業」登録への応募動機について表 4 に 示した.これによると, 「ブライト企業のセミナーで 広告を目にした」 , 「ワーク・ライフ・バランスの実現 や子育てしやすい職場環境づくりには,職場の上司の 理解が必要だと感じており,その考えが「よかボス」

の目的と一致した」等, 様々な動機が見られた.また,

「ニュースや新聞等で「よかボス企業」の情報を得た 従業員から提案を受けて応募した」というように,従 業員の側からの働きかけが登録のきっかけになった ケースも見られた.

 ③「よかボス宣言」で工夫した点

 つぎに, 「よかボス宣言」を作成するにあたって工 夫をした点について, 表 5 にまとめた.これによると,

「実際に会社にある制度や設備,考えを具体的に入れ た」 , 「会社で大切にされている言葉(スローガン等)

を使用した」等,すでにある企業等の特色が「よかボ ス宣言」に生かされていることがわかった.

 また, 「勤務体制に差や違いがある部分を考慮した 内容となっている」 , 「施設の歴史を踏まえた内容に なっている」等,企業の実態を考慮した内容も盛り込 まれていることがわかった.

 ④「よかボス宣言」をしたことによる効果と課題  聞き取り調査で把握できた 「よかボス宣言」 をしたこ とによる効果と課題をそれぞれ表 6 と表 7 にまとめた.

6.「よかボス宣言」をしたことによる効果

企業 「よかボス宣言」をしたことによる効果

A 社 宣言を出す前からあった考え,行われていた制度であるため具体的な効果はない.

B 社 従業員が休みたい時に休みやすくなった.宣言をすることで意識づけになり,宣言通りのよい会社を 作っていこうと行動するようになった.ビジネス上での話題作りになった.

C 社 「よかボス宣言」が社内に浸透するまで時間がかかっており,まだはっきりした効果は実感できていない.

D 社 宣言を出す前からあった考え,行われていた制度であるため具体的な効果はない.

E 社 宣言を出す前からあった考え,行われていた制度であるため具体的な効果はない.社外から関心が集 まって宣伝になったこと.

F 社 宣言を社内に掲示しておらず,従業員へ浸透していないため具体的な効果はない.

G 社 従業員が安心して休みを取れるようになった.

H 社 まだ効果は出ていない.

I 社 職員たちが休みを取りやすくなった.校長の自己紹介代わりになり,校長の考えや気持ちを職員に理 解してもらえた.

J 社 従業員が社内の制度を理解しやすくなった.

7.「よかボス宣言」の課題

企業 「よかボス宣言」の課題

A 社 会社にはまださまざまな制度や取組があり,宣言の 5 項目では全てを伝えきれないこと.

B 社 宣言には「物心共に満足できる職場を全力で作ります」とあるが達成できていない.もっと福利厚生 を向上させたい.

C 社 「よかボス宣言」がなかなか浸透していないこと.

D 社 課題はない.しかし,より休みを取りやすい職場環境作りやハラスメントに関する相談がよりしやす い職場環境作りに関する文言も「よかボス宣言」の中に入れることができればなおよかった.

E 社 宣言を出すなど上司側が一生懸命になると部下は受け身となること.

F 社 宣言を掲示していないため,社内に宣言の内容が浸透していないということ.

G 社 宣言に具体的な制度が記載できていないこと.具体的に宣言した方が従業員に対しても社外の人に対 してもわかりやすい宣言にすることができたと考えられるため.

H 社 ジェンダーの問題 を「よかボス宣言」の中に具体的に入れることができなかったこと.

I 社 「熊本の食文化を大切にして」という部分がまだうまく職員や県民に伝わっていない.働き方改革に対 する方向性の違いを考慮した内容を入れたかった.

J 社 現在行っているイベントなどの要素も宣言に入れたかった.

(6)

 まず, 「よかボス宣言」をしたことの効果について,

表 6 によれば, 「従業員が休みを取りやすくなった」 ,

「会社にある制度への理解が深まった」 , 「ボスの考え が従業員に理解された」等の効果が実感できたとの意 見が多かった.また, 「よかボス企業」に登録される ことで「他の企業との話題作りになって新たなビジネ スへつなげることができた」というような効果も見ら れた.

 その一方で, 「 「よかボス宣言」がなかなか浸透して いない」という課題を指摘する企業等もあった.社内 で 「よかボス宣言」 が浸透していない理由としては, 「企 業の規模が大きいため,浸透させるために時間と工夫 が必要である」ということや「 「よかボス宣言」を社 内に掲示していない」等が挙げられる. 「よかボス宣

言」の趣旨をいかに職場内で浸透させていくかについ ては,検討が求められる課題と考える.

 ⑤従業員等が働きやすい職場環境となるための取 組,あるいは,これから取り組む予定について  従業員等が働きやすい職場環境となるために取り組 んでいることやこれから取り組む予定について,聞き 取り調査を行い,表 8 にまとめた.これによると,多 くの企業では, 「ブライト企業」や「くるみん認定」

等の認定は受けていなかったが,これから目指してい きたいとの意見が多く挙げられた.一方,これらの認 定を受けることにはこだわず,企業独自のやり方で働 きやすい職場づくりを目指していきたいとの意見も多 かった.

9.どのような「よかボス」でありたいと考えるか

企業 どのような「よかボス」でありたいと考えるか

A 社 従業員を幸せにできる「よかボス」

B 社 宣言したからには,有言実行をきちんとする「よかボス」.自身が率先してプライベートも大切にし,

人生を豊かにしようとする.

C 社 無回答 D 社 無回答

E 社 宣言したからには,有言実行をきちんとする「よかボス」.

F 社 社員の良き相談相手になれる「よかボス」.仕事を通して社員が楽しく自己実現・自己成長ができるよ うにサポートをしたり,寄り添ったりできる「よかボス」.

G 社 バレーボールの監督のように,上から指示を出すだけの存在ではなく,選手と同じ目線,同じ立場か ら選手とともに悩み,考え,働く「よかボス」.

H 社 スタッフとのコミュニケーションが上手く取れる明るい「よかボス」.

I 社 宣言で述べられているようなワーク・ライフ・バランスがとれる働き方を支援できる「よかボス」.

J 社 宣言したからには有言実行をきちんとする「よかボス」.

8.従業員が働きやすい職場環境となるための取組(予定を含む)

企業 ブライト企業 子育て応援団 くるみん認定 これから行う予定の取組

A 社 × × 認定等にこだわっていない.

B 社 × × 「ヘルスター健康宣言」も登録されている.これからもさ まざまな取組を行っていくつもりである.

C 社 × × 常に中立な立場であるべきと考えており,認定や登録は あまり行わない.

D 社 × 健康保険センターからの表彰も受けている.今後はくる みん認定のレベルを上げたいと考えている.

E 社 × × 認定等にこだわっていない.

F 社 × 新たに認定などをめざすことは考えていない.

G 社 × × 「ブライト企業」の認定をめざす.

H 社 × × 「ブライト企業」「くるみん認定」をめざす.

I 社 × 大学が行っているため取り組む必要性を感じなかった.

(大学が「子育て応援団」「くるみん認定」に対応)

J 社 × × × まずは「よかボス宣言」の実現をめざしていきたい .

(7)

 ⑥どのような「よかボス」でありたいか

 調査対象企業等が,どのような「よかボス」であり たいと考えているのかについて,調査結果を表 9 にま とめた.これによると, 「宣言したからには,有言実 行をきちんとする「よかボス」 」を目指していきたい との意見が多く,自らが出した宣言に責任を持ち,実 行していこうとする姿勢が見られた.

 ⑦企業の特色とそれをどのように「よかボス企業」

の取組に生かしているのか

 企業の特色とそれをどのように「よかボス企業」の 取組に生かしているのかについて,聞き取り調査を 行った結果について表 10 にまとめた.これによると,

情報通信業の企業からは, 「情報を発信していく企業 であるという特色を生かして, 「よかボス企業」 をより,

熊本県内に広めていく手伝いをしていきたい」という ものや,多くの女性,障がいや難病を持つ方が働いて いる社会福祉法人からは, 「その特色を生かし,そう いう方が働きやすい職場づくりを発信していきたい」

等, 多くの企業が自身の企業の特色を「よかボス企業」

の取組に生かそうとしていることがわかった.

(3)「よかボス企業」登録の効果と課題

 熊本県が推進する「よかボス企業」登録推進事業は,

募集開始から 2 年ほどで約 400 社もの企業等が登録 し, 短期間に確実に登録数が伸びている事業と言える.

一方,熊本県内で,今なお「よかボス企業」の認知度 が低いことや 「よかボス宣言」 の作成がハードルになっ ていることなどがわかった. 「よかボス宣言」につい ては,ワーク・ライフ・バランスについての記載が多 く,これは, 「よかボス企業」登録推進事業の本来の 目的の一つである「働きやすい職場づくり」に添った 観点と考えられる.また,企業の独自性を盛り込んだ

「よかボス宣言」は全体の 74.4%を占めており,企業 の独自性を盛り込むことは,その企業らしさが出せる のはもちろんのこと,企業の PR にもつながるため,

とても有効である.今後は,そのような,この事業本 来の趣旨・目的に適った「よかボス宣言」を作成する 企業を増やすために,登録の時点で, 「よかボス宣言」

の内容を精査する必要性もあると考える.

 聞き取り調査においては, 「よかボス宣言」を作成 するにあたって,企業の実態を考慮しながら企業の特 色を盛り込んだ企業も多く,従業員が社内の制度を理 解しやすくなり,休みを取りやすくなったという効果 や, 「ボス」 (企業の代表者)の考えを従業員に理解し てもらうことができたなどの効果が見られた.その一 方で, 「よかボス宣言」 を社内に掲示していないことや,

企業の規模の大きさから,社員への周知が進んでおら ず, 「よかボス宣言」を社内に浸透させる工夫が必要 であることもわかった.

10.企業の特色とそれをどのように「よかボス企業」の取組に生かしているのか

企業 「よかボス企業」の取組に生かしている企業の特色

A 社 企業の特色として「ガラス張りの経営」を行っている.宣言したことは有言実行し,それを従業員や 社外に見える化している.

B 社

宣言しているように「たくさんのワクワクや挑戦で溢れる職場づくり,環境づくり」を心がけ,さま ざまな年齢層の方や企業を相手に事業を行っていくことで県全体を元気にしていくことを目標にして いる.

C 社 新聞社であり,報道をすることが仕事である.よって,「よかボス企業」という取組を発信していくこ とを意識している.

D 社 多くの女性,障がいや難病を持つ方が働いているという特色を生かし,そういう方が働きやすい職場 づくりを発信していきたい.

E 社 健康づくりを手伝うことを事業としているため,社員が心身ともに健康で働くことができるような「よ かボス企業」を目指していく.

F 社 情報を発信していく企業であるという特色を生かして,「よかボス企業」をより熊本県内に広めていく 手伝いをしていきたい.

G 社 宣言にも入れた「サプライズを演出する」ことでお客様に楽しんでもらうとともに,お客様の記憶に 残るサービスの提供を目指そうと考えている.

H 社 研修を行う企業であるという特色を生かして,「よかボス企業」でありながらそれを PR できていない 企業に研修を行い,PR 力を育てたいと考えている.

I 社

さまざまな障がいのある子どもたちが特性に応じて地域社会と積極的に関わることができる,社会に 開かれた学校をめざしているため,「よかボス企業」として存在することで,学校内だけではなく,熊 本県の地域社会全体に貢献することができるような取組をしていきたい.

J 社 情熱を発信していく企業であるという特色を生かして,「よかボス企業」をより熊本県内に広めていく 手伝いをしていきたい.

(8)

4.まとめ

 熊本県で行われている,働きやすい職場づくりを行 うことで,人口の流出を抑え,少子化対策・子育て支 援を目指す「よかボス企業」の取組の効果と課題を考 察するため, 「よかボス企業」 と 「よかボス宣言」 の分析,

「よかボス企業」への聞き取り調査を行った.

  「よかボス」は上司の側から働きやすい職場環境づ くりを目指していくものである.しかし,“ 従業員が ”

「働きやすい」と感じるためには,社内の実態を把握 することや,従業員の意見,要望を反映させる必要が ある.そこで,上司(ボス)と従業員の双方から,働 きやすい職場づくりについて検討を進めていくことが 求められる.

 今回は,主に「よかボス企業」に対して比較的熱心 に取り組んでいる企業を対象に聞き取り調査を行っ た.そのため, 「よかボス宣言」の作成においても企 業の独自性を盛り込んだり,企業の特色を生かした内 容になっていたりと,うまく工夫されていた.また,

効果や課題が見えており, 「よかボス企業」に登録す る意義を見出している企業も多かった.しかし, 「よ かボス企業」は,2019 年 12 月 2 日の時点で 392 事業 所の登録があり, より広い視野で研究を行うためにも,

調査対象を,今回聞き取り調査を行った 10 社以外に 広げて効果と課題を検討する必要がある.今後の熊本 県における取組としての動向を見守りたい.

謝辞

 本研究にあたり,ご協力いただきました熊本県庁子 ども未来課の澤田光様,株式会社鶴屋百貨店,株式会 社トヨダ体育教室,株式会社熊本日日新聞,社会福祉 法人リデルライトホーム,株式会社えがお,有限会社 ウルトラハウス,一般社団法人ホテル熊本テルサ,株 式会社きらりコーポレーション,熊本大学教育学部附 属特別支援学校,株式会社サンマーク ナッセ編集部 熊本支店の皆様に,心より厚く御礼申し上げます.

おもな参考文献

1) 熊本県「熊本復旧・復興4カ年戦略」の策定について」

(201910月閲覧)

https://www.pref.kumamoto.jp/kiji_17969.html 2) 熊本県「よかボス」(201910月閲覧)

https://www.pref.kumamoto.jp/hpkiji/pub/List.aspx?c_

id=3&class_set_id=1&class_id=6734

3) ワンストップジョブサイトくまもと「熊本県ブライ ト企業 認定企業一覧(平成30年度時点)(2019 11月閲覧)

https://furusato-shigotonet.jp/site_bright_companies/

newsdetail/mid_id:80/id:402

4) 熊本県「よかボス企業」の登録企業・店舗,市町村 の一覧(201912月閲覧)

https://www.pref.kumamoto.jp/common/UploadFileOutput.

DVK["FBLG LG VXEBLG ÀLG

参照

関連したドキュメント

登記の申請 (GBO 13条1項) および登記の請求 (GBO 38条) は、受理権 限を有する者にそれらが提示された時点で到達したものとされる

感染症拡⼤で浮き彫りとなった企業の課題とその対応.

※「TAIS 企業コード」欄は入力不要です。但し、過去に TAIS 登録していたものの、現在は登録を削除している場

[r]

It is inappropriate to evaluate activities for establishment of industrial property rights in small and medium  enterprises (SMEs)

※会場内への入館は 【COMIC CITY 搬入 PASS 2022】

Microsoft/Windows/SQL Server は、米国 Microsoft Corporation の、米国およびその

熊本 古木家 株式会社