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包括的所得課税標準の検討

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(1)

包括的所得課税標準の検討

小林威

目    次 は し が き

1.経済力純増加説と実現所得 2.調整粗所得の問題点 3.課税の公平と課税所得

4.カーター報告書の包括的所得課税標準 5.包括的所得課税標準をめぐる論争 6.ビットカーの批判

7.マスグレイヴの再批判 8.ペックマンの再批判 9.わが国の所得税の問題点

は し が き

所得税は,わが国税の中で最も重要な租税の一つである。昭和48年度の所得 税収は4兆2,000億円以上にのぼると予測されており,国税収入の36パーセ ントを占めている。約40年以前には金額にして1位数千万円,その構成比が 1割強であった。このめざましい成長は,最近20年間の異常な経済成長を反 映しての個人所得の増加,税率の上昇,特に戦前と比表して著るしい免税点 の低下に起因する。わが国では,シャウプ勧告以後直接税中心主義をとり,

所得税を税制の基幹としてきた。現行のわが所得税制度をみると,配当所得,

不動産所得,事業所得,給与所得,雑所得,譲渡所得,一時所得,退職所得,

山林所得,利子所得が課税の客体になっている。このように,課税所得の内 包が今日では極めて拡大している。また納税人員は昭和9〜11年度平均の95 万人から,45年度には3,000万人に達している。

(2)

一般に所得を涼合課税して累進税率を適用することは,公平な課税法だと 考えられているO しかし,上にみたように広範囲に亘る課税標準を有し,限 界税率75%の高い累進構造を有しているのにもか〉わらず,所得税に対する 批判の声が高い口この批判は,税法l乙種々の特別条項が設けられているため に特定の納税者が利益を受けて,等しい経済状態の人が実質・的に具る税額を 支払っている事実から起っている口それは,給与所得と事業所得を中心とし てぷ合累進課税を構成し,資産所得の大部分を比例税率による分離課税また は非課税としているところに,原因を求めることができる。特に,キャピタ ノレ・ゲインの取扱いには,非常に大きな問題が存在するo

この小論は,日本の実例の分析に主眼をおくのではなく,一般的次元で公 平な所得課税を施行するための課税標準について考察をする。

1.  経済力純増加税と実現所得

課税目的としての所得概念のうち,極めて独想的なものは,1896年にシャン ツが提唱した純資産増加税であるo シャンツは,所得とは「一定時期におけ る純資産の増加で,乙れに収益および他人からの貨幣価値的給付を含めたも

(1) 

のをいう」と定義したo彼は個人が所与の期聞に,どれだけの経済力を造出 するかが問題とされるべきであると考えた。そこで一定期間内のすべての純 益,用益,他人の貨幣価値的給付,贈与,相続,遺贈,富銭の当選金,保険 金およびあらゆる種類のキャピタル・ゲインを所得に算入して,負債および 資産損失を控除すべきだとした。

シャンツの提案はアメリカのサイモンズに受継がれ,個人所得は r(a)消費 のために行使された権利の市場価格と.(b)一定期間における財産権の変化と

(2) 

の総和である」と定義された。同時代K.へイグも同じような所得概念を提 唱したので,これが一般に,へイグ=サイモンズ所得概念といわれているo

この経済力純増加説にたつ所得概念は,つぎのように定式化することがで きょうo

y = (AC) ‑A

こ乙にYは個人所得.Cは一定期間内の消費額,Aは資産額をあらわし,添

(3)

字のOは期首を 1は期末を示す。サイモンズは,乙のように定義化された 所得が経済力の純増加を示すものであり,乙れが担税力の指標となりうべき であると考えた。そこで,上のY!乙課税することが,最も公平な所得課税で あるというのが彼の主張である。

へイグ=サイモンズ定義による所得は,あきらかに発生概念に礎をおいて いる。乙乙で問題となるのはAの価値である。すなわち,資産価格の値上り で納税者の手許に発生しているゲインを,そのま〉課税所得に算入すべきで あるかということと,つぎに,相続,贈与を課税所得の中に組みこむことの 妥当性が問題となるo 経済力純増加説の立場に立って課税所得を考える際 に,乙の点の調節が不可欠となってくるo無論,サイモンズは発生所得を課 税所得として現実に課税することを強力に主張したが,すべての発生所得を 課税標準に組込むことには難点があるD

たとえば,都会地にさ与やかな自宅を所有しているJの場合,彼はこの10 年聞に相当額の資産価値の増加を経験したであろう。ある時には,年率20

ーセントにもおよぶ地価の Æ(~貴もあった。 J の資産価値の増加が著しくて も,毎年の純資産の増分に所得課税がなされるならば,納税が不可能となる 場合もでてくるであろうoそこで,経済力純増加説を信奉する学徒も,実際 問題として,発生所得ではなく実現所得への課税ということに譲歩している ようである。乙れは論理的には一歩後退のようにみえるかも知れないが,課 税技術と担税力の点から妥当な提案であるといえよう。

サイモンズ説をいくらか修正した提案の主たる特色は,つぎの点であるo

第 1に,資産の譲渡をしないで納税者の手許に発生しているゲインに対して は,これを年次課税をしないで, 10年なら10年というように一定期間内でゲ インが実現されたとみなして平均課税をすることD 乙のみなし実現は更に実 現時期を廷期して納税者の死亡時にゲインが実現されたとする説もあるo 2に,相続,贈与に対しては所得税を補完する相続税および贈与税で徴収し でもかまわないということである。その他の点については,サイモンズ同様 に,現行の所得課税標準を経済力純増加説の視点から,極めて厳格に規定す

(3)  る包括的所得課税標準の実施が強く唱えられているo

(4)

包括的所得課税標準で,特にアメリカで問題となるのは,つぎの諸項目で あるD キャピタノレ・ゲインの特例,免税地方債利子,社会福祉的支給の非課 税,生命保険金の貯蓄部分等。これらは納税者の経済力を増加させる意味か ら , ほ か の 課 税 所 得 と 同 じ に 取 扱 わ れ る べ き 筋 合 い の も の だ か ら で あ る 。 なお寄附控除,鉱物資源,特に油井の大巾な減耗控除,投資控除等は高額所 得者の課税標準を著るしく減少させる点から問題とされる。

課税標準の厳格な採用を提唱する反面,包括的所得課税標準論者は,最低 生活を保証するための諸控除およびその他の経費控除には,むしろその増額 を要求しているD また,キャピタノレ・ゲインを全額課税所得に算入するのと 同時に,キャピタノレ・ロスは全額を控除することを強く主張しているD

(註)(1)  Georg Schantz, ,Der Einkommmenbegriff und die  Einkommen

steuergesetze', Finanz Archiv, XXXIX, 1921, S.  23. 

(2)  Henry C. Simons. Persoonal Income Taxation,Chicago, 1938, p.  50.  (3)包括的所得課税標準についての体系的研究は Wi1liam S.  Vickrey,  Agenda Jor Progressive Taxation, New York, 1947.である。同書はサイモン ズの見解に従って所得課税標準を厳格に規定する乙とを提唱した。所得を包括的に 課税すると,当然のとと注して納税者の毎年の所得額が変動する。そこで累進税率 との関係で,ある年の所得が急激に増加すると,非常に高い限界税率が課せられ る。との不当をなくすために,サイモンズは一定期間で所得を平均化する単純平均 法を提案した。しかし,これでは納税延期による利息を得する納税者が出てくるの で,ヴイックリーは累積平均法によってこの点の不備を捕った。

その後,包括的所得課税標準が注目を浴びたのは,第86議会の公聴会であった。

乙の時,ペックマンは包括的所得課税標準がどれだけの潜在的税収をあげうるかと いう乙とを,刻明に説明した (]osephA. PechmanWhat would a Com‑

prehensive Income Tax Yield", House Com. on Ways and Means. 86th  Cong., 1st  Sess., Ta RevisionCompendium of Papers  on  Broadening the  Tax Base, Vol.  1, Washington D.  C., 1959, pp.  251‑28l.)

2.  調整粗所得の問題点

現行の租税法に規定されている課税所得ではなくして,極めてベイスの広

(5)

1 GNPと課税所得,1970 (単位:10億ドノレ〉

1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 4 2 3 4 5   1 1 1 1 4 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 2  

GNP 

(マイナス) 減 価 償 却 費 間 接 税 法 人 税 法人内部留保 社 会 保 障 税

(プラス〉 個人に対する政府移転支出 政府からの利子支払 そ の 他

6 6 3

8 8 5 5 2

J

U G U

4 R U

J 1

T

ム 圃 Q U E  

806 5 2 2 0 8  

J n J q u

司 ︐h

q A

一 2

m

一 三 一

mm

間 一 組

範囲な包括的所得課税標準の提唱は,特にアメリカ合衆国を中心にして展開 されているo そ乙で同国の課税所得と包括的所得課税標準との差異をみてみ よう。第1表は, 1970年度における同国のG N Pと課税所得との関係を示し たものであるo 乙の表から明らかなように, 9760億ドjレのG N Pから4010 億ドjレの課税所得が計算されて,同年度の所得税収入は840億ドノレとなって い る 。 課 税 所 得 計 算 の 中 で 特 に 問 題 と な る の は , 調 整 粗 所 得 の 算 出 法 で あ る。マスグレイヴはG N Pから調整粗所得への移行のさいに,つぎの6つの

(4)  問題点を指摘している。

個 人 所 得

(マイナス) 移 転 支 出 他の労働所得 帰 属 所 得 除 外 項 目 (プラス) 社会保障税(個人分〉

キャピタノレ・ゲイン そ の 他 推計調整粗所得

(マイナス〉 申告されない調整粗所得 申告調整粗所得

(マイナス) 非課税申告調整粗所得 課税調整粗所得

(マイナス〉 経 費 的 控 除 基 本 控 除 課 税 所 得

出所 Musgraveand Musgrave, ot.cit., p.  221 

(6)

(1)  法人の内部留保は未分配であるから,個人所得に算入されない。しか (5)  し,法人擬制説を窮局まで推進すれば,この部分は株主の所得になるo

(2)  GNPから政府の公債利子支払が差引かれて,個人所得の段階で再び 算入されているO しかし,地方政府の利子支払が加えられていないo

(3)  政府の移転支出(主として社会保障給付)が非課税のために,調整粗 所 得 計 算 の 段 階 で 脱 落 す る 。 乙 の 不 算 入 は 包 括 的 所 得 課 税 標 準 と 一 致 し な O

(4)  社会保障税のうち,雇主負担分が課税所得から脱落するo

(5)  帰属所得が調整粗所得に算入されていないために,課税標準に相当な 欠陥を来している。

(6)  キャピタノレ・ゲインが課税標準に算入されているが,乙れの取扱い方 には最も重要な問題が含まれているo

推定調整粗所得と申告された調整粗所得との間には, 620億ドルの差があ るが,このうち200億ドノレは申告しないですむ小額所得であると考えられる。

純差額は420億ドルとなるが,国民所得計算のエラーもあるから,アメリカ の納税者は,かなり正直に所得を申告しているとみられようO Y問題は,

乙のように計算される調整粗所得が担税力のよき指標であるかということで ある。

(4)  Richard A. Musgrave and Peggy B.  Musgrave, Publiic Finance  in  Theory and Practice New York, 1973, p. 222 

(5)  これは個人所得税と法人所得税との統合の問題である。法人擬制説の立坊に たてば,法人税は所得税の前払いとして個人の段階で控除されなければならない。

それと同時に,法人の内部留保は個人に分配されたものとみなし個人所得に算入さ れる乙とになる。高額所得階層では所得税の限界税率が高いために,投資家のなか には法人が配当を少くして内部留保をすることを望む者が多い。内部留保が殖えれ ば,いずれ株価が騰貴してキャピタJレ・ゲインの形で所得をえる乙とができるから である。そこで個人所得税と法人所得税を統合するばあいには,内部留保のみなし 実現が併用される必要がある。

(7)

3.  課税の公平と課税所得

一般に所得税は納税者の個人的事情を勘案した人税であるから,支払能力 に応じた公平な課税であるといわれる。と訟で,公平を水平々等と垂直平等の 二要件の達成であるとするならば,前者の水平々等は容易に遂行されるべき 性質のものである。後者の歪直平等には,累進税率と担税力の関係が精密に 測定できないから,怒意的要因がはいりこんでくる余地が十分にあるo しか し水平々等ば,平等者の平等取扱いの要求であるo乙の水平々等が現実には アメリカに限らず世界各国で達成されていないところに重大な問題があるD

いま乙訟に2人の納税者JとKを握定しようo 2人とも年収が同額で5人家 族であり,家族の健康状態も同等であったとする。 Jは年収300万円がすべ て給与所得であり. Kの場合.200万円が給与所得であり残額の100万円が株 式の売買益であったとする。乙の設例で昭和48年度の所得税法を適用する と. Jの納税額が21万4800円であるに対して. Kの納税額は7万98000円に 過ぎない。現在,わが国では有価証券の売却益に対して,一定の条件以内で あれば,非課税とされているからである。すなわちKの経済力を増加する所 得の一部が,税法上で特別の取扱いをされているからである。乙のような現 実においては,所得課税が公平な課税制度であるといっても,それは単なる 命題にすぎないoそ乙で,担税力に応じて水平々等を達成するには,如何に なすべきかという問題が生じてくる。結論を先にいえば,所得の源泉を問わ ないで,広範囲の課税標準を説定して,この課税標準に課税するのが望まし いのである。すなわち,包括的所得課税標準が水平々等を達成するものであ

り,同時にそれは,税法に規定された垂直平等を達成するのである。

4.  カータ一報告書の包括的所得課税標準

1967年に公刊された王立カナダ租税委員会(委員長の名をとってカーター 委員会ともいう)の税制報告書は,包括的所得課税椋準の線から所得を規定 している。同委員会が実施を勧告した所得課税標準は,つぎの6項目から生

(6)  じる一年間の収益から損失を差引いて決定されるO

(8)

(1)  個人サーヴィスの提供

(2)  有体資産あるいは無体資産の処分

(3)  他の課税単位(個人あるいは家族)からの贈与または遺贈 (4)  予測外のゲイン

(5)  有体資産あるいは無体資産の所有 (6)  上記のいずれかの組合せ

こ与に定義される所得は,アメリカの包括的所得税標準論者が提案してい る所得内容よりも,むしろへイグ=サイモンズの原形に近い極めて広い課税 標準である。たY未実現のキャピタノレ・ゲインに対しては,納税者の年齢が 5で除せられる年に実現したとみなす構造実現が提案されたが,乙れは非常 に厳格な課税標準である。

カナダでは従来の英国式課税を脱脚して,現代にマッチした租税制度に変 更する必要が痛感されて,カーター委員会が設立された。同委員会では,直 接税の所得税,法人税はもとより間接税を合む租税全般に対して多角的lとし て総括的な検討を加えた。中でも,所得課税に対する改革案は示唆するとと ろが極めて大きい。同委員会は能力説の立場からの租税配分を企図して,特 に所得税では乙の見解が全面的に打出されたのであるO

(6)  Report  of the Royal Commission on  Taxation, vo1.  3, Ottawa, 1966,  p.  40. 

同報告書は包括的所得課税標準で定式化された「純ゲイン」の特色としてつぎの 諸点をあげている (0ρ.cit. PP. 41‑51.)

①  他の課税単位からの贈与および遺贈を課税標準に算入する。乙の結果,贈与税 および相続税が廃止される。

②課税標準に帰属所得を算入する。しかし,評価の困難と行政的問題から,帰属 所得のすべてではなく,帰属家賃を算入する。

①現物所得の所得算入。一般論としては,これらが現金所得と同じ経済力をもっ からであり, しばしば現物給与が租税回避の手段として利用されているからであ

④  資産価値の値上りを発生基準で課税標準に算入する。たY課税の方法は構造実

(9)

現とする。

⑤  ゲインを稼得するための諸経費は十分に控除する。

⑤  個人の消費支出は控除しない。経済力とは「消費+贈与+純資産の変化」だか らである。

5.  包括的所得課税標準をめぐる論争

カナダでカーター委員会が報告書の草案を絞っている時期 ~C,アメリカで は,包括的所得課税標準をめぐって論争がおこなわれた。イエール大学のビ ットカー教授は,租税法学者として包括的所得課税標準を仔細に吟味して,

乙れに強い異論を唱えた。

ピットカーは当時の合衆国での課税所得と包括的所得課税標準を比較して つぎのような警告を発した。包括的所得課税標準の提唱者たちが攻撃してい る種々な特恵条項を設定しないで厳格な所得課税を実施するととは,一般に 考えられているよりも,遥かに{設定的な変草を所得税制度にもたらすもので ある。包括的所得課税標準の提唱者たちは,ある程の所得に対して非課税や 控除を容認しているかと思えば,乙れと性質を同じくする所得が非課税であ ったり控除されている事実を強く非難している。特l乙未実現のゲインや帰属 所得の取扱いについて論理が一貫していない。以上のように,包括的所得課 税標準には多くの矛盾が蔵されており,概念が混乱しているから,この概念 そのものがあいまいである。

r

要するに,包括的所得税標準は,まことにー

(7) 

つの災厄であるJ

ピットカーがどのような所得概念を信奉しているかについては明らかにさ れていないO 否,彼はあとで判るように,適確な所得概念を持合せていない のである。たY彼は,個別的所得の課税妥当性について担税力を吟味してい るのであって,大局的視点から包括的所得課税標咋を批判しているのではな い。現行の税法規定の所得から課税所得を検討しているのであって,~税の ための所得が探求されているのではない。包括的所得課税標準を技術的に分 析して程々の異論を提議しているのに過ぎない。

ピットカーの批判に応えてマスグレイヴとペックマンが再批判をしてお

(10)

り,議論の進展する過程で,公平な所得税と包括的所得課税標準との相関々 係が浮きぼりにされてきているD そ乙でとの論争を紹介してみるD

乙の論争は調整粗所得を決定する道程と,更にこれから諸控除を差引く控 除 の 内 容 が 吟 味 さ れ て い る 。 議 論 の 展 開 は HarvardLa Reviewの第80 巻と81巻とにわたって掲載された。その後同誌に未掲載の部分をもいれて,

A Comprehensive Income Tax Base? A Debateとの標題で出版された。

乙の論稿は同書に依拠しているD

(7)  Boris  1.  Bitker A Comprehensive  Income  Tax Base"  as  a  Goal  of  Income Tax Reform"  in  A Comprehensive  Income  Tατ Base,  Branford, Conn., 1968, p.  58. 

(8)  同書に再録された論文は,つぎの5篇である。

Boris 1. Bittker, 'A Comprehensive Tax Base" as a Goalof Income  Tax ReformHarv. Law Rev, vol.  80,1967 pp.  925‑985. 

Richard  A.  MusgraveIn  Defense of an Income Concept¥Haro. 

La Rev.,vol.  81, 1968, pp.  44‑62. 

oseph  A.  Pechman Comprehensive  Income  Taxation  Comment", arv.  Law Rev., Pp.  63‑67. 

Charles O. GalvinMore on Boris Bittker and the  Comprehensive  Tax Base:  The Practicalities of Tax Reform and the  ABA' s CSTR" 

Harv. Law Rev., vol.  81, 1968, pp.  1016‑1031. 

B.  1.  Bittker Comprehensive  Income Taxauon:  A Response

Harv.  LaωRev., val.  81, 1968, pp.  10321043. 

とのうち①がビットカーの問題提起の論文である。②はマスグレイヴが鍛密にビ ットカーに応えたものであり,③のペックマンの論文は, ビットカーの批判態度 を再批判したものである。④のギャノレヴィンの論文は,基本的に包括的所得課税 標準が実行可能であり,また,それが望ましいという立場から害かれている。ギ ヤノレヴィンは,カーター委員会(カナダの税制委員会〉の報告を手懸かりとし て,もっと,乙の問題が追求される必要を説いている。

⑤は①の論文の批判に対する反論であり,ヘイグ=サイモンズの定義による所 得と,包括的所得課税標準の差を依然重要視してマスグレイヴたちの論理が一貫

(11)

していないと攻撃している。

マスグレイヴは⑥' Rejoinder"の中で,ビットカーが基本問題である所得概念 に論及しないで個別所得を吟味しでも実りがすくないこと,および課税問題は

「全か無か」という態度で議論すべきでないととを言及している。ペックマンは

Further Comments on CTB"で,ビットカーが「死馬に較打って喜んでい る」ととを喫じ,キャピタノレ・ゲインの全額課税の必要を説いている。キャルヴ ィンは③'Epilogueto the Dialogue"で包括的所得課税標準の考え方に賛成し ながらも,この概念は更に多くの吟味を重ねる必要があることを説く。そしてこ の論争を経済学者と法律家の視点の相違だと考える。彼によれば, I経済学者は マクロ経済の立場で考える。乙れに対して法律家は,特定の時,処において,特 定の状況にある特定の人間に,租税規則が与える街撃のことを考えるJからであ る。ピットカーは⑨'ALast Word"で,自分は其の包括的所得課税標準とは,

一体どのようなものであるかについて問いかけたのであり,論争を過して明らか となった包括的所得課税標準は租税政策問題を考えるさいにガイドとしてほとん ど役だたないことが判ったと述べている。

⑥  以下の論文が新たに書きおろされたものであるが,次節以下では論者ごとに乙 れらの論文をまとめて論旨をはっきりさせようと努めた。ギヤノレウボインの論文 は,直接の論争には余り関係がないので割愛した。なお煩を避けて上記諸論文の 引用箇所を註記の形でペイジ数を明示しておかない。

6.  ビ ッ ト カ ー の 批 判

ピ ッ ト カ ー の 提 出 し た 問 題 点 は , 大 別 し て5つあるo そ れ ら は , 政 府 か ら の移転支出の取扱い方,贈与および遺贈,帰属所得,未実現のキャピタノレ・

ゲ イ ン , 控 除 の 内 容 で あ る 口 つ ぎ に , ビ ッ ト カ ー の 所 論 を 各 項 目 に つ い て 簡 単 に 紹 介 し て お こ うo

(1) 社 会 保 障

政 府 の 移 転 支 出 の ほ と ん ど す べ て は 社 会 保 障 給 付 で あ り , こ れ に 鉄 道 退 職 年 金 や 軍 人 恩 給 等 が 加 わ っ て い る 。 こ れ ら の 給 付 の 受 給 者 は 経 済 力 が 増 加 し て お り , 所 得 階 居 に よ り 限 界 税 率 と の 関 係 、 で , 同 額 の 受 給 額 で も 価 値 が 具

(12)

る。そこで包括的所得課税標準の提唱者は,これら移転支出を所得に算入す ることを要求しているが,ほかの政府給付にも同じ性格を有するものが多々 あるO たとえば,河川,森林等の保護管理補助金,奨学金,健康保険給付,

失業保険金等である口包括的所得課税標準の捉唱者たちの中には,ペックマ ンのようにこれらの間接給付をも課税所得に算入することを主張している者 もあるが,これを除外している者もある。

そこで不一致の理由を推測すると,それは評価の困難を回避するからであ O 間接給付を課税所得に算入する乙とを除外しながら,他方では,直接の 補助金に対して課税することを提案するのは,あきらかに不当である。給付 の各プログラム別にどれを課税して,どれを免税とすべきかを決定するのが 望ましい。

(2)  贈与および遺贈

ビットカーは,贈与および遺贈を課税所得へ算入していないことを批判す oサイモンズのように徹底した包括的所得課税論者は,贈与および遺贈を 贈与者の課税標準とすることを提案したが,多くの包括的所得課税提唱者た ちは,これを別の形で課税すればよいと考えているようであるD しかし現実 には,相続財産の8分のlしか課税されていないo このような事実を考慮す るならば,相続税などが存在するからといって,遺贈等を所得lこ不算入とす る理由は,その根拠が薄弱であるD

(3) 帰 属 所 得

包括的所得課税標準の提唱者たちは,帰属所得が非課税となっている点を 鋭く批判しており,特l乙帰属家賃を非課税としていることに対する非難が強 い。しかし,たとえば当座預金の利子代りにおこなわれる銀行サーヴィスの 価値等帰属所得はこれ以外に多数存在するD 一部の者は,これらの帰属所得 をも課税所得に算入する乙とを要求するが,大部分の包括的所得課税標準論 者は,評価が容易であるという理由から,帰属家賃l乙対する課税で満足して いるようである。帰属所得について明確な見解を示さないで,現行の特恵措 置の取消を要求する乙とは筋が通らないo

(13)

(4)  未実現ゲイン

包活的所得課税標準の提唱者は,実現したゲインを全額課税所得に算入す ることを常に要求しているが,誰一人として,毎年の純資産増減額を諒税対 象とすることを考えていないO 疑いもなく,これは特恵措置を是認すること であり,妥協により械されることのない課税標準を達成する希求と相容れな

なぜ未実現の評価益への課税に熱心でないのかと自問して,ピットカーは つぎのように答える。多分,それは評価が困難であることと,帳簿上のペー ノマー・プロフィットは租税を支払う力がないからである。だからといって,

未実現の評価益を免税とする理由にはならないO

包括的所得課税標準論者が未実現のキャピタノレ・ゲイン課税を椛造実現ま で延期するのはおもであるが,それならば,彼等が廃止を強く要求している 他の所得不算入項目にも,同じ性格を有しているものがあるO たとえば,雇 い主が雇l若者のために支払う年金計画や利益分割計画で,彼等はたYちに現 金を受取るわけではないO 現行法では,これを雇い主の拠出金として雇山者 の所得に算入していない。だから,この点を非難しないで,労働者の権利を 守ってやったらどうだろう。それは確かに特芯措置ではあるが,未実現のゲ

インの免税も同様に特恵措置である。

未実現のゲインへの課税延期は,節税を認める乙とにほかならないo利子 率を5パーセントとして37年課税延期がなされたと仮定すれば,  1000ドル の税額は836ドノレの利益をもたらすことになる。雇Vf者が年金を受給するま¥ で課税を延期することが,いわれのない特恵であるならば,死亡時のみなし 実現もまぎれのない特定、であるo

ピットカーは,上にみてきたように,包括的所得;!日税標準論者が未実現の ゲインを構造実現により課税するように提案していることを批判するが,彼 自身は,未実現のゲインを年次課税することを提案しているわけではないo

むしろ発生ゲインの非課税が当然だと考えている節が強い。彼がこ〉で、指摘 するのは,包括的所得課税標準論者の論理が一貫していないことを,努めて 露わにしようとしているだけであるD

(14)

(5)控 除

能力に応ずる課税は,当然のこととして,納税者の経済的事情を考慮しな ければならない。所得課税に際して基礎控除,扶養控除,医療控除,その他 経費的控除を認めている。包括的所得課税標準を提唱する論者も,控除の内 容,特にアメリカで認められている寄附金控除や投資控除等を問題にする が,基本的生存権を保障するための控除を認めているD ピットカー自身は控 除の存在には反対しないが,諸控除の是認が包括的課税標準と一致しないと

してつぎのように論難するo

包括的所得課税標準の提唱者は,老年控除や全盲控除を置くよりも直接の 補助金支出の方が望ましいという。それでいながら基礎控除や扶養控除を非 難していないが,これは片手落ちである。扶養控除等もまた,限られた人た

ちに対する連邦政府の公的援護に相当するものだからであるD

つぎに,扶養控除等は最小生活費の保護よりも,小額所得を申告しても非 課税となるばあいの税務行政の煩を避けるために設けられているとの主張も ある。しかし,源泉徴収が多くなり,申告によって還付がおこなわれている 現状をみると,この主張には賛成できないO 最も通説的なものは,扶養控除 によって家族を維持する負担を調整するという説である。確かに,低額所得 者に乙れは妥当な意見であろうが,中額所得階層以上の者にとって,僅かの 控除額はさしたる意味がない。要するに,扶養控除は厳格な課税と要求と一 致しない。

以上のようにピットカーは個々の所得に対して,包括的所得課税論者が課 税を要求するものに対しては,課税の適確性に問題があると具議を唱えるo

他方,包括的所得課税標準論者が便宜上,課税の延期を認める項目に対して は,論理が一貫していないと指摘する。また,ある程の所得に対しては課税 を要求するが,類似の性格をもつものに対してそうでない乙とを,非常に精 細な例をもって挙げ,包括的所得課税標準の性格があいまいだと批判するの である。

(15)

7.  マスグレイヴの再批判

合理的な所得税制度を樹立するために,一般所得概念が不要だとピットカ ーは考えている。これは支持できない態度である,とマスグレイヴは批判す る。その理由は,所得概念なくしては有意な所得税となり得ないし,また,

所得概念は個別所得をばらばらに寄せ集めたものを超越した存在だからで ある。では,有志な所得税制度は, どのような所得概念を基盤にもてばよ いか。マスグレイヴは,乙れを発生概念に求めているO 同教授によれば,発 生概念という共通の基準がなくては体系的水平々等を達成することが不可 能であるし,この平等なくしては,注意的課税とならざるを得ないからで

あるO

一般論の次元で考えるならば,水平々等を達成するには発生概念による所 得規定が最も妥当である,というのがマスグレイヴの考えであるo所得は要 素稼得でもあろうし,単なる移転支出でもあろうoそれは,予測されたもの であるし,予測外のものでもあろうD 規則的に得られる所得もあるだろう し,不規則的な所得もあるであろうO 発生,実現の如何を問わず,消費の増 加,純資産の増加をもたらすゲインの存在が主眼であるロと乙ろが,ビット

カーはこの所得全般ということに思いを馳せないで,たY個別所得だけを問 題にしているD しかし,個々の所得という特定のケースは,共通の基準で評 価されなければならないことを,マスグレイヴは指摘する。

このように包括的所得課税標準は,水平々等を達成するために,最も妥当 な基準であるのと同時に,それは,垂直平等の達成にも重要な役割を演じて いるD 控除および非課税所得には低額所得居や中額所得隠の課税救済になる ものと,主として高額所得自の課税救済になるものとがあるo帰庖家賃の社 会保障給付,附随給付(特に社会保障税の雇い主負担)等の所得不算入は,

低中額所得回に,免税公債利子,寄附金控除,キャピタノレ・ゲインの分離課 税等は高額所得階層に影響を与えると乙ろが大きい。特に,実現したキャピ タノレ・ゲイン課税に対する特例は,ゲインを得る乙とができる限られた高額 所得者に対して,事実上の累進を停止していることになる。その結果,高額

(16)

所得者の間でも,キャピタノレ・ゲインを得る人とそうでない人との聞に水平 々等が達成されないことだけではなく,税法で規定された垂直平等も成就さ れない乙とになっている。乙のように,ある程の控除は,公平の観点からみ

(9)  て,非常に由々しい問題をもっている口

控除の一部は,政策的減税に相当するものであり,特定の目的を達成する ための如何なる優遇措置も,実質は補助金であるO こう指摘ししたあとで,

マスグレイヴはつぎのようにいうo これら補助金の性格を誠税に仮装して,

その本性を曇らせるよりも,明示的ベイスで補助金を支払う方が,より良い であろう。控除という救済条項のほうが行政上は簡単であるが,事態をはっ きりさせる意味で,補助金支出のほうが優れているO

以上のように,一般論を展開してピットカーの問題提起の態度を批判した あとで,マスグレイヴはピットカーが批判した個別所得について,つぎのよ

うに反論をするD

(1) 社 会 保 障

社会保険による年金の給付は,納付分に対しては非課税を,投資による利 子相当分に対しては課税をすればよい。扶助金の類は,低額給付で免税にす る場合と,高額給付で課税する場合との,いずれかが選択されるであろうo

どちらの方法でもかまわないが,ものごとをはっきり明示する政策を執る方 が望ましいであろうD この場合には,移転支出は当然課税されることにな

公共サーヴィスにより帰属する利益については,原理的にはこれらを課税 すべきであるが,便宜上,現金給付だけに課税範囲をしぼっても,さしたる 不都合が生じないであろうO

(2)  贈与および追贈

発生概念からすれば,この項目は受取人の所得となり課税をするのが当然 であると,ピットカーの指摘が正しいことを認めているo しかし,贈与およ び遺贈を所得に算入するならば,贈与者の所得に算入する方が妥当である か,あるいは,受贈者の所得に算入すべきかという困難な問題が生じてくるO

(17)

(3) 帰 属 所 得

乙れも論理的には,ピットカーがいうように,すべての帰属所得を課税標 準に算入すべきであるが,それは実行不可能である口調整粗所得は,現金所 得の概念を問執しているから,帰属所得を算入していない。しかし,乙のた めに帰属家賃の場合,自家所有者と借家人との問に不公平を生じさせるD た,帰属家賃の算定は,比較的容易であるから,当然課税対象とすべきであ O 民場でとれた食おの自家消費や,会社のl!Iを私用に供する等の現物所得 も,現金収入の代詩であるから課税すべきであるO Yし,帰属所得の所得 算入は,あまり厳格に実施すると実際的でなくなるおそれがある。

(4)未実現ゲイン

キャピタノレ・ゲインの取扱いには,実現したゲインと未実現のゲインに対 する 2つの問題がある。実現したゲンイに対しては,平均課税を適用して全 額を課税標準にいれ〉ば宜しい。そこで問題は未実現のゲインになるが,発 生概念から考えれば,これが包括的所得課税摂準にはいることに異論がな い。実現したゲインに課税して未実現のゲインを非課税にしておけば,資産 の封鎖問題が生じてくるD 未実現のゲインを包括的所得課税標準に入れ〉

ば,封鎖問題が解決するけれども,資産を各年評価するといった非現実性の ために,これは妥当でなし凡そこで 5年毎,あるいは10年毎に税法上構造 実現をして,発生ゲインに課税をすることが,包括的所得課税論者から提案 されてきているo構造実現は完全な代替とはならないが,それによる節税に 対しは,利子相当分を徴収すればよいD

(5)控 除

所得課税に際して諸控除が設定されることにより,課税所得が経済力のよ り良い測定基準となっている。扶養控除の存在は,別段包括的所得課税標準 の理論を破碇させるものではない。控除のうち,雑損控除,医療控除は,同 規校で同額所得の家族でも,異常な出資が担税力を変化させるから,乙れを 認めることが却って課税の公平目的をより完全に達成することになる。しか し,控除の中には不適当なものがあるとして,慈善事業に対する寄附控除を

(18)

強 く 批 判 す るo寄 附 控 除 を 認 め る よ り も , 慈 善 事 業 に 対 す る 補 助 金 支 出 の ほ うが望ましいからである。

100. 

アメリカ所得税の名目税率と現実の実効税率 実効税率(パーセント)

!o  20 100 500 1.000  所 得 ( 単 位 1C∞ドJレ) 出所.、J.A.PechmanFederl Tax Policy, Rev.  ed., Washington, 1971, P.69 

(9)  l図はアメリカを例にとり所得税の浸蝕がどのようになされているかを示 したものである。基本控除 (Exemptions)は,わが国の基礎控除および扶養控除 並びにその他の諸控除に相当するものであり,年収 l万ドノレ以下の所得階層の救済 に役立つている。経費的控除 (Deductions)は地方税控除,抵当利子控除,医療 控除,雑損控除,寄附控除,子女世話賀控除等が含まれる。地方税控除は,売上税,

資産税等の地方税を所得控除するものであるが,概算控除が認められている。子女 世話費控除は,被傭者である寡婦(夫)または共稼ぎ夫婦が扶養子女の世話買とし て支出した全額に月額400jレまで所控除するもの。経費的控除は年収3万ドJレ以 上の高額所得者に対する影響が大きい。キャピタノレ・ゲイン条項は短期実現ゲイン は全額課税所得に算入,長期実現ゲインは半額を課税所得に算入するか 5万ドノレ までは25パーセントの分離課税を認めている。このため,最高所得階層では実効税 率が25パーセントも低くなる。

勤労所得の最高税率は50パーセントで累進を止めることが最近実施された。わが 国でも勤労所得に対して昭和49年度から最高限度額を設けないで給与所得控除が設 置されることになった。勤労所得を不労所得よりも優遇しようという趣旨からであ るが,年収1000万円以上の給与所得を普通の勤労所得同様に考える必要があるか どうかについては大きな疑問が残る。

(19)

1図は合法的な課税浸蝕を示したものであり,これをみると1万ドル以上の所 得階層では名目税率と比較して実効税率は約2分のlIr減少しているととがわか る。それ以下の階層では,更に減少率が高い。乙のように,諸控除は内容により影 響される所得層が具るし,またキャピタル・ゲイン条項は高額所得屈に非常に有利 に作用している乙とがわかる。

1図の視点を変えればつぎのようになる。すなわち,限界税率を70パーセント とか, 75パーセントというような最高税率を設けないで,もっと低くする乙とが十 分可能である。現に,カーター委員会も最高税率を50パーセントにするととを勧告 し,現行のカナダ所得税率は47パーセントで累進が終っている。所定の所得税収入 を確保しようと欲するならば,課税標準の拡大lとより,かなり低い税率で優にまか なうととができる。その意味からも包括的所得課税標準の実践的意義が存在するの であり,公平な所得税の実施という点から,注目に値いする。

なお,わが国の所得税の浸蝕については,貝塚氏の先導的研究が発表されている

〈貝塚啓明「所得税制のタックス・ベース」貝塚啓明,林健久編『日本の財政』所 1973259‑270ページ)。

8.  ペ ッ ク マ ン の 再 批 判

ペックマンはピットカーが包括的所得課税標準を真に理解していないこと を指摘するoピットカーは,第lに,内国歳入法で規定された所得と包括的 所得課税標準との違いを,第2~乙,商務省規定による個人所得と包括的所得 課税標準との差異を,第3!乙,へイグ=サイモンズ概念と包括的所得課税標 準との違いについて考えているD しかし,現行の税法をもとにして包括的所 得課税標準を確立しようと試みた者は誰一人としていないし,それは問題を 混乱させるだけであるO 同様に,個人所得も国民所得勘定のために造りださ れたものであり,所得課税目的のために作られていないから,これまた課税 所得概念の妥当な基準とはなりえない。個人所得を訳税所得の基準とする論 者は,キャピタノレ・ゲインの全額を課税所得に算入することに反対する人だ けである。

包 括 的 所 得 課 税 椋 準 は , 突 に へ イ グ = サ イ モ ン ズ 概 念 か ら 出 発 し て い る

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