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旅行業者の競争戦略の分析 : 大手4社の経営行動に 着目して

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(1)

着目して

著者 狩野 美知子

雑誌名 静岡大学経済研究

13

3

ページ 51‑83

発行年 2008‑12‑24

出版者 静岡大学人文学部

URL http://doi.org/10.14945/00003295

(2)

旅行業者の競争戦略の分析

一大手4社の経営行動に着 日して一

 

 

美知子

は じめに

取扱高か らみた旅行業界の規模の推移 によれば、 この業界は、1996年 頃をピークに成熟期 を迎 え、本格的な競争にさらされていると考 えられる。また、 この業界は約 1万 社の業者が存在する中 で、JTB、 近畿 日本 ツー リス ト、 日本旅行、阪急交通社の大手4社が、全取扱高の約3分の 1を 占 めるとい う特殊な構造 を示すヽ 筆者は、狩野 (2008)において、国土交通省観光課か ら入手 した 時系列データの分析か ら、 この特殊な産業構造を定量的に明 らかにし、その分析結果 と大手 4社 お よび県内地場 4社 の旅行業者に対する聞き取 り調査の結果か ら、旅行業界の重層的産業構造を明 ら かにした。 しか し、厳 しい競争の中で、重層的産業構造の上部 を構成する大手 4社 はどのような戦 略を とり、何 をめ ぐって競争 してきたのか、 この業界の競争優位性は何か、 についての議論 まで 至 ることはできなか った。本稿は、 この残 された疑間を明 らかにす ることを目的 とす る。

旅行業界の競争 を論 じるにあた り、まず、次節で旅行業界を扱った先行研究の レビューを行 う。

第 3節 では、関連文献および大手 4社 に対 して行った聞き取 り調査2をもとに、 この業界の産業構造 を定性的 に分析 し、基本的特性 を取 り出す。 この ことを通 じて、旅行業界 を取 り巻 く環境 とその 変化について概観す る。第 4節 で、関連文献 を使 った大手 4社 の経営行動の分析か ら、大手4社 戦略や競争 を明 らか にす る。最後 に、前節までの分析結果 を総合 し、 この業界 における競争優位 性 について考察す る。

本稿で扱っている旅行業界 とは、旅行業法の定めによる第 1種 、第2種、第3種旅行業者か ら構 成 され る業界 を指 している。また、本稿 においては、旅行業界 と旅行産業を同一語 として扱い、

旅行業者 と旅行会社、旅行企業を同一語 として扱 つている。業界規模の ピークが 1996年 頃であ り、

このあた りか ら成熟期 に入 つた と考 え られ ることか ら、主 に1996年 以降を研究対象 としている。

1旅行業界 の規模 の推移お よび特殊な構造 に関す る数値的データは、狩野(2008)を参照 されたい。

2詳細 は、狩野(2008)を参照 され たい。

‑ 51 ‑―

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.先行 研 究 レ ビ ュー

旅行業界の産業構造を扱つた研究 としては、米浪 (1998)、 麻生 000カ 、柴田 0006)、 狩野 ●0081 があげられ る。いずれ も公刊データを利用 した定量的分析 を行い、企業規模の零細 さ、参入障壁 の低 さ等の旅行業の基本的特性 を取 り出している。 しか し、 これ らの研究は、「経済お よび技術の 構造 に基づ く業界の基本的特性3」 を取 り出す とい う視点に欠けている。本稿では、 この視点 に立 ち、ポーターの 「5つ の競争要因4」 に基づ き、旅行業界の構造を定性的に分析 している。 さらに、

本稿では、 この 「5つ の競争要因」をダイナ ミックに捉 え、その要因を大 きく変化 させた 「政府の 政策」「イ ンターネ ッ トの普及」「平和 と安全・為替の変動 。景気の変動」 を取 り上 げ、 これ らを 3つ の変動要因 と呼んでいる。

Cavlek(2006)は ドイツを中心 とした ヨーロッパ市場 における トラベル・エージェンシー と ツアー0オペ レーター5の収益構造 について詳 しく述べている。旅行先進国であるヨー ロッパの状 況を理解す ることは、 これか らの 日本の旅行業の経営戦略を考 える上で重要であるため、簡単 に

日本 との違いをま とめる。 これか らわかる日本 との違いは、

①チャーター便の利用

②徹底的な垂直統合や、国境を超えた水平統合による、価格競争力の追及

③イール ド・マネジメン ト6の手法により、流動的に価格を設定し、収益の最大化を図る とい うことである。旅行・観光の仲介業者のこれからの事業は、新 しい情報通信技術の利用 とと もに、統合 と提携によつて特徴づけられると結論づけられている。

小林 (2007)は 、海外旅行ビジネスにおいて諸条件が日本 と類似している英国を取 り上げ、そ のビジネスの先進性から、「競争促進的政策」「市場創造型経営」 とい う英国型への転換を求めて いる。旅行業者へは、消費者視点に立脚 した「選 り取 り旅行」へのビジネスシステムの転換の必 要性を説いている。この研究は、航空行政、航空業界の事情に詳 しく7参考になる。

今西 (1998、 2001)は、近畿 日本ツー リス ト、東急観光、日本交通公社、日本旅行の4社に対す

る聞き取 り調査および海外に進出している日本の旅行企業に対するアンケー トの実施により、日

3 Poter(1980)に よれば、産業構造の分析の目的は、 この基本的特性を発見することである。「この特性の上に、企 業 の戦略 は策定 されなけれ ばな らない」(訳書21ペ ージ)とも述べ られている。

4詳しくは、Poter(1980)を 参照 されたい。

5ッ̲.ォペ レーターは、交通手段、宿泊な どのサー ビスを組み合わせて旅行商品を造成 し、商品 として顧客 に直接的・間接的 に販売す るホールセ ラーである。 トラベル・エージェンシーは、 ツアー・オペ レーターの商 品を顧客 に仲介・販売す る、売れ残 りの リスクを負わない リテーラーである。 日本の大手総合旅行社の場合は、

両方 の機能 を併せ もってい る。

6もともとは、ユナイテ ッ ド・エアラインや アメ リカ ン・エアラインな どのアメ リカ系航空会社が収入 を最大化 させ るために導入 した ビジネス戦略の一つで、 コンピュータによる予約管理 システムを駆使 し、変化する需要 に対応 し、きめ細か く販売価格 をコン トロールす るものである。

7海外旅行会社で仕入れの実務 にあた っていた(p.115)とい う小林氏 の経験 を反映 している。

‑ 52 ‑―

(4)

本 の旅 行企業 の海外拠 点 は、

① 日本人及び日系企業を対象市場にしている

②現地の従業員は日本人や日系人の比率が高い

③海外においても日本的なサービスを提供している

④海外における競争相手も日本企業である

とい う4点 で自民族 を中心 とする特徴 を持つ と結論づ け、 これを「エスニック 。モデル」 と名づけ てい る。見方 をかえると、 これ らの海外拠点は国際競争力をもてなかった とい うことで、製造業 な どの産業が国内で成熟 して くると、多角化 と国際化で対応 しようとする8ことか ら考 えると、成 熟期 を迎 えた と思われる旅行業界の国際化 を考 える うえで興味深い。

本研究 と直接的 には関係 しないが、玉村 (2003)は、社会的、経済的 に似通つた条件 を持つだ けでな く、国外への観光旅行の半数以上 をパ ッケージ・ツアーが占める英国 と日本 を比較 し、両 国のパ ッケージ・ ツアーの発展・特徴 を検証 している。なぜ、英国のパ ッケージ・ツアーは低価 格で 日本のそれは高いのか。その理由を、英国のパ ッケージ・ツアーは 「異種観光同類 ツアー」

であ り、 日本 のそれは 「同類観光異種 ツアー」であるか らだ と仮説 を立て、議論 をす る。 これま での 日本人のパ ッケージ・ ツアーの嗜好や、 これか らの 日本のパ ッケージ・ツアーの造成を考 え る上で参考 になるものである。

以上みてきた よ うに、旅行業界について、学術的、体系的に研究 を行つた ものはあま り多 くは ない。特 に、その競争優位性を扱ったものはみあたらない。本稿は、大手4社 に対する聞き取 り調 査 と関連文献の分析か ら、できるだけ客観的 にこの業界の競争 を提 え、競争優位性 に関する考察

̀を行 っている。

.旅行 業 界 を取 り巻 く環 境 とそ の 変 化

l.ポーターの「5つ の競争要因」 と旅行業界

ポーターは、業界の 「競争状態を決めるのは、基本的 に5つ の要因である9」 と述べている。 こ の5つ の競争要因を、1996年 以降の旅行業界 にあてはめて考えると、図31のようになる。 ここで は、 この間の 5つ の競争要因を大 き く変化 させた、3つ の変動要因も加 えて図示 している。

詳 しくは、伊丹(1993)を参照 されたい Poter(1980)、 訳書17ページ参照。

一‑ 53 ‑一

(5)

①新規参入 の脅威 イ ンターネ ッ ト業者

海外 の旅行業者

イ ンターネ ッ トの普及

④売 り手の交渉力 航空業者 宿泊業者

②業者間の敵対関係 競争業者

⑤買い手の交渉力 旅行者 (顧)

③代替製 品・サーヒ スの脅威 携 帯電話 、イベ ン ト、

テ レビ、ゲー ム機等

平和 と安全 為 替 の変動 景気 の変動 31.旅行業界 の「5つの競争要因」と3つの変動要因

‑1‑1.新規参入の脅威

新規参入の脅威は、「参入への障壁が どの くらいあるか、お よび、既存の業者が新規参入業者に 対 して どれ くらいの反撃 を起 こす と参入者が予想するかЮ」│こよって決まる。 この参入障壁 として は、規模の経済性が働 くこと、製品の差別化が進んでいること、巨額の投資が必要な場合、仕入 先変更 コス トがかかること、流通チャネルの確保が必要な場合、政府の規制があることな どが挙

げられてい る。

これ らを、旅行業 にあてはめて考える。

①仕入に関しては規模の経済が働 くが、それを提携販売により他の業者から仕入れることは可 能である。仕入先を変更するためのコス トとい うのもほとんど考えられない。

②同様の理由で、流通チャネルの確保も、他産業に比べ容易 と言える。

③製品の差別化とい う意味では、大手の企画商品は、JTBのルック (海外旅行)、 エース (国 旅行)、 近畿 日本ツー リス トのホリデー (海)、 メイ ト(国)、 日本旅行のマッハやベス ト

(海)、 赤い風船 (国)、 阪急交通社の トラビックスといったようにブラン ド化がなされ、

それな りの信頼を得てはいる。 しかし、これも提携販売により他社商品の取 り扱いは可能で

Ю Poter(1980)、 訳書22ペー ジ参照。

‑ 54 ‑

(6)

あ る し、パ ンフ レッ ト等 の媒体 によ り可視化 されてい るため、製 品の同質化が図 られやすい。

④消費者保護の観点に立つ旅行業法により、政府による参入規制が行われているが、クリアし にくいほどの条件でもない。

⑤「電話1本1つから」と言われているように、開業のための資金もそれほど必要とはしない。

したがって、総じて参入障壁が低い産業と言える。こういった参入障壁の低さが、1万社にもお よぶ業者の存在を許 していると言 える。

ここ10年 くらいの間の新規参入者で、特 に業界 を脅か しているのが、楽天 トラベル、一体 とい ったITA(Intemet Travel Agency)、 いわゆるインターネ ッ ト業者である。1980年 代には、HIS

の参入 による海外航空券の価格破壊が、 この業界 に大 きなインパク トを与 えた。 これ と同様 に、

ITAの参入 による脅威は業界全体 に影響 を及ぼ し、販売チャネルのあ り方を変 える大 きな もの と なつた。

このインターネ ッ ト業者 として、最近、アメリカのエクスペディアが 日本市場に参入11している。

エクスペディアは、1996年 にマイクロソフ ト社の一部 として設立 された世界最大の旅行予約サイ トである。2000年 末 にダイナ ミック・パ ッケージを導入 し、アメ リカで急成長 した。エクスペデ ィアは、まだ 日本ではそれほ どの力を持 ってはいないが、 この参入が 日本の旅行業界のダイナ ミ ック・パ ッケージヘの取 り組みに拍車をかけた要因の 1つ と言えるだろ う。ダイナ ミック・パ ッケ ー ジとは、簡単 に言えば、個人旅行者が、旅行業者の販売する航空券 とホテル を自由に組み合わ せて、パ ッケージ・ッアー として完成 させ る商品である。

また、 このダイナ ミック・パ ッケージが 日本で初めて導入 されたのは2005年10月で、住友商事 100%出資す るグローバル トラベルオ ンライン (GTO)に よるものである12.この企業 自身が商 事会社 とい う異業種か らの参入であつた。

l‑2.業者間の敵対関係

この部分が、業界内各社の競争関係をみる部分ではあるが、第Ⅳ節で4社 の競争を中心に詳 しく 分析す るため、 ここでは簡単な記述 にとどめる。

1997年 以降、 この業界は熾烈な価格競争 を行 っている。1997年 末の『 日経 ビジネス』の記事 に よれば、以前は業界 トップのJTBが価格 を発表 し、各社がそれを見てそれぞれ に価格設定をする とい う暗黙の慣行があったが、 日本旅行のブラン ド商品の値下 げ発表の翌 日に、JTBが自社 ブラ ン ド商品でそれを下回る値下げ価格 を発表 したBと書かれている。価格競争 を仕掛 けてシェア拡大

11『日経 ビジネス』2006年12月 4日号、p.12参 照。

12『TraVel Joumal』 2007年1月1・ 8号、p.10参 照。なお、 ダイナ ミック・パ ッケージについては、 この号で特集が 組 まれてい る(pp.10‑27)。

13『日経 ビジネス』1997年12月 1日号、pp.2728参照。

‑ 55 ‑―

(7)

を狙 うJTBの様子 を うかがわせ、 この頃か ら競争が激 しくな り、従来の暗黙の棲み分 けの よ うな ものが崩れていることが分かる。

1996年 をピークに業界の市場規模が縮小する傾向にあ り、業界の成長が鈍 った ことにより、業 者間のシェア争奪競争が行われ、敵対関係が強まった と考 えられ る。 シェア争奪競争 による価格 戦争 は、財務的 に体力のある大手企業はまだ しも、 中小業者 にとつてかな り厳 しいものであった に違いない。そ ういつた中、大手業者対 中堅業者 グループとい う構図の業者間のアライアンス も 見 られ る。

その1つ が、1995年 に発足 したTPC(Travel Parts Center)14でぁる。 これは、 中堅ホールセ ラ ー会社 24社 晰がサプライヤー会員 とな り、航空座席 とホテルを1セッ トにしたユニ ッ トと呼ばれる ものや、航空座席、ホテルなどの旅行素材を、バイヤー会員 として登録 している旅行会社に、TPC

が定めたレー トで提供するものである。サプライヤー会員各社は、取 り扱 う方面や航空会社な ど で競合 しないように、ある程度の制限が設けられている。サプライヤー会員 としては、スケール・

メ リッ トを追求 していて、アライアンスにより大手企業の提供する価格 に対抗 しようとしている。

も う1つ が、私鉄系旅行会社9社 によるクラブエキスプレスrでぁる。 こちらは、共同企画・販 売協力のアライアンスで、県内の遠鉄 トラベル と静鉄観光サー ビスも加入 している。また、最近 の新 しい動 きとして、近畿 日本 ツー リス トのプラッ トフォーム戦略があげられるが、 これ に関 し ては、次節で詳 しく述べ る。

1 3.代替製品・サー ビスの脅威

旅行業は、 もともと生活 に必要な商品やサー ビスを販売す るわけではな く、人々の余暇時間や 余裕資金を費やすための ものを提供する。 したがって、代替製品・サー ビス とい う意味では、 レ ジャー産業の提供す るものが該 当すると考 えられる。聞き取 り調査 によれば、携帯電話が一気 に 普及 した2000年 頃は、携帯電話が旅行業 にとっての脅威 となった。最近では、地上波デジタル移 行を控 えた大型テ レビも、脅威 をもた らす代替品の一つであろ う。バブル経済の崩壊 によ り各家 庭 の家計状況が厳 しくなった ころに若者であった人々は、あま り旅行 に行 くとい う習慣 もな く、

旅行 に行かない人々が増 えた と言 う。

Travel」Oumal』 2006年10月 9日号、pp.8‑11参 照。

15 1Ts、

ァ ップル ワール ド、R&Cツ アーズ、A&A、 NOE、 NTB、 エーペ ックスインターナ シ ョナル、エルム ン ド、オーベルインターナ シ ョナル、か もめ、クロノス・インターナ シ ョナル、KISイ ンターナ シ ョナル、国際 旅行社、サイ クル、」HC、 タ ビックスジャパ ン、内外航空サー ビス、ブルーパシフィックツアーズ、プ ロコ・

エアサー ビス、 ミッシ ョンズ旅行セ ンター、ユニオ ンエアサー ビス、アクセス、平和ITC、 ワール ドコネ クシ ョ

ンЪ

遠鉄 トラベル、小 田急 トラベル、京王観光、京急観光、静鉄観光サー ビス、西部 トラベル、富士急 トラベル、

東武 トラベル、京成 トラベル。

Tfavel」Ournal』2006年10月 9日号、pp.8‑11参 照。

‑ 56 ‑―

(8)

また、わが国の国内での旅行消費額 は24.5兆 円 (2004年度推計)18ぁるといわれているが、その うち旅行業界が取 り込んでいるのは約 7兆 円超19である。つま り、人々は自ら」Rや飛行機の切符 を 購入 し、宿泊を予約 し旅行 に出かけるとい うパターンが この市場の約 3分 の2を 占めてお り、いか

にこの旅行需要 を旅行業界が取 り込めるか とい うのも一つの課題 となつている。

90年代 はバ ブル経済の崩壊 により企業の団体旅行が減少 し、代わって個人旅行が新 しい市場 と して注 目された。各旅行業者は、FI?0と 呼ばれ る個人の海外旅行 に対応す る旅行市場 を開拓 し、

それ に対応する旅行商品を造成 した。そ して、 ここ2〜 3年 は、企業の出張事務全般 を業務 として 取 り込む戦略が加速 しているが、そ ういつた意味では、総務事務全般 を扱 うアウ トソーシングの 会社 とは競合せ ぎるを得ない。また、大手旅行業者は、最近の傾向 として、総合旅行業か ら文化 交流産業や プロデ ュース業 として ドメインを広 げているが、 この よ うにイベ ン ト企画や企業の報 奨 をプロデ ュース しよ うとす るな らば、広告会社やイベ ン ト会社が避 けられない敵 となるであろ

う。 ドメインの拡大 に対応 し、業界の境界 も変化 してい くと考 えられる。

‑1‑4.買い手の交渉力

成熟期の顧客の特徴 として、買いなれた顧客が増 える と言われている。 この業界で も、テ レビ の旅情報番組や リピーターの増加 により、顧客の知識が豊富 とな り、ニーズも多様化 し、顧客の 交渉力が増 している。人々は、同 じ商品な らより安 く、構成する旅行素材のよい もの、サー ビス の良い ものを探 して、旅行業者 を選別する。 これ によ り、同 じよ うな旅行商品な ら、 よ り低価格 の ものが好まれ るよ うになる。

一方で、成熟期 における顧客は、ブラン ド間の選好が決まって くるとも言われている。旅行商 品の場合、利用 した旅行での満足度 により選好が決まって くることが考 えられ る。 したがって、

リピーターを獲得す るためには、顧客 の意見をフィー ドバ ックして満足度の向上が図れ るような 制度 を整 えることが重要 になって くる。

l‑5.売 り手の交渉力

売 り手の中で も、特 に航空業界の交渉力が増 している。国際航空運賃は、IATA(IntematiOll―

al Air Transport Association:国 際運送航空協会)において決議 された運賃を、関係国政府が認 可 をして初めて正式な運賃 として発効 され る。航空運賃は普通運賃 と特別運賃 に分かれ、特別運 賃 は普通運賃 より安 く、適用 に制限がある。特別運賃の中には、航空需要の促進 を目的 として、

18国土交通省総合政策局旅行振興課(2005)による推計である。

19狩 野(2008)による推計である。

20 Free lndependent Travel:自 由個人旅行 の こ とを指す。

‑ 57 ‑―

(9)

ペ ックス運賃 (PEX運)と包括旅行運賃 (IT運)がある。PEX運賃は航空会社が直接消費者 に販売できるが、IT運賃 は旅行会社 を経由 しなければ購入できない もので、 これがいわゆるパ ッ ケージ・ツアーで使用 され る航空座席の運賃 となる。

1998年 の 「国際航空運賃 にかかる制度改正」により、 これ らの国際航空運賃の特別運賃が実質 的 に自由化 され、運賃の低価格化への拍車がかかつた。 これ による価格競争の激化 により、欧米 系航空会社がコス トの見直 しを行い、2005年 以降、 日本路線か らの直行便の撤退が行われている。

一方、 日系航空会社でも、2005年 10月以降、 日本航空の レジャー路線の縮小や、地方空港 におけ る直行便の減少、機材の小型化が進み、 こち らも航空座席数そのものが減少 している。 日米欧航 空会社 のこれ らの事情 により、 さらなる仕入れ・価格競争の激化が起 きている2と言われている。

大手関係者の話 によれば、今後、人気のあるコースの座席 を一定数確保す るために、人気のな い コースの座席 を販売するよ う割 り当て られることも考 えられ ると言 う。 この場合は規模 の経済 では対応できない し、む しろ、スケール・デ メリッ トになることも考えられるとい うことである。

ダイナ ミック・パ ッケージの導入 により、 さらにこれが加速 し、仕入価格の上昇 も考えられ る。

2008年10月、欧米航空会社は、旅行業者に支払つていた3〜5%の販売手数料 を廃止 した22.ィ ターネ ッ ト経由で顧客 に直接販売 した り、機材 をジャンボ機か ら中型機 に変 えた りす ることによ り、販売促進費をかけな くて も座席が売れ るようになつたか らである。つ ま り、保有す る座席数 が多い場合は、多量の座席 を販売 して くれ る旅行業者を通す ことに販売促進上の意味があった。

しか し、旅行業者を経由しな くて も売れ残 りを出さな くなってきたため、旅行業者を経由する意 味がな くなつてきたのである。なかで も、航空会社 にとつて利幅の小 さいIT運賃の座席数は さら に縮小傾 向にある。

‑2.政府の政策の変遷

今まで見てきた 「5つ の競争要因」 とは別 に、旅行業界の競争 を考える上で無視することができ ないものに、政府の政策がある。政府の政策の影響は、個々の企業 レベル には等 しく働 くわ けだ が、業界全体 に多大な影響 を与えるため、戦略を考 える上で も重要 となつて くる。例 えば、前述 の航空運賃制度の規制緩和 により、航空業界が交渉力を増す場合 もあれば、旅行業法の規制緩和 による新規参入者23の増加な ど、 この業界の競争 に大 き く影響 を与えている。 この業界 にかかわる 政府の政策は、大き く分 けて、旅行業法 による業界の規制 と観光行政 における啓蒙的キャンペー ン、お よび航空政策の3つ があげられる。 ここで、 これ らの3つ について、簡単 にま とめてお く。

Travel」Oumal』2006年8月14・ 21日号、p.15参 照。

22『日本経済新 聞』2008年10月 2日参照。

231997年5月 2日「コンビニエ ンスス トア等を使用 した主催旅行商品等の販売 について」に基づ き、 コンビニで端末 を使 った旅行商品の販売が認 め られ た。詳 しくは、多喜忠雄(2001)を参照 されたい。

―‑ 58 ‑一

(10)

‑21.旅行業法

旅行業界に関する規制は、1952年 に制定 された旅行斡旋業法が始ま りであつた。1971年 には大 規模な改正24が行われ、名称 も旅行業法へ と改められた。その後、小規模な改正は何回も行われて いるが、1982年 、1995年 、2004年 には大規模な改正が行われ、現在 に至っている。いずれ にして も、消費者 (旅行者)保護の観点か ら、旅行業者を登録制 にし、様々な規制 をお こなっている。

ここでは、本稿が 1996年 以降の旅行業界 に焦点をあてていることか ら、1996年 以降の業界を形づ くっている1995年 の改正 と2004年 の改正 について とりあげ、直近の2007年 の一部改正 についても ふれる。

1995年 の改正点25では、̲般旅行業、国内旅行業、旅行業代理店業の3つ の種男Uに分かれていた 登録制度が、第 1種 旅行業 (海外 。国内主催旅行を実施)、 2種旅行業 (国内主催旅行 を実施)、

第 3種 旅行業 (主催旅行を実施 しない)の3つ の旅行業 と旅行業者代理業 に分 けて登録する制度 に 変更 された。 また、営業所数 を基準 に算定 されていた営業保証金が、旅行者 との取引額 に応 じた 金額 に変更 された。 この営業保証金 と弁済業務保証金 については、旅行者優先で弁済す ることも 定め られた。旅行業法の改正 と連動 して標準旅行業約款の改正 も行われ、主催旅行契約 における 旅行業者の特別補償義務26に加 えて旅程保証27が導入 され、旅行業者の責任が強化 された。

2004年 の改正28では、旅行契約の区分が見直 された。それまで、主催旅行 と手配旅行の2つ の区 分であった旅行契約の形態が、企画旅行 と手配旅行の区分へ変更 され、 さらに企画旅行は募集型 企画旅行 と受注型企画旅行の2つ に分けられた。企画旅行契約 においては、主催旅行契約 と同様 に いずれ も旅程管理責任、特別補償責任、旅程保証責任 を負 っているが、 この特別補償制度 と旅程 保証制度 は対象が拡充 された。また、旅行業務取扱主任者の名称が旅行業務取扱管理者 に変更 さ れ、その職務範囲が拡大 された。

この改正は、消費者保護の観点を強めなが ら、一方で、旅行業者の収益改善の後押 しもしてい る。旅行業者は、 自社の企画力や仕入力を価格 に反映 させた旅行商品を販売す るほ うが、代理販 売 を行 つて販売手数料 をもら うより、各社 の努力や工夫により収益率を向上 させ ることが可能 と なる。 また、企画旅行を、旅行業者が素材 の仕入 を行い、商品を造成 し、価格 を設定 した もの と きちん と定義づ け、消費者への補償 を拡充す ることにより、インターネ ッ ト業者 による旅行素材 のみの直接販売 と差別化を行い、付加価値 を高めることができる。

24詳しくは、廣岡裕一a(2003)を 参照 されたい。

25詳 しくは、廣岡裕一c(2005)を 参照 されたい。

26旅 行参加 中に外来の事故等 により、旅行者が身体や携行品に損害をこうむった場合、旅行会社が旅行者に補償 金を支払 う制度 を指す。

27旅 行 日程 中に重要な変更が生 じた場合、旅行業者は旅行者に対 して、定められた変更保証金を支払 う責任を負 28詳 しくは、 日本国際観光学会編う。 (2005)、 佐 々木正人(2005)を参照 されたい。

‑ 59 ‑一

(11)

2007年 の旅行業法施行規則の一部改正では、第 3種 の業務範囲が変更 された。 これにより、催行 区域が営業所 に隣接する市町村であることと、申込金以外の旅行代金の収受 を、旅行開始前 に行 わない ことを条件に、第3種旅行業者 も限定的に募集型企画旅行を実施できるよ うになった。 これ は、地域が企画する創意工夫に満ちた旅行商品の流通 を促 して、観光 による地域振興 を進 めるこ とを目的 としている。

この改正 により、着地型旅行商品 とい うのが脚光を浴びている。従来は、発地型旅行商品、す なわち、旅行者の出発地か らみた旅行商品の開発であったが、旅行者 を迎 える側か らの旅行商品 を開発 し、それを地域振興 に役立て ようとい う発想である。静岡県内でも、旅館が第3種の登録 を 受 け、地域のバスツアーを行つているところもあ り、 これにより、顧客増 を狙 つている。また、

大手旅行業者 もこれに着 目29してぃる。現地主体で旅行商品を開発することにより、出発地では拾 えない顧客の潜在的にニーズを、着地側の発想で掘 り起 こす ことにより、旅行需要の増加 を狙 つ ている:

‑2‑2.観光行政

政府は、1997年 に「外国人観光客の来訪地域多様化促進による国際観光の振興 に関する法律」(外 客誘致法)と 「国際会議等の誘致の促進および開催の円滑化による国際観光の振興に関する法律」

(コンベ ンシ ョン法)を定め、訪 日外国人を増やす ことに力を入れている。

さらに、国土交通省では 「経済財政運営 と構造改革 に関する基本方針2002」 に基づ き、外 国人 旅行者の訪 日を促進する 「グローバル観光戦略」 を策定 した。 これは、2010年 の訪 日外国人旅行 者数 を1000万 人にするとい う目標 を掲 げた ビジッ ト・ジャパン・キャンペーンをはじめ とした外 国人旅行者訪 日 (インバ ウン ド)促進のために、政府、 自治体、民間企業な ど官民一体 となつて 取 り組む4つ の戦略案がまとめられている。 これにより、政府は 「観光立国」のス ローガンのもと、

観光を大きな産業の1つ と位置づ け、各旅行業者 も国や地方 自治体 と連携 し、外国人旅行者向けの パ ッケージ・ ツアーの企画、開発 に取 り組んでいる。

23.航空政策30

前出の 「売 り手の交渉力」の ところで述べたように、1998年10月、「国際航空運賃 にかかる制度 改正」 により、国際IT運 (包括旅行運賃)についての幅の下限を撤廃 し、 ゾーンPEX運31に

ついては下限を70%に拡大 した。 これ によ り、航空運賃の特別運賃が格安航空券 にとって代わ る

29「JTB、 沖縄で大手旅行会社 として全国初の着地型商品RIKKAおきなわ』を発売!」 (JTBニ ュース リリース2007 54号 )参照。

30詳 しくは、小林弘二(2007)を参照 されたい。

M IATAの基準運賃であるPEX運賃 を上限 に して、下限の範 囲内で航空会社 が独 自に運賃を設定で きる。

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(12)

レベル とな り、実質的に国際運賃が 自由化 された。 この前後 に、格安航空券販売業者 と言われて いた旅行業者以外 に、大手を中心 とした旅行業社 も格安航空券市場 に参入をしている。また、PEX

運賃は消費者が個人で購入できる正規運賃であるため、航空会社は旅行業者を通 さな くても直販 できることにな り、インターネ ッ トの普及 とあいまつて、航空券の流通政策の主導が、旅行業者 か ら航空会社 にシフ トす ることになつていった。売 り手の交渉力が強まる直接のきっかけとなっ たのである。

2000年2月には、改正航空法の施行により、国内航空運賃の自由化も行われた。 これにより、従 来 は認可制であった国内線航空運賃が事前届 け出制 に移行 し、 さらに、路線 の参入・撤退の制限 を行 ってきた需給調整規制 も廃止 された。

2007年5月、国土交通省は、国際チャーター便の運航規制を大幅に緩和する方針を固めた。 これ によ り、チャーター便 を活用 した柔軟な旅行 コースの設定が可能 となった。地方空港の定期路線 か ら撤退 した航空会社 もあ り、航空会社のジャンボ機が余 っている とい う背景 もあ り、旅行業者

としては、地方空港発着の収益率の高いパ ッケージ・ツアーを造成す ることが可能 となった。

‑3.旅行業界 を取 り巻 く環境の変化

旅行業が社会的 に認知 をされ るようになつたのは、1970年 の大阪万博の開催 による ところが大 きい。 この前後 に、東海道新幹線の開通、東京オ リンピックの開催、パ ッケージ・ツアーの造成 による旅行の大衆化、ジャンボ 。ジェッ ト機の就航、海外旅行の外貨持ち出 し制限枠の廃止 とい つた環境が整い、旅行ブームが起 こった。80年 代前半 に、旅行ブームに うま く乗 って業績を伸ば していったのが、新聞募集 を使 つたメディア販売 を手がけた阪急交通社である。 この時点では、

少品種大量造成の低価格パ ッケージ・ ツアーの販売であった。80年 代後半には、「エイ ビーロー ド」

「ブランカ」等の雑誌によるメデイア販売が開始 され、若者を中心に低価格の旅行が定着 してい った。 このよ うな 「無店舗販売の利用は、旅行者の リピーター率 と相関関係をもつ32」 ことがゎか っている。バ ブル景気 も手伝い、旅行業界は、1990年 頃まで順調 に業績 を伸ばしていつた。

しか し、1991年 にバブル経済が崩壊 し、湾岸戦争の勃発 もあ り、旅行業界は多大なマイナス影 響 を受け、それまで順調 に伸びていた海外旅行の取扱高が大幅に減少す る。 この業績の悪化は短 期で回復す るが、景気の低迷 によ り、旅行商品の低価格化が進行す る。また、 この頃か ら、それ までの団体旅行主体の旅行形態か ら、FITと呼ばれ る個人旅行へ と顧客のニーズが変化 し始める。

これ らの変化を うま くチャンスと捉え、格安航空券の販売に特化 した形で業績を仲ばしたのがHIS33

32国土交通省(2006)、 P133参

331980年 に夫婦2人で旅行会社 を設立 したHISは、1997年10月期年間売上高1400億 円、経常利益50億円の企業へ と 急成長 した。

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(13)

で あ る。

その後、円高34の影響や旅行代金の低価格化による日本人の海外旅行者の伸びに合わせ るように、

収益は ともか く、1996・ 1997年 頃までは、各社は順調 に旅行取扱高を伸ば した。1997年 をピーク に、景気の低迷 と連動 して さらなる価格破壊が進行 し、各社は他社 よりも100円で も安 くして競争 に勝つ とい う熾烈な価格競争 に走つた。 さらに2001年 の同時多発テ ロの発生や 2003年 のイラク戦 争の勃発 とSARSの流行 といった ことに影響 を受 け、2003年 頃まで業績は下降 し続 ける。旅行業 界は、為替の変動や平和 と安全が需要 に大 き く影響 を与 える業界である。

また、Windows98の発売 によリイ ンターネ ッ トが一般家庭 にも急速 に広 ま り、 この業界 に新た な販売チャネル として、インターネ ッ ト業者が参入 した。旅慣れた顧客の増加 とあいまって、消 費者が旅行業者を通 さず、インターネ ッ ト業者を利用 し宿泊予約 を行 うようになつた。 さらに、

最近では、インターネ ッ トを利用 したホテルや航空会社の直販 も増加傾 向にあ り、旅行業界はま すます厳 しい競争を強い られている。

‑4.旅行業界の定性的分析のまとめ

以上のように見て くると、1996年 以降のこの業界の 「5つ の競争要因」に変化をもた らした要因 として、「政府の政策」「インターネ ッ トの普及」「平和 と安全 ◆為替の変動・景気の変動」の3つ の役割が大 きい ことが分かる。従つて、本稿では、 これ らを3つ の変動要因と呼び、図3‑1で図示 した。

政府 の規制緩和の方針 により、売 り手 としての航空業界が価格設定の主導権 を握 るよ うにシフ トし、交渉力を増 した。一方で、チャーター便の規制緩和 により、 これを うま く利用すれば、旅 行業界 はチャーター便を活用す ることにより、定期便 を利用 したものよ り価格 の安い旅行商品を 造成す ることができる。消費者保護の観点か らの規制はあるものの、旅行業法 は産業育成法の役 割 も果 たしている。 日本旅行業協会か らの働 きかけもあ り、2008年10月 に観光庁が設置 され、 こ れ によ り、官民一体 となつた旅行業への取 り組みに、業界は期待 を寄せている。

売 り手の交渉力 とい う意味では、航空業者だけではな くJRなどの輸送業者 (いわゆるキャ リア)

や宿泊業者 も、インターネ ッ トを活用 した直販 を積極的 に展開するところが増 え、売 り手 自身が

ITA(インターネ ッ ト旅行業者)と並ぶ新規参入者にな りつつある。 このため、狩野 (2008)で しく述べた提携販売 も合めて、旅行業界は他産業、特 に製造業 と比べて流通経路が複雑 になつて いる [図32参]。

流通経路 を複雑 にする原因のひ とつは、 この業界が輸送業者や宿泊業者の提供す るサー ビスを 341995年4月1ド=約84円を記録 してい る

(日本銀行ホームページ参照:http://―v.boi.Or.ip/type/stat/dlong/fin stat/rate/cdab0780.csv)。

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(14)

仲介 し、組み合わせることによリサー ビスの商品を作 っていることに由来す る。実際にモ ノを移 動 させ るのではな く、情報 を伝達す ることによ り商品が販売 され るため、簡単 に取弓│が成立 し、

流通経路の複雑化を促す。サー ビスの伸介 とい う意味では、IT技術 を利用 した取引が、 コス ト削 減 とス ピー ドにおいて非常 に適 したもの と言えるため、イ ンターネ ッ トの普及 によ り、 さらにそ

32.旅行業 と製造業 のバ リュー 0チ ェー ンの比較 旅行業       製造業

原材 料

部品

製 品

装鞭鰊

 費 者 旅行素材

輸送業者      宿泊業者

インターネ ッ ト 上の業者

募集型企画商品・旅行素材 メーカー    直営店

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(15)

の複雑 さを増 している。輸送業者や宿泊業者は、 自らの持つ旅行素材 を消費者 に直接販売するた め、旅行業者 と比べて価格競争力を持 つている。

買い手の交渉力は、知識 を持 つた賢い消費者が増 え、ニーズも多様化 し、価格設定 にも敏感で あ り、力を増 している。た とえば、北海道 に行きたい とい うのではな く、北海道の函館市場 に行 きたい といった ように、ニーズが細分化 されてきている。多品種少量生産が必要 とされ、 もとも と収益率の低い旅行業界のコス ト構造 に悪影響 を与える。ただ し、旅行商品の場合、必要不可欠 なものではないため、消費者は気に入 らなければ旅行市場か ら退出 し、 自ら旅行を組み立てて直 接購入 した り、代替製品や代替サー ビス市場へ と向かつた りす ることも考 え られ る。交渉力を持 つ とい うより、消費者のニーズに合 つた高付加価値商品をより安 く作 らなければな らない とい う 圧力になつていると言 えよ う。

1996年 以降の旅行業界は、業界そのものの成長が停滞す る中、インターネ ッ トの普及 により流 通経路が複雑化 し、ITAによる人件費比率の低い新規参入者、売 り手の直接販売、顧客のニーズ の多様化 と価格 に対する厳 しい 目といつた環境の変化の中で、価格戦略を中心 とした競争が行わ れてきた と言 える。

"大4社の 経 営 行 動

l日 大手4社の概要 とその歩み

まず、大手 4社 の概要 とその歩みを述べ、各社の競争戦略を分析す る上での参考 とす る。表4‑

1は 、4社の経営資源 に着 目してま とめた概要である。

‑1‑1.閉TB(以JTBと表記す る)

JTBの前身であるジャパン・ ツー リス ト・ ビュー ローは、当時の鉄道院総裁原敬の指示 を受 け、

外貨獲得 を目的 として、外 国人 (訪)旅客の誘致のための案内業 を行 う国策会社 として設立 さ れた。戦後、財団法人 日本交通公社 と名称が変更 された。1925年 か ら邦人旅客への国内鉄道切符 の販売 を開始 し、戦後 も国鉄切符の代理販売を、 日本交通公社が唯一許 され る とい う時代が長 く 続いた。現在のJTBは、1963年 に、 この財団法人 日本交通公社の旅行部門が、株式会社 日本交通 公社 として分離 されたものである。 このような経緯か ら、現在の株式 も約 3割 が財団法人 日本交通 公社、約 4割 が東 日本旅客鉄道株式会社を中心 とするJR6社で所有する。なお、財団法人 日本交通 公社は、観光 レク リエーシ ョンお よび旅行に関する様々な調査研究を行 う公益法人 として、現在 も存続 している。

この よ うに、出発が国策会社であ り、鉄道が主流の時代 に長 らく独 占状態で切符 を販売 してい

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(16)

41.大手4社 の概要

l■lJTB 近畿 日本ツーリス ト欄 欄 日本旅 行 l■l阪急交通社 創 業

創業1912年 :ジ ャパ ン・ツー リス ト・ビ ューロー(国策会社)

1941年:l■l関急旅行

1905年 :南新助が高 野山参詣団お よび伊 勢 神宮参拝 団実施

1948年 :阪急電鉄lal

の代理店部 として航 空代理店業務 開始

設 立

1963年 :働 日本交通 公社の営利部門 とし て冊 日本交通公社設 (資本 金8億 円)

1955年 :近畿 日本 ツ ー リス ト側

1949年 :閉 日本旅行

1960年 :阪急国際交 通社

資本 金 (2007年現在)

23億 4百万 円 約75億 8千万 円

(東証 。大証一部上 )

40イ意円

(2007年度株式上場 予 定 で あ った が 延 )

5億3千万 円

事業所 数 (2007年現在)

(分割前 :2005年 度 デ ータ)

国内261ヶ 海外73ヶ

国 内241ヶ 海外67ヶ

(拠42ヶ所、事務 25ヶ)

国 内277ヶ 海外53ヶ

(拠37ヶ所、現地 法人16ヶ)

国内109ヶ 海外 :旅客現地法人

8ヶ所、国際輸送81ヶ

社員数 (2007年現在)

(分割前 :2005年 度 デー タ)

社員10,011名 (社員5,977名 、有 期 契 約 ス タ ッ フ 4,0344乙)

4,829名 (3月現在) 3,199名 (4月現在) 2,421名 (7月現 在)

ブ ラン ド商品

海外旅行ル ック 国内旅行エース

海外旅 行 ホ リデー 国 内旅 行 メイ ト

海外旅行マ ッハ、ベ ス ト

国内旅行赤い風船

トラ ピックス

取扱額 (2006年 )

(分割13社計)

海外  4,694億 外 国人  60億 国内  8,150億 : 1兆2,905億 円

海外  1,826億 外 国人  64億 国内  3,103億 :  4,993億

海外  1,706億 外 国人  58億 国 内  3,025億 :  4,790億

海外  2,459億 外 国人  10億 国内  1,290億 :  3,759億

主要50社 中の シ

ェア (2006年) 22.0% 8.5% 8.2% 6.4%

出所 :以 下の資料 お よびURLより引用 し、筆者作成。

JTBの「第43期事業報告書 (2005.4.1〜2006.3.31)」、「会社概要 (200744月)」、ホームページの会社情報lhttpプ/

1VⅥ V.jtbCOrp.jp/jp/company/)。

近畿 日本 ツー リス トの 「会社概要 (2007年1月 1日現在)」、 ホームページの会社案内・IR情 (http:〃w¬ぃ風 knt,co.ip/kouhOu/index.htllnl)。

日本旅行の 「会社経歴書 (2007年4月)」、ホームペ ー ジの会社情報 伍ttpノmw.nta.co.jp/company/)、 用情報 (http://w―,nta.co.ip/recl―tlit/index.html)。

阪急交通社 のホームペ ージの会社案内 (http://hei.hank卿 .co.jp/Outline.html)。

1: 資本金、事業所数、従業員数 は、各社 の経営資源 の量 を比較す るために、JTBのみ分社化前 の2005年 度の数 値で表 してい る。それ以外の3社は2007年 度 の数値 となつている。

2:JTB、 近畿 日本 ツー リス ト、 日本旅行の3社は、 ほぼ旅行業専業であるが、阪急交通社の事業内容は、旅行事 業 と国際輸送事業の2本柱である。従 つて、取扱額 を除いた各数値 は旅行事業のみのものではない。阪急交通 社 の対面販 売 を行 う国内事業所数 は36ヶ所 のみ とな る。旅行事業 に携わ る従業員数 も半分以下 と思われ る。

3: 取扱額 は、 国土交通省の資料 よ り2006年 度実績 を概数 にま とめた。そのため、海外、外国人、国内の合計 と 計 の値 の末尾 が一致 していない もの もある。

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(17)

た 日本交通公社は、その歴史的背景か ら、他社の どこも追いつけないほ どの豊富な経営資源を有 している。表41では、分社化前の2005年 度の事業所数や従業員数 を示 しているが、 この2005年 の分社化以前 にも、い くつ もの会社 を分離 し、グループ経営を行 つているため、実際にはこの何 倍 もの経営資源 を利用できる。

その最たるものが、1971年 に設立 された トラベ ラン ド興行 (現TBトラベ ラン ド)である。 こ こは、2007年4月現在で事業所数402ヶ所、従業員数 2,918名 を有 し、2006年 度 における取扱高 も 3,028億 円で、HISに次いで第 6位 となつている。 このJTBトラベ ラン ド以外 にも、グループ会社 の中の リテーラー として、2003年 にグループ化 したPTS(2006年度実績50社中18位)があるが、

ここは180ヶ所の店舗 と1000人 の社員を有 し、JTBの売上高に貢献 している。 これ ら2社 は、駅 ビ ルの中や西武、イオ ン、九井 といつたシ ョッピングセ ンター内に店舗 を有 し、個人営業特化型会 社 とい う位置づけとなつている。

この他 にも、主要 50社 に合まれ るJTBのグループ会社は、ホールセ ラー としてJTBワール ドバ ケーシ ョンズ (同8位)、 トラベルプラザインターナシ ョナル (同27位)、 R&Cツアーズ (同33位)

があ り、業務渡航 に特化 したJTBビジネス トラベル ソリューシ ョンズ (同20位)も合まれている。

これ らを連結すると、主要 50社 におけるJTBグループのシェアは、34.2%(2006年)にも及ぶ。

ЛBグループ全体の従業員数は25,311名 (2005年 12月 31日現在)、 企業数 150社 であ り、 この うち旅行会社は、地域総合型 10社35、 国人営業特化型4社36、 機能特化型8社37、 仕入造成 6社38、 ポー ト9社39の合計 37社 である。 これ らの会社 は、2006年4月に分社化 され、新 グループ経営体制 としてスター トした。 この分社化 により、全体 としてのJTBのブラン ドはそのまま活用 し、意思 決定 を迅速 に行える組織 になる と同時に、仕入造成、販売、地域な どの専門に特化す ることによ

り生産性向上をめざしている。

JTB関係者の話 によれば、 フッ トヮークが軽 くな り、た とえばJTB九州 と韓国の旅行業者 との 提携 による旅行商品な どうま くいっているとい うことである。また、 この分社化 により、各社が 得意な地域で戦略を作 りやす くなつた とも語 つている。

佐々本社長は、「分社化後は毎年数十社 を設立 し、最終的には500社 ぐらいのグループとなる40」

と述べている。 これは、 ドメインを 「総合旅行業」か ら「文化交流産業」へ と変更 し、人の集ま るあらゆる機会でサー ビスを提供 しよ うとすることと結びつ く。人の移動が伴 うすべてのイベ ン ト、機会 を提 えて事業 を行 う多角化への道を進む。最近の新会社 として特筆すべ きは、エ ンタテ

35北海道か ら沖縄 までのエ リア別 の法人旅行や個人旅行の販売 を行 うと共 に、地域活性化 に貢献する。

36生活 に密着 した利便性 を追求 した店舗 における旅行商品の販売 を行 う。

37法人対象、業務渡航、訪 日外国人、イ ンターネ ッ ト、留学な どに特化 した旅行商品を販売す る。

38旅行素材や旅行商品を、」TBを合 め他 の旅行業者 に販売す る。

39添乗員派遣、海外渡航手続代行、パ ンフレッ ト・販促物製作等 を行 う。

40『Travel」Ournal』2006年2月13日号、p.17参 照。

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表 41.大 手4社 の概要 l■ ・ lJTB 近畿 日本ツーリス ト欄 欄 日本旅 行 l■ l阪 急交通社 創 業 創業1912年 :ジ ャパ ン・ツー リス ト・ビ ューロー (国 策会社 ) 1941年 :l■ l関 急旅行社 1905年 :南新助が高野山参詣団お よび伊勢 神宮参拝 団実施 1948年 :阪急電鉄 lal の代理店部 として航空代理店業務 開始 設 立 1963年 :働 日本交通 公社の営利部門 とし て冊 日本交通公社設 立 (資 本 金8億 円 ) 1955年 :近畿 日本

参照

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